JP2919901B2 - 溶融るつぼ装置 - Google Patents

溶融るつぼ装置

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、単結晶引上に用いられる溶融るつぼ装置に
関する。
[従来の技術と課題] 周知の如く、半導体単結晶の代表的な製造法として
は、チョクラルスキー法が知られている。この方法は、
石英ガラス製るつぼ内で半導体材料を溶融し、これに種
結晶を接触させて種結晶と同方位をもつ単結晶を成長さ
せるものである。この方法に用いられる石英ガラス製る
つぼは、耐熱性,成形性が良く半導体材料に悪影響を及
ぼすような不純物の存在がほとんど認められないことか
ら唯一の経済性の良い材料であると言える。
しかしながら、例えばシリコン単結晶を引き上げる場
合、その処理温度が1450℃にも及び、石英ガラスはカー
ボンるつぼと接触している部分で下記式のように反応
し、カーボンるつぼが珪化反応して割れが生じて短ライ
フになる。また、カーボンが多孔体であることによりカ
ーボンるつぼ内部までこの反応が進み、引き上げ時の急
速加熱や、引き上げ後の急冷により,珪化された炭化ケ
イ素とカーボンの熱膨脹率の違いに起因してカーボンる
つぼが割れて短ライフになる。更に、近年の半導体分野
の目覚ましい発展に伴いるつぼが大型化するとともに、
長時間の連続操業上ネックになるという問題点が生じて
いた。
SiO2+C=SiO+CO SiO+2C=SiC+CO これらの対策として、カーボン材料の気孔率を低減
させること、不浸透化させること、あるいは石英ガ
ラスるつぼとカーボンるつぼとの接触部分に黒鉛シート
を介在させること、等の対策がとられている。しかし、
こうした対策の場合、次に述べる問題点を有している。
の場合;カーボン材料の気孔率の低減は焼結性をもっ
た粉体を成形し、熱処理するという工程で製造している
以上成形時の空隙や熱処理時の揮発分の散逸などにより
気孔率の低減には限度がある。
の場合;不浸透化は気孔内部に熱硬化性樹脂等を含浸
させるということであるが、熱硬化性樹脂の硬化,焼成
段階において大量の脱水を起こし、内部に残る水分が除
去できず、カーボン材にクラックが発生し、内部応力を
残すことになる。
の場合;数回使用すると、黒鉛シートが珪化され劣化
し、単結晶引き上げ時において、シリコン中に混入し純
度低下を招く。また、半導体分野では、使用中ガス放出
による悪影響を懸念する声があり、単結晶引上げ装置内
で黒鉛シートなどを介在させると、それによる放出ガス
量は多く、シリコン単結晶に悪影響を及ぼす事がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、石英ガラ
スるつぼとカーボンるつぼの間に耐食性の優れたガラス
状カーボン層を介在させる構成することにより、気孔率
の低減,内部応力の軽減,放出ガス量の抑制を図りつ
つ、肉厚化,大型化を達成しえる溶融るつぼ装置を提供
することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明は、カーボンるつぼに内挿された石英ガラスる
つぼ内で半導体材料を溶融し、半導体単結晶を成長させ
る溶融るつぼ装置において、前記カーボンるつぼと石英
ガラスるつぼの間に気孔率を0.02〜0.2%に成形したガ
ラス状カーボン材料を介在させたことを特徴とする溶融
るつぼ装置である。
本発明に係るガラス状カーボンは、熱硬化性樹脂から
選ばれる少なくとも1種と熱硬化性樹脂を焼成炭化させ
た粉末を1〜50wt%(50wt%未満ではガラス状カーボン
質焼成体粉末の結合が低下し機械的強度が劣る)含有す
る混合組成物を型に鋳込み、ついで乾燥硬化させた後、
非酸化性雰囲気で炭化焼成して得られるガラス状カーボ
ンが挙げられる。これについて、補足すれば、 ガラス状カーボンは、熱硬化性樹脂を焼成炭化(不活
性雰囲気中450℃以上、この800℃より好ましくは1000℃
以上の温度で焼成炭化)させた粉末を1〜50%含有する
熱硬化性樹脂焼成体粉末と熱硬化性樹脂からえら選ばれ
る少なくとも1種を減圧(100Torr以下)後ミキサーで
混合し、成形し、硬化にいたる温度を段階的に制御させ
硬化体を作製し、不活性雰囲気中(ここで、不活性雰囲
気とは酸素を含まず、通常ヘリウム,アルゴン,窒素,
水素,ハロゲンンからなる群より選ばれた少なくとも一
種の気体よりなる雰囲気、あるいは減圧又は真空下、又
は大気を遮断した状態の雰囲気をいう)で遅い昇温カー
ブ(例えば1℃/時間)で炭化焼成し、最後に純化処理
を施して得られる。
以下、ガラス状カーボンについて詳述する。
一般に熱硬化性樹脂の硬化物を不活性雰囲気中で熱処
理を行うと、ガス不透化性に優れ、強度が高く、かつ等
方性組織を有するガラス状カーボンが得られる。このガ
ラス状カーボンは、一般の炭素材料が有する軽量、耐熱
性、高電気伝導度、耐食性、大きい熱伝導度、機械的強
度等の特性に加え、吸脱着ガス量が少なく、均質でかつ
摺動部に用いても炭素粉末を生じない特性を備えてい
て、エレクトロニクス産業、原子炉産業、航空産業をは
じめとする各種分野での広範囲な利用が期待されてい
る。また、ガラス状カーボンは、特に半導体産業で利用
され始めている。この理由は、半導体分野ではあらゆる
温度域で使用する場合があり、従来より酸化消耗,ガス
発生等が問題視されていたからである。こうしたことか
ら、ガラス状カーボンは、従来のカーボンのみよりなる
溶融るつぼ装置に比べて強度,耐食性,低ガス放出等の
特性を向上できる材料であるといえる。
本発明においては、ガラス状カーボンの気孔率は、0.
02〜0.20%とすることが好ましい。この理由は、気孔率
が0.20%を越えると、開気孔(Open Pore)、閉気孔(C
lose Pore)が存在することになり、独立閉気孔が存在
すると研磨によって閉気孔が開気孔となり、珪化反応に
より強度が低下しパーティクルの発生が増加するためで
ある。逆に、気孔率が0.02%未満の場合、ガラス状カー
ボンは非常に緻密なため、何回もの加熱冷却サイクルで
使用することにより熱応力の蓄積により割れるためであ
る。但し、上記気孔率とは、水銀圧入式によって求めた
100Kg/cm2加圧時のトータル気孔量に比重を掛け、更に1
00を掛けた値である。
本発明において、ガラス状カーボンの不純物含有量は
5ppm以下であることが望ましい。この理由は、不純物含
有量が5ppmを越えるとシリコン単結晶引き上げに対し純
度的に悪影響を及ぼすためである。
本発明において、ガラス状カーボンのトータル放出ガ
ス量は950℃の測定温度で100mg中に5ml以下であること
が望ましい。この理由は、ガス量が5mlを越えると、シ
リコン単結晶引き上げ時に引き上げたシリコン単結晶に
悪影響を及ぼすためである。
本発明(本願第1発明)において、ガラス状カーボン
層の厚みは0.10〜5.00mmの範囲が好ましい。この理由
は、厚みが0.10mm未満の場合、石英ガラス接着時におい
て強度不足から破損するためである。また、厚みが5.00
を越えると、カーボンるつぼ内面に装着した場合ガラス
状カーボンは熱伝導率が低く,ヒーターからの熱をスム
ーズに伝えにくい事、及び装着させるカーボンるつぼの
肉厚が薄くなり強度不足を生じさせるためである。
本発明に係る熱硬化性樹脂としては、フラン樹脂,フ
ェノール樹脂、エポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹
脂,ユリア樹脂,メラミン樹脂,アルキッド樹脂,キシ
レン樹脂等を挙げる事ができ、本発明の条件に合致する
樹脂はそのままあるいはブレンドまたは変性する事によ
り用いられる。好ましい熱硬化性樹脂としては、変性フ
ェノール樹脂,変性フラン樹脂が挙げられる。また、本
発明で使用する熱硬化性樹脂焼成体は、上記熱硬化性樹
脂を既述したように焼成炭化(不活性雰囲気中450℃以
上、好ましくは800℃より好ましくは1000℃以上の温度
で焼成炭化)するが、炭化焼成時間は焼成する温度によ
り適宜選択すればよい。ここで、焼成温度が450℃より
低ければ十分炭化せず、気孔率が高く、目的とするガラ
ス状カーボン材料としての性質を得ることができない。
以下、一般のピッチなどを原料とする易黒鉛化炭素材
料について述べる。
前記炭素材料は、焼結性をもつ粉体を成形し、熱処理
するという工程で製造されるため、成形時の空隙や熱処
理時の揮発成分の散逸等により、10〜30%の気孔を有す
る。また、骨材粒子の大きさやバインダーの種類,製造
工程等によって、気孔の大きさや分布が異なり、気孔が
関与した物性は非常に複雑なものとなる。
また、前記炭素材料上にガラス状カーボンをコーティ
ングし不浸透化する技術があるが、ガラス状カーボン材
料ほど不浸透化されておらず、耐食性,機械的強度もガ
ラス状カーボン材料と比べて劣る。更に、気孔内を熱硬
化性樹脂等で含浸し、不透化性にすると、焼成時に樹脂
が収縮しあるいは気孔内部で基材のカーボン材と剥離し
て逆に内部比表面積が大きくなり、ガス放出量が増加す
るという問題がある。
一方、現在製品化されているガラス状カーボンは、大
部分が 熱硬化性樹脂を原料とし、所定の形状をした基板上
に筆,噴霧,遠心法等により樹脂を薄く塗布・硬化させ
る操作を繰り返す事によって成形した後焼成を行った
り、 骨材そのものを樹脂粉末にし成形した後焼成を行っ
て、ガラス状カーボンを得ていた。
しかし、の方法では、熱硬化性樹脂が100%であり、
焼成中の収縮率が20%と大きいため、非常に長い期間の
焼成時間を必要とした。また、焼成中の収縮率が20%、
内部ガスの制御(脱ガス)ができず肉厚の製品が製造で
きていない事から歩留まりも悪く最終製品を得るにはコ
ストが非常に高くなる。
上記の方法では、樹脂粉体を使用するため、樹脂粉
末自体が収縮し、と同様に非常に長い期間の焼成時間
を必要とした。なお、において黒鉛粉末を使用する場
合があるが、黒鉛粉末では熱硬化性樹脂と比較して耐食
性に劣り、更に最終製品において黒鉛粉末と熱硬化性樹
脂との熱膨脹差によりクラックが発生する。また、上記
,のいずれの方法においても半導体引上げ等に使用
するような大型、肉厚のるつぼ形状ものはできない。
[作用] 本発明によれば、気孔率を低減し、内部応力を軽減
し、更に放出ガス量を抑制しつつ、肉厚化,大型化可能
な溶融るつぼ装置を得ることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
[実施例1,2及び比較例14,15] 第1図及び第2図を参照する。ここで、第1図は溶融
るつぼ装置の断面図、第2図は第1図の平面図である。
図中の1は、カーボンるつぼである。このカーボンる
つぼ1には、ガラス状カーボン層2を介して石英ガラス
るつぼ3が内挿されている。前記ガラス状カーボン層2
の材料であるガラス状カーボンは、次のようにして製造
される。
まず、フルフリルアルコールモノマーに対しp−トル
エンスルホン酸を適宜撹拌混合し重合させた。次に、こ
のようにして得られたフルフリルアルコール重合液を脱
泡処理し前もって作った鋳込み型に成形し、硬化させ
た。つづいて、得られた硬化体を不活性雰囲気中で焼成
し、最後に鈍化処理を行い、気孔率が0.02〜0.20%で存
在するガラス状カーボン材料を得た。
[実施例3,4及び比較例16,17] これらの実施例,比較例の構成もガラス状カーボン層
を除いて第1図,第2図と同様である。ここでは、ガラ
ス状カーボンの作り方について述べる。
まず、フェノール樹脂に対し濃塩酸をトータル量0.09
wt%添加し熱硬化性樹脂焼成体粉末とを減圧(100Torr
以下)下でミキサーを使用し攪拌混合させ、前もって作
った鋳込み型に成形し、常温硬化させた後乾燥器で再度
硬化させた。但し、硬化の温度は昇温温度10℃/hrと
し、常温から200℃まで行った。こうして得られた硬化
体を不活性雰囲気中で2℃/時間の昇温カーブで焼成
し、最後に2300℃で純化処理を行い気孔率が0.02〜0.20
%で存在するガラス状カーボン材料を得た。
後掲する第1表は、実施例1〜4,比較例14〜17におけ
る気孔率(%),熱硬化性樹脂焼成体粉末配合量
(%),溶融るつぼ装置の使用回数及びガス放出量(ml
/100g)を示す。
[比較例1] 一般のピッチ、コークス粉等の原料を混練し、その後
の任意の粒度に粉砕し焼結性をもった粉体を成形し、熱
処理するという工程で溶融るつぼ装置を製造した。
[比較例2] 比較例1のカーボンるつぼにフルフリルアルコール重
合物(350cp/20℃)を減圧含浸させ、室温から200℃ま
で1℃/時間で硬化させ、この工程を2回繰り返した。
その後、不活性雰囲気中で2℃/時間の昇温カーブで焼
成し、最後に2300℃で純化処理を行ってカーボンるつぼ
を得、石英ガラスとカーボンるつぼの間に介在させた。
[比較例3] 熱膨脹黒鉛シートを任意の形状に切断し、2300℃で純
化処理を行い、石英ガラスとカーボンるつぼの間に介在
させた。
[比較例4〜13] 熱硬化性樹脂を混合させた物でつるぼ形状品ほどの大
型品は得られないことより、天然黒鉛混合品(比較例4
〜11)、一般特殊炭素材料(比較例12)、ガラス状カー
ボンコート品(比較例13)を比較例とした。
後掲する第2表は、比較例1〜13における気孔率
(%),天然黒鉛粉末配合量(%),溶融るつぼ装置の
使用回数及びガス放出量(ml/100g)を示す。
なお、上記第1表,第2表においては、各実施例,比
較例で得られた溶融るつぼ装置を使用して、35Kgの高純
度のシリコンを溶融し、約1mm/分の条件で結晶方位(10
0)の直径5インチのシリコン単結晶を繰り返し引き上
げた。るつぼ装置の使用回数は、クラックの発生した時
点までの使用回数を示している。
上記第1表及び第2表により、本発明に係る溶融るつぼ
装置が従来のそれに比べてガス放出量が著しく小さく、
優れた特性を示す事が確認された。
[発明の効果] 以上詳述した如く本発明によれば、石英ガラスるつぼ
とカーボンるつぼの間に耐食性の優れたガラス状カーボ
ン層を介在させる構成することにより、気孔率の低減,
内部応力の軽減,放出ガス量の抑制を図りつつ、肉厚
化,大型化を達成しえる溶融るつぼ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例に係る溶融るつぼ装置の断面
図、第2図は第1図の平面図である。 1……カーボンるつぼ、2……石英ガラスるつぼ、3…
…ガラス状カーボン層。
フロントページの続き (72)発明者 棚田 良信 山形県西置賜郡小国町大字小国町378番 地 東芝セラミックス株式会社小国製造 所内 (72)発明者 市島 雅彦 山形県西置賜郡小国町大字小国町378番 地 東芝セラミックス株式会社小国製造 所内 (56)参考文献 特開 昭62−252394(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C30B 15/10 C30B 28/00 - 35/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カーボンるつぼに内挿された石英ガラスる
    つぼ内で半導体材料を溶融し、半導体単結晶を成長させ
    る溶融るつぼ装置において、前記カーボンるつぼと石英
    ガラスるつぼの間に気孔率を0.02〜0.2%に成形したガ
    ラス状カーボン材料を介在させたことを特徴とする溶融
    るつぼ装置。
  2. 【請求項2】前記ガラス状カーボン材料の厚みが0.10〜
    5.00mmであることを特徴とする請求項1記載の溶融るつ
    ぼ装置。
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