JP2843267B2 - 防水シート - Google Patents

防水シート

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JP2843267B2
JP2843267B2 JP26038794A JP26038794A JP2843267B2 JP 2843267 B2 JP2843267 B2 JP 2843267B2 JP 26038794 A JP26038794 A JP 26038794A JP 26038794 A JP26038794 A JP 26038794A JP 2843267 B2 JP2843267 B2 JP 2843267B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、産業廃棄物処理場の遮
水材、貯水槽や池等の遮水材、建築物のルーフィング材
等に好適に利用される防水シートに関する。
【0002】
【従来の技術】産業廃棄物処理場等の底、産業廃棄物中
間遮蔽用、産業廃棄物最終遮蔽用等として敷かれる遮水
材料、各種廃棄物処理場等に付帯する、あるいは建築物
の貯水槽や池等の遮水材料、鉄筋コンクリート構造建築
物などの防水材、およびトンネル掘削時の防水材とし
て、各種の防水シートが利用されている。
【0003】このような防水シートには、高い耐水分透
過性はもちろんのこと、施工される場所の形状に容易に
追従できる柔軟性、複数枚のシートを接合する際の接合
性、さらに接合部からの水漏れが起こらない接合部の安
定性等、現地施工性およびその信頼性に優れることが強
く要求される。特に、産業廃棄物処理場の遮水材等の用
途では、シートを透過しての水漏れや、防水シートの接
合部からの水漏れは、付近の水質汚染等の環境問題につ
ながるため、基本的にシート材料の高度な耐水分透過性
と安定したシート間接着性が要求される。さらに、実際
の施工に際しては、平坦ではない広大な面積に多数の防
水シートを接合して施工する必要があるので、シート材
料自身の高い耐水分透過性のみならず、シート材料の柔
軟性や接合加工の容易さに左右される現地施工性のよい
こと、およびシート接合部分で欠陥部のない安定性と、
接合部の長期耐久性が強く要求される。
【0004】従来、このような防水シート材としては、
エチレン・プロピレン・ジエン(EPDM)系加硫ゴ
ム、塩化ビニル(PVC)系樹脂、高密度ポリエチレン
系樹脂(HDPE)、ポリプロピレン(PP)/ポリエ
チレン(PE)/EPDM系熱可塑性エラストマー等が
利用されている。しかしながら、これらの材料では、前
述の要求特性のすべてを好適に満足することはできず、
材料の長短所を加味して、用途に対応した防水シートが
適宜選択されて使用されている。
【0005】すなわち、EPDM系加硫ゴムを使用した
防水シートは、耐水分透過性および柔軟性は十分である
ものの、加硫シートであるがために熱融着といった自己
溶融接着処理ができず、溶剤型のゴム系接着剤または粘
着剤等で接着処理を施した後にシートの張り合せ施工を
行っていた。そのため、多面積施工時の接着安定性およ
び信頼性に欠ける面がある。他方、HDPE系樹脂材料
を使用した防水シートは、耐水分透過性は良好でかつ熱
融着による接着が可能であるものの、他の材料に比して
極めて大きな弾性率を有するため柔軟性に乏しく、施工
時の下地面への追従性が悪く物理的に不安定で、またシ
ート間の密着の確保が物理的に困難である。そのため、
安定した施工性および接着面の信頼性の点で問題があ
る。また、PVC系樹脂材料は、柔軟で熱融着も可能で
ある点で扱い易い材料ではあるものの、一般に柔軟性付
与の為には、他のポリマー成分の添加や共重合による内
部可塑化や、多量の充填剤、軟化剤、可塑剤等添加等
の組み合わせによって柔軟化を図る必要がある。そのた
め、他の材料に比べて耐水分透過性に劣り、しかも可塑
剤等の添加により過度に軟化してしまった場合には、添
加剤の表面へのブリードにより熱融着の安定性も低下
し、かつ、軟化剤、可塑剤はさらに土中に移行し、PV
C系樹脂材料の経時による硬化を大ならしめると共に、
可塑剤としてジオクチルフタレート(DOP)やジブチ
ルフタレート(DBP)等のフタル系可塑剤を使用し
た場合、環境安全性上も好ましくないため、安定した施
工性および施工後の信頼性に問題点がある。さらに、P
P/PE/EPDM系等の熱可塑性エラストマーは多く
の材料群があり、柔軟で熱融着が可能な材料として各種
のものが知られている。しかしながら、これらの熱可塑
性エラストマーは、共通して70〜80℃程度で急激に
軟化するため、日光の照射等、使用中の加熱によって物
性が低下して、下地面からの突き刺しや傾斜面で発生す
る自己重量に起因する引き裂き等の外力(外傷)に対す
る抵抗性が著しく低下してしまう。そのため、施工条件
等に大きな制約を受ける。すなわち、これらの熱可塑性
エラストマーも、施工後の安定性および信頼性に欠ける
という問題点を有する。これらの各種材料の特性を下記
に示す。
【0006】 そのため、上記各要求特性を全て好適に満足する防水シ
ートの出現が切望されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
従来技術の問題点を解決することにあり、優れた耐水分
透過性のみならず、柔軟性や接合性および耐熱軟化性
等、優れた現地施工性およびその信頼性を有する防水シ
ートを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は、熱変形温度が70℃〜130℃のポリプ
ロピレン樹脂と、エチレン・プロピレン・ジエン系ゴム
およびブチル系ゴムから選択される1種以上のゴムを含
有するゴム組成物とを、重量比でポリプロピレン樹脂/
ゴム組成物=80/20〜15/85の割合で含有し、
かつ、前記ゴム組成物が、エチレン・プロピレン・ジエ
ン系ゴムの場合は、加硫用樹脂または硫黄系;ブチル系
ゴムの場合は、加硫用樹脂、硫黄系、キノンオキシム
系、亜鉛華またはチウラムとチアゾールの併用系;エチ
レン・プロピレン・ジエン系ゴムとブチル系ゴムの混合
物の場合は、加硫用樹脂、硫黄系またはキノンオキシム
系から選ばれた加硫剤により動的に加硫され、前記ゴム
組成物がポリプロピレン樹脂 の連続相に微細に分散し
いる熱可塑性エラストマー組成物を主成分とすることを
特徴とする防水シートを提供する。
【0009】また、前記熱可塑性エラストマー組成物
が、前記ゴム組成物の少なくとも一部が前記ポリプロピ
レン樹脂中に分散されてなるのが好ましい。すなわち、
熱可塑性エラストマー組成物は、ポリプロピレン樹脂が
少なくとも連続層を構成し、ゴム成分の少なくとも一部
が不連続層を構成して樹脂相中に分散されるのが好まし
い。なお、この熱可塑性エラストマー組成物中において
は、不連続相(ゴム相)中に、さらにポリプロピレン
脂が分散された、いわゆるサラミ構造であってもよい。
さらに、前記ゴム組成物中のゴム含有量が20〜99.
5重量%であるのが好ましく、さらにはゴム組成物中の
ゴム含有量が25〜97重量%であるのがより好まし
い。
【0010】ここで、本発明において熱可塑性エラスト
マー組成物としては、下記の物性を有するものが好まし
い。すなわち、ASTM D638およびD1566に
記載される試験法に準じて測定される値で、 1.テンションセットが160%以下、好ましくは15
0%以下であり、 2.120℃×72時間の圧縮永久歪が50%以下であ
り、 3.柔軟性の目安としてのヤング率(初期引張弾性率)
が2500kgf/cm2 以下であり、かつ、 4.約120℃までゴム弾性を有するものである。 すなわち、本発明における熱可塑性エラストマー組成物
は、ASTM標準 V.28第756ページ(D156
6)に示されるゴムに関する定義に合致するものが好ま
しい。
【0011】以下、本発明の防水シートについて詳細に
説明する。本発明の防水シートは、熱変形温度が70℃
〜130℃のポリプロピレン樹脂と、少なくとも一部が
加硫されたEPDMおよび/またはブチル系ゴムを含有
するゴム組成物とを、重量比でポリプロピレン樹脂/ゴ
ム組成物=80/20〜15/85の割合で含有する熱
可塑性エラストマー組成物(以下、熱可塑性エラストマ
ーとする)、好ましくはポリプロピレン樹脂をマトリッ
クスとして、この中で前記ゴム組成物を動的に加硫する
ことにより、連続的なポリプロピレン樹脂相中にゴム組
成物の加硫物が不連続相となって分散されてなる熱可塑
性エラストマーを主成分として成形された防水シートで
ある。
【0012】本発明の防水シートを形成する熱可塑性エ
ラストマーにおいて、利用されるポリプロピレン樹脂は
熱変形温度が70℃〜130℃のものである。ポリプロ
ピレン樹脂の熱変形温度が70℃未満では、防水シート
となる熱可塑性エラストマー材料の耐熱軟化性が低く、
防水シートの使用時における軟化が著しくなってしま
い、また、熱融着界面での接合力が低下して、シートの
接合が不安定になってしまう等の点で使用上問題があ
る。逆に、ポリプロピレン樹脂の熱変形温度が130℃
を超えると、熱可塑性エラストマー材料の熱融着性が低
くなってしまうために、防水シートの接合性が悪くな
り、現地施工性および接合強度の均一性が悪く信頼性が
低下してしまう。
【0013】なお、本発明においては、熱変形温度と
は、JIS K 7270−1983で定義される荷重
たわみ温度試験方法で測定される熱変形温度であり、
4.6kgf/cm2 の一定荷重下で試験片が変形を開始する
温度、すなわち、物理的に熱変形する温度である。
【0014】本発明に利用されるポリプロピレン樹脂と
しては、熱変形温度が70℃〜130℃のポリプロピレ
樹脂であれば公知の樹脂(組成物)や市販品が各種利
用可能である。また、複数のポリプロピレン樹脂をブレ
ンドして、熱変形温度を上記範囲としたものも利用でき
る。このようなポリプロピレン樹脂としては、防水シー
トの主成分となる熱可塑性エラストマーの加工性および
経済性の点で、アイソタクティックまたはシンジオタク
ティックのプロピレン重合体樹脂、または以下に示すモ
ノマーの種以上のランダムあるいはブロック共重合
体樹脂が例示される。オレフィンモノマーとしては、エ
チレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル1−ペ
ンテン、5−メチル1−ヘキセン等や、これらの混合物
が例示される。
【0015】本発明においては、上記熱変形温度を有す
るものであれば、これらのものが重合(共重合)されて
なる公知のあるいは市販のポリプロピレン樹脂が利用さ
。ポリプロピレン樹脂としては、アイソタクティッ
ク、シンジオタクティック、アタクティックの立体化学
構造を有したホモポリマー、およびエチレン成分とのラ
ンダムあるいはブロック共重合体等、入手可能である全
てのものが利用可能である。
【0016】本発明に利用される熱可塑性エラストマー
は、このようなポリプロピレン樹脂と、EPDMおよび
/またはブチル系ゴムから選ばれた1以上のゴムを含有
するゴム組成物(以下、これらをEPDMおよび/また
はブチル系ゴム組成物とする)とを含有し、ゴム成分の
少なくとも一部が加硫されてなる組成物である。EPD
Mとは、エチレン、プロピレンおよび若干のジエン成分
の三元共重合体であり、ジエン成分としては、ジシクロ
ペンタジエン、エチリデンノルボーネン、1,4−ヘキ
サジエン等が例示される。
【0017】また、ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム
(IIR)、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム等が
好適に例示され、中でも特に、平均分子量35万〜45
万程度、塩素化率1.1〜1.3%程度の塩素化ブチル
ゴムが好ましい。さらに、ブチル系ゴムの1態様とし
て、下記式1で示される、イソブチレン単位とp−ハロ
ゲン化メチルスチレン単位とを有する共重合ゴム、およ
び下記式2で示される、イソブチレン単位とp−ハロゲ
ン化メチルスチレン単位とp−メチルスチレン単位とを
有する共重合ゴムも好適に例示される(以下、これらの
共重合ゴムをX−IPMSとする)。これらの共重合ゴ
ムは、後述するポリプロピレ 樹脂とゴムとの混練加工
時の安定性に優れたものである。
【化1】
【0018】なお、これらのゴムは、複数をブレンドし
て使用してもよい。
【0019】本発明の防水シートに用いられる熱可塑性
エラストマーは、このエラストマーに熱可塑性を与える
のに十分な量のポリプロピレン樹脂と、エラストマーに
ゴム様弾性を与えるのに十分な量の少なくとも一部が加
硫されたゴム組成物とをブレンドして、好ましくは、一
方に他方が分散してなるものである。より好ましくは、
ポリプロピレン樹脂が連続相を構成し、この連続相に一
部が加硫されたゴム組成物が不連続相として分散された
構成を有するが、不連続相(ゴム相)中にポリプロピレ
樹脂が分散した、いわゆるサラミ構造等であってもよ
い。
【0020】このような熱可塑性エラストマーは、通
常、バンバリミキサー、ブラベンダーミキサー、または
ある種の混練押出機(2軸混練押出機)を使用し、樹脂
およびゴム組成物の溶融物をこれらの装置内で混練し
て、ゴム組成物をポリプロピレン樹脂相に微細に分散し
つつ、さらに架橋剤(加硫剤)を添加して、ゴムの加硫
が完了するまで、加硫を促進する温度で素練りすること
によって製造される。すなわち、このように製造される
熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレン樹脂とゴム組
成物とを素練りをしながらゴムの加硫を進行させる、い
わば、動的に加硫を進行させる動的加硫(Dynamic Cure
またはDynamic Vulcanization)により製造される熱可塑
性エラストマーである。このような製法を利用すること
により、得られた熱可塑性エラストマーは、連続相とな
ポリプロピレン樹脂相に不連続相となる加硫ゴム相が
微細に分散した状態となるため、このエラストマーは加
硫ゴムと同様の挙動を示し、かつ、少なくとも連続相が
樹脂相であるため、その成形加工に際しては、ポリプロ
ピレン樹脂に準じた加工が可能である。
【0021】このような熱可塑性エラストマーとして、
ポリプロピレン樹脂が連続相を、ゴム組成物が不連続相
を構成した際には、ポリプロピレンとゴム組成物との合
計を100重量部として、ゴム組成物が20〜85重量
部であるのが好ましく、さらに20〜80重量部である
のが好ましい。また、不連続相の粒子径は50μm以下
が好ましく、さらに、10μm〜1μmであるのがより
好ましい。このような熱可塑性エラストマーは、耐水分
透過性、耐熱老化性、耐候性、加熱時の物性保持性およ
び柔軟性に優れるものである。
【0022】本発明の防水シートは、このような熱可塑
性エラストマーを利用することにより、EPDMおよび
/またはブチル系加硫ゴム組成物が発現する柔軟性や、
連続相となるポリプロピレン樹脂が発現する良好な熱融
着性によって、良好なシート同士の接合性等の優れた現
地施工性および信頼性を発揮すると共に、EPDMおよ
び/またはブチル系加硫ゴム組成物を含有するので耐水
分透過性にも優れている。さらに、EPDMおよび/ま
たはブチル系加硫ゴム組成物は、連続相となるポリプロ
ピレン樹脂相中に分散されているので、直接オゾン等と
接触することがなく、通常のEPDMおよびブチル系加
硫ゴムシート、特にブチル系加硫ゴムシートに比べ、非
常に優れた耐候性を発揮する。
【0023】前述のように、EPDMおよび/またはブ
チル系ゴム組成物は、少なくとも一部が加硫されたゴム
組成物である。このような熱可塑性エラストマーの製造
に際し、ゴム組成物の加硫系は加硫可能な加硫系が全て
利用可能であるが、ゴムがEPDMである場合には加硫
用樹脂(変性アルキルフェノール樹脂)あるいは硫黄系
の加硫剤を用いた加硫系が;ゴムがブチル系ゴム組成物
である場合には、加硫用樹脂(変性アルキルフェノール
樹脂)、硫黄系あるいはキノンオキシム系、亜鉛華、亜
鉛華・ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛等のステアリン
酸金属塩、ジチオカーバメイトの亜鉛塩、チウラムとチ
アゾールとの併用等の加硫剤を用いた加硫系が; ま
た、EPDM/ブチル系ゴムの混合物である場合には、
加硫用樹脂(変性アルキルフェノール樹脂)、硫黄系あ
るいはキノンオキシム系の加硫剤を用いた加硫系が;
それぞれ好ましく例示される。なお、ゴムは、これらの
加硫系の他に、あらかじめ充填剤、補強剤、可塑剤、軟
化剤、老化防止剤、加工助剤、顔料等の配合剤を添加し
た組成物として使用できるのはもちろんである。また、
ゴム組成物において、加硫系や配合剤はあらかじめ添加
されていても、後から添加されてもよい。ここで、これ
らのゴム組成物の加硫剤は、前述の動的加硫のプロセス
において、架橋剤(加硫剤)として適宜添加され、ゴム
相の加硫が完了するまで、加硫を促進する温度で混練し
ながら加硫を進行させる動的加硫によって、目的とする
熱可塑性エラストマーが製造できる。
【0024】なお、混練条件や使用する加硫剤や加硫条
件(温度)等は、添加するEPDMやブチル系ゴムに応
じて適宜決定すればよく、特に限定はない。例えば、二
軸混練機等を用いて動的な混練・加硫を行い、動的な加
硫時におけるポリプロピレン樹脂とゴム組成物との混練
の温度(すなわち熱可塑性エラストマーの製造温度)を
180℃〜300℃程度とすればよい。
【0025】本発明に使用される熱可塑性エラストマー
において、好ましい加硫剤は前述のとおりであるが、必
要に応じて、充填剤、補強剤、可塑剤、軟化剤、老化防
止剤、加工助剤、顔料、加硫促進剤、加硫助剤等を併用
してもよい。好ましい促進剤、加硫助剤としては、ステ
アリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸、これらの脂肪酸と亜
鉛等との金属、亜鉛華等の金属酸化物、テトラメチルチ
ウラムモノサルファイド(TMTM)、テトラメチルチ
ウラムジサルファイド(TMTD)等のチウラム系促進
剤、ジベンゾジチアジルジサルファイド等のチアゾール
系促進剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾオチアゾイ
ル−スルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤等
が例示される。
【0026】本発明の防水シートに使用される熱可塑性
エラストマーにおいて、ポリプロピレン樹脂およびゴム
組成物との組成比は、ポリプロピレン樹脂およびゴムの
種類に応じて適宜決定されるものであるが、重量比で、
ポリプロピレン樹脂/ゴム組成物=80/20〜15/
85の範囲とする。ポリプロピレン樹脂/ゴム組成物の
組成比が80/20を超えると、すなわち、ポリプロピ
レン樹脂が80を超えると、ポリプロピレン樹脂が過剰
添加となり、防水シートの柔軟性が低くなってしまい、
また、耐熱軟化性も低く耐外傷性の点でも実用上の信頼
性に難がある。他方、ポリプロピレン樹脂/ゴム組成物
の組成比が15/85未満、すなわち、ポリプロピレン
樹脂が15未満では、ゴムが過剰添加となってしまい、
前述の動的加硫工程によってポリプロピレン樹脂を連続
相とし、ゴム相を不連続相とする分散状態を実現するこ
とが困難となり、優れた特性の熱可塑性エラストマーす
なわち防水シートを安定して得ることができない。な
お、不連続相としてポリプロピレン樹脂中に分散される
ゴム相の粒子径は50μm以下が好ましく、さらに、1
0μm〜1μmであるのがより好ましい。
【0027】好ましくは、ポリプロピレン樹脂/ゴム組
成物=80/20〜25/75程度である。両成分の組
成比を上記範囲とすることにより、熱可塑性エラストマ
ーの溶融成形性、耐熱軟化性、耐候性等の諸特性をより
良好なものとして、耐候性、耐熱軟化性が良好な優れた
性能の防水シート(およびその成型品)が実現できると
共に、防水シートの柔軟性および接合性も良好なものと
することができ、現地施工性および施工後信頼性に優れ
た防水シートを実現することができる。
【0028】本発明に用いられるゴム組成物におけるゴ
ム分の含有量は20〜99.5重量%、より好ましくは
25〜97重量%である。
【0029】ゴム組成物がカーボンブラックや伸展油等
の配合剤を含む場合には、ゴム100重量部に対して、
カーボンブラック等の配合剤を合計量で最高400重量
部まで含有させることができ、このとき、このゴム組成
物中におけるゴム分の含有量は20重量%となる。ゴム
組成物中におけるゴム分の含有量が20重量%未満とな
るとき、すなわち、カーボンブラック等の配合剤がゴム
100重量部に対して400重量部を超えて配合される
と、ゴム組成物がゴム状弾性を失い、ポリプロピレン
脂と混合しても、本発明が目的とする柔軟性に優れた防
水シートを作製することが困難になってしまう(なお、
ここにおいて、加硫剤や加硫促進剤等は、ゴム分および
配合剤の量に比べて相対的に少量であるので、加硫剤等
の量は無視して計算することができる)。
【0030】逆に、ゴム組成物がカーボンブラックや伸
展油等の配合剤を含まない場合、すなわちゴム組成物が
ゴム分と加硫系のみからなる場合には、加硫ゴムを作成
し得る加硫剤や加硫促進剤の最小量は、ゴム100重量
部に対して0.5重量部であり、このとき、このゴム組
成物中におけるゴム分の含有量は99.5重量%とな
る。ゴム組成物中におけるゴム分の配合量が99.5重
量%を超えるとき、すなわち、加硫系がゴム100重量
部に対して0.5重量部未満であると、加硫ゴムができ
ず、ポリプロピレン樹脂と混合しても、本発明が目的と
する優れた防水シートを作製することが困難になってし
まう。
【0031】なお、本発明の防水シートを形成する熱可
塑性エラストマーにおいて、ポリプロピレンとブチルゴ
ム組成物との組み合わせ、ポリプロピレンとブチルゴム
およびEPDM組成物のブレンド系との組み合わせが耐
水分透過性の点で好ましく、さらにポリプロピレンとブ
チルゴムおよびEPDM組成物のブレンド系との組み合
わせが耐水分透過性および耐候性の点で好ましい。な
お、ゴム組成物としてブチルゴムおよびEPDMのブレ
ンド系を用いる場合、その比率は用途に応じて任意に決
定すればよい。すなわち、耐水分透過性がより重要な用
途においてはブチルゴムを多くし、耐候性がより重要な
用途においてはEPDMを多くすればよい。
【0032】本発明の防水シートに使用される熱可塑性
エラストマーは、基本的に上記の各組成より構成される
が、これ以外にも、本発明の趣旨を損なわない範囲で、
加硫促進剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、
顔料や染料等の着色剤、補強剤、充填剤、加工助剤、可
塑剤、軟化剤等を添加してもよい。
【0033】このような熱可塑性エラストマーは、公知
のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法によって製造可
能であるが、以下に好ましい製造方法の一例を示す。
【0034】前述のように、本発明に利用される熱可塑
性エラストマーは、好ましくは、連続相となるポリプロ
ピレン樹脂に不連続相となるゴム相が架橋された状態で
分散されてなるものであり、ポリプロピレン樹脂とゴム
組成物とを溶融混練し、次いで、少なくともゴムが部分
的に加硫されるのに必要な加硫剤およびその他加工に必
要な成分を添加することによって得ることができる。こ
のような分散状態を実現するための混練方法には特に限
定はなく、例えば、二軸混練機、ニーダ、バンバリミキ
サ等の周知の混練機による混練が例示でき、あるいは、
その他の各種の混練方法がいずれも利用可能である。ま
た、以下の製造工程は、ポリプロピレン樹脂の溶融温度
に応じて、それよりも高い温度で行われるのはもちろん
である。さらに、加熱による加硫を利用する場合には加
硫温度も加味して各工程における温度が設定される。以
下、二軸のスクリューによる二軸混練工程を用いた製造
方法を例示して、本発明に利用される熱可塑性エラスト
マーの製造方法を説明する。
【0035】まず、連続相となるポリプロピレン樹脂を
二軸混練機に投入し、加熱溶融して混練する。次いで、
未加硫あるいは一部を加硫したゴム組成物をペレット状
にして、混練させて連続相を形成している樹脂相中にゴ
ム組成物を溶融混練する。この際のペレットのサイズ
は、ゴムの種類や組成、混練条件等に応じて、溶融およ
び混練が速やかに行われるサイズとすればよい。また、
ブチル系ゴムの添加時には、ステアリン酸や軟化剤等の
潤滑剤を併用してもよい。
【0036】この状態でポリプロピレン樹脂とゴム組成
物とを混練して、ゴム組成物を十分にポリプロピレン
脂に分散した後、両者を混練させた状態で、ゴムの加硫
剤、加硫促進剤等、架橋反応に必要な添加剤を添加し、
混練しながら加硫させる動的加硫を施すことにより、ゴ
ム組成物を動的に加硫する。また、このような動的加硫
工程で加硫剤と同時に、あるいは加硫剤添加後に、老化
防止剤等の各種の添加剤を必要に応じて添加、混練し
て、熱可塑性エラストマーを得る。加硫をこのように動
的に行うことにより、ゴム組成物はポリプロピレン樹脂
に十分に分散された状態で加硫され、かつこの分散状態
が混練後、変動することなく固定されるので、得られた
熱可塑性エラストマーは、通常の樹脂押出機や射出成形
機等の成形機を使って成形可能であると共に、成形され
た成形体(本発明の防水シート)は、加硫工程を施さな
くてもゴム弾性を有するものとなる。
【0037】本発明の防水シートは、このような熱可塑
性エラストマーをシート状に成型してなるものである。
防水シートの成型方法には特に限定はなく、カレンダー
成型、Tダイを用いた押出成型、円形のダイスを用いた
いわゆるブロー成形等、公知の成型方法が各種利用可能
である。
【0038】本発明の防水シートの厚さには特に限定は
なく、防水シートの用途等に応じて適宜決定すればよ
い。例えば、本発明の防水シートを産業廃棄物処理場の
遮水材、建築物のルーフィング材、トンネル掘削時の防
水シート等として使用する際には、0.7mm〜2.2
mm程度であればよく、通常、1.5mm程度である。
また、本発明の防水シートは、単層でも多層でもよく、
さらに、他の樹脂シートと積層して使用してもよい。
【0039】さらに、面積にも特に限定はなく、防水シ
ートの用途に応じて適宜決定すればよい。なお、本発明
の防水シートは、シート同士の溶融接合が容易で、現地
施工性およびその信頼性共に優れているので、産業廃棄
物処理場の遮水材等の広大な面積を要する用途にも好適
に利用可能であるのは前述のとおりである。
【0040】本発明の防水シートは、前述のPVC等の
各種の材料から形成される防水シートに比べてゴム弾性
体の特性を強く持ち、熱可塑性エラストマーの組成、防
水シートの厚み等を調整することにより、その引張性
能、引裂性能、耐水分透過性、耐候性等の各特性を用途
に応じて調整することができる。
【0041】ここで、本発明の防水シートの好ましい特
性(物性)としては、JIS A6008に準じた引っ
張り強さが76.5kgf/cm2 以上、同伸び率が450%
以上、同引裂試験が25.5kgf/cm以上、加熱時(60
℃)の引っ張り強さの常温時の値に対する保持率が30
%以上等、JIS A6008に規定される加硫ゴム系
ルーフィング材と同等以上の特性を有するのが好まし
い。また、本発明の防水シートに利用される前述の熱可
塑性エラストマーは、このような特性を有する防水シー
トを容易に実現可能であり、好ましくは、さらに前述の
ASTM D1566に定義されるゴム特性、特に良好
な柔軟性(ヤング率)および120℃までのゴム弾性を
有することが好ましい。すなわち、ヤング率(初期引張
弾性率)が2500kg/cm2以下であること、ゴム弾性の
目安として、常温時に対する120℃のヤング率が、通
常の加硫ゴムと同一のレベルである20%以上であるの
が好ましい。
【0042】また、本発明の防水シートの耐水分透過性
は、耐水分透過度が10×10-3gf・ mm/cm2・24hr 以下
であるのが好ましい。なお、耐水分透過度の試験方法は
下記のとおりである。図1に示されるようなステンレス
製カップ10に、カップ容量の半分の水12を入れる。
ステンレス製カップ10の上部開口を試験シート14で
覆い、その上部に焼結金属板16をのせ、固定部材22
を介して、ボルト18とナット20で締める。このカッ
プを80℃の雰囲気下に放置し、24時間ごとに全体の
重量を測定し、その減少量を算出して、下記式で耐水分
透過度を算出する。 耐水分透過度[gf ・ mm/cm2・24hr]=(M・t)/(T・A) 但し、上記式において、A=透過面積[cm2]; T=試験時間[day]; M=減少重量[gf]; t=試験片の厚さ[mm];
【0043】さらに、防水シートの耐オゾン性(耐候
性)は、JIS K 6301に規定されるオゾン劣化
試験に準じて測定されるが、本発明の防水シートにおい
ては、同規定における測定条件として、オゾン濃度75
ppm 、雰囲気温度40℃の環境下で40%の伸長を与え
て放置し、168時間放置後にサンプル表面を観察し、
表面にヒビ割れがない状態であるのが好ましい。
【0044】以上、本発明の防水シートについて詳細に
説明したが、本発明は上記構成に限定はされず、本発明
の要旨を逸脱しない範囲において各種の改良および変更
を行ってもよいのはもちろんである。
【0045】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明
の防水シートについてより詳細に説明する。
【0046】[実施例1] 下記表1に示すゴム組成物を、通常のゴム用バンバリー
ミキサーによって混練し、次いで、この組成物をゴムロ
ールを使用して混練、シート化した後、ペレタイザーに
よって約3mmの粒径に調整し、このペレットをゴム原
料とした。なお、表1に示されるゴム組成物は、下記の
とおりである。 <EPDM> 三井EPT 4070(三井石油化学社製) 100重量部 カーボンブラックSRF 旭#50(旭カーボン社製) 50重量部 ステアリン酸 2重量部 亜鉛華 5重量部 軟化剤 サンパー2280(日本サン石油社製) 10重量部 <IIR> エクソンブチル 268(日本ブチル社製) 100重量部 カーボンブラックSRF 旭#50(旭カーボン社製) 50重量部 ステアリン酸 2重量部 亜鉛華 5重量部 軟化剤 マシン油22(昭和シェル石油社製) 10重量部 <塩素化IIR> クロロブチル 1066(エクソンケミカル社製) 100重量部 カーボンブラックSRF 旭#50(旭カーボン社製) 50重量部 ステアリン酸 1重量部 亜鉛華 3重量部 軟化剤 マシン油22(昭和シェル石油社製) 10重量部 <X−IPMS> ブロモ XP−50(エクソンケミカル社製) 100重量部 カーボンブラックHAF N330(昭和キャボット社製)40重量部 軟化剤 サンパー2280(日本サン石油社製) 10重量部
【0047】一方、表1に(1)〜(8)で示すポリプ
ロピレン系樹脂(PP樹脂)を約2mmの粒径に調整
し、このペレットを原料とした。なお、表1において、
(1)は「FM 801」、(2)は「FC 54
0」、(3)は「RB 410」、(4)は「RV 4
21」、(5)は「FM 131」、(6)は「FA
122」、(7)は「MA 410」、さらに(8)は
「MA 610H」(以上、トクヤマ株式会社製)であ
る。
【0048】以上のペレットを原料として、2軸混練押
出機を使用し、先ずPP樹脂を1番目の投入口より投入
して溶融混練し、次いで2番目の投入口よりゴムペレッ
トを添加し、PP樹脂中にゴム組成物を分散させた。さ
らに続いて表1に(a)〜(d)で示す加硫系を、ゴム
の配合に応じて2軸混練押出機の第3の投入口より投入
し、樹脂相中に分散したゴム相を混練中に動的に加硫
し、最終的に動的に加硫した熱可塑性エラストマー組成
物を、2軸混練押出機のダイス部出口より約3mm径の
ストランド状に押し出した。なお、加硫系(a)〜
(d)の組成は下記のとおりであり、それぞれの添加量
はゴム100重量部に対する量である。 <加硫系(a)> 硫黄 0.5重量部 促進剤 ZnMDC (ジンクジメチルジチオカーバメート) 1重量部 促進剤 DPTS (ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド) 0.5重量部 促進剤 CBS (N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド) 1.5重量部 (ZnMDCは「ノクセラーPZ(大内新興化学社製)」、DPTSは「サンセ ラーRA(三新化学社製)」、CBSは「ノクセラーCZ(大内新興化学社製)」 である。) <加硫系(b)> 促進剤 TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド) 1.5重量部 促進剤 MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド) 1.5重量部 (TMTDは「ノクセラーTT(大内新興化学社製)」、MBTSは「ノクセラ ーTT(大内新興化学社製)」である。) <加硫系(c)> 臭素化フェノール樹脂 8重量部 塩素化IIR 10重量部 (臭素化フェノール樹脂は「タッキロール 250−1(田岡化学社製)」、塩素 化IIRは「クロロブチル 1066(エクソンケミカル社製)」である。) <加硫系(d)> ステアリン酸 2.0重量部 亜鉛華 0.5重量部 促進剤 DPTHS (ジペンタメチレンチウラムヘキササルファイド)1.0重量部 (DPTHSは「テトロンA(デュポン社製)」である。)
【0049】得られたストランドを水冷後、カッターで
長さ約3mmのペレット状としてテスト供試サンプルを
得た。なお、必要に応じて、老化防止剤、加工助剤等を
添加してもよいのは前述のとおりであるが、その場合
は、第4の投入口より投入すればよい。
【0050】このようにして得られた各配合のペレット
状サンプルを、通常使用される樹脂用のプレス成形機で
200℃で5分、30kg/cm2の圧力で2mm厚さのシー
ト状に成形し、このシートを使用して、材料の常温時お
よび熱時(120℃)のヤング率を測定した。常温時の
ヤング率、および熱時のヤング率の常温時に対する保持
率(ヤング率保持率)を表1に示す。また、PP樹脂の
熱変形温度とヤング率保持率との関係を、図2に示す。
さらに、得られた各材料の同一シート同士を剥離部を残
して重ね合わせた後、同様にプレス成形機で通常の防水
シート融着に使用される温度、圧力および時間、すなわ
ち180℃、3kg/cm2の定圧で3分間圧着し、接合状態
を確認した。接合サンプルが十分に接合し剥離面が材料
の破壊である時は○、十分に接合せず材料の界面で容易
に剥離する場合は×として、結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】表1および図2に示される結果より、PP
樹脂に、EPDM,IIR,塩素化IIR、X−IPM
S等のゴム組成物を添加して、動的加硫を行って得られ
た熱可塑性エラストマーから作製されたシートであって
も、使用するPP樹脂の熱変形温度が70℃を下回る
と、ゴム材料としての柔軟性は有するが、熱時(120
℃)のヤング率保持率は20%以下となり、加硫ゴムと
しての耐熱軟化性を有さず、また、接着界面での凝集力
の低下による接着性も極めて悪く、容易に剥離するよう
になることがわかる。逆に、PP樹脂の熱軟化温度が1
30℃を越えると、ゴム材料としてのヤング率が250
0kg/cm2を越えて柔軟性を失うとともに、材料同士の熱
圧着による接合性も軟化温度上昇により界面剥離とな
り、防水シート材料としての特性を備えず使用に耐えな
くなることがわかる。
【0055】また、PP樹脂100重量部中にEPD
M、IIR系の2種のゴム組成物を等量で、かつ合計で
100重量部になるように微細に分散させ、両ポリマー
の架橋剤として(c)の加硫系を使用して動的加硫を行
って得られた材料からなるシートも、単一のゴム組成物
の場合と同様に、PP樹脂の熱軟化温度に応じてヤング
率保持率および接合性が同様の変動結果を示すことがわ
かる。すなわち、PP樹脂として熱変形温度が70℃か
ら130℃の範囲のものを用い、これにEPDMおよび
/またはIIR系ゴム組成物を分散して、ゴムを動的に
加硫して得られた熱可塑性エラストマーは、十分柔軟な
ゴム弾性と耐熱軟化性を有し、かつ防水シート材料とし
てきわめて有用な熱による接合性をも合わせ持つことが
わかる。
【0056】[実施例2] ゴム組成物およびポリプロピレン樹脂のブレンド比率と
柔軟性・接合性との関係前記実施例1において、ゴム組
成物(EPDM組成物)とPP樹脂とのブレンド比率
(重量比)を15/85〜85/15まで変化させた以
外は、全く同様にして、PP樹脂中にEPDM組成物が
微細に分散し、かつゴム成分が加硫剤により架橋されて
なる熱可塑性エラストマーを作製した。なお、加硫系は
前記実施例1の加硫系(a)を使用した。得られた各種
の熱可塑性エラストマーについて、実施例1と同様に、
防水シート材料として必要な柔軟性(ヤング率)、熱時
ヤング率保持率および熱融着性を評価した。結果を表2
に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】表2に示される結果より、熱可塑性エラス
トマー中のEPDM加硫ゴム組成物の重量比が15の場
合、PP樹脂の熱変形温度が65℃では柔軟性は十分保
持するものの、熱軟化性および接合性が悪く、耐熱性や
接合性を要求される用途への利用は好ましくないことが
わかる。また、同様の系で樹脂の熱変形温度が75〜1
22℃の場合、柔軟性、接合性は良好であるが、熱時の
ヤング率保持率が20%を下回り、やはり耐熱性を要求
される用途への利用は好ましくないことがわかる。さら
に、同様の系で樹脂の熱変形温度が132℃の場合、ヤ
ング率が2500kg/cm2を越え柔軟性を失うとともに、
熱時ヤング率保持率および接合性も共に十分でなく、実
用上問題があることがわかる(以上、比較例13〜1
7)。
【0060】熱可塑性エラストマー中のゴム組成物の重
量比が20の場合には、PP樹脂の熱変形温度が65℃
ではゴム分が増大したことによって柔軟化の方向にはあ
るものの、ヤング率保持率および接合性は悪いことがわ
かるが、PP樹脂の熱変形温度が75〜122℃の領域
であれば、柔軟性(ヤング率)、耐熱軟化性(ヤング率
保持率)および接合性を満足する領域があることがわか
る。しかし、熱変形温度が132℃ではヤング率が25
00kg/cm2を越え、固くなるとともに接合性も不利とな
ることがわかる(以上、比較例18および19、発明
17〜19)。
【0061】熱可塑性エラストマー中のゴム組成物の重
量比が60の場合には、柔軟性は樹脂材料の熱変形温度
の全領域にわたり良好となるが、熱変形温度が65℃で
は熱軟化性、接合性が低く、熱変形温度が132℃では
接合性が低く、やはり、PP樹脂の熱変形温度が75〜
122℃の領域であれば、これら3特性で共に優れた結
果を得ることができ、ポリプロピレン樹脂の熱変形温度
に最適領域があることがわかる(以上、比較例20およ
び21、発明例20〜22)。
【0062】熱可塑性エラストマー中のゴム組成物の重
量比が85の場合には、柔軟性と熱軟化性は十分使用可
能な領域にあるが、やはり熱変形温度が132℃では接
合性が悪く、これを要求される用途では使用に耐えない
ことがわかる(以上、比較例22、発明例23〜2
6)。
【0063】さらに、熱可塑性エラストマー中のゴム組
成物の重量比が90の場合には、ゴム分過大のため、前
述の熱可塑性エラストマーを製造する2軸混練押出機
で、樹脂相中にゴム相が分散した組成物を混練製造でき
なかった。なお、この結果は、PP樹脂の熱変形温度の
高低にも影響を受けなかった(以上、比較例23および
24)。
【0064】上記の実施例1および2の結果をもとに、
熱可塑性エラストマー中のゴム比率とヤング率との関係
を図3に、熱可塑性エラストマー中のゴム比率とヤング
率保持率との関係を図4に、それぞれ示す。なお、図3
の点線および図4の数値は、樹脂(PP樹脂)の熱変形
温度である。
【0065】以上の結果を総合して、樹脂中にゴム組成
物が分散し動的に加硫してなる熱可塑性エラストマーに
おいて、熱可塑性エラストマー中の樹脂/ゴム組成物の
重量比が80/20〜15/85の領域で、かつ樹脂の
熱変形温度が70〜130℃の領域で、ヤング率250
0kg/cm2以下の柔軟性、120℃までのゴム弾性保持
(ヤング率保持率)およびシートの熱融着性良の全条件
を満たす領域のあることがわかる。樹脂/ゴム組成物重
量比が80/20よりも樹脂成分が多くなれば120℃
での熱軟化性が悪くなり、同様に90/10よりも樹脂
成分が少なくなれば樹脂成分が過少のため、目的とする
分散構造の熱可塑性エラストマーが得られない。また、
樹脂の熱変形温度が70℃よりも低い場合でも、また1
30℃より大の場合でも共に接合性は悪く使用に耐えな
いことがわかる。
【0066】[実施例3] ゴム組成物およびポリプロピレン樹脂のブレンド重量比
と柔軟性・接合性との関係ゴム組成物をEPDMから前
記実施例1のIIRに変更した以外は、前記実施例2と
同様にして熱可塑性エラストマーを作製し、同様にして
柔軟性、熱時軟化性および接合性を評価した。なお、
系は前記実施例1の加硫系(c)を使用した。結果を
表3に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】ゴム組成物としてIIR組成物を利用した
場合においても、ゴム組成物としてEPDM組成物を使
用した場合と同様に、熱可塑性エラストマー中の樹脂/
ゴム組成物の重量比が80/20〜15/85の領域で
あれば、かつ使用する樹脂の熱軟化温度が70〜130
℃の領域でヤング率2500kg/cm2以下の柔軟性、12
0℃までのゴム弾性保持(ヤング率保持率)、および高
いシートの熱融着性の全条件を満たすことができること
がわかる。樹脂/ゴム組成物重量比が80/20よりも
樹脂成分が多くなれば120℃での熱軟化性が悪くな
り、同様に90/10よりも樹脂成分が少なくなれば、
樹脂成分が過少のため目的とする分散構造の熱可塑性エ
ラストマーが得られない。また、樹脂の熱変形温度が7
0℃よりも低い場合でも、また130℃より大の場合で
も共に接合性が悪く、これを要求される用途では使用に
耐えないことがわかる。
【0070】[実施例4] ゴム組成物およびポリプロピレン樹脂のブレンド重量比
と柔軟性・接合性との関係ゴム組成物をEPDMから前
記実施例1のX−IPMSに変更した以外は、前記実施
例2と同様にして熱可塑性エラストマーを作製し、同様
にして柔軟性、熱時軟化性および接合性を評価した。な
お、加硫系は前記実施例1の加硫系(d)を使用した。
結果を表4に示す。
【0071】
【表8】
【0072】
【表9】
【0073】ゴム組成物としてX−IPMS組成物を利
用した場合においても、ゴム組成物としてEPDM組成
物を使用した場合と同様に、熱可塑性エラストマー中の
樹脂/ゴム組成物の重量比が80/20〜15/85の
領域であれば、かつ使用する樹脂の熱軟化温度が70〜
130℃の領域でヤング率2500kg/cm2以下の柔軟
性、120℃までのゴム弾性保持(ヤング率保持率)、
および高いシートの熱融着性の全条件を満たすことがで
きることがわかる。樹脂/ゴム組成物重量比が80/2
0よりも樹脂成分が多くなれば120℃での熱軟化性が
悪くなり、同様に90/10よりも樹脂成分が少なくな
れば、樹脂成分が過少のため目的とする分散構造の熱可
塑性エラストマーが得られない。また、樹脂の熱変形温
度が70℃よりも低い場合でも、また130℃より大の
場合でも共に接合性が悪く、これを要求される用途では
使用に耐えないことがわかる。
【0074】[実施例] 以上の実施例1〜で作製した2mm厚さのシートから
選択したシート、および前記実施例と同様にして作製し
た熱可塑性エラストマー組成物の2mm厚さのシートに
ついて、その耐水分透過性と耐オゾン性を測定した。耐
水分透過性と耐オゾン性の測定は、前述の方法で行っ
た。また、加硫EPDM、加硫IIRの2mm厚さのゴ
ムシート、および軟質塩化ビニルの2mm厚さのシート
を使用して、同様にして水分透過性と耐オゾン性を測定
した。なお、加硫EPDM、加硫IIRのゴムシート、
および軟質塩化ビニルのシートは、下記の様にして作製
したものである。結果を下記表に示す。
【0075】<加硫EPDMのゴムシート> 実施例1のEPDM組成物と加硫系(a)とをバンバリ
ミキサーで混練し、ゴム用ロールでシート出しした後、
153℃で60分間プレス加熱してなる厚さ2mmのゴ
ムシート。 <加硫IIRのゴムシート> 実施例1のIIR組成物と加硫系(c)とをバンバリミ
キサーで混練し、ゴム用ロールでシート出しした後、1
53℃で60分間プレス加熱してなる厚さ2mmのゴム
シート。 <軟質塩化ビニルのシート> 塩化ビニル(ゼオン103EP、日本ゼオン社製)10
0重量部に、DINP(ジイソノニルフタレート、大八
化学社製)60重量部とステアリン酸カリウム2重量部
を添加してなる樹脂組成物を成形した厚さ2mmのシー
ト。
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】表に示される結果より、本発明の防水シ
ートは従来の加硫ゴムシートと同等の耐水分透過性を保
持するとともに、同様に使用されてきた塩化ビニルのシ
ートに比し極めて優れた耐水分透過性を有することがわ
かる。一方、その耐オゾン性は防水材料として必要な耐
オゾン性をいずれの組成物でも有していることがわか
る。
【0079】下記表に、上記実施例に示される本発明
の防水シートの特性を、熱可塑性エラストマーの成分別
に示す。 以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【0080】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、優れた耐透水性のみならず、柔軟性や耐熱軟化
性、接合性等、優れた現地施工性およびその信頼性を有
する防水シートを実現することができる。このような本
発明の防水シートは、その優れた耐透水性、現地施工性
およびその信頼性を活かして、産業廃棄物処理場の遮水
材料、建築物のルーフィング材料等の、広大な面積を必
要とし、かつ高い耐透水性を要求される用途に好適に利
用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐水分透過性試験を説明するための概念図であ
る。
【図2】ポリプロピレン樹脂の熱変形温度とヤング率保
持率との関係を示すグラフである。
【図3】熱可塑性エラストマーのゴム/樹脂配合重量比
とヤング率との関係を示すグラフである。
【図4】熱可塑性エラストマーのゴム/樹脂配合重量比
とヤング率保持率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 ステンレス製カップ 12 水 14 試験シート 16 焼結金属板 18 ボルト 20 ナット 22 固定部材
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−106137(JP,A) 特開 昭59−18741(JP,A) 特開 平4−185652(JP,A) 特開 平4−185658(JP,A) 特開 昭63−264639(JP,A) 特開 昭60−231748(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 23/00 - 23/36 C08J 5/18 C08J 3/24

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱変形温度が70℃〜130℃のポリプロ
    ピレン樹脂と、エチレン・プロピレン・ジエン系ゴムお
    よびブチル系ゴムから選択される1種以上のゴムを含有
    するゴム組成物とを、重量比でポリプロピレン樹脂/ゴ
    ム組成物=80/20〜15/85の割合で含有し、か
    つ、前記ゴム組成物が、エチレン・プロピレン・ジエン
    系ゴムの場合は、加硫用樹脂または硫黄系;ブチル系ゴ
    ムの場合は、加硫用樹脂、硫黄系、キノンオキシム系、
    亜鉛華またはチウラムとチアゾールの併用系;エチレン
    ・プロピレン・ジエン系ゴムとブチル系ゴムの混合物の
    場合は、加硫用樹脂、硫黄系またはキノンオキシム系か
    ら選ばれた加硫剤により動的に加硫され、前記ゴム組成
    物がポリプロピレン樹脂の連続相に微細に分散している
    熱可塑性エラストマー組成物を主成分とすることを特徴
    とする防水シート。
  2. 【請求項2】前記ゴム組成物中のゴム含有量が20〜9
    9.5重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の防
    水シート。
  3. 【請求項3】前記ゴム組成物中のゴム含有量が25〜9
    7重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の防水シ
    ート。
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