JP2898566B2 - 地盤改良装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、固化材と土砂とを現位
置で攪拌・混合することにより地盤中に固化改良体を造
成する混合処理工法に用いられる地盤改良装置に係り、
特に詳しくはその攪拌ロッド構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】たとえば、埋立地等の地盤改良、道路・
土地造成工事における地盤改良などにおいては、主とし
て石灰やセメント系の化学的固化材を土に添加し強制的
に攪拌・混合することにより固化させ地盤強度を高め
る、混合処理工法がその有用性から多く採用されてい
る。

【０００３】前記混合処理工法は、改良地盤の形状、強
度に比較的自由性があり、水深条件や地盤条件等の異な
る様々な地盤に適用でき、しかも経済的であり、また地
盤中に加えるセメントスラリーの量が少なく、これに伴
う盛上り土量も少ないため、既設構造物に対する影響が
少ない、さらに施工中の振動、騒音が少ないため、都市
部の地盤改良に適した工法であるなど種々の利点を有す
る。

【０００４】前記混合処理工法に用いられる地盤改良装
置の攪拌翼構造を図７に基づいて説明すると、攪拌ロッ
ドは互いに逆回転する内管７と外管８とからなり、前記
内管７先端に掘削刃２を、前記外管８に攪拌翼３、３を
設けた構造をなしており、前記掘削刃２は回転径の小さ
い先端掘削刃４とその上段側に所定間隔離して配置され
た回転径の大きい攪拌兼用掘削刃５とから構成され、こ
の攪拌兼用掘削刃５は攪拌羽根としての機能をも持たせ
るため、左側翼５ａと右側翼５ｂとからなるトンボ状に
形成されている。また、前記外管８に設けられた攪拌翼
３も、前記攪拌兼用掘削刃５と同様に、左側翼３ａと右
側翼３ｂの二翼から構成され、複数の攪拌翼３，３はそ
れぞれ上下方向に所定間隔離し、平面的に９０度ずらし
て複数段に配置してあるものが一般的である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前述のように、攪拌ロ
ッドを内管と外管からなる二重管構造として構成し、掘
削刃と攪拌翼とを互い逆方向に回転させることにより、
共回り現象が抑えられるようになり、掘削刃と攪拌翼と
を同一方向に回転させる場合に比べると、格段に掘削土
と固化材とを効果的に混合できるようになった。

【０００６】しかしながら、従来の攪拌翼構造の場合に
は、上下方向に適宜の間隔で設けられた放射方向（水平
方向）に延びるバー状の攪拌翼によって土の攪拌を行う
ものであり、その攪拌メカニズムは改良土砂を水平方向
にせん断することにより攪拌を行わせるものである。し
たがって、分断されずに水平方向に長い塊状のまま掘削
土が残存する場合もあり、いまだ十分な攪拌・混合が行
われているとは言い難い。特に、対象土が粘性土である
場合にはその傾向が顕著である。

【０００７】他方、近年、図８に示されるように、内管
７および外管８の下部に、小攪拌翼体３１を大攪拌翼体
３０の内側に位置せしめた二重リング構造とし、かつ互
いに反対方向に回転するようにした攪拌翼が開発されて
いる。

【０００８】この場合には、攪拌土砂の均一な攪拌が望
めるものの、従来一般の攪拌翼と翼構造を完全に異に
し、全く新規に製作せざるを得ないものとなっている。

【０００９】そこで、本発明の課題は、従来の攪拌翼構
造に簡単な変更を加えるのみで、掘削土と固化材とを均
一に攪拌・混合することができ、固結強度にバラツキの
ない良好な改良体を造成できる地盤改良装置を提供する
ことにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明は、攪拌ロッドの先方部分に放射方向に延出
する攪拌翼を備えた地盤改良装置において、少なくとも
前記攪拌翼の１つに対して、略ロッド軸方向に沿って延
びる縦剪断用補助翼を取り付けたことを特徴とするもの
である。

【００１１】この場合、前記縦剪断用補助翼を取付ける
攪拌翼は、最下段の攪拌翼または最下段の攪拌翼を含む
組合せとすることが望ましい。また、この縦剪断用補助
翼の端面を刃状とし、さらには平面的配向方向を接線方
向とすることにより、剪断抵抗を少なくして効果的に土
塊を縦方向に切断することができる。

【００１２】また、前記攪拌ロッドを内管と外管からな
る二重管構造のロッド体とし、これら内管と外管とを互
いに逆方向に回転させることにより、共回りを起こさな
い状態で土砂を攪拌・混合することができる。

【００１３】さらに、前記内管先端に掘削刃を設け、こ
の掘削刃の上部側に位置する外管先端部分にロッド軸方
向に段を成して複数の攪拌翼を設け、かつ前記掘削刃を
先端掘削刃とその上部側に位置する攪拌兼用掘削刃とか
ら構成するとともに、最下段の前記攪拌翼にロッド軸方
向先端側に向けた縦剪断用補助翼を複数設けることもで
きる。

【００１４】

【作用】本発明においては、攪拌翼に対して、略ロッド
軸方向に沿って延びる縦剪断用補助翼を取り付ける。従
来の攪拌翼の場合には主に水平方向の剪断により掘削土
と固化材とが攪拌・混合されていたが、本発明の場合に
は、攪拌翼による水平方向の剪断に加え、縦剪断用攪拌
翼により縦方向に掘削土を剪断するため、掘削土と固化
材とを効果的に攪拌・混合することができるようにな
り、得られる改良体も強度的にばらつきのない良好な改
良体とすることができる。この場合、端面を刃状とし、
平面的配向方向を接線方向とすることにより、従来切断
することができなかった粘土質の掘削土も容易に細かく
切断することができるようになる。

【００１５】また、本発明の場合には攪拌翼に対して縦
剪断用攪拌翼を取付けるだけでよいため、製作コストが
安く、手間も掛からず、簡単に変更を行うことができ
る。

【００１６】

【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて詳述する。
混合処理工法に使用される地盤改良装置は、図１に示さ
れるように、ベースマシン２３に対して立設状態で固定
されたリーダー２１上に、リーダー２１に沿って移動可
能とされるパワースイベル２０が搭載され、減速機を介
して攪拌ロッド１が連結されている。

【００１７】前記攪拌ロッド１は、内管７と外管８とか
らなる二重管構造のロッド体であり、これら内管７と外
管８とは前記減速機の変速機構により、一方が右回りに
他方が左回りというように正逆方向に夫々回転するよう
になっている。

【００１８】前記攪拌ロッド１の先端部においては、図
２に示されるように、前記内管７は外管８の先端よりも
若干先方に突出して構成され、内管７の先端部に掘削刃
２が設けられている。前記掘削刃２は、最先端部に固定
された先端掘削刃４とこの先端掘削刃４の上方側に固定
された攪拌兼用掘削刃５とから構成され、前記先端掘削
刃４は内管７を中心にして対称的に設けられた一対の左
側掘削刃４ａと右側掘削刃４ｂとからなり、これら左・
右側掘削刃４ａ、４ｂの下側には掘削ビット１０が複数
設けられている。前記左・右側掘削刃４ａ、４ｂはそれ
ぞれ所定角度だけ傾斜させて形成されており、掘削ビッ
ト１０、１０…の刃先が地盤に対し所定の角度で進入す
るように取り付けてある。この場合に、前記左・右側掘
削刃４ａ、４ｂの傾斜角度としては、８０〜９５°にす
るのが望ましい。また内管７の最先端部には、固化材吐
出口９が形成され、セメント系、石灰系の粉体または液
体の固化材が吐出されるようになっている。

【００１９】また、前記攪拌兼用掘削刃５も同様に、内
管７を中心にして対称的に設けられた一対の左側攪拌兼
用掘削刃５ａと右側攪拌兼用掘削刃５ｂとからなり、こ
れらの両攪拌兼用掘削刃５ａ、５ｂは前記掘削刃４ａ、
４ｂの取付け位置に対し平面的に９０°ずらした位置に
固定されている。また、両攪拌兼用掘削刃５ａ、５ｂの
下側には、掘削ビット１０が複数設けられており、攪拌
兼用掘削刃５による掘削径は、ほぼ後述の攪拌翼３Ａと
同等とされている。また、前記左・右側攪拌兼用掘削刃
５ａ、５ｂも前記先端掘削刃４の場合と同様に、それぞ
れ所定角度だけ傾斜させて形成されており、先端掘削ビ
ット１０、１０…の刃先が地盤に対し所定の角度で進入
するように取り付けてある。この場合に、前記左・右側
攪拌兼用掘削刃５ａ、５ｂの傾斜角度としては、４０〜
５０°にするのが望ましい。

【００２０】また、前記先端掘削刃４と攪拌兼用掘削刃
５とは、これらを繋ぐ連続刃６により螺旋状に連続化さ
れている。前記連続刃６は、図４に示されるように、前
記左側掘削刃４ａの上端辺と左側攪拌兼用掘削刃５ａの
下端辺とを螺旋状に連続させる左側連続刃６ａと、前記
右側掘削刃４ｂの上端辺と右側攪拌兼用掘削刃５ｂの下
端辺とを螺旋状に連続させる右側連続刃６ｂとからな
り、先端掘削刃４によって掘り起こされた土砂が前記連
続刃６によって上方に移動され、さらに攪拌兼用掘削刃
５により攪拌されるとともに、先端掘削刃４より外方に
位置する部分については、前記攪拌兼用掘削刃５により
最初に掘削が行われるようになっている。この場合、前
記連続刃６の傾斜角度としては２０〜３０°とするのが
望ましい。

【００２１】他方、外管８の先端付近には、図示の例で
は上下方向に３段配置により攪拌翼３Ａ〜３Ｃが設けら
れている。これら各攪拌翼３Ａ〜３Ｃは、外管８を中心
にして対称的に設けられた一対の攪拌羽根３ａと攪拌羽
根３ｂとからなる。これら攪拌翼３Ｂ、３Ｃの攪拌羽根
３ａ、３ｂの上側には掘削ビット１０が適宜の位置に設
けられ、攪拌ロッド１の引き下げ時に掘進用として利用
される。また、各攪拌翼３Ａ〜３Ｃのうち、少なくとも
１つを、図示の例では攪拌翼３Ｃを他の攪拌翼３Ａ、３
Ｂよりも短くしている。そうすることにより、軸心側の
攪拌性能を向上させることができるとともに、攪拌ロッ
ド１の引上げ時の抵抗を低減することもできる。また、
前記攪拌羽根３ａ、３ｂはそれぞれ所定角度だけ傾斜さ
せて形成されており、掘削ビット１０の刃先が地盤に所
定の角度で進入するように取り付けてある。この場合、
前記攪拌羽根３ａ、３ｂの傾斜角度としては２５〜３５
°にするのが望ましい。また、各攪拌翼３Ａ〜３Ｃは、
平面的に視て９０°づつずらして配置されている。前記
攪拌翼は、本例では３段配置の例を示したが、１段配置
であってもよいし、また４段以上配置されることでもよ
い。また、１段当りに形成される攪拌羽根の数もたとえ
ば３翼、４翼とすることもできる。なお、攪拌羽根３
ａ、３ｂに取付けられた掘削ビット１０は省略すること
ができる。

【００２２】本実施例においては、掘削土を縦方向にも
剪断するべく、前記攪拌翼３Ａに対し、複数の縦剪断用
補助翼１１が垂設されている。この縦剪断用補助翼１１
は、剪断面を大きく確保するように下側の攪拌兼用掘削
刃５と接触しない範囲でなるだけ長くして形成するのが
望ましい。通常、前記縦剪断用補助翼１１の長さとして
は、少なくとも１０cm以上、好ましくは２０cm以上であ
ることが望ましい。また、図５に示されるように、前記
縦剪断用補助翼１１の回転方向側の端面１１ａを刃状に
形成し剪断抵抗を小さくすることが望ましい。また、縦
剪断用補助翼１１は、図３に示されるように、平面的に
配向方向を接線方向として配置するのが望ましい。接線
方向に対して傾斜させて配置すると、掘削土を剪断する
際に攪拌ロッド１の求心方向または遠心方向に分力を受
けることになり軸曲がりの原因となるため、接線方向に
向けて配置することにより前記分力をほとんど受けない
で掘削土を効果的に切断することができる。

【００２３】なお、本実施例においては、最下段の攪拌
翼３Ａに対してのみ前記縦剪断用補助翼１１を設けた
が、他の攪拌翼３Ｂ、３Ｃに対しても設けることもでき
る。また、全攪拌翼３Ａ〜３Ｃの内、任意に選定した攪
拌翼に対して設けることでもよい。

【００２４】以上、内管７と外管８とが正逆方向にそれ
ぞれ回転する二重管タイプの攪拌翼構造について説明し
たが、本発明は正逆回転機構を有しない単管ロッドタイ
プの攪拌翼に対しても全く同様に適用することができ
る。

【００２５】次いで、前述した地盤改良装置による改良
手順について図６に基づいて説明すると、図６(A) に示
すように、攪拌ロッド１先端の掘削刃２を所定位置にセ
ットした後、パワースイベル２０の駆動により攪拌ロッ
ド１を貫入させ、図６(B) に示すように、改良部の開始
位置まで空掘りする。なお、ここまでの貫入は先端の固
化材吐出口９からは固化材は吐出させずに貫入を行う。

【００２６】次に、改良開始位置からセメント系または
石灰系の液体または粉体の固化材を内管７の吐出口９か
ら吐出させながら、先端の掘削刃２で地盤掘削を行うと
ともに、攪拌兼用掘削刃５および攪拌翼３Ａ〜３Ｃによ
り掘削土と固化材との攪拌・混合を行う。この場合、攪
拌ロッド１の下降速度としては、毎分０．３〜１．０ｍ
程度とし、ゆっくりと貫入させるのがよい。

【００２７】攪拌ロッド１が支持地盤に達したならば、
内管７および外管８の回転方向を反転切換えした後、攪
拌ロッド１を上方に引き上げる。引き上げる際にも、攪
拌兼用掘削刃５と攪拌翼３により掘削土と固化材とを攪
拌・混合しながらゆっくりと引き上げる。攪拌翼３およ
び掘削刃２の回転数は、改良する土の土質条件によって
違ってくるが、１ｍ当りの羽根切り回数が３００〜６０
０回になるように設定することが望ましい。ここで、前
記羽根切り回数とは、攪拌翼３および掘削刃２の改良部
１ｍ当りの回転数であり、攪拌翼３と掘削刃２の下降時
および上昇時の回転数をすべて合計した数値をいう。

【００２８】

【発明の効果】以上詳説のとおり、本発明によれば、従
来の攪拌翼構造に簡単な変更を加えるのみで、掘削土と
固化材とを均一に攪拌・混合することができる攪拌翼構
造とすることができ、その結果、固結強度にバラツキの
ない良好な改良体を造成することができるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】地盤改良装置の全体側面図である。

【図２】攪拌ロッドの先端部拡大図である。

【図３】図２のIII −III 線矢視図である。

【図４】図２のIV−IV線矢視図である。

【図５】他の縦剪断用攪拌翼の例を示す部分斜視図であ
る。

【図６】地盤改良要領を示す工程順序図である。

【図７】従来の攪拌翼構造の概略図である。

【図８】従来の攪拌翼構造の概略図である。

【符号の説明】

１…攪拌ロッド、２…掘削刃、３…攪拌翼、４…先端掘
削刃、５…攪拌兼用掘削刃、６…連続刃、７…内管、８
…外管、９…固化材吐出口、１０…掘削ビット、１１…
縦剪断用補助翼

フロントページの続き (72)発明者 小庄 憲弘 東京都千代田区九段北４丁目２番35号 ライト工業株式会社内 (72)発明者 内藤 真木 東京都千代田区九段北４丁目２番35号 ライト工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平２−20715（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−242013（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−154214（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) E02D 3/12 102

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】攪拌ロッドの先方部分に放射方向に延出す
   る攪拌翼を備えた地盤改良装置において、 （１）前記攪拌ロッド１は、外管８と内管７とからな
   り、かつ前記内管７は外管８の先端よりも若干先方に突
   出して構成されてなる二重管構造のロッド体であり、こ
   れら内管７と外管８とは前記減速機の変速機構により、
   一方が正逆方向にそれぞれ回転するように構成されてお
   り、 （２）前記内管の最先端部には、固化材吐出口９が形成
   され、 （３）前記内管７には掘削刃２が張り出して設けられ、
   この掘削刃２は； 前記内管７の最先端部に、前記内管を中心にして対称的
   に側方に張り出して固定された、それぞれ回転方向先端
   側に掘削ビット１０が複数設けられ、大きい傾斜角度を
   有する一対の掘削刃４ａと掘削刃４ｂとを有する先端掘
   削刃４と、 この上方にあって、前記掘削刃４ａ、４ｂの取付け位置
   に対し平面的に９０°ずらした位置に前記内管を中心に
   して対称的に側方に前記先端掘削刃４より張り出して固
   定された、それぞれ回転方向先端側に掘削ビット１０が
   複数設けられ、前記先端掘削刃４の傾斜角度より小さい
   傾斜角度を有する一対の攪拌兼用掘削刃５ａと攪拌兼用
   掘削刃５ｂとを有する攪拌兼用掘削刃５と、 前記先端掘削刃４全体と攪拌兼用掘削刃５の中間までと
   を繋ぎ螺旋状に連続化する連続刃６とを有し、 （４）前記外管８の先端付近において前記掘削刃２と隣
   接して、前記掘削刃２と反対方向に傾斜する一対の攪拌
   羽根３ａと攪拌羽根３ｂとを有する攪拌翼３Ａが、前記
   外管８を中心にして対称的に設けられ張り出して設けら
   れ、 （５）前記攪拌翼３Ａの下面に略ロッド軸方向に沿って
   延びる縦剪断用補助翼１１が取り付けられていることを
   特徴とする地盤改良装置。
2. 【請求項２】前記縦剪断用補助翼の回転方向先端がわ端
   面を刃状とする請求項１記載の地盤改良装置。
3. 【請求項３】前記縦剪断用補助翼の平面的配向方向を接
   線方向とする請求項１または２記載の地盤改良装置。