JP2862138B2 - 複合成形物 - Google Patents

複合成形物

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、金属板又はその成形物の飛来物が当たる側
の反対面(以下、裏面という)に高強度繊維を基材とす
る熱可塑性樹脂繊維強化プラスチックを機械的方法又は
接着等の化学的方法により固定することにより、軽量で
耐衝撃性に優れた複合成形物に関するものである。
〔従来の技術〕
高所から落下する物体等の飛来物に対する耐衝撃体
は、鉄あるいはアルミニウム合金等の単一物又はそれら
の多層体、あるいは金属体の間にプラスチック又はセラ
ミックなどの層を設けた複合物が有効である。かかる耐
衝撃体は所定の特性を保持するために所要の厚みが必要
であり、このため重量の軽減がはかれない。
また、金属体の間に高強度繊維を基材とする繊維強化
プラスチックを挿入することも研究されたが、このよう
な複合物は、両側から金属体で固定されているため、繊
維強化プラスチックのもっているエネルギー吸収特性を
生かしきれない欠点があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者は、熱可塑性樹脂をバインダーとし、高強度
繊維を基材とする高強度繊維強化プラスチック(以下、
ACMという)が耐衝撃性に優れているとの知見を得、更
に、これと金属体との複合方法を種々検討した結果、AC
Mを金属体の裏面に固定することにより、耐衝撃性の大
きな複合成形物を完成させるに至ったものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、比引張強度が10×106cm以上であり、比弾
性率が2.5×108cm以上である高強度繊維を基材とし、熱
可塑性樹脂樹脂をバインダーとする、樹脂含有率が10−
30%である繊維強化プラスチックを、金属板又はその成
形物の裏面全面又はその一部に固定してなることを特徴
とする飛来物防御用複合成形物、である。
本発明において用いられる高強度繊維とは、引張強度
を密度で割った比引張強度が10×106cm以上であり、弾
性率を密度で割った比弾性率が2.5×108cm以上のもので
ある。具体的には、高強度ガラス繊維、高強度カーボン
繊維、アラミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、高強度
ポリエチレン繊維、ビニロン繊維などである。一般のガ
ラス繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維などは該当
しない。比引張強度あるいは比弾性率が前記値以下で
は、ACMと金属体との複合成形物の耐衝撃性は必ずしも
十分ではない。
これらの高強度繊維に塗布ないし含浸する熱可塑性樹
脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリ
オレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルア
セテート、ポリエーテルサルファイド、ポリフェニルサ
ルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポ
リウレタン、合成ゴムなどである。
ACMを得るには、通常高強度繊維に熱可塑性樹脂の溶
液、粉末又はその分散液を含浸又は塗布してプリプレグ
を作成し、このプリプレグを複数枚重ね、加熱加圧する
圧縮成形法を採用する。この際、樹脂の含有率は10−30
%である。樹脂の含有率が小さいほど衝撃力に対するエ
ネルギー吸収力が大きくなるが、10%未満であるとプリ
プレグをつくることが容易ではない。30%を越えると飛
来物に対する耐衝撃性が低下するようになる。
本発明において、金属板の厚みは通常1〜30mmであ
る。1mm以下では金属板を設ける効果が小さく、30mm以
上では軽量化の効果が得られ難い。好ましい厚みは1.5
〜5mmである。
一方、ACMの厚みは通常0.4〜25mmである。0.4mm以下
では衝撃エネルギー吸収効果が小さく、25mm以上厚くし
ても衝撃エネルギー吸収効果は大差ない。好ましい厚み
は1.5〜8mmである。
こうして得られたACMは、金属板又はその成形物の裏
面にボルトやリベットあるいは枠材等を使用して機械的
な方法で固定する、あるいは合成ゴム系等の接着剤で接
着する、などの方法で固定する。なお、固定する際、金
属板とACMの間に間隔を設けてもよい。
第1図乃至第3図に構成例を示す。いずれの場合も飛
来物が当たるのは金属板側である。第1図は金属板とAC
Mをボルトで固定したものである。第2図は金属板を二
次元加工しACMを接着剤で固定したものである。第3図
は金属板を三次元加工して半球状とし、同じく半球状の
ACMをボルトで固定したものである。
[実施例] 以下、本発明を実施例により説明する。
実施例1 比引張強度16×106cm、比弾性率3.2×108cmの高強度
ガラス繊維からなる織布(厚さ0.45mm、坪量500g/m2
にアクリル樹脂の15%MEK溶液を含浸し、乾燥して樹脂
分18%のプリプレグ(610g/m2)を作製した。このプリ
プレグを4枚重ね、280℃、100kg/cm2で加熱加圧して高
強度ガラス繊維強化アクリル樹脂ACM板を得た。
これをサイズ300×300×3.5mmの鋼板の四隅にタップ
を切り、前記ACM板を鋼板の裏面よりボルトで固定し、
第1図に示すような複合板を作製した。
実施例2 比引張強度20×106cm、比弾性率4.9×108cmの芳香族
ポリエステル繊維の織布(厚さ0.44mm、坪量260g/m2
に6−ナイロンの微粉末を吹き付けて樹脂分15%のプリ
プレグ(306g/m2)を作製した。このプリプレグを6枚
重ね、220℃、70kg/cm2で加熱加圧して芳香族ポリエス
テル繊維強化ナイロンACM板を得た。
これをサイズ300×300×3.5mmの鋼板の四隅にタップ
を切り、前記ACM板を鋼板の裏面よりボルトで固定し、
第1図に示すような複合板を作製した。
比較例1 実施例1で使用したものと同質で厚さ5mmの鋼板をそ
のまま使用した。
実施例3 比引張強度21×106cm、比弾性率6.4×108cmのアラミ
ド繊維からなる織布(厚さ0.45mm、坪量500g/m2)にABS
樹脂の18%MEK溶液を含浸し、乾燥して樹脂分20%のプ
リプレグ(625g/m2)を作製した。このプリプレグを6
枚重ね、二次曲面をもつ金型の中に入れ、150℃、100kg
/cm2で加熱加圧してアラミド繊維強化ABS樹脂ACM板を得
た。
これを同じ曲面を有する厚さ5mmのアルミニウム合金
板の裏面に合成ゴム系接着剤で接着固定し、第2図に示
すような複合板を作製した。
比較例2 実施例3で使用したものと同質で厚さ8mmのアルミニ
ウム合金板をそのまま使用した。
比較例3 実施例3で得られたアラミド繊維強化ABS樹脂ACM板を
実施例3で使用したアルミニウム合金板の表面側に前記
接着剤で接着固定した。
比較例4 実施例3で得られたアラミド繊維強化ABS樹脂ACMを同
じ曲面をもつ厚さ2mmと3mmのアルミニウム合金板の間に
挿入し、ボルト・ナットで固定した。なお、表面側のア
ルミニウム合金板を2mmとした。
実施例4 実施例1で使用した高強度ガラス繊維の織布にポリブ
チレンテレフタレート(PBT)樹脂の微粉末を吹き付け
て、樹脂分20%のプリプレグ(625g/m2)を作製した。
このプリプレグを4枚重ね、半球状の金型に入れ、150
℃、100kg/cm2で加熱加圧して高強度ガラス繊維強化PBT
樹脂ACM成形物を得た。
これを厚さ1.5mmの半球状鋼鉄成形体の内面に入れ、
球面のリブ状部分をボルト・ナットで固定し、第3図に
示すような複合成形物を得た。
比較例5 実施例4で使用したものと同質で厚さ2.5mmの半球状
鋼鉄成形体をそのまま使用した。
各例における複合成形物について、JIS T 8133に基づ
く耐衝撃性試験結果、成形物の厚さ及び1m2あたりの重
量を測定し、その結果を第1表に示す。なお、耐衝撃性
試験は成形物の表側に対して衝撃を加えた。
実施例1及び2では、金属板の裏面側のみにACMを設
けているので、比較例1の金属板のみの場合に比べて、
耐衝撃性が優れ、軽量化も達成できた。実施例3でも比
較例2と比べて、耐衝撃性に優れ、軽量化も達成でき
た。比較例3及び4は実施例3における金属板をACMの
裏面側、あるいは表面側と裏面側に分割して設けたた
め、実施例3に比べて、耐衝撃性が劣っている。実施例
4の場合も、比較例5と比べて、耐衝撃性に優れ、軽量
化も達成できた。
〔発明の効果〕
以上の実施例からも明らかなように、本発明の複合成
形物は、従来の耐衝撃性金属体に対して耐衝撃性を同等
以上としたとき、その重量を20〜60%軽減することがで
きる。
ACMを金属体の表面側に設けた場合、又は金属体間に
挿入した場合、ACMの耐衝撃性の効果はかなり小さくな
り、複合板にするメリットは少ない。
ACMを金属体の裏面側にのみ設けた場合、金属体のみ
の場合や金属体を使用しないACMの場合と比較して、同
一重量で耐衝撃性は25〜50%向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図乃至第3図は本発明のACMの構成例を示すもので
あり、第1図及び第2図は斜視図、第3図は断面図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 多々良 正明 東京都港区三田3丁目11番36号 住友ベ ークライト株式会社内 (56)参考文献 特開 昭57−57654(JP,A) 特開 昭59−1250(JP,A) 特開 昭57−70648(JP,A) 実公 昭63−6640(JP,Y2)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】比引張強度が10×106cm以上であり、比弾
    性率が2.5×108cm以上である高強度繊維を基材とし、熱
    可塑性樹脂樹脂をバインダーとする、樹脂含有率が10−
    30%である繊維強化プラスチックを、金属板又はその成
    形物の飛来物が当たる側の反対面全面又はその一部に固
    定してなることを特徴とする飛来物防御用複合成形物。
  2. 【請求項2】高強度基材に熱可塑性樹脂の溶液、粉末又
    はその分散液を含浸又は塗布してなるプリプレグを加熱
    加圧成形して得た繊維強化プラスチックを、金属板又は
    その成形物の、飛来物が当たる側の反対面全面又はその
    一部に固定してなる請求項1記載の飛来物防御用複合成
    形物。
  3. 【請求項3】前記金属板の厚みが1−30mmであり、前記
    繊維強化プラスチックの厚みが0.4−25mmである請求項
    1記載の飛来物防御用複合成形物。
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