JP2909181B2 - 流動性食品 - Google Patents

流動性食品

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はポタージュ、スプレッド、ディップ、アイス
クリーム、バター、ヨーグルトなどのコクのある流動性
食品の食感を改良する技術に関し、食物繊維を大量に含
有し、腸内の細菌叢を正常に保ち、ローカロリーであっ
て、肥満を防止する流動性を有する機能性食品に関す
る。
〔従来の技術〕
昨今、機能性食品と言う言葉が一般化しつつあるが、
本発明は代表的な機能性食品に属し、食物繊維と呼ばれ
る通常の食品成分であって、食したとき栄養源以外の何
らかの機能、例えばコレステロール値の低下、血糖値の
正常化、排便の正常化などの機能を有する食品である。
通常、消化吸収されない非水溶性の機能性食品素材と
してはセルロース系がその代表である。これは、小麦、
大豆、とうもろこし、玄米などの穀物に大量に含有され
ている。しかし、セルロースは食感を著しく低下させる
欠点を有する。そのため、現実に食品として用いる場合
には食感の良さを追求する結果、おいしい食品の歴史は
食品からセルロースを除去する歴史といっても過言でな
く、おいしいと言われる食品はセルロースをほとんど含
まない食品である。食品から食物繊維が減少していくに
つれ、近年、肥満や便秘のみならず、癌や心臓病などの
成人病の原因の一つが食物繊維の不足にあることが判明
した。
こんにゃくはグルコマンナンを主成分とする。グルコ
マンナンはグルコースとマンノースで構成される分子量
数十万といわれる人間の体内で消化吸収されないすぐれ
た食物繊維である。従来から食品として使用されてきた
が、凝固させるにあたり強アルカリ性を条件とするた
め、アルカリおよびアルカリ臭が残り、こんにゃく特有
の物性が使用の範囲を限定していた。一方、凝固物は熱
不可逆性であり、加熱しても溶解しない長所を有する。
この長所を利用して、こんにゃくをすりつぶし、ペース
ト状とした後、魚肉などのすり身と混練し、蒲鉾などの
水産煉製品を製造する方法も提案されている。
〔発明が解決使用とする課題〕
しかしながら、このこんにゃくペーストを魚肉や蓄肉
に混練して水産煉製品やソーセージを製造する提案も実
際には実用化されていない。これはあくまでこんにゃく
ペーストを増量材として考えていることと、こんにゃく
の中に含まれる石灰が食品として有害であるのみなら
ず、食品全体の味覚をも低下せしめることが主な原因で
ある。
本発明は、逆に食品の食感を改良するものであって、
グルコマンナン凝固物を一定範囲の粒径に刃物で断裁し
て流動性食品に配合するものである。すなわち、すりつ
ぶしてペースト化したこんにゃくとは異なり、あくまで
もこんにゃくをベースとして従来なかった全く新しいタ
イプの機能性食品を提供することを目的とする。
〔課題解決の手段〕
本発明は上記課題を解決した流動性食品を得ることを
目的とし、その構成は、グルコマンナンを主成分とする
熱不可逆性凝固物を、8タイラーメッシュの篩を通過
し、150タイラーメッシュの篩を通過しない見掛け上の
粒径に、刃物により断裁して微細断裁物を得、該微細断
裁物自体が中和されていると共に、該微細断裁物が、他
の流動性食品材料に加えられていることを特徴とする。
本発明の流動性食品はこくがあって、しかもさらさら
とした流動感があり、澱粉系の増粘材とは明らかに異な
る食欲を増進する食感が得られる。この食感は加熱によ
り粘性は増加しても互いに結着せず、冷却すると粘性が
低下し、さっぱりした食感をもつ流動性食品である。
本発明における流動性食品とは、特に歯で咀嚼するこ
となく容易に飲み下すことができる程度の流動性を有す
る食品であり、例えば、スープ、特にポタージュ、スプ
レッド、ディップ、ヨーグルト、アイスクリーム、ソフ
トクリーム、ソフトタイプのバターやチーズ等の乳製
品、トマトジュース等の果肉飲料、ケチャップ、マヨネ
ーズ、ソース、たれ等の流動性調味料、その他カレー、
シチュー等のペースト状食品などが挙げられる。
熱不可逆性の凝固物としては、グルコマンナン或いは
こんにゃく芋の粉末の膨潤液に石灰、苛性ソーダ、苛性
カリ、炭酸ソーダなどのアルカリを加えて加熱し、凝固
させたものである。カラギーナン、アルギン酸ナトリウ
ム、寒天などの多糖類は凝固性であるが熱可逆性で加熱
によりゾルに戻り単独では冷時でのゼリー類への用途に
限定される。しかしながら、グルコマンナンにカラギー
ナン、アルギン酸ナトリウム等の多糖類、大豆蛋白、小
麦蛋白、乳蛋白などの蛋白質及びその分解産物、セルロ
ース、澱粉などを配合すると凝固物に弾力を与えたり、
離水を防止したり、食感を改良したりする効果を有す
る。
本発明の特徴はグルコマンナンを主成分とする凝固物
をすりつぶしてペースト化したものを食品素材に混練す
るのではなく、刃物を用いて微細に断裁したものをベー
スとして従来存在しなかった全く新しいタイプの機能性
食品を提供するものである。ペースト化したものでは流
動性食品全体にさっぱりしたこくを付与することができ
ない。
本発明においてはこんにゃくを刃物により微細に断裁
する。断裁物の粒径は8タイラーメッシュ篩を通過し、
150タイラーメッシュ篩を通過しない程度、好ましくは1
6タイラーメッシュ篩を通過し、100タイラーメッシュ篩
を通過しない程度である。全部の断裁物が上記の範囲に
あることが理想的であるが、現実にはこの範囲を外れる
ものも混入するので全断裁物の70%以上、好ましくは80
%以上、より好ましくは90%以上が上記の粒径であれば
よい。
断裁物の粒径分布は、先ず6タイラーメッシュの直径
20cmのステンレス製標準篩(高野理化硝子(株)製)に
試料200gを入れ、流水中で手作業で震盪させ、篩に残留
した断裁物と通過した断裁物とに分級し、更に、1段階
細かい目の篩を用い、通過した断裁物について同様の操
作を繰返すことにより見掛け上の粒径を測定することが
できる。
グルコマンナンを主成分する凝固物はアルカリを作用
させて製造するため、当然にアルカリ性である。これを
微粉砕してもアルカリ性であり、食品としては中和処理
を施すことにより食感を改良することができる。
中和にあたっては、原料グルコマンナンまたはこんに
ゃく粉を溶解させる際に、グルコマンナンの凝固温度よ
り高い融点を有する外皮で有機酸を被覆した酸性マイク
ロカプセルを配合し、グルコマンナンが凝固した後に外
皮の融点以上に温度を上げることによりマイクロカプセ
ル内部の有機酸が排出され、アルカリが中和される。ま
た、通常のグルコマンナン凝固体を微細に断裁後、計算
量のクエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマール酸などの
有機酸を添加撹拌してもよい。
機能性をもつ流動性食品を製造するには、上記凝固物
の断裁物を主原料として好ましい物性が得られるまで各
種食品を添加すればよい。調理にあたり加熱しても不可
逆性ゲルであるため溶解することなく逆に各粒子が硬度
を増す傾向があり、しかも各粒子は独立し、互いに付着
することなく好ましい粘性を与える。また、冷めたとき
には一段と粘性を増す澱粉系の増粘剤とは異なり、逆に
粘性が低下し、さわやか感が増加する長所を有する。
〔作用〕
本発明の断裁物は熱不可逆性ゲルであり、微細に断裁
してあっても水に溶けずに各微粒子が分散した状態にあ
り、特定の粒径と相まって口の中でさっぱりした食感と
独特のコクを感じさせる。この食感は従来の澱粉系、蛋
白質系、油脂系の流動性食品によっては決して得られな
い優れた食感である。断裁物はたとえ微細であっても相
互に独立した粒状体であるため、加熱しても相互に粘着
せず、それぞれ独立の粒子として挙動する。したがっ
て、流動性食品にさらさらした粘性を付与し、食感を向
上させる効果を有する。
また、本発明に用いる微細断裁物はグルコマンナンの
重量に対して30〜50倍の水を加えた膨潤凝固体であるた
め、胃腸内において水と共働して純粋のグルコマンナン
重量に対して30〜50倍量を用いた場合にほぼ匹敵する機
能性食品としての作用を発現する。これはセルロースが
それ自体食感を阻害するために多量摂取することが困難
なこと、および水によりゲル化せず、セルロース自体の
重量分しか機能性食品としての作用を発現し得ないのと
比してはるかにすぐれた長所である。
〔実施例〕
実施例1 グルコマンナン75gとカラギーナン5gを粉体混合し、5
0℃の温水2.5lを加え、5分間ゆるやかに撹拌して均一
化し、60分間室温に放置して膨潤させた。この膨潤液に
苛性ソーダ(食品添加物グレード)2gを200mlの水に溶
解したアルカリ液を加え、素早く撹拌して均一なペース
トを得た。
このペーストを縦20cm、横25cm、高さ6cmのステンレ
ス製容器に移し、密閉した後90℃にセットされた恒温槽
にて30分間加熱処理することにより熱不可逆性凝固物を
得た。
この凝固物をダイス状にカットし、カッターミキサー
(容量10l、モーター1.0KW)のボールに入れ、3000 RPM
で3分間処理することにより舌に違和感が残らない程度
に断裁された微細断裁物を得た。この微細断裁物のpHは
11.2であり、アルカリ臭も強く、食品材料として好まし
いものではなかった。次いでクエン酸3.2gを加え、2分
間1500 RPMで撹拌することによりアルカリが中和され、
アルカリ臭のない微細に断裁されたなめらかな食感の流
動性食品のベースとなるグルコマンナン凝固体微細断裁
物(以下粒状ゲルとする)が得られた。この粒状ゲルを
80%以上が8タイラーメッシュを通過し、32タイラーメ
ッシュを通過しない部分に分級した。
この粒状ゲルと下記の材料を用いて4人分のコーンポ
タージュを得た。
粒状ゲル 250g コーンペースト 60g コンソメスープ(市販品) 1カップ バター 大匙 2 小麦粉 大匙 4 牛乳 1カップ 塩、胡椒 各少々 生クリーム 大匙 2 トウモロコシの実 少々 厚手の鍋にバターを入れて弱火にかけて溶かし、小麦
粉を加えて木じゃくしで5〜6分間煉り合わせた。これ
に牛乳とコンソメスープをダマにならないように注意し
てゆっくりと加え、次いで粒状ゲルとコーンペーストを
加えて充分撹拌した。塩、胡椒を加えた後、仕上げに生
クリームを加えトウモロコシの実を浮き実に加えてコー
ンポタージュを得た。このコーンポタージュはこくがあ
りながらさっぱりした食感を有し、加熱時には粘性が大
きいが、冷時には従来品では粘性が増加するのに反して
逆に低下し、熱時にも冷時にもおいしいポタージュであ
った。
実施例2 実施例1で製造した粒状ゲルと下記の材料を用いて4
人分の椎茸と豆腐のポタージュを得た。
粒状ゲル 250g 椎茸(水で戻した干し椎茸を1枚を4つに削ぎ切りした
もの) 10枚 豆腐(2cm角にカットしたもの) 1丁 たけのこ(うす切り) 50g ねぎ(ぶつ切り) 1本 ショウガ(うす切り) 1/2片 とりがらスープ 5カップ 塩 小匙 2 酒 小匙 2 胡椒 少々 とりがらスープに椎茸およびたけのこを加え、15分間
煮た後豆腐を入れた。粒状ゲルを加えた後、塩、胡椒、
酒を加えて調味し、沸騰したら火を止めた。さっぱりし
た食感のポタージュが得られた。
実施例3 粒状ゲルの粒径が、80%以上が16タイラーメッシュを
通過し、100タイラーメッシュを通過しない部分に分級
した中性こんにゃく断裁物を用いた以外は実施例1と同
様にして製造した微細断裁物を用いて2人分のにんじん
ポタージュを調理した。
粒状ゲル 150g にんじんペースト 50g コンソメスープ(市販品) 1カップ 塩及び胡椒 各少々 生クリーム 1/2カップ 鍋に粒状ゲル、にんじんペーストおよびコンソメスー
プを入れ、焦げ目がつかないように中火にかけ、塩、胡
椒で調味した。次いで生クリームを加え、火を弱めて約
10分間加熱し、改良された食感のにんじんポタージュを
得た。食感は実施例1及び2に比較してわずかに粘性が
増大していた。
実験例1 便秘症の患者10人(男性4人、女性6人)が実施例1
のにんじんポタージュ200gを毎朝試食したところ、5日
後に5人(男性2人、女性3人)、10日後に2人の女性
が正常な便通に回復し、20日後に更に2人の男性がほぼ
正常な便通に回復した。1人の女性は1ケ月後も正常な
便通が得られなかったが、症状はかなり軽減された。
実験例2 肥満度30以上の3人の男性と3人の女性が実施例1の
にんじんポタージュ200gを朝食と夕食に試食したとこ
ろ、1ケ月後には6人全員の肥満度が20〜50%低下し
た。
これは200gのポタージュの摂取によってかなりの満腹
感が得られるため、全体の食事量が減ったためと考えら
れる。実施例1のにんじんポタージュ200g中に含まれる
食物繊維として作用する成分は約50gであり、これは成
人が1日に必要とする食物繊維の最低量である10gの5
倍に相当する。
実施例4 粒状ゲルの90%以上が32タイラーメッシュを通過し、
100タイラーメッシュを通過しない粒度分布である以外
は実施例1と同様の粒状ゲルと下記の材料を用いてバニ
ラアイスクリームを製造した。
粒状ゲル 150g 卵黄 2個 砂糖 60g 牛乳 1カップ 粉末ゼラチン 5g 生クリーム 1/2カップ バニラエッセンス 小匙 2 ブランデー 大匙 2 鍋に卵黄と砂糖を加えて木しゃもじでよくかき混ぜ砂
糖が溶けたところで牛乳を加え弱火にかけた。
粉ゼラチンを加えて溶かし、こし器でこしたものに粒
状ゲルを加えて全体を冷却した。
別のボールに生クリームを入れて冷しながら泡立てて
に流し入れ、バニラエッセンスとブランデーを加えて
香りを付け、冷凍庫に入れて一昼夜冷却してバニラアイ
スクリームを得た。
得られたバニラアイスクリームは舌に違和感がなく滑
らかな食感であった。
実施例5 実施例1で製造した粒状ゲルと下記の材料を用いて果
肉飲料を製造した。粒状ゲルの70%以上が16タイラーメ
ッシュを通過し、60タイラーメッシュを通過しない粒度
分布であった。
粒状ゲル 100g 水洗しヘタを取ったいちご 150g ミルク 20g 砂糖 15g 上記原料全部をジューサーミキサーで果肉飲料とし
た。つぶつぶした舌ざわりで清涼感のある通常のいちご
飲料では得られない食感のいちご飲料が得られた。いち
ごに代えてオレンジ、りんご、パイナップル、グレープ
フルーツを用いても食感のよい果肉飲料が得られた。
実施例6 市販のヨーグルト100gに80%以上が8タイラーメッシ
ュを通過し、16タイラーメッシュを通過しない粒度分布
の粒状ゲル30gを加えて撹拌して通常のヨーグルトと同
様に食したところ、通常のヨーグルトと異なり特異な食
感のヨーグルトが得られた。
〔発明の効果〕
中和したグルコマンナン凝固体を特定の粒度に断裁し
て流動性食品に配合する本発明によれば、流動性食品の
食感がおいしく改良される。
また、きわめて大量の食物繊維を普通の食品と同等ま
たはそれ以上の食感で摂取できるという顕著な効果を有
し、仮にこれだけの食物繊維を他の一般食品で摂取する
と数Kgの野菜または果実が必要となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A23L 2/00 A23L 2/26 2/52 2/00 B (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23L 1/307 - 1/308 A23L 1/04 A23L 1/39 A23G 9/02 A23L 2/00 A23L 2/26 A23C 9/13

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】グルコマンナンを主成分とする熱不可逆性
    凝固物を、8タイラーメッシュの篩を通過し、150タイ
    ラーメッシュの篩を通過しない粒径に、刃物により断裁
    して微細断裁物を得、該微細断裁物自体が中和されてい
    ると共に、該微細断裁物に、他の流動性食品材料が加え
    られていることを特徴とする流動性食品。
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