JP2861192B2 - 化合物半導体結晶の気相成長法 - Google Patents

化合物半導体結晶の気相成長法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、有機金属気相成長法により、高濃度の炭素
ドープ化合物半導体結晶、例えば、GaAs、AlGaAs等のII
I-V族化合物半導体結晶を気相成長させる方法に関す
る。
(従来の技術) 有機金属気相成長法(OMVPE法)は、有機金属化合物
と金属水素化物を反応炉中で熱分解させることにより、
基板上に薄膜の単結晶を成長させる方法である。この方
法は、超薄膜の多層構造の形成が容易であり、量産性も
高いので、化合物半導体を用いたヘテロ接合デバイス用
ウェハの作製に用いられている。特に、ヘテロ接合デバ
イスの中でもヘテロ・バイポーラ・トランジスタ(HB
T)は、超高速で動作するので、盛んに開発されてい
る。
HBTは、n-GaAsのコレクタ、P+-GaAsのベース、n-AlGa
Asのエミッタから構成されている。HBTの構造は、第5
図に示すように、半絶縁性または導電性GaAs基板の上に
n+-GaAs及びn-GaAs層のコレクタ層を積層し、さらにp+-
GaAs層のベース層を積層し、さらにその上にn-AlGaAs層
及びn-GaAs層のエミッタ層を積層し、上記p+-GaAs層とn
-AlGaAs層との間にpn接合を形成したものである。そし
て、コレクタ電極はn+-GaAsコレクタ層の上に、ベース
電極はp+-GaAsベース層の上に、エミッタ電極はn-GaAs
エミッタ層の上にそれぞれ形成する。このようなHBTの
特性は、p+-GaAsのベース層の正孔濃度が高いほど優れ
た特性が得られ、p+-GaAsのベース層とn-AlGaAsのエミ
ッタ層との間のpn接合の界面が急峻なほど優れた特性が
得られる。
従来、OMVPE法でp型ドーパントとして亜鉛(Zn)が
用いられていたが、亜鉛は拡散係数が大きいため、成長
中にベース領域からエミッタ領域への拡散を避けること
ができず、急峻なpn接合を得ることができないという問
題があった。分子線エピタキシャル法(MBE法)では、
1×1020cm-3程度までドーピングすることが可能で、か
つ、拡散係数の小さなBeが一般的に用いられているが、
OMVPE法では安全性の観点から、Beを用いることは困難
である。そのため、亜鉛に比べて拡散係数が5桁程度小
さいMgがドーパントとして検討されている。しかし、Mg
原料のビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2M
g)やビスメチルシクロペンタジエニルマグネシウム(M
2Cp2Mg)は、室温状態の配管や反応管の内壁に吸着され
るため、反応管にMg原料の供給を開始しても、内壁への
吸着が飽和するまで、化合物半導体へのドーピング量が
一定にならず、また、Mg原料を反応管から排気管に切り
換えた後も、配管や反応管の内壁に吸着したMg原料が徐
々に脱離して基板結晶表面に運ばれるために、Mgが引き
続きドーピングされる。それ故、Mgのドーピングにより
p型化合物半導体を形成しようとするときに、急峻なド
ーピング・プロファイルを得ることができないという問
題があった。
そのため、最近では炭素ドーピングが検討されてい
る。例えば、J.Appl.Phys.Vol.64,No.8,p.3975〜3979,
K.Saito et al.では、ガスソースMBE法によりIII族原料
にトリメチルガリウム(TMGa)を、V族原料に金属ヒ素
を用いて1020cm-3程度の炭素ドーピングを行っている。
また、Appl.Phys.Lett.Vol.53,No.14,p.1317〜1319,
T.F.Kuech et al.では、有機金属気相成長法により、II
I族原料にTMGa、V族原料にTMAsを用い、成長圧力76Tor
rで、成長温度600℃で炭素ドープGaAsを成長するとき
に、炭素ドープ量の最高値が2×1019cm-3であったと報
告している。
(発明が解決しようとする課題) ところで、HBTの特性は、上記のように、ベース層の
キャリア濃度が高いほど向上する。通常、ベース層のキ
ャリア濃度は、2×1019cm-3以上が必要とされている
が、従来のOMVPE法において、76Torr以上の通常の減圧
成長または大気圧成長で、V族原料に有機金属化合物を
用いて炭素ドープGaAsを成長するときには、2×1019cm
-3を越えてドーピングすることは難しかった。
本発明は、上記の問題を解消し、HBTに適した高濃度
の炭素をドーピングし、かつ、そのドーピング量を制御
することのできる気相成長法を提供しようとするもので
ある。
(課題を解決するための手段) 本発明は、III-V族化合物半導体の有機金属気相成長
法において、V族原料として有機金属化合物を用い、1
〜40Torrの成長圧力及び625℃以下の成長温度の範囲
で、成長温度を変化させることにより、炭素のドーピン
グ量を制御することを特徴とする気相成長法である。
(作用) TMGaとTMAsを原料に用いてGaAsにドーピングされる炭
素は、TMGa及びTMAsのメチル基の炭素がガリウム若しく
はヒ素と結合した形で、結晶中に取り込まれると考えら
れている。
本発明者らは、III族原料にTMGaを、V族原料にTMAs
を用い、1〜76Torrの範囲の圧力で成長温度を変化させ
て炭素ドープGaAsの結晶成長を行い、炭素ドーピング量
の成長温度依存性を調べたところ、40Torr以下の圧力領
域において、炭素のドーピング量を著しく向上させるこ
とができ、かつ、成長温度が625℃以下で成長温度を変
化させることにより、高濃度の炭素ドーピング量を制御
することができ、表面状態の良好なエピタキシャル膜を
形成可能であることを見いだした。これは、40Torr以下
の成長圧力では、従来の減圧成長で用いられている60To
rr以上の圧力の場合に比べて、TMGa及びTMAsの分解が進
みにくいためであり、未分解のTMGa及びTMAsがメチル基
と結合した状態で基板表面に到達しやすく、大量の炭素
がガリウム又はヒ素と結合した状態でGaAs結晶に取り込
まれると考えられる。
第1図は、成長圧力10Torrで、成長温度を625℃から5
50℃まで変化させて成長させた炭素ドープGaAsについ
て、ホール効果測定法により求めた正孔濃度及び移動度
を示したものであり、図から明らかなように、炭素ドー
ピング量の成長温度依存性が認められ、また、成長温度
を550℃にすると1×1020cm-3という高濃度の炭素ドー
ピングが可能であり、ドーピングされた炭素は十分に活
性化していることが分かる。このことは、移動度が他の
ドーパントを用いたp型GaAs値と同等以上であることか
らも明らかである。
また、第2図は、上記炭素ドープGaAsについて、ホー
ル効果測定法により求めた正孔濃度と、SIMS測定法によ
り求めた炭素濃度とを対比して示したものであり、正孔
濃度と炭素濃度はよく一致していることが分かる。
第3図は、上記炭素ドープGaAsの中で成長温度550℃
で成長させたエピタキシャル膜についての、炭素濃度の
深さ方向のプロファイルを示した図であり、急峻なドー
ピング・プロファイルを示していることが分かる。
(実施例1) 反応管内の圧力を10Torrに保ち、予め反応管内にTMAs
を流した状態で、GaAs基板を成長温度まで加熱した後、
TMGaを反応管へ導入し、GaAsの成長を開始した。この
際、TMAsとTMGaのモル比を14とし、TMGaの流量を7ml/mi
nとして炭素ドープGaAsエピタキシャル層を90分間成長
させた後、TMGaを排気管に切り替えて、基板温度を室温
に戻して成長を終了した。この実験を、成長温度625
℃、600℃、575℃及び550℃の4つの条件で行った。
成長したGaAsエピタキシャル層について、正孔濃度及
び移動度をホール効果測定法で測定した結果を第1図に
示す。成長温度625℃の場合に1.4×1018cm-3から550℃
の場合の1×1020cm-3まで正孔濃度を制御することがで
きた。移動度は正孔濃度が1.4×1018cm-3において140cm
2/V・sec、1.0×1020cm-3においては63cm2/V・secであ
り、他のドーパントと同等以上の値であり、得られた炭
素ドープGaAsの結晶性が良好なことを示している。
(実施例2) 反応管内の圧力を10Torrに保ち、予め反応管内にTMAs
を流した状態で、GaAs基板を成長温度575℃まで加熱し
た後、TMGaとTMAlを反応管へ導入し、Al0.1Ga0.9Asのエ
ピタキシャル成長を開始した。この際、TMAsと(TMGa+
TMAl)のモル比を10とした。60分間成長させた後、TMGa
とTMAlを排気管に切り換え、基板温度を室温に戻して成
長を終了した。成長したAl0.1Ga0.9Asエピタキシャル層
について、室温でホール効果測定を行ったところ、正孔
濃度は1×1020cm-3であった。
(実施例3) 反応管内の圧力を10Torrにした状態で、予め反応管内
にAsH3を流した状態で、GaAs基板を650℃まで加熱した
後、TMGaを反応管へ導入し、厚さ0.5μmのアンドープG
aAsを成長させた。その後、TMGaを排気管へ切り換え、
一旦成長を中断し、基板温度を550℃に下げた。温度が
安定した後、TMAsを反応管に導入し、その2分後にAsH3
を排気管へ切り換え、TMGaを反応管に導入し、炭素ドー
プGaAsを成長させた。炭素ドープGaAsを0.15μm成長さ
せた後、TMGaを排気管へ切り換え、成長を中断した。そ
して、再びAsH3を反応管へ導入し、2分後にTMAsを排気
管へ切り換えてから、基板温度を650℃に変更した。基
板温度が安定してから、TMGaを反応管に導入してアンド
ープGaAsを0.5μm成長させ、その後TMGaを排気管へ切
り換え、基板温度を室温に戻して成長を終了させた。
得られた3層構造のエピタキシャル層をSIMS測定した
結果を第4図に示す。図から明らかなように、急峻な界
面を有する1×1020cm-3の炭素ドープ層を形成すること
ができた。
(発明の効果) 本発明は、上記の構成を採用することにより、V族原
料として有機金属化合物を用いた炭素ドーピングにおい
て、成長圧力を1〜40Torr、成長温度を625℃以下の範
囲で成長温度を変えることにより、高濃度の炭素ドーピ
ング量を制御可能となった。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例1のGaAsエピタキシャル膜についての正
孔濃度及び移動度の成長温度依存性を示す図、第2図は
実施例1のGaAsエピタキシャル膜についての正孔濃度と
炭素濃度とを対比した図、第3図は実施例1のGaAsエピ
タキシャル膜についての炭素濃度の深さ方向のプロファ
イルを示す図、第4図は実施例3のGaAsエピタキシャル
膜中の正孔濃度の深さ方向のプロファイルを示す図、第
5図はHBTの模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 白川 二 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 村井 重夫 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (56)参考文献 特開 昭63−143810(JP,A) 特開 平1−259524(JP,A) 特開 平1−320297(JP,A) Appl.Phys.Lett.53 (14)1988−10−3,pp.1317〜1319

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】III-V族化合物半導体の有機金属気相成長
    法において、V族原料として有機金属化合物を用い、1
    〜40Torrの成長圧力及び625℃以下の成長温度の範囲
    で、成長温度を変化させることにより、炭素のドーピン
    グ量を制御することを特徴とする気相成長法。
  2. 【請求項2】前記III-V族化合物半導体がGaAsであり、I
    II族原料がトリメチルガリウム又はトリエチルガリウム
    であることを特徴とする請求項(1)記載の気相成長
    法。
  3. 【請求項3】前記III-V族化合物半導体がAlGaAsであ
    り、III族原料がトリメチルガリウム又はトリエチルガ
    リウム、及び、トリメチルアルミニウムであり、V族有
    機金属化合物がトリメチルヒ素であることを特徴とする
    請求項(1)記載の気相成長法。
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