JP2911554B2 - 抗ウィルス剤 - Google Patents

抗ウィルス剤

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は式(1)で示すような、くり返し単位からな
る化学構造を有する多糖(以下当該多糖という)を有効
成分として含む経口抗ウィルス剤に関するものである。
(従来技術および問題点) ウィルスが原因となって起こる病気は多数存在する。
しかし、ウィルスが生体に感染することが病気に直結し
ているわけではない。ウィルス感染症が発現するために
は感染したウィルスの量と毒性の強さ、そして、被感染
者の免疫能が関与してくる。
現在、ウィルス病の治療方法としては、大別すると、 (i)被感染者の免疫能を調節することによってウィル
スに対処しようとする方法と、 (ii)ウィルスに直接作用させることによって対処しよ
うとする、 2通りの方法がある。
前者の代表としてはワクチンを用いた予防方法があ
る。
これまでにワクチンによる天然痘根絶をはじめとし
て、黄熱病、ポリオ等のウィルス感染症の制圧が成され
てきた。これらのウィルス種の特徴として、ウィルスの
外殻の表面構造が変化しにくいという点があげられる。
そのため、一種類のウィルスに対して一種類のワクチン
をつくれば効果が期待できたのである。しかしながら、
表面構造を頻繁に変化させるウィルスに対して、ワクチ
ンだけによる制圧は難しいと考えられている。
実際、近年問題となっているAIDS(Acquired Immunod
eficiency Syndrome),ATL(Adult Tcell Leukemia)あ
るいはB型肝炎といったウィルス感染症に対してワクチ
ンだけでは対応し切れず、そのためウィルスの細胞への
吸着阻害あるいは逆転写酵素の阻害、タンパク合成の阻
害といった作用を有する薬物が、抗ウィルス剤として用
いられており、同時に抗ウィルス剤の開発、研究も進め
られている。これらは、先に述べた中のウィルス病の治
療法のうち後者の方法に当たるが、肝障害、過敏症、ビ
タミン欠乏症、中枢神経障害、等を起こすことが報告さ
れている。その上、これらの薬物が有効であるウィルス
も限定されている。
ところで、被感染者の免疫能を賦活化することにより
抗ウィルス効果を期待する方法も近時開発されている。
しかして、種々の免疫賦活物質が既に知られているが、
それらのうちインターフェロンが抗ウィルス剤として利
用されているものである。しかしながら、インターフェ
ロンは免疫能を賦活化するという作用を有することから
広範囲のウィルスに対して効果を期待できる反面、被感
染者側の種特異性および、連続投与による効果減弱等、
種々の問題を有していた。
本発明者らは特定の多糖すなわち当該多糖を生体に投
与するとき、インターフェロンと同様に免疫系を賦活化
するのみならず、種々のウィルスに対し、顕著な抗ウィ
ルス効果を有することを見い出し、本発明を完成するに
至った。
(発明の構成) 当該多糖としては、Sohizophyllum commune Fries
(スエヒロタケ)が産生するシゾフィラン、Sclerotium
glucanicumが産生するスクレログルカン、Porodisculu
s Pendulusの産生するペンジュランなどがあり、これら
のホモ多糖はいずれも、それぞれの生産菌を培養するこ
とによって菌体外に産生される。これらの培養で得られ
た当該多糖は、極めて高粘度かつチクソトロピックな水
溶液を作るため、その濾過、脱色、脱灰操作等の精製は
一般に困難である。これらの当該多糖を、本発明の目的
である医療品として利用するため高度に精製するには、
多糖の解重合によって分子量を低下せしめることが望ま
しい。そのための解重合法としては、多糖水溶液に超音
波を照射するか、或は高剪断力で処理する方法が望まし
い。これらの解重合法では、当該多糖のβ−1,3−グル
コシド結合からなる主鎖だけが選択的に切断され、β−
1,6−グルコシド結合の側鎖は殆ど切断されることがな
い。
かくて当該多糖の基本構造は解重合後も変わることな
く保持されるのである。
当該多糖はβ−1,3グルコシド結合を主鎖にもつ多糖
体であるため、デンプンやデキストラン等のαグルコシ
ド結合をもった多糖体とは異なり、体内酵素によって分
解されにくく、かつ非常に低毒性であるという特徴を有
する。
また、当該多糖の1つであるシゾフィランは、免疫賦
活作用にもとづく制癌活性を持つことがよく知られてお
り、すでに日本では制癌剤としての医薬品の承認を得て
いる。またシゾフィランはインフルエンザウィルスに対
して筋肉内投与及び腹腔内投与で抗ウィルス作用がある
ことも知られている。(近畿大学医学雑誌第6巻3号38
7−391頁1981年) 一般に、当該多糖並びにその類似の抗腫瘍性物質は分
子量が大きいことから注射による体内投与を常とする。
これらの薬剤については臨床的な利便性から経口投与に
よる有効性の実証が試みられて来たが、経口投与によっ
て体内に吸収されたという報告はない。
従って、これらの薬剤を経口投与する場合、体内リン
パ球サブセットの変動、或は多少の腫瘍増殖抑制効果等
の免疫能の賦活を示唆する傾向は見られるものの、臨床
的な癌治療が期待される程の治療効果については報告さ
れていない。
更に、傾向投与におけるこのような僅かな免疫増強効
果を期待して、当該多糖の食品としての生理機能を利用
しようとすることも試みられてきた。しかしながら、中
性多糖の腸内吸収は難しいというのが通説である(食品
加工技術Vol 18,No.4 P.271(1988))(化学と生物Vol
25,No.4 P.273(1987))。
このような経緯から、当該多糖の生理機能に関して
は、主として注射による体内投与を中心として研究が続
けられていたにすぎない。
一方、前述のように、当該多糖の1つであるシゾフィ
ランの抗インフルエンザウィルス効果については、注射
による筋肉内或は腹腔内投与での有効性が、一応は知ら
れてはいたが、既に経口投与で有効な各種消炎剤が抗生
物質がインフルエンザに対して汎用されている現状で
は、当該多糖の注射による投与では実際の臨床上殆ど有
効性が認められなかった。
このような実状の中で、本発明者らは当該多糖の抗ウ
ィルス効果を実用上有効ならしめるために、経口投与に
よる研究を鋭意行ったところ、従来の通説からの予想に
反して、当該多糖が経口によっても臨床的に充分有効で
ある抗ウィルス効果を発揮しうることを見出したのであ
る。
本発明に於て当該多糖の抗ウィルス活性は、生体の免
疫担当細胞を賦活し非特異的な免疫増強作用を介して発
揮されるものと考えられるが、経口投与によって効果を
示すことの詳細な作用桟序は今のところ明らかではな
い。
従って、本発明の抗ウィルス剤は経口投与で有効であ
ることを特徴とし、インフルエンザフィルス、ヘルペス
ウィルス、センダイウィルス、SSPEウィルス等、多くの
病原性ウィルスに対して抗ウィルス効果、特に予防効果
を発揮するものであるが、一方エイズウィルスに対して
の治療効果は認められない。
本発明の当該多糖は、体内の消化酵素による分解を受
けにくく、非常に低毒性であって、注射による投与でも
ほとど副作用を示さない。従って経口投与では毒性は皆
無であるという大きな特徴を有する。
本発明の当該多糖は天然物であり、低毒性であるの
で、食品あるいは動物の飼料として服用しても、抗ウィ
ルス効果は十分に期待できる。
既に述べたように、医薬品として当該多糖を精製する
には当該多糖の分子量をある程度(100万以下)低下さ
せることが望ましい。一方、当該多糖を食品や飼料とし
て利用する場合には、あまり精製する必要もなく、粗製
品或は多糖製造の培養液乾燥物のままであっても十分に
効果を示す。
ところで式(1)に示した構造において、β−1,6−
グルコシド結合で分岐した側鎖の分岐度が当該多糖とは
異なった、水溶性或いは水不溶性の多糖がいくつか知ら
れている。これらのβ−1,3−グルコシド結合の主鎖を
持つ多糖の他、イーストグルカンや免疫賦活性のマンナ
ンについて当該多糖に類似の抗ウィルス活性が認められ
ているが、本発明者らの研究によれば、試験結果のバラ
ツキがあってそれを十分に確認するまでには至っていな
い。
また、シゾフィランを産生するスエヒロタケの菌体に
は水不溶性の多糖も含まれており、それらがβ−1,3−
グルコシド結合とβ−1,6−グルコシド結合からなるグ
ルカンであることは知られているが、その構造は複雑
で、今のところその詳細はまだ解明されていない(J.G.
H.Wessels,et al.Biochimica et Biophsica Acta,273,3
46−358(1972))。
本発明の経口投与による抗ウィルス活性がシゾフィラ
ンとスエヒロタケ菌体の破砕物でも認められることか
ら、このような菌体内多糖にも抗ウィルス活性があるも
のと考えられる。
実施例1 シゾフィラン(分子量46万)、スクレログルカン、及
びペンデュランを、それぞれウィルス感染の5日前、4
日前、3日前、2日前、1日前、更にウィルス感染の一
日後、及び2日後の型7回(150mg/kg/回)マウスにゾ
ンデを用い強制経口投与し、インフルエンザウィルス
(2LD50)を経鼻感染させた。マウスは、ICR系(雄、3
週令、体重10±1g)を1群10匹ずつ用いた。又、陽性対
照とし、イソプリノシン(400mg/kg/回)を試料群と同
様に計7回開口投与した。
その結果、無投与群では感染後15日目までに10匹中9
匹が死亡したのに対し、イソプリノシンでは31日後でも
7匹が生存した。シゾフィランでは8匹、スクレログル
カン及びペンデュランでは7匹が生存した。感染後31日
目に全例死亡したと仮定して求めた平均生存日数及びT/
C(各投与群の平均生存日数を無投与群の平均生存日数
で割った値)を算出し比較を行った。
表1に示すように無投与群に対し、当該多糖の投与に
より有意な生存率の改善及び生存日数の延長効果が認め
られた。
実施例2 シゾフィラン(分子量46万)、スクレログルカン、及
びペンデュランを実施例1と同様の方法で投与し、ヘル
ペルウィルス(2LD50)を腹腔内感染させた。マウスはC
3H/HeN、Crj(体重20±1g)を1群当り10匹ずつ用い
た。陽性対照としてアシクロビル(200mg/kg/回)を試
料と同様に経口投与した。
その結果、無投与群では感染後14日目までに10匹中8
匹が死亡したのに対し、シゾフィラン、スクレログルカ
ン、ペンデュランではそれぞれ、7匹、6匹、5匹が感
染24日後でも生存した。アシクロビルでは、7例が生存
した。
実施例1と同様に、平均生存日数及び生存率を求め表
2に示した。シゾフィランでは、アシクロビルと同程度
の抗ウィルス効果が認められた。
実施例3 センダイウィルス(5LD50)を経鼻感染させたマウス
を用いて、実施例1と同様に試験を行った。
その結果、無投与群ではウィルス感染後8日目までに
全例が死亡したのに対し、シゾフィラン、スクレログル
カン、ペンデュラン投与群では、それぞれ6匹、5匹、
4匹が感染14日後でも生存した。イソプリノシンでは感
染14日後に10匹中5匹が生存した。
実施例1と同様に、ウィルス感染14日目までの平均生
存日数及び生存率を求め表3に示した。イソプリノシン
と同程度の抗ウィルス効果が認められた。
実施例4 SSPE(Subacute Sclersing Panencephalitis:亜急性
硬化性全脳炎)ウィルス(5LD50)を脳内感染させたマ
ウスにつき、実施例1と同様に試験を行った。
その結果、無投与群では感染後21日目までに全例が死
亡したのに対し、シゾフィランでは5匹、スクレログル
カン及びペンデュランでは3匹が、感染30日後でも生存
した。イソプリノシンでは、感染30日後に10匹中4匹が
生存した。
実施例1と同様に、ウィルス感染後30日目までの平均
生存日数及び生存率を求め表4に示した。シゾフィラン
では、イソプリノシンと同程度の抗ウィルス効果が認め
られた。
実施例5 Schizophyllum commune Friesを培養して得た培養ブ
ロス1kgを、そのままホモジナイズし、菌体を破砕した
後、40℃で真空乾燥し淡黄色の乾燥粉末30gを得た。こ
の乾燥粉末は、シゾフィラン35.1%、菌体50.5%、水分
6.2%、灰分6.7%を含んでいた。
この培養ブロス乾燥粉末、シゾフィラン(分子量46
万)、スクレログルカン及びペンデュランについて、セ
ンダイウィルス(5LD50)を感染させたマウスを用いて
実施例1と同様に試験をした。
その結果、無投与群ではウィルス感染10日目までに全
例が死亡したのに対し、シゾフィラン、スクレログルカ
ン、ペンデュラン及び培養ブロス乾燥粉末は、それぞれ
5匹、4匹、4匹、8匹がウィルス感染後14日目でも生
存した。イソプリノシンでは、10匹中6匹が感染14日後
においても生存した。
実施例1と同様に、ウィルス感染後14日目までの平均
生存日数及び生存率を求め表5に示した。培養ブロス乾
燥粉末にもシゾフィランと同様に抗ウィルス効果が認め
られた。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式(1)の化学構造を有する多糖を有
    効成分とする経口抗ウィルス剤 (ただし、nは16以上の整数である。)
  2. 【請求項2】多糖がシゾフィランである請求項(1)記
    載の抗ウィルス剤。
  3. 【請求項3】多糖がスクレログルカンである請求項
    (1)記載の抗ウィルス剤。
  4. 【請求項4】多糖がペンデュランである請求項(1)記
    載の抗ウィルス剤。
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