JP2854522B2 - ステッピングモータ及びそれに用いられるヨークの製造方法 - Google Patents
ステッピングモータ及びそれに用いられるヨークの製造方法Info
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Description
モータ及びそれに用いられるヨークの製造方法に関する
ものである。
化、高出力化の要求がなされている。ところで従来のス
テッピングモータは、ステータヨークやフレームヨーク
を、電磁軟鉄板(SUY),冷間圧延鋼板(SPC),
亜鉛メッキ鋼板(SEC)等を用いて構成している。し
かし、これら各種の材料は、直流磁場特性は良好なもの
の、実際のモータの駆動時における交流磁気特性は悪い
ことがわかった。すなわちこれらの鋼材は、変動磁場中
では電気抵抗率が低いため、多くの渦電流が発生し、そ
の結果鉄損が著しく大きくなる。そしてこれは駆動周波
数が高くなるほど顕著となる。従って、効率が低下する
原因となり、OA機器の電池駆動にともなう、ステッピ
ングモータの効率向上の要求を満たすためのネックとな
っている。
えばステータヨークやフレームヨークにケイ素鋼板やソ
フトフェライトを用いるもの(実開平3−10407
7,実開昭62−135577等)や、ステータヨーク
の一部(渦電流の流路)に貫通孔を設けるもの(特開平
3−283049)等、種々の提案がなされている。
た従来のステッピングモータでは、それぞれ以下に示す
問題を有し、いずれも渦電流による効率低下の問題を十
分に解消することはできなかった。
材として使用される上記SUYやSPCと比べて曲げ加
工(絞り加工)が困難であり、さらに、防錆のためのメ
ッキ処理が困難となる。そして、加工性を向上させるた
めにSiの添加量を減らすことも考えられるが、そうす
ると、電気抵抗率も低下してしまい、渦電流低減の効果
が無くなる。
は、SUYやSPCに比べて飽和磁束密度が1/3以下
と低く十分な出力トルクが得られないばかりか、曲げ加
工ができないとともに機械強度も弱く、しかも寸法精度
が粗くなるという問題がある。
は、貫通孔を形成するにつれて出力トルクが減少すると
いう傾向があり、しかも、加工工程が増えるとともにコ
スト高となる。さらに、貫通孔は櫛歯状磁極部以外の部
位に形成されるが、櫛歯状磁極部以外では磁束の変化が
少なく、もともと渦電流損が小さいために貫通孔を形成
した効果がさほどあらわれない。
もので、その目的とするところは、上記した問題点を解
決し、渦電流の発生を可及的に抑制し、高効率で安定し
た特性が得られ、しかも加工性も良好なステッピングモ
ータ及びそれに用いられるヨークの製造方法を提供する
ことにある。
ため、本発明に係るステッピングモータでは、多極着磁
された永久磁石からなるロータ部と、前記ロータ部と同
軸上で対向するように設けられた複数個の櫛歯状磁極部
を有するステータヨーク部と、前記ステータヨーク部の
前記櫛歯状磁極部の外周囲に装着した励磁コイルと、前
記励磁コイル並びに前記ステータヨーク部を囲繞する筒
状のフレームヨーク部とを備えたステッピングモータに
おいて、少なくとも前記ヨーク部の一部が、 Feを主成分とし、Crを9.0〜18.0重量を含む
とともに、微量添加物としてC:0%を除く0.02重
量%以下、Si:0%を除く0.7重量%以下、Mn:
0%を除く0.7重量%以下、P:0%を除く0.04
重量%以下、S:0%を除く0.005重量%以下、N
i:0%を除く0.5重量%以下、N:0%を除く0.
02重量%以下、O:0%を除く0.01重量%以下、
Al:0%を除く4.0重量%以下、Ti:0%を除く
0.4重量%以下を含有し、 かつ、下記式により定義されるF値が0以上8以下のフ
ェライト単相組織であるFe−Cr合金で形成した。
0Ni −0.6Mn-10.8 (但し:各組成の単位は重量%) ここでF値とは、フェライト系ステンレス鋼の組織安定
度の指数である。F値がマイナスの場合は、安定したフ
ェライト組織が得られず、良好な磁気特性が得られな
い。従って、F値は0以上にする必要がある。しかし、
F値が大きくなると磁束密度が低下しモータ特性を低下
させる。そして実験の結果その上限は8.0であった。
従って、F値を0以上8以下に限定した。
耐食性を確保するのに必須の元素であり、9.0重量%
以上を含有させないと通常の使用環境下で必要な防錆力
が発揮しない。一方、Crを多量に含有させると磁束密
度が低下し、磁気特性が劣化する。そして、18.0重
量%を越えると、所望のモータ性能が得られない。そこ
で、上記の範囲とした。
は、以下の理由による。すなわち、上記微量添加物はい
ずれも現在のところ不可避不純物であり、Fe−Cr合
金製造時に完全に除去することは出来ない。しかし、完
全に取除くことができるならば、上記F値を満足するこ
とを条件に所定の物質の添加量を0重量%すなわち、添
加しなくてもよい。
C,P,S,Ni,N,Oの元素は、いずれも磁気特性
や耐食性等を劣化させる働きを有するため、本来的には
添加量を0にするのが望ましい。そして、各種の実験を
行った結果、ステッピングモータとして所望の特性が得
られるための上限として、下記に示すようにそれぞれの
添加量の上限値を決定した。
特性や耐食性が劣化する。そして、含有量が0.02重
量%を越えると最終製品であるモータとして必要な性能
が得られなくなるため、上記のように上限を0.02重
量%に限定した。また、Pは、磁気特性を劣化させる元
素であり、含有量が0.04重量%を越えると最終製品
であるモータとして必要な性能が得られなくなるため、
上記のように上限を0.04重量%とした。Sは不純物
元素であり、硫化物を形成しやすく磁気特性を劣化させ
るため、低く抑える必要がある。そして含有量が0.0
05重量%を越えると、所望のモータ性能が得られない
ので、係る範囲とした。Niはオーステナイト生成元素
であり、磁気特性を劣化させる。そして含有量が0.5
重量%を越えると、所望のモータ性能が得られないので
係る範囲とした。NはAl、Ti等と窒化物を形成しや
すく磁気特性を劣化させるため、低く抑える必要があ
る。そして含有量が0.02重量%を越えると所望の特
性が得られないので、係る範囲とした。Oは不純物元素
であり、酸化物を形成しやすく磁気特性を劣化させるた
め、低く抑える必要がある。そして、含有量が0.01
重量%を越えると所望のモータ性能が得られないので、
係る範囲とした。
不純物として僅かながら含まれているが、係る元素は、
所望の特性を得るためや、組成の安定性の確保或いは製
造プロセス上の要請などから、さらに積極的に添加する
ものである。
であるため所定量添加するのが好ましいが、磁気特性を
劣化させる元素である。そして、含有量が0.7重量%
を越えて添加しても上記脱酸の効果は飽和してしまうと
ともに、所定のモータ性能が得られなくなるので、上限
を係る値とした。
ある。そして脱酸にともなって不純物を低減し、磁気特
性を向上させる作用を有している。しかし、4.0重量
%を越えるとかえって磁気特性を低下させることになる
ので、その上限を4.0重量%とした。
フェライト単相組織を確保するのに有効な元素であり、
組成(F値)の安定性に寄与し、量産性が向上する。一
方、0.4重量%以上を越えて含有させても、上記効果
は飽和し、高価なTiを添加するメリットがなくなる。
よって、上限を0.4重量%とした。
に必要な元素であるとともに、Tiと同様、フェライト
生成元素である。よって、上記各元素と同様の理由から
所定量添加するのが望ましいが、本発明鋼においては、
C,N,Mn,Niの添加量を通常のものよりも低減し
ているため、過剰に添加する必要がなく、0.7重量%
程度と添加すれば十分であり、それよりも多く添加して
も効果が飽和し、添加するメリットがない。よって、上
限を0.7重量%とした。
いられる本発明に係るヨークの製造方法では、まず、上
記構成のFe−Cr合金からなる所定形状の板材をプレ
ス加工して、所定形状に形成する。次いで焼鈍を行うよ
うにした。そして、好ましくは、前記焼鈍の温度が、7
00℃以上1200℃以下で行うようにすることであ
る。
いと歪みは十分取れず、磁気特性の向上が期待できな
い。また、磁気焼鈍温度は高いほど歪みを除去し、本発
明では品質をF値で管理しているため、使用する材料は
安定したフェライト組織となっているので、たとえ焼鈍
温度を高くしてもマルテンサイトが析出することはな
く、磁気特性は向上(一定の値で飽和する)する。しか
し、1200゜Cを越えると焼鈍炉の劣化が著しく、磁
気焼鈍そのものが困難となるため、上限を1200゜C
とした。
組織のFe−Cr合金を用いるため、電気抵抗率ρがS
UYやSPCと比べ、5〜10倍と高くなる。そして、
渦電流はヨークの電気抵抗率に反比例するため、本発明
のステッピングモータでは、例えば、モータ駆動中、交
流磁場が生じているとき渦電流の発生が可及的に抑制さ
れる。その結果、損失が少なくなり、入力電力に対する
出力トルクが向上し、低消費電力のステッピングモータ
が実現できる。そして、このように渦電流を流れにくく
することから、逆磁場も減少し、入力電流を一定とする
と総磁束量が増加し、出力トルクが増大する。換言すれ
ば、同一出力トルクを得るためには、励磁コイルに流す
電流も少なくてすみ、その結果銅損も低減できる。この
ように鉄損並びに銅損が低減すると、それにともないモ
ータ自身の発熱も低く抑えられる。
あるので、従来のFe系合金における製造設備をそのま
ま用いて所定の形状のヨークを形成できる。そして、本
発明では、材料組成をF値で管理しているので、フェラ
イト組織が安定したもののみからなり、加工性が極めて
良好で絞り加工も可能となる。
レームヨークにもFe−Cr系合金を用いることができ
る。そして、少なくともヨークの一部に所定のFe−C
r系合金を用いると、当該部分で特性が改善される。そ
して、特に、磁束密度の変化の大きいステータヨークを
上記Fe−Cr合金で形成したものが、最も効果的であ
る。
金を用いてヨークを製造する場合には、板材をプレス加
工して少なくとも櫛歯状磁極部を折り曲げ加工してステ
ータヨークを形成したり、絞り加工をしてフレームヨー
クを形成したりする。すると、このプレス加工時に加え
られたヨークの残留応力による歪みが、ヨークの磁気特
性を劣化させる。具体的には保磁力(Hc)の増加と透
磁率(μ)の低下である。そしてHcの増加はヒステリ
シス損の増大につながり、μの低下は磁束密度の低下に
つながり、しいてはモータ特性である出力トルク・効率
が低下する。つまり、上記Fe−Cr合金を用いた効果
が、充分に発揮し得ない。なお、プレス加工して形成さ
れた本発明のヨークを用いて製造したステッピングモー
タのモータ特性でも、従来のSPC等を用いたものに比
べれて、充分に改善されている。
ことで、残留応力による歪みが除去され、保磁力(H
c)の低減と透磁率(μ)の回復が実現し、ステッピン
グモータの出力、効率が向上する。
SUYやSPCと比較しても大きい。その理由は、モー
タ駆動の交流磁界中において、従来鋼の磁束密度低下の
主原因は、磁気焼鈍には左右されない渦電流によるもの
である。一般にヒステリシス損は磁束密度の1.6乗に
比例することが知られており、渦電流により磁束密度が
低くなる従来鋼は本発明鋼よりもヒステリシス損自体が
小さいため、磁気焼鈍による効果が少ないのである。一
方、本発明鋼はその逆で渦電流損が従来鋼と比べてはる
かに少ないために、磁束密度が高く、その分だけ加工に
よるヒステリシス損が大きくなる。つまり、ヒステリシ
ス損が大きい分だけ本発明鋼の方が磁気焼鈍効果は大き
く、その必要性は高くなる。
それに用いられるヨークの製造方法の好適な実施例を添
付図面を参照にして詳述する。図1,図2は本発明に係
るステッピングモータの第1実施例を示している。同図
に示すように、シャフト1の周囲に連結部材2を介して
筒状の永久磁石3が固着一体化されてロータ4が形成さ
れている。この永久磁石3の外周囲は、円周方向に多数
分割着磁されている。
モータであるため、上記ロータ4の周囲には、第1〜第
4のステータヨーク5〜8が同心円状に配置されてい
る。具体的には、第1,第2のステータヨーク5,6で
第1相を構成し、第3,第4のステータヨーク7,8で
第2相を構成している。そして、各ステータヨーク5〜
8は、平板のリング状のフランジ部5a〜8aの内周囲
を、所定方向に90度折り曲げることにより、櫛歯状磁
極部5b〜8bを形成している。この対となるステータ
ヨーク(5と6,7と8)は、ともに、櫛歯状磁極部5
bと6b,7bと8bの先端側を向い合わせるととも
に、互いの櫛歯状磁極部の各歯の未形成部位に挿入配置
する。そして、第1相側と第2相側電気角は90度ずれ
ている。
7と8)の外周囲に、コイルボビン9aに巻き付けたコ
イル部9bからなる励磁コイル9を装着する。これによ
り、励磁コイル9は、フランジ部(5aと6a,7aと
8a)間に介在する。
〜8並びに励磁コイル9を囲繞するように、その外周囲
に同心円上に有底のカップ状のフレームヨーク10を配
置する。換言すれば、フレームヨーク10内に上記各部
品を挿入配置する。その状態で、フレームヨーク10の
開放側をキャップ11で被覆する。
ク10の底面中央に形成された透孔10aとキャップ1
1に形成した透孔11aにそれぞれ挿入され回転可能に
軸受け支持され、キャップ11側のシャフト1の端部は
透孔11aを内を貫通して所定長さ分だけ外部に突出
し、出力軸として機能する。なおまた、キャップ11の
外側面には、ステッピングモータを他の装置の所定位置
に固定するためのフランジ12が一体に形成されている
(図1参照)。なお、上記した各部品の形状構成は、従
来のものと基本的に同じである。そして、本例では、ロ
ータ部,ステータヨーク部,フレームヨーク部がそれぞ
れ独立した部品で形成される。
ーク5〜8をいずれも所定の組成比からなるフェライト
単相組織のFe−Cr合金を用いて形成している。さら
に、本発明で用いられる上記Fe−Cr合金は、加工性
も極めて良好で絞り加工をすることができるので、フレ
ームヨーク10も上記も上記と同様のFe−Cr合金を
用いて形成している。
て、Feを主成分とし、Crを9.0〜18.0重量を
含むとともに、微量添加物としてCを0.02重量%以
下、Siを0.7重量%以下、Mnを0.7重量%以
下、Pを0.04重量%以下、Sを0.005重量%以
下、Niを0.5重量%以下、Nを0.02重量%以
下、Oを0.01重量%以下、Alを4.0重量%以
下、Tiを0.4重量%以下を含有し、かつ下記式によ
り定義されるF値が0以上8以下になるものを用いてい
る。ただし、各添加物に対し0%を除く。
有量は、F値を満たすようにして決定された各元素の含
有量の残部となる。但し、本発明では、上記以外の他の
微量添加物を混入させてもよく、係る場合には、その混
入量分だけFeの含有量が低下する。また、上記微量添
加物は、不可避不純物であるので、厳密に0重量%とす
ることはできない。そして、このことは、F値の決定式
におけるプラス要因(フェライト組織を安定化させる機
能を有するもの)である、Si,Al,Tiについても
同様のことがいえる。
もないヨーク中で発生しようとする渦電流を、可及的に
抑制することができ、効率が向上する。換言すれば、同
一出力トルクを得るためのステッピングモータは、本発
明品を用いることにより、効率向上分だけ小型化を図る
こともできる。そして、加工性は従来のFe系合金を用
いて形成したヨークと何等変わらないので、プレス加工
等をするに際し同一の型を用いて製造することができ
る。
この実施例は、上記した実施例と相違し、フレームヨー
ク部が各相毎に軸方向に分割された構成のステッピング
モータに適用した例を示している。すなわち、絞り加工
で形成されるカップヨーク15の開口部に、それと対応
する第2のステータヨーク6(第3のステータヨーク
7)を嵌合し、両ヨークにより形成される空間内に励磁
コイル9を装着する。そして、上下のカップヨーク1
5,15同士を所定の角度位置で付き合わせると共に溶
接して一体化する。
開口されるため、係る部位にフランジ12,12′を装
着することにより閉塞する。そして、ロータ4は、両フ
ランジ12,12′に形成された軸受に回転自在に支持
される。
とくリング状のフランジ15aの内周縁に櫛歯状磁極部
15bが立ち上げ形成されてステータヨーク部が構成さ
れ、またそのフランジ15aの外周縁には円筒状の側壁
すなわちフレームヨーク部15cが形成される。つまり
本例では、ステータヨーク部とフレームヨーク部とが同
一部品(カップヨーク15)で形成される。本発明で
は、この実施例のように、ステータヨーク部,フレーム
ヨーク部等が必ずしも別個の部品で構成される必要はな
く、1つの部品で複数のヨーク部を構成したり、逆に複
数の部品で1つのヨーク部を構成するなど種々の態様の
ものを用いることができ、従来ある各種の構成のステッ
ピングモータに適用することができる。
ヨーク6,7及びカップヨーク15を上記所定の組成比
からなるFe−Cr合金で形成している。これにより、
モータ作動時に交流磁界の磁路を形成する第2,第3の
ステータヨーク6,7及びカップヨーク15の部分での
交流磁気特性が改善され、モータ全体での特性の向上が
図れる。
2に示す)のモータと、同一形状からなる従来のモータ
(相違点はステータヨークの材質)を製造し、それぞれ
のモータ特性を評価した。駆動条件は、2相励磁バイポ
ーラ定電流チョッパ駆動である。そしてその結果を図
4、図5に示す(四角形のマーク:従来品,菱形のマー
ク:本発明品)。図4は周波数に対するプルアウトトル
ク特性で、図5はその時の効率である。図4から明らか
なように、本発明のステッピングモータが高トルクとな
り、駆動周波数が高くなればその差は大きくなる。また
図5から明らかなように効率もトルクと同様な傾向を示
す。なお、実験に用いたステータヨークの材料は、従来
品はSPCを用い本発明品はF値が2〜6の範囲になる
所定のFe−Cr合金を用いた。そして、F値が係る範
囲内であれば、そのF値が異なっていたり、具体的な元
素の含有量が異なっていてもその特性は図示するものと
ほぼ同様の特性が得られた。
対する材料レベルの交流磁気特性を求めた。具体的に
は、所定のF値になるように各元素の含有量を調整した
Fe−Cr合金を製造し、次いで各鋼の1mmt板から
外形25mmおよび内径15mmのリング状試験片を切
り出し、850℃×1時間の焼鈍の後、磁界の強さ80
0A/m、周波数500Hzの条件のもと、B−Hアナ
ライザで交流磁気特性を測定した。
境界として磁束密度が急激に上昇し、F値が8程度まで
は高磁束密度を維持する(特に6以下まではピーク値を
ほぼ維持する)。そして、F値が8を越えると、磁束密
度が低下する傾向にあることがわかった。このことか
ら、F値が0以上8以下が望ましいことが確認できた。
なお、この実験では、上述の如く試験片に対して焼鈍を
行ったが、これは、後述する本発明に係るヨークの製造
方法に示す如く、焼鈍を行った方が特性が改善されるた
めであり、焼鈍の有無に拘らず特性の傾向は同じであ
る。すなわち、図示省略するが、実験の結果、F値のピ
ーク値が0.8[T]程度に低下するが、F値が0を境
界として磁束密度が急激に上昇し、F値が8程度までは
高磁束密度を維持し、F値が8を越えると、磁束密度が
低下する傾向は同じであった。
し、それを用いてヨークを作製し、ステッピングモータ
を組み立てて評価した。すなわち、まず表1〜表3に示
す組成の合金を溶解し、熱間圧延、冷間圧延、仕上げ焼
鈍を施し、厚さ1mmの板を製造した。ここで、A−1
は従来鋼のSUYであり、B−1〜26は本発明鋼、C
−1〜9は比較鋼である。A−1については、加工後、
従来から防錆処理のために行っているNiメッキを施し
た。なお、各表中において、Ti,Al,Cr,Mnに
ついては添加量である。したがって、表2,表3におい
てTiの添加量が0(「−」で示す)としているが、上
記した如く不可避不純物としてTiも含まれているた
め、非常に微量ではあるが(測定不能)厳密にはTiも
含有されている。同様に、上記4つの元素についてはい
ずれも積極的に添加した量を示しているので、厳密にい
うと、実際の含有量は各値よりも僅かに多くなるが、い
ずれにしてもその増加分はごく僅かで誤差の範囲内程度
である。
性の磁束密度、モータ特性、耐食性、電気抵抗率は、そ
れぞれ表4〜表6に示すようになった。なお、直流磁気
特性は、各鋼の厚さ1mmの板から外形45mm及び内
径33mmのリング状試験片を切り出し、850℃×1
時間の焼鈍後、測定条件を変えて測定した。すなわち、
磁界の強さを400A/m(B5),800A/m(B
10),2000A/m(B25)と変えた時の直流磁
気特性を測定した。また、モータ性能は各鋼を用いて作
製したヨークを用いてステッピングモータを組み立て、
従来鋼(A−1)を基準に他のものを比較した。そし
て、従来と同レベル及びそれ以下のものを×、従来より
も優れているものを○とした。
した24時間の塩水噴霧試験を行い評価した。目視評価
によりほとんど錆が発生しないものを○、面積率で10
%以上の錆が発生したものを×と判定した。さらに、電
気抵抗率は、ホイーストンブリッジ法により試験片とし
て厚さが1mmで一辺が500mmの板材を用いて測定
したものである。
体的な数値の相違や、組成比の相違に関係なく、所定の
範囲内に含まれていれば、モータ特性・耐食性も良好
で、電気抵抗率も高いことが確認された。なお、Tiは
組成の安定に寄与するので、F値が同程度の場合には、
Tiを添加した方が電気抵抗率が全体的にやや高くなる
傾向がある。
特性、耐食性は良好にも関わらず、電気抵抗率が9.8
μΩ・cmと低く渦電流が流れやすいため、モータ特性
も低下する。また、A−1鋼の場合にはNiメッキによ
る防錆工程が必須であり、防錆処理をしない場合には、
錆が発生する。一方、本発明品では、特別な防錆処理を
しなくても上述の如く錆が発生しない。
も1つの元素の含有率及びまたはF値を所定の範囲外に
した比較鋼(C−1〜C−9)は、いずれも直流磁気特
性が低く、モータ性能も悪い。そして、C−1は電気抵
抗率が48.1μΩ・cmでC−6は電気抵抗率が4
6.4μΩ・cmと高いが、F値が0未満であるため、
フェライト組織の安定性に欠け、磁気特性が大幅に落ち
る。また、Cr量が8.90重量%(C−1),8.1
2重量%(C−6)と低いため耐食性も悪い。
量,Mn含有量のいずれかが高い。さらにF値も0未満
となっている。その結果、磁気特性が低下する。C−
5,C−9鋼は、Oの含有量が高いため、磁気特性が低
下している。また、C−2,C−7鋼に関してはCrの
含有量が多いために耐食性は良好であるものの、Crが
19.52重量%,20.02重量%と高すぎ、F値も
8以上であるため、磁気特性が劣り、モータ特性が低下
する。
発明方法の実施例について説明する。上記したようにス
テータヨークは、Fe−Cr合金の板材に対し、プレス
加工により図2等に示すような平板のリング状のフラン
ジ部5a〜8aの内周囲を所定方向に90度折り曲げ
て、櫛歯状磁極部5b〜8bを形成する。また、フレー
ムヨークやカップヨークは、絞り加工によって、所定形
状に形成される。すると、この加工時に加わる残留応力
により磁気特性が劣化する。
定雰囲気下,所定温度で焼鈍を行なう。具体的には、ア
ルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気下、或いは真空中
で行なうのが好ましい。また、温度としては、実験の結
果700℃〜1200℃で行なうのが好ましい。
を求めるため、焼鈍温度をパラメータとし、磁束密度を
測定した。なお、この実験は材料自体の特性であるた
め、所定の材料を偏平リング板、すなわち、ステータヨ
ークのフランジ部と同一の形状(内径15φ,外径25
φ,厚さ1mm)に加工し、さらにそれを中央から2つ
に折り曲げて、なす角が90度になるようにプレス加工
した。これにより、上記櫛歯状磁極部の形成時に生じる
ストレス(残留応力)を疑似的に与えた。また、使用し
た材料の組成は、磁気特性が安定かつ良好なF値が2〜
6となる所定の組成比のものを用いた。そして、組成の
異なる複数種の材料を用いて同様の実験を行ったが、い
ずれも図示するような特性となり、組成の相違による特
性の変化は認められなかった。
磁界の強さが800A/m、周波数が500Hzの条件
のもとB−Hアナライザで交流磁気特性を測定した。そ
して、従来材料であるSUYを焼鈍して得られる最大磁
束密度(0.8[T])の1.3倍以上である700℃
の時の磁束密度(1.05[T])を100%として、
各温度における磁束密度の割合を求めた結果を図7に示
す。なお、SUYの最大磁束密度は、焼鈍温度を700
℃よりも高温(例えば1000℃程度)で行った時の値
であり、従来鋼を700℃で焼鈍したときの磁束密度
(0.8[T]よりも小さい)を基準とすると、本発明
の特性向上率はさらに優れる。
なると、最大磁束密度の割合は110%(1.15
[T])となり飽和し、一方、温度が低くなるにつれて
磁束密度は低下する傾向にある。そして、焼鈍温度が7
00゜C以上であれば歪みは十分取れ、磁気特性が向上
することがわかった。なお、1200゜C以上では前述
の通り、外的要因により焼鈍そのものが困難であるた
め、実験は1200℃で停止した。
特性の磁束密度の劣化とアニールによる回復レベルを示
す。この時の磁気焼鈍条件は、850℃1時間、交流磁
気特性の測定条件は、磁界の強さが800A/m、周波
数が500Hzである。また、上記と同様に、焼鈍前に
板材を折り曲げて疑似加工を行ったものと、係る疑似加
工後に焼鈍を行ったもののそれぞれの磁気特性を測定し
た。
と、加工後の焼鈍による磁気特性の回復はFe−Cr合
金が、最も大きく、焼鈍の必要性が高いことがわかる。
すなわち、従来から一般に行われているSUY,SPC
ではその増加の程度がともに約33%であったのに対
し、本願発明のものでは50%増となり、より顕著な効
果を発揮することが確認された。
形で示す上記した焼鈍なしの本発明品と同一の材料・寸
法構造のものを用い、プレス加工により櫛歯状磁極部を
加工後、850℃×0.5時間の焼鈍を行なった。する
と、図中三角形のマークで示すように、焼鈍なしのもの
に比べ、焼鈍を行なった方がプルアウトトルク特性,効
率のいずれもがさらに向上することが確認された。
いずれも、所定のFe−Cr合金のものを用いて形成し
ているが、すべてのヨークにFe−Cr合金を使用する
ことなく、部分的に使用してもよい。例えば、磁束密度
の変化の少ないフレームヨークは従来のFe系合金を用
いてもよい。
ーク10′をFe系合金としたり、さらには、一部のス
テータヨーク(図示の例では、ステータヨーク5′,
6′)をFe系合金とし、他のステータヨーク7,8の
みを所定のFe−Cr合金で製造していも良い。
2実施例の構造において、カップヨーク15′をFe系
合金で形成し、中間のステータヨーク6,7のみをFe
−Cr合金で形成するようにしてもよい。
をFe−Cr合金を用いることにより、その用いた部位
での渦電流の発生を抑制できるため、従来品に比べて特
性が向上する。そして、実際に上記した各特性の実験を
行ったところ、図4,図5に示す発明品の特性に比べ、
特性の向上は約1/2(発明品と従来品の特性の中間)
程度となった。
みをFe−Cr合金で製造する場合、その使用箇所は、
図示の例に限ることなく、その組み合わせは任意であ
る。さらに、ステータヨークのうち櫛歯状磁極部に相当
する部分をFe−Cr合金で製造しても良い。すなわ
ち、本発明でいうところのステータヨークの一部とは、
係る変形例のように、ステッピングモータを構成する複
数のステータヨークのうちの一部と、1つのステータヨ
ークのうちの一部分の両者を含む概念である。さらに
は、図示省略するが、すべてのステータヨークを所定の
Fe−Cr合金で形成し、フレームヨークは従来と同様
にFe系合金で形成するようにしてももちろんよい。
グモータでは、ヨークの一部を所定のFe−Cr合金で
形成したため、渦電流の発生を可及的に抑制することが
でき、その結果、渦電流により生じる鉄損の軽減を図
り、効率が向上する。また、Fe−Cr合金では、防錆
効果を有してるため、特別なメッキコーティングも不要
となり、工数の削減をすることもできる。しかも、微量
添加物の含有量を所定の値に設定するとともに、材料の
品質をF値で管理するようにしたため、安定した組成の
フェライト単相組織となり、高品質で加工性も良好とな
る。その結果、絞り加工が可能となり、従来から用いら
れているヨークの製造プロセス・設備をそのまま使用す
ることができる。その結果、高出力のステッピングモー
タを実現することができる。さらには、フェライト組織
が安定しているため焼鈍処理を行う場合に、その焼鈍温
度を高温度にしてもマルテンサイトを生じることがなく
なる。
は、プレス加工により一旦劣化した磁気特性を回復する
ことができ、Fe−Cr合金を用いる効果をより発揮す
ることかできる。
を示す一部破断斜視図である。
を示す分解斜視図である。
を示す分解斜視図である。
る。
示す図である。
磁束密度の関係を示す図である。
す分解斜視図である。
示す分解斜視図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 多極着磁された永久磁石からなるロータ
部と、 前記ロータ部と同軸上で対向するように設けられた複数
個の櫛歯状磁極部を有するステータヨーク部と、 前記ステータヨーク部の前記櫛歯状磁極部の外周囲に装
着した励磁コイルと、 前記励磁コイル並びに前記ステータヨーク部を囲繞する
筒状のフレームヨーク部とを備えたステッピングモータ
において、 少なくとも前記ヨーク部の一部が、 Feを主成分とし、Crを9.0〜18.0重量%を含
むとともに、 微量添加物としてC:0%を除く0.02重量%以下、
Si:0%を除く0.7重量%以下、Mn:0%を除く
0.7重量%以下、P:0%を除く0.04重量%以
下、S:0%を除く0.005重量%以下、Ni:0%
を除く0.5重量%以下、N:0%を除く0.02重量
%以下、O:0%を除く0.01重量%以下、Al:0
%を除く4.0重量%以下、Ti:0%を除く0.4重
量%以下を含有し、 かつ、下記式により定義されるF値が0以上8以下のフ
ェライト単相組織であるFe−Cr合金で形成したこと
を特徴とするステッピングモータ。 F値=Cr+Si+2.1(Al+Ti)−37.0(C+N)−2.0N i−0.6Mn−10.8 (但し:各組成の単位は重量%) - 【請求項2】 Feを主成分とし、Crを9.0〜1
8.0重量%を含むとともに、 微量添加物としてC:0%を除く0.02重量%以下、
Si:0%を除く0.7重量%以下、Mn:0%を除く
0.7重量%以下、P:0%を除く0.04重量%以
下、S:0%を除く0.005重量%以下、Ni:0%
を除く0.5重量%以下、N:0%を除く0.02重量
%以下、O:0%を除く0.01重量%以下、Al:0
%を除く4.0重量%以下、Ti:0%を除く0.4重
量%以下を含有し、 かつ、下記式により定義されるF値が0以上8以下のフ
ェライト単相組織であるFe−Cr合金からなる板材を
プレス加工し、 次いで焼鈍を行うようにしたステッピングモータ用のヨ
ークの製造方法。 F値=Cr+Si+2.1(Al+Ti)−37.0(C+N)−2.0N i−0.6Mn−10.8 (但し:各組成の単位は重量%) - 【請求項3】 前記焼鈍の温度が、700℃以上120
0℃以下で行うようにした請求項2に記載のステッピン
グモータ用のヨークの製造方法。
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