JP3968883B2 - 軟磁性ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼熱延板に係り、とくに磁気シールド材として好適な軟磁性ステンレス鋼熱延薄鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
高度に進歩した精密電子機器では、地磁気や、他の機器から発生した磁場の影響を受け、誤作動等正常な機能からのずれが発生する場合がある。このような磁場の影響を排除するため、近年、磁気シールド材の使用が増加している。磁気シールド材に要求される特性としては、▲1▼飽和磁化が大きいこと、▲2▼透磁率が高く、印加された磁場で速やかに磁化されること、が重要な特性として挙げられている。
【0003】
磁気シールド材としては、従来から、7%以下のSiを含有する珪素鋼板や、耐食性を要求される場合には亜鉛めっきを施された低炭素亜鉛めっき鋼板が知られている。しかし、珪素鋼板では、腐食性の環境下で耐食性が劣る問題があり、亜鉛めっき鋼板では、珪素鋼板にくらべ、軟磁性特性が劣るうえ、めっき厚やめっき張力により軟磁性特性がばらつくという問題があった。そこで、最近では、亜鉛めっき鋼板に代わり、マルテンサイト系ステンレス鋼板やフェライト系ステンレス鋼板が磁気シールド材として使用されるようになってきた。
【0004】
軟磁性特性を有するステンレス鋼板としては、例えば、特開平5-171369号公報には、C:0.08〜0.20wt%、Cr:11.5〜18.0wt%を含有し、炭化物密度を5 ×105 個/mm2 以上と析出物分布を制御し、フェライト粒径を7μm 以上とする磁性用マルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。また、特開平6-13220 号公報には、C:0.08〜0.20wt%、Cr:11.5〜18.0wt%を含有し、さらにMo:0.05〜1.30wt%またはW:0.05〜0.80wt%の1種または2種を含有する磁性用マルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。
【0005】
また、特開平10-46295号公報には、Cr:5 〜13wt%、Mn:0.1 〜1.0wt %、Ti:0.05〜0.5wt %を含み、C、N、S、O量を低減し、冷間圧延、焼鈍条件を調整し、表層および中心層の(111 )面強度の和が10以下として最大比透磁率を4000以上とする磁気特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5-171369号公報、特開平6-13220 号公報に記載されたマルテンサイト系ステンレス鋼では、耐食性の面では珪素鋼板や亜鉛めっき鋼板にくらべ優れているが、マルテンサイト系ステンレス鋼は、格子歪の影響によりフェライト系ステンレス鋼に比べ軟磁性特性が劣るという問題があった。また、特開平10-46295号公報に記載された技術では、最適な製造条件の調整が難しく、しかも{111 }面強度を低減しても軟磁性特性の向上が得られない場合があり、品質が安定しないうえ、製造コストが高いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、耐食性に優れ、しかも優れた軟磁性特性を安定して有する軟磁性ステンレス鋼板およびその製造方法を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、経済性を重視し、従来から磁気シールド材として供給されていた冷延板に代えて、熱延板あるいは熱延板を焼鈍した熱延焼鈍板で上記した課題を達成することを目標として、ステンレス鋼熱延板の軟磁特性に影響する因子について種々研究した。その結果、ステンレス鋼熱延板の軟磁特性と、X線回折により測定される結晶面強度とは密接な関係があること、および優れた軟磁特性を得ることができる最適な熱延条件が存在すること、を見いだした。
【0009】
まず、本発明者らが行った基礎的実験結果について説明する。
表1に示す化学組成のステンレス鋼を真空溶解により溶製し、小型鋼塊(100kg )とした。この鋼塊を熱間圧延により30mm厚のシートバーとし、ついで仕上圧延として圧延終了温度を700 〜950 ℃の範囲で変化した熱間圧延により2.0mm 厚の熱延板とした。これらの熱延板について、板面内の結晶面分布を測定した。結晶面分布は、X線回折による1/5t(t:板厚)の位置における結晶面強度の測定により求めた。また、これら熱延板にさらに磁性焼鈍を想定した焼鈍を施したのち、磁気測定により直流磁化による最大透磁率μmax を求めた。磁気焼鈍は、プレス成形や打ち抜きによる残留歪の消去を目的として行い、800 ℃×5min とした。
【0010】
【表1】
【0011】
ステンレス鋼熱延板の軟磁特性、とくに最大透磁率は、X線回折により測定される結晶面強度と密接な関係があり、本発明者らは、結晶面強度として下記式で表される結晶面強度比Kを用いると、最大透磁率μmax と結晶面強度比Kとがよい相関を示すことを見いだした。
K=(I200 +I110 )/I222
ここで、I200 は、1/5t(t:板厚)の位置の板面においてX線回折で測定された{200 }面の強度であり、I110 は{110 }面の強度、I222 は{222 }面の強度である。
【0012】
図1に、最大透磁率μmax と、結晶面強度Kとの関係を示す。
図1から、Kが9以上でμmax が2000emu 以上、ばらつきを考慮するとKが10以上で安定してμmax が2000emu 以上となることがわかる。
つぎに、表2に示す組成のステンレス鋼溶鋼を、転炉および真空脱ガス装置を用いて溶製し、連続鋳造法で200mm 厚のスラブとした。これらスラブを、加熱温度1100〜1200℃の範囲で加熱したのち、熱間圧延を行った。粗圧延を、1000〜1050℃の範囲で終了したのち、仕上圧延圧下率と仕上圧延終了温度を変化して仕上圧延を施し、1.8mm 厚の熱延板とした。これら熱延板について、X線回折により1/5t(t:板厚)の位置における結晶面強度を測定した。また、これら熱延板にさらに磁性焼鈍を想定した焼鈍を施したのち、磁気測定により直流磁化による最大透磁率μmax を求めた。磁気焼鈍は、プレス成形や打ち抜きによる残留歪の消去を目的として行い、800 ℃×5min とした。
【0013】
これらの結果から、(a)結晶面強度比Kにおよぼす仕上圧延圧下率と仕上圧延終了温度FDTとの関係、および(b)最大透磁率μmax におよぼす仕上圧延圧下率と仕上圧延終了温度FDTとの関係を図2に示す。
【0014】
【表2】
【0015】
図2(a)から、仕上圧延終了温度が高く、また仕上圧下率が高いほど結晶面強度比Kは大きくなり、仕上圧延終了温度が760 ℃以上、かつ仕上圧延圧下率が90%以上とすることにより、結晶面強度比Kが10以上を安定して確保することができることがわかる。Kが10以上となる、仕上圧延終了温度が760 ℃以上、かつ仕上圧延圧下率が90%以上とした熱延板は、図2(b)から、最大透磁率μmax :2000emu 以上の優れた軟磁性を安定して確保できることがわかる。
【0016】
本発明は、上記した知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、重量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si : 3.0 %以下、Mn:1.0 %以下、Cr:9.0 〜17.0%、 Al : 1.0 %以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、次式
K=(I200 +I110 )/I222
(ここで、I200 :{200 }面強度、I110 :{110 }面強度、I222 :{222 }面強度である。)
で表される結晶面強度比Kが10以上で、最大透磁率μmax :2000emu 以上を有することを特徴とする板厚2.0mm 以下の軟磁性ステンレス鋼熱延薄鋼板である。
【0017】
また、本発明では、前記組成に加えて、さらに重量%で、次A群、C群
A群:Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以下、Zr:0.5 %以下、
Ta:0.5 %以下
C群:Ni:0.15 〜1.0 %
のうちから選ばれた1群または2群の各群における1種または2種以上を含有してもよい。
【0018】
すなわち、本発明鋼板の組成は、重量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si : 3.0 %以下、Mn:1.0 %以下、Cr:9.0 〜17.0%、 Al : 1.0 %以下を含み、さらに、Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以下、Zr:0.5 %以下、Ta:0.5 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とするのが好適である。また、本発明鋼板の組成は、重量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si : 3.0 %以下、Mn:1.0 %以下、Cr:9.0 〜17.0%、 Al : 1.0 %以下を含み、さらに、Ni:0.15 〜1.0 %を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とするのが好適である。また、本発明鋼板の組成は、重量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si : 3.0 %以下、Mn:1.0 %以下、Cr:9.0 〜17.0%、 Al : 1.0 %以下を含み、さらに、Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以下、Zr:0.5 %以下、Ta:0.5 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上、およびNi:0.15 〜1.0 %を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とするのが好適である。
【0019】
また、本発明は、重量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si : 3.0 %以下、Mn:1.0 %以下、Cr:9.0 〜17.0%、 Al : 1.0 %以下を含み、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成を有するステンレス鋼素材を、粗圧延と仕上圧延からなる熱間圧延を施し、熱延板とするステンレス鋼板の製造方法において、前記仕上圧延の圧下率を90%以上とし、前記仕上圧延の終了温度FDTを760 ℃以上とすることを特徴とする最大透磁率μmax :2000emu 以上を有する板厚2.0mm 以下の軟磁性ステンレス鋼熱延薄鋼板の製造方法である。
本発明では、上記した組成に加えてさらに重量%で、次A群、C群
A群: Ti : 1.0 %以下、 Nb : 1.0 %以下、V: 0.5 %以下、 Zr : 0.5 %以下、
Ta : 0.5 %以下
C群: Ni : 0.15 〜 1.0 %
のうちから選ばれた1群または2群の各群における1種または2種以上を含有してもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
まず、本発明鋼板の化学組成の限定理由について説明する。
C:0.02%以下
Cは、含有量が多くなりすぎると、加工性を劣化させるとともに、使用環境下での時効により軟磁特性を劣化させる。このため、Cは0.02%以下に限定した。なお、好ましくは0.01%以下である。
【0021】
N:0.02%以下
NもCと同様に、含有量が多くなりすぎると、加工性を劣化させるとともに、使用環境下での時効により軟磁特性を劣化させる。このため、Nは0.02%以下に限定した。なお、好ましくは0.01%以下である。
Mn:1.0 %以下
Mnは、熱間脆性を抑制する元素であるが、含有量が多くなりすぎると、熱間圧延温度域でオーステナイト相を生成し集合組織がランダム化して軟磁特性が劣化する。このため、Mnは1.0 %以下に限定した。なお、好ましくは0.1 〜 0.6%である。
Si : 3.0 %以下
Si は、比抵抗を増加させ、軟磁特性を向上させる元素であるが、含有量が多くなると、硬さが増加し、加工性が劣化する。このようなことから、 Si : 3.0 %以下に限した。なお、好ましくは、 Si : 0.1 〜 2.0 %である。なお、 Si は 0.05 %以下が不可避的不純物として許容される。
【0022】
Cr:9.0 〜17.0%
Crは、耐食性を発現する重要な元素であり、含有量が9%未満ではその効果が十分でなく、一方、17%を越えると、飽和磁化が低下し磁気シールド材として不適となる。このため、Crは9.0 〜17.0%の範囲に限定した。
Al : 1.0 %以下
Al は、比抵抗を増加させ、軟磁特性を向上させる元素であるが、含有量が多くなると、硬さが増加し、加工性が劣化する。このようなことから、 Si : 1.0 %以下に限した。なお、好ましくは、 Al : 0.05 〜 0.7 %である。なお、 Al は 0.01 %以下が不可避的不純物として許容される。
A群:Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以下、Zr:0.5 %以下、Ta:0.5 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上
A群のTi、Nb、V、Zr、Taは、いずれも炭窒化物を形成し、固溶C、固溶Nを低減し、加工性、溶接性を向上させる作用を有しており、必要に応じA群の中から1種または2種以上を含有できる。しかし、含有量が多くなると、加工性および軟磁特性が劣化する。このため、Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以下、Zr:0.5 %以下、Ta:0.5 %以下にそれぞれ限定するのが望ましい。なお、好ましくは、Ti:0.1 〜0.5 %、Nb:0.1 〜 0.5%、V:0.05〜0.4 %、Zr:0.05〜0.4 %、Ta:0.05〜0.4 %である。
【0024】
C群:Ni:0.15 〜1.0 %
C群のNiは、耐食性を向上させる元素であり、必要に応じ0.15 %以上添加できる。しかし、含有量が多くなりすぎると、熱間圧延温度域でオーステナイト相を生成し集合組織がランダム化して軟磁特性が劣化する。このため、Niは0.15 〜1.0 %に限定するのが望ましい。なお、好ましくは、Ni:0.15〜0.5 %である。なお、0.1 %以下は不可避的に含有される範囲である。
【0025】
本発明では、上記したA群、C群のうちから1群または2群を選び、各群の中から1種または2種以上を含有できる。
上記した化学成分以外は、残部Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、P:0.05%以下、S:0.01%以下、O:0.01%以下が許容できる。P、Sは焼鈍時の回復および再結晶を遅らせ軟磁特性を劣化させるため、できるだけ低減するのが望ましい。
【0026】
本発明のステンレス鋼薄鋼板は、結晶面強度比Kが10以上であり、最大透磁率μmax :2000emu 以上を有する。本発明においては、結晶面強度比Kは、X線回折装置により、表層から1/5t(t:板厚)深さの位置における板面の結晶面強度を、{200 }面、{110 }面、{222 }面について測定し、次式
K=(I200 +I110 )/I222
(ここで、I200 :{200 }面強度、I110 :{110 }面強度、I222 :{222 }面強度である。)
を用いて求めるものとする。また、最大透磁率μmax は、JIS C 2550の規定に準拠する直流磁化による磁気測定により求めるものとする。
【0027】
結晶面強度比Kが増加するにしたがい、最大透磁率に代表される軟磁特性が向上する原因については、現在のところ詳細には不明であるが、以下のように考えられる。
BCC結晶構造をとるフェライト系ステンレス鋼では、磁化容易方向は<100 >軸、ついで<110 >軸であり、<111 >軸は磁化されにくい方向であることは知られている。圧延により発達し易い{111 }面は、板面に平行な<100 >軸を持たないため、軟磁特性には不利な結晶方位である。
【0028】
本発明では、表層の結晶配向を、軟磁特性に有利な{110 }面および{100 }面を多く発達させた配向とすると同時に{111 }面を減ずることが軟磁特性向上に有効であるという考えをもとに、鋼板の組成と圧延条件を適切に制御し、表層で{110 }面を発達させ、結晶面強度比Kを10以上として最大透磁率を向上させたのである。
【0029】
本発明鋼板は、板厚2.0mm 以下の熱延薄鋼板である。板厚が2.0mm を超えると、μmax のばらつきが大きくなり、Kが10以上の熱延板であっても、軟磁特性が良好とならない。これは、板厚が厚くなると全板厚に対する表層部の占める割合が低下するためと考えられる。このようなことから、本発明鋼板は、2.0mm 厚以下の熱延薄鋼板とした。
【0030】
つぎに、本発明鋼板の製造方法について説明する。
上記した組成のステンレス鋼溶鋼を、転炉、電気炉等通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法で凝固し、ステンレス鋼素材とするのが望ましい。溶製に際しては真空脱ガスを行ってよいのは言うまでもない。
ステンレス鋼素材は、加熱炉に装入され1000〜1250℃に加熱され、あるいは鋼素材が高温であれば加熱せずそのまま、あるいは加熱炉に装入しわずかに昇温されたのち、粗圧延および仕上圧延からなる熱間圧延を施され所定の板厚の熱延板とされる。本発明では、仕上圧延の圧下率を90%以上、かつ仕上圧延の終了温度FDTを760 ℃以上に規制する。これにより、板表層部で剪断応力が大きくなり、{110 }面の発達が著しくなり、上記した結晶面強度比K10以上が安定して確保でき、最大透磁率μmax 2000emu 以上の軟磁特性に優れたステンレス鋼熱延板が得られる。
【0031】
仕上圧延の圧下率が90%未満では、鋼板表層部に与える剪断応力が不十分であり、軟磁特性に有効な結晶面強度が得られず、結晶面強度比Kが10未満と低くなる。また、仕上圧延の終了温度FDTが760 ℃未満では、圧延ロールと鋼板との摩擦係数が低下し、剪断応力の発生が少なく、このため板表面部で、圧縮応力による{111 }面の生成が顕著となり、軟磁特性に有効な{110 }面の発達が不十分となり、結晶面強度比Kが10未満と低くなり、最大透磁率が低下する。このようなことから、仕上圧延の圧下率を90%以上、かつ仕上圧延の終了温度FDTが760 ℃以上に規制した。なお、好ましくは、仕上圧延の圧下率を92%以上97%以下、かつ仕上圧延の終了温度FDTが800 ℃以上970 ℃以下である。圧下率が97%を超えると、板厚、板幅等の形状不良が出やすく歩留を低下させる。また、FDTが 970℃を超えると、高温のため剛性が低下し、巻取りまでの間に形状不良が発生し、歩留の低下を招く。
【0032】
仕上圧延後、熱延板はコイル状に巻き取られる。
熱延板は、巻取り後の自己焼鈍や、磁性焼鈍等により、表層近傍から優先的に回復再結晶し、軟磁特性はさらに向上する。
また、熱延板焼鈍や酸洗によるスケール除去は本発明の効果を損なうことはなく、表面性状や機械的特性の要求に応じ、通常公知の方法で、本発明鋼板に熱延板焼鈍や酸洗を施すことができる。
【0033】
【実施例】
表3に示す組成のステンレス鋼溶鋼を、転炉および真空脱ガス装置を用いて溶製し、連続鋳造法で200mm 厚のスラブとした。これらスラブを、加熱温度1100〜1200℃の範囲で加熱したのち、熱間圧延を行った。粗圧延を、1000〜1050℃の範囲で終了したのち、表4に示す条件で仕上圧延を行い、板厚2.4 〜1.2mm の熱延板とした。なお、一部の仕上圧延は、先行シートバーと後行シートバーを接合し、連続圧延とした。なお、仕上圧延は表4に示す条件で仕上圧延を行い、板厚2.4 〜1.2mm の熱延板とした。
【0034】
【表3】
【0035】
これら熱延板について、結晶面強度比Kを測定した。
結晶面強度比Kはつぎのようにして求めた。
熱延板から、試験片を採取し、表面から板厚tの1/5 まで機械的に研削した。その後、試験片は、研削による歪を除去するため王水でエッチング処理を施され、測定に供した。結晶面強度の測定は、X線回折装置(反転極点図測定装置:Cr管球、管電圧50kV、管電流35mA、Ge半導体検出器使用)を用いて、各試験片について各結晶面の強度を測定し、結晶面強度比Kを求めた。
【0036】
これら熱延板にさらに磁性焼鈍を想定した焼鈍(800 ℃×5min )を施したのち、JIS C 2550の規定に準拠する直流磁化による磁気測定を行い、最大透磁率μmax を求めた。
これらの結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
本発明例は、結晶面強度比Kが10以上と高く、最大透磁率μmax が2000emu 以上と優れた軟磁特性を有しているのに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、結晶面強度比Kが低く、μmax が2000emu 未満と軟磁特性が低下している。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた軟磁特性を有し、しかも耐食性に優れたステンレス鋼熱延薄鋼板を安定して製造でき、安価な磁気シールド材を安定して供給できるという産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】最大透磁率μmax と結晶面強度比Kとの関係を示すグラフである。
【図2】結晶面強度比Kにおよぼす仕上圧延圧下率と仕上圧延終了温度FDTとの関係(a)、および最大透磁率μmax におよぼす仕上圧延圧下率と仕上圧延終了温度FDTとの関係(b)を示すグラフである。
Claims (4)
- 重量%で、
C:0.02%以下、 N:0.02%以下、
Si : 3.0 %以下、 Mn:1.0 %以下、
Cr:9.0 〜17.0%、 Al : 1.0 %以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、下記式で表される結晶面強度比Kが10以上で、最大透磁率μmax :2000emu 以上を有することを特徴とする板厚2.0mm 以下の軟磁性ステンレス鋼熱延薄鋼板。
記
K=(I200 +I110 )/I222
ここで、I200 :{200 }面強度、
I110 :{110 }面強度、
I222 :{222 }面強度 - 前記組成に加えて、さらに重量%で、下記A群、C群のうちから選ばれた1群または2群の各群における1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の軟磁性ステンレス鋼熱延薄鋼板。
記
A群:Ti:1.0 %以下、Nb:1.0 %以下、V:0.5 %以下、Zr:0.5 %以下、
Ta:0.5 %以下
C群:Ni:0.15 〜1.0 % - 重量%で、
C:0.02%以下、 N:0.02%以下、
Si : 3.0 %以下、 Mn:1.0 %以下、
Cr:9.0 〜17.0%、 Al : 1.0 %以下
を含み、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成のステンレス鋼素材を、粗圧延と仕上圧延からなる熱間圧延を施し、熱延板とするステンレス鋼板の製造方法において、前記仕上圧延の圧下率を90%以上とし、前記仕上圧延の終了温度FDTを760 ℃以上とすることを特徴とする最大透磁率μmax :2000emu 以上を有する板厚2.0mm 以下の軟磁性ステンレス鋼熱延薄鋼板の製造方法。 - 前記組成に加えて、さらに重量%で、下記A群、C群のうちから選ばれた1群または2群の各群における1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の軟磁性ステンレス鋼熱延薄鋼板の製造方法。
記
A群: Ti : 1.0 %以下、 Nb : 1.0 %以下、V: 0.5 %以下、 Zr : 0.5 %以下、
Ta : 0.5 %以下
C群: Ni : 0.15 〜 1.0 %
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