JP2000064000A - 軟磁性ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
軟磁性ステンレス鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
の製造方法を提案する。 【解決手段】 C:0.02%以下、N:0.02%以下、Mn:
1.0 %以下、Cr:9.0 〜17.0%を含むステンレス鋼素材
を、熱間仕上圧延の圧下率90%以上、仕上圧延終了温度
FDT760 ℃以上とする熱間仕上圧延を施し2.0mm 厚以
下の熱延薄鋼板とする。これにより表層の結晶面強度比
Kが10以上となり最大透磁率μmax :2000emu 以上の優
れた軟磁特性を示す。
Description
ンレス鋼熱延板に係り、とくに磁気シールド材として好
適な軟磁性ステンレス鋼薄鋼板に関する。
気や、他の機器から発生した磁場の影響を受け、誤作動
等正常な機能からのずれが発生する場合がある。このよ
うな磁場の影響を排除するため、近年、磁気シールド材
の使用が増加している。磁気シールド材に要求される特
性としては、飽和磁化が大きいこと、透磁率が高
く、印加された磁場で速やかに磁化されること、が重要
な特性として挙げられている。
以下のSiを含有する珪素鋼板や、耐食性を要求される場
合には亜鉛めっきを施された低炭素亜鉛めっき鋼板が知
られている。しかし、珪素鋼板では、腐食性の環境下で
耐食性が劣る問題があり、亜鉛めっき鋼板では、珪素鋼
板にくらべ、軟磁性特性が劣るうえ、めっき厚やめっき
張力により軟磁性特性がばらつくという問題があった。
そこで、最近では、亜鉛めっき鋼板に代わり、マルテン
サイト系ステンレス鋼板やフェライト系ステンレス鋼板
が磁気シールド材として使用されるようになってきた。
は、例えば、特開平5-171369号公報には、C:0.08〜0.
20wt%、Cr:11.5〜18.0wt%を含有し、炭化物密度を5
×10 5 個/mm2 以上と析出物分布を制御し、フェライト
粒径を7μm 以上とする磁性用マルテンサイト系ステン
レス鋼が提案されている。また、特開平6-13220 号公報
には、C:0.08〜0.20wt%、Cr:11.5〜18.0wt%を含有
し、さらにMo:0.05〜1.30wt%またはW:0.05〜0.80wt
%の1種または2種を含有する磁性用マルテンサイト系
ステンレス鋼が提案されている。
〜13wt%、Mn:0.1 〜1.0wt %、Ti:0.05〜0.5wt %を
含み、C、N、S、O量を低減し、冷間圧延、焼鈍条件
を調整し、表層および中心層の(111 )面強度の和が10
以下として最大比透磁率を4000以上とする磁気特性に優
れたフェライト系ステンレス鋼板が提案されている。
5-171369号公報、特開平6-13220 号公報に記載されたマ
ルテンサイト系ステンレス鋼では、耐食性の面では珪素
鋼板や亜鉛めっき鋼板にくらべ優れているが、マルテン
サイト系ステンレス鋼は、格子歪の影響によりフェライ
ト系ステンレス鋼に比べ軟磁性特性が劣るという問題が
あった。また、特開平10-46295号公報に記載された技術
では、最適な製造条件の調整が難しく、しかも{111 }
面強度を低減しても軟磁性特性の向上が得られない場合
があり、品質が安定しないうえ、製造コストが高いとい
う問題があった。
に解決し、耐食性に優れ、しかも優れた軟磁性特性を安
定して有する軟磁性ステンレス鋼板およびその製造方法
を提案することを目的とする。
重視し、従来から磁気シールド材として供給されていた
冷延板に代えて、熱延板あるいは熱延板を焼鈍した熱延
焼鈍板で上記した課題を達成することを目標として、ス
テンレス鋼熱延板の軟磁特性に影響する因子について種
々研究した。その結果、ステンレス鋼熱延板の軟磁特性
と、X線回折により測定される結晶面強度とは密接な関
係があること、および優れた軟磁特性を得ることができ
る最適な熱延条件が存在すること、を見いだした。
について説明する。表1に示す化学組成のステンレス鋼
を真空溶解により溶製し、小型鋼塊(100kg )とした。
この鋼塊を熱間圧延により30mm厚のシートバーとし、つ
いで仕上圧延として圧延終了温度を700 〜950 ℃の範囲
で変化した熱間圧延により2.0mm 厚の熱延板とした。こ
れらの熱延板について、板面内の結晶面分布を測定し
た。結晶面分布は、X線回折による1/5t(t:板厚)の位
置における結晶面強度の測定により求めた。また、これ
ら熱延板にさらに磁性焼鈍を想定した焼鈍を施したの
ち、磁気測定により直流磁化による最大透磁率μmax を
求めた。磁気焼鈍は、プレス成形や打ち抜きによる残留
歪の消去を目的として行い、800 ℃×5min とした。
大透磁率は、X線回折により測定される結晶面強度と密
接な関係があり、本発明者らは、結晶面強度として下記
式で表される結晶面強度比Kを用いると、最大透磁率μ
max と結晶面強度比Kとがよい相関を示すことを見いだ
した。 K=(I200 +I110 )/I222 ここで、I200 は、1/5t(t:板厚)の位置の板面におい
てX線回折で測定された{200 }面の強度であり、I
110 は{110 }面の強度、I222 は{222 }面の強度で
ある。
Kとの関係を示す。図1から、Kが9以上でμmax が20
00emu 以上、ばらつきを考慮するとKが10以上で安定し
てμmax が2000emu 以上となることがわかる。つぎに、
表2に示す組成のステンレス鋼溶鋼を、転炉および真空
脱ガス装置を用いて溶製し、連続鋳造法で200mm 厚のス
ラブとした。これらスラブを、加熱温度1100〜1200℃の
範囲で加熱したのち、熱間圧延を行った。粗圧延を、10
00〜1050℃の範囲で終了したのち、仕上圧延圧下率と仕
上圧延終了温度を変化して仕上圧延を施し、1.8mm 厚の
熱延板とした。これら熱延板について、X線回折により
1/5t(t:板厚)の位置における結晶面強度を測定した。
また、これら熱延板にさらに磁性焼鈍を想定した焼鈍を
施したのち、磁気測定により直流磁化による最大透磁率
μmax を求めた。磁気焼鈍は、プレス成形や打ち抜きに
よる残留歪の消去を目的として行い、800 ℃×5min と
した。
におよぼす仕上圧延圧下率と仕上圧延終了温度FDTと
の関係、および(b)最大透磁率μmax におよぼす仕上
圧延圧下率と仕上圧延終了温度FDTとの関係を図2に
示す。
く、また仕上圧下率が高いほど結晶面強度比Kは大きく
なり、仕上圧延終了温度が760 ℃以上、かつ仕上圧延圧
下率が90%以上とすることにより、結晶面強度比Kが10
以上を安定して確保することができることがわかる。K
が10以上となる、仕上圧延終了温度が760 ℃以上、かつ
仕上圧延圧下率が90%以上とした熱延板は、図2(b)
から、最大透磁率μmax:2000emu 以上の優れた軟磁性
を安定して確保できることがわかる。
れたものである。すなわち、本発明は、重量%で、C:
0.02%以下、N:0.02%以下、Mn:1.0%以下、Cr:9.0
〜17.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からな
る組成を有し、次式 K=(I200 +I110 )/I222 (ここで、I200 :{200 }面強度、I110 :{110 }
面強度、I222 :{222}面強度である。)で表される
結晶面強度比Kが10以上で、最大透磁率μmax :2000em
u 以上を有することを特徴とする板厚2.0mm 以下の軟磁
性ステンレス鋼薄鋼板である。
らに重量%で、次A〜C群 A群:Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以
下、Zr:0.5%以下、Ta:0.5 %以下 B群:Si:3.0 %以下、Al:1.0 %以下 C群:Ni:1.0 %以下 のうちから選ばれた1群または2群以上の各群における
1種または2種以上を含有してもよい。
で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:9.0 〜17.0%を含み、さらに、Ti:1.0 %以
下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以下、Zr:0.5 %以
下、Ta:0.5 %以下のうちから選ばれた1種または2種
以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組
成とするのが好適である。また、本発明鋼板の組成は、
重量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Mn:1.0
%以下、Cr:9.0 〜17.0%を含み、さらに、Si:3.0 %
以下、Al:1.0 %以下のうちから選ばれた1種または2
種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成
とするのが好適である。また、本発明鋼板の組成は、重
量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Mn:1.0 %
以下、Cr:9.0 〜17.0%を含み、さらに、Ni:1.0 %以
下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成
とするのが好適である。また、本発明鋼板の組成は、重
量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Mn:1.0 %
以下、Cr:9.0 〜17.0%を含み、さらに、Ti:1.0 %以
下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以下、Zr:0.5 %以
下、Ta:0.5 %以下のうちから選ばれた1種または2種
以上、およびSi:3.0 %以下、Al:1.0 %以下のうちか
ら選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可
避的不純物からなる組成とするのが好適である。また、
本発明鋼板の組成は、重量%で、C:0.02%以下、N:
0.02%以下、Mn:1.0 %以下、Cr:9.0 〜17.0%を含
み、さらに、Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.
5 %以下、Zr:0.5%以下、Ta:0.5 %以下のうちから
選ばれた1種または2種以上、およびNi:1.0 %以下を
含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とす
るのが好適である。また、本発明鋼板の組成は、重量%
で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:9.0 〜17.0%を含み、さらに、Si:3.0 %以
下、Al:1.0 %以下のうちから選ばれた1種または2
種、およびNi:1.0 %以下を含有し、残部Feおよび不可
避的不純物からなる組成とするのが好適である。また、
本発明鋼板の組成は、重量%で、C:0.02%以下、N:
0.02%以下、Mn:1.0 %以下、Cr:9.0 〜17.0%を含
み、さらに、Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.
5%以下、Zr:0.5 %以下、Ta:0.5 %以下のうちから
選ばれた1種または2種以上、Si:3.0 %以下、Al:1.
0 %以下のうちから選ばれた1種または2種、およびN
i:1.0 %以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物
からなる組成とするのが好適である。
下、N:0.02%以下、Mn:1.0 %以下、Cr:9.0 〜17.0
%を含むステンレス鋼素材を、粗圧延と仕上圧延からな
る熱間圧延を施し、熱延板とするステンレス鋼板の製造
方法において、前記仕上圧延の圧下率を90%以上とし、
前記仕上圧延の終了温度FDTを760 ℃以上とすること
を特徴とする最大透磁率μmax :2000emu 以上を有する
板厚2.0mm 以下の軟磁性ステンレス鋼薄鋼板の製造方法
である。
定理由について説明する。 C:0.02%以下 Cは、含有量が多くなりすぎると、加工性を劣化させる
とともに、使用環境下での時効により軟磁特性を劣化さ
せる。このため、Cは0.02%以下に限定した。なお、好
ましくは0.01%以下である。
劣化させるとともに、使用環境下での時効により軟磁特
性を劣化させる。このため、Nは0.02%以下に限定し
た。なお、好ましくは0.01%以下である。 Mn:1.0 %以下 Mnは、熱間脆性を抑制する元素であるが、含有量が多く
なりすぎると、熱間圧延温度域でオーステナイト相を生
成し集合組織がランダム化して軟磁特性が劣化する。こ
のため、Mnは1.0 %以下に限定した。なお、好ましくは
0.1 〜 0.6%である。
%未満ではその効果が十分でなく、一方、17%を越える
と、飽和磁化が低下し磁気シールド材として不適とな
る。このため、Crは9.0 〜17.0%の範囲に限定した。 A群:Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以
下、Zr:0.5 %以下、Ta:0.5 %以下のうちから選ばれ
た1種または2種以上 A群のTi、Nb、V、Zr、Taは、いずれも炭窒化物を形成
し、固溶C、固溶Nを低減し、加工性、溶接性を向上さ
せる作用を有しており、必要に応じA群の中から1種ま
たは2種以上を含有できる。しかし、含有量が多くなる
と、加工性および軟磁特性が劣化する。このため、Ti:
1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5%以下、Zr:0.5
%以下、Ta:0.5 %以下にそれぞれ限定するのが望ま
しい。なお、好ましくは、Ti:0.1 〜0.5 %、Nb:0.1
〜 0.5%、V:0.05〜0.4 %、Zr:0.05〜0.4 %、Ta:
0.05〜0.4 %である。
うちから選ばれた1種または2種 B群のSi、Alは、いずれも比抵抗を増加させ、軟磁特性
を向上させる元素であり、必要に応じ、B群の中から1
種または2種含有できる。しかし、含有量が多くなる
と、硬さが増加し、加工性が劣化する。このようなこと
から、Si:3.0 %以下、Al:1.0 %以下に限定するのが
望ましい。なお、好ましくは、Si:0.1 〜2.0 %、Al:
0.05〜 0.7%である。なお、Si、Alは0.05%以下、0.01
%以下がそれぞれ不可避的不純物として許容される。
じ添加できる。しかし、含有量が多くなりすぎると、熱
間圧延温度域でオーステナイト相を生成し集合組織がラ
ンダム化して軟磁特性が劣化する。このため、Niは1.0
%以下に限定するのが望ましい。なお、好ましくは、N
i:0.1 〜0.5 %である。なお、0.1 %以下は不可避的
に含有される範囲である。
うちから1群または2群以上を選び、各群の中から1種
または2種以上を含有できる。上記した化学成分以外
は、残部Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純
物としては、P:0.05%以下、S:0.01%以下、O:0.
01%以下が許容できる。P、Sは焼鈍時の回復および再
結晶を遅らせ軟磁特性を劣化させるため、できるだけ低
減するのが望ましい。
度比Kが10以上であり、最大透磁率μmax :2000emu 以
上を有する。本発明においては、結晶面強度比Kは、X
線回折装置により、表層から1/5t(t:板厚)深さの位置
における板面の結晶面強度を、{200 }面、{110 }
面、{222 }面について測定し、次式 K=(I200 +I110 )/I222 (ここで、I200 :{200 }面強度、I110 :{110 }
面強度、I222 :{222}面強度である。)を用いて求
めるものとする。また、最大透磁率μmax は、JIS C 25
50の規定に準拠する直流磁化による磁気測定により求め
るものとする。
大透磁率に代表される軟磁特性が向上する原因について
は、現在のところ詳細には不明であるが、以下のように
考えられる。BCC結晶構造をとるフェライト系ステン
レス鋼では、磁化容易方向は<100>軸、ついで<110
>軸であり、<111 >軸は磁化されにくい方向であるこ
とは知られている。圧延により発達し易い{111 }面
は、板面に平行な<100 >軸を持たないため、軟磁特性
には不利な結晶方位である。
に有利な{110 }面および{100 }面を多く発達させた
配向とすると同時に{111 }面を減ずることが軟磁特性
向上に有効であるという考えをもとに、鋼板の組成と圧
延条件を適切に制御し、表層で{110 }面を発達させ、
結晶面強度比Kを10以上として最大透磁率を向上させた
のである。
板である。板厚が2.0mm を超えると、μmax のばらつき
が大きくなり、Kが10以上の熱延板であっても、軟磁特
性が良好とならない。これは、板厚が厚くなると全板厚
に対する表層部の占める割合が低下するためと考えられ
る。このようなことから、本発明鋼板は、2.0mm 厚以下
の熱延薄鋼板とした。
明する。上記した組成のステンレス鋼溶鋼を、転炉、電
気炉等通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊
法で凝固し、ステンレス鋼素材とするのが望ましい。溶
製に際しては真空脱ガスを行ってよいのは言うまでもな
い。ステンレス鋼素材は、加熱炉に装入され1000〜1250
℃に加熱され、あるいは鋼素材が高温であれば加熱せず
そのまま、あるいは加熱炉に装入しわずかに昇温された
のち、粗圧延および仕上圧延からなる熱間圧延を施され
所定の板厚の熱延板とされる。本発明では、仕上圧延の
圧下率を90%以上、かつ仕上圧延の終了温度FDTを76
0 ℃以上に規制する。これにより、板表層部で剪断応力
が大きくなり、{110 }面の発達が著しくなり、上記し
た結晶面強度比K10以上が安定して確保でき、最大透磁
率μmax 2000emu 以上の軟磁特性に優れたステンレス鋼
熱延板が得られる。
層部に与える剪断応力が不十分であり、軟磁特性に有効
な結晶面強度が得られず、結晶面強度比Kが10未満と低
くなる。また、仕上圧延の終了温度FDTが760 ℃未満
では、圧延ロールと鋼板との摩擦係数が低下し、剪断応
力の発生が少なく、このため板表面部で、圧縮応力によ
る{111 }面の生成が顕著となり、軟磁特性に有効な
{110 }面の発達が不十分となり、結晶面強度比Kが10
未満と低くなり、最大透磁率が低下する。このようなこ
とから、仕上圧延の圧下率を90%以上、かつ仕上圧延の
終了温度FDTが760 ℃以上に規制した。なお、好まし
くは、仕上圧延の圧下率を92%以上97%以下、かつ仕上
圧延の終了温度FDTが800 ℃以上970 ℃以下である。
圧下率が97%を超えると、板厚、板幅等の形状不良が出
やすく歩留を低下させる。また、FDTが 970℃を超え
ると、高温のため剛性が低下し、巻取りまでの間に形状
不良が発生し、歩留の低下を招く。
れる。熱延板は、巻取り後の自己焼鈍や、磁性焼鈍等に
より、表層近傍から優先的に回復再結晶し、軟磁特性は
さらに向上する。また、熱延板焼鈍や酸洗によるスケー
ル除去は本発明の効果を損なうことはなく、表面性状や
機械的特性の要求に応じ、通常公知の方法で、本発明鋼
板に熱延板焼鈍や酸洗を施すことができる。
および真空脱ガス装置を用いて溶製し、連続鋳造法で20
0mm 厚のスラブとした。これらスラブを、加熱温度1100
〜1200℃の範囲で加熱したのち、熱間圧延を行った。粗
圧延を、1000〜1050℃の範囲で終了したのち、表4に示
す条件で仕上圧延を行い、板厚2.4 〜1.2mm の熱延板と
した。なお、一部の仕上圧延は、先行シートバーと後行
シートバーを接合し、連続圧延とした。なお、仕上圧延
は表4に示す条件で仕上圧延を行い、板厚2.4 〜1.2mm
の熱延板とした。
測定した。結晶面強度比Kはつぎのようにして求めた。
熱延板から、試験片を採取し、表面から板厚tの1/5 ま
で機械的に研削した。その後、試験片は、研削による歪
を除去するため王水でエッチング処理を施され、測定に
供した。結晶面強度の測定は、X線回折装置(反転極点
図測定装置:Cr管球、管電圧50kV、管電流35mA、Ge半導
体検出器使用)を用いて、各試験片について各結晶面の
強度を測定し、結晶面強度比Kを求めた。
焼鈍(800 ℃×5min )を施したのち、JIS C 2550の規
定に準拠する直流磁化による磁気測定を行い、最大透磁
率μ max を求めた。これらの結果を表4に示す。
く、最大透磁率μmax が2000emu 以上と優れた軟磁特性
を有しているのに対し、本発明の範囲を外れる比較例
は、結晶面強度比Kが低く、μmax が2000emu 未満と軟
磁特性が低下している。
し、しかも耐食性に優れたステンレス鋼熱延薄鋼板を安
定して製造でき、安価な磁気シールド材を安定して供給
できるという産業上格段の効果を奏する。
示すグラフである。
上圧延終了温度FDTとの関係(a)、および最大透磁
率μmax におよぼす仕上圧延圧下率と仕上圧延終了温度
FDTとの関係(b)を示すグラフである。
Claims (3)
- 【請求項1】 重量%で、 C:0.02%以下、 N:0.02%以下、 Mn:1.0 %以下、 Cr:9.0 〜17.0% を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有
し、下記式で表される結晶面強度比Kが10以上で、最大
透磁率μmax :2000emu 以上を有することを特徴とする
板厚2.0mm 以下の軟磁性ステンレス鋼薄鋼板。 記 K=(I200 +I110 )/I222 ここで、I200 :{200 }面強度、 I110 :{110 }面強度、 I222 :{222 }面強度 - 【請求項2】 前記組成に加えて、さらに重量%で、下
記A〜C群のうちから選ばれた1群または2群以上の各
群における1種または2種以上を含有することを特徴と
する請求項1に記載の軟磁性ステンレス鋼薄鋼板。 記 A群:Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以
下、Zr:0.5%以下、Ta:0.5 %以下 B群:Si:3.0 %以下、Al:1.0 %以下 C群:Ni:1.0 %以下 - 【請求項3】 重量%で、 C:0.02%以下、 N:0.02%以下、 Mn:1.0 %以下、 Cr:9.0 〜17.0% を含むステンレス鋼素材を、粗圧延と仕上圧延からなる
熱間圧延を施し、熱延板とするステンレス鋼板の製造方
法において、前記仕上圧延の圧下率を90%以上とし、前
記仕上圧延の終了温度FDTを760 ℃以上とすることを
特徴とする最大透磁率μmax :2000emu 以上を有する板
厚2.0mm 以下の軟磁性ステンレス鋼薄鋼板の製造方法。
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