JP2892095B2 - 低損失Mn―Zn系フェライト - Google Patents

低損失Mn―Zn系フェライト

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JP2892095B2
JP2892095B2 JP2091359A JP9135990A JP2892095B2 JP 2892095 B2 JP2892095 B2 JP 2892095B2 JP 2091359 A JP2091359 A JP 2091359A JP 9135990 A JP9135990 A JP 9135990A JP 2892095 B2 JP2892095 B2 JP 2892095B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、スイッチング電源用トランス等の用途に
供して好適な低損失Mn−Zn系フェライトに関するもので
ある。
(従来の技術) Mn−Zn系フェライトは、各種通信機器、民生機器など
のトランス材として使用されている。このMn−Zn系フェ
ライトに要求される特性としては、高飽和磁束密度、高
透磁率、高抵抗および低鉄損など種々の特性が挙げられ
るが、特にこの発明で対象とするようなスイッチング電
源用トランスについては、高磁場下において低損失であ
ることがとりわけ重要とされる。
このためMn−Zn系フェライトにおいては、従来から種
々の微量成分を添加することによってその改善が試みら
れている。
例えば特開昭58−15037号公報ではNb2O5の添加によ
り、また特開昭60−132301号公報ではNb2O5,CaO,SiO2,V
2O5,ZrO2,Al2O3,SnO2,CuOおよびCaO等の添加により、現
在スイッチング周波数として標準になりつつある100kHz
における損失の改善を図っており、100kHz,200mTにおけ
る鉄損値として300〜350mW/cm3までのレベルが実現され
ている。
ところで最近では、電源の一層の小型化のために、使
用周波数が高周波化(500kHz〜1MHz)する傾向にあり、
その目的にかなうMn−Zn系フェライトの開発も進められ
ていて、例えば特開昭63−62206号公報においてはTiO2,
Ta2O5,SiO2,CaOの添加により500kHz以上の周波数での鉄
損の改善が試みられている。
(発明が解決しようとする課題) この発明は、前述したとおり、現在スイッチング電源
周波数として標準になりつつある100kHz,200mTにおける
鉄損値300〜350mW/cm3をさらに改善し、スイッチング電
源用トランスとして使用した場合において損失を大幅に
低減することができる低損失Mn−Zn系フェライトを提案
することを目的とする。
なお500kHz以上の周波数において低鉄損化をはかる技
術は、100kHz程度の周波数で200mTに達する高磁場化の
鉄損について見ると、従来材を超える低鉄損を与えるこ
とはできず、上記の特性値が得られている例はない。
たとえば前掲特開昭63−62206号公報において、その
実施例1の特性を示す第4図に開示された曲線G10につ
いて見ると、100kHz,1000ガウス(100mT)における鉄損
値は70℃で約50mW/cm3であるが、この値をもとに鉄損の
最大磁束密度依存性から100kHz,200mTにおける鉄損値を
評価すると約340〜380mW/cm3となる。
(課題を解決するための手段) すなわちこの発明の要旨構成は次のとおりである。
(1) Fe2O3:52〜54.5mol%、 MnO :33〜40mol%および ZnO :6〜13mol% を基本成分とし、この基本成分に SiO2 :0.008〜0.025wt%、 CaO :0.02〜0.15wt%、 V2O5 :0.001〜0.05wt%、 Ta2O5:0.01〜0.1wt%および TiO2 :0.05〜0.4wt% と、 酸化りん及び/又は酸化ほう素:0.003wt%以下 とを添加配合してなる低損失Mn−Zn系フェライト(第1
発明)。
(2) Fe2O3:52〜54.5mol%、 MnO :33〜40mol%および ZnO :6〜13mol% を基本成分とし、この基本成分に SiO2:0.008〜0.025wt%、 CaO :0.02〜0.15wt%、 酸化バナジウム:0.001〜0.05wt%、 酸化タンタル:0.01〜0.1wt%および 酸化チタン:0.05〜0.4wt% と、 酸化りん及び/又は酸化ほう素:0.003wt%以下 とを含有してなる低損失Mn−Zn系フェライト(第2発
明)。
(作 用) まずこの発明において、基本成分の配合割合を上記の
範囲に限定した理由について説明する。
Fe2O3:52〜54.5mol%、MnO:33〜40mol%、ZnO:6〜13mol
%; スイッチング電源用トランスの動作温度は、通常60〜
70℃であり、従って、この温度範囲で電力損失が低く、
かつ室温から動作温度を超える80〜120℃程度の温度域
まで鉄損が負の温度依存性をもつことが望ましい。この
観点からFe2O3,MnOおよびZnOの配合割合を検討した結
果、上記の範囲が得られたのである。
なおFe2O3原料としては、Fe2O3だけでなく、FeOやFe3
O4、さらには焼成によりFe2O3に変わることのできる化
合物、例えば水酸化鉄、しゅう酸鉄などを使用すること
ができる。またMnO原料としては、MnOのみならず、Mn
O2,Mn3O4さらには焼成によりMnOに変わることのできる
化合物、例えば炭酸マンガン、しゅう酸マンガンなどを
使用することができる。さらにZnO原料としては、ZnOの
みに限らず、焼成によりZnOに変わることのできる化合
物、例えば炭酸亜鉛、しゅう酸亜鉛などを使用すること
ができる。
SiO2:0.008〜0.025wt% SiO2は、CaOとの共存によって粒界の比抵抗を高め、
渦電流損の低減に有効に寄与するが、含有量が、0.008w
t%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.025wt%
を超えると焼成時に異常粒成長が起こり易く特性が不安
定になるので、0.008〜0.025wt%の範囲に限定した。
CaO:0.02〜0.15wt% CaOは、SiO2との共存下で効果的に粒界抵抗を高め、
もって低鉄損をもたらす有用成分であるが、含有量が0.
02wt%に満たないと粒界抵抗の向上効果に乏しく、一方
0.15wt%を超えると、逆に損失が大きくなるので、0.02
〜0.15wt%の範囲で含有させるものとした。
酸化バナジウム:0.001〜0.05wt% この発明において、酸化バナジウムとは、主にV2O5
指すけれども、必ずしもこの酸化物形態に限るものでは
なく、V2O5以外の酸化物を含有する場合をも含む。なお
V2O5以外の酸化物を含有する場合でも、その組成範囲は
V2O5換算で表すものとする。
さて酸化バナジウムは、粒界抵抗を高める作用をそな
え、しかもその効果はSiO2およびCaO、さらには後述す
る酸化タンタルとの共存下でより一層大きくなる。しか
しながら含有量が0.001wt%に満たない場合はその効果
が小さく、一方0.05wt%を超えて含有させると結晶粒の
異常成長が生じ、損失の大幅な増加を招く。
酸化タンタル:0.01〜0.1wt% この発明において、酸化タンタルとは主にTa2O5を指
すけれども、必ずしもこの酸化物形態に限るものではな
く、Ta2O5以外の酸化物を含有する場合をも含む。なおT
a2O5以外の酸化物を含有する場合でも、その組成範囲は
Ta2O5換算で表すものとする。
さて酸化タンタルは、酸化バナジウムと同様、SiO2,C
aOさらには酸化バナジウムとの共存下で比抵抗の増大に
有効に寄与するが、含有量が0.01wt%未満ではその効果
に乏しく、一方、0.1wt%を超えると、逆に損失の増大
を招く。
酸化チタン:0.05〜0.4wt% この発明において、酸化チタンとは、主にTiO2を指す
けれども、必ずしもこの酸化物形態に限るものではな
く、TiO2以外の酸化物を含有する場合をも含む。なおTi
O2以外の酸化物を含有する場合でも、その組成範囲はTi
O2換算で表すものとする。
さて酸化チタンは、フェライトコア焼成時の冷却過程
での粒界の再酸化を促進し、粒界抵抗を大きくする効果
があるが、0.05wt%に満たないとその効果が少なく、一
方0.4wt%を超えると逆に損失の増加を招く。
酸化りん及び/又は酸化ほう素:0.003wt%以下 この発明において、酸化りんおよび酸化ほう素とは、
それぞれ主にP2O5およびB2O3を指すけれども、必ずしも
この酸化物形態に限るものではなく、P2O5やB2O3以外の
酸化物を含有する場合をも含む。なおP2O5やB2O3以外の
酸化物を含有する場合でも、その組成範囲はP2O5やB2O3
換算で表すものとする。
さて酸化りんおよび酸化ほう素はいずれも、微量の添
加によって鉄損の低減をもたらす有用成分である。しか
しながら含有量が0.003wt%を超えて含有されると、か
えって鉄損の劣化を招くので、これらの成分は単独使
用、併用いずれの場合においても、0.003wt%以下(好
ましくは0.0001wt%以上)の範囲で添加するものとし
た。
なお酸化りんの添加に際しては、りん酸(H3PO4)や
無水りん酸(P2O5)、さらには酸化物磁性体を構成する
金属のりん酸塩などが有利に適合する。また酸化ほう素
の添加に際しては、ほう酸(H3BO3)や無水ほう酸(B2O
3)、さらには酸化物磁性体を構成する金属のほう酸塩
などが有利に適合する。
以上述べたとおり、100kHzにおよぶ高周波領域での損
失の低減には、比抵抗を高めることが非常に効果的であ
るが、この発明ではSiO2,CaOの存在下で、酸化バナジウ
ム(主としてV2O5)、酸化タンタル(主としてTa2O5
および酸化チタン(主としてTiO2)、さらには酸化りん
(主としてP2O5)及び/又は酸化ほう素(主としてB
2O3)を含有させ、粒界に均一に分散させることによ
り、上記の目的を達成したものである。
ここにこの発明に従うフェライトを製造するには、各
成分粉末原料を所定の組成になるように混合したのち、
常法に従い、圧縮成形ついで焼結を施せば良い。
(実施例) 実施例1 Fe2O3,MnOおよびZnOがそれぞれ、52.9mol%,35.4mol
%,11.7mol%の基本組成の原料を混合したのち、大気中
にて900℃、3時間仮焼した。この仮焼粉にSiO2,CaO,V2
O5,Ta2O5およびTiO2、さらにはP2O5およびB2O3を、表1
に示す割合(添字a)で添加し、同時に湿式ボールミル
で粉砕・混合した。ついで粉砕粉にバインダーとしてPV
Aを添加し、造粒した後、外径36mm、内径24mm、高さ12m
mリング状に成形したのち、酸素濃度を制御した窒素雰
囲気中で1320℃で3時間の焼成を行った。
かくして得られた焼結コアのSiO2,CaO,V2O5,Ta2O5
よびTiO2の含有量(添字b)、ならびに100kHz、200m
T、80℃における鉄損値の測定結果を表1に併記する。
実施例2 実施例1と同様に、Fe2O3:52.9mol%、MnO:35.4mol%
およびZnO:11.7mol%からなる基本組成の原料を、混
合、仮焼したのち、この仮焼粉にSiO2,CaO,V2O5,Ta2O5
およびTiO2、さらにはP2O5およびB2O3を添加(添字a)
し、同時に湿式ボールミルで粉砕・混合した。ついで造
粒およびプレス成形後、1320℃で3時間の焼成を行っ
た。
かくして得られた焼結コアのSiO2,CaO,V2O5,Ta2O5
よびTiO2の含有量(添字b)、ならびに100kHz、200m
T、80℃における鉄損値の測定結果を表2に併記する。
(発明の効果) かくしてこの発明によれば、スイッチング電源周波数
が100kHz程度の高周波電源用トランスのコアとして、従
来の材料と比較して高磁場下での損失が格段に小さいMn
−Zn系ソフトフェライトを得ることができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−62206(JP,A) 特開 昭58−36974(JP,A) 特開 昭60−132301(JP,A) 特開 昭60−262405(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01G 49/00 - 49/08 H01F 1/34

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Fe2O3:52〜54.5mol%、 MnO :33〜40mol%および ZnO :6〜13mol% を基本成分とし、この基本成分に SiO2 :0.008〜0.025wt%、 CaO :0.02〜0.15wt%、 V2O5 :0.001〜0.05wt%、 Ta2O5:0.01〜0.1wt%および TiO2 :0.05〜0.4wt% と、 酸化りん及び/又は酸化ほう素:0.003wt%以下とを添加
    配合してなる低損失Mn−Zn系フェライト。
  2. 【請求項2】Fe2O3:52〜54.5mol%、 MnO :33〜40mol%および ZnO :6〜13mol% を基本成分とし、この基本成分に SiO2:0.008〜0.025wt%、 CaO :0.02〜0.15wt%、 酸化バナジウム:0.001〜0.05wt%、 酸化タンタル:0.01〜0.1wt%および 酸化チタン:0.05〜0.4wt% と、 酸化りん及び/又は酸化ほう素:0.003wt%以下とを含有
    してなる低損失Mn−Zn系フェライト。
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