JP3551149B2 - 易吸収性ミネラル含有組成物及びそれを含有する飲食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はミネラル吸収促進効果を有する組成物とこれを含有する飲食品に関する。詳しくは、ミネラル及びミネラル吸収促進材として、ポリ−γ−グルタミン酸分解物を含有する組成物とこれを含有する飲食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体を構成するミネラルには約20種類あるが、このうちカルシウム、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムなどは日本人にとって不足しがちで栄養学上問題視されている。特にカルシウム、鉄は不足しがちである。
【0003】
カルシウムの場合、成人1日の栄養所要量は600mgとされており、国民1人あたりの平均摂取量は540mg(平成元年国民栄養調査)とやや下回っている程度であるが、様々な要因による腸管におけるカルシウムの吸収率の低下により、生体のカルシウム不足が誘引され問題視されている。高齢者に高頻度に発症する骨粗鬆症はカルシウムの摂取と排泄のバランスが乱れることが主たる要因であり、寝たきり老人を増加させる主たる原因である。骨粗鬆症は特に閉経後の女性に多く発症するが、女性ホルモン(エストロジェン)の分泌が著しく低下し小腸からのカルシウムの吸収率が低下することも原因の一つと考えられている。骨粗鬆症患者は年々増加しており、現在500万人と言われている。
【0004】
鉄の場合、成人1日の栄養所要量は11mg(男性10mg、女性12mg)とされており、国民1人あたりの平均摂取量は11.4mg(平成元年国民栄養調査)と男女平均値としてようやく栄養所要量に達している程度であり、特に有経女性の鉄不足が問題である。有経女性は、1日あたり成人男性の約2倍の鉄の排泄を行っている計算になり、生体の鉄のバランスが負に傾きやすい。有経女性の40〜60%が鉄欠乏性貧血であるという調査結果もある。
【0005】
一般にミネラルが吸収されるには可溶性の状態で小腸管腔内に存在することが必要であるとされている。
【0006】
カルシウムの場合、小腸上部でのビタミンDや各種ホルモンの調節により制御されているカルシウムが濃度勾配にさからって吸収される能動輸送の経路と、小腸下部でのカルシウムが濃度勾配に従って吸収される受動輸送の経路の2通りがある。ところが、食物摂取時のような腸管内にカルシウムが多量に存在する場合には圧倒的に小腸下部からの受動輸送の割合が高く、能動輸送がカルシウム濃度が増加してもある量以上は増加しないのに比べ、受動輸送は腸管内の可溶性カルシウム濃度が増加すれば、それだけ輸送能も高まる(Am. J. Physiol., 240, 32, 1981)。一般に、腸管におけるカルシウムの吸収率は10〜50%と言われている。
【0007】
鉄は主に小腸上部吸収されるが、ヘム鉄と非ヘム鉄の2通りの吸収経路がある。ヘム鉄が鉄ーポルフィリン複合体のまま吸収されるのに対し、非ヘム鉄は可溶化されイオン状態に遊離されて初めて吸収される(Gastroent., 58, 647, 1971)。鉄の吸収率は非常に低く、ヘム鉄で10%〜20%、非ヘム鉄で1%〜5%にすぎない。
【0008】
小腸での可溶性カルシウム濃度および可溶性鉄濃度を増加させることにより、カルシウムおよび鉄の吸収促進効果を示す素材に牛乳タンパク質のカゼインの酵素分解物であるカゼインホスホペプチド(CPP)がある(特公平02−7616号公報、特開昭59−162843号公報)。CPPは含有するホスホセリンのリン酸基、酸性アミノ酸のカルボキシル基によるキレート作用により、カルシウム、鉄が可溶化状態に保たれ、小腸内の可溶性カルシウム濃度、可溶性鉄濃度を増加させることにより吸収促進作用をもつといわれているが、CPPを工業的に生成するには酵素処理等の複雑な工程を経る必要があり、しかも食品に添加した場合に小腸内を移行する過程でさらに分解が進み、ミネラルの可溶化能が消失する可能性がある。
【0009】
カゼインをそのまま食した場合にも、腸管内で酵素分解されCPPが生成するため、ミネラルの吸収が促進される。しかし、この場合にも腸管内で分解が進行し、ミネラルの可溶化能が消失する場合があり、またカゼインは溶解性が悪い(特に酸性領域)などの食品加工上の欠点がある。
【0010】
また、無機のミネラル塩とかミネラル粉末を用いて、食品のミネラルを強化する場合もあるが、他の共存する物質と不溶性の塩を作る可能性があり、また多量に一種のミネラルを摂取することは他のミネラルの吸収を阻害することになり、ミネラルの生体内利用性はあまり改善されない。例えば、カルシウムを多量に摂取すると鉄の吸収が阻害される。さらに、食品にミネラルを強化すると、ミネラルに由来するえぐ味、渋味、から味により食品の味が損なわれるという欠点がある。
【0011】
納豆の粘質物中に存在する、あるいは納豆菌等のバチルス属が菌体外に分泌するポリ−γ−グルタミン酸及び合成のポリ−α−グルタミン酸も小腸下部でミネラルの可溶化効果を持ち、ミネラルの腸管吸収を促進する(特開平03−30648号公報)。しかし、食品素材として用いる場合、ポリ−α−グルタミン酸は合成のため安全性に問題がある、生成工程に手間がかかる、またCPPと同様腸管内を移行する間にプロテアーゼにより分解される可能性がある。納豆粘質物中のポリ−γ−グルタミン酸あるいは納豆菌等のバチルス属が通常の培養条件で分泌するポリ−γ−グルタミン酸は粘性が高いため、調製時及び食品加工処理時に手間がかかる等の欠点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
処理工程が比較的簡便であり、溶解性良好で食品加工に適し、はば広く食品に利用でき、かつ小腸内で活性を保持している成分を開発し、これを用いてミネラル吸収促進効果をもち、さらには強化したミネラルの異味がマスクされている組成物を開発することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明者らはポリ−α−グルタミン酸はα結合なのでプロテアーゼに分解される可能性があるが、ポリ−γ−グルタミン酸はγ結合なのでプロテアーゼにより分解されないこと、納豆粘質物中に存在する、あるいは通常の培養条件で納豆菌等が分泌するポリ−γ−グルタミン酸を低分子化すると粘度が低下し、調製処理及び食品加工処理等が容易になることより、分子量1×104〜3×105のポリ−γ−グルタミン酸分解物が小腸内でミネラルを可溶化し、食品に添加しても小腸内でミネラル可溶化活性を失わないことを見いだした。さらに、ポリ−γ−グルタミン酸が食品にまろやかな味を付与し、強化したミネラルのえぐ味、渋味、から味をマスクすることを見いだし、更に開発研究を行った結果、ミネラルを体内に補給し易い形の組成物の開発に成功し、本発明を完成させたものである。
【0014】
すなわち、本発明はミネラル及びミネラル吸収促進材としてポリ−γ−グルタミン酸の分解物を含有する組成物、及びこれを含有することにより、ミネラルの吸収促進効果をもつ飲食物に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるミネラルとしてカルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅などの生体必須ミネラルの一部あるいは全部が対象となる。また、用いるミネラルの形態には制限はないが、例えばカルシウムでは、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなどの化学的合成品の食品添加物、及び貝カルシウム、骨カルシウムなどの天然カルシウムが対象となる。鉄では、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄などの化学的合成品の食品添加物、及びヘム鉄などの天然鉄が対象となる。
【0016】
本発明に用いられるポリ−γ−グルタミン酸は納豆の粘質物中のポリ−γ−グルタミン酸を抽出して用いてもよく、納豆菌等のバチリス属の菌体外に分泌するポリ−γ−グルタミン酸を用いてもよい。また、納豆粘質物中の、あるいは納豆菌が同時に分泌するレバンを含んでいても何ら支障がない。
【0017】
当該分子量のポリ−γ−グルタミン酸を生成するには、当該分子量より大きいポリ−γ−グルタミン酸を酸あるいはγ結合を分解する腸内には存在しない特殊な酵素により低分子化する方法と、納豆菌等の培養により当該分子量のポリ−γ−グルタミン酸を分泌させる方法があるが、そのどちらのポリ−γ−グルタミン酸を用いても何ら影響しない。
【0018】
ポリ−γ−グルタミン酸は一般にナトリウム塩として得られるが、他の塩あるいはフリーのポリグルタミン酸を用いても何ら影響しない。
【0019】
当組成物を飲食物として用いる場合、請求項4に記載の調味料としては、例えば、だしの素やめんつゆといった和風調味料、食酢、みりん、味噌、ウスターソース、中華風合わせ調味料、レトルト液体調味料、洋風スープストック、バスタソース、カレールー、レトルトカレー、味付けから揚げ粉やフライドチキン用調味料、また、炊飯米にかけるふりかけやお茶漬けの素、などあらゆる調味料が挙げられる。
【0020】
当組成物を飲食物として用いる場合、請求項5に記載の畜肉・魚肉加工食品としては、例えば、ハンバーグ、ミートボール、ソーセージ、ハム、かまぼこ、ちくわ、つみれ、魚肉ソーセージ、及びコンビーフ、肉の大和煮や魚の水煮、油漬といった缶詰食品、が挙げられ、冷蔵で流通するものでも冷凍食品でも支障はない。
【0021】
当組成物を飲食物として用いる場合、請求項6に記載の油脂加工品としては、全卵、凍結保存卵、卵黄・卵白粉末を含まないあらゆる油脂加工品があり、例えば、ドレッシング、バタークリーム、動物性および植物性クリーム、ショートニング、マーガリン、チョコレートが挙げられる。
【0022】
当組成物を飲食物として用いる場合、請求項7に記載の乳製品としては、例えば、チーズ、チーズ加工品、ヨーグルト、ホワイトソース及びホワイトソースを利用した食品であるクリームコロッケ、グラタンなどが挙げられる。
【0023】
当組成物を飲食物として用いる場合、請求項8に記載のポリフェノール非含有飲料またはスープとは、果汁、コーヒー、紅茶、ブドウ酒などに由来するポリフェノールを含まないものである。例えば、飲料としては、乳飲料、乳酸菌飲料、豆乳、スポーツドリンク、栄養ドリンク、サイダーなどの清涼飲料が挙げられる。スープとしては、豆粒・穀粒を含まない均一なポタージュ、コンソメスープ、中華風スープ、が挙げられ、易吸収性ミネラル含有組成物はその液体部分に含まれる。
【0024】
当組成物を飲食物として用いる場合、請求項9に記載の菓子類としては、クッキー、パイなどのいわゆるベーカリー食品でないもので、例えば、飴菓子、キャラメル、その他の錠菓、羊羹、ゼラチンまたはペクチンを使用したゼリー類、寒天を使用したデザートなどが挙げられる。
【0025】
当組成物を飲食物として用いる場合、請求項10に記載のシリアル食品としては、例えば、コーンフレーク、玄米フレークなどが挙げられる。
【0026】
当組成物を飲食物として用いる場合、請求項11に記載の粉利用食品としては、いわゆるベーカリー食品及び麺類でないあらゆる粉利用食品があり、例えば、お好み焼きミックスや蒸しパンミックスなどのプレミックス粉、もち、くずきり、春雨、ビーフン、白玉粉・上新粉およびそれらを用いた和菓子が挙げられる。
【0027】
次に本発明におけるポリ−γ−グルタミン酸の添加量について説明する。ポリ−γ−グルタミン酸の添加割合の制限はないが、一般に乾燥食品には0.1〜10%程度、飲料の場合は0.01〜5%程度、製品に添加すればよい。尚、同時にカルシウム、鉄などのミネラルをあわせ添加強化するが、カルシウムは、飲料形態なら30mg%〜300mg%、好ましくは100mg%〜200mg%、ゲル状、固形状及び粉粒状形態なら50mg%〜3,000mg%、好ましくは100mg%〜1,000mg%、鉄は、飲料形態なら0.5mg%〜100mg%、好ましくは1mg%〜40mg%、ゲル状、固形状及び粉粒状形態なら1mg%〜1,000mg%、好ましくは2mg%〜500mg%添加する。
【0028】
当組成物を食品に添加すると食品にまろやかな味を付与し、強化したミネラルのえぐ味、渋味、から味をマスクすることができるため、上記載の量のミネラルを食品に強化しても、何ら食品の味に影響を与えない。
【0029】
【実施例】
実施例1:ポリ−γ−グルタミン酸の調製例
市販の納豆500gに蒸留水1,500ml加え、よく洗浄し粘質物を溶解させた後、濾布により豆の部分を除去した。粘稠な濾液を遠心分離し、上清を塩酸でpH2.0に調整した。遠心分離で沈澱を除いた後、塩化ナトリウムを150g加えてポリ−γ−グルタミン酸を沈澱させた。遠心分離により沈澱を集めた後、水酸化ナトリウム溶液で中和溶解した。その後対水透析、凍結乾燥し、ポリ−γ−グルタミン酸をナトリウム塩として2g得た。調製したポリ−γ−グルタミン酸の分子量を低角度レーザー光散乱計(LALLS;東ソーLS8000)で測定した結果、9.27×105であった。
【0030】
実施例2:ポリ−α,γ−グルタミン酸の各種プロテアーゼによる分解性
合成のポリ−α−グルタミン酸(分子量80,000)及び実施例1で調製したポリ−γ−グルタミン酸の各種プロテアーゼによる分解性を調べた結果を下記第1表に示す。酵素はポリグルタミン酸1mgあたり10U加え、37℃で24時間反応させた。ゲル濾過HPLCにおけるポリグルタミン酸のピークが酵素を作用させた後、低分子側に移動するか、あるいは消失する場合をもって、分解されたと判断した。
【0031】
【表1】
【0032】
実施例3:ポリ−γ−グルタミン酸の低分子化の例
実施例1で調製したポリ−γ−グルタミン酸を2mg/mlの濃度に溶解し、塩酸でpH1に調製し、50℃あるいは70℃で30分〜6時間加熱した。加熱後、室温にもどした後、水酸化ナトリウム溶液で中和し、対水透析、凍結乾燥した。得られたポリ−γ−グルタミン酸の分解物の分子量をLALLSにより測定した結果を下記第2表に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
実施例4:カルシウム可溶化試験例
実施例3で調製した各種ポリ−γ−グルタミン酸溶液(1mg/ml)の0.5mlと10mM塩化カルシウム溶液0.5mlを予め混合し、その後 pH7、pH8の20mM燐酸緩衝液1.0mlを加え、37℃で2時間インキュベーションした後、遠心分離した。生じた燐酸カルシウムの沈澱を除去し、上清のカルシウム濃度を原子吸光法により測定し、残存しているカルシウムを可溶性カルシウムとして残存率を求めた。比較対照として、蒸留水を用い同一試験を行った。その結果を下記第3表及び後掲図1(pH8の結果)に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
実施例5:粘度測定例
実施例3で調製した各種ポリ−γ−グルタミン酸溶液(2mg/ml、20mMトリス塩酸緩衝液、pH7.2)の粘度を東洋精機(株)製のディジタル回転粘度計を用いて測定した。温度は23℃において、回転数は60rpm(ローター;HM−1)で行った。その結果を下記第4表及び図1に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
実施例6:カルシウムの異味マスキングの例
塩化カルシウム溶液(0.5%、1.0%、2.0%)に実施例3で調製したポリ−γ−グルタミン酸分解物を0.25%、0.5%添加した場合の、カルシウムの渋味、から味のマスキング効果を4人のパネルにより測定した。評価は渋味、から味をすごく感じるを4点、感じるを3点、かすかに感じるを2点、感じないを1点として行った。4人の平均の結果を下記第5表に示す。
【0039】
【表5】
【0040】
実施例7:鉄の異味マスキングの例
硫酸第一鉄溶液(0.1%、0.5%、1.0%)に実施例3で調製したポリ−γ−グルタミン酸分解物を0.25%、0.5%添加した場合の、鉄の渋味、異味(鉄独特の血液様の味)のマスキング効果を4人のパネルにより測定した。評価は渋味、異味をすごく感じるを4点、感じるを3点、かすかに感じるを2点、感じないを1点として行った。4人の平均の結果を下記第6表に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
以上の結果により分子量1×104〜3×105のポリ−γ−グルタミン酸は、カルシウムの可溶化能を有し、低粘度でしかもプロテアーゼ耐性であること、さらにカルシウム、鉄の異味をマスキングすることが明らかになった。小腸内でもカルシウムの可溶化能を有していることは特開平03−30648号公報から明らかであり、これらのことより、分子量1×104〜3×105のポリ−γ−グルタミン酸は小腸におけるカルシウムの吸収を促進する。
【0043】
カルシウム以外のミネラルについてもポリ−γ−グルタミン酸はやはり同様の小腸内可溶化促進作用をもち、小腸におけるその吸収を促進する。
【0044】
実施例8:鉄の吸収実験例
離乳直後のウィスター系雄ラット(体重約50g)を鉄欠乏試料(20%カゼイン食、鉄含量3ppm)で3週間予備飼育した。3週間後にラット尾静脈より血液を採取し、ヘモグロビン値が7g/dl以下のラットを貧血ラットとし、以下の実験に供した。貧血ラットを4群(1群8匹)に分け、さらに前記鉄欠乏飼料を摂取させ、さらに6週間飼育した(一群のみ標準飼料(鉄含量150ppm)を与えた)。また、ラットには下記第7表に示した試料を1mlの蒸留水に溶解させたものを毎朝経口的に与えた。貧血の改善効果は1週間ごとに尾静脈より血液を採取し、ヘモグロビン値及びヘマトクリット値を測定することにより判断した。結果を下記第8表及び後掲図2及び図3に示す。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
以上のように、ポリグルタミン酸が鉄の吸収を促進するため、3群の貧血の改善効果が標準飼料を与えた4群と同等レベルまで回復することが証明された。
【0048】
実施例9:飲食品への適用例
次に、実施例3で調製したポリ−γ−グルタミン酸分解物を添加した飲食物及びその官能検査の結果について示す。
【0049】
[9−1 カレー]
材料の配合を下記第9表に示す。
【0050】
【表9】
【0051】
フライパンにバターを熱し小麦粉を入れてブラウンルーをつくり、カレー粉、ポリ−γ−グルタミン酸、炭酸カルシウムを加えて少し炒めてカレールウをつくった。肉、野菜を一口大に切り、バターで炒めた後水を加えて煮込む。ここに、先につくっておいたカレールウを徐々に加え、弱火で30分間煮込む。こうしてできあがったカレーをレトルトパックに分注し、レトルト殺菌した。このカレーは一食当たり約200mgのカルシウムを含んでおり、ポリ−γ−グルタミン酸と共に摂取することで、カルシウムが効率よく体内に吸収されるという特徴をもったものであった。また、ポリ−γ−グルタミン酸、炭酸カルシウムを含まない対照品と比較しても、味、食感、香りとも差がなかった。
【0052】
[9−2 ハンバーグ]
材料の配合を下記第10表に示す。
【0053】
【表10】
【0054】
上記配合に従い、チョッピング処理した牛肉、豚肉、ミジン切り後炒め処理した玉ねぎその他の副原料をミキサーでよく混和した後10等分して成形し、−18℃で凍結、冷凍生ハンバーグを調製した。得られたハンバーグは、ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウムを0.05%(重量%)含み、また、一個当たりのカルシウム含量は200mgとなった。これはカルシウムの一日平均所要量の約3分の1に相当し、カルシウムの吸収を促進するポリ−γ−グルタミン酸と共に摂取されるため、効率よく体内に吸収されると考えられた。冷凍生ハンバーグを加熱調理し、ポリ−γ−グルタミン酸、炭酸カルシウムを含まない対照品と比較したが、食感、味、臭いとも対照品と差がなく、美味であった。
【0055】
[9−3 かまぼこ]
材料の配合を下記第11表に示す。
【0056】
【表11】
【0057】
すり身、その他を混合し、らいかいし、成形、加熱してかまぼこを得た。得られたかまぼこは、カルシウムが豊富で吸収されやすいという特徴をもっていた。
【0058】
[9−4 クリームコロッケ]
材料の配合を下記第12表に示す。
【0059】
【表12】
【0060】
バター100gに小麦粉100gを加えて撹拌加熱してルウをつくり、さらに、その他の材料を加えて加熱混練し、ホワイトソースをつくり、常温まで冷却した。この具にコロモ付けをして加熱油中に投じ、表面がキツネ色になるまで油揚した。コロッケ一個(約30g)当たりに牛乳由来のカルシウム約15mgを含み、かつポリ−γ−グルタミン酸も含んでいるので、摂取したカルシウムは効率良く体内に吸収されると考えられた。ポリ−γ−グルタミン酸を含まない対照品と比較しても、食感、味、臭いとも遜色なかった。
【0061】
[9−5 ポタージュスープ]
ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム1gをなめらかなポタージュスープ(野菜、ポテトなどを裏ごししたもの)に0.05%添加し、2%のメチルセルロース、及びカルシウム含量が0.075%となるよう骨カルシウム(焼成カルシウム)を加え、噴射式造粒法を用いて顆粒のポタージュスープの素を作った。このポタージュスープの素を熱湯で溶解すると、ポタージュスープとなり、一人分(120ml)のスープ中90mgのカルシウムが含まれていて、ポリ−γ−グルタミン酸と共に摂取する事で、カルシウムの吸収性が優れているという特徴を持っていた。また、ポリ−γ−グルタミン酸と骨カルシウムを含まない対照品と比較して、なめらかさ、味、臭いとも劣らなかった。
【0062】
[9−6 羊羹]
寒天2.6gを浸漬し充分吸水した後、水洗脱水し、細かくちぎって鍋に入れ水72ml加えて加熱混合し、寒天を完全に溶解させた。さらに砂糖180g、ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム6g、硫酸第一鉄10gを加えて加熱し沸騰させ、篩でこした後濾液を再び沸騰させ、生あんを110g加えて練り上げた。温かいうちに缶などの型枠にながしこんで放冷し、凝固させ羊羹を調製した。この羊羹は、鉄の異味が感じられなかった。
【0063】
[9−7 キャンデー]
材料の配合を下記第13表に示す。
【0064】
【表13】
【0065】
厚手の銅鍋に砂糖と水を入れ、沸騰したら水飴を加え150℃位まで煮つめた。ポリ−γ−グルタミン酸とグルコン酸カルシウムを加えよく混合した後、火からおろして香料を加えた。これを成形・冷却し、ハードキャンデーを得た。このキャンデーは、カルシウムとポリ−γ−グルタミン酸を含み、摂取したカルシウムは効率よく体内に吸収されると考えられた。
【0066】
[9−8 牛乳ゼリー]
材料の配合を下記第14表に示す。
【0067】
【表14】
【0068】
粉ゼラチンは大匙4杯の水にふり入れて膨潤させておく。牛乳に砂糖とゼラチンを加えて火にかけ、軽く混ぜながら溶かし、煮立つ前に火を止めてバニラエッセンスを加えた。型に流し込み冷却して牛乳ゼリーを得た。この牛乳ゼリーは、牛乳由来のカルシウム分も豊富で、ポリ−γ−グルタミン酸と共に摂取されることから、カルシウムが効率よく体内に吸収されると考えられた。
【0069】
[9−9 串団子]
材料の配合を下記第15表に示す。
【0070】
【表15】
【0071】
上記配合にぬるま湯を加えながら、よくこねた。この団子のたねをまとめて、蒸し器に入れ、強火で20分間蒸した。蒸し上がったら熱いうちに取り出して、水につけて冷ました後、ぬれぶきんにとってよくもんだ。一口大に成形し、串にさした後、砂糖、しょうゆから成るたれ、あるいはこしあんなどをつけ串団子を得た。この串団子は、ポリ−γ−グルタミン酸を含んでいるので摂取したカルシウムが効率よく体内に吸収されることが期待された。
【0072】
[9−10 お好み焼き]
小麦粉を主体とした、お好み焼きプレミックス粉500gにポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム2.5gと骨カルシウム5.0gを加えてよく混合した。水、卵、野菜、肉などを加えて溶いた後、よく熱して油を引いた鉄板上で焼いてお好み焼きを得た。このお好み焼きは、カルシウムと共にポリ−γ−グルタミン酸を含んでいるので、摂取したカルシウムは効率よく体内に吸収されると考えられた。
【0073】
【発明の効果】
本発明はミネラル及びミネラル吸収促進材を含有する組成物及びこれを含有する飲食品に関し、これを食することにより腸管内に可溶性のミネラルが増加することによってミネラルの吸収が促進され、成長期の児童のミネラルの補強、老年期の骨粗鬆症に代表される骨疾患の予防、さらに健康人においても高タンパク食、高燐酸食などによっておこるミネラルのアンバランスの防止などの効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリ−γ−グルタミン酸分子量(MW)、カルシウム濃度、ポリ−γ−グルタミン酸溶液粘度の関係を示す。
【図2】実施例8のヘモグロビン値測定結果を示す。
【図3】実施例8のヘマトクリット値測定結果を示す。
Claims (2)
- 納豆粘質物から抽出され又はバチルス属の菌体外に分泌され、かつ、低角度レーザー光散乱計で測定した分子量が3×105を超えるポリ−γ−グルタミン酸を、酸又は酵素により、当該測定による分子量が1×104〜3×105にまで分解したものと、カルシウムを30〜300mg%及び/又は鉄を0.5〜100mg%とを含有してなることを特徴とする飲料。
- 納豆粘質物から抽出され又はバチルス属の菌体外に分泌され、かつ、低角度レーザー光散乱計で測定した分子量が3×105を超えるポリ−γ−グルタミン酸を、酸又は酵素により、当該測定による分子量が1×104〜3×105にまで分解したものと、カルシウムを50〜3,000mg%及び/又は鉄を1〜1,000mg%とを含有してなることを特徴とするゲル状、固形状又は粉粒状食品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000391213A JP3551149B2 (ja) | 1992-03-24 | 2000-12-22 | 易吸収性ミネラル含有組成物及びそれを含有する飲食品 |
Applications Claiming Priority (3)
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