JP2873481B2 - 放電加工機の電極送り方法及び該方法に使用する電極位置検出装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は，工作物に対する細孔加工を行う細穴放電
加工機又は細穴放電加工装置付きワイヤ放電加工機にお
ける電極送り方法及び該電極送り方法に使用する電極位
置検出装置に関する。

〔従来の技術〕

従来，ワイヤ放電加工機については，ワイヤ電極が走
行している部分を使用して超硬合金，焼入鋼等の工作物
のワイヤ放電加工用のスタートホール加工，銅，ステン
レススチール等の難加工材，曲面，テーパ面を有する工
作物を加工しているが，ワイヤ放電加工を行う工作物に
対してはスタートホールを形成することが必要であり，
工作物にスタートホール加工等を行うものとして，細穴
放電加工機或いは細穴放電加工装置付きワイヤ放電加工
機が提供されている。

このような細穴放電加工機或いはスタートホール加工
装置については，第４図及び第５図に示すように，パイ
プ電極保持装置を回転主軸の先端に取り付け，該パイプ
電極保持装置に，通常，φ0.3〜φ３のパイプ電極３を
保持し，回転管継手等を介して送られた高圧水（通常,3
0kg/cm²〜100kg/cm²）をパイプ電極３のパイプ内を通し
て該先端部より噴出させ，パイプ電極３と工作物６との
間で放電させて工作物６に細穴或いは細孔を明けるもの
である。このような放電加工機に取り付けたパイプ電極
３のガイドホルダ装置２は，ヘッド１に上下移動可能に
取り付けられた一対のスライドロッド4,これらのスライ
ドロッド４の端部を連結する連結プレート5,及びスライ
ドロッド４に取り付けられたガイドホルダ11から構成さ
れている。ヘッド１にはホルダ部７が固定され，ホルダ
部７に取外し可能にチェック部８が取り付けられてい
る。チャック部８には，工作物６を放電加工するパイプ
電極３が装着されている。ガイドホルダ11には，中央に
貫通孔が形成されており，該貫通孔をパイプ電極３のパ
イプが貫通してパイプ電極３はガイドされている。スラ
イドロッド４は，手動又は電動によってヘッド１に対し
て上下動させることができる。

細穴放電加工機或いはスタートホール加工装置によっ
て工作物６に細穴又は細孔を放電加工する場合には，工
作物６をテーブル10上にクランプ９によって固定し，ス
ライドロッド４を下げ，スライドロッド４の下端に取り
付けられたガイドホルダ11を工作物６に近づけた状態に
設定するものである。

ガイドホルダ11は，例えば，第６図に示すように，主
として，スライドロッド４に固定した連結プレート5,連
結プレート５にガイドフランジ19を介して取り付けられ
たガイドケース14,ガイドケース14内に配置され且つガ
イドカラー20で隔置されている一対の電極ガイド12,13,
及び電極ガイド12,13をガイドケース14に固定するガイ
ド押さえ部材17から構成されている。パイプ電極３は，
ガイドホルダ11の電極ガイド12,13を貫通して工作物６
に対向状態に設置されるが，パイプ電極３の先端を工作
物６に近接した対向状態に設定するには，パイプ電極３
を降下させる時に，パイプ電極３の先端が振れることで
パイプ電極３の先端がガイドホルダ11に組み込んだガイ
ド押さえ部材17或いは電極ガイド12,13に接触すること
で，パイプ電極３の先端の位置を検出し，それに応じて
パイプ電極３を工作物６に近接した対向状態の所定の位
置まで降下させて設定している。

〔発明が解決しようとする課題〕

ところで，従来の細穴放電加工機又はスタートホール
加工装置付きワイヤ放電加工機において，上記のよう
に，パイプ電極３の下端部をガイドするのに，一対のス
ライドロッド４の下端に連結した連結プレート５に取り
付けられたガイドホルダ11を使用し，ガイドホルダ11を
工作物６に近接して配置すると共に，パイプ電極３をガ
イドホルダ11によってガイドして工作物６に対向状態に
精度をもって配置している。パイプ電極３の先端を工作
物６に対向状態に位置設定するため，パイプ電極３の先
端が振れると，電極ガイド12,13に接触し，該接触によ
ってパイプ電極３の先端の位置を検出し，それに応じて
パイプ電極３の下降速度を低速に切り換えて工作物６に
近接した対向状態の所定の位置まで降下させて設定して
いるが，その設定方法は放電加工機を自動化した場合に
は，十分なものとはいえないものである。

そこで，工作物に対してパイプ電極等の細い電極によ
って細穴放電加工を行う場合に，電極をガイドするガイ
ドホルダの支持体を境にして，電極の下降速度を調節し
て電極の先端部付近即ち工作物に確実に且つ迅速に近づ
けて位置設定するのに如何に構成したら良いかの問題が
あった。

この発明の目的は，上記の課題を解決することであ
り，細穴放電加工機又はスタートホール加工装置付きワ
イヤ放電加工機において，パイプ電極等の電極を工作物
に近接した対向状態の所定の位置まで降下させて設定す
る時に，電極の振れによる電極ガイドとの接触による検
出信号に頼らずに，先ず電極を早送りで下降させ，下降
してくる電極の先端をガイドホルダの上流側の予め決め
られた位置に設定されたセンサで確実に検出し，該セン
サによる検出信号に応答して電極の下降速度を低速に切
り換え，電極の先端と工作物との衝突するのを防止する
と共に，電極を工作物に対して確実に且つ迅速に正確な
位置に設定できる放電加工機の電極送り方法及び該電極
送り方法に使用する電極位置検出装置を提供することで
ある。

〔課題を解決するための手段〕

この発明は，上記の目的を達成するため，次のように
構成されている。

この発明は，細い電極を使用して工作物に細孔を加工
する放電加工機の放電加工部位に前記電極を位置設定す
る電極送り方法において，前記電極を貫通状態にガイド
するため前記工作物に対向状態に配置された電極ガイド
の手前の予め決められた位置に前記電極の先端が位置す
ることを検出し，該検出信号に応答して前記電極の送り
速度を高速から低速に切り換え，次いで前記電極の先端
を前記工作物に対して対向状態に予め決められた所定の
位置に移動させて位置設定することを特徴とする電極送
り方法に関する。

また，この発明は，細い電極を使用して工作物に細孔
を加工する放電加工機において，前記電極を貫通状態に
ガイドするため前記工作物に対向状態に配置された電極
ガイド，前記電極ガイドを支持する支持体，前記電極ガ
イドの上方に予め決められた位置に配置され且つ前記支
持体に対して取外し可能に取り付けられた前記電極の先
端が前記電極ガイドの手前に位置することを検出するセ
ンサ，及び前記電極を前記工作物に対して対向状態に予
め決められた所定の位置に位置設定するため，前記電極
の先端が前記電極ガイドの手前の予め決めれらた地点に
位置することを前記センサが検出したことに応答して前
記電極の送り速度を高速から低速に切り換える制御を行
なうコントローラ，から成ることを特徴とする電極位置
検出装置に関する。

〔作用〕

この発明による放電加工機の電極送り方法及び該方法
に使用する電極位置検出装置は，上記のように構成され
ており，次のように作用する。

この放電加工機の電極送り方法は，電極を貫通状態に
ガイドするため工作物に対向状態に配置された電極ガイ
ドの手前に前記電極の先端が位置することを検出し，該
検出信号に応答して前記電極の送り速度を高速から低速
に切り換え，次いで前記電極の先端を前記工作物に対し
て対向状態に所定の位置に移動させて位置設定するの
で，前記電極が前記工作物に衝突することが防止され，
前記電極を前記工作物に対して対向状態に確実に且つ迅
速に正確な位置に設定することができる。

また，この発明による電極送り方法に使用する電極位
置検出装置は，電極を貫通状態にガイドするため工作物
に対向状態に近接して配置された電極ガイドを支持する
支持体に対して取外し可能に取り付けられた前記電極の
先端位置を検出するセンサを，電極ガイドの上流側即ち
上方に配置し，コントローラの制御によって検出信号に
応答して電極の送り速度を高速から低速に切り換えるの
で，前記電極が前記工作物に衝突する前に前記センサに
よって前記電極の先端を確実に検出し，工作物に対する
電極の位置設定を良好に行なうことができる。

〔実施例〕

以下，図面を参照して，この発明による細穴放電加工
機又はスタートホール加工装置付きワイヤ放電加工機の
放電加工機における電極送り方法の一実施例を説明す
る。

第１図及び第２図において，この発明による電極送り
方法を適用する場合の細穴放電加工機又はワイヤ放電加
工機に装着したスタートホール加工装置が示されてい
る。細穴放電加工機又はスタートホール加工装置は，第
４図，第５図及び第６図を参照して説明した細穴放電加
工機又はスタートホール加工装置と比較して，ガイドホ
ルダ以外の構造については，同一の構成を有するもので
あるので，同一の部品には同一の符号を付し，重複する
説明を省略する。

この細穴放電加工機又はスタートホール加工装置は，
例えば，加工物即ち工作物６に対してワイヤ電極である
ワイヤが貫通する細孔であるスタートホールを放電加工
するものであり，回転スピンドルを収容したヘッド１に
固定されたホルダ部７とパイプ電極３を装着したチャッ
ク部８から構成されている。チャック部８はホルダ部７
に着脱可能に取り付けられており，パイプ電極３が工作
物６に数個所の細穴或いは貫通した細孔21を放電加工し
て消耗した時に，新しいパイプ電極３と交換する場合に
は，ヘッド１に固定されたホルダ部７からチャック部８
を取外し，或いはチャック部８からパイプ電極３を取外
すことによって交換することができる。また，工作物６
は，テーブル10上にクランプ９によって固定されてい
る。

この細穴放電加工機又はスタートホール加工装置付き
ワイヤ放電加工機におけるパイプ電極３をガイドするガ
イドホルダ11を，第３図を参照して説明する。

ガイドホルダ11は，第６図を参照して説明したものと
比較してガイド押さえ部材17にセンサを設けた以外の構
成は，同一の構成であるので，同一の部品には同一の符
号を付し，重複する説明を省略する。

ガイド押さえ部材17に設けたセンサは，細い電極であ
るパイプ電極３の先端がガイドホルダ11の上方に位置す
ることを検出するための電極位置検出装置である。ガイ
ドホルダ11は，パイプ電極３を貫通状態にガイドし且つ
工作物６に対向状態に配置した電極ガイド12,13,及び電
極ガイド12,13を支持する支持体から成る。前記支持体
は，電極ガイド12,13を内部に配置するガイドケース14,
ガイドケース14内にガイドカラー20で隔置して一対の電
極ガイド12,13を固定するガイド押さえ部材17,及びガイ
ドケース14をガイドフランジ19を介して支持する連結プ
レート５から成る。

図３では，センサは，タングステンワイヤ等から成る
多数の細いひげ状のワイヤ15,ワイヤ15を支持し且つガ
イド押さえ部材17に取外し可能に固定したブラシホルダ
16,及びブラシホルダ16に結線したリード線18から構成
されている。ワイヤ15は，ブラシホルダ16に螺入したナ
ット22に固定され，ガイド押さえ部材17の半径方向内向
きに伸長し且つパイプ電極３が下降する走行線上の予め
決められた位置に設定されている。ブラシホルダ16は，
ガイド押さえ部材17に形成してタップにねじ込みによっ
て固定されている。従って，ワイヤ15を固定したナット
22は，ブラシホルダ16に取外し可能に固定される。そこ
で，ワイヤ15が消耗した場合には，ブラシホルダ16から
取外して新しいワイヤ15に交換することができる。

この発明による電極位置検出装置は，上記にように構
成されているので，この電極位置検出装置を放電加工機
に組み込んだ場合には，電極の送り状態を検出すること
ができるので，電極送りを次のように行うことができ
る。

この発明による電極送り方法において，工作物６を放
電加工する場合に，まず，パイプ電極３を早送りで下降
させると，パイプ電極３の先端が多数のひげ状のワイヤ
15の何れかに接触する。パイプ電極３の先端がワイヤ15
に接触すると，ワイヤ15がパイプ電極３の先端を検出
し，該検出信号はブラシホルダ16及びリード線18を通じ
てコントローラに入力される。コントローラは，該検出
信号を受けてパイプ電極３が工作物６に近接したことを
検知するので，パイプ電極３の下降速度即ち送り速度を
高速から低速に切り換える指令を発する即ち制御を行な
うと共に，パイプ電極３の引き続く下降距離の指令を発
する。それによって，パイプ電極３は，工作物６に衝突
することが防止され，工作物６に対向した状態に確実に
且つ迅速に正確な位置に設定される。

この発明による電極位置検出装置の一実施例として，
上記のように構成されているが，上記実施例のワイヤ15
に限定されることなく，種々のセンサを適用することが
できる。例えば，センサとしては，投光器及び受光器を
設けた光電リレー，或いはエアセンサから構成すること
もできる。また，センサの設置位置としては，ガイド押
さえ部材17に限らず，例えば，支持体であるガイドケー
ス14,連結バー５或いはガイドフランジ19等に取り付け
ることもできる。

〔発明の効果〕

この発明による放電加工機の電極送り方法及び該方法
に使用する電極位置検出装置は，上記のように構成され
ており，次のような効果を有する。

この放電加工機の電極送り方法は，細い電極を使用し
て工作物に細孔を加工する放電加工機の放電加工部位に
前記電極を位置設定するものであり，前記電極を貫通状
態にガイドするため前記工作物に対向状態に配置した電
極ガイドの手前に前記電極の先端が位置することを検出
し，該検出信号に応答して前記電極の送り速度を低速に
切り換え，次いで前記電極の先端を前記工作物に対して
対向状態に所定の位置に移動させて位置設定するので，
パイプ電極等の前記電極を前記工作物に近接した対向状
態の所定の位置まで降下させて設定する時に，電極の振
れによる電極ガイドとの接触による不安定な検出に頼ら
ずに，先ず前記電極を早送りで下降させ，下降してくる
前記電極の先端を電極ガイドの上流側で前記センサで確
実に且つ迅速に検出することができ，また，前記センサ
による検出信号に応答して前記電極の下降速度を低速に
切り換えるので，前記電極の下降距離を制御し易くな
り，前記電極の先端と前記工作物との衝突するのを確実
に防止できると共に，前記電極を前記工作物に対して確
実に且つ迅速に正確な位置に位置設定することができ。

また，この電極位置検出装置は，細い電極を使用して
工作物に細孔を加工する放電加工機において，前記電極
を貫通状態にガイドするため前記工作物に対向状態に配
置された電極ガイド，該電極ガイドを支持する支持体，
及び該電極ガイドの上方に配置し且つ前記支持体に対し
て取外し可能に取り付けた前記電極の先端位置を検出す
るセンサを具備し，コントローラが，前記電極を前記工
作物に対して対向状態に所定の位置に位置設定するた
め，前記センサが前記電極の先端が前記電極ガイドの手
前に位置することを検出したことに応答して前記電極の
送り速度を高速から低速に切り換える指令を発するの
で，前記電極が前記工作物に衝突する前に前記センサに
よって前記電極の先端を確実に且つ迅速に検出すること
ができることは勿論のこと，既存のガイドホルダ等の前
記支持体に，前記センサを単に取り付け，前記センサを
コントローラに接続するだけで構成でき，安価に且つ構
造簡単に装置そのものを提供でき，この発明の電極送り
方法を達成することができる。

しかも，前記センサをタングステン材から成るワイヤ
等で構成した場合には，該ワイヤが消耗した場合には容
易に取り替える構造に構成することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明による電極送り方法を達成するための
細穴放電加工機又はワイヤ放電加工機に装着したスター
トホール加工装置の一実施例を示す概略図，第２図は第
１図の側面図，第３図はこの発明による電極位置検出装
置を第１図のガイドホルダに取り付けた状態の一実施例
を示す断面図，第４図は従来のガイドホルダを備えた細
穴放電加工機又はスタートホール加工装置を示す概略
図，第５図は第４図の側面図，及び第６図は従来のガイ
ドホルダを示す断面図である。 １……ヘッド,3……パイプ電極,6……工作物,10……テ
ーブル,11……ガイドホルダ（支持体）,12,13……電極
ガイド,15……ワイヤ（センサ）,16……ブラシホルダ,1
7……ガイド押え部材。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B23H 7/26 - 7/32 B23H 9/14

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】細い電極を使用して工作物に細孔を加工す
   る放電加工機の放電加工部位に前記電極を位置設定する
   電極送り方法において，前記電極を貫通状態にガイドす
   るため前記工作物に対向状態に配置された電極ガイドの
   手前に前記電極の先端が位置することを検出し，該検出
   信号に応答して前記電極の送り速度を高速から低速に切
   り換え，次いで前記電極の先端を前記工作物に対して対
   向状態に所定の位置に移動させて位置設定することを特
   徴とする電極送り方法。
2. 【請求項２】細い電極を使用して工作物に細孔を加工す
   る放電加工機において，前記電極を貫通状態にガイドす
   るため前記工作物に対向状態に配置された電極ガイド，
   前記電極ガイドを支持する支持体，前記電極ガイドの上
   方に配置され且つ前記支持体に対して取外し可能に取り
   付けられた前記電極の先端が前記電極ガイドの手前に位
   置することを検出するセンサ，及び前記電極を前記工作
   物に対して対向状態に所定の位置に位置設定するため，
   前記電極の先端が前記電極ガイドの手前に位置すること
   を前記センサが検出したことに応答して前記電極の送り
   速度を高速から低速に切り換える制御を行なうコントロ
   ーラ，から成ることを特徴とする電極位置検出装置。