JPH08120420A - 耐食性軟磁性鋼 - Google Patents

耐食性軟磁性鋼

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JPH08120420A
JPH08120420A JP27435994A JP27435994A JPH08120420A JP H08120420 A JPH08120420 A JP H08120420A JP 27435994 A JP27435994 A JP 27435994A JP 27435994 A JP27435994 A JP 27435994A JP H08120420 A JPH08120420 A JP H08120420A
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JP
Japan
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steel
flux density
less
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JP27435994A
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English (en)
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Ryuji Hirota
龍二 広田
Toshihiko Takemoto
敏彦 武本
Koji Seto
孝二 瀬戸
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F1/00Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties
    • H01F1/01Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials
    • H01F1/03Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity
    • H01F1/12Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity of soft-magnetic materials
    • H01F1/14Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity of soft-magnetic materials metals or alloys
    • H01F1/147Alloys characterised by their composition
    • H01F1/14766Fe-Si based alloys
    • H01F1/14775Fe-Si based alloys in the form of sheets
    • H01F1/14783Fe-Si based alloys in the form of sheets with insulating coating

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁心用途にも磁気シールト用途にも好適な耐
食性軟磁性鋼を得る。 【構成】 重量%で,C:0.02%以下,Si:0.7
〜3.0%,Mn:0.7%以下,P:0.04%以下,
S:0.005%以下,Ni:0.5%以下,Cr:9.
0〜18.0%,N:0.02%以下,Al:1.0%以
下(無添加を含む)を含有し,且つ F値=Cr+Si+2.1Al−37.0(C+N)−
2.0Ni−0.6Mn−10.8 で定義されるF値が0以上8以下となるように各成分量
が調整され,残部がFeおよび不可避的不純物からな
り,このF値に応じて図1の斜線域の温度範囲で水素雰
囲気下,窒素水素混合雰囲気下または真空下で磁気焼鈍
を施してなる,フエライト単相組織を呈し且つ磁束密度
10が1.2(テスラ)以上を有する耐食性軟磁性鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,磁気シールド用,リレ
ー鉄心用,各種モーターのヨーク用などに好適な高い透
磁率と磁束密度を示す耐食性軟磁性鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より,磁気シールド材には主として
Fe−Ni合金が使用されている。磁気シールド効果は
透磁率に大きく依存しており,Fe−Ni合金のなかで
もパーマロイB(Fe−46Ni)などが高透磁率を示
すので,磁気シールド材に広く用いられている。
【0003】一方,リレー磁心や各種モーターのヨーク
には,従来より電磁軟鉄が広く使用されている。電磁軟
鉄はそれ自身では耐食性に劣るので,通常は部品加工後
にメッキ処理が施される。これらリレー磁心やモーター
ヨークの特性は磁束密度と電気抵抗に大きく依存してお
り,電磁軟鉄は高磁束密度を有する材料として知られて
いる。
【0004】また,耐食性の軟磁性材料としてFe−C
r系合金が知られており,例えば特開平6−10094
0号公報や特開平5−255817号公報にこの種の合
金が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】磁気シールド材に使用
されているパーマロイBは優れた磁気特性を示す高透磁
率材料であるが,Niを多量に含有しているために非常
に高価である。したがって,磁気シールド用途に使用可
能な高透磁率を有する安価な材料の開発が望まれてい
た。
【0006】一方,リレー磁心や各種モーターのヨーク
に使用されている電磁軟鉄は耐食性の観点からNiメッ
キやユニクロメッキ等が施されるが,メッキ処理コスト
が高く,また電磁軟鉄にこれらのメッキを施すと磁気特
性の劣化が免れないという問題がある。さらに,メッキ
製品ではメッキ厚がばらつくことが避けられず,その結
果,リレーやモーター特性がばらつくなどの問題もあ
る。さらに電磁軟鉄は電気抵抗率が低いという本来的な
性質がある。このためにうず電流損失が大きくなるとい
う問題がある。このようなことから,磁束密度が電磁軟
鉄なみに高く,しかも素材ままで耐食性が良好で且つ電
気抵抗が高いリレー磁心材料や各種モーターヨーク材料
の開発が望まれていた。
【0007】耐食性軟磁性材料として知られるFe−C
r系合金は,部品に成形加工後において磁気特性の改善
のために磁気焼鈍が施されるが,成分系によってはこの
磁気焼鈍の際にマルテンサイトが生成して磁気特性が劣
化してしまう場合もある。例えば特開平6−10094
0号公報のものは加工性の改善のために,NiとMn場
合によってはさらにCuを添加しているが,850℃以
上で磁気焼鈍を行った場合にはマルテンサイトが生成し
て磁気特性が劣化してしまうので,磁気焼鈍温度の上限
は850℃に規定されている。
【0008】特開平5−255817号公報のものでは
Fe−Cr系合金中のO+Sを0.006重量%以下に
することにより最大透磁率10000以上を得ている。
だがO+Sを安定して0.006重量%以下に低減する
のは鋼の製造操業上困難を伴うという問題がある。
【0009】かような要望や問題は,Fe−Cr系の耐
食性軟磁性材料において,その耐食性を良好に維持しな
がら,リレーや各種モーター用途に要求される磁束密度
10が1.2T(テスラ)以上で且つ電気抵抗率ρが8
0(μΩ・cm)以上を安定して確保でき,同時に,磁気
シールド用途にも適用可能な最大透磁率μm が1000
0以上を具備する材料が得られれば解決し得る。本発明
はかような材料の開発を課題としたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,重量%
で,C:0.02%以下,Si:0.7〜3.0%,M
n:0.7%以下,P:0.04%以下,S:0.005
%以下,Ni:0.5%以下,Cr:9.0〜18.0
%,N:0.02%以下,Al:1.0%以下,を含有
し,且つ F値=Cr+Si+2.1Al−37.0(C+N)−
2.0Ni−0.6Mn−10.8 で定義されるF値が0以上8以下となるように各成分量
が調整され,残部がFeおよび不可避的不純物からな
り,このF値に応じて図1の斜線域の温度範囲で水素雰
囲気下,窒素水素混合雰囲気下または真空下で磁気焼鈍
を施してなる,フエライト単相組織を呈し且つ磁束密度
10が1.2(テスラ)以上を有する耐食性軟磁性鋼を
提供する。
【0011】また本発明によれば,当該成分組成の鋼に
おいて,F値に応じて図2の斜線域の温度範囲で水素雰
囲気下または真空下で磁気焼鈍を施してなる,フエライ
ト単相組織を呈し磁束密度B10が1.2(テスラ)以上
で且つ最大透磁率が10000以上を有する耐食性軟磁
性鋼を提供する。
【0012】さらに本発明によれば,当該成分組成の鋼
において,F値に応じて図3の斜線域の温度範囲で水素
雰囲気または窒素水素混合雰囲気下で磁気焼鈍を施して
なる,フエライト単相組織を呈し磁束密度B10が1.2
(テスラ)以上で且つ表層の酸化物皮膜中にSiが濃化
している耐食性軟磁性鋼を提供する。表層の酸化物皮膜
は膜厚が200Å以上で且つこの膜厚内でSiが最も濃
化している深さにおけるSi濃度が8原子%以上であ
る。ここで言う膜厚とは,酸化皮膜内で酸素が最も濃化
している部分の酸素濃度(原子%)に対して酸素濃度
(原子%)が1/2となる深さを言う。この膜厚はAE
S分析によって酸素濃度を深さ方向に測定することによ
って求めることができる。
【0013】
【作用】前記の化学成分範囲において,前記の式〔Cr+
Si+2.1Al-37.0(C+N)-2.0Ni-0.6Mn-10.8〕で整理し
たF値が0〜8の場合,後記実施例で示すように,図1
の斜線域のF値と磁気焼鈍温度条件を満足した本発明鋼
は,優れた耐食性と電気抵抗率80μΩ・cm以上を保
持しながら,磁束密度B10が1.2(テスラ)以上を安
定して示す鋼が得られる。したがって,この鋼はとくに
リレー磁心や各種モーターのヨーク用途に好適である。
【0014】また,F値が0〜8の場合,図2の斜線域
のF値と磁気焼鈍温度条件を満足した本発明鋼は,優れ
た耐食性と電気抵抗率80μΩ・cm以上を保持しなが
ら,磁束密度B10>1.2(テスラ)を安定して示し,
同時に最大透磁率μm >10000を安定して示す鋼が
得られる。したがって,この鋼は,リレー磁心や各種モ
ーターのヨーク用途に加え,さらに磁気シールド用途に
も好適である。
【0015】さらに,F値が0〜8の場合,図3の斜線
域のF値と磁気焼鈍温度条件を満足した本発明鋼は,電
気抵抗率80μΩ・cm以上を保持しながら磁束密度B
10>1.2(テスラ)を安定して示し,且つ耐食性が非
常に良好である。したがってこの鋼は,腐食環境下にあ
るリレー磁心や各種モーターのヨーク用途に特に好適で
ある。
【0016】ここで,F値を表す前記の式において,正
の係数をもつCr,SiおよびAlは非磁性元素であ
る。したがって,これらの元素濃度が高くなるほど磁束
密度は低下することになり,これらの元素量の増大によ
りこのF値が8を超えると,後記実施例に示したように
磁束密度が低下し,ヨークとして望ましい磁束密度B10
>1.2を確保できなくなる。
【0017】他方,前記の式で表されるF値はフエライ
ト相の安定度を示す指標ともなる。本発明者らは,各種
のフエライト系ステンレス鋼を800〜900℃の温度
範囲で1時間加熱して急冷した試料の金属組織を調査
し,鋼の組成と生成したマルテンサイト相の体積率を測
定し,鋼の成分組成がマルテンサイト生成に及ぼす影響
の度合いを数多くの試験から調査し,前記の式で表され
るF値=0となる量比のところで,フエライト相中にマ
ルテンサイト相が存在するか否かの臨界となることを知
った。したがって,このF値が0以上では磁気焼鈍後に
マルテンサイトが生成せずフエライト単相組織となる。
マルテンサイト相が存在すると磁気特性が急激に低下す
るので,このF値の下限は0に限定される。
【0018】一方,本発明に従う鋼板に対して,通常は
目的製品の形状に成形加工したあとで,水素雰囲気下,
水素窒素混合雰囲気下または真空下で磁気焼鈍を施すこ
とによって必要な磁気特性を付与するが,その焼鈍温度
が700℃未満では部品加工時に生じた素材の加工歪み
を完全に除去することができない場合があり,このため
に良好な磁気特性を安定して得られない。磁気焼鈍温度
を上昇させると一般に最大透磁率は向上するが1200
℃を超えるような高温では,かような高温に耐える焼鈍
炉自体の構築が困難で,磁気焼鈍そのものが困難とな
る。したがって,磁気焼鈍温度についての全体的な上限
と下限は700℃と1200℃に自ずと限定される。し
かし,この温度範囲において,F値との関係で最適範囲
が存在することは後記実施例で示すとおりであり,この
点に本発明の大きな特徴がある。
【0019】このように,本発明は前記の式で示される
F値と磁気焼鈍温度との間に,磁束密度,最大透磁率と
いった磁気特性を改善し且つ優れた耐食性を示す相関を
見いだした点に特徴を有するものであるが,各成分につ
いては,それぞれの理由により,その含有量が規制され
ねばならない。以下に各化学成分の含有量を規制した理
由を概説する。
【0020】C:炭化物を形成しやすく磁気特性や耐食
性を劣化させるのでC量は0.02重量%以下に限定し
た。
【0021】Si:フェライト生成元素であり,磁気特
性および耐食性を向上させるのに有効に作用する元素で
ある。磁気焼鈍後においてフェライト単相組織を確保
し,良好な磁気特性と耐食性を付与するには0.7重量
%以上含有させる必要がある。しかし,3.0重量%を
越えると逆に磁束密度が低下するとともに,加工性も劣
化するのでSiの含有量は0.7〜3.0重量%に限定し
た。
【0022】Mn:製鋼時の脱酸に必要な元素であるが
磁気特性を劣化させる元素でもあるためその上限を0.
7重量%とした。
【0023】P:磁気特性を劣化させる元素であること
から,その上限を0.04重量%とした。
【0024】S:不純物元素であるSは硫化物を形成し
やすく磁気特性を劣化させるので低く抑える必要があ
る。この理由からその上限を0.005重量%に限定し
た。
【0025】Ni:オーステナイト生成元素であり,磁
気特性を劣化させる。このためその上限を0.5重量%
とした。
【0026】Cr:本発明鋼の用途に必要な耐食性を確
保するのに必須の元素であり,この意味から9.0重量
%以上含有させる必要がある。しかし,Crを多量に含
有させると磁気特性が低下する。したがって,その上限
を18.0重量%とした。
【0027】N:Alと窒化物を形成し磁気特性を劣化
させる。このため,その上限を0.02重量%とした。
【0028】Al:鋼の脱酸剤として添加される元素で
あり,脱酸にともなって不純物を低減することにより磁
気特性を向上させるのに寄与する。しかしAl自体は磁
気特性を劣化させる元素である。したがって,その上限
を1.0重量%に限定した。ただし,場合によってはA
lは無添加でもよい。
【0029】F値:F値は前述の理由から0以上8以下
に限定されるが,このF値が磁気焼鈍温度(θ℃)との
関係で良好な磁束密度を得る図1の斜線域は,後記の実
施例で示すように,数値的には, (1) 0≦F値≦2.35において,700≦θ≦21.3
F+850 (2) 0≦F値≦2.35において,−23.8F+110
0≦θ≦1200 (3) 2.35<F値<8において,700≦θ≦120
0 である。
【0030】同じく, F値が磁気焼鈍温度(θ℃)との
関係で良好な磁束密度と高い最大透磁率を同時に得る図
2の斜線域は,後記の実施例で示すように,数値的に
は, (1) 0≦F値≦2.35において,−23.8F+110
0≦θ≦1200 (2) 2.35<F値<8において,900≦θ≦120
0 である。この場合,磁気焼鈍中に窒化が生ずると高い最
大透磁率が得られない。したがって水素雰囲気下または
真空下で磁気焼鈍を行なう。F値が低い(1) の領域でも
最大透磁率が高くなるのは,焼鈍温度が高いことによっ
て結晶粒径が大きくなり,且つ焼鈍中にC量とN量が低
減して見掛け上F値が高くなったことによる作用効果で
あると考えてよい。
【0031】同様に,F値が磁気焼鈍温度(θ℃)との
関係で良好な磁束密度と優れた耐食性を同時に得る図3
の斜線域は,後記の実施例で示すように,数値的には, (1) 0≦F値≦2.35において,700≦θ≦21.3
F+850 (2) 2.35<F値<8において,700≦θ≦900 である。この領域において水素雰囲気下または窒素水素
雰囲気下で磁気焼鈍したときに耐食性が向上するのは,
この領域の焼鈍温度で磁気焼鈍後の表層部に耐食性を高
めるSi酸化物の膜が生成したことによると考えられ
る。この場合,真空下の焼鈍ではSi酸化膜の生成が不
十分となり,高い耐食性を得ることは難しい。
【0032】以下に実施例を挙げて本発明の効果を具体
的に示す。
【0033】
【実施例】表1に供試鋼の化学成分値(重量%)を示し
た。これらのうち,A−1は従来の代表的な電磁軟鉄で
あり,B1〜12は本発明で規定する成分組成を有する
鋼である。C1〜4はF値が本発明で規定する範囲を外
れる比較鋼である。いずれの鋼も当該化学成分値を有す
る鋼に溶解し,熱間圧延,冷間圧延,仕上げ焼鈍,酸洗
を経て板厚1mmの鋼板とした。
【0034】各鋼板より,外径45mmで内径33mm
のリング試験片を切り出し,水素雰囲気下で焼鈍温度6
50℃,700℃,850℃,950℃,1000℃,
1050℃,1100℃,1150℃の各温度で磁気焼
鈍を施した。いずれの温度でも焼鈍時間は1時間とし
た。ただし,A−1鋼については水素雰囲気下で850
℃×1時間のみの磁気焼鈍を施した。
【0035】得られた磁気焼鈍後の各試験片について,
磁束密度(B10(T) )と最大透磁率(μm) を測定し
た。それらの結果を表2と表3に示した。表2における
磁束密度(B10(T) )は10(Oe) における磁束密度
(単位テスラ=ガウス×104))である。また磁気焼鈍前
の鋼板について電気抵抗率(μΩ・cm)を測定し,そ
の結果を表4に示した。電気抵抗率は厚み1.0mmの
鋼板について長さ500mmのものをホイートストーン
ブリッジ法により測定した。
【0036】さらに, 前記試験片と同一条件で磁気焼鈍
した鋼板についてJISZ2371に準拠した24時間
の塩水噴霧試験による耐食性を調べ, その結果を表5に
示した。耐食性の評価は,目視判定によりほとんど発錆
しないものを○,点錆が軽く分布しているものを△,面
積率で10%以上の錆が発生したものについては×にて
判定した。240時間後もほとんど発錆しないものにつ
いては◎とした。A−1鋼においてはNiメッキを施し
た後,塩水噴霧試験を行った。
【0037】また,前記の耐食性試験で良好な耐食性を
示した本発明鋼の代表的なものについて磁気焼鈍後の試
片の表層部をGDS分析したところ,最外表面に顕著な
Siの濃化が確認されたので,AES分析によって膜厚
と,Siが最も濃化している深さにおけるSi濃度(原
子%)を測定し,その結果を表6に示した。ここで膜厚
は,酸化皮膜内で酸素が最も濃化している部分の酸素濃
度(原子%)に対して酸素濃度(原子%)が1/2とな
る深さとした。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】これらの試験結果から,次のことがわか
る。
【0045】電磁軟鉄であるA−1は, 表2と表3に見
られるように, 磁束密度B10が1.57T,最大透磁率
μm =12000と磁気特性に優れている。また,表5
に見られるように耐食性もNiメッキを施しているため
良好である。しかし,表4に見られるように電気抵抗率
が9.8μΩ・cmと低い。
【0046】比較鋼であるC−1,3および4はF値が
いずれも0未満であり,このため磁気焼鈍温度850〜
1150℃においで安定してフェライト組織が得られ
ず,磁気特性が大幅に劣化してしまう。また,C−1鋼
はCr量が8.01重量%と低いため,耐食性について
も劣る。
【0047】比較鋼であるC−2はフェライト組織を呈
するがF値が8を超えるので磁気特性が大幅に劣化して
いる。
【0048】これに対して本発明に従うB1〜12のも
のは,表2に○印で示す磁気焼鈍温度のときにB10
1.2Tを超え,また表3に示されるように良好な最大
透磁率を示す。そして表4に見られるように電気抵抗率
もすべて80μΩ・cmを超えており,耐食性も良好で
ある。
【0049】ここで,F値と磁気焼鈍温度(θ℃)が磁
束密度にどのように関与しているかを,表2の結果を参
照にしながら(実際にはB1〜B12以外にも多数の供
試鋼を作製したが表2はその代表的なものを示した),
整理して示したのが図1である。
【0050】図1においてB10が1.2Tを超える範囲
を斜線域で示してある。図1の結果から,F値が本発明
で規定する0〜8内にあり且つ磁気焼鈍温度が700〜
1200℃範囲内にあっても,この斜線域から外れる場
合があることがわかる。これらは表2の●印を付したも
のに代表される。
【0051】この図1の斜線域を外れる領域は,数値的
に表現すると,F値<2.35において,21.3F+8
50<θ<−23.8F+1100の関係を満足する範
囲となる。
【0052】換言すれば,B10>1.2Tが安定して得
られる範囲は, (1) 0≦F値≦2.35において,700≦θ≦21.3
F+850 (2) 0≦F値≦2.35において,−23.8F+110
0≦θ≦1200 (3) 2.35<F値<8において,700≦θ≦120
0 となる。すなわち,この領域においては,80μΩ・c
m以上の電気抵抗率と優れた耐食性を維持しながら,磁
束密度B10>1.2Tが安定して得られる。
【0053】一方,表3の最大透磁率の結果を見ると,
前記図1の斜線域を外れるもの(表3の●印)は同時に
最大透磁率も低くなっている。しかし,図1の斜線域に
あって高い磁束密度のものでも,最大透磁率には差があ
る(表3の○印のもの)。これらのうち,目標とする最
大透磁率μm が10000を超えるものを整理して示し
たのが図2である。
【0054】図2の斜線域は最大透磁率μm が1000
0を超える範囲を示す。この範囲を数値的に表現する
と, (1) 0≦F値≦2.35において,−23.8F+110
0≦θ≦1200 (2) 2.35<F値<8において,900≦θ≦120
0 となる。すなわち,この領域では,80μΩ・cm以上
の電気抵抗率と優れた耐食性を維持しながら,B10
1.2Tが安定して得られ且つ最大透磁率μm >100
00が安定して得られる。
【0055】さらに,表5の耐食性試験結果から,磁気
焼鈍温度が700〜900℃付近のものは特に良好な耐
食性を示すことがわかる。これは,Siの酸化物が表層
部に濃化したことによると考えられる。
【0056】表5と表6の結果から,特に良好な耐食性
は,磁気焼鈍を行なうことによって膜厚200Å以上で
この膜厚内でSiが最も濃化している深さのSi濃度が
8原子%以上のSi酸化膜が生成されたときであると判
断された。このことを示すためにAES分析結果の一例
を図4に示した。
【0057】図4は,供試鋼としてC=0.012%, Si
=0.9%, Mn=0.20%, P=0.03%, S=0.0009%,
Ni=0.01%, Cr=12.99%, N=0.0018%, O=0.0
026%, Al=0.015 %, F値が2.48の鋼を用い,これ
を850×1時間(水素雰囲気中)の磁気焼鈍を行った
サンプルについて,表層から深さ方向にAES分析を行
った場合のプロフイルを示している。なお,測定面積は
直径100μmの円内である。横軸はスパッタリング時
間で表されているが,このスパッタリング時間と深さと
の間には一定の関係があり,この関係は標準サンプルを
用いて予め求めておいた。この関係を用いて,図4の酸
化皮膜の膜厚を求めると260オングストロームであっ
た。また,Siが最も濃化している深さにおけるSi濃
度は17原子%であった。
【0058】表6は,同様の方法で,S.No.B−5,B
−7およびB−10のAES分析結果を示したものであ
るが,これらの試験からF値と焼鈍温度の関係が適切な
場合に,表層の酸化皮膜中に高い濃度でSiが濃化する
ことが明らかとなった。このSi酸化膜の生成条件を,
磁気焼鈍温度と鋼のF値の関係で整理したのが図3であ
る。
【0059】図3の斜線域は,膜厚200Å以上で且つ
この膜厚内でSiが最も濃化している深さにおけるSi
濃度が8原子%以上である領域を示している。この範囲
を数値的に示すと, (1) 0≦F値≦2.35において,700≦θ≦21.3
F+850 (2) 2.35<F値<8において,700≦θ≦900 となる。すなわち,この領域では,80μΩ・cm以上
の電気抵抗率とB10>1.2Tが安定して得られ且つ濃
化したSi酸化膜の存在によって耐食性が極めて良好と
なる。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,
リレー,各種モーター用途に好適な磁束密度B10>
1.2Tで電気抵抗率ρ≧80μΩ・cmを有し,また磁
気シールド用途にも使用可能な最大透磁率μm≧100
00を示しかつ素材のままで耐食性が良好な軟磁性鋼が
得られ,この分野に多大の貢献ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】優れた磁束密度が得られるF値と磁気焼鈍温度
との関係を示す図である。
【図2】優れた磁束密度と高い最大透磁率が同時に得ら
れるF値と磁気焼鈍温度との関係を示す図である。
【図3】優れた磁束密度と優れた耐食性が同時に得られ
るF値と磁気焼鈍温度との関係を示す図である。
【図4】磁気焼鈍後の試料についてのAES分析結果を
例を示すプロフイル図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で,C:0.02%以下,Si:
    0.7〜3.0%,Mn:0.7%以下,P:0.04%以
    下,S:0.005%以下,Ni:0.5%以下,Cr:
    9.0〜18.0%,N:0.02%以下,Al:1.0%
    以下(無添加を含む),を含有し,且つ F値=Cr+Si+2.1Al−37.0(C+N)−
    2.0Ni−0.6Mn−10.8 で定義されるF値が0以上8以下となるように各成分量
    が調整され,残部がFeおよび不可避的不純物からな
    り,このF値に応じて図1の斜線域の温度範囲で水素雰
    囲気下,窒素水素混合雰囲気下または真空下で磁気焼鈍
    を施してなる,フエライト単相組織を呈し且つ磁束密度
    10が1.2(テスラ)以上を有する耐食性軟磁性鋼。
  2. 【請求項2】 当該範囲のF値に応じて図2の斜線域の
    温度範囲で水素雰囲気下または真空下で磁気焼鈍を施し
    てなる,フエライト単相組織を呈し磁束密度B10が1.
    2(テスラ)以上で且つ最大透磁率が10000以上を
    有する請求項1に記載の耐食性軟磁性鋼。
  3. 【請求項3】 当該範囲のF値に応じて図3の斜線域の
    温度範囲で水素雰囲気または窒素水素混合雰囲気下で磁
    気焼鈍を施してなる,フエライト単相組織を呈し磁束密
    度B10が1.2(テスラ)以上で且つ表層の酸化物皮膜
    中にSiが濃化している請求項1に記載の耐食性軟磁性
    鋼。
  4. 【請求項4】 表層の酸化物皮膜は膜厚が200Å以上
    で且つこの膜厚内でSiが最も濃化している深さにおけ
    るSi濃度が8原子%以上である請求項3に記載の耐食
    性軟磁性鋼。
  5. 【請求項5】 電気抵抗率が80μΩ・cm以上である
    請求項1,2,3または4に記載の耐食性軟磁性鋼。
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