JP3018925B2 - 電気化学素子 - Google Patents

電気化学素子

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JP3018925B2
JP3018925B2 JP6275001A JP27500194A JP3018925B2 JP 3018925 B2 JP3018925 B2 JP 3018925B2 JP 6275001 A JP6275001 A JP 6275001A JP 27500194 A JP27500194 A JP 27500194A JP 3018925 B2 JP3018925 B2 JP 3018925B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、濃淡電池酸素センサや
限界電流式酸素センサなどに応用できる酸素イオン導電
性固体電解質利用の電気化学素子であり、1000℃以
下の焼成温度で形成できる白金電極膜の形成方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】酸素イオン導電性固体電解質を利用した
電気化学素子は、濃淡電池式酸素センサや限界電流式酸
素センサなどが一般的に知られており、ジルコニア製酸
素イオン導電性固体電解質の両面に白金電極膜が形成さ
れた構成である。白金電極膜を酸素イオン導電性固体電
解質に形成する方法としては、スパッタ法や無電解メッ
キ法や厚膜印刷法などが一般的に知られている。
【0003】例えば、特開平1−131448号公報で
は、未焼成ジルコニア基板に、白金80重量%とジルコ
ニア20重量%の混合物からなるペーストをスクリーン
印刷し、乾燥後に1350℃で3時間焼成する製法の白
金電極付き焼結ジルコニア基板の酸素センサが記載され
ている。
【0004】また、特開平5−99892号公報では、
固体電解質基板と白金電極の中間に、酸化銅または酸化
ビスマスのバッファー層を介在させた製法の白金電極付
き固体電解質基板のガスセンサが記載されている。図1
2は、従来の電気化学素子の断面図であり、酸素イオン
導電性固体電解質基板1と、その表面に形成した白金電
極膜2a・2bと、固体電解質基板1と電極膜2a・2
bの中間に介在された酸化ビスマスのバッファー層13
から構成される。
【0005】また、特開昭50−25487号公報で
は、酸化ビスマスと酸化イットリウムからなる未焼成固
体電解質に、白金からなる触媒電極分散液を流入させ、
その後固体電解質の焼結温度で焼成(この場合は800
〜950℃で4〜20時間焼成)する製法の白金電極付
き焼結固体電解質が記載されている。
【0006】さらに、特開平1−184457号公報で
は、電極膜が酸素イオン導電性固体電解質に形成された
構成であり、電極膜は白金に耐熱物質が分散された構成
であることが記載されている。
【0007】一方、電気化学素子の利用例である限界電
流式酸素センサとして特公平6−75056号公報があ
る。この公報に記載された限界電流式酸素センサは、両
面に白金電極膜が形成された酸素イオン導電性固体電解
質板と、前記固体電解質板の片側に配置され前記電極膜
を囲むように配置された螺旋型硝子膜と、前記螺旋型硝
子膜の上部に配置されたシール板の積層体からなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来例1の特開平1−
131448号公報の場合、白金とジルコニア混合物か
らなるペースト乾燥膜を未焼成ジルコニア基板に付着さ
せ、1100℃以上で焼成して白金電極付き焼結ジルコ
ニアを得ている。そのため、高温の焼成電気炉を必要と
し、粒成長によるジルコニアの強度低下や白金変質など
高温焼成に付随する問題があった。この高温焼成は、
(1)未焼成ジルコニア基板に白金ペースト乾燥膜を付
着させ1100℃以下で焼成しても、ジルコニアが未焼
結となり特性が得られないこと、(2)焼成ジルコニア
基板に白金ペースト乾燥膜を付着させ1100℃以下で
焼成して、白金電極がジルコニア基板と固着せず特性が
得られないこと、(3)ジルコニア基板の焼成と白金電
極の基盤への固着を同時に行えること、(4)白金電極
とジルコニア基板との固着強度を高めるためには、白金
粒子にジルコニア粒子を混合したペースト膜を必要とす
ること、の理由で採用された製法である。そのため、金
属酸化物系の結合材を使用せずに白金電極をジルコニア
基板に固着しようとすると必然的に、未焼成ジルコニア
基板を使用し、白金粒子にジルコニア粒子を混合した白
金ペースト乾燥膜をこの基板に付着させ1100℃以上
で焼成する製法となり、高温焼成に付随する上記問題の
発生は避けられることであった。
【0009】また、従来例2の特開平5−99892号
公報の場合、固体電解質の焼結基板と白金電極の中間
に、酸化銅または酸化ビスマスのバッファー層を介在さ
せた製法であるため、1100℃以下で焼成できる利点
がある。これは、酸化ビスマスの融点が約850℃、酸
化銅の融点が約1100℃であるため、これら金属酸化
物がその融点温度(1100℃以下)に加熱されること
で、結合材の役割をはたすためである。しかしながら文
献等で紹介されているように、酸化ビスマスは、酸素イ
オン導電性は優れるが還元されやすいため耐久性に乏し
い課題があり、しかも偏析する性質や体積が変化する性
質があるため実際の使用には多くの制限がある。一方、
酸化銅は電気電導性に優れるが酸素イオン導電性に乏し
いことが知られており、酸素イオン導電性固体電解質用
として実用化しにくい課題がある。そのため、酸化ビス
マスまたは酸化銅を固体電解質の焼結基板と白金電極の
中間に介在させた電極構成の場合、1100℃以下で焼
成できる利点がある反面、次の課題があった。 (1)酸化ビスマスの場合、酸化ビスマスが耐久性評価
中に短時間で還元されて材質変化を起こし酸素イオン導
電性が低下するため、耐久性が低下する。 (2)酸化銅の場合、酸化銅が酸素イオン導電性に乏し
いため、特性を確保するのに必要な酸素イオン通過特性
が得られにくい。そのため、それ単独では実用化にしに
くい。 (3)構成品は、白金電極・酸化銅または酸化ビスマス
のバッファー層・固体電解質基板の積層品であり、これ
ら材料は動作温度の約450℃にさらされる。そのた
め、それぞれの材料の膨張係数の違いが原因で、耐久性
評価中に短時間で割れや剥離が発生し、耐久性が低下す
る。特に、酸化ビスマスは偏析や体積膨張の性質がある
ため、割れや剥離が著しく発生し、耐久性が短時間で低
下する。 (4)耐久性評価中に短時間でリード線が電極から剥離
し、電気信号が得られなくなる場合がある。一般に、電
極膜からの電気信号を得るため電極膜に白金リード線
を、硝子系固着材(白金を主成分とし硝子を少量添加し
た材料)を用いその溶融で固着させる。しかし、白金電
極膜には酸化ビスマスが部分的に露出しており、酸化ビ
スマスはその偏析や体積膨張が原因で、硝子との密着性
(ぬれ性)が悪い。またリード線の固着部は、電極・固
体電解質基板・固定材の熱膨張係数が各々異なる。その
ため、リード線が電極から剥離しやすくなるためと思わ
れる。
【0010】また、従来例3の特開昭50−25487
号公報の場合、未焼成固体電解質を使用し、白金ペース
ト乾燥膜をこの基板に付着させ、高温で焼成して白金電
極付き固体電解質焼結体を得ている。この製法は、未焼
成固体電解質を使用する観点において従来例1の製法と
ほぼ同じであり、固体電解質としてジルコニアを用いる
と1100℃以上の高温の焼成電気炉を必要とし、粒成
長によりジルコニアの強度低下や白金変質が起こるなど
高温焼成に付随する課題がある。またこの製法は、構成
はまったく異なるが酸化ビスマスを使用して800〜9
50℃で焼成する観点においては従来例2と類似であ
る。未焼成の酸化ビスマス系固体電解質を使用するた
め、焼成によって白金電極と固体電解質の中間に酸化ビ
スマスのバッファー層が形成されるが、前述同様にこの
酸化ビスマスバッファー層の耐久性が低下する課題があ
る。
【0011】また従来例4の特開平1−184457号
公報のように、電極膜が白金に耐熱物質が分散された構
成である場合、電極膜を1100℃以上で焼成すると、
高熱により耐熱物質が変質して耐熱物質本来の特性が低
下する課題や、白金と耐熱物質が反応して電極本来の特
性が低下する課題がある。一方、電極膜を1100℃以
下で焼成する場合は酸化ビスマスを介在させた構成とな
るが、例えば耐熱物質として酸化錫・酸化ゲルマニウム
・酸化コバルト・酸化第一銅・酸化バナジウム・酸化モ
リブデンなどの半導体材料(酸化ビスマスより融点が僅
かに高いか同程度の半導体)を使用すると、酸化ビスマ
スと反応してその酸素イオン導電性が低下する課題があ
る。そのため、酸化ビスマスを含有させた電極膜の場
合、耐熱物質が誤って混入すると耐久性が低下してい
た。
【0012】一方、従来例5の特公平6−75056号
公報の場合、酸素拡散孔は、螺旋型硝子膜の始端および
終端の両突起と固体電解質板とシール板で囲まれる空間
内に形成される。この構成であるため、次の4つの課題
があった。 (1)固体電解質板およびシール板は反りのないフラッ
トな平面でないと、酸素拡散孔が形成できないため、こ
れら材料はフラットな平面に加工した焼結基板を使用す
る必要があった。従って、酸素イオン導電性の優れた酸
化ビスマスを混合させた白金電極を必要とするが、酸化
ビスマス使用に付随する耐久性低下の課題がある。
【0013】また、限界電流式酸素センサであるため、
カソード電極は酸素分圧10-15 -20 の減圧状態とな
る。酸化ビスマスは、酸素分圧が低い環境下では金属過
剰型のn型半導体であるため、還元が促進され電極の耐
久性が一層低下する。 (2)この構成品は、電極膜の形成工程の後に、螺旋型
硝子膜の形成工程と、螺旋型硝子膜とシール板の固着工
程が有り、電極は3回の焼成工程を経る。焼成のたびに
白金および酸化ビスマスは材質変化を起こし、特性確保
に必要な酸素イオン導電性が低下する課題がある。その
ため、この3回の焼成工程の最中でも、酸素イオン導電
性の低下がない電極が必要とされる。 (3)リード線を取り出す必要性から、螺旋型硝子膜が
白金電極膜の上部に積層する部分がある。硝子膜が、電
極膜の形成後に2回焼成されるため、焼成中に硝子が流
動しこの積層部付近の白金電極膜を覆う危険性がある。
特に、酸化ビスマスが例えば10%以上多く混合させた
白金電極は、酸化ビスマスの偏析により多孔質な電極膜
となっており、硝子が白金電極膜を覆う危険性が高い。
硝子が白金電極膜に覆われるとその酸素イオン導電性が
低下するため、流動硝子に覆われにくい電極膜が必要と
される。 (4)硝子は、電気化学素子の動作温度で軟化しない
事、膨張率が±10%以内において固体電解質板と同じ
である事、所定寸法の酸素拡散孔が螺旋型硝子膜とシー
ル板の固着工程中に形成される事、の制約がある。
【0014】一方、酸化ビスマスは、偏析や体積膨張が
原因で硝子との密着性(ぬれ性)が悪い。そのため、酸
化ビスマスが例えば10%と多く混合された白金電極
は、耐久性評価中に短時間で硝子交差部分において螺旋
型硝子膜が電極から剥離し、この剥離部分から酸素がリ
ークするため限界電流値が初期値と異なる値となるいわ
ゆる誤測定の課題発生が時折ある。また、酸化ビスマス
は、酸化ゲルマニウムなどの半導体材料(酸化ビスマス
より融点が僅かに高いかそれ以下の半導体材料)を接触
すると、化学反応物質が生成しその酸素イオン導電性が
低下する課題がある。
【0015】そのため上記の制約以外に、電極中の酸化
ビスマスとの密着性の良い硝子・酸化ビスマスとの反応
物質を含有しない硝子が必要とされる。
【0016】以上のように、1000℃以下の焼成温度
で固体電解質基板に白金電極を固着させる場合、白金電
極と固体電解質焼結基板の中間に酸素イオン導電性の優
れた酸化ビスマスを介在させた構成とすることが一般的
な製法となる。しかし、従来法では、(1)結合材の役
割をなす酸化ビスマスの材質変化に起因する耐久性低
下、(2)酸化ビスマス・固体電解質基板・白金の膨張
係数の違いに起因する材料割れや剥離、(3)リード線
の電極からの剥離など、実用化に関しての耐久信頼性の
種々の課題があった。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明の電気化学素子は、酸素イオン導電性固体電解質
の焼結基板に白金電極膜を形成させた構成であり、前記
電極膜が、酸化ビスマス単独の結合材または酸化第二銅
もしくは銅の少なくとも一つと酸化ビスマスの混合物の
結合材と、前記固体電解質の焼結体と、白金の混合物か
らなりその組成割合が、酸化ビスマスが1〜7重量%、
酸化第二銅もしくは銅が前記酸化ビスマス量の2倍量を
越えない量、前記固体電解質の焼結体が前記酸化ビスマ
ス量の1倍量以上でありしかも前記白金量の2分の1以
下の量、白金が残部とした。
【0018】また、上記課題を解決するため本発明の電
気化学素子は、両面に白金電極膜が形成された酸素イオ
ン導電性固体電解質の焼結基板と、前記固体電解質基板
の片側に配置され前記電極膜を囲むように配置された螺
旋型硝子膜と、前記螺旋型硝子膜の上部に配置された焼
結性シール板の積層体からなる限界電流式酸素センサ型
構成であり、前記電極膜が、酸化ビスマス単独の結合材
または酸化第二銅もしくは銅の少なくとも一つと酸化ビ
スマスの混合物の結合材と、前記固体電解質の焼結体
と、白金の混合物からなりその組成割合が、酸化ビスマ
スが1〜7重量%、酸化第二銅もしくは銅が前記酸化ビ
スマス量の2倍量を越えない量、前記固体電解質の焼結
体が前記酸化ビスマス量の1倍量以上でありしかも前記
白金量の2分の1以下の量、白金が残部とした。
【0019】また、上記課題を解決するため本発明の電
気化学素子は、両面に白金電極膜が形成された安定化ジ
ルコニア焼結基板と、前記基板の片側に配置され前記電
極膜を囲むように配置された螺旋型硝子膜と、前記螺旋
型硝子膜の上部に配置されたフォルステライト焼結性シ
ール板の積層体からなる限界電流式酸素センサ型構成で
あり、前記電極膜が、酸化ビスマス単独の結合材または
酸化第二銅もしくは銅の少なくとも一つと酸化ビスマス
の混合物の結合材と、白金の混合物からなりその組成割
合が、酸化ビスマスが1〜7重量%、酸化第二銅もしく
は銅の少なくとも一つが前記酸化ビスマス量の2倍量を
越えない量であるとした。
【0020】
【作用】本発明の電気化学素子は、上記構成の白金電極
であるため次の作用が生じる。 (1)酸化ビスマスを有するため電極膜が1000℃以
下の焼成で得られ、しかも酸素イオン導電性・酸素吸着
性能の優れた白金電極膜となる。 (2)酸素イオン導電性固体電解質の焼結体が電極膜に
混合されているため、酸化ビスマスの溶融程度のバラツ
キや偏析に起因する酸素イオン導電性の低下を固体電解
質焼結体の酸素イオン導電性が補う。そのため、酸素イ
オン導電性のバラツキが低減され品質の安定化がはかれ
る。 (3)長期使用により酸化ビスマスが還元され酸素イオ
ン導電性が低下することを、固体電解質焼結体の酸素イ
オン導電性が補うため耐久性が向上する。 (4)酸化ビスマスの偏析や体積膨張による固体電解質
板に対する弱い密着力を、酸化第二銅もしくは銅の強固
な密着力で補なうため、電極の固体電解質に対する密着
力が増加し、しかも酸化ビスマスが比較的均一な分布に
なる。また、酸化ビスマスや酸化第二銅・銅は、その量
を最適化することで熱膨張係数が調整され、これに起因
する剥離が低減し耐久性が向上する。しかも、酸化第二
銅もしくは銅の混合による酸素イオン導電性の低下を固
体電解質焼結体が補うため、酸素イオン導電性に優れた
白金電極膜が得られる。 (5)電極膜に固体電解質焼結体を混合することでリー
ド線固着用固着材にも固体電解質焼結体の一部が分散
し、固体電解質焼結板と固着材と電極の3材料の膨張係
数が比較的近くなり、凹凸形成で表面積が拡大される。
そのため、リード線や電極の剥離が低減し耐久性が向上
する。
【0021】また、本発明の電気化学素子は、上記構成
の積層体からなる限界電流式酸素センサであるため次の
作用が生じる。 (1)酸化ビスマスを有するため電極膜が1000℃以
下の焼成で得られ、しかも酸素イオン導電性・酸素吸着
性能の優れた白金電極膜となる。そのため、低電圧から
限界電流が得られる。 (2)酸素イオン導電性固体電解質の焼結体が電極膜に
混合されているため、酸化ビスマスの溶融程度のバラツ
キや偏析に起因する酸素イオン導電性のバラツキを固体
電解質焼結体の酸素イオン導電性が補う。そのため、酸
素イオン導電性のバラツキが低減され品質の安定化がは
かれる。 (3)長期使用により酸化ビスマスが還元され酸素イオ
ン導電性が低下することを、固体電解質焼結体の酸素イ
オン導電性が補うため耐久性が向上する。 (4)酸素イオン導電性固体電解質の焼結体を電極に混
合することで、3回の焼成工程による酸化ビスマスの溶
融程度バラツキや偏析に起因する酸素イオン導電性の低
下が補われる。そのため、この3回焼成でも酸素イオン
導電性の低下が少ない電極となり、低電圧から限界電流
が得られる。 (5)酸化ビスマスの偏析や体積膨張による固体電解質
板に対する弱い密着力を、酸化第二銅もしくは銅の強固
な密着力で補なうため、電極の固体電解質に対する密着
力が増加し、しかも酸化ビスマスが比較的均一な分布に
なる。また、酸化ビスマスや酸化第二銅・銅は、その量
を最適することで膨張係数が調整され、これに起因する
剥離が低減し耐久性が向上する。しかも、酸化第二銅も
しくは銅の混合による酸素イオン導電性の低下を固体電
解質焼結体が補うため、酸素イオン導電性に優れた白金
電極膜が得られる。 (6)酸化ビスマスや酸化第二銅・銅の混合量の最適化
で、ちみつな電極が得られる。そのため、螺旋型硝子は
流動状態でも電極に進入しにくくなり、硝子の電極膜へ
の影響が減少する。 (7)電極膜に固体電解質焼結体を混合しその量の最適
化で、固体電解質焼結板と螺旋型硝子膜と電極膜の3材
料の膨張係数が比較的近くなる。そのため電極膜と硝子
膜の交差部において、耐久性評価中に短時間で螺旋型硝
子膜が電極から剥離することが低減し、この剥離部分か
ら酸素がリークするいわゆる誤測定の発生が低減され
る。また、電極の剥離が低減し耐久性が向上する。
【0022】また、本発明の電気化学素子は、上記構成
の積層体からなる限界電流式酸素センサであり、上記構
成の電極膜と硝子からなるため次の作用が生じる。 (1)酸化ビスマスを有しているため、電極が1000
℃以下の焼成で得られる。従って、低電圧から限界電流
が得られる。またさらに酸化第二銅もしくは銅の混合
で、電極膜の固体電解質に対する密着力が増加する。 (2)酸化ビスマスや酸化第二銅・銅の混合量の最適化
で、ちみつな電極が得られる。そのため、螺旋型硝子は
流動状態でも電極に進入しにくくなり、硝子の電極への
影響が少なくなる。 (3)硝子は、電極中の酸化ビスマスや酸化第二銅・銅
の密着性が良く、酸化ビスマスとの反応物質を含有しな
いため、電極への悪影響がない。
【0023】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき説明する。
【0024】図1は、第一の実施例である電気化学素子
の断面図である。電気化学素子は、酸素イオン導電性固
体電解質の焼結基板1と、その表面に形成した白金電極
膜2a・2bからなる。電極膜2a・2bは、酸化ビス
マス3および酸化第二銅4の混合物からなる結合材と、
酸素イオン導電性固体電解質の焼結体5と、白金6の混
合物からなる。その組成割合は、酸化ビスマス3が1〜
7重量%、酸化第二銅4が酸化ビスマス量の0〜2倍
量、固体電解質の焼結体5が酸化ビスマス量の1倍量以
上でありしかも白金の2分の1以下の量、白金が残部で
ある。なお、酸化第二銅4は、銅を使用してもよく、酸
化第二銅と銅の混合物でもよい。
【0025】一方、電極膜2a・2bは、白金を主成分
とし硝子を少量添加した固着材7a・7bを用い、リー
ド線8a・8bが固着されている。
【0026】具体例で説明する。 〈実施例1−1〉酸素イオン導電性固体電解質として、
1400℃で約4時間焼結した安定化ジルコニア(Zr
2 の92モル%とY2 3 の8モル%の固溶物)の焼
結体を使用した。この焼結体は、10mm×10mm×
0.35mmt 寸法の基板と、電極に混合させるための
粉末と、この両用途で使用される。
【0027】製法について記す。まず、安定化ジルコニ
アの基板を準備した。次に、酸化ビスマスが2重量%、
安定化ジルコニアが5重量%、白金が93重量%の混合
物粉末に、有機溶剤を添加した白金電極ペーストを準備
した。そして、この安定化ジルコニア基板の両面に厚膜
印刷法を用いて電極ペーストをスクリーン印刷し、乾燥
後に約820℃10分焼成して白金電極膜をその表面に
形成した。最後に、電極膜の端部に白金リード線を、白
金粉末を主成分とし硝子粉末を5%混合した固着材ペー
ストを用いて固定し、約700℃10分焼成して固着し
た。なお、比較のため、酸化ビスマスが10重量%と白
金が90重量%の混合物からなる白金電極ペーストを準
備し、従来例として用いた。
【0028】評価方法について記す。まず、この電気化
学素子にヒータを併設しさらに断熱材で周囲を外包して
500℃に保持する実装体を組み上げた。そして酸素2
0%雰囲気の大気中に放置し、白金リードを介して直流
電圧を印加して場合の電圧電流特性を評価した。電圧電
流特性の測定は、使用初期時と、1.0V電圧印加状態
で1000時間試験された後で、行っている。
【0029】電極膜の電圧電流特性を図2に示す。本発
明の実施例は、従来例と比較して1000時間後でも電
流が多く流れ、耐久性に優れていることがわかる。
【0030】〈実施例1−2〉酸化ビスマスおよび安定
化ジルコニア焼結体の混合量を変化させた白金電極を試
作し、実験を行った。電気化学素子の製法は実施例1−
1と同じである。評価方法は実施例1−1と同じであ
り、印加電圧0.5Vの発生電流を、使用初期時と10
00時間後に各々測定した。
【0031】図3は、酸化ビスマスと安定化ジルコニア
を同量づつ混合した白金電極において、酸化ビスマスの
混合量を変化させた場合の電流特性である。
【0032】初期の電流は、酸化ビスマスの混合量が多
いほど増加するが、約7%を境に減少する傾向を示し
た。その理由は、酸化ビスマスは酸素イオン導電性に優
れているためその混合量が多いほど電流が増加する。し
かしその混合とともに白金混合量が減少するため酸素イ
オンの吸着量が減少し、約7%混合を境に電流が減少す
ると考えられる。
【0033】1000時間後の電流も、同様の傾向であ
り、酸化ビスマスの混合量が多いほど増加するが、約5
%を境に減少する傾向を示した。その理由は、酸化ビス
マスの混合量が多いほど安定化ジルコニアの混合量も増
加し、耐久性の向上が図れるが、酸化ビスマスが多いほ
ど電極が剥離しやすくなるため、約5%混合を境に電流
が減少すると考えられる。
【0034】以上の結果から、酸化ビスマスの混合量を
1〜7重量%とした。 〈実施例1−3〉酸化ビスマス1重量%において安定化
ジルコニア焼結体の混合量を変化させた白金電極を試作
した。電気化学素子の製法は実施例1−1と同じであ
る。評価方法は実施例1−1と同じであり、印加電圧
0.5Vの発生電流を、使用初期時と1000時間後に
各々測定した。
【0035】図4は、酸化ビスマス1重量%において安
定化ジルコニアの混合量を変化させた場合の電流特性で
ある。
【0036】初期の電流は、安定化ジルコニアの混合量
が1重量%までは増加するが、1重量%を境に減少する
傾向を示した。その理由は、安定化ジルコニアを混合す
ると、その優れた酸素イオン導電性により電流が増加す
るが、混合量が多くなるにつれ白金混合量が減少するた
め酸素イオンの吸着量が減少し、電流が減少すると考え
られる。
【0037】1000時間後の電流は、安定化ジルコニ
アの混合量が多いほど増加するが、約10%を境に減少
する傾向を示した。その理由は、安定化ジルコニアは酸
素イオン導電性に優れているためその混合量が多いほ
ど、酸化ビスマスの材質変化に起因する電流低下を補う
が、それにともない白金混合量も減少するため約10%
を境に電流が減少すると考えられる。
【0038】以上の結果から安定化ジルコニアの混合量
は、1〜30重量%が適切であり、これは酸化ビスマス
量の1倍量以上でありしかも白金の2分の1以下の量で
あった。
【0039】〈実施例1−4〉酸化ビスマス7重量%に
おいて安定化ジルコニア焼結体の混合量を変化させた白
金電極を試作した。電気化学素子の製法は実施例1−1
と同じである。評価方法は実施例1−1と同じであり、
印加電圧0.5Vの発生電流を、使用初期時と1000
時間後に各々測定した。
【0040】図5は、酸化ビスマス7重量%において安
定化ジルコニアの混合量を変化させた場合の電流特性で
ある。
【0041】初期の電流は、安定化ジルコニアの混合量
が7重量%までは増加するが、7重量%を境に減少する
傾向を示した。その理由は、安定化ジルコニアを混合す
ると、その優れた酸素イオン導電性により電流が増加す
るが、混合量が多くなるにつれ白金混合量が減少するた
め酸素イオンの吸着量が減少し、電流が減少すると考え
られる。
【0042】1000時間後の電流は、安定化ジルコニ
アの混合量が多いほど増加するが、約20%を境に減少
する傾向を示した。その理由は、安定化ジルコニアは酸
素イオン導電性に優れているためその混合量が多いほ
ど、酸化ビスマスの材質変化に起因する電流低下や電極
剥離をカバーするが、それにともない白金混合量も減少
するため約20%を境に電流が減少すると考えられる。
【0043】以上の結果から、安定化ジルコニアの混合
量は、1〜30重量%が適切であり、これは酸化ビスマ
ス量の1倍量以上でありしかも白金の2分の1以下の量
であった。
【0044】〈実施例1−5〉酸化ビスマス−安定化ジ
ルコニア焼結体−酸化第二銅の白金電極において、酸化
第二銅の混合量を変化させた白金電極を試作した。電気
化学素子の製法は実施例1−1と同じであるが、電極の
焼成は750〜950℃で10分であり、酸化第二銅の
混合量が多いほど焼成温度を高くした。評価方法は実施
例1−1と同じであり、印加電圧0.5Vの発生電流
を、使用初期時と1000時間後に測定した。
【0045】図6は、酸化ビスマス−安定化ジルコニア
焼結体−酸化第二銅の白金電極において、酸化第二銅の
混合量を変化させた場合の電流特性である。
【0046】初期の電流は、酸化第二銅の混合量が多い
ほど減少する傾向を示した。その理由は、酸化第二銅は
酸素イオン導電性に劣るため、混合量が多くなるにつれ
酸素イオン導電性が減少し、電流が減少すると考えられ
る。
【0047】1000時間後の電流は、酸化第二銅を酸
化ビスマス量の2倍量まで混合させてもさほど減少しな
いが、それ以上添加すると大幅に減少する傾向を示し
た。その理由は、酸化ビスマスおよび酸化第二銅の材質
変化に起因する電流低下を安定化ジルコニア焼結体がカ
バーするが、酸化第二銅が酸化ビスマス量の2倍量以上
混合されると電極の剥離が生じて安定化ジルコニア焼結
体でカバーできなくなり、電流が大幅に減少すると考え
られる。
【0048】図7は、酸化ビスマス−安定化ジルコニア
焼結体−酸化第二銅においてその混合量が異なる白金電
極において、酸化第二銅の混合量を変化させた場合の電
流特性である。
【0049】初期の電流は、酸化第二銅の混合量が多い
ほど減少する傾向を示した。その理由は、酸化第二銅は
酸素イオン導電性に劣るため、混合量が多くなるにつれ
酸素イオン導電性が減少し、電流が減少すると考えられ
る。
【0050】1000時間後の電流は、酸化第二銅を酸
化ビスマス量の2倍量以上混合すると大幅に減少する傾
向を示した。その理由は、酸化ビスマスおよび酸化第二
銅の材質変化に起因する電流低下を安定化ジルコニア焼
結体がカバーするが、酸化第二銅が酸化ビスマス量の2
倍量以上混合されると電極の剥離が生じて安定化ジルコ
ニア焼結体でカバーできなくなり、電流が大幅に減少す
ると考えられる。
【0051】以上の結果から、酸化第二銅の混合量は、
酸化ビスマス量の2倍量以下とした。
【0052】またこの結果から好ましくは、酸化第二銅
の混合量は、酸化ビスマス量の1倍量以下とした。
【0053】〈実施例1−6〉酸化ビスマス−安定化ジ
ルコニア焼結体−銅の白金電極において、銅の混合量を
変化させた白金電極を試作した。電気化学素子の製法は
実施例1−1と同じであるが、電極の焼成は750〜9
50℃で10分であり、銅の混合量が多いほど焼成温度
を高くした。評価方法は実施例1−1と同じであり、印
加電圧0.5Vの発生電流を、使用初期時と1000時
間後に測定した。
【0054】図8は、酸化ビスマス−安定化ジルコニア
焼結体−銅の白金電極において、銅の混合量を変化させ
た場合の電流特性である。
【0055】初期の電流は、銅の混合量が多いほど減少
する傾向を示した。その理由は、銅は加熱すると大部分
は酸化第二銅に変化する。酸化第二銅は酸素イオン導電
性に劣るため、混合量が多くなるにつれ酸素イオン導電
性が減少し、電流が減少すると考えられる。
【0056】1000時間後の電流は、銅を酸化ビスマ
ス量の2倍上混合すると大幅に減少する傾向を示した。
その理由は、酸化ビスマスおよび銅(加熱により酸化第
二銅に変化している)の材質変化に起因する電流低下を
安定化ジルコニア焼結体がカバーするが、銅が酸化ビス
マス量の2倍量以上混合されると電極の剥離が生じて安
定化ジルコニア焼結体でカバーできなくなり、電流が大
幅に減少すると考えられる。
【0057】以上の結果から、銅の混合量は、酸化ビス
マス量の2倍量以下とした。またこの結果から好ましく
は、銅の混合量は酸化ビスマス量の1倍量以下とした。
【0058】〈実施例1−7〉酸素イオン導電性固体電
解質として、1200℃で約4時間焼結した酸化ビスマ
ス系固体電解質(Bi2 3 の75モル%とY2 3
25モル%の固溶物)の焼結体を使用した。この焼結体
は、10mm×10mm×0.35mmt 寸法の基板
と、電極に混合させるための粉末と、の両用途で使用さ
れる。
【0059】製法について記す。まず、酸化ビスマス系
固体電解質の基板を準備した。次に、酸化ビスマスが2
重量%、酸化ビスマス系固体電解質が5重量%、白金が
93重量%の混合物に、有機溶剤を添加した白金電極ペ
ーストを準備した。そして、この酸化ビスマス系固体電
解質の基板の両面に厚膜印刷法を用いて電極ペーストを
スクリーン印刷し、乾燥後に約820℃10分焼成して
白金電極膜をその表面に形成した。電極膜の面積は35
mm2 であり、膜厚は約10μmである。最後に、電極
膜の端部に白金リード線を、白金粉末を主成分とし硝子
粉末を少量添加した固着材ペーストを用いて固定し、約
700℃10分焼成して固着することで電気化学素子の
完成である。
【0060】実施例の電気化学素子の電圧電流特性を図
9に示す。本発明の実施例は、初期電流が多く流れしか
も1000時間後でも電流が多く流れることがわかる。
【0061】〈実施例1−8〉酸素イオン導電性固体電
解質として、1400℃で約4時間焼結した酸化セリウ
ム系固体電解質(BaCe0.8 Gd0.2 3 ・α)の焼
結体を使用した。この焼結体は、10mm×10mm×
0.35mmt 寸法の基板と、電極に混合させるための
粉末と、の両用途で使用される。
【0062】製法について記す。まず、酸化セリウム系
固体電解質の基板を準備した。次に、酸化ビスマスが2
重量%、酸化セリウム系固体電解質が5重量%、白金が
93重量%の混合物に、有機溶剤を添加した白金電極ペ
ーストを準備した。そして、この酸化セリウム系固体電
解質の基板の両面に厚膜印刷法を用いて電極ペーストを
スクリーン印刷し、乾燥後に約820℃10分焼成して
白金電極膜をその表面に形成した。最後に、電極膜の端
部に白金リード線を、白金粉末を主成分とし硝子粉末を
少量添加した混合物ペーストを用いて固定し、約700
℃10分焼成して固着することで電気化学素子の完成で
ある。
【0063】実施例の電気化学素子の電圧電流特性を図
9に示す。本発明の実施例は、初期電流が多く流れしか
も1000時間後でも電流が多く流れることがわかる。
【0064】以上の結果を整理すると、電極膜は、酸化
ビスマスが1〜7重量%に対して、酸化第二銅または銅
の量が酸化ビスマス量の0〜2倍量、安定化ジルコニア
が酸化ビスマス量の1倍量以上でありしかも白金の2分
の1以下の量の組成範囲において、良好な耐久特性を示
している。
【0065】この組成範囲の実施例結果を整理したとこ
ろ本発明は、次のことが判明した。 (1)酸化ビスマスを有するため1000℃以下の焼成
で、酸素イオン導電性・酸素吸着性能の優れた白金電極
膜が得られた。 (2)酸素イオン導電性固体電解質の焼結体を電極膜に
混合すると電流が増加し、品質の安定化がはかれた。こ
れは、酸化ビスマスの溶融程度のバラツキや偏析に起因
する酸素イオン導電性の低下を固体電解質焼結体の酸素
イオン導電性が補うためと思われる。 (3)耐久性が向上した。これは、長期使用により酸化
ビスマスが還元され酸素イオン導電性が低下すること
を、固体電解質焼結体の酸素イオン導電性が補うためと
思われる。また、電極膜に酸化ゲルマニウムなどの半導
体材料が誤って混入した場合でも、この半導体材料混入
に起因する耐久性劣化を、固体電解質焼結体が補うた
め、耐久性が向上した。 (4)酸化ビスマスや酸化第二銅・銅は、その量を最適
することで膨張係数を調整し、これに起因する剥離が低
減して耐久性が向上した。これは、酸化ビスマスの偏析
や体積膨張による固体電解質板に対する弱い密着力を、
酸化第二銅もしくは銅の強固な密着力で補なうため、電
極の固体電解質に対する密着力が増加し、しかも酸化ビ
スマスが比較的均一な分布になるためと思われる。ま
た、酸化第二銅もしくは銅の混合による酸素イオン導電
性の低下を固体電解質焼結体が補うため、酸素イオン導
電性に優れた白金電極膜が得られる。 (5)リード線や電極膜の剥離が低減し、耐久性が向上
した。これは、電極に固体電解質焼結体を混合すること
でリード線固着用硝子に固体電解質焼結体の一部が分散
し、固体電解質焼結板とリード線固着用硝子と電極の3
材料の膨張係数が比較的近くなること、凹凸形成で表面
積が拡大されること、のためと思われる。 (6)動作温度が350〜550℃において、優れた電
流特性の白金電極膜が得られた。これは、350以下℃
では酸化ビスマスの酸素イオン導電性が大きすぎて特性
が得られないため、550℃以下では酸化ビスマスや酸
化第二銅・銅の密着力が低下して剥離しやすくなり耐久
性が確保できないためである。
【0066】図10は、第二の実施例である電気化学素
子の一部破断斜視図である。電気化学素子は、酸素イオ
ン導電性固体電解質の焼結板1と、その表面に形成した
白金電極膜2aと2b(記載せず)と、固体電解質板1
の片側に配置され電極膜2aを囲むように配置された螺
旋型硝子膜9と、螺旋型硝子膜9の上部に配置された焼
結性シール板10の積層体からなり、酸素濃度を検知す
る限界電流式酸素センサ型構成である。この構成におい
て、酸素拡散孔11は、螺旋型硝子膜9の始端および終
端の両突起と固体電解質板1とシール板10で囲まれる
空間内に形成される。また、焼結性シール板10には、
加熱部12が併設されている。
【0067】一方、電極膜2a・2bは、酸化ビスマス
単独の結合材、または酸化第二銅もしくは銅の少なくと
も一つ酸化ビスマスを混合した結合材と、酸素イオン導
電性固体電解質の焼結体と、白金の混合物からなる。そ
の組成割合は、酸化ビスマスが1〜7重量%、酸化第二
銅もしくは銅が前記酸化ビスマス量の0〜2倍量、前記
固体電解質の焼結体が前記酸化ビスマス量の1倍量以上
でありしかも前記白金の2分の1以下の量、白金が残部
である。
【0068】次に具体的実施例にもとづいて説明する。 〈実施例2−1〉構成材料について記す。
【0069】固体電解質は、1400℃で約4時間焼結
した安定化ジルコニア(ZrO2 の92モル%とY2
3 の8モル%の固溶物)の焼結体である。この焼結体
は、10mm×10mm×0.35mmt 寸法の基板1
と、電極膜に混合させるための焼結体の粉末と、の両用
途で使用される。
【0070】白金電極膜2a・2bは、酸化ビスマスが
2重量%、安定化ジルコニアが5重量%、白金が93重
量%の混合物である。
【0071】シール板10はフォルステライトの焼結体
であり、熱膨張係数が±10%以内において安定化ジル
コニアと同じである。加熱部12は、白金ヒータであ
る。
【0072】螺旋型硝子膜9は、酸化珪素が55〜65
重量%であり、酸化アルミナ・酸化ホウソ・酸化カリウ
ム・酸化ナトリウム・酸化カルシウム・酸化ストロンチ
ウム・酸化バリウム・酸化チタンを各々2〜12重量%
含有している硝子である。この硝子膜9は耐熱衝撃性を
向上させるために、熱膨張係数が安定化ジルコニアの
0.75〜1.0倍であり、約30μm粒径の耐熱性粒
子(酸化チタン)が微量含有されている。
【0073】製法について記す。製法は4段階からな
る。第1段階は、白金電極膜の形成である。まず、安定
化ジルコニアの基板を準備した。次に、上記化合物の混
合物粉末に有機溶剤を添加した白金電極ペーストを準備
した。そして、この安定化ジルコニア基板1の両面に厚
膜印刷法を用いて電極ペーストをスクリーン印刷し、乾
燥後に約820℃10分焼成して白金電極膜2a・2b
をその表面に形成した。
【0074】第2段階は、螺旋型硝子膜の形成である。
まず、上記組成品に有機溶剤を添加した硝子ペーストを
準備した。そして、白金電極膜を形成した安定化ジルコ
ニア基板1の片側に、厚膜印刷法を用いて硝子ペースト
をスクリーン印刷し、乾燥後に約820℃10分焼成し
て螺旋型硝子膜9を形成した。
【0075】第3段階は、酸素拡散孔の形成である。安
定化ジルコニア基板1とシール板10を螺旋型硝子膜9
を介して積層し、積層体を約820℃10分焼成した。
焼成により硝子膜9が溶融し、螺旋型硝子膜9の始端お
よび終端の両突起と安定化ジルコニア基板1とシール板
10で囲まれる空間内が形成され、この空間が酸素拡散
孔である。なお、シール板10には、白金ヒータとなる
加熱部12を予め形成しておいた。
【0076】第4段階は、白金リード線の取り付けであ
る。電極膜の端部に白金リード線を、白金粉末を主成分
とし硝子粉末を少量添加した固着材ペーストを用いて固
定し、約700℃10分焼成して固着した。
【0077】評価方法について記す。まず、この電気化
学素子の周囲を断熱材で外包した実装体を組み上げた。
次に酸素20%雰囲気の大気中に放置し、加熱部のヒー
タで500℃に保持した。そして、白金リードを介して
直流電圧を印加した場合の電圧電流特性を評価した。電
圧電流特性の測定は、使用初期時と、1.0V電圧印加
状態で1000時間放置された後の、2回行っている。
【0078】電極膜の電圧電流特性を図11に示す。本
発明は、限界電流式酸素センサであるため、印加電圧
0.4V以上において電流値が一定となる特性を示す。
電流値が電圧値に関わらず一定値を示す理由は、酸素拡
散孔によって酸素の流入が制限されるためであり、その
電流値の大きさは酸素拡散孔の大きさで支配される。一
方、印加電圧0.4V以下は、印加電圧により電流値が
変化する挙動を示しており、白金電極膜の電圧電流特性
を表している。
【0079】本発明の実施例は、0.5Vの電源が10
00時間後でも初期値と同じであり、しかも限界電流を
示していることより、電極膜の劣化が少ないこと、硝子
膜の劣化(酸素拡散孔の寸法変化)がないことがわか
る。
【0080】一方、従来電極(酸化ビスマスが10重量
%と白金が90重量%の混合物)は、初期のみ限界電流
を示したが、1000時間放置後は0.5Vの電流が大
きく低下しさらにどの電圧でも限界電流を示さなかっ
た。0.5Vの電流が大きく低下していることより電極
膜の劣化が大きいこと、1.5Vでも限界電流が得られ
ないことより硝子膜の劣化(酸素拡散孔の寸法変化)が
あることがわかる。
【0081】〈実施例2−2〉白金電極膜中の各々の混
合量を変化させ、限界電流式酸素センサ構造の電気化学
素子を試作した。電気化学素子の製法は前述の実施例2
−1と同じであるが、電極の焼成は750〜950℃で
10分であり、酸化銅または銅の混合量が多いほど焼成
温度を高くした。螺旋型硝子膜は750〜850で10
分焼成しており、電極膜の焼成温度と同温度もしくはそ
れ以下の温度となるようにした。また、この限界電流式
酸素センサ構造で得られる限界電流は、酸素拡散孔のバ
ラツキを考慮して82〜155μAとし、これより極端
に大きいサンプルと小さいサンプルは検討より除外し
た。評価方法は実施例と同じであり、印加電圧0.5
Vの発生電流を、使用初期時と1000時間後に測定し
た。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】表1および表2は、酸化ビスマス単独かさ
らに酸化第二銅または銅を混合した結合材と、安定化ジ
ルコニアと、白金の混合物からなる白金電極膜におい
て、各々の混合量を変化させた場合の電流特性である。
【0085】いずれの電極も1000時間後において、
印加電圧0.5V電流値は初期値と同じであり、しかも
限界電流が得られている。印加電圧0.5Vにおいて電
流値が初期値と同じであることより、電極膜の劣化が少
ないことがわかる。また、この電流値は限界電流値であ
りしかも初期値とほぼ同じであることより、硝子膜の劣
化(酸素拡散孔の寸法変化)がないことがわかる。
【0086】〈実施例2−3〉酸素イオン導電性固体電
解質として、1400℃で約4時間焼結した酸化セリウ
ム系固体電解質(BaCe0.8 Gd0.2 3 ・α)の焼
結体、1200℃で約4時間焼結した酸化ビスマス系固
体電解質(Bi2 3 の75モル%とY2 3の25モ
ル%の固溶物)の焼結体を使用して、限界電流式酸素セ
ンサ構造の電気化学素子を各々試作した。
【0087】電気化学素子の製法は、次の変更点以外は
前述の実施例2−1と同じである。固体電解質板基板1
は、上記組成の固体電解質焼結体であり、10mm×1
0mm×0.35mmt 寸法である。
【0088】白金電極膜2a・2bは、酸化ビスマスが
2重量%、上記組成の固体電解質焼結体が5重量%、白
金が93重量%の混合物である。
【0089】シール板10は、上記組成の固体電解質焼
結基板である。螺旋型硝子膜9は、酸化珪素が約60重
量%であり、残部が酸化アルミナ・酸化ホウソ・酸化カ
リウム・酸化ナトリウム・酸化カルシウム・酸化ストロ
ンチウム・酸化バリウム・酸化チタンなどが含有されて
いる硝子である。この硝子膜9は、その組成調整で熱膨
張係数が上記組成の固体電解質基板の0.75〜1.0
倍である。
【0090】電極の焼成は820℃で10分、螺旋型硝
子膜の焼成は800℃で10分である。
【0091】この2種類の限界電流式酸素センサ構造型
の電気化学素子の耐久性を前回と同様に評価したとこ
ろ、いずれも1000時間後において、印加電圧0.5
V電流値は初期値と同じであり、しかも限界電流が得ら
れた。
【0092】以上の実施例結果を整理したところ本発明
は、次のことが判明した。 (1)酸化ビスマスを有している電極膜であるため、酸
素イオン導電性・酸素吸着性能に優れた白金電極が10
00℃以下の焼成で得られた。そのため、限界電流が低
電圧から得られた。 (2)品質の安定化・耐久性の向上・リード線の電極か
らの剥離低減効果があり、耐久試験は低電圧においても
限界電流が得られた。これは、電極に混合した酸素イオ
ン導電性固体電解質の焼結体が、酸化ビスマスの耐久劣
化に起因する酸素イオン導電性の低下を、補っているた
めと思われる。
【0093】特に、電極膜に酸化ゲルマニウムなどの半
導体材料が誤って混入した場合でも、この半導体材料混
入に起因する耐久性劣化を、固体電解質焼結体が補うた
め、耐久性が向上した。 (3)3回焼成の製法でも酸素イオン導電性の低下が少
ない電極が得られた。これは、酸素イオン導電性固体電
解質の焼結体を電極に混合することで、3回の焼成工程
による酸化ビスマスの溶融程度バラツキや偏析に起因す
る酸素イオン導電性の低下が補われるためと思われる。 (4)酸化ビスマスや酸化第二銅・銅の混合量の最適化
で、固体電解質に対する密着力が増加したちみつな電極
が得られた。そのため、螺旋型硝子は焼成中でも電極へ
の悪影響を及ぼさず、酸素イオン導電性の低下が少ない
電極が得られた。また耐久試験による電極の剥離もなか
った。 (5)螺旋型硝子膜と電極の交差部において、耐久性評
価中に螺旋型硝子膜が電極から剥離し、この剥離部分か
ら酸素がリークすること(酸素拡散孔の寸法変化)がな
かった。これは、電極に固体電解質焼結体を混合しその
量の最適化で、固体電解質焼結板と螺旋型硝子膜と電極
の3材料の膨張係数が比較的近くなるためと思われる。 (6)リード線や電極膜の剥離が低減し、耐久性が向上
した。これは、電極に固体電解質焼結体を混合すること
でリード線固着用硝子に固体電解質焼結体の一部が分散
し、固体電解質焼結板とリード線固着用硝子と電極の3
材料の膨張係数が比較的近くなること、凹凸形成で表面
積が拡大されること、のためと思われる。 (7)動作温度が350〜550℃において、優れた電
流特性の白金電極膜が得られた。これは、350以下℃
では電極膜の酸素イオン導電性が大きすぎて特性が得ら
れないため、550℃以上では電極膜中の酸化ビスマス
や酸化第二銅・銅の密着力が低下して剥離しやすくなり
耐久性が確保できないためである。
【0094】本発明の第三実施例である電気化学素子に
ついて説明する。電気化学素子の構造は、下記の変更点
以外は図10と同じである。
【0095】酸素イオン導電性固体電解質の焼結基板1
は、安定化ジルコニアである。電極膜2a・2b(記載
せず)は、酸化ビスマス単独の結合材または酸化ビスマ
スに酸化第二銅もしくは銅の少なくとも1種以上を混合
した結合材と、白金の混合物からなる。その組成割合
は、酸化ビスマスが1〜7重量%、酸化第二銅もしくは
銅が酸化ビスマス量の0〜2倍量、白金が残部である。
【0096】一方、螺旋型硝子膜9は、酸化珪素が55
〜65重量%であり、酸化アルミナ・酸化ホウソ・酸化
カリウム・酸化ナトリウム・酸化カルシウム・酸化スト
ロンチウム・酸化バリウム・酸化チタンを各々2〜12
重量%含有している硝子である。この硝子膜9は、熱膨
張係数が安定化ジルコニアの0.75〜1.0倍であ
り、約30μm粒径の耐熱性粒子(酸化チタン)が微量
含有されている。
【0097】焼結性シール板10は、フォルステライト
である。電気化学素子は、酸素イオン導電性固体電解質
(安定化ジルコニア)の焼結基板1と、その表面に形成
した白金電極膜2aと2bと、固体電解質基板1の片側
に配置され電極膜2aを囲むように配置された螺旋型硝
子膜9と、螺旋型硝子膜9の上部に配置された焼結性シ
ール板(フォルステライト)10の積層体からなり、酸
素濃度を検知する限界電流式酸素センサ型構成である。
この構成において、酸素拡散孔11は、螺旋型硝子膜9
の始端および終端の両突起と固体電解質板1とシール板
10で囲まれる空間内に形成される。また、焼結性シー
ル板10には、加熱部12が併設されている。
【0098】次に具体的実施例にもとづいて説明する。 〈実施例3〉構成材料について記す。
【0099】固体電解質板1は、1400℃で約4時間
焼結した安定化ジルコニア(ZrO 2 の92モル%とY
2 3 の8モル%の固溶物)の焼結体である。この焼結
体は、10mm×10mm×0.35mmt 寸法の基板
として使用される。
【0100】白金電極膜2a・2bは、酸化ビスマスが
1〜7重量%、酸化第二銅もしくは銅が前記酸化ビスマ
ス量の0〜2倍量、白金が残部の混合物である。
【0101】シール板10はフォルステライトの焼結体
であり、熱膨張率は±10%以内において安定化ジルコ
ニアと同じである。加熱部12は、白金ヒータである。
【0102】螺旋型硝子膜9は、酸化珪素が55〜65
重量%であり、酸化アルミナ・酸化ホウソ・酸化カリウ
ム・酸化ナトリウム・酸化カルシウム・酸化ストロンチ
ウム・酸化バリウム・酸化チタンを各々2〜12重量%
含有している硝子である。この硝子膜9は、熱膨張係数
が安定化ジルコニアの0.75〜1.0倍であり、約3
0μm粒径の耐熱性粒子(酸化チタン)が微量含有され
ている。
【0103】製法について記す。製法は4段階からな
る。第1段階は、白金電極膜の形成である。まず、安定
化ジルコニアの基板を準備した。次に、上記化合物の混
合物粉末に有機溶剤を添加した白金電極ペーストを準備
した。そして、この安定化ジルコニア基板1の両面に厚
膜印刷法を用いて電極ペーストをスクリーン印刷し、乾
燥後に750〜950℃で10分焼成して白金電極膜2
a・2bをその表面に形成した。この電極膜は酸化第二
銅または銅の量が多いほど、焼成温度を高くしている。
【0104】第2段階は、螺旋型硝子膜の形成である。
まず、上記化合物の混合物に有機溶剤を添加した硝子ペ
ーストを準備した。そして、白金電極膜を形成した安定
化ジルコニア基板1の片側に、厚膜印刷法を用いて硝子
ペーストをスクリーン印刷し、乾燥後に750〜850
℃10分焼成して螺旋型硝子膜9を形成した。この螺旋
型硝子膜は、電極膜の焼成温度と同温度またはそれ以下
の温度で焼成している。
【0105】第3段階は、酸素拡散孔の形成である。安
定化ジルコニア基板1とシール板10を螺旋型硝子膜9
を介して積層し、積層体を約820℃10分焼成した。
焼成により硝子膜9が溶融し、螺旋型硝子膜9の始端お
よび終端の両突起と安定化ジルコニア基板1とシール板
10で囲まれる空間内が形成され、この空間が酸素拡散
孔である。なお、シール板10には、白金ヒータとなる
加熱部12を予め形成しておいた。
【0106】第4段階は、白金リード線の取り付けであ
る。電極膜の端部に白金リード線を、白金粉末を主成分
とし硝子粉末を少量添加した混合物ペースト(固着材)
を用いて固定し、約700℃10分焼成して固着した。
【0107】評価方法について記す。まず、この電気化
学素子の周囲を断熱材で外包した実装体を組み上げた。
次に酸素20%雰囲気の大気中に放置し、加熱部のヒー
タで500℃に保持した。そして、白金リードを介して
直流電圧を印加した場合の電圧電流特性を評価した。電
圧電流特性の測定は、使用初期時と、1.0V電圧印加
状態で1000時間試験された後の、2回行っている。
【0108】
【表3】
【0109】表3は、酸化ビスマス単独かさらに酸化第
二銅または銅を混合した結合材と、白金の混合物からな
る白金電極膜において、各々の混合量を変化させた場合
の電流特性である。
【0110】いずれの電極も1000時間後は、印加電
圧1.4Vにおいては電流は初期値とほぼ同じでしかも
限界電流を示しており、耐久試験後でも酸素拡散孔の寸
法変化が少ないことがわかる。なお、印加電圧0.5V
においては電極の耐久性が悪いため電流が低下し限界電
流が得られなかった。またセンサの動作温度は350〜
500℃が最適であった。
【0111】また、この実施例結果を整理したところ本
発明は、次のことが判明した。 (1)酸化ビスマスを有しているため、酸素イオン導電
性・酸素吸着性能の優れた白金電極膜が1000℃以下
の焼成で得られた。そのため、初期において限界電流が
簡単に得られた。 (2)製造段階において硝子流動による電極への影響が
少なく、良品が歩留まりよく製造された。 (3)耐久性評価中に、酸素拡散孔の寸法変化が起こら
ない。これは、酸化ビスマスや酸化第二銅・銅の混合量
の最適化で、固体電解質に対して密着力が増加したちみ
つな電極が得られ、螺旋型硝子が電極との交差部におい
て剥離を生じることがないためと思われる。また、硝子
が、電極中の酸化ビスマスや酸化第二銅・銅の密着性が
良いことも理由と考えられる。
【0112】
【発明の効果】以上のように本発明の電気化学素子によ
ると次の効果が得られる。 (1)酸化ビスマスを有するため1000℃以下の焼成
で、酸素イオン導電性・酸素吸着性能の優れた白金電極
膜が得られる。 (2)酸化ビスマスの溶融程度のバラツキや偏析に起因
する酸素イオン導電性の低下を固体電解質焼結体の酸素
イオン導電性が補うため、電極は電流が増加し品質の安
定化がはかれる。 (3)長期使用により酸化ビスマスが還元され酸素イオ
ン導電性が低下することを、固体電解質焼結体の酸素イ
オン導電性が補うため、耐久性が向上する。
【0113】また、電極膜に酸化ゲルマニウムなどの半
導体材料が誤って混入した場合でも、この半導体材料混
入に起因する耐久性劣化を、固体電解質焼結体が補うた
め、耐久性が向上する。 (4)酸化ビスマスや酸化第二銅・銅は、その量を最適
することで膨張係数が調整され、これに起因する剥離が
低減して耐久性が向上する。これは、酸化ビスマスの偏
析や体積膨張による固体電解質板に対する弱い密着力
を、酸化第二銅もしくは銅の強固な密着力で補なうた
め、電極の固体電解質に対する密着力が増加し、しかも
酸化ビスマスが比較的均一な分布になるためと思われ
る。
【0114】また、酸化第二銅もしくは銅の混合による
酸素イオン導電性の低下を固体電解質焼結体が補うた
め、酸素イオン導電性に優れた白金電極膜が得られる。 (5)リード線や電極膜の剥離が低減し、耐久性が向上
する。これは、電極に固体電解質焼結体を混合すること
でリード線固着用硝子に固体電解質焼結体の一部が分散
し、固体電解質焼結板とリード線固着用硝子と電極の3
材料の膨張係数が比較的近くなること、凹凸形成で表面
積が拡大されること、のためと思われる。 (6)酸化ビスマスを有している電極であるため、酸素
イオン導電性・酸素吸着性能に優れた白金電極が100
0℃以下の焼成で得られる。そのため、限界電流が低電
圧から得られる。 (7)品質の安定化と耐久性の向上がはかれ、耐久試験
品は低電圧においても限界電流が得られる。これは、電
極に混合した酸素イオン導電性固体電解質の焼結体が、
酸化ビスマスの耐久劣化に起因する酸素イオン導電性の
低下を補うためである。
【0115】また、電極膜に酸化ゲルマニウムなどの半
導体材料が誤って混入した場合でも、この半導体材料混
入に起因する耐久性劣化を、固体電解質焼結体が補うた
め、耐久性が向上する。 (8)3回焼成の製法でも酸素イオン導電性の低下が少
ない電極が得られる。これは、酸素イオン導電性固体電
解質の焼結体を電極に混合することで、3回の焼成工程
による酸化ビスマスの溶融程度バラツキや偏析に起因す
る酸素イオン導電性の低下が補われるためである。 (9)酸化ビスマスや酸化第二銅・銅の混合量の最適化
で、固体電解質に対する密着力が増加したちみつな電極
が得られる。そのため、螺旋型硝子は焼成中でも電極へ
の悪影響を及ぼさず、酸素イオン導電性の低下が少ない
電極が得られる。また耐久試験による電極の剥離もな
い。 (10)螺旋型硝子膜と電極の交差部において、耐久性
評価中に螺旋型硝子膜が電極から剥離し、この剥離部分
から酸素がリークすること(酸素拡散孔の寸法変化)が
ない。これは、電極に固体電解質焼結体を混合しその量
の最適化で、固体電解質焼結板と螺旋型硝子膜と電極の
3材料の膨張係数が比較的近くなるためと思われる。 (11)リード線や電極膜の剥離が低減し、耐久性が向
上する。これは、電極に固体電解質焼結体を混合するこ
とでリード線固着用固着材に固体電解質焼結体の一部が
分散し、固体電解質焼結板と固着材と電極の3材料の膨
張係数が比較的近くなること、凹凸形成で表面積が拡大
されること、のためと思われる。 (12)酸化ビスマスを有しているため、酸素イオン導
電性・酸素吸着性能の優れた白金電極膜が1000℃以
下の焼成で得られた。そのため、初期において限界電流
が低電圧から得られた。 (13)製造段階において硝子流動による電極への影響
が少なく、良品が歩留まりよく製造される。 (14)耐久性評価中に、螺旋型硝子が電極との交差部
において剥離を生じることがないため、酸素拡散孔の寸
法変化が起こりにくい。この理由は、酸化ビスマスや酸
化第二銅・銅の混合量の最適化で、固体電解質に対して
密着力が増加したちみつな電極が得られるためと思われ
る。またこの硝子が、電極中の酸化ビスマスや酸化第二
銅・銅の密着性が良いことも理由と思われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例の電気化学素子の断面図
【図2】同電気化学素子の特性図
【図3】同電気化学素子の特性図
【図4】同電気化学素子の特性図
【図5】同電気化学素子の特性図
【図6】同電気化学素子の特性図
【図7】同電気化学素子の特性図
【図8】同電気化学素子の特性図
【図9】同電気化学素子の特性図
【図10】本発明の他の電気化学素子の一部破断断面図
【図11】同電気化学素子の特性図
【図12】従来の電気化学素子の断面図
【符号の説明】
1 酸素イオン導電性固体電解質の焼結基板 2a・2b 白金電極 3 酸化ビスマス 4 酸化第二銅 5 酸素イオン導電性固体電解質の焼結体 6 白金 7 リード線接合材 8a・8b リード線 9 螺旋型硝子膜 10 シール板 11 酸素拡散孔 12 加熱部

Claims (15)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸素イオン導電性固体電解質の焼結基板に
    白金電極膜を形成させた構成であり、前記電極膜が、酸
    化ビスマス単独の結合材または酸化第二銅もしくは銅の
    少なくとも一つと酸化ビスマスの混合物の結合材、前記
    固体電解質の焼結体と、白金の混合物からなりその組成
    割合が、酸化ビスマスが1〜7重量%、酸化第二銅もし
    くは銅の少なくとも一つが前記酸化ビスマス量の2倍量
    を越えない量、前記固体電解質の焼結体が前記酸化ビス
    マス量の1倍量以上でありしかも前記白金の2分の1以
    下の量、白金が残部である構成の電気化学素子。
  2. 【請求項2】両面に白金電極膜が形成された酸素イオン
    導電性固体電解質焼結基板と、前記固体電解質基板の片
    側に配置され前記電極膜を囲むように配置された螺旋型
    硝子膜と、前記螺旋型硝子膜の上部に配置された焼結性
    シール板とからなる限界電流式酸素センサ型構成におい
    て、前記電極膜が、酸化ビスマス単独の結合材または酸
    化第二銅もしくは銅の少なくとも一つと酸化ビスマスの
    混合物の結合材と、前記固体電解質の焼結体と、白金の
    混合物からなりその組成割合が、酸化ビスマスが1〜7
    重量%、酸化第二銅もしくは銅の少なくとも一つが前記
    酸化ビスマス量の2倍量を越えない量、前記固体電解質
    の焼結体が前記酸化ビスマス量の1倍量以上でありしか
    も前記白金の2分の1以下の量、白金が残部である構成
    の電気化学素子。
  3. 【請求項3】両面に白金電極膜が形成された安定化ジル
    コニア焼結基板と、前記基板の片側に配置され前記電極
    膜を囲むように配置された螺旋型硝子膜と、前記螺旋型
    硝子膜の上部に配置されたフォルステライト焼結性シー
    ル板からなる限界電流式酸素センサ型構成において、前
    記電極膜が、酸化ビスマス単独の結合材または酸化第二
    銅もしくは銅の少なくとも一つと酸化ビスマスの混合物
    の結合材と、白金の混合物からなりその組成割合が、酸
    化ビスマスが1〜7重量%、酸化第二銅もしくは銅の少
    なくとも一つが前記酸化ビスマス量の2倍量を越えない
    量、白金が残部である構成の電気化学素子。
  4. 【請求項4】酸素イオン導電性固体電解質が安定化ジル
    コニアである請求項1又は請求項2記載の電気化学素
    子。
  5. 【請求項5】電極膜に、電圧を印加する直流電源を接続
    した請求項1又は請求項2又は請求項3記載の電気化学
    素子。
  6. 【請求項6】シール板の表面に加熱体を形成した請求項
    2又は請求項3記載の電気化学素子。
  7. 【請求項7】白金を主成分とし硝子を少量添加した固着
    材を用いて、白金電極膜の焼成温度以下の温度で焼成し
    てリード線を固着した請求項1又は請求項2又は請求項
    3記載の電気化学素子。
  8. 【請求項8】螺旋型硝子膜が、酸素イオン導電性固体電
    解質の熱膨張係数の0.75〜1.0倍の熱膨張係数を
    有する硝子材料である請求項2又は請求項3記載の電気
    化学素子。
  9. 【請求項9】動作温度が350〜550℃である請求項
    1又は請求項2又は請求項3記載の電気化学素子。
  10. 【請求項10】電極膜が750〜950℃で焼成された
    請求項1又は請求項2又は請求項3記載の電気化学素
    子。
  11. 【請求項11】電極膜中の酸化第二銅もしくは銅の量
    が、酸化ビスマス量の1倍を越えない量であり、その量
    が多いほど電極の焼成温度を高くした請求項10記載の
    電気化学素子。
  12. 【請求項12】螺旋型硝子膜を、電極膜の焼成温度と同
    温度もしくはそれ以下の温度で焼成する請求項2又は請
    求項3記載の電気化学素子。
  13. 【請求項13】焼結性シール板の熱膨張係数が、±10
    %以内において酸素イオン導電性固体電解質の熱膨張係
    数と同一である請求項2記載の電気化学素子。
  14. 【請求項14】酸素イオン導電性固体電解質が安定化ジ
    ルコニアであり、シール板がフォルステライト板である
    請求項2記載の電気化学素子。
  15. 【請求項15】螺旋型硝子膜が、酸化珪素が55〜65
    重量%であり、酸化アルミナ・酸化ホウソ・酸化カルウ
    ム・酸化ナトリウム・酸化カルシウム・酸化ストロンチ
    ウム・酸化バリウム・酸化チタンを各々2〜12重量%
    含有している請求項8記載の電気化学素子。
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