JP2883708B2 - 新規な抗かび性抗生物質デキシロシルベナノマイシンaならびにその製造法 - Google Patents

新規な抗かび性抗生物質デキシロシルベナノマイシンaならびにその製造法

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JP2883708B2 JP25421890A JP25421890A JP2883708B2 JP 2883708 B2 JP2883708 B2 JP 2883708B2 JP 25421890 A JP25421890 A JP 25421890A JP 25421890 A JP25421890 A JP 25421890A JP 2883708 B2 JP2883708 B2 JP 2883708B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、新規な抗かび性抗生物質デキシロシルベナ
ノマイシンA(Dexylosylbenanomicin A)ならびにその
製造方法に関する。
〔従来の技術〕
本発明による抗かび性抗生物質デキシロシルベナノマ
イシンAと構造上の特徴が類似する化合物として、ベナ
ノマイシンAおよびB(本出願人の出願に係る特開平1-
121293号公報参照)、デキシロシルベナノマイシンB
(本出願人の出願に係る特開平1-168694号公報参照)、
プラジマイシンA、BおよびC(特開昭63−270696
号)、KS−619−1〔Matsudaら:「J.Antibiotics」40,
1104〜1114(1987)〕、G−2NおよびG−2A〔Gerber
ら:「Canad.J.Chem.」62,2818〜2821(1984)〕などが
知られている。しかし抗かび性抗生物質デキシロシルベ
ナノマイシンAはこれらの物質とは理化学的および生物
学的性質が異なり、化学構造上で明確に区別される。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来、微生物が生産する種々の抗生物質が知られてい
るが、有効な抗かび性抗生物質はそれ程多く見出されて
いないため、かびに起因する各種の感染症の医療分野に
おいては新規な抗かび性抗生物質の出現が常に要望され
ている。
本発明の目的は、新規の抗かび性抗生物質デキシロシ
ルベナノマイシンA、ならびにその製造法を提供するこ
とにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは研究の結果、先づ、ベナノマイシンAに
化学的処理を施してデキシロシルベナノマイシンAを合
成することに成功し、この物質が新規化合物であり且つ
有用な抗かび活性を有することを見出した。
第1の本発明の要旨とするところは、次式(I) で表わされる新規な抗かび性抗生物質デキシロシルベナ
ノマイシンA又はその塩である。
デキシロシルベナノマイシンAは下記の特性を有す
る。
1.デキシロシルベナノマイシンAの理化学的性状 (1)色および性状:赤褐色粉末 (2)分子式:C34H33NO15 (3)マススペクトル(FD−MS):m/z696(M+1)+ (4)融点:>200℃ (5)紫外部および可視部吸収スペクトル λmax, [MeOH]:209(610),229(595),286(480),300sh(3
85),400sh(120),479(198) [0.1N HCl−MeOH]:211(578),234(643),298(57
7),400sh(150),458(225) [0.1N NaOH−MeOH]:215(1269),248(672),260sh
(590),319(312),496(294) (6)赤外部吸収スペクトル (KBrcm-1):3370,2970,2919,1720,1620,1600,1510,149
0,1450,1430,1390,1380,1340,1300,1260,1240,1210,116
5,1150,1140,1075,1040,1000,970,900,875,835,810,750 (7)1H−NMRスペクトル(400MHz,DMSO−d6,40℃) 1.13(3H,d),1.34(3H,d),2.32(3H,s),3.38(1H,d
d),3.44(1H,br d),3.52(1H,br),3.56(1H,br q),
3.95(3H,s),4.42(1H,dq),4.47(1H,br d),4.54(1
H,br d),4.54(1H,d),6.92(1H,d),7.18(1H,br
s),7.30(1H,d),8.06(1H,br s),8.49(1H,d),12.4
6(1H,br),12.87(1H,s) (8)13C−NMRスペクトル(100MHz,DMSO−d6,40℃) δ(ppm):187.4s,184.9s,173.9s,166.9s,165.9s,164.7
s,156.8s,151.0s,147.9s,138.2s,137.3s,134.2s,131.3
s,127.4s,125.6s,118.5d,115.4d,115.4s,113.6s,110.0
s,107.6d,106.8d,105.2d,81.7d,73.5d,71.9d,71.2d,71.
0d,70.3d,56.3q,47.6d,19.1q,16.8q,16.5q (9)溶解性:クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、
メタノールに僅かに溶け、ジメチルスルホキシド、N,N
−ジメチルホルムアミドに溶ける。
(10)塩基性、酸性、中性の区別:酸性物質 2.デキシロシルベナノマイシンAの抗菌活性 本発明によるデキシロシルベナノマイシンAの各種か
びに対する最小発育阻止濃度を、1%グルコース含有の
栄養寒天培地(pH7.0)を用いる倍数稀釈法(27℃で42
時間培養後に評価)で測定して第1表に示した。第1表
に示す如く、デキシロシルベナノマイシンAは各種かび
に対して抗かび活性を示した。
第2の本発明の要旨とするところは、抗かび性抗生物
質ベナノマイシンAを化学的な変換することにより抗か
び性抗生物質デキシロシルベナノマイシンAを生成する
該抗生物質の製造法にある。
ここで「化学的に変換する」とは、ベナノマイシンA
を過ヨウ素酸又はその塩で酸化し、ベナノマイシンAの
酸化で生成したジホルミル化合物を次いで還元剤で例え
ばハイライドで還元することを包含する。原料のベナノ
マイシンAの製造法は本出願人の出願に係る特開平1−
121293号明細書に記載されているが、その製造例は後記
の参考例1および2に示す。
第2の本発明の方法を実施するに当っては、MH193−1
6F4株(FERM BP−2051;昭和62年8月21日以来、「微工
研」にブダペスト条約の規約の下に寄託されている)の
培養により得られた次式 で表わされるベナノマイシンAを過ヨウ素酸、あるいは
メタ過ヨウ素酸ナトリウム、メタ過ヨウ素酸カリウム等
の過ヨウ素酸塩で処理すると、ベナノマイシンAのキシ
ロシル部分の相隣る2個の水酸基が酸化されて生ずるジ
ホルミル誘導体(分子式C38H37NO18)が生成する。次い
で、このジホルミル誘導体を水素化ホウ素ナトリウム、
ジアノ水素化ホウ素ナトリウム等のハイドライドの如き
還元剤で処理すると、その反応液中に式(I)で表わさ
れるデキシロシルベナノマイシンAが生成する。かくし
て、ベナノマイシンAの加水分解やアルコーリシスでは
先に得られなかったデキシロシルベナノマイシンAの製
造に成功した。この反応液中よりデキシロシルベナノマ
イシンAを採取するには、その性状を利用した通常の分
離手段、例えば、溶剤抽出法、イオン交換樹脂法、吸着
または分配カラムクロマト法、ゲルろ過法、透析法、沈
澱法等を単独でまたは適宜組み合わせて抽出精製するこ
とができる。例えば、反応水溶液中のデキシロシルベナ
ノマイシンAは合成吸着剤であるダイヤイオンHP−20
(三菱化成社製)等に吸着される。デキシロシルベナノ
マイシンAをさらに精製するには、シリカゲル(ワコー
ゲル、C−300、和光純薬工業社製等)、アルミナ等の
吸着剤やセファデックスLH−20(ファルマシア社製)等
を用いるクロマトグラフィーを行うとよい。
このようにして反応液中に生成したデキシロシルベナ
ノマイシンAは遊離の形、すなわちデキシロシルベナノ
マイシンAそれ自体として分離することができる。また
デキシロシルベナノマイシンAは、これを含有する溶液
またはその濃縮液中で塩基、例えば水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシ
ウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合
物、アンモニウム塩等のような無機塩基、エタノールア
ミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の
有機塩基により処理する場合に、例えば精製の各工程の
操作中に処理した場合、デキシロシルベナノマイシンA
は対応するその塩類の形に変化し分離される。この場
合、アルカリ金属又はアルカリ土類金属又はアンモニウ
ムの水酸化物で処理すると、デキシロシルベナノマイシ
ンAの1′位のカルボキシル基がカルボン酸塩の形にな
る。また、アルキルアミン又はシクロアルキルアミンで
処理すると、前記のカルボキシル基における塩基付加塩
が生成される。
また別にこのようにして製造されたデキシロシルベナ
ノマイシンAの塩類は、常法により遊離の形であるデキ
シロシルベナノマイシンAそれ自体に変化させることが
できる。さらに遊離の形で得られたデキシロシルベナノ
マイシンAを前記の塩基により常法で対応するその塩類
に変化させてもよい。
従ってデキシロシルベナノマイシンAと同様に前記の
ようなその塩類も、この発明の範囲内に包含されるもの
とする。
更に、本発明者らは研究を続けた結果、前出の特開平
1−121293号(特願昭62−277692号)に記載されるベナ
ノマイシンAおよびBの生産菌である放線菌MH193−16F
4株(微工研にFERM BP−2051として寄託中)の培養液中
には、ベナノマイシンA、ベナノマイシンBと共にデキ
シロシルベナノマイシンAが産生されて蓄積されている
ことを発見し、さらに培養液からデキシロシルベナノマ
イシンAを分離することに成功した。
従って第3の本発明によると、MH193−16F4株(微工
研条寄第2051号として寄託)を培養し、その培養物から
前記の式(I)のデキシロシルベナノマイシンAを採取
することを特徴とする、抗生物質デキシロシルベナノマ
イシンAの製造法が提供される。
第3の本発明に係る方法において用いられるMH193−1
6F4株の菌学的性質は特開平1-121293号明細書に詳しく
記載される。
第3の本発明の方法で前記MH193−16F4株(以下、デ
キシロシルベナノマイシンA生産菌と称することもあ
る)の培養は、特開平1-121293号明細書に記載されるベ
ナノマイシンA,Bの生産菌の培養と同じ要領で行い得
る。すなわち、デキシロシルベナノマイシンAの醗酵的
製造は、デキシロシルベナノマイシンA生産菌を、通常
の微生物が利用し得る栄養源含有の培地に接種して好気
的条件下に培養させることによって行われる。主に培養
液中にデキシロシルベナノマイシンAが生産、蓄積され
る。培養物、特に培養液から目的物を分離する。
用いる培地中の栄養源としては、放線菌の栄養源とし
て用いられる公知のものが使用できる。例えば市販され
ている大豆粉、ペプトン、肉エキス、コーン・スティー
プ・リカー、綿実粉、落花生粉、乾燥酵母、酵母エキ
ス、NZアミン、カゼイン、硝酸ナトリウム、硫酸アンモ
ニウム、硝酸アンモニウムなどの窒素源、およびグリセ
リン、しょ糖、でん粉、グルコース、ガラクトース、マ
ルトース、デキストリン、乳糖、糖みつ、大豆油、脂
肪、アミノ酸などの炭素源を使用できる。培地には、食
塩、燐酸塩、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化
コバルト、塩化マンガンなどの無機塩を配合できる。そ
の他必要に応じて微量の金属塩、消泡剤として動、植、
鉱物油などを添加することができる。これらのものはデ
キシロシルベナノマイシンA生産菌が利用し、デキシロ
シルベナノマイシンAの生産に役立つものであれば良
く、公知の放線菌の培養材料はすべて用いることができ
る。
デキシロシルベナノマイシンAの大量生産には液体培
養が好ましく、培養温度はMH193−16F4株が発育しデキ
シロシルベナノマイシンAを生産する範囲で適用でき、
通常20−40℃、好ましくは25−37℃である。培養は以上
述べた条件をデキシロシルベナノマイシンA生産菌の性
質に応じて適宜選択して行うことができる。
デキシロシルベナノマイシンA生産菌の培養物からの
デキシロシルベナノマイシンAの採取に当たっては、そ
の性状を利用した通常の分離手段、例えば、溶剤抽出
法、イオン交換樹脂法、吸着または分配カラムクロマト
グラフィ法、ゲルろ過法逆相クロマトグラフィ法、透析
法、沈澱法等を単独でまた適宜組み合わせて分離精製で
きる。例えば、デキシロシルベナノマイシンA生産菌と
して前記のMH193−16F4株培養物中に目的のデキシロシ
ルベナノマイシンAがベナノマイシンAおよびBと共に
産生されて蓄積される。培養液中に蓄積されたデキシロ
シルベナノマイシンAはベナノマイシンAおよびBと共
に合成吸着剤である“ダイヤイオンHP−20"(三菱化成
社製)等に吸着される。また、水と混ざらない有機溶
剤、例えば、ブタノール、酢酸エチル等で抽出すればデ
キシロベナノマイシンAはベナノマイシンAおよびBと
共に有機溶剤層に抽出される。デキシロシルベナノマイ
シンA、並びにベナノマイシンAおよびBをさらに精製
するには、シリカゲル(ワコーゲルC−300、和光純薬
工業社製等)、アルミナ等の吸着剤やセファデックスLH
−20(ファルマシア社製)等を用いるクロマトグラフィ
ーを行うとよい。
培養液からデキシロシルベナノマイシンAを採取する
には、下記の分離方法が便利である。すなわち、ベナノ
マイシンAおよびB、並びにデキシロシルベナノマイシ
ンAを含む培養液を多孔質の合成吸着剤樹脂“ダイヤイ
オンHP−20"で処理することにより、これらの抗生物質
を樹脂に吸着させる。この樹脂を水洗してから含水メタ
ノールで溶出させ、溶出液を分画として集める。ベナノ
マイシンBを含む分画と、デキシロシルベナノマイシン
AをベナノマイシンAと共に含む分画を別々に集めるこ
とができる。後者の分画を合併し減圧下に濃縮し、得ら
れた濃縮液を希塩酸の添加により酸性pHにすると、デキ
シロシルベナノマイシンAを主体のベナノマイシンAと
共に含む沈澱が析出する。この沈澱を濾取し減圧下に乾
燥してからN,N−ジメチルホルムアミドに溶かし、得ら
れた溶液を室温で3日間水蒸気で飽和させると、ベナノ
マイシンA−ジメチルホルムアミド・ソルベートから主
としてなる結晶性沈澱が沈析する。この結晶性沈澱を濾
取し、残った濾液(母液)を減圧下に濃縮乾固させて、
デキシロシルベナノマイシンAを含む粗粉末を得る。こ
の粗粉末を、水酸化ナトリウムで例えばpH9.0に調整し
たアルカリ性水に溶かし、次いで、その溶液を塩酸でpH
約3.0に酸性化すると、赤褐色の沈澱を得る。この赤褐
色の沈澱を濾取、乾燥し、得られた粉末を逆相カラム
“Cosmosil 75C18−OPN"(Nacalai Tesque Inc.,製)
(含水メタノールで展開)にかけて精製すると、デキシ
ロシルベナノマイシンAが赤褐色粉末として単離され
る。
本発明のデキシロベナノマイシンAは低い急性毒性を
もち、例えば、ICRマウス(雌、4週令、体重19〜21g)
に静脈内投与する場合に300mg/kgを投与してもマウスに
死亡例が認められなかった。
従って、本発明のデキシロシルベナノマイシンA又は
これの製薬学的に許容できる塩は、常用される固体又は
液体の担体と配合して抗かび剤組成物に調合できる。哺
乳動物のかび感染症の治療のために投与する場合、経口
投与では、例えば成人1日当り5〜100mg/kgの投与量が
投与できるが、投与量は症例、及び治療目的に応じて当
然に加減される。
以下に参考例1および本発明の実施例1〜2を示す
が、デキシロシルベナノマイシンAの性状が本発明によ
って明らかにされたので、それらの性状にもとずきデキ
シロシルベナノマイシンAの製造法を種々考案すること
ができる。従って本発明は実施例に限定されるものでは
なく、実施例の修飾手段は勿論、本発明によって明らか
にされたデキシロシルベナノマイシンAの性状にもとず
いて公知の手段を施してデキシロシルベナノマイシンA
を生成、抽出、精製する方法をすべて包括する。
参考例1 本例は原料として用いられるベナノマイシンAの発酵
的製造例を示す。
(a)寒天斜面培地に培養したMH193−16F4株(微工
研条寄第2051号)をスターチ1.0%、大豆粉3.0%を含む
液体培地(500ml容坂口フラスコ中80ml、殺菌前pH7.0)
に接種し、28℃で3日間振盪培養(135rpm)して第1種
培養を得た。この種培養の各3mlを上記と同様の培地に
接種し、同様の条件で3日間振盪培養して第2種培養を
得た。この種培養2l(リットル)を120℃で150分間殺菌
した上記組成の培地50lを含む100g溶培養槽に接種し、2
8℃で2日間、通気量50l/分、200rpmで通気撹拌培養し
て第3種培養を得た。予じめ、125℃で30分間殺菌した
グリセリン2.0%、エスサンミーシ(大豆粉の商品名)
1.5%、K2HPO40.0025%、K2HPO40.1125%、CoCl2・6H2O
0.0005%、KM72(シリコーン油の商品名)0.03%、アデ
カノール(シリコーン油の商品名)0.01%からなる300l
の生産培地を含む570l溶培養槽に前記第3種培養12lを
接種し、28℃で7日間、培養初期24時間の通気量150l/
分、24時間以降300l/分、300rpmで通気撹拌培養した。
培養終了後、ろ過助剤として珪藻土を加えてろ過し、ろ
液(250l、pH6.0)を得た。
(b)上記の(a)で得られた培養ろ液(250l)をダ
イヤイオンHP−20(15l)に吸着させ、水(100l)およ
び50%メタノール(45l)で洗浄後、活性物質を70%メ
タノール水(45l)、次いでメタノール水(90l)で溶出
してデキシロシルベナノマイシンAとベナノマイシンA
を含む第1分画(53l)および第2分画(38l)、並びに
ベナノマイシンBを含む第3分画(27l)を得た。活性
物質を含む第1分画を減圧下濃縮して3lとし、稀塩酸を
用いてpH3.5に調整すると赤色沈澱が得られた。この沈
澱を濾取し、減圧下乾燥すると、主としてベナノマイシ
ンAを含み且つデキシロシルベナノマイシンAを含む褐
色粗粉末(152g)が得られた。この粗粉末(150g)をN,
N−ジメチルホルムアミド(600ml)に溶解し、デシケー
タ中で室温3日水蒸気を飽和させると結晶性沈澱が析出
した。この沈澱を濾取し、減圧下乾燥するとベナノマイ
シンA−ジメチルホルムアミド・ソルベート(29g)が
得られた。前記の結晶性沈澱を濾取後の濾液(母液)
は、これからデキシロシルベナノマイシンAを分離する
ために保存された。第2分画も第1分画と同様に処理
し、ベナノマイシンA−ジメチルホルムアミド・ソルベ
ート(14g)を得た。
第1分画より得られたベナノマイシンA−ジメチルホ
ルムアミド・ソルベート(1g)をジメチルスルホキシド
(5ml)に溶解し、メタノール(300ml)中に撹拌下滴下
して、さらに10分間撹拌すると赤褐色沈澱が析出した。
この沈澱を濾取し、減圧下乾燥して純粋なベナノマイシ
ンAの赤褐色粉末(935mg)を得た。
実施例1 本例はベナノマイシンAからのデキシロシルベナノマ
イシンAの製造を示す。
ベナノマイシンA(1.05g)を0.02N水酸化ナトリウム
水溶液(127ml)に溶解し、これにメタ過ヨウ酸ナトリ
ウム(2.71g、和光純薬工業社製)を加え、室温で40分
間撹拌して酸化反応を行った後にエチレングリコール
(0.8ml)を加え、更に室温で15分間撹拌した。その
後、反応液をダイヤイオンHP−20(800ml)のカラムに
かけ、水洗(2l)後40%アセトン水で活性成分を溶出
し、溶出液を100mlずつ分画した。フラクション7〜12
を約20mlまで濃縮して0.1N塩酸でpH2.5に調整し、析出
した赤褐色沈澱を遠心分離(3000rpm,10分間)してから
乾燥すると、ベナノマイシンAの酸化の生成物として前
記のジホルミル誘導体(C38H37NO18,905mg)が得られ
た。
このジホルミル誘導体(200mg)を0.01N水酸化ナトリ
ウム水溶液(25ml)に溶解し、これに還元剤として水酸
化ホウ素ナトリウム(15mg、和光純薬工業社製)を加
え、室温で20分間撹拌して還元反応を行った。次いで、
生成されたデキシロシルベナノマイシンAを含む反応液
を0.1N塩酸でpH3.0に調整し、30分間撹拌後、0.1N水酸
化ナトリウム水溶液でpH7.5に調整して沈澱物を溶解し
た。その後、この溶液をダイヤイオンHP−20(100ml)
のカラムにかけ、水洗(200ml)後30%アセトン水で活
性成分を溶出し、溶出液を5mlずつ分画した。フラクシ
ョン12〜28を濃縮乾固すると赤褐色粗粉末(159ml)が
得られた。更に、この粗粉末をジメチルスルホキシド
(2ml)に溶解後セファデックスLH−20(1)のカラ
ムに充填し、メタノールで展開して溶出液を7mlずつ分
画した。フラクション52〜64を約5mlまで濃縮し、これ
に0.01N塩酸(5ml)を加えて析出した赤褐色沈澱を遠心
分離(3000rpm,10分間)してから乾燥すると、純粋なデ
キシロシルベナノマイシンA(52.6mg)が得られた。融
点>200℃。
実施例2 本例はデキシロシルベナノマイシンAの醗酵的製造例
を示す。
前記の参考例1(a)と同じにMH193−16F4株(微工
研条寄第2051号)を培養して第3種培養を得、これをろ
過した。得られた培養ろ液を参考例1(b)と同じに処
理し、ベナノマイシンA−ジメチルホルムアミドよりな
る結晶性沈澱を濾取した後の残った濾液(母液)を回収
した。この濾液を減圧下に濃縮乾固させて褐色粗粉末
(130g)を得た。この粗粉末(5g)を水(200ml)に懸
濁させ、得られた水性懸濁液を1N水酸化ナトリウム水溶
液でpH9.0に調整すると、透明なアルカリ性水溶液にな
る。この水溶液を1N塩酸でpH2.5に調整すると、赤褐色
沈澱が沈析した。この沈澱を濾取し、その粉末(1.8g)
を100mlの水にとかし、1N水酸化ナトリウム水溶液でpH
7.0に調整し、得られた溶液を1%メタノール水で充填
した逆相シリカゲルカラム(1.0l、Cosmosil 75C18−OP
N)(1%メタノール水で展開)でクロマトグラフィー
にかけた。この逆相シリカゲルカラムからの溶出液を分
画して集めた。これら溶出分画のうちで、高速液体クロ
マトグラフィー〔HPLC,プレカラム:Cosmosil 10C18,直
径4.6mm×高さ50mm,カラム:Cosmosil 5C18,直径4.6mm
×高さ150mm(ナカライテスク社製);移動相:0.5%KH2
PO4−メタノール(1:1),流速:1ml/分、温度40℃〕で
保持時間約22.7分に検出される物質を多く含む溶出分画
を集め、合併して、その溶液を1N塩酸でpH3.5に調整す
ると、沈澱が析出した。これを濾取、乾燥すると、純粋
なデキシロシルベナノマイシンAの赤褐色粉末(345m
g)が得られた。
〔発明の効果〕
以上詳細に説明したとおり、デキシロシルベナノマイ
シンAは各種かびの発育を阻止する抗かび活性を有して
有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図:デキシロシルベナノマイシンAのメタノール中
(20μg/ml)での紫外部および可視部吸収スペクトルを
示す。実線はメタノール中、破線は0.1N塩酸−メタノー
ル中、および鎖線は0.1N水酸化ナトリウム−メタノール
中で測定。 第2図:デキシロシルベナノマイシンAの臭化カリウム
錠での赤外部吸収スペクトルを示す。 第3図:デキシロシルベナノマイシンAの重ジメチルス
ルホキシド溶液中での400MHzにおける1H−NMRスペクト
ルを示す。 第4図:デキシロシルベナノマイシンAの重ジメチルス
ルホキシド溶液中での100MHzにおける13C−NMRスペクト
ルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 五味 修一 東京都大田区上池台3―17―17―202 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07H 15/24 C12P 19/56 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次式(I) で表わされる抗かび性抗生物質デキシロシルベナノマイ
    シンAおよびその塩。
  2. 【請求項2】ベナノマイシンAを化学的に変換すること
    により、請求項1に記載される式(I)のデキシロシル
    ベナノマイシンAを生成することを特徴とする抗かび性
    抗生物質デキシロシルベナノマイシンAの製造法。
  3. 【請求項3】MH193−16F4株(微工研条寄第2051号とし
    て寄託)を培養し、その培養物から請求項1に記載され
    る式(I)のデキシロシルベナノマイシンAを採取する
    ことを特徴とする、抗生物質デキシロシルベナノマイシ
    ンAの製造方法。
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