JP2022056669A - フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐食性と加工性に優れ、かつ交流磁界での優れた磁気特性を発現させることが可能なフェライト系ステンレス鋼を提供する。【解決手段】C:0.001~0.030%、Si:0.01~3.00%、Mn:0.01~2.00%、P:0.030%以下、S:0.0050%以下、Ni:0.01~3.00%、Cr:5.0~18.0%、Al:0.001~5.000%、V:0.001~1.00%、B:0.0001~0.0100%、N:0.001~0.030%を含有し、更に、Ti:0.01~0.30%およびNb:0.001~0.30%のいずれか1種または2種を含有し、下記式(1)を満たし、残部がFeおよび不純物であり、結晶粒度番号が6.0以上9.0以下であり、平均r値が1.0以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。Cr+15Al+20Si≧20.00 …(1)【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼に関し、特に、モータケースやモータ部品に使用されるフェライト系ステンレス鋼に関する。
フェライト系ステンレス鋼は、家電製品、電子機器、自動車等の幅広い分野で使用されている。特に、暖房機器、厨房機器、自動車分野等のような、材料が高温になる分野では、適用されるステンレス鋼には耐酸化性や耐食性などが要求される。
また、ステッピングモータやヒステリシスモータ等を収容するモータケースや、モータコア等のモータ部品、電子スロットルセンサやEPSセンサのようなセンサ類、リレーや電磁弁、さらにそれらのコア、ヨーク、コネクタやハウジングなどでは、磁気特性が重要となる。特にモータケースやモータ部品では内部の電極のプラスマイナスが頻繁に切り替わることから、交流磁界での磁気特性が重要となる。
磁気特性とは、具体的には、飽和磁束密度(Bs)、透磁率(μ)、残留磁束密度(Br)、保磁力(Hc)の値から判断される。飽和磁束密度Bsとは、材料の磁気力の絶対値を示す指標であり、十分大きな磁界H(A/m)で収束する飽和磁化である。飽和磁束密度Bsが大きいほど、強い磁気含容力で強磁界をシールドする。また、透磁率μとは、磁場に対する敏感さの指標であり、磁界H(A/m)に対する磁化B(T)の勾配(μ=B/H)で算出される。透磁率μが高いほど、磁界に敏感に反応して磁化し易い材料である。更に、残留磁束密度Brとは、飽和磁束密度Bsの状態から磁界Hを0にした際に、材料に残留した磁束密度である。更にまた、保磁力Hcとは、この状態からさらに減磁し、磁束密度が0になった時の磁界値である。残留磁束密度Br及び保磁力Hcが共に小さいほど、磁化の解消が容易である。
加えて交流磁界での磁気特性については、各周波数での最大磁束密度(Bm)及び当該値に影響を与える鉄損(W)が重要となる。最大磁束密度の増加にはFe、Ni、Coの含有量を増やすことが有効であり、ステンレス鋼においてはCr含有量を低下させることで相対的にFeの含有量を増加させることが出来る。しかし、Cr含有量を低下させるとステンレス鋼の最も重要な特性である耐食性が低下してしまう。
また、鉄損が増加する原因となるのは磁性材料内で誘起される渦電流である。渦電流による損失を小さくするためには電気抵抗率を増加させることが効果的である。例えば高Cr含有フェライト系ステンレス鋼はCr含有量が高いために電気抵抗率が増加し鉄損が低減するため、高周波数域での磁束密度が高くなる傾向にあるが、それでも1kHz以上の周波数域では磁束密度の低下を防ぐことが難しい。電気抵抗率をさらに増加させるにはAlやSiの添加が有効であるが、高Cr含有フェライト系ステンレス鋼にAlやSiを添加すると製造性や加工性が低下してしまう。
特許文献1には、磁気特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板として、重量%にて、C≦0.01%、Si:0.1~0.6%、Mn:0.1~1.0%、S≦0.004%、Cr:5~13%、Ti:0.05~0.5%、O≦0.004%、N≦0.015%を含有し、かつC+N≦0.015%であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、表層および中心層における(111)面強度の和が10以下であり、最大比透磁率≧4000であるフェライト系ステンレス鋼板が記載されている。銅、銅合金またはセラミックスに比べると、耐衝撃性及び磁気特性に優れるが、AlやSiの含有量が低く、高周波域での十分な磁束密度を確保できない。
特許文献2には、磁気特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板として、重量%で、C:0.015%以下、N:0.015%以下、Si:1.5%以下、Mn:1.0%以下、Cr:10~14%、Ti:0.05~0.30%を含有するスラブを熱間圧延により熱延板としたのち、該熱延板に圧下率:20~60%の冷間圧延を施し、ついで、800~930℃で焼鈍することによって製造されるフェライト系ステンレス鋼板が記載されている。銅、銅合金またはセラミックスに比べると、耐衝撃性及び磁気特性に優れるが、AlやSiの含有量が低く、高周波域での十分な磁束密度を確保できない。
特許文献3には、C:0.015wt%以下、Si:0.30wt%以下、Mn:0.30wt%以下、Cr:10.0~20.0wt%、Mo:0.5~2.0wt%、Ti:0.05~0.30wt%、Cu:0.3~1.5wt%およびAl:0.05~1.5wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる高耐食電磁ステンレス鋼が開示されているが、耐食性をMo、Cu添加により確保している。
特許文献4には、C:0.02%以下、Si:0.01~0.50%、Mn:0.01~0.50%、Cr:7.00~20.00%、Mo:0.30~2.00%、Cu:0.10~2.00%、Ti:0.05~0.50%、Al:0.05~3.00%、B:0.0005~0.05%およびN:0.05%以下を含み、残部は実質的Feの組成からなる高冷鍛電磁ステンレス鋼が開示されているが、耐食性をTi、B、Mo、Cu複合添加により確保している。
特許文献5には、質量%で、C:0.020%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、P:0.035%以下、S:0.0030%以下、Cr:10.0~18.0%、N:0.020%以下、Nb:0.5%以下、Ti:0.5%以下、Al:0.10%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、板表面における集合組織が下記の(i)および(ii)を満たすことを特徴とする磁気特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
(i)板表面における鋼板表面の法線方向と{110}面方位との角度差が15°以内で
ある{110}±15°方位粒の面積率が3.0%超30%未満。
(ii)板表面において{110}±15°方位粒の面積率をA、{111}±15°方
位粒の面積率をBとしたとき、0.10<A/B<0.80。
結晶方位制御により磁気特性を担保しているが、Al含有量が低い。
特許文献6には、質量%で、C:0.020%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、P:0.035%以下、S:0.0030%以下、Cr:10.0~18.0%、N:0.020%以下、Nb:0.5%以下、Ti:0.5%以下、Al:0.10%以下、Sn:0.001~0.5%、B:0.005%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする磁気特性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
粒界偏析元素であるSnを添加することでPやS等の粒界偏析を抑制して磁気特性を改善しているが、Al含有量が低く、高周波域での十分な磁束密度を確保できない。
特許第3629102号公報 特開平11-61255号公報 特開平2―305944号公報 特開平4-318153号公報 特開2020-63473号公報 特開2020-63472号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐食性と加工性に優れ、かつ交流磁界での優れた磁気特性を発現させることが可能なフェライト系ステンレス鋼を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
[1]質量%で、
C:0.001~0.030%、
Si:0.01~3.00%、
Mn:0.01~2.00%、
P:0.030%以下、
S:0.0050%以下、
Ni:0.01~3.00%、
Cr:5.0~18.0%、
Al:0.001~5.000%、
V:0.001~1.00%、
B:0.0001~0.0100%、
N:0.001~0.030%を含有し、
更に、Ti:0.01~0.30%およびNb:0.001~0.30%のいずれか1種または2種を含有し、
下記式(1)を満たし、
残部がFeおよび不純物であり、
結晶粒度番号が6.0以上9.0以下であり、
平均r値が1.0以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
Cr+15Al+20Si≧20.00 … (1)
ただし、式(1)におけるCr、Al、Siはそれぞれの元素の質量%である。
[2]800~1000℃、1~10時間で磁気焼鈍した場合、電気抵抗率が60μΩcm以上、磁界波高値0.80kA/m、測定周波数1.0kHzでの最大磁束密度が0.80T以上になることを特徴とする[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[3]さらに、Feの一部に替えて、質量%で、
Mo:0.01~3.00%、
Sn:0.001~3.00%、
Cu:0.01~3.00%、
W:0.001~1.00%、
Sb:0.001~0.100%、
Co:0.001~0.500%、
Ca:0.0001~0.0050%、
Mg:0.0001~0.0050%、
Zr:0.0001~0.0300%、
Ga:0.0001~0.0100%、
Ta:0.001~0.050%、
REM:0.001~0.100%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[4]モータケースおよびモータ部品に適用されることを特徴とする[1]~[3]の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[5]前記モータケースが、ステッピングモータまたはヒステリシスモータを収容するケースであることを特徴とする[4]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[6]前記モータ部品が、モータコアであることを特徴とする[4]または[5]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
本発明によれば、耐食性と加工性に優れ、かつ交流磁界での優れた磁気特性を発現させることが可能なフェライト系ステンレス鋼を提供できる。
さらに本発明のフェライト系ステンレス鋼は、ステッピングモータやヒステリシスモータ等を収容するモータケースや、モータコア等のモータ部品、電子スロットルセンサやEPSセンサのようなセンサ類、リレーや電磁弁、さらにそれらのコア、ヨーク、コネクタやハウジングなどに好適に用いることができる。
本発明者らは、耐食性および加工性に優れ、かつ交流磁界での優れた磁気特性を発現させることが可能なフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的として鋭意検討を重ねた。その結果、下記知見を見出した。
第一に、Cr含有量が5~18%と比較的低いステンレス鋼(低Cr含有鋼)において、Al、Si含有量を高くするほど耐食性が向上することを見出した。これにより製造性及び加工性に優れる低Cr含有鋼に、電気抵抗率の向上にも有効に作用するAl及びSiを多量に含有させることで、ある程度の製造性及び加工性を担保しつつ低Cr含有鋼の課題である電気抵抗率と耐食性を向上させることが出来る。すなわち、Al及びSiを所定量含有させることより、従来よりも交流磁界での磁気特性に優れ、かつ耐食性も良好なフェライト系ステンレス鋼を提供することが出来る。具体的には、Cr、Al及びSiの合計量を一定以上含有させ電気抵抗率を60μΩcm以上とすることで本発明に係るフェライト系ステンレス鋼を得ることが出来る。より具体的には、Cr、Al及びSi添加量のしきい値はCr+15Al+20Si≧20.00である。ただし、当該式におけるCr、Al及びSiはそれぞれの元素の質量%である。より望ましくはCr+15Al+20Si≧30.00、さらに望ましくはCr+15Al+20Si≧40.00である。
加えて、C、P、S、N含有量を低く抑え、かつ磁気焼鈍前の結晶粒を細粒とすることで、平均r値を向上させて良好な加工性を確保でき、さらに磁気焼鈍の際に結晶粒径を粗大化させることで磁気特性を向上させることができる。すなわち、磁気焼鈍前において結晶粒をある程度細粒としておくことで平均r値を向上させて加工性を確保し、その後、磁気焼鈍によって結晶粒の成長が促され、結果、磁気特性を向上させることができる。ただし、結晶粒が成長する際にはr値向上に優位な結晶方位が優先的に成長し加工性を向上させうるが、過度に細粒とするとr値が低くなってしまう。そのため、磁気焼鈍前における鋼の結晶粒度番号は9.0以下とする。また、過度に粗粒とすると加工性が低下するため、結晶粒度番号は6.0以上とする。そして、このような結晶粒度番号を有する鋼に磁気焼鈍を施すことで、結晶粒径を粗大化させ、磁気特性を向上させることができる。
耐食性に関して、Alは、発生初期の孔食内部でイオンとして溶け出してから表面に吸着することで、孔食成長の抑制及び再不動態化を促進していると考えられる。また、Siは、孔食内部で酸化物を形成し、孔食成長の抑制及び再不動態化を促進していると考えられる。
さらに、磁気焼鈍による酸化時に、Al、Si含有量が高いことで、耐食性の低いFe主体の酸化物が表面に形成され難く、耐食性担保に寄与していると考えられる。
以下に、本実施形態について説明する。
本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.001~0.030%、Si:0.01~3.00%、Mn:0.01~2.00%、P:0.030%以下、S:0.0050%以下、Ni:0.01~3.00%、Cr:5.0~18.0%、Al:0.001~5.000%、V:0.001~1.00%、B:0.0001~0.0100%、N:0.001~0.030%を含有し、更に、Ti:0.01~0.30%およびNb:0.001~0.30%のいずれか1種または2種を含有し、下記式(1)を満たし、残部がFeおよび不純物であり、結晶粒度番号が6.0以上9.0以下であり、平均r値が1.0以上である。
Cr+15Al+20Si≧20.00 … (1)
ただし、式(1)におけるCr、Al、Siはそれぞれの元素の質量%である。
また、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼は、800~1000℃、1~10時間で磁気焼鈍した場合、電気抵抗率が60μΩcm以上であり、磁界波高値0.8kA/m、測定周波数1.0kHzでの最大磁束密度が0.80T以上になってもよい。
以下に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の化学組成について説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は質量%を意味する。
C:0.001~0.030%
Cは、磁気特性、耐粒界腐食性、加工性を低下させるため、その含有量を低く抑える必要がある。そのため、Cの含有量を0.030%以下とする。しかしながら、C含有量を過度に低めることは精練コストを上昇させるため、C含有量を0.001%以上とする。C含有量の好ましい範囲は、0.002~0.020%、より好ましい範囲は0.003~0.010%である。
Si:0.01~3.00%
Siは、磁気特性、電気抵抗率、中低温(500~700℃)の耐酸化性及び高温(700℃以上)の耐酸化性を飛躍的に向上させる。また表面に濃縮して腐食発生を抑制するのみならず、母材の腐食速度も低減する非常に有益な元素である。そのため、Siの含有量を0.01%以上とする。ただし、Siの過度な含有は製造性や加工性、溶接溶け込み性を低下させるため、Siの含有量を3.00%以下とする。Si量のより好ましい範囲は0.10~2.00%、更に好ましい範囲は0.30~1.50%、更に好ましい範囲は0.80~1.20%である。
Mn:0.01~2.00%
Mnは、脱酸元素として有用であるが、過剰量のMnを含有させると、耐食性を劣化させる。そのため、Mn含有量を0.01~2.00%とする。Mn含有量の好ましい範囲は、0.05~1.00%、より好ましい範囲は0.02~0.50%である。
P:0.030%以下
Pは、磁気特性、加工性・溶接性を劣化させる元素であるため、その含有量を制限する必要がある。そのため、P含有量を0.030%以下とする。P含有量の好ましい範囲は、0.025%以下である。しかしながら、P含有量を過度に低めることは精練コストを上昇させるため、P含有量を0.001%以上としてもよい。
S:0.0050%以下
Sは、耐食性を劣化させる元素であるため、その含有量を制限する必要がある。そのため、S含有量を0.0050%以下とする。S含有量の好ましい範囲は、0.0030%以下である。しかしながら、S含有量を過度に低めることは精練コストを上昇させるため、S含有量を0.0001%以上としてもよい。
Ni:0.01~3.00%
Niは、磁気特性や耐食性を向上させるため、0.01%以上の含有が必要である。ただし、多量の含有は合金コスト増加に繋がるため、Ni含有量を3.00%以下とする。Ni含有量の好ましい範囲は0.05~1.00%、より好ましい範囲は0.10~0.50%である。
Cr:5.0~18.0%
Crは、耐酸化性及び塩害環境での耐食性を確保するために、5.0%以上の含有が必要である。Crの含有量を増加させるほど、耐酸化性及び耐食性は向上し電気抵抗率も増加するが、溶接溶け込み性、熱伝導率、加工性、製造性を低下させるため、Cr含有量は18.0%以下とする。Cr含有量の好ましい範囲は、5.5~15.0%、より好ましい範囲は9.0~13.0%である。
Al:0.001~5.000%
Alは、本実施形態における重要な元素である。Alは、特に高温(700℃以上)の耐酸化性を飛躍的に向上させる。加えて鋼表面に濃縮して腐食発生を抑制するのみならず、母材の腐食速度も低減する非常に有益な元素である。またAlは、電気抵抗率を増加させる作用も有する。この効果は特に低Cr系ステンレス鋼で顕著である。そのため、Alの含有量を0.001%以上とする。ただし、Alの過度な含有は材料の靭性や伸び減少を引き起こし、製造性や加工性を低下させるため、Alの含有量を5.0%以下とする。Al含有量の好ましい範囲は、0.800~3.000%、より好ましい範囲は1.000~2.000%である。
V:0.001~1.00%
Vは、耐食性を向上させるため、0.001%以上の含有が必要である。ただし、多量の含有は合金コスト増加に繋がるため、V含有量を1.00%以下とする。V含有量の好ましい範囲は、0.005~0.80%、より好ましい範囲は0.010~0.50%である。
B:0.0001~0.0100%
Bは、2次加工性を向上させるのに有用な元素であり、0.0100%以下の含有が必要である。B含有量の下限を、安定した効果が得られる0.0001%以上とする。B含有量の好ましい範囲は0.0005~0.0050%、より好ましい範囲は0.0010~0.0030%である。
N:0.001~0.030%
Nは、耐孔食性に有用な元素であるが、磁気特性、耐粒界腐食性、加工性を低下させる。そのため、Nの含有量を低く抑える必要がある。そのため、N含有量を0.030%以下とする。しかしながら、N含有量を過度に低めることは精練コストを上昇させるため、N含有量を0.001%以上とする。N含有量の好ましい範囲は、0.002~0.020%である。
Ti:0.01~0.30%およびNb:0.001~0.30%の1種又は2種
Ti及びNbは、ステンレス鋼の鋭敏化を防止するために、Tiの場合は0.01%以上、Nbの場合は0.001%以上を含有する必要がある。ただし、多量の含有は合金コスト増加や靭性の低下、鋼中介在物増加による耐食性低下、製造性低下に繋がるため、Ti量またはNb含有量はそれぞれ0.30%以下とする。Ti含有量及びNb含有量の好ましい範囲はそれぞれ、0.03~0.25%、より好ましい範囲はそれぞれ、0.04~0.20%である。Ti及びNbは、何れか一方が含有されていればよく、Ti及びNbの両方が含有されていてもよい。
特に、Tiに関しては、2Al+Si-10Ti≧0(Al、Si及びTiは、フェライト系ステンレス鋼におけるそれぞれの元素の質量%)を満たすことで、耐食性が大幅に向上するため好ましい。
以上が、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の基本となる化学組成であるが、本実施形態では、更に、次のような元素を必要に応じて含有させることができる。
Mo、Sn、Cu、W、Sb、Co、Ca、Mg、Zr、Ga、Ta、REMは、目的に応じて、これらの1種または2種以上が含有されていてもよい。これらの元素の下限は、0%以上、好ましくは0%超である。
Mo:0.01~3.00%
Moは、耐食性を向上させるため、0.01%以上含有することができる。しかし、過剰の含有は、加工性を劣化させると共に、高価であるためコストアップに繋がる。そのため、Mo含有量を3.00%以下とする。Mo含有量の好ましい範囲は、0.05~2.00%であり、より好ましい範囲は0.05~1.00%である。
Sn:0.001~3.00%
Snは、耐食性を向上させるため、0.001%以上含有することができる。しかし、過剰の含有はコスト増加に繋がる。そのため、Sn含有量を3.00%以下とする。Sn含有量の好ましい範囲は、0.005~1.00%であり、より好ましくは0.010~1.00%である。
Cu:0.01~3.00%
Cuは、耐食性を向上させるため、0.01%以上含有することができる。しかし、過剰の含有はコスト増加に繋がる。そのため、Cu含有量を3.00%以下とする。Cu含有量の好ましい範囲は0.02~1.00%、より望ましい範囲は0.05~0.09%である。
W:0.001~1.00%
Wは、耐食性を向上させるため、1.00%以下を含有することができる。安定した効果を得るためには、W含有量を0.001%以上とする。W含有量の好ましい範囲は、0.005~0.80%である。
Sb:0.001~0.100%
Sbは、耐全面腐食性を向上させるため、0.100%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Sb含有量を0.001%以上とする。Sb含有量の好ましい範囲は、0.010~0.080%である。
Co:0.001~0.500%
Coは、二次加工性と靭性を向上させるために、0.500%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Co含有量を0.001%以上とする。Co含有量の好ましい範囲は、0.010~0.300%である。
Ca:0.0001~0.0050%
Caは、脱硫のために含有されるが、過剰に含有すると、水溶性の介在物CaSが生成して耐食性を低下させる。そのため、0.0001~0.0050%の範囲でCaを含有することができる。Ca含有量の好ましい範囲は、0.0005~0.0030%である。
Mg:0.0001~0.0050%
Mgは、組織を微細化し、加工性、靭性の向上にも有用である。そのため、0.0050%以下の範囲でMgを含有することができる。安定した効果を得るためには、Mg含有量を0.0001%以上とする。Mg含有量の好ましい範囲は、0.0005~0.0030%である。
Zr:0.0001~0.0300%
Zrは、耐食性を向上させるために、0.0300%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Zr含有量を0.0001%以上とする。Zr含有量の好ましい範囲は、0.0010~0.0100%である。
Ga:0.0001~0.0100%
Gaは、耐食性と耐水素脆化性を向上させるために、0.0100%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Ga含有量を0.0001%以上とする。Ga含有量の好ましい範囲は、0.0005~0.0050%である。
Ta:0.001~0.050%
Taは、耐食性を向上させるために、0.050%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Ta含有量を0.001%以上とする。Ta含有量の好ましい範囲は、0.005~0.030%である。
REM:0.001~0.100%
REMは、脱酸効果等を有するので、精練で有用な元素であるため、0.100%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、REM量を0.001%以上とする。REM含有量の好ましい範囲は、0.003~0.050%である。
ここで、REM(希土類元素)は、一般的な定義に従い、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。REMは、これら希土類元素から選択される1種以上であり、REMの含有量とは、希土類元素の合計量である。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、上述してきた元素以外は、Fe及び不純物(不純物には不可避的不純物も含む)からなる。また、以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることが出来る。本実施形態では、例えばBi、Pb、Se、H等を含有させてもよいが、その場合は可能な限り低減することが好ましい。一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Biは0.01%以下、Pbは0.01%以下、Seは0.01%以下、Hは0.01%以下を含有してもよい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の結晶粒度番号は6.0以上9.0以下である。平均r値を高めて加工性を向上させるためには、結晶粒度番号6.0以上とし細粒とすることが重要である。この効果をより発揮させるためには結晶粒度番号は7.0以上とすることが好ましい。一方、結晶粒が成長する際にはr値向上に優位な結晶方位が優先的に成長し加工性を向上させうるが、過度に細粒とするとr値が低くなってしまう。そのため、結晶粒度番号は9.0以下とする。好ましくは、8.5以下である。
結晶粒度番号は、鋼板から長さが30mm、幅が20mmである試験片を切り出し、圧延方向の断面組織が観察できるように樹脂に埋め込み、鏡面研磨とエッチングを施す。その後、JIS G 0551:2013に準拠し、圧延方向の断面組織の粒度番号を測定する。測定は板厚中心部から試験n数5で行い、その平均値を採用する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、平均r値(ランクフォード値)が1.0以上である。平均r値を1.0以上とすることで、フェライト系ステンレス鋼の加工性を向上させ、より厳しい加工を行うことができる。平均r値は好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.2以上である。
平均r値は、JIS Z 2254(2008)の塑性ひずみ比試験方法により測定することができ、下記式(A)によって求めることができる。
平均r値=(r+2r45+r90)/4 ・・・(A)
但し、(A)式中のrは圧延方向のr値、r90は圧延直角方向のr値、r45は圧延45度方向のr値を示す。
ここで、以上説明してきた本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼に対し磁気焼鈍を施した場合の特性について説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、800~1000℃、1~10時間で磁気焼鈍した場合、電気抵抗率が60μΩcm以上、磁界波高値0.8kA/m、測定周波数1.0kHzでの最大磁束密度が0.8T(テスラ)以上を示す。なお本実施形態に係る鋼は、上記の焼鈍条件の範囲内であればどのような条件であっても電気抵抗率が60μΩcm以上、磁界波高値0.8kA/m、測定周波数1.0kHzでの最大磁束密度が0.8T以上を示すものとなる。
交流磁界での磁気特性については、各周波数での最大磁束密度(Bm)及び当該値に影響を与える鉄損(W)が重要となる。鉄損が増加する原因となるのは磁性材料内で誘起される渦電流である。渦電流による損失を小さくするためには電気抵抗率を増加させることが効果的である。そのため、本実施形態では、上述のような化学成分となるよう制御し、かつ結晶粒度を制御することによって、十分な電気抵抗率および最大磁束密度を確保することができる。具体的には、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼を用いて磁気焼鈍を行うことで、電気抵抗率が60μΩcm以上、かつ磁界波高値0.8kA/m、測定周波数1.0kHzでの最大磁束密度が0.8T(テスラ)以上を発現させうるフェライト系ステンレス鋼を得ることができる。またこれにより、ステッピングモータやヒステリシスモータ等を収容するモータケースや、モータコア等のモータ部品、電子スロットルセンサやEPSセンサのようなセンサ類、リレーや電磁弁、さらにそれらのコア、ヨーク、コネクタやハウジングなどに好適に用いることができる。なお、本実施形態において電気抵抗率は、電気抵抗測定装置を用い、いわゆる4端子法によって測定することができる。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の形態は特に限定されないが、鋼板であることが好ましい。
次に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の製造方法について、形態が「鋼板」である場合を例に挙げて説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の製造方法は、製鋼-熱間圧延-熱延板焼鈍・酸洗-冷間圧延-冷延板焼鈍の各工程よりなり、各工程の製造条件については、本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定してよいが、結晶粒度番号および平均r値の制御の観点から、熱延板焼鈍、冷間圧延の圧下率および冷延板焼鈍それぞれの条件を適切に制御する必要がある。
以下、製造方法の各工程および条件について詳述する。
製鋼においては、前記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する鋼を、転炉溶製し続いて2次精錬を行う方法が好適である。溶製した溶鋼は、鋳造(連続鋳造)することによりスラブとする。スラブは、所定の温度に加熱され、所定の板厚に連続圧延で熱間圧延される。最終製品の結晶粒度及び結晶方位を考慮すると、スラブ加熱温度は1190℃以上1300℃以下、スラブ厚さは3.0mm以上300.0mm以下が望ましい。
熱間圧延後の焼鈍工程(熱延板焼鈍工程)は、結晶粒度の適正を図り、磁気特性に優れる組織を得るために重要な工程である。具体的には、熱延板焼鈍における均熱温度を850℃~1000℃とする。熱延板焼鈍の均熱温度が850℃未満であると再結晶不良のおそれがあるため、均熱温度は850℃以上とする。また熱延板焼鈍の均熱温度が1000℃超であると結晶粒粗大化による靭性低下のおそれがあるため、均熱温度は1000℃以下とする。好ましくは、熱延板焼鈍の均熱温度は880℃~980℃である。なお、熱延板焼鈍における均熱時間(保持時間)は特に限定しないが、再結晶完了の観点から10秒~120秒とすることが好ましい。
熱延板焼鈍後は酸洗、冷間圧延が順次実施される。このとき冷間圧延の圧下率は、40%以上とすることが好ましい。圧下率が40%未満であると後の冷延板焼鈍時に再結晶不良のおそれがあるため、圧下率は40%以上が好ましく、より好ましくは50%以上である。一方、圧下率が高くなりすぎると生産性が劣化するおそれがあるため、圧下率は95%以下とすることが好ましい。
酸洗後の冷間圧延は、通常のゼンジミアミル、タンデムミルのいずれで圧延してもよいが、鋼板の加工性を考慮するとタンデムミル圧延の方が望ましく、磁気特性に優れる組織を得るためにはゼンジミアミル圧延の方が望ましい。冷間圧延においては、ロール粗度、ロール径、圧延油、圧延パス回数、圧延速度、圧延温度などは一般的な範囲内で適宜選択すればよい。冷間圧延の途中に中間焼鈍を入れてもよい。
冷間圧延後の最終焼鈍(冷延板焼鈍)は、結晶粒度および平均r値を制御する観点から重要となる。特に、均熱温度は880℃~1000℃とする必要がある。冷延板焼鈍の均熱温度が880℃未満であると再結晶不良のおそれがあるため、均熱温度は880℃以上とする。また冷延板焼鈍の均熱温度が1000℃超であると結晶粒粗大化のおそれがあるため、均熱温度は1000℃以上とする。好ましくは、冷延板焼鈍の均熱温度は900℃~950℃である。なお、冷延板焼鈍における均熱時間(保持時間)は特に限定しないが、再結晶促進の観点から10秒~120秒とすることが好ましい。
なお、冷間圧延途中で行う中間焼鈍および冷間圧延後の最終焼鈍はバッチ式焼鈍でも連続式焼鈍でも構わない。また、各焼鈍の雰囲気は、必要であれば水素ガスあるいは窒素ガスなどの無酸化雰囲気で焼鈍する光輝焼鈍でもよく、大気中で焼鈍しても構わない。最終焼鈍後は、ソルト処理、酸洗、電解酸洗等を行うとよい。
以上説明した製造方法によって本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼を製造することができるが、上記以外の工程についても、本発明の効果を損なわない範囲で適宜実施してもよく、例えば、最終焼鈍後に、形状矯正のためのテンションレベラー工程を実施してもよく、また通板しても構わない。
なお、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼はモータケースやモータ部品に好適に使用できる。その場合、部品への加工後に磁気焼鈍を施すことで磁気特性に優れた製品とすることが可能である。磁気焼鈍の条件については、適用製品、用途等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、1×10-2~9×10-2Paの真空中で、昇温速度1~100℃/min、均熱温度800~1000℃、均熱時間を1~10時間、好ましくは1~3時間の条件で行うことが望ましい。このような熱処理後はArガス等による冷却を行っても良いし、空冷や炉冷としてもよい。このような磁気焼鈍を行うことで、加工歪みの除去及び結晶粒の粗大化が起こり、磁気特性が良好となり、磁束密度を向上させることができる。具体的には、このような磁気焼鈍の実施によって結晶粒度番号が4.0以下の粗大な結晶粒を有するフェライト系ステンレス鋼を得ることができ、その結果、交流磁界での磁気特性を向上させることができる。
以上、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼およびその好適な製造方法について説明してきたが、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼によれば、耐食性と加工性に優れ、かつ交流磁界での優れた磁気特性を発現させることが可能なフェライト系ステンレス鋼を提供できる。さらに、当該フェライト系ステンレス鋼に最適な磁気焼鈍を施すことで、ステッピングモータやヒステリシスモータ等のモータケースやモータコア等のモータ部品に好適な、耐食性と交流磁界での磁気特性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供できる。
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。なお、表中の下線は本発明範囲から外れるものを示す。
表1A及び表1Bに示す組成の鋼を溶製し、厚さ200mmのスラブを板厚3mmになるまで熱間圧延を施した。次いで、熱間圧延後の鋼板に表2に示す温度で60秒の熱処置(熱延板焼鈍)を行い、さらにショット・酸洗を施した。その後、板厚が0.8mmになるまで冷間圧延(圧下率:73%)を施し、表2に示す温度で1分間の熱処理(冷延板焼鈍)を行い、次いでソルト処理及び酸洗を施した。酸洗は、硝酸濃度が150g/Lの溶液中で電解酸洗を行った。このようにしてフェライト系ステンレス鋼板を製造した。
また作製した鋼板の幅方向中央付近から、長さ30mm、幅20mmの試験片を切り出し、圧延方向の断面組織が観察できるように樹脂に埋め込み、鏡面研磨とエッチングを施した。その後JIS G 0551:2013に準拠して線分法によって、圧延方向の断面組織の粒度番号を測定した。測定は板厚中心部から試験n数5で行い、その平均値を採用した。
また作製した鋼板の幅方向中央付近からJIS Z 2241:2011の附属書Bに記載の13B号の引張試験片を作製し、試験片の寸法や標点距離などを測定した。その後、JIS Z 2254:2008の塑性ひずみ比試験方法に準拠し、引張試験によって14.4%の歪を付与した後の試験片寸法や標点距離などを測定し、両測定結果から平均r値を算出した。算出する際は、上記式(A)を用いた。なお、加工性の判定基準として、平均r値が1.0以上の鋼種を合格とした。
さらに、磁気特性、耐食性を評価すべく、以下の試験を行った。
まず、1.3×10-2Paの真空中で昇温速度1~100℃/minの速度で昇温し、表2に示す磁気焼鈍温度にて2時間の磁気焼鈍を行い、その後、空冷した。
磁気焼鈍後の鋼板の幅方向中央付近から、長さ30mm、幅20mmの試験片を切り出し、圧延方向の断面組織が観察できるように樹脂に埋め込み、鏡面研磨とエッチングを施した。その後JIS G 0551:2013に準拠して線分法によって、圧延方向の断面組織の粒度番号を測定した。測定は板厚中心部から試験n数5で行い、その平均値を採用した。
磁気焼鈍後の鋼板の幅方向中央付近から、幅75mm、長さ150mmの試験片を切り出し、JASO-CCT試験用試験片とした。JASO-CCT試験は、JASO M 610-92に準拠して12サイクル行った。JASO-CCT試験の判定基準として、JIS G 0595:2004に準拠する方法でレイティングナンバを判定し、「3」を境界値とした。レイティングナンバが4~9の鋼種は耐食性に優れるものと判定し、表2中に符号「○」で示した。一方、レイティングナンバが0~3の鋼種は耐食性が劣るものと判定し、表2中に符号「×」で示した。
また磁気焼鈍後の鋼の幅方向中央付近から、4mm×60mmの試験片を切り出し、電気抵抗測定装置(アルバック理工株式会社製 TER-2000RH型)を用いて4端子法で電気抵抗率を測定した。測定電流は0.4A、電圧降下距離は40mm、測定温度は室温とし、60μΩcm以上の場合を合格と判定した。
また磁気焼鈍後の鋼の幅方向中央付近から、外径45mm、内径33mm、高さ0.8mmのリング試料を放電加工で切り出した。このリング試料をカプトンフィルムで養生し、二次巻き線を100ターン巻いた後にアクリルケースに収納し、さらに一次巻き線を200ターン巻くことで、交流磁気測定用のリング状試験試料とした。このリング状試験試料を用いて、交流磁気測定装置(岩通計測株式会社製 B-HアナライザSY-8258)により交流磁気測定を行った。測定条件として磁界波高値を0.8kA/m、測定周波数を1.0kHzとした。最大磁束密度が0.80T以上の場合を合格と判定した。最大磁束密度が、0.80T未満の場合は不合格と判定した。
表2に結果を示す。組成、結晶粒度の本発明を満たし、かつCr+15Al+20Si≧20(Cr、Al、Siはそれぞれの元素の質量%濃度を示す)を満たす場合は、平均r値(加工性)、電気抵抗率、交流での磁束密度及びJASO-CCT試験結果が合格(「○」)となることがわかる。
比較例B1~9においては、Cr+15Al+20Si≧20(Cr、Al、Siはそれぞれの元素の質量%濃度を示す)を満たさず、磁気特性、耐食性ともに評価結果は「×」であった。
比較例B10~12においては、冷延板焼鈍の焼鈍温度が低かったため、磁気焼鈍前の結晶粒が過度に細粒となり(結晶粒度番号を満たさず)、平均r値(加工性)が劣った。
比較例B13~15においては、冷延板焼鈍の焼鈍温度が高かったため、磁気焼鈍前の結晶粒が粗大となり、結果、平均r値(加工性)が劣った。
Figure 2022056669000001
Figure 2022056669000002
Figure 2022056669000003
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、加工性に優れ、かつ耐食性と交流磁界での磁気特性を両立することができるので、ステッピングモータやヒステリシスモータ等のモータケースやモータコア等のモータ部品、電子スロットルセンサやEPSセンサのようなセンサ類、リレーや電磁弁、さらにそれらのコア、ヨーク、コネクタやハウジングなどに好適に用いることができる。即ち、本発明は産業上極めて有益である。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.001~0.030%、
    Si:0.01~3.00%、
    Mn:0.01~2.00%、
    P:0.030%以下、
    S:0.0050%以下、
    Ni:0.01~3.00%、
    Cr:5.0~18.0%、
    Al:0.001~5.000%、
    V:0.001~1.00%、
    B:0.0001~0.0100%、
    N:0.001~0.030%を含有し、
    更に、Ti:0.01~0.30%およびNb:0.001~0.30%のいずれか1種または2種を含有し、
    下記式(1)を満たし、
    残部がFeおよび不純物であり、
    結晶粒度番号が6.0以上9.0以下であり、
    平均r値が1.0以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
    Cr+15Al+20Si≧20.00 … (1)
    ただし、式(1)におけるCr、Al、Siはそれぞれの元素の質量%である。
  2. 800~1000℃、1~10時間で磁気焼鈍した場合、
    電気抵抗率が60μΩcm以上、
    磁界波高値0.8kA/m、測定周波数1.0kHzでの最大磁束密度が0.80T以上になることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. さらに、Feの一部に替えて、質量%で、
    Mo:0.01~3.00%、
    Sn:0.001~3.00%、
    Cu:0.01~3.00%、
    W:0.001~1.00%、
    Sb:0.001~0.100%、
    Co:0.001~0.500%、
    Ca:0.0001~0.0050%、
    Mg:0.0001~0.0050%、
    Zr:0.0001~0.0300%、
    Ga:0.0001~0.0100%、
    Ta:0.001~0.050%、
    REM:0.001~0.100%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  4. モータケースおよびモータ部品に適用されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  5. 前記モータケースが、ステッピングモータまたはヒステリシスモータを収容するケースであることを特徴とする請求項4に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  6. 前記モータ部品が、モータコアであることを特徴とする請求項4または5に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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