JP2843290B2 - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた柔軟性、耐
熱軟化性ならびに高破壊強度特性を兼ね備える熱可塑性
エラストマー組成物に関する。特に、前記の特性に加え
て防水性、耐候性、熱融着性の優れた廃棄物処分場用遮
水シート等の防水シートに使用される熱可塑性エラスト
マー組成物に関する。また、その防水シートに関する。
ここで防水シートとは各種の遮水シート、防水シートの
総称として用いる。以下において、特にことわりがない
場合は、防水シートは各種遮水、防水シートの総称を指
すものとする。
【0002】
【従来の技術】従来、廃棄物処分場用遮水シート、また
は建築、土木用防水シートに用いられている材質とし
て、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPD
M)系の加硫ゴム組成物などは、柔軟性、耐候性には優
れているものの機械的強度が不足する、熱融着できない
という欠点がある。また、高密度ポリエチレン(HDP
E)などの樹脂は、高破壊強度は有しているが、柔軟性
に欠けるとともに、熱融着性は有するものの硬いため熱
をかけても融着しにくく、施行時の加工性に劣るという
欠点がある。更に、スチレン/エチレン/ブタジエン共
重合体等のいわゆるハードブロック/ソフトブロックか
らなる熱可塑性エラストマーは柔軟ではあるが熱による
軟化が著しく、直射日光下で破壊し易いという欠点を有
していた。そこでこのような問題を解決するために、ポ
リプロピレン樹脂(PP)とEPDMゴム組成物よりな
りゴム組成物に動的加硫を施した熱可塑性エラストマー
組成物を使用し、EPDM組成物/PP樹脂の比率の制
御、更にはゴム組成物に対する加硫剤、可塑剤、軟化剤
等の配合剤により物性を制御してきた。
【0003】例えば、特開昭59−58043号公報で
は、ポリプロピレン等のプラスチックと、エチレン−プ
ロピレン系共重合ゴム組成物とをブレンドし、動的に加
硫する方法において、2000秒-1以上の剪断速度で混
練中に加硫することにより短時間で加硫を行いゴムと樹
脂の劣化を防ぐ方法について記載されているが、破壊強
度が未だ前記目的に対しては満足するものではなく、問
題がある。ここで、剪断速度は、スクリュの先端が描く
円の円周に、スクリュの1秒間の回転数を掛けて得られ
た積を先端の間隙で除して計算される。別の言葉で表わ
せば、剪断速度は先端の間隙で先端の速度を割った値で
ある。また、動的加硫を行う部分での滞留時間を、動的
加硫を行う部分の全容積に充満係数を乗じ、それを容積
流量で除して計算している。
【0004】また、特開平2−235949号公報で
は、エチレン−α・オレフィン・非共役ジエン系共重合
ゴム組成物、結晶性ポリオレフィン樹脂および必要によ
り鉱物系軟化剤をフェノール系加硫剤を用いて動的に加
硫することで得られ、耐油性、高温機械特性および圧縮
永久歪などの形状回復性を保持したまま、成形性が良好
な熱可塑性エラストマー組成物について記載されてい
る。そして、結晶性ポリオレフィン樹脂として、結晶性
プロピレン・α−オレフィン共重合体が例示されている
が、これはブロック共重合体であり、破壊強度が低いと
いう問題点がある。
【0005】また、特開平2−283743号公報で
は、(a)カルボキシル基または酸無水物基をグラフト
重合させたエチレン−α・オレフィン共重合ゴムと、
(b)結晶性ポリオレフィン樹脂とを(b)の融点以上
の温度で金属酸化物等を存在させて動的に架橋させて機
械特性、耐油性、耐熱老化性、耐候性、永久伸び等の形
状回復性を有すると同時に、熱及び光による変色が起こ
りにくい熱可塑性エラストマー組成物を得る方法につい
て記載されているが、柔軟性、耐熱軟化性及び高破壊特
性を併せもつ組成物の開示はない。
【0006】特開平6−107878号公報では、部分
結晶質のエチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマ
ー、アルケンのホモおよび/またはコポリマーおよびポ
リマー変性剤をベースとする熱可塑性合成樹脂よりなる
フィルムなどの成形体が深絞り成形性および耐傷跡形成
性に優れていることが記載されているが、該文献は柔軟
性および高破壊強度並びに防水性、耐候性、接着性を併
せ持つ樹脂組成物およびその成形体の開示ではない。
【0007】一方、廃棄物処分場等に使用される遮水シ
ートは、柔軟性と高破壊強度を同時に有することに加え
て更に防水性、長期の耐候性を有し、さらに現場での接
合が可能である必要がある。すなわち、シートの接合面
同志の接着性を有している必要がある。一般に、遮水シ
ートの施工は、整地された地面の上に、一定の面積のシ
ートを直接搬入し、継ぎ目を加熱(熱融着)あるいは接
着剤を塗布して接合させる。そして、その接合に際し
て、ある程度の凹凸のある地面に敷いたシート同志を液
体が透過しないように完全に遮水できるよう接合するた
めには、シートが地面の凹凸に追従できる程度に、シー
ト自体が柔軟性を有し、次いで加熱した際にシート同志
が互いに良好な接着性を有している必要がある。さら
に、シート施工後、廃棄物等をシート上に投棄する際に
は、破損しない程度の高破壊強度および直射日光に晒さ
れても軟化による変形を起こさない程度の耐熱軟化性を
有している必要がある。遮水シートが破損あるいは極度
に変形した場合には、漏水を起こし重大な問題となる。
ところが、現状では柔軟性に優れるシートは破壊強度が
低く、かつ耐熱軟化性が過大であり、また破壊強度の高
いシートは柔軟性に劣るため、破壊強度、柔軟性、耐熱
軟化性共に優れ、かつ、防水性、耐候性、熱融着性に優
れるシート材質は知られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】したがって、このよう
な用途に使用するシートとしては、柔軟性すなわち施工
信頼性が高く、同時に高破壊強度の材質のものであり、
かつ耐熱軟化性、長期の耐候性を有することが必須であ
る。しかしながら、柔軟性に対して高破壊強度と耐熱軟
化性は相反する特性であるため、両者の特性を高度にバ
ランスよく有する組成物は無かった。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明の発明者
等は、かかる現状に鑑み、熱可塑性エラストマー組成物
の有するこれらの問題点を改良すべく鋭意検討を重ねた
結果、樹脂成分として、ポリプロピレン樹脂(ホモポリ
マー)とエチレン・プロピレンランダム共重合樹脂(ラ
ンダムポリマー)とを併用した樹脂組成物の少なくとも
一部をいわゆるマトリックスとし、エチレン・プロピレ
ン系共重合ゴム組成物および/またはブチル系ゴム組成
物を分散せしめ、少なくとも一部をドメインとなし、更
に分散したゴム組成物を、動的に加硫することにより、
柔軟性、耐熱軟化性を損なうことなく、破壊強度(引張
強さ、破断伸び、引裂強さ等)を向上できることを見出
し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明の目的は、ポリプロピレ
ン・ホモポリマー樹脂と、エチレン、プロピレンおよび
α−オレフィンから選ばれる少なくとも2種以上の単位
を構成成分とし、プロピレン成分の比率が50〜98重
量%であるランダム共重合樹脂とを含有し、ホモポリマ
ー樹脂とランダム共重合樹脂の重量比が1:9〜9:1
であるポリオレフィン系熱可塑性樹脂90〜10重量
部;およびエチレン・プロピレン系共重合ゴム組成物お
よび/またはブチル系ゴム組成物10〜90重量部を含
有し、エチレン・プロピレン系共重合ゴム組成物および
/またはブチル系ゴム組成物の少なくとも一部が、前記
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂マトリックス中にドメイ
ン(分散相)として分散し、更に該ドメインの少なくと
も一部がエチレン・プロピレン・ジエン系ゴムの場合
は、加硫用樹脂または硫黄系;ブチル系ゴムの場合は、
加硫用樹脂、硫黄系、キノンジオキシム系、亜鉛華また
はチウラムとチアゾール併用系;エチレン・プロピレン
・ジエン系ゴムとブチル系ゴムの混合物の場合は、加硫
用樹脂、硫黄系またはキノンジオキシム系から選ばれた
加硫剤により動的に加硫されている熱可塑性エラストマ
ー組成物を提供する。前記組成物は、用途によりその要
求特性に適した配合に変更される。特に、土木・建築用
に供される遮水シートとしては、その耐候性も重要な要
素であり、その改善にはカーボンブラックが最も適した
添加物である。カーボンブラックを組成物に添加するこ
とにより、紫外線等が遮られ、そのため、ポリマーの劣
化が抑えられる。その結果、長期の屋外暴露によって
も、引張強度、破断伸びが低下しないようになる。ま
た、このカーボンブラックによる遮蔽効果は、ゴム組成
物及び/または樹脂組成物にカーボンブラックを添加し
ても同様に認められる。本発明は、ゴム組成物と樹脂組
成物よりなるが、実際の耐候性に影響を与える因子は樹
脂組成物の方にある。そのため、本発明の第2の目的
は、耐候性を要求される用途では、上記第1の目的を達
成する熱可塑性エラストマー組成物の、ポリプロピレン
・ホモポリマー樹脂組成物及びランダム共重合樹脂組成
物が、その樹脂分の総重量100重量部に対して0.3
〜300重量部のカーボンブラックを含有する請求項1
に記載の熱可塑性エラストマー組成物を提供する。さら
に、本発明の第3の目的は、上記第1または第2の目的
を達成する熱可塑性エラストマー組成物の、エチレン・
プロピレン系共重合ゴム組成物および/またはブチル系
ゴム組成物が、そのゴム分の総重量100重量部に対し
て0〜400重量部のカーボンブラックを含有する熱可
塑性エラストマー組成物を提供する。また、本発明の第
4の目的は上記の熱可塑性エラストマー組成物よりなる
防水シートを提供する。
【0011】以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、(i)樹脂成
分であるポリオレフィン系熱可塑性樹脂90〜10重量
部に対して、(ii)ゴム成分であるエチレン・プロピ
レン系共重合ゴムおよび/またはブチル系ゴムを10〜
90重量部含有する。樹脂成分とゴム成分の割合がこの
範囲であれば、任意の割合でよいが、さらに好ましく
は、上記(i):(ii)が、85〜15重量部:15
〜85重量部である。この範囲よりゴム成分が多けれ
ば、結果的にマトリックス相を形成すべき樹脂成分の含
有量が少なくなり充分な熱可塑性が得られず、製品とし
て加工成形出来ず、破壊強度も低下する。また、少なけ
れば、柔軟性及び耐熱軟化性が不十分となる。
【0012】 (i)樹脂成分(ポリオレフィン系熱可塑性樹脂) 本発明に使用されるポリオレフィン系熱可塑性樹脂は、
(a)ホモポリマーであるポリプロピレン樹脂と(b)
ランダムポリマーである、エチレン、プロピレンおよび
α−オレフィンから選ばれる少なくとも2種の単位を構
成成分とし、プロピレンを主成分とするランダム共重合
体樹脂とを併用する。
【0013】(a)ホモポリマー ポリプロピレン樹脂ホモポリマーは、プロピレンを単位
部分とするアイソタクチック、シンジオタクチック、ア
タクチックの立体化学構造を有するポリマーである。使
用するポリプロピレン樹脂は、JIS K7207によ
る熱変形温度が、150℃以上、JIS K6758に
よる230℃、2.16kg時のメルトフローレート
(MFR)が0.5〜40g/10分であるものが好ま
しい。
【0014】(b)ランダムポリマー 本発明に用いるランダムポリマーは、エチレン、プロピ
レンおよびα−オレフィンから選ばれる少なくとも2種
の単位を構成成分とし、プロピレンを主成分とする例え
ば、エチレン・プロピレン・ランダムコポリマー、プロ
ピレン・α−オレフィン・ランダムコポリマー、または
エチレン・プロピレン・α−オレフィンの三元ランダム
コポリマーであり、これらを併用してもよい。特に、エ
チレン・プロピレン・ランダム共重合樹脂であるのが好
ましい。市販品としてはトクヤマ(株)製のEZ112
等を例示することができる。α−オレフィンは、炭素数
4〜20の不飽和炭化水素であり、1−ブテン、1−ペ
ンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。
これらを、主成分として有しない場合は、結果的に、結
晶性が低いか、あるいは無いα−オレフィンが主成分と
なり、軟化温度が低下し、耐熱軟化性の改良効果が低
い。特に、α−オレフィンとして、酢酸ビニル、アクリ
ル酸メチル等のアクリル酸エステル等を含むものは、軟
化温度の低下が大きく、単独での使用は耐熱軟化性の改
良効果がないため、前記の他のランダムコポリマーとの
併用が好ましい。ランダムコポリマーの代わりに、ブロ
ックコポリマーを使用すると、本発明のブレンド系(熱
可塑性エラストマー組成物)では、破壊強度の向上に効
果がみられないので好ましくない。また、ランダムコポ
リマーのみを単独で使用すると、軟化温度が低下し、耐
熱軟化性を損なう。
【0015】ランダムコポリマー中でのプロピレン成分
の比率は、好ましくは、98〜50重量%、さらには9
7〜70重量%である。さらに、エチレン成分を含む場
合のエチレン成分の比率は、好ましくは、2〜40重量
%、さらには3〜30重量%である。このようなランダ
ム共重合体の230℃、2.16kg時のMFR(メル
ト・フローレート)は、0.5〜40g/10分である
のが好ましい。
【0016】さらに、前記ホモポリマーと、前記ランダ
ムコポリマーの混合比は重量比で、1:9〜9:1、さ
らには1.5:8.5〜8.5:1.5であるのが好ま
しい。ホモポリマーの比率がこれよりも少ないと、耐熱
軟化性を損なう。また、ランダムコポリマーの比率がこ
れよりも少ないと、破壊強度の向上効果がない。また、
使用するホモポリマーとランダムコポリマーとは、混練
時の溶融粘度が近いもの、すなわち、両者の粘度比が1
に近いものを選択するのが混練時の分散性の点から好ま
しい。
【0017】(ii)ゴム成分 本発明に使用するゴム成分として、エチレン・プロピレ
ン系共重合ゴム、ブチル系ゴム、あるいは両方の混合物
が挙げられる。エチレン・プロピレン系共重合ゴムは、
下記式(1)で示される化合物で、エチレン、プロピレ
ンと第3成分Xとからなる共重合ゴム(EPDM)であ
る。市販品としては三井石油化学(株)製の三井EPT
4070等を例示することができる。プロピレン含有
量は、10〜70モル%、さらには15〜50モル%の
ものが好ましい。第3成分Xとしては、エチリデンノル
ボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエ
ン等が挙げられる。中でも、加硫速度の速いエチリデン
ノルボルネンであるのが好ましい。第3成分Xの量は、
ヨウ素価で3〜25、さらには、5〜20程度とするの
が好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】本発明に使用するブチル系ゴムに使用し得
るゴムとしては、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチル
ゴム、臭素化ブチルゴム等が好適に例示され、中でも特
に、平均分子量35万〜45万程度、塩素化率1.1〜
1.3%程度の塩素化ブチルゴムが好ましい。さらに、
ブチル系ゴムの1態様として、下記式(2)で示され
る、イソブチレン単位とp−ハロゲン化メチルスチレン
単位とを有する共重合ゴム、および下記式(3)で示さ
れる、イソブチレン単位とp−ハロゲン化メチルスチレ
ン単位とp−メチルスチレン単位とを有する共重合ゴム
も好適に例示される(以下、これらの共重合ゴムをX−
IPMSとする)。市販品としてはエクソン化学(株)
製のXP−50−90−10(臭素化イソブチレン−p
−メチルスチレン共重合ゴム)を例示することができ
る。これらの共重合ゴムは、後述する熱可塑性樹脂とゴ
ム成分との混練加工時の安定性に優れたものである。
【0020】
【化2】
【0021】なお、これらのゴムは、複数をブレンドし
て使用してもよい。
【0022】(iii)加硫系(架橋剤、加硫剤) 本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、さらに加硫
剤、加硫促進剤、加硫助剤等の加硫系を使用し、樹脂成
分とゴム成分の混練中に加硫剤を添加し、混練中に加硫
させる、即ち、動的に加硫、架橋せしめる。本発明に用
いる加硫剤としては、加硫可能な加硫系の全てが利用可
能であるが、ゴム組成物としてEPDMを用いる場合に
は加硫用樹脂(変性アルキルフェノール樹脂)、あるい
硫黄系の加硫剤を用いた加硫系が;ゴム組成物として
ブチル系ゴムを用いる場合には、加硫用樹脂(変性アル
キルフェノール樹脂)、硫黄系あるいはキノンジオキシ
ム系、亜鉛華、亜鉛華・ステアリン酸混合物、ステアリ
ン酸亜鉛等のステアリン酸金属塩、ジチオカーバメイト
の亜鉛塩、チウラムとチアゾールとの併用等の加硫剤を
用いた加硫系が;また、EPDM/ブチル系ゴムの混合
物の組成物である場合には、加硫用樹脂(変性アルキル
フェノール樹脂)、硫黄系あるいはキノンジオキシム系
の加硫剤を用いた加硫系が;それぞれ好ましく例示され
る。さらに、クロロブチルゴムを用いる場合、加硫助剤
としてアルキルフェノール樹脂を用いることができる。
【0023】ここで、これらのゴムの加硫系は、後述す
る動的加硫のプロセスにおいて、架橋剤(加硫剤)とし
て適宜添加され、マトリックスを形成する樹脂中に少な
くとも一部がドメインとして分散したゴム相の加硫が完
了するまで、加硫を促進する温度で混練しながら加硫を
進行させる動的加硫によって、目的とする熱可塑性エラ
ストマー組成物を得るのに使用される。本発明に使用す
る加硫剤の添加量は、エチレン・プロピレン系共重合ゴ
ム100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に
0.5〜15重量部であるのが、充分な架橋度を得て、
耐熱軟化性を確保する点で好ましい。
【0024】本発明に用いられる加硫促進剤、加硫助剤
としては、ステアリン酸、ラウリル酸等の脂肪酸、これ
らの脂肪酸の亜鉛塩等の金属塩、亜鉛華等の金属酸化
物、テトラメチルチウラムモノサルファイド(TMT
M)、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMT
D)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド
(DPTS)、ジペンタメチレンチウラムヘキササルフ
ァイド(DPTHS)等のチウラム系促進剤、ジベンゾ
ジチアジルジサルファイド等のチアゾール系促進剤、N
−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンア
ミド(CBS)等のスルフェンアミド系促進剤、ジンク
ジメチルジチオカーバメイト(ZnMDC)等のジチオ
カルバミン酸塩系促進剤が例示される。
【0025】(iv)カーボンブラック 特に耐候性が要求される用途では、本発明での組成物
中、ポリプロピレン・ホモポリマー樹脂組成物及びラン
ダム共重合樹脂組成物が、その樹脂分の総重量100重
量部に対して、カーボンブラックを0.3〜300重量
部、好ましくは0.5重量部〜100重量部含有するこ
とである。0.3重量部以上のカーボンブラックによ
り、前述の遮蔽効果により、長期耐候性のさらに優れる
組成物となる。また樹脂組成物(マトリックス)に含有
されるカーボンブラックが300重量部を越えると組成
物自体が脆くなる傾向を示すためカーボンブラックの含
有量は300重量部以下であることが好ましい。カーボ
ンブラックは、本発明の熱可塑性エラストマー組成物中
樹脂成分中に存在してもゴム成分中に存在しても、両方
に存在してもよい。さらに、エチレン・プロピレン系共
重合ゴム組成物及び/またはブチル系ゴム組成物が、そ
のゴム分の総重量100重量部に対し、カーボンブラッ
ク400重量部以下含有してもよい。ゴム成分中にカー
ボンブラックを含有すると紫外線などを遮蔽する効果が
ある。400重量部以下とするのは、カーボンブラック
が配合されたゴム組成物中におけるゴム分含有量が20
重量%未満となると、ゴム状弾性を失うためである。好
ましくは、ゴム組成物中のゴム分の総重量部100重量
部に対して、カーボンブラックは0〜300、特には0
〜200重量部である。また、用いるカーボンのグレー
ドは、特に規定しないが、粒径が小さいものほど良く、
SRF,HAF、ISAFが好適に用いることができ
る。添加方法についても、特に規定しないが、マスター
バッチとしてあらかじめ樹脂とカーボンブラックの混合
物を調製し、樹脂組成物とゴム組成物との混練時に添加
する方法、または、ゴム成分にロール、バンバリミキサ
ー等でその他配合剤と共に配合しておく等の方法をとる
ことができる。
【0026】(v)その他の成分 本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、これ以外に
も、本発明の趣旨を損なわない範囲で、必要に応じて充
填剤、ホワイトカーボン等の補強剤、可塑剤、軟化剤、
老化防止剤、加工助剤、顔料、着色剤、核剤、帯電防止
剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。特に、軟化剤お
よび/または可塑剤を添加すると、熱可塑性エラストマ
ー組成物の柔軟性を向上させことができるので好まし
く、シートにするのに好ましい。ゴム組成物中に添加す
る場合はEPDMおよび/またはブチル系ゴムとの相溶
性からパラフィン系オイル、特に耐熱性を有するパラフ
ィン系オイル等が好適に例示される。添加量は、特に限
定されるものではないが、ゴム組成物中のゴム成分10
0重量部に対して、50〜150重量部が好ましい。本
発明に用いられるゴム組成物におけるゴム分の含有量は
20〜99.5重量%、より好ましくは25〜97重量
%である。ゴム組成物が補強剤、可塑剤、軟化剤、伸展
油等の配合剤を含む場合には、ゴム100重量部に対し
て、配合剤を合計量で最高400重量部まで含有させる
ことができ、このとき、このゴム組成物中におけるゴム
分の含有量は20重量%となる。ゴム組成物中における
ゴム分の含有量が20重量%未満となるとき、すなわ
ち、配合剤がゴム100重量部に対して400重量部を
超えて配合されると、ゴム組成物がゴム状弾性を失い、
熱可塑性樹脂と混合しても、本発明が目的とする柔軟性
に優れた熱可塑性エラストマー組成物を作製することが
困難になってしまう。なお、ここにおいて、加硫剤や加
硫促進剤等は、ゴム分および配合剤の量に比べて相対的
に少量であるので、加硫剤等の量は無視して計算するこ
とができる。
【0027】逆に、ゴム組成物がゴム成分に対しての、
0.3重量%のカーボンブラック以外の伸展油などの配
合剤を含まない場合には、加硫ゴムを形成し得る加硫剤
や加硫促進剤の最小量は、ゴム組成物100重量部に対
して0.5重量部である。このとき、このゴム組成物中
におけるゴム分の含有量は99.2重量%となる。ゴム
組成物中におけるゴム分の配合量が99.5重量%を超
えるとき、すなわち、加硫系がゴム組成物に対して0.
5重量%未満であると、加硫ゴムができず、熱可塑性樹
脂と混合しても、本発明が目的とする優れた熱可塑性エ
ラストマー組成物を作製することが困難になってしま
う。更に、ゴム・ポリマー/軟化剤系をあらかじめバン
バリーミキサー等のゴム用混練機で混練する場合は、カ
ーボンブラックまたはその他必要に応じて用いる補強剤
を配合し、加工性を実用上支障のない範囲で付与するこ
とが更に好ましい。
【0028】本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、
樹脂成分、ゴム成分ともにポリマー以外の組成を含有し
得、また、熱可塑性エラストマー組成物の少なくとも一
部がマトリックスとして連続相を構成する熱可塑性樹脂
成分とゴム成分の少なくとも一部が不連続相(分散相)
を構成するゴム組成物の組成比で決まるため、本質的な
樹脂成分、ゴム成分のポリマーの相対比率を明確に示す
ことは困難である。しかしながら、ポリマーの相対比率
と連続相と不連続相の組成比は相関を示すので、前述の
樹脂成分とゴム成分との比率、加硫剤、軟化剤および/
または可塑剤の添加量等は実質的に有効であり、前述の
範囲は本発明の目的に対し有効な結果を与える。
【0029】本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、
ゴム成分の少なくとも一部が加硫剤により動的に加硫さ
れている。すなわち、熱可塑性エラストマー組成物にゴ
ム様の弾性を与えるに十分な量の少なくとも一部が加硫
されたゴム組成物を含有している。
【0030】本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、
ゴム成分の少なくとも一部が熱可塑性樹脂中に分散され
てなる。すなわち、熱可塑性樹脂が少なくとも連続相を
構成し、ゴム成分の少なくとも一部が不連続相を構成し
て、熱可塑性樹脂相中に分散されている。なお、不連続
相(ゴム相)中に、さらに熱可塑性樹脂が分散した、い
わゆるサラミ構造であってもよい。
【0031】一般的に、このような熱可塑性エラストマ
ー組成物は、バンバリミキサー、ブラベンダーミキサ
ー、またはある種の混練押出機(2軸混練押出機)を使
用し、樹脂およびゴム組成物の溶融物をこれらの装置内
で混練して、ゴム組成物を熱可塑性樹脂相に微細に分散
させつつ、次いでさらに架橋剤(加硫剤)を添加して、
ゴムの加硫を完了するまで、加硫を促進する温度で素練
りすることによって製造される。すなわち、このように
製造される熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹
脂とゴム組成物とを素練りをしながらゴムの加硫を進行
させる、いわば、動的に加硫を進行させる動的加硫(Dy
namic CureまたはDynamic Vulcanization)により製造さ
れる熱可塑性エラストマー組成物である。このような製
法を利用することにより、得られた熱可塑性エラストマ
ー組成物は、少なくとも一部が連続相となる熱可塑性樹
脂相に少なくとも一部が不連続相となる加硫ゴム相が微
細に分散した状態となるため、この熱可塑性エラストマ
ー組成物は加硫ゴムと同様の挙動を示し、かつ、少なく
とも連続相が熱可塑性樹脂相であるため、その成形加工
に際しては、熱可塑性樹脂に準じた加工が可能である。
【0032】なお、混練条件や使用する加硫剤や加硫条
件(温度等)等は、添加するゴム組成物の種類、量に応
じて適宜決定すればよく、特に限定はされない。例え
ば、2軸混練押出機等を用いて混練・動的加硫を行う場
合、動的加硫時の熱可塑性樹脂とゴム組成物との混練温
度は、160〜300℃程度とすればよい。さらに、好
適な製造条件については後述する。
【0033】このような熱可塑性エラストマー組成物
は、熱可塑性樹脂の少なくとも一部を連続相、ゴム組成
物の少なくとも一部を不連続相として構成し、不連続相
である加硫ゴム組成物の粒子径が50μm以下であるの
が好ましく、さらに、10〜1μmであるのがより好ま
しい。
【0034】ここで、本発明における熱可塑性エラスト
マー組成物は、下記の物性を有するものが好ましい。す
なわち、ASTM D638およびD1566に記載さ
れる試験法に準じて測定される値で、 1.テンションセットが160%以下、好ましくは15
0%以下であり、 2.120℃×72時間の圧縮永久歪が50%以下であ
り、 3.柔軟性の目安としてのヤング率(初期引張弾性率)
が、25kgf/mm2以下であり、かつ、 4.約120℃までゴム弾性を有するものである。 すなわち、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、A
STM標準 V.28第756頁(D1566)に示さ
れるゴムに関する定義に合致するものが好ましい。
【0035】本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製
造方法は、(1)予めブレンドした樹脂(ホモポリマー
とランダムコポリマー)と、ゴム組成物とを2軸混練押
出機等で溶融混練し、混練下で加硫剤を添加し、ゴムを
動的に加硫させるか、(2)ホモポリマーとランダムコ
ポリマーのいずれか一方あるいは双方の一部の樹脂とゴ
ム組成物とを2軸混練押出機等で溶融混練し、混練下で
加硫剤を添加し、ゴムを動的に加硫させた後、更に他方
あるいは残りの樹脂を添加して混練することにより行う
ことができる。
【0036】また、ゴム成分へのカーボンブラックを含
む配合剤は上記混練中に添加してもよいが、加硫剤以外
の配合剤は上記混練の前に予め混合しておくのがよい。
樹脂成分へのカーボンブラックを含む配合剤は、上記混
練の前に予め混合しておいてもよく、また、上記混練中
に添加してもよい。使用する混練機としては、特に限定
はなく、スクリュ押出機、ニーダ、バンバリミキサー、
2軸混練押出機等が挙げられる。中でも樹脂成分とゴム
成分の混練およびゴム成分の動的加硫には2軸混練押出
機を使用するのが好ましい。さらに、2種類以上の混練
機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件とし
ては、温度は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分が溶
融する温度以上であればよいが、例えば160〜300
℃、特に、160〜250℃、加硫剤を添加した後の剪
断速度は、500〜7500秒-1、特に、1000〜5
000秒-1であるのが好ましい。
【0037】溶融混練全体の時間は、30秒〜10分、
加硫剤を添加した後の加硫時間は、15秒〜5分である
のが好ましい。得られる本発明の熱可塑性エラストマー
組成物は、動的加硫により、エチレン・プロピレン系共
重合ゴムおよび/またはブチル系ゴムが組成物中にドメ
イン(分散相)を形成する。これによって、本発明の熱
可塑性エラストマー組成物は熱可塑性が発現するととも
に、遮水性、耐候性、熱融着性を保持したまま、耐熱軟
化性、柔軟性に優れ、かつ高破壊強度である。そのた
め、遮水性、耐候性、耐熱軟化性を要し、柔軟かつ高破
壊強度の材質が要求される部材として使用し得る。
【0038】さらに、上述の2つの製造方法の例を挙
げ、具体的に説明する。なお、これらの例示は、製造方
法を特に限定するものではない。第1の方法は、予めブ
レンドした樹脂(ホモポリマーとランダムコポリマー)
と、ゴムとを2軸混練押出機等で溶融混練し、混練下で
加硫剤を添加し、ゴムを動的に加硫させる。この方法を
2軸混練押出機を用いて行う場合、少なくとも樹脂成分
とゴム成分を同時にまたは別に投入するための投入口と
加硫剤を投入するための投入口を有し、樹脂成分、ゴム
成分投入口と加硫剤投入口の間に樹脂成分とゴム成分と
を加熱混練するための混練用スクリュ部分と加硫剤投入
後に動的加硫を行う混練用スクリュ部分を有するように
構成する。加熱混練と動的加硫を行う部分の温度は、1
60〜250℃とするのが好ましい。動的加硫を行う部
分での滞留時間は、15〜120秒となるように、スク
リュ構成、容積流量等を調整するのが好ましい。スクリ
ュ回転数は、剪断速度が1000〜5000秒-1となる
ように調整するのが好ましい。ここで、動的加硫を行う
部分での滞留時間とは、動的加硫を行う部分の全容積に
充満係数を乗じ、それを容積流量で除して計算する。
【0039】剪断速度は、スクリュの先端が描く円の円
周に、スクリュの1秒間の回転数を掛けて得られる積を
先端の間隙で除して計算される。すなわち、剪断速度
は、先端の間隙で先端の速度を割った値である。このよ
うに構成された2軸混練押出機で、まず、連続相となる
熱可塑性樹脂をペレット状にして、該樹脂成分投入口か
ら投入し、加熱溶融させて混練する。次いで、加硫剤以
外の成分を配合した未加硫ゴム組成物をペレット状にし
て、ゴム成分投入口から投入し、混練して連続相を形成
している熱可塑性樹脂相中に微細に分散させる。ゴム組
成物が熱可塑性樹脂中に分散した後、両者を混練させた
状態で、加硫剤(架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤等、架
橋反応に必要な添加剤)を加硫剤投入口から投入し、混
練しながらゴム成分(ゴム組成物)を動的に加硫させ
る。また、必要に応じ、老化防止剤等の成分は、樹脂成
分、ゴム成分、加硫剤と同時に、あるいは別々に投入
し、混練することができる。
【0040】2軸混練押出機内に動的加硫が完了するま
で保持し、かつ、動的加硫完了後、速やかに排出、冷却
することにより、本発明の熱可塑性エラストマー組成物
を得る。このように動的加硫を施すことにより、ゴム組
成物が熱可塑性樹脂に十分に分散された状態が得られ、
かつ、ゴム組成物が加硫されているために、この分散状
態を混練後も変動することなく、安定に保持させること
ができる。また、混練時間が短時間であるため、樹脂、
ゴムの劣化が少ない。
【0041】したがって、得られた熱可塑性エラストマ
ー組成物は、加熱成形によっても、その構造が変化しな
いので、通常の樹脂押出機や射出成形機等の成形機を使
って成形加工することが可能であり、成形物は、特に加
硫工程を施さなくてもゴム弾性を有するものとなる。
【0042】第2の方法は、ホモポリマーとランダムコ
ポリマーのいずれか1方あるいは双方の一部の樹脂とゴ
ム組成物とを2軸混練押出機等で溶融混練し、混練下で
加硫剤を添加し、ゴム組成物を動的に加硫させた後、更
に他方あるいは残りの樹脂を添加して混練する。投入す
る樹脂成分を選択する以外は、第1の方法と同様の2軸
混練押出機による工程で、熱可塑性エラストマー組成物
(樹脂成分の組成は未完成)を得る。さらに、得られた
熱可塑性エラストマー組成物(樹脂成分の組成は未完
成)と残りの樹脂成分とを、2軸混練押出機あるいは単
軸押出機で加熱溶融し、混練し、目的とする熱可塑性エ
ラストマー組成物を得ることができる。
【0043】第2の方法は、特性の異なる熱可塑性エラ
ストマーを数種類製造する際に、2軸混練押出機での品
替え(段替え)を減少させ、生産性を向上させる等の場
合に有効な方法である。
【0044】2軸混練機での樹脂組成物とゴム組成物の
混練時に、あらかじめ樹脂とカーボンブラックの混合物
をマスターバッチとして調製したものを樹脂組成物に所
定量ブレンドしておいたものを更に混合して、混練する
方法が生産性を向上させる場合に有効な方法である。
【0045】本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、
ベルト、ロール、型物、ホース、チューブ、電線、ケー
ブル、建築用資材、土木用資材、農業用、建築用や土木
用などのシート又はフィルム、包装フィルムなどに使用
することができる。特に、廃棄物処分場用の遮水シー
ト、または建築用の屋根やトンネル工法などに使用され
る防水シート(以上の遮水シート、防水シートの総称を
「防水シート」することができ、本文中では特にことわ
りがない場合、「防水シート」は総称を指す)の材質と
して好適である。このような遮水シートの材質として本
発明の熱可塑性エラストマー組成物を使用すれば、柔軟
であるため施工信頼性が高く、高破壊強度であるため落
下物等による破損事故が起こり難い。また、耐熱軟化性
にも優れているため、直射日光に曝されてシート表面温
度が上昇しても十分な破壊強度を有している。さらに、
耐候性にも優れているため、直射日光、雨水に長期間曝
されていても十分な破壊強度を保持している。
【0046】このような遮水シートの施工方法として
は、Tダイ押出機、カレンダ成形機、ブロー成形機やイ
ンフレーション成形機等により厚み0.5〜3mm、好
ましくは1.0〜2.0mmに成形したシートを必要に
応じ予め適当な幅に加熱溶融接合し、現場で敷設し、継
ぎ目を通常の方法で加熱溶融接合することにより行うこ
とができる。すなわち、本発明の組成物は充分に柔軟
で、耐熱軟化性に優れ、かつ高温下での破壊強度を併せ
もつ組成物であり、特に優れた廃棄物処分場用遮水シー
ト等の防水シートに利用し得る。
【0047】本発明は、高温下での変形に対する追従性
を必要とするシートに好適な組成物を提供するものであ
る。例えば、遮水シートは、直射日光に晒され表面温度
で90℃超の温度になるが、このような条件下でも、シ
ート下面の凹凸や投棄物によって破損や成形を生じない
必要がある。このためには、高破壊強度で、かつ、熱軟
化による破壊強度の低下が少なく、かつ、変形に追従し
得る柔軟性を有する材料が必要である。変形への追従性
が悪いと、局所的な変形によってシート全体の浮き等が
生じ好ましくない。
【0048】本発明の組成物は、高破壊強度(引張強
さ:大、破断伸び:大、引裂強さ:大)、柔軟性(ヤン
グ率:小、硬さ:小)、耐熱軟化性(高温下で高破壊強
度:引張強さ低下:小、破断伸び低下:小、引裂強さ低
下:小、ヤング率低下:小)を高度にバランスする材料
を提供するものである。本発明の組成物の柔軟性、耐熱
軟化性および高破壊強度を示すシート製品の試験指標と
して、下記高温変形追従性試験を行なった。すなわち、
厚さ1.5mmのシートを内径20cmのフランジに固
定し、120℃の温度下、直径4cm×長さ15cmの
鉄製円柱の片端を半径2cmの半球状に加工した試験治
具の半球に対し、シートの中心が当たるように押しつ
け、該鉄製円柱をシート表面より8cm下降させ、変形
追従性(先端から4cmの位置での馴染みの程度、即
ち、鉄製円柱と密着している場合は、追従性良し、概し
て隙間が目視できる場合は、追従性が悪いとし、更に、
破損の有無を評価した。評価は、 × … 破損。 (破壊強度低) △ … 破損はないが、追従性が悪い。(柔軟性悪い) ○ … 破損はなく、追従性は良好。
【0049】一方、本発明で得られた熱可塑性エラスト
マー組成物の基本的な破壊強度、柔軟性、耐熱軟化性の
指標として、下記式(4)を評価し、上記高温変形追従
試験と測定値に基づく下記式(4)との相関性を評価し
た。
【0050】
【数1】
【0051】
【実施例】以下に、実施例を用いて、具体的に説明する
が、これによって本発明の範囲は、限定されるものでは
ない。
【0052】(実施例1〜27、および比較例1〜1
2)下記表1−1〜1−5に示す組成の熱可塑性エラス
トマー組成物を前述の第1の方法で製造した。すなわ
ち、まず、所定量のペレット状の各樹脂成分を用意し、
ペレット状でブレンドし、各ペレットが均一に分散した
組成比をもつ樹脂成分とした。また、ゴム成分は加硫剤
成分を除く表1−1〜1−5に示す所定量の配合成分を
用意し、通常使用されるゴム用バンバリーミキサーで混
練し、加硫剤を含まないエチレン・プロピレン系共重合
ゴム(EPDM)組成物とし、ゴム用ラボ・ロールでシ
ート化した後、ゴム用ペレタイザーで長さ約3mm、直
径約2mmのペレット状にした。
【0053】次いで、前記の予めブレンドした樹脂成分
と、前記の加硫剤を含まないエチレン・プロピレン系共
重合ゴム(EPDM)のペレットを2軸混練押出機の第
1および第2の投入口からおのおの順次連続的に投入
し、加熱混練し、熱可塑性樹脂の連続相にゴム組成物を
不連続相として分散させた。次いで、この分散状態を保
持しつつ、さらに加硫剤を第3の投入口から連続的に投
入し、熱可塑性樹脂の連続相に不連続相として、分散し
ているゴム組成物を動的に加硫した。混練条件は、すべ
て、温度200℃、動的加硫を行う部分の滞留時間41
秒、剪断速度4560秒-1である。動的加硫を完了後、
2軸混練押出機から連続的にストランド状に排出し、水
冷後、カッターで長さ約3mm(直径約2mm)に切断
し、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0054】その後、該熱可塑性エラストマー組成物の
ペレットを通常使用される樹脂用プレス成形機で、20
0℃で5分、30kgf/cm2 の圧力で2mm厚さの
シート状に成形し、JIS規格の3号ダンベル形状、引
裂B型(JIS K6301)の試験片とした。得られ
た試験片について、JIS K6301に準拠して、2
0℃での引張強さ、破断伸び、ヤング率、引裂強さBお
よびJIS硬さ(A型)を測定し、結果を、下記表1−
1〜1−5に示す。更に、120℃の恒温槽中で同様に
引張強さ、破断伸び、ヤング率および引裂強さBを測定
し、各組成物について得られた値につき、式(4)に基
づきバランス指数を算出した。
【0055】更に、得られた樹脂組成物を樹脂用一軸押
出機を使用し、押出機先端にシーティング成形用Tダイ
を取付け、厚さ1.5mm、巾40cmのシート状成形
物を得、該シートを使用して、前記高温変形追従試験を
実施し、 破壊 … ×、 破壊はないが追従性の悪いもの … △、 破壊がなく、かつ追従性の良好なもの … ○ として記録し、前記バランス指数との相関性を対比し
た。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】
【表9】
【0065】
【表10】
【0066】 注)各組成の量は、重量部で示す。 PP(ホモ):ポリプロピレン樹脂 (昭和電工(株)製のEA110、MFR=1.2、 熱変形温度:115℃) EP(ランダム):エチレン・プロピレン・ランダム共重合樹脂 エチレン含有量:3.5重量% (昭和電工(株)製のEZ112、MFR=1.7、 熱変形温度:87℃) EP(ブロック):エチレン・プロピレン・ブロック共重合樹脂 (昭和電工(株)製のMK112、MFR=2.0、 熱変形温度:108℃) EPDM:エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム (三井石油化学(株)製、三井EPT 4070、 第3成分:エチリデンノルボルネン)
【0067】 パラフィン系オイル:サンパー2280(日本サン石油(株)製) アルキルフェノール樹脂:タッキロール1501 (田岡化学(株)製) Cl−IIR:塩素化ブチルゴム (エクソン化学(株)製、クロロブチル1066)
【0068】表1−1に示されるとおり、ゴム成分とし
てEPDM、樹脂成分として、ポリプロピレン樹脂ホモ
ポリマーとエチレン・プロピレン・ランダムコポリマー
のブレンド物を使用し、該樹脂ブレンド物とドメイン層
をなすEPDM組成物の比率が、60/40とした。但
し、樹脂ブレンド物のホモポリマー、ランダムコポリマ
ーの比率を変化させ、得られた物性より計算されるバラ
ンス指数と押出シート成型物を使用した。高温変形追従
試験を対比させた。本結果より、該ゴム/樹脂の比率下
で、ホモポリマーとランダムコポリマーの比率に於いて
バランス指数と高温変形追従試験との間には相関性があ
り、ホモ/ランダムの比率に於いて、ランダムコポリマ
ーが10%以下でも、また、90%以上でも、追従性が
悪く、かつかかる場合のみ、常温時、及び熱時の柔軟
性、耐破壊特性の目安として計算した式(4)に基づく
バランス指数が1000を下回ることがわかり、両者に
相関性があることがわかる。
【0069】表1−2は、表1−1に対して、使用する
材料の組合せは同一であるが、ゴム成分と樹脂ブレンド
物の混練比がゴム成分の方が多い、すなわち60/40
として、同様にポリプロピレン樹脂、ホモポリマー成分
とランダムコポリマー成分の組成比の影響を同様の手法
で確認した。本発明の系に於いて、ホモポリマー/ラン
ダムコポリマーの比率が、35/5〜5/35の領域
(即ち、ランダムコポリマーが樹脂成分中12.5%〜
87.5%の範囲)で熱追従性は良好であり、かつ、バ
ランス指数は、1000を越えて良好な相関性を有して
いることがわかる。一方、ホモポリプロピレン樹脂成分
単独、又は、ランダムコポリマー単独では、いずれも高
温追従試験は、不味で、かつかかる場合のみに、バラン
ス指数が1000を下回ることがわかる。
【0070】表1−3での評価は、ゴム成分/樹脂成分
の比率を85/15〜4/96の領域で変化させ、か
つ、樹脂成分中のホモポリプロピレン/ランダムコポリ
マーの比率は、10/50の比率に固定しゴム成分の影
響を確認した。本結果より、先に、ゴム/樹脂比率に於
いても相関性が存在し、ゴム/樹脂の比率のゴム成分が
小さい側の限界は本相関に於いて10/90であること
がわかる。一方、ゴム多成分側は、80/20以上にゴ
ム成分が多い場合、樹脂をマトリックスとなし、ゴム成
分をドメインとする熱可塑性エラストマー組成物が該混
練できず限界があり、不味であった。
【0071】表1−4では、表1−3の場合と同様であ
るが、本評価系では、ゴム成分/樹脂成分比の検討は、
樹脂成分中のホモポリプロピレン/ランダムコポリマー
の比率を10/10のランダム成分が多い中で、同様に
検討した。その結果、ランダム比率の変更にもかかわら
ず、本範囲で得られる結果は、バランス指数と製品の熱
変形追従性の相関は同一で、ゴム/樹脂の比率の範囲も
同様であった。
【0072】表1−5では、更に同様のブレンド系に
て、樹脂成分中のホモポリプロピレン/ランダムコポリ
マー樹脂の比率がホモポリプロピレンが多い50/10
の比率であり、かつその樹脂系を使用し、同様の処方
で、ゴム/樹脂の比率を変更させた場合の系を示す。当
該系においても、ゴム/樹脂組成との関係で全く同様な
結果が得られることがわかる。
【0073】(比較例13〜17)下記表2に示す組成
の熱可塑性エラストマー組成物を前述の第1の方法で製
造した。すなわち、下記表2に示す量のポリプロピレン
樹脂(ホモポリマー)、ゴム成分、パラフィン系オイ
ル、加硫剤である以外は、実施例1と同様の方法で、ペ
レット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。さら
に、実施例1と同様の方法でそれらの熱可塑性エラスト
マー組成物のペレットをプレス成形機で2mm厚さのシ
ート状に成形し、JIS規格の3号ダンベル形状、引裂
B型(JIS K6301)の試験片とした。得られた
試験片について、JIS K6301に準拠して、20
℃と120℃での引張強さ、破断伸び、ヤング率、引裂
強さおよびJIS硬さ(A型)を測定し、更に得られた
熱可塑性エラストマー材料を使用し、厚さ1.5mm、
巾40cmのシートを成形し、このシートを使用して前
記の高温変形追従性試験を実施した。
【0074】
【表11】
【0075】
【表12】
【0076】 注)各組成の量は、重量部で示す。 PP(ホモ):ポリプロピレン樹脂 (昭和電工(株)製、MFR=1.2、熱変形温度:115℃) EPDM:エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム (三井石油化学(株)製、三井EPT 4070、 第3成分:エチリデンノルボルネン)
【0077】 パラフィン系オイル:サンパー2280(日本サン石油(株)製) アルキルフェノール樹脂:タッキロール1501 (田岡化学(株)製) Cl−IIR:塩素化ブチルゴム (エクソン化学(株)製、クロロブチル1066)
【0078】表2において、ゴム成分としてEPDM、
樹脂成分としてホモポリプロピレン単独であり、かつそ
のゴム/樹脂組成を変化させた場合を整理すれば、いず
れの混合比でもホモポリマー単独では、高温変形追従試
験の結果は、不味であり、かつ、常にバランス指数は、
1000を下回ることがわかる。
【0079】(比較例18)下記表3に示す組成の熱可
塑性エラストマー組成物を前述の第1の方法で製造し
た。すなわち、樹脂成分が、エチレン・プロピレン・ブ
ロック共重合樹脂である以外は、実施例1と同様の方法
で、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
さらに、実施例1と同様の方法でそれらの熱可塑性エラ
ストマー組成物のペレットをプレス成形機で2mm厚さ
のシート状に成形し、JIS規格の3号ダンベル形状、
引裂B型(JIS K6301)の試験片とした。得ら
れた試験片について、JIS K6301に準拠して、
20℃と120℃での引張強さを測定すると共に、同様
な手法でシートを作成し、高温変形追従試験を実施し
た。
【0080】
【表13】
【0081】 注)各組成の量は、重量部で示す。 PP(ホモ):ポリプロピレン樹脂 (昭和電工(株)製のEA110、MFR=1.2、 熱変形温度:115℃) EP(ランダム):エチレン・プロピレン・ランダム共重合樹脂 エチレン含有量:3.5重量% (昭和電工(株)製のEZ112、MFR=1.7、 熱変形温度:87℃) EP(ブロック):エチレン・プロピレン・ブロック共重合樹脂 (昭和電工(株)製のMK112、MFR=2.0、 熱変形温度:108℃) EPDM:エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム (三井石油化学(株)製のMK112、三井EPT 4070、 第3成分:エチリデンノルボルネン)
【0082】 パラフィン系オイル:サンパー2280(日本サン石油(株)製) アルキルフェノール樹脂:タッキロール1501 (田岡化学(株)製) Cl−IIR:塩素化ブチルゴム (エクソン化学(株)製、クロロブチル1066)
【0083】表3においては、同様に、ポリプロピレン
として、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロック
コポリマー単独では、やはり、いずれの樹脂材料も、高
温追従試験は不味で、かつまた、そのバランス指数は常
に1000を下回ることがわかる。
【0084】(実施例28〜33、および比較例19〜
26)下記表4−1および4−2に示す量の樹脂成分、
ゴム成分、軟化剤を使用した以外は、実施例1と同様に
溶融混練し、動的に加硫した後、プレス成形機でシート
状に成形し、JIS規格の3号ダンベル形状、引裂B型
(JIS K6301)の試験片とした。得られた試験
片について、JIS K6301に準拠して、20℃と
120℃での引裂強さ、破断伸び、ヤング率、引裂強さ
およびJIS硬さ(A型)を測定し、JIS K720
7−1983に準拠して熱変形温度を測定した。結果
を、下記表4−1および4−2に示す。
【0085】
【表14】
【0086】
【表15】
【0087】
【表16】
【0088】
【表17】
【0089】 注)各組成の量は、重量部で示す。 PP(ホモポリマー):ポリプロピレン樹脂 (昭和電工(株)製のEA110、MFR=1.2、 熱変形温度:115℃) EP(ランダムコポリマー): エチレン・プロピレン・ランダム共重合樹脂 エチレン含有量:3.5重量% (昭和電工(株)製のEZ112、MFR=1.7、 熱変形温度:87℃) EPDM:エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム (三井石油化学(株)製、三井EPT 4070、 第3成分:エチリデンノルボルネン)
【0090】 パラフィン系オイル:サンパー2280(日本サン石油(株)製) アルキルフェノール樹脂:タッキロール1501 (田岡化学(株)製) Cl−IIR:塩素化ブチルゴム (エクソン化学(株)製、クロロブチル1066)
【0091】表4−1において、ゴム成分/樹脂成分の
比率が40/60の場合で、かつゴム成分が塩素化ブチ
ル系ゴム組成物で、動的加硫処方にて、その特性を検討
した。ゴム成分がEPDM系ゴム成分の場合と同様に、
樹脂成分中に占めるホモポリプロピレン・ランダムコポ
リマーの割合が、50/10〜10/50の場合での
み、良好な高温変形追従試験の結果となり、かつバラン
ス指数との相関性も維持できることがわかる。
【0092】表4−2において、表4−1と同様にゴム
成分がEPDM/Cl−IIR混合系でも、更に同様な
結果を得ることがわかる。
【0093】(実施例34〜36)下記表5に示す量の
ホモポリマー、ランダムコポリマー、パラフィン系オイ
ルを使用した以外は、実施例1と同様に溶融混練し、動
的に加硫した後、プレス成形機でシート状に成形し、J
IS規格の3号ダンベル形状、引裂B型(JISK63
01)の試験片とした。得られた試験片について、JI
S K6301に準拠して、20℃と120℃での引裂
強さ、破断伸び、ヤング率、引裂強さおよびJIS硬さ
(A型)を測定し、JIS K7207−1983に準
拠して熱変形温度を測定した。結果を、下記表5に示
す。
【0094】(実施例37)下記表5に示す量の加硫剤
(b)として、 硫黄 0.2重量部、 促進剤 ZnMDC 0.4重量部 促進剤 DPTS 0.2重量部 促進剤 CBS 0.6重量部 合計 1.4重量部 を使用した以外は、実施例5と同様に溶融混練し、動的
に加硫した後、プレス成形機でシート状に成形し、JI
S規格の3号ダンベル形状、引裂B型(JISK630
1)の試験片とした。得られた試験片について、JIS
K6301に準拠して、20℃と120℃での引裂強
さ、破断伸び、ヤング率、引裂強さおよびJIS硬さ
(A型)を測定し、JIS K7207−1983に準
拠して熱変形温度を測定した。結果を、下記表5に示
す。
【0095】(実施例38)下記表5に示す組成の熱可
塑性エラストマー組成物を前述の第2の方法で製造し
た。すなわち、まず、所定量のペレット状のポリプロピ
レン樹脂(ホモポリマー)を樹脂成分として用意した。
また、ゴム成分は加硫剤成分を除く所定量の配合成分を
用意し、通常使用されるゴム用バンバリーミキサーで混
練し、加硫剤を含まないエチレン・プロピレン系共重合
ゴム(EPDM)とし、ゴム用ラボ・ロールでシート化
した後、ゴム用ペレタイザーで長さ約3mmのペレット
状にした。
【0096】次いで、前記の樹脂成分と、前記の加硫剤
を含まないエチレン・プロピレン系共重合ゴム(EPD
M)のペレットを2軸混練押出機の第1および第2の投
入口から順次連続的に投入し、加熱混練し、熱可塑性樹
脂の連続相にゴム組成物を不連続相として分散させた。
次いで、この分散状態を保持しつつ、さらに加硫剤を第
3の投入口から連続的に投入し、熱可塑性樹脂の連続相
に不連続相として、分散しているゴム組成物を動的に加
硫した。混練条件は、下記表5に示す如く、温度200
℃、動的加硫を行う部分の滞留時間41秒、剪断速度4
560秒-1である。動的加硫を完了後、2軸混練押出機
から連続的にストランド状に排出し、水冷後、カッター
で長さ約3mmに切断し、ペレット状の熱可塑性エラス
トマー組成物を得た。
【0097】さらに、この熱可塑性エラストマーと表5
に示す所定量のエチレン・プロピレン・ランダム共重合
樹脂とを、ペレット状でブレンドした。このブレンド物
を単軸押出機に投入し、温度200℃、剪断速度830
-1で混練し、その後、単軸押出機から連続的にストラ
ンド状に排出し、水冷後、カッターで長さ約3mmに切
断し、所定組成のペレット状の熱可塑性エラストマー組
成物を得た。
【0098】その後、該熱可塑性エラストマー組成物の
ペレットを通常使用される樹脂用プレス成形機で、20
0℃で5分、30kgf/cm2 の圧力で2mm厚さの
シート状に成形し、JIS規格の3号ダンベル形状、引
裂B型(JIS K6301)の試験片とした。得られ
た試験片について同様に評価した。
【0099】
【表18】
【0100】
【表19】
【0101】 注)各組成の量は、重量部で示す。 PP(ホモ):ポリプロピレン樹脂 (昭和電工(株)製のEA110、MFR=1.2、 熱変形温度:115℃) EP(ランダム):エチレン・プロピレン・ランダム共重合樹脂 エチレン含有量:3.5重量% (昭和電工(株)製のEZ112、MFR=1.7、 熱変形温度:87℃) EP(ブロック):エチレン・プロピレン・ブロック共重合樹脂 (昭和電工(株)製のMK112、MFR=2.0、 熱変形温度:108℃) EPDM:エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム (三井石油化学(株)製、三井EPT 4070、 第3成分:エチリデンノルボルネン)
【0102】 パラフィン系オイル:サンパー2280(日本サン石油(株)製) アルキルフェノール樹脂:タッキロール1501 (田岡化学(株)製) Cl−IIR:塩素化ブチルゴム (エクソン化学(株)製、クロロブチル1066)
【0103】 促進剤 ZnMDC:ジンクジメチルジチオカーバメイト 大内新興化学(株)製のノクセラー PZ 促進剤 DPTS:ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド 三新化学(株)製のサンセラー RA 促進剤 CBS:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェ ンアミド 大内新興化学(株)製のノクセラー CZ
【0104】表5において、ゴム/樹脂の成分比が、4
0/60で、ゴム成分がEPDMの場合、含有するパラ
フィン系オイルをゴム成分と樹脂成分の総計で100部
として、0〜80部まで変化させた場合、組成物の破壊
強度は当然低下するが、その軟化剤の範囲ではいずれも
良好な結果であり、影響を受けていないことがわかる。
【0105】(実施例39〜42、および比較例27〜
30)下記表6−1に示す量のランダムコポリマーを使
用した以外は、実施例1と同様に溶融混練し、動的に加
硫した後、プレス成形機でシート状に成形し、JIS規
格の3号ダンベル形状、引裂B型(JIS K630
1)の試験片とした。得られた試験片について、JIS
K6301に準拠して、20℃と120℃での引裂強
さ、破断伸び、ヤング率、引裂強さおよびJIS硬さ
(A型)を測定し、JIS K7207−1983に準
拠して熱変形温度を測定した。結果を、下記表6−2に
示す。
【0106】
【表20】
【0107】
【表21】
【0108】 注)各組成の量は、重量部で示す。 PP(ホモ):ポリプロピレン樹脂 (昭和電工(株)製のEA110、MFR=1.2、 熱変形温度:115℃) EP(ランダム):エチレン・プロピレン・ランダム共重合樹脂 エチレン含有量:3.5重量% (昭和電工(株)製のEZ112、MFR=1.7、 熱変形温度:87℃) EPDM:エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム (三井石油化学(株)製、三井EPT 4070、 第3成分:エチリデンノルボルネン) Cl−IIR:塩素化ブチルゴム (エクソン化学(株)製、クロロブチル1066)
【0109】 パラフィン系オイル:サンパー2280(日本サン石油(株)製)
【0110】 促進剤 DPTHS:ジペンタメチレンチウラムヘキササルファイド デュポン社製のテトロンA 臭素化X−IPMS:エクソン化学社製のXP−50−90−10
【0111】表6において、ゴム成分/樹脂の比率を6
0/40として、ゴム成分として、臭素化X−IPMS
(XP−50−90−10、エクソン化学社製)の変性
ブチル系ゴムを使用した場合も塩素化ブチルゴムと全く
同様の結果を示す。
【0112】(実施例43〜48、比較例31)下記表
7に示す組成の熱可塑性エラストマー組成物を前述の第
1の方法で製造した。すなわち、下記表7に示す量のカ
ーボンブラック以外は、実施例1と同様の方法で、ペレ
ット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。さらに、
実施例1と同様の方法でそれらの熱可塑性エラストマー
組成物のペレットをプレス成形機で2mm厚さのシート
状に成形、JIS規格の3号ダンベル形状、引裂B型
(JIS K6301)の試験片とした。得られた試験
片についてJIS K6301に準拠して、20℃と1
20℃での引張強さ、破断伸び、ヤング率、引裂強さ及
びJIS型さ(A型)を測定し、前記バランス指数を算
出した。更に得られた熱可塑性エラストマー材料を使用
し、厚さ1.5mm、幅40cmのシートを成形し、こ
のシートを使用して前記の高温変形追従試験を実施し
た。また、JIS A6008に準拠して、サンシャイ
ン・ウェザオメータによる促進暴露試験(条件:63℃
×1000時間、スプレーサイクル120分中18分)
の処理を行った後の試験片(3号ダンベル形状)につい
ても、JIS K6301に準拠して、20℃での引張
強さ、破断伸びを測定し、処理を行わなかった試験片で
の結果にて除し、保持率をもとめた。この試験は、特に
遮水シート等耐候性を必要とする用途に対応するもので
ある。シートが、廃棄物処分場に施工されてから、厳し
い暴露条件となる地表より、土中に埋まるまでに、数年
の間があくことがあり得る。そのため、サンシャイン・
ウェザオメータ1000時間処理(実際の5年程度の暴
露に相当する)後の引張物性を測定し、保持率を算出、
その値が60%以下となるものはこの遮水シートとして
の要求特性である耐候性不良とみなす。それは、保持率
が60%以下ともなるとシートを構成する物質、特にポ
リプロピレン・ホモポリマー樹脂及びランダム共重合樹
脂がかなりの劣化を起こしていることが容易に想像さ
れ、引張特性及び、その他物性はもとより、土中におい
ての微生物等の影響をより受けやすくなる等の悪影響が
生じてくるためである。結果、表7、図1より、樹脂成
分100に対して、カーボンブラックが0.3を上回る
と、柔軟性、耐熱軟化性に優れる(高温変形追従試験、
バランス指数の結果より)ことに加えて、サンシャイン
・ウェザオメータ処理後保持率も60%を越え、良好な
耐候性を持つことがわかる。特に、0.5を越えると保
持率が、TB(引張強さ)、EB(破断伸び)保持率共
に80%を上回り、非常に良好であることがわかる。
【0113】
【表22】
【0114】 注)各組成の量は、重量部で示す。 PP(ホモ):ポリプロピレン樹脂 (昭和電工(株)製のEA110、MFR=1.2、 熱変形温度:115℃) EP(ランダム):エチレン・プロピレン・ランダム共重合樹脂 エチレン含有量:3.5重量% (昭和電工(株)製のEZ112、MFR=1.7、 熱変形温度:87℃) EPDM:エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム (三井石油化学(株)製、三井EPT 4070、 第3成分:エチリデンノルボルネン) パラフィン系オイル:サンパー2280(日本サン石油(株)製) アルキルフェノール樹脂:タッキロール1501 (田岡化学(株)製) Cl−IIR:塩素化ブチルゴム (エクソン化学(株)製、クロロブチル1066) カーボンブラック:HAFグレード (昭和キャボレット(株)製、 ショウブラックN330T)
【0115】
【発明の効果】本発明によれば、柔軟性、耐熱軟化性、
高破壊強度に優れた熱可塑性エラストマー組成物を得る
ことができる。また、得られた熱可塑性エラストマー組
成物を用いた防水シートは、耐候性、遮水性をも備え、
柔軟であるため施工作業が容易で、施工後の防水信頼性
が高く、高強度であるため、落下物等による破損事故が
起こり難い。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーボンブラック添加量とサンシャイン・ウェ
ザオメータ処理後の引張特性との関係を示したグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−231748(JP,A) 特開 平5−222214(JP,A) 特開 平4−185652(JP,A) 特開 平4−185658(JP,A) 特開 平5−9307(JP,A) 特開 平7−224196(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 23/00 - 23/36

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリプロピレン・ホモポリマー樹脂と、エ
    チレン、プロピレンおよびα−オレフィンから選ばれる
    少なくとも2種の単位を構成成分とし、プロピレン成分
    の比率が50〜98重量%であるランダム共重合樹脂と
    を含有し、該ホモポリマー樹脂と該ランダム共重合樹脂
    の重量比が1:9〜9:1であるポリオレフィン系熱可
    塑性樹脂90〜10重量部;および エチレン・プロピレン系共重合ゴム組成物および/また
    はブチル系ゴム組成物10〜90重量部を含有し、該エ
    チレン・プロピレン系共重合ゴム組成物および/または
    ブチル系ゴム組成物の少なくとも一部が、エチレン・プ
    ロピレン・ジエン系ゴムの場合は、加硫用樹脂または硫
    黄系;ブチル系ゴムの場合は、加硫用樹脂、硫黄系、キ
    ノンジオキシム系、亜鉛華またはチウラムとチアゾール
    併用系;エチレン・プロピレン・ジエン系ゴムとブチル
    系ゴムの混合物の場合は、加硫用樹脂、硫黄系またはキ
    ノンジオキシム系から選ばれた加硫剤により動的に加硫
    され、分散相を形成していることを特徴とする熱可塑性
    エラストマー組成物。
  2. 【請求項2】前記ポリプロピレン・ホモポリマー樹脂組
    成物及びランダム共重合樹脂組成物が、その樹脂分の総
    重量100重量部に対して0.3〜300重量部のカー
    ボンブラックを含有する請求項1に記載の熱可塑性エラ
    ストマー組成物。
  3. 【請求項3】前記エチレン・プロピレン系共重合ゴム組
    成物および/またはブチル系ゴム組成物が、そのゴム分
    の総重量100重量部に対して0〜400重量部のカー
    ボンブラックを含有する請求項1または2に記載の熱可
    塑性エラストマー組成物。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性
    エラストマー組成物よりなる防水シート。
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