JP2843226B2 - 熱処理容器および単結晶の製造装置 - Google Patents

熱処理容器および単結晶の製造装置

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JP2843226B2
JP2843226B2 JP3199693A JP3199693A JP2843226B2 JP 2843226 B2 JP2843226 B2 JP 2843226B2 JP 3199693 A JP3199693 A JP 3199693A JP 3199693 A JP3199693 A JP 3199693A JP 2843226 B2 JP2843226 B2 JP 2843226B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ニオブ酸リチウム又は
タンタル酸リチウムを収容し、熱処理するための、熱処
理用容器及び熱処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム
は、光学デバイス材として重要な単結晶酸化物材料であ
り、通常はLiNbO3、LiTaO3と表記される。現在ほとんど
すべての商業的に入手可能なニオブ酸リチウム単結晶や
タンタル酸リチウム単結晶は、いわゆるチョクラルスキ
ー(Czochralski) 法で製造されている。この方法では、
いわゆるコングルエント組成近辺では単結晶を引き上げ
ることができる。しかし、コングルエント組成から外れ
た組成の単結晶を引上げることは、組成の制御が難しい
ばかりでなく、クラック等の問題から、現状では不可能
である。
【0003】ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム
は、特に光学材料として多用されている。しかし、上記
の製造上の制約から、コングルエント組成のニオブ酸リ
チウムやタンタル酸リチウムについては光学的特性につ
いてかなり研究が進んでいるが、コングルエント組成を
外れた組成のものについては、光学的研究が進んでいな
い。このため、コングルエント組成を外れたニオブ酸リ
チウムやタンタル酸リチウムを量産し、光学的デバイス
として利用することが期待されている。
【0004】コングルエント組成を外れたニオブ酸リチ
ウム等の製造法として、現在、VTE(Vapor Transpor
t Equilibration)法が知られている。この方法について
簡単に述べる。まず、チョクラルスキー法によって柱状
のニオブ酸リチウム単結晶を引き上げる。この単結晶は
コングルエント組成を有している。次いでこの単結晶を
焼鈍し、1175℃で電圧をかけて単分域化処理し、次いで
この柱状物を切断して薄板を得る。一方、所望組成、例
えばLi2Oが50mol %のニオブ酸リチウムからなる粉末
を用意し、上記の薄板と粉末とを密閉容器内に封入す
る。十分な高温で十分長時間に亘って密閉容器内を熱処
理すると、気相での輸送と固相拡散とによって、上記薄
板における組成と上記粉末における組成とが平衡状態に
達する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の密閉容器として
は、白金製の密閉容器が知られている。しかし、白金は
きわめて高価であるし、上記のVTE処理には一般に長
時間を要する。このため量産には適していない。
【0006】一方、上記のVTE処理では1000℃を超え
る高温での熱処理が必要なので、容器と単結晶とが反応
し、単結晶中に金属原子が拡散して不良品になったり、
容器に気孔が生じたり、一部溶融したりするという問題
がある。こうした問題を生じないのは、現状では白金容
器のみである。このため、高温でニオブ酸リチウム単結
晶やタンタル酸リチウム単結晶と反応せず、また白金よ
りも低いコストで製造できる熱処理用容器が、必要とさ
れている。また、通常の仮焼や焼成といった粉末プロセ
ス上の工程においても、ニオブ酸リチウムやタンタル酸
リチウムと反応しない容器を選択する必要性があった。
【0007】本発明の課題は、VTE処理等の高温での
熱処理でニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムと反応
せず、また白金容器よりも低コストで製造できる熱処理
用容器を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくともニ
オブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムを収容し、熱処
理するための容器であって、含有金属原子のうち98原
子%以上がマグネシウムである気密質のマグネシアセラ
ミックスからなる熱処理用容器に係るものである。
【0009】また、本発明に係る単結晶の製造装置は、
ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶
からなる材料の初期組成を変化させることによって、目
的組成の単結晶を製造するものであり、含有金属原子の
うち98原子%以上がマグネシウムである気密質のマグ
ネシアセラミックスからなる気密性の熱処理用容器;熱
処理用容器内に収容された、材料の初期組成と異なる組
成を有するニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムの
粉末;及びこの粉末中に埋設された材料を有しており、
熱処理容器中で粉末および材料を熱処理することで、材
料の初期組成を目的組成へと変化させることを特徴とす
る。
【0010】この単結晶製造装置は、好適な態様におい
ては、更に、粉末中に埋設された、互いに対向する一対
の板状電極;および一対の板状電極に電力を供給するた
めの部材を有しており、材料が一対の板状電極の間に埋
設されており、熱処理容器中で粉末および材料を熱処理
すると共に一対の板状電極に電力を供給することで、材
料の組成を目的組成へと変化させて単結晶を得ると共に
この目的組成の単結晶の単結晶ドメインを単分域化させ
る。
【0011】
【作用】本発明者は、ニオブ酸リチウム単結晶やタンタ
ル酸リチウム単結晶をVTE処理する温度領域におい
て、各種の材質からなる容器とニオブ酸リチウム、タン
タル酸リチウムとの反応性について調べた。この結果、
98原子%以上がマグネシウムである気密質のマグネシ
アセラミックスからなる容器は、ニオブ酸リチウム単結
晶やタンタル酸リチウム単結晶とほとんど反応しないこ
とを確認し、本発明を完成した。
【0012】特に、一般にはタンタル酸リチウム単結晶
の単分域化処理は、650℃付近で処理されているが、
本発明者は、1480℃の高温で、タンタル酸リチウム
単結晶に対し、VTE処理と単分域化処理とを同時に進
行させた。この結果、本発明の熱処理容器を用いた場
合、高温での反応はないことを確認し、タンタル酸リチ
ウムの熱処理技術を完成した。
【0013】他にも、アルミナ、シリカ、ジルコニア等
の各種耐蝕性セラミックスについて同様の試験を行った
が、単結晶の溶解が生じたり、容器が一部溶解して気密
状態を維持できなくなった。
【0014】
【実施例】最初の実施例においては、主として、本発明
をニオブ酸リチウム単結晶のVTE処理および単分域化
処理用容器に適用した例について述べる。
【0015】まず、リチウム化合物とニオブ化合物とを
混合し、例えば950 ℃で仮焼し、1050℃で焼成する。こ
の焼成物を用い、チョクラルスキー法によって1252℃で
引き上げ、コングルエント組成の柱状物を引き上げる。
次いで、この柱状物を1170℃でアニールして結晶中の歪
みを除く。次いで、この柱状物を切断し、所定厚さの薄
板を得る。
【0016】次いで、コングルエント組成と異なる所定
組成を有するニオブ酸リチウム粉末と上記薄板とを容器
に収容し、この容器内を熱処理することによって、薄板
を構成するニオブ酸リチウム単結晶の組成を変化させ
る。図1(a), (b)は、このVTE処理に適した熱処理装
置を概略的に示す断面図である。
【0017】容器8は、本体2と蓋1とから構成されて
いる。本体2の上側開口に蓋1が被せられている。本体
2の外形は略円筒状であり、本体2の上端面2aに、蓋
1の縁部1dが載置されている。蓋1の縁部1dの内側
に段差部1aが形成されており、段差部1aが、容器2
の内側空間内に突き出ている。段差部1aの平面形状は
略円形であり、段差部1aの周囲に側周面1cが設けら
れている。
【0018】上端面2a及び縁部1dは共に精度良く研
磨加工し、かつ互いの平行度を上げるようにした。これ
により、内側空間内の気密性が上がり、揮発性成分が容
器8の外に逃げないようになった。この結果、容器8内
でリチウムが気相で平衡状態を保ち易くなった。また、
段差部1aを内側空間内へと突出させたことにより、側
周面1cと内側壁面2bとの間隔が小さくなった。この
結果、リチウム成分が、一層本体2と蓋1とのすり合わ
せ部分から逃げにくくなった。
【0019】本体2内に所定組成のニオブ酸リチウム粉
末6が収容される。この粉末6中に一対の平板状電極5
A,5Bが埋設され、平板状電極5Aと5Bとは互いに
ほぼ平行であり、かつ底面2c、平面1bに対して垂直
である。各平板状電極5A,5Bの上端にそれぞれリー
ド線3A,3Bが接続され、各リード線3A,3Bは、
蓋1の貫通孔1eにそれぞれ挿通され、容器8の外へと
引き出されている。リード線3A,3Bは、図示しない
電源に接続されている。リード線3A,3Bの引出口の
周囲は、アルミナセメント4で封止する。
【0020】コングルエント組成のニオブ酸リチウム単
結晶からなる薄板7が所定枚数、粉末6中に埋設されて
いる。各薄板7は、一対の平板状電極5Aと5Bとの間
に、これらに平行となるように配置されている。
【0021】図1に示した装置を用い、容器8内を熱処
理するのと共に薄板7に電圧を印加し、これにより上記
単結晶の組成を変化させると共に単結晶に単分域ドメイ
ンを形成させる。こうした方法について、更に説明す
る。
【0022】コングルエント組成のニオブ酸リチウム
は、1146℃のキュリー温度を有する。そして、単分域化
処理を単結晶に施しても、この単結晶のキュリー温度を
超える温度で熱処理すると、単結晶のドメインが再び多
分域状態に戻る。このため従来は、熱処理温度は、単結
晶のキュリー温度を超えないようにしなければならなか
った。
【0023】Li2Oが50mol %である組成では、単結晶の
キュリー温度が1190℃である。そして、上記粉末として
Li2Oが50mol %である組成のニオブ酸リチウムを用いる
場合は、単結晶のキュリー温度が1146℃から1190℃へと
向って上昇する。このため、従来は、1100℃程度で熱処
理をしていたが、単結晶のキュリー温度が1190℃に達す
るまでに500 時間程度かかっていた。
【0024】一方、Li2Oが47.2mol %である組成では、
単結晶のキュリー温度が1090℃である。そして、上記粉
末としてLi2Oが47.2mol %である組成のニオブ酸リチウ
ムを用いる場合は、単結晶のキュリー温度が1146℃から
1090℃へと向って下降する。このため、従来は、1050℃
程度で加熱処理をしていたが、単結晶のキュリー温度が
1090℃に達するまでに800 時間程度かかっていた。
【0025】これに対し、図1に示す熱処理装置によれ
ば、極めて短い熱処理時間で、コングルエント組成以外
のニオブ酸リチウム単結晶を製造できる。例えば、コン
グルエント組成のニオブ酸リチウム単結晶からなる薄板
7を1175℃で加熱し、一対の平板状電極5A,5Bに電
圧を加えると、54時間以内に、単結晶の組成が、Li2O
が50mol %となることが解った。しかも、薄板の厚さ
が3mmの場合にも、こうした結果が得られた。このよう
にVTE処理を促進できるのは、コングルエント組成に
対応するキュリー温度(1146℃) 以上の温度で、熱処理
を行えるからである。
【0026】しかも、図1に示す熱処理装置では、上記
の熱処理と同時に、薄板7に電圧をかけることにより、
これを構成する単結晶に単分域ドメインを形成すること
ができる。逆に言うと、熱処理温度が単結晶のキュリー
温度を超えてしまっても、このときに電圧がかかってい
れば、多分域ドメインは生じない。
【0027】また、例えば、コングルエント組成のニオ
ブ酸リチウム単結晶からなる薄板7を1175℃で加熱し、
一対の平板状電極5A,5Bに電圧を加えると、36時
間以内に、単結晶の組成が、Li2Oが47.2mol %となるこ
とが解った。
【0028】そして、図1に示す熱処理装置において、
熱処理用容器8を、本発明に従い、含有金属原子のうち
98原子%以上がマグネシウムであるマグネシアセラミ
ックスによって形成する。この結果、粉末6と容器8と
は反応せず、またリチウム蒸気によっても容器8は侵さ
れず、気密性が維持できた。また、材料7と容器8との
間には粉末6が介在しているので、容器8から単結晶中
に金属が拡散するおそれも全くない。
【0029】また、図1に示す熱処理装置は、本発明者
が開発した、VTE処理と単分域化処理とを同時に行え
る画期的なものである。ただし、単分域化処理を行うに
は、粉末6中に電流を流すので、容器8を絶縁性材料で
構成する必要があり、導電性材料である白金は使えな
い。この点、上記のマグネシアセラミックスは、1000℃
以上の高温でも絶縁性を保つので、容器8の材質として
最適である。
【0030】また、図2に示すような装置によって、V
TE処理と単分域化処理とを同時に進行させることが可
能である。ただし、図2に示す各構成部分のうち、図1
に示す各構成部分と同じものについては、同一の符号を
付した。
【0031】そして、図2に示す熱処理装置において
は、各薄板7は、底面2c及び段差部1aの表面1bに
対して、ほぼ垂直となるように埋設されている。リード
線3Aに平板状電極5Cが接続され、リード線3Bに平
板状電極5Dが接続されている。平板状電極5C,5D
は、いずれも底面2cや表面1bに対してほぼ平行に埋
設されている。
【0032】ニオブ酸リチウム単結晶を単分域化するに
は、Z軸方向に向かって電圧を印加する必要がある。こ
のため平板状電極5A,5Bと薄板7との位置関係が図
1に示す状態の場合は、Z板を処理し易い。一方光導波
路用途に好適な、主面と垂直にX軸が現れたX板を単分
域化処理する場合は、薄板7内にZ軸が存在する。従っ
て、図7に示すように薄板7を平板状電極5C,5Dに
対して垂直に配置し、かつ薄板7におけるZ軸が電圧印
加方向とほぼ一致するように配置する。Y板について
も、これと同様に薄板7及び平板状電極5C,5Dを配
置することが好ましい。
【0033】なお、表面弾性波(SAW)基板用に好適
な128 °Y板においては、薄板7の主面と垂直に128 °
Y軸が現れる。従って、図1に示すように薄板7を設置
しても、電圧の大きさのうちかなりの部分がZ軸方向に
印加され、若干はY軸方向に印加される。従って、Z板
を単分域化処理するのにくらべて少し大きな電圧を印加
し、Z軸方向への印加電圧の目減りを補償すれば、問題
なく単分域化処理を行える。
【0034】そして、図2に示す容器8も、本発明に従
い、含有金属原子のうち98原子%以上がマグネシウム
であるマグネシアセラミックスから形成する。
【0035】次に、ニオブ酸リチウム単結晶のVTE処
理用容器に本発明を適用した例について述べる。図5
は、こうしたVTE処理用容器を示す断面図である。
【0036】容器28は、本体22と蓋21とから構成
されている。本体22の上側開口に蓋21が被せられて
いる。本体22の外形は、例えば略円筒状、略立方体
状、略直方体状であり、本体22の上端面22aに、蓋
21の縁部21dが載置されている。蓋21の縁部21
dの内側に段差部21aが形成されており、段差部21
aが、容器28の内側空間内に突き出ている。段差部2
1aの周囲に側周面21cが設けられている。
【0037】上端面22a及び縁部21dは共に精度良
く研磨加工し、かつ互いの平行度を上げるようにした。
これにより、内側空間内の気密性が上がり、揮発性成分
が容器28の外に逃げないようになった。本体22内
に、所定組成のニオブ酸リチウム粉末6が収容される。
【0038】コングルエント組成のニオブ酸リチウム単
結晶からなる薄板7が所定枚数、粉末6中に埋設されて
いる。各薄板7は、側壁面22bに対して略平行であ
り、底壁面22c、表面21bに対して略垂直である。
こうした熱処理装置において、容器28を本発明に従っ
て形成する。
【0039】図5に示す熱処理装置を用いてVTE処理
を行う際には、薄板7を構成する単結晶のキュリー温度
の変化に応じて、熱処理温度を段階的に変化させること
が好ましい。
【0040】図1,図2,図5に示した各容器において
は、いずれも粉末6中に薄板7の全体を埋設した。しか
し、粉末6の上に薄板7を載せるようにしてもよいし、
粉末6中に薄板7の一部分を埋設させ、かつ一部分を露
出させてもよい。
【0041】以下、更に具体的な実験結果について述べ
る。 (実験1)Li2Oが48.6mol %であるニオブ酸リチウム単
結晶からなる直径3インチの円柱状物をチョクラルスキ
ー炉から引き上げ、長さ100 mmの円柱状物を得た。これ
を焼鈍処理し、内周刃で切断し、所定厚さの薄板を得
た。この薄板について、Z面を光学研磨処理し、縦20
mm、横10mmの長方形状の試料を得た。
【0042】下記の各材料からなる立方体形状の熱処理
用容器を製造し、この中に試料を置いた。そして、それ
ぞれ電気炉内に入れ、1230℃で14時間熱処理し、試料
の周辺を目視で確認した。熱処理用容器の材料として
は、含有金属原子のうち99,98,97原子%がマグ
ネシウムからなるマグネシアセラミックス、アルミナ、
シリカ、ジルコニア、ムライト、ロジウムを使用した。
【0043】この結果、マグネシウムの含有率が98,
99原子%であるマグネシアセラミックスを用いた場合
は、ニオブ酸リチウム単結晶との反応が見られず、気密
状態も保持された。マグネシウムの含有率が97原子%
であるマグネシアセラミックス、アルミナ、シリカ、ジ
ルコニア、ムライトを用いた場合は、単結晶が一部溶解
し、かつ容器にも一部溶解が見られた。ロジウムを用い
た場合には、上記試料にロジウムが顕著に拡散し、透明
なニオブ酸リチウム単結晶がピンク色に着色した。これ
は、光導波路基板を製造するときに、光学特性に悪影響
をもたらす。
【0044】次に、マグネシウムの含有率が98原子
%、99原子%であるマグネシアセラミックスで容器を
形成した上記の例について、試料をX線線分析した。こ
の結果、試料表面に深さ500μm に亘って、最大で3
00ppm の拡散が見られた。従って、この部分について
は、研削加工が必要であると考えられる。
【0045】(実験2)含有金属原子のうち98原子
%、99原子%がマグネシウムからなるマグネシアセラ
ミックスによって熱処理用容器を形成し、この中に、実
験1における試料を置いた。この熱処理用容器を電気炉
内に入れ、1260℃まで温度を上昇させた。コングルエン
ト組成のニオブ酸リチウムの融点は1253℃なので、単結
晶は溶解したが、容器の反応は見られなかった。
【0046】(実験3)図1に示す熱処理装置を用い、
実験1における薄板(試料)をVTE処理及び単分域化
処理した。
【0047】平板状電極5A,5Bの材質は、厚さ1mm
の白金とした。Li2Oが50mol %であるニオブ酸リチウ
ムの粉末を、粉末6として用いた。容器8内の粉末6を
圧縮成形して粉末6の高さを30mmに揃え、試料7間の
間隙を埋め、焦電によるクラック発生を防止した。
【0048】そして、平板状電極5A,5Bに直径0.5
mmの白金リード線3A,3Bを接続し、蓋1と白金リー
ド線3A,3Bとの間隙をアルミナセメント4で封止し
た。容器8の材質としては、含有金属原子のうち99,
98,97原子%がマグネシウムからなるマグネシアセ
ラミックス、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ムライト
を用いた。
【0049】このようにして、図3に示す熱処理スケジ
ュール11、電圧印加スケジュール12に従って処理を
行った。即ち、容器8を電気炉内に入れ、100 ℃/時間
の速度で昇温させ、1175℃に到達させた。この6時間後
に電圧の印加を開始し、電圧の値を上昇させ、6時間か
けて所望の電圧を印加した。
【0050】1175℃で54時間保持した後、50℃/時
間の降温速度で室温まで冷却した。この後、3時間かけ
て印加電圧を0Vにした。印加電圧の大きさは、一対の
平板状電極5Aと5Bとの間に介在する粉末1cm当た
り、1Vとした。
【0051】各例について、VTE処理後の単結晶のキ
ュリー温度、単分域判定、試料におけるクラックの有
無、容器の反応の有無を測定した。単結晶のキュリー温
度Tcは、DTA装置を用いて測定した。また、単結晶
のドメインが単分域化していた場合には、「単分域判
定」の項目を「○」と表示した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】表1から解るように、本発明では、容器8
が蒸気や粉末6と反応せず、気密状態が保たれていた。
また、容器8と薄板7の間に粉末6が介在しているの
で、実験1で見られた薄板表面への拡散も、全くなかっ
た。
【0054】これに対し、アルミナ、シリカ、ジルコニ
ア、ムライトなどを用いた場合には、容器が粉末6や蒸
気と反応しており、気密性が失われたため、単結晶のV
TE処理が阻害されている。この結果、単結晶のキュリ
ー温度が低くなっている。
【0055】(実験4)実験3と同様の方法で、上記の
試料をVTE処理及び単分域化処理した。容器8の材質
としては、含有金属原子のうち99原子%、98原子%
がマグネシウムからなるマグネシアセラミックスを用い
た。また、粉末6としては、Li2Oが47.2mol %である粉
末を用いた。
【0056】ただし、図4に示す熱処理スケジュール1
3、電圧印加スケジュール14に従って処理を行った。
即ち、容器8を電気炉内に入れ、100 ℃/時間の速度で
昇温させ、1175℃に到達させた。この6時間後に電圧の
印加を開始し、電圧の値を上昇させ、6時間かけて所望
の電圧を印加した。
【0057】1175℃で36時間保持した後、50℃/時
間の降温速度で室温まで冷却した。この後、3時間かけ
て電圧を0Vにした。
【0058】この結果、単結晶のキュリー温度Tcは10
90℃にまで低下していた。また、薄板7にクラックは生
じておらず、容器8も蒸気や粉末6と反応していなかっ
た。
【0059】(実験5)図5に示す熱処理装置を用い、
実験1における薄板(試料)をVTE処理した。ただ
し、この薄板は予め単分域化処理した。粉末6として
は、Li2Oが50mol%であるニオブ酸リチウム粉末を用
いた。容器28の材質としては、含有金属原子のうち9
9,98,97原子%がマグネシウムからなるグネシア
セラミックス、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ムライ
トを用いた。
【0060】図5に示すように薄板7をセットした後、
容器28を電気炉内に入れ、100 ℃/時間の速度で昇温
させ、1140℃に到達させた。そして、1140℃から10℃
/時間の速度で昇温させ、3.5 時間後に1175℃に到達さ
せ、1175℃で30時間保持した。各例について、VTE
処理後の単結晶のキュリー温度、単分域判定、試料にお
けるクラックの有無、容器の反応の有無を測定した。こ
の結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】表2から解るように、本発明では、容器8
が蒸気や粉末6と反応せず、気密状態が保たれていた。
また、単結晶のキュリー温度からみても、マグネシウム
等の単結晶への拡散は全く生じていない。
【0063】また、通常のニオブ酸リチウム粉末の製造
プロセスでは、仮焼温度は例えば950 ℃程度であり、焼
成温度は例えば1050℃程度であり、上記の各実験例にお
ける各熱処理温度よりかなり低い。従って、本発明の熱
処理用容器をニオブ酸リチウム粉末の製造プロセスに使
用すると、熱処理用容器中の成分やコンタミネーション
成分がニオブ酸リチウム粉末中に固溶されるといった問
題は皆無となる。従って、組成のバラツキやコンタミネ
ーションのない、優れたニオブ酸リチウム粉末を製造で
きる。
【0064】(実験5)含有金属原子のうち99原子
%、98原子%がマグネシウムからなるマグネシアセラ
ミックスによって熱処理用容器を形成した。そして、実
験3と同様にして、1480℃で、タンタル酸リチウム
単結晶をVTE処理及び単分域化処理した。この場合
も、蒸気やタンタル酸リチウム粉末は、熱処理用容器と
は反応しないことを確認した。
【0065】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の熱処理容器
は、VTE処理等の、高温における熱処理でニオブ酸リ
チウムやタンタル酸リチウムと反応せず、また白金容器
よりも低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) は、容器8内で薄板7をVTE処理及び単
分域化処理している状態を概略的に示す断面図、(b)
は、(a) のIb−Ib線矢視断面図である。
【図2】容器8内で薄板7をVTE処理及び単分域化処
理している状態を概略的に示す断面図である。
【図3】熱処理スケジュール及び電圧印加スケジュール
の例を示すグラフである。
【図4】熱処理スケジュール及び電圧印加スケジュール
の例を示すグラフである。
【図5】容器28内で薄板7をVTE処理している状態
を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
1,21 蓋 1a,21a 段差部 2,22 容器本体 3A, 3B 電力供給用のリード線 5A, 5B, 5C, 5D 平板状電極 6 粉末 7 薄板 8,28 容器 11, 13 熱処理スケジュール 12, 14 電圧印加スケジュール

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともニオブ酸リチウム又はタンタ
    ル酸リチウムを収容し、熱処理するための容器であっ
    て、含有金属原子のうち98原子%以上がマグネシウム
    である気密質のマグネシアセラミックスからなる熱処理
    用容器。
  2. 【請求項2】 ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸
    リチウム単結晶からなる材料と、この単結晶の組成と異
    なる所定組成を有するニオブ酸リチウム又はタンタル酸
    リチウムの粉末とを収容し、熱処理することによって、
    前記単結晶の組成を変化させるために使用される、請求
    項1記載の熱処理用容器。
  3. 【請求項3】 ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸
    リチウム単結晶からなる材料を熱処理しつつ電圧を印加
    することによって、前記単結晶に単分域ドメインを形成
    するために使用される、請求項1記載の熱処理用容器。
  4. 【請求項4】 ニオブ酸リチウム粉末又はタンタル酸リ
    チウム粉末を製造するために使用される、請求項1記載
    の熱処理用容器。
  5. 【請求項5】 ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸
    リチウム単結晶からなる材料の初期組成を変化させるこ
    とによって、目的組成の単結晶を製造するための装置で
    あって、 含有金属原子のうち98原子%以上がマグネシウムであ
    る気密質のマグネシアセラミックスからなる気密性の熱
    処理用容器; この熱処理用容器内に収容された、前記材料の初期組成
    と異なる組成を有するニオブ酸リチウム又はタンタル酸
    リチウムの粉末;及び この粉末中に埋設された前記材料を有しており、 前記熱処理容器中で前記粉末および前記材料を熱処理す
    ることで、前記材料の前記初期組成を前記目的組成へと
    変化させることを特徴とする、単結晶の製造装置。
  6. 【請求項6】 前記粉末中に埋設された、互いに対向す
    る一対の板状電極; および前記一対の板状電極に電力を供給するための部材
    を有しており、 前記材料が前記一対の板状電極の間に埋設されており、
    前記熱処理容器中で前記粉末および前記材料を熱処理す
    ると共に前記一対の板状電極に電力を供給することで、
    前記材料の前記初期組成を前記目的組成へと変化させて
    単結晶を得ると共にこの目的組成の単結晶の単結晶ドメ
    インを単分域化させることを特徴とする、請求項5記載
    の単結晶の製造装置。
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