JP2829552B2 - ガス検知素子 - Google Patents

ガス検知素子

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は小型化が容易で生産性の
高い厚膜タイプのガス検知素子に関するものであり、更
に詳しくは基板と感応部及び基板とヒーターとが強固に
密着したガス検知素子とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】大気中でのガス濃度や湿度を検知する手
段として、酸化鉄からなるガスセンサもしくは湿度セン
サを用いればよいことが知られている。なお、以下記載
の内容においては湿度もガス成分のひとつであることか
ら、ガス検知素子の意味するところの中に湿度センサを
含ませるものとする。このようなセンサとしては、バル
ク状の酸化鉄に電極を施し、ヒーターコイルで外部から
加熱するタイプのものなどが公知である。しかし、その
生産性やコストなどの点から、近年、厚膜タイプのガス
センサが検討されている。例えば、図4に示すように基
板1の上面に電極3を設け、これに酸化鉄からなるガス
感応部を設けた構造となっている。この素子はコストや
生産性の点で優れているだけでなく、応答性が早いな
ど、特性面でも優れた特徴を有している。しかしなが
ら、その反面、基板と素子とが剥離しやすいという欠点
があった。また、単に印刷,焼成後の厚膜の密着性が弱
いだけではない。一般に酸化鉄を用いた検知素子は通常
の大気中で長期間使用した場合、素子表面に吸着した水
分や雑ガスを取り除くため、加熱クリーニングされた
り、ガス選択性の向上を図るために素子を200 〜500 ℃
の範囲の最適温度で連続加熱することが行なわれてい
る。
【0003】上記した理由から、ガス検知素子には高温
に長期間さらされたり、急激な熱サイクル負荷が加わる
ことが多い。このような苛酷な状況下では基板と感応部
との間で、両者の熱膨脹係数の差に起因してクラックな
どが発生し、このために感応部が基板から剥離しやすい
といった問題もあった。感応部と基板との密着強度が弱
いと、機械的振動や衝撃などによっても剥離しやすく、
このような感応部と基板との密着性に起因する信頼性上
の問題は厚膜センサを実用化する際の最も重要な課題の
1つとなっていた。
【0004】また、厚膜ヒーターと基板との密着性に関
しても、同様の問題点が指摘されており、こういった問
題点を改善すべく検討が行なわれてきた。例えば、検知
素子の製造工程において、感応部を高温にて焼成せしめ
ることにより、基板と感応層の界面において反応層を生
成させることで、基板との密着性を強固なものとするこ
とが考えられるが、この方法では感応部と基板とを強固
に密着させるのにかなりの高温を必要とするため、感応
組織の焼結の進行や基板からの不純物拡散などにより、
検知特性が劣化してしまうという問題があった。また、
特願昭61−93944号では基板表面に人工的な凹凸
を設けることで、基板と検知部との密着性を高めること
が検討されてきたが、例えば、凹凸面上に厚膜状の電極
やヒーターを印刷して素子を形成した場合に、基板表面
の凹凸により断線や導通不良が生じてしまうなど、実用
上の困難が大きかった。
【0005】そのほか、特願昭57−50648号や特
願昭60−142240号においては、例えば、基板と
感応部との間にSi 2 ,B2 3 などのガラス成分か
らなる密着層を介在させることにより、基板と感応部と
の密着性を改善するなどの方法が提案されているが、こ
ういったガラス成分を含む密着層の場合には、基板と感
応部との密着強度は良好である反面、焼成時のガラス成
分と感応部との反応により感度劣化したり、長期信頼性
においてガラス成分の拡散により、やはり感度が低下す
るという問題があった。こういったことから、従来の厚
膜タイプの検知素子においては、実用上十分な感度特性
や長期の感度維持と機械的強度や熱サイクルなどの熱衝
撃に対する信頼性とを同時に解決することが困難であっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情を
背景にしてなされたものであり、その目的は検知特性を
劣化させることなく、酸化鉄を主材とする感応部と基板
との密着性を強固にしたガス検知素子を提供することに
あり、また、もう1つの目的とするところは、加熱用の
厚膜ヒーターと基板との密着性を改善することで、ヒー
ター寿命の飛躍的向上を図り、長期に渡って安定に動作
するガス検知素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者らは酸化鉄からなるガス検知素子におい
て、感応部と基板との密着性を改善すべく、鋭意研究し
た。その結果、感応部の主材である酸化鉄からなる密着
層を基板と感応部の間に介在させることで、良好な密着
性と実用上十分高い感度を確認した。この酸化鉄からな
る密着層は感応部を積層する前に、予め厚膜印刷法によ
って基板に形成され、1250℃〜1550℃、望ましくは1300
℃〜1450℃で焼付けることにより用意される。次にその
上に、感応部を積層して焼成することで、感応部と基板
とが強固に密着すると共に、良好な感度特性を有するガ
スセンサを得ることができた。
【0008】ここで、密着層の焼付け温度としては、12
50℃以下では密着層に十分な焼結強度が得られず、1550
℃を越えると、逆に基板との反応性が進行し、基板にそ
りなどが生じやすくなる。また、密着層を構成する酸化
鉄の焼結性が進行し過ぎてしまうと、この後で、感応部
を積層して焼成した際、感応部と密着層の反応性が著し
く小さく、十分な密着性が得られない。このように本発
明の特徴は感応部と基板とを密着させるために、密着層
として感応部の主材である酸化鉄を感応部と基板との間
に設けたことにある。このため良好な密着性を実現する
と共に、特性を劣化させる成分の感応部への拡散や反応
物の生成が全くみられず、実用上十分高い感度特性が得
られるに至った。
【0009】更に本発明者らはガス検知素子に設ける加
熱用ヒーターの信頼性の向上にも取り組んだ。この結
果、基板とヒーターの間に、酸化鉄に白金もしくはパラ
ジウムの一種以上を添加した密着層を介在させることに
よって、ヒーターの密着性が格段に向上すると共に、長
期の熱サイクル負荷によっても特性劣化することのない
ガスセンサ加熱用のヒーターを完成させるに至った。こ
こで、白金もしくはパラジウムを用いたのは、融点が高
く、密着層の焼付け温度において溶融もしくは著しい焼
結が起きず、均一で、微粒子状態の分散が維持できるこ
とにある。例えば、融点1063℃の金を用いた場合、金の
著しい粒成長がおきてしまい、密着性の改善は得られな
い。
【0010】また、添加する金属は化学的に安定であ
り、特に大気中で焼成するために耐酸化性が重要であ
る。白金は空気中で加熱しても殆んど変化しないことが
知られており、パラジウムも本焼成温度の範囲では安定
である。しかし、例えば同じ貴金属材料であってもロジ
ウムは1100℃以上に加熱すると揮発性酸化物Rh 2
生成による重量減少がおきることが知られており、イリ
ジウム,ルテニウムも同様に高温で揮発性酸化物を生成
してしまう。したがって、ロジウムなどを用いた場合、
非酸化性雰囲気で焼成しなければならないが、かかる条
件下では、密着層を構成する酸化鉄が還元されてしま
い、導電性をもってしまう。このため、ヒーター部の密
着層としては用いることができない。このように、本発
明においては酸化鉄に対して、白金もしくはパラジウム
を添加し、分散させることが重要である。
【0011】ここで、密着層を構成する酸化鉄に対し
て、添加する白金もしくはパラジウムの量は2 Vol%よ
り少ないと、熱サイクル負荷における長期の信頼性が得
られず、また40 Vol%を越えると、密着層に導通が生じ
てしまい、ヒーターの短絡が生じてしまう。このため、
添加量の範囲は2〜40 Vol%、望ましくは5〜30 Vol%
である。次に、この密着層の焼成温度は1250℃より低い
と主材である酸化鉄と基板との反応性が十分ではなく、
密着層の強度が得られない。また、焼成温度が1600℃を
越えると、逆に酸化鉄と基板との反応性が進行し過ぎて
しまい、基板にそり等が生じてしまうため、実用的では
ない。このため、焼成温度の範囲は1250℃〜1550℃、望
ましくは1300℃〜1450℃である。なお、本発明の組成物
は、酸化鉄に対して、焼結助剤等を感度特性やヒーター
の特性を阻害しない範囲で添加したものも含まれる。ま
た、白金やパラジウムを添加した密着層においては、一
部をイリジウム,ルテニウム,ロジウム,タングステン
などで添加し、合金化して用いることも含まれる。
【0012】
【実施例】以下図面を参照して実施例を説明する。図1
は本発明によるガス検知素子の一実施例の構成図であ
る。なお、ここで図2,図3,図4において、図1と同
一部分については同一符号を付す。4は酸化鉄を主材と
する密着層であり、感ガス層2とアルミナ基板1との間
に設ける。一方、図2及び図3は他の実施例の構成図で
あり、密着層4-1 は酸化鉄に白金もしくはパラジウムを
2〜40 Vol%添加したものである。ここで、5は白金を
含むヒーターである。以下に実施例を説明する。
【0013】実施例1 本実施例では、0及び20 Vol%の白金もしくはパラジウ
ムを添加した酸化鉄にビークルを混合したペーストを密
着層として、厚み0.35 mm のアルミナ基板に印刷し、乾
燥後1200℃〜1600℃で1h焼成した。ここで用いた酸化
鉄は共沈法により硝酸鉄水溶液を炭酸ナトリウムで中和
沈殿し、十分水洗したのち凍結乾燥し、500 ℃で1h大
気中で仮焼して作製した粉末である。なお、このように
して作製した酸化鉄粉末の平均粒子径は200 オングスト
ローム〜1000オングストロームと非常に小さいため、焼
結性に優れている。また白金及びパラジウムの平均粒径
は0.5μmである。続いて、酸化鉄を主成分とする感ガ
ス層、又は白金50 Vol%を含有するヒーター層を、密着
層を施した基板に印刷し、乾燥後、650 ℃で1h焼成し
た。基板と感ガス層,ヒーター層との密着性をテープ剥
離試験により調べたところ、図5の結果を得た。図5に
示されるように、基板と感ガス層との密着性は、密着層
を設けることにより改善されることがわかる。なお、図
において○印は剥離なし、×印は剥離ありを示してい
る。又、基板とヒーター層との密着性は、密着層に白金
もしくはパラジウムを添加することにより、更に強固に
密着することも確認した。密着層の焼成温度は、1200℃
では密着層の強度不足から剥離がみられ、1600℃では基
板にそりがみられた。このため密着層の焼成温度として
は1250℃〜1550℃の範囲が望ましい。
【0014】実施例2 本実施例では、0〜100 Vol %の白金もしくはパラジウ
ムを含む酸化鉄のペーストを密着層としてアルミナ基板
に印刷し、乾燥後、1400℃で1h焼成した。その後、密
着層の導電率を測定するための電極を800℃で1h焼付
けた。図6は密着層の抵抗値の測定結果である。図6に
示す通り、白金やパラジウムの含有量が増加するに従
い、密着層の抵抗値が小さくなっていく傾向が見られ
た。このように密着層の白金やパラジウムの含有量が40
Vol%を越えると密着層に導電性を生じてしまうため、
密着層の白金もしくはパラジウムの含有量としては、40
Vol%以下が望ましい。
【0015】 実施例3 0又は20 Vol%の白金もしくはパラジウムを含む酸化鉄
のペーストを密着層としてアルミナ基板に印刷し、乾燥
後、1300℃で1h焼成した。続いて、ヒーター層を印刷
し、乾燥後、650 ℃で1h焼成して図のヒーター素子
を構成した。このヒーターにヒーター電圧をサイクル印
加し、検知素子を350 ℃と50℃に加熱する熱サイクル試
験を行なった。ヒーター層の室温抵抗と熱サイクル数と
の関係を図7,図8に示す。なお、図7,図8において
丸印は20 Vol%の白金もしくはパラジウムを含んだ密着
層の場合、四角印は白金やパラジウムを含まない下地層
の場合、三角印は比較例として密着層なしの場合であ
る。図に示されるように密着層を施していないヒーター
層の室温抵抗は熱サイクル数の増加に伴なって増加し、
最後には断線してしまった。ところが、白金を含まない
密着層を施した基板に形成したヒーターは、抵抗変化は
あるものの、断線するものは見られなかった。更には、
密着層に白金やパラジウムを添加したものには、ヒータ
ー層の抵抗変化はほとんどみられなかった。上記実施例
によれば、密着層に白金もしくはパラジウムを添加する
ことで、ヒーター層の信頼性を著しく改善できた。
【0016】実施例4 本実施例においては、0〜40 Vol%の白金もしくはパラ
ジウムを含む酸化鉄の密着層を施したアルミナ基板にヒ
ーターと感ガス層とを積層した素子について、熱サイク
ル試験を下記の要領で行なった。まず、0〜40 Vol%の
白金もしくはパラジウムを含む酸化鉄のペーストを密着
層としてアルミナ基板に印刷し、乾燥後、1300℃で1h
焼成した。続いて、ヒーター層,ヒーター層を絶縁する
ための絶縁層,感ガス層の電気信号を取り出すための電
極層,ガスを検知する感ガス層を積層印刷し、乾燥後、
700 ℃で1h同時焼成して、図3の検知素子を構成し
た。この検知素子のヒーターにヒーター電圧をサイクル
印加し、検知部を350 ℃と50℃とにサイクル加熱して、
熱サイクル試験を行なった。ヒーター層の室温抵抗と熱
サイクル数との関係を図9及び図10に示す。なお、図9
は白金を含む密着層の場合、図10はパラジウムを含む密
着層の場合である。図の結果から、ヒーターと感ガス層
とを積層構造にした場合、密着層に含まれる白金もしく
はパラジウム含有量が1 Vol%以下のものは1万回の熱
サイクルでも断線するものがみられ、ヒーター単体で動
作させた場合とは異なる結果が得られた。これはヒータ
ーを積層構造した場合と単体で動作させた場合とでは、
熱衝撃による応力の加わり方が異なるためと思われる。
しかしながら、密着層に白金もしくはパラジウムを2〜
40 Vol%添加したものは、数万回の熱サイクルにおいて
でも断線するものはみられなかった。また、ヒーター抵
抗の変化率は密着層に添加する白金やパラジウム量の増
加に伴ない小さくなる傾向がみられた。上記実施例によ
れば、ヒーターを積層構造にした場合、基板と厚膜ヒー
ターとの間に介在させる密着層に2〜40 Vol%の白金も
しくはパラジウムを添加することで、ヒーター寿命を飛
躍的に改善でき、長期に渡って安定に動作するガス検知
素子を提供できる。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば基
板と感ガス素子との間に感ガス素子成分である酸化鉄を
主材料とする密着層を介在させる構成としたので、ガス
感度を損ねることなく、十分な密着性の得られるガス検
知素子を提供できる。また、加熱用ヒーターと基板との
間に白金もしくはパラジウムを添加した密着層を介在さ
せたことで、ヒーター寿命を飛躍的に改善でき、長期に
渡って安定に動作するガス検知素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガス検知素子の一実施例の構成
図。
【図2】他の実施例の構成図。
【図3】更に他の実施例の構成図。
【図4】従来例を説明する図。
【図5】基板と感ガス層及びヒーター層とのテープ剥離
試験結果を示す図。
【図6】密着層の導電率を示す図。
【図7】白金を含む密着層の熱サイクル試験結果を示す
図。
【図8】パラジウムを含む密着層の熱サイクル試験結果
を示す図。
【図9】白金を含有する場合の熱サイクル試験結果を示
す図。
【図10】パラジウムを含有する場合の熱サイクル試験結
果を示す図。
【符号の説明】
1 基板 2 感ガス層 3 電極 4 密着層 5 ヒーター 6 絶縁層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥村 弘樹 埼玉県熊谷市大字三ケ尻5310番地 秩父 セメント株式会社内 ファインセラミッ クス本部内 (56)参考文献 特開 昭60−170760(JP,A) 特開 昭59−178351(JP,A) 特開 平4−65090(JP,A) 特開 平2−148675(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 27/12 H05B 3/16 H05B 3/20 328

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に設けた酸化鉄からなるガス検知
    素子において、前記基板とガス検知素子との間に酸化鉄
    を主材とする密着層を介在させたことを特徴とするガス
    検知素子。
  2. 【請求項2】 酸化鉄を主材とした密着層の焼成温度が
    1250℃〜1550℃であることを特徴とする請求項1記載の
    ガス検知素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 基板とヒーターとの間に酸化鉄を主材と
    する密着層を介在させたことを特徴とする加熱用ヒータ
    ー。
  4. 【請求項4】 基板とヒーターとの間に酸化鉄を主材と
    する密着層を介在させたことを特徴とする請求項1記載
    のガス検知素子。
  5. 【請求項5】 酸化鉄に白金もしくはパラジウムの1種
    以上を添加することを特徴とする請求項3記載の密着
    層。
  6. 【請求項6】 密着層における白金もしくはパラジウム
    の添加量が2〜40 Vol%であることを特徴とする請求項
    5記載の組成物。
  7. 【請求項7】 焼成温度が1250℃〜1550℃であることを
    特徴とする請求項5記載の密着層の製造方法。
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