JP2820966B2 - 複合繊維及びその製造方法 - Google Patents

複合繊維及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業の利用分野) 本発明は、ポリアミドとポリエステルの2種のポリマ
ーの複合形状が、繊維の長さ方向には実質的に同一形状
でありながら、単繊維間でランダムに異なり、該単繊維
は、一方の成分が層状分割層を形成している複合形状の
ものと、一方の成分が独立島状成分を形成している複合
形状のものと更に二成分が偏在化して貼り合せ構造を形
成した複合形状のものが混在化した状態であることを特
徴とする天然繊維に似た自然な斑と柔らかいソフト風合
を有する新規な複合フイラメント及び複合ステープルな
らびにその製造方法に関するものである。
(従来の技術) 従来、合成繊維、例えばポリエステル、ポリアミドの
フイラメントからなる織物、編物、不織布等の繊維構造
物は、その構成フイラメントの単糸デニールや断面形状
が単調であるために綿、麻等の天然繊維に比較して、風
合、光沢が単調で冷たく、繊維構造物としての品位は低
いものであつた。
近年、これらの欠点を改良するために、繊維横断面の
異形化、巻縮加工、複合繊維等が種々試みられている
が、いまだに十分には目的を達成していないのが現状で
ある。例えば、特開昭56−165015号、特開昭57−5921
号、特開昭58−98425号、特開昭61−239010号などに示
されているような易溶解性ポリマーとポリエステルの複
合繊維を形成し、その後、後加工によりドライタツチで
キシミ感のある風合や独得の光沢を織編物に付与させた
り、あるいは特公昭51−7207号、特開昭58−70711号、
特開昭62−133118号などに示されているように繊維長さ
方向に斑を付与させて風合を改良させる方法、あるいは
特公昭53−35633号、特公昭56−16231号などに示されて
いるように合成繊維をフイブリル化させて風合を改良さ
せる方法、特公昭45−18072号で提案されているごとく
仮撚、融着糸を作成し、麻様のシヤリ感を付与させる方
法、あるいは特開昭63−6123号のように混繊融着加工糸
を作成する方法、あるいは特開昭63−6161号のようにフ
イブリル化させる方法など種々のものが提案されてい
る。しかしながら合成繊維へ天然繊維に似た風合を付与
させるという点においては十分と言えず、特に天然麻繊
維や天然木綿繊維に似た風合を付与させるということで
は不十分であつた。
しかも、最近では、種々の用途に不織布が多く用いら
れるようになり、それと同時に本来の取りあつかい性な
どの機能性ともに、やわらかさや感触などの風合に対す
る要求も大きくなつてきた。
特に最近では、不織布分野でのポリエチレンテレフタ
レートを代表とするポリエステル繊維の役割が大きくな
り、広く使用されるようになつてきた。しかしながら、
生産効率及び種々の消費性能に対する耐久性等の点では
ある程度満足できるレベルにきているが、風合という点
ではまだまだ不十分であり、使用している過程でのある
程度の柔らかい、人間の肌になじみやすい風合というも
のが要求されるようになつてきた。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は、従来のポリエステル繊維やポリアミド繊維
に対して木綿やシルクのような天然繊維に似たソフト感
を有する風合と単繊維間にランダムな自然な斑を付与さ
せることを目的として鋭意検討した結果、本発明に到達
したものである。すなわち本発明は、上記繊維を得るた
めにはいかなる物を用い、いかなる構成、条件としたら
よいかという点を究明したものである。
(課題を解決するための手段) 本発明は、適切な溶融粘度の条件を満たす熱可塑性ポ
リアミド(A)と熱可塑性ポリエステル(B)の2種の
重合体成分からなり、A成分とB成分の複合形状が繊維
の長さ方向には実質的に同一形状でありながら単繊維間
でランダムに異なり、該単繊維は、一方の成分が層状分
割層を形成している複合形状のものと、一方の成分が独
立島状成分を形成している複合形状のものと、更に、二
成分が偏在化して貼り合せ構造を形成した複合形状のも
のが混在化した状態であり、しかもA成分とB成分の界
面での接触長が一定条件を満たすことを特徴とする複合
繊維である。
本発明で言うポリエステルとしては、例えばテレフタ
ール酸、イソフタール酸、ナフタリン2,6−ジカルボン
酸、フタール酸、α,β−(4−カルボキシフエノキ
シ)エタン、4,4−ジカルボキシジフエニール、5ナト
リウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸も
しくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン
酸又はこれらのエステル類と、エチレングリコール、ジ
エチレングリコール、1,4ブタジオール、ネオペンチル
グリコール、1,6−ゲキサンジオール、シクロヘキサン
1,4−ジメタノール、ポリエチレングルコール、ポリテ
トラメチレングリコールなどのジオール化合物とから合
成される繊維形成性ポリエステルであり、構成単位の80
モル%以上が、特には90モル%以上がポリエチレンテレ
フタート単位又はポリブチレンテレフタレート単位であ
るポリエステルが好ましい。又、ポリエステル中には、
少量の添加剤、螢光増白剤、安定剤あるいは紫外線吸収
剤などを含んでいても良い。
またポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、
メタキシレンジアミンナイロン、ナイロン12を主成分と
するポリアミドであり、少量の第3成分を含むポリアミ
ドでもよい。これらの少量の添加剤、螢光増白剤、安定
剤等を含んでいても良い。
次に本発明の繊維の特徴を、実際の写真を示しながら
説明する。第1図に本発明繊維の断面写真の一例を示
す。第2図は典型的な断面形状の代表的なもののモデル
図を一例として示した。
第1図に示したものは、A成分としてナイロン6、B
成分としてポリエチレンテレフタレートを用い重量比30
対70で紡糸して得た複合繊維の断面構造を示す。A成分
とB成分の複合形状が単繊維間でランダムに異なり、A
成分が層状分割層を形成している場合もあれば、独立の
島状成分を形成している場合があり、また第2図(イ)
の如く、A成分とB成分が極端に偏在化して貼り合せ構
造に似た複合形状を形成している場合もあり、それらが
混在化した状態でマルチフイラメントを形成しているこ
とがわかる。この各種の複合形状が混在化しているため
に、あるものはA成分とB成分の歪差により収縮歪差を
生じ、例えば第2図(イ)の場合潜在捲縮性を有し、最
終繊維製品にした場合他の単繊維と位相の異なる集団化
しないコイルクリンプが発現し崇高性をもたらし、第2
図(ロ)の場合は、A成分とB成分との界面で一部剥離
が生じ、最終繊維製品で単繊維表面層よりランダムにフ
イブリル状極細繊維が枝状に発生し、接触した時に柔ら
かい感触風合を与えるポイントとなる。また、第2図
(ハ)の形状を形成している繊維の場合は一方の成分が
やや大きい島状独立層を数個有しているために、完全芯
鞘繊維には得ることのできない繊維としての自然な柔ら
かさをもたらす。このように、単繊維間の複合形状がラ
ンダムに異なり、しかも、その形状が第2図、(イ)、
(ロ)、(ハ)のモデル形状で代表されるもので混在化
していることが、天然繊維に似た自然な斑と風合、特
に、崇高さと触つた時の柔わらかさと繊維集合体として
の全体の柔らかさを初めて発現させうることが可能とな
つた。このような複合形状を有する繊維を得る方法につ
いては、後で詳細に説明するが、上記説明した複合形状
を有する繊維集合体をつくることにより、初めて従来に
ない自然な天然繊維ライクな感触を発現させることが可
能となつた。
また、繊維断面におけるA成分とB成分の界面での接
触長の平均値xが、繊維断面の平均周長yに対して下記
式(1)又は(2)に示される関係で表わされることが
大きな特長である。
単繊維断面の平均周長yと、A成分とB成分の界面で
の平均接触長xの比が 非常に分布が大きく複合状態が広範囲に分布している繊
維の混合物で存在していることが大きな特徴である。例
えば、A成分とB成分の重量比率が1:1の場合、モデル
的なもので説明すると、第6図(ニ)のような貼り合せ
断面では、x/yが0.3〜0.4くらいであり、第6図(ホ)
のようなA成分とB成分が5層を形成している断面で、
x/yが1.08〜1.10くらいであり、第6図(ヘ)のような
A成分とB成分が10層を形成している断面ではx/yが1.8
〜2.1くらいである。これに対して本発明繊維は、x/yが
小さいものは0.50のものも存在し、x/yが大きいものは
4.0くらいのものも存在し、二成分の接触界面が小さい
ものから大きなものまで非常に広い範囲で種々の複合形
状を有した繊維が混在化していることがわかつた。x/y
が小さいものから、大きいものまで広い範囲で分布して
いることが、大きな特徴であり、本発明繊維が自然な斑
と天然繊維に似た感触が発現されるための大きな要因と
なつていると考えられる。
繊維断面におけるA成分とB成分の接触長の測定は、
単繊維100本をランダムに採取しAとBの繊維長を測定
し、その平均値で示した。具体的な接触長の測定は、正
確に測定するにはコンピユーターによる画像解析によつ
て求めることができるが、簡便的には、繊維断面写真を
高倍率に拡大し、方眼を乗せて、2成分境界線のその目
の数を読みとることによつても可能であるし、マツプメ
ジヤーを用い2成分境界線の曲線上を走行ギヤーを回転
走査させることによつても可能である。本発明で述べて
いる実施例中での数値は、マツプメジヤーを用いて測定
した数値で説明している。
次に、本発明の線維の製造例について説明する。本発
明の複合形状の繊維構造を発現させるためには、紡糸時
にポリアミドとポリエステルの2成分のポリマーが一定
条件で不均一混合され、かつ各ノズル孔へ異なつた状態
で不均一混合ポリマー流が分配されることが重要である
がそれの紡糸方法の一例を第3図、第4図に示す。第3
図、第4図に示したように複合紡糸口金装置を使用して
紡糸すればよい。別々の溶融押出機によりそれぞれ押出
されたポリアミド(A)及びポリエステル(B)ポリマ
ー溶融流は、別々に計量機により所定量計量された後、
サンドボツクス1の過部8で過された後、フイルタ
ー6をそれぞれ経た後、ミキシングプレート2に設けら
れた静止混合器5で所定条件下で混合され、分配板3の
分配路7を経て放射線状に分配した後、円周溝9へポリ
マーが流れ満たされた後口金板10から紡出される。
ここで2成分のポリマーが不均一混合状態とするため
に静止型混合器5の混合素子の数を適切に選ぶことが非
常に重要である。現在実用化されている静止型混合器は
数種類あるが、例えばKenics社の180°左右にねじつた
羽根を90°ずらして配列したnエレメント通過させると
2n層分割するタイプのスタチツクミキサーを用いた場合
は、エレメント数が3〜8の範囲にする必要がある。口
金板が一周孔配列の場合更に好ましくは、4〜6の範囲
が最適である。8エレメント以上にすると、ポリエステ
ルとポリアミドの混合性が良くなりすぎて均一混合に近
くなり、繊維化して目的とする繊維構造が発現しにくく
なる。
またエレメント数が多くなりすぎると、ポリエステル
とナイロンが均一混合しすぎて、溶融混合時にポリエス
テルのエステル結合とポリアミドのアミド基との間で化
学反応が一部進み、分解物が急激に発生してき、紡糸性
が極端に低下してくることがわかつた。また、繊維の着
色も発生し、商品価値が著しく低下する。
適切なエレメント数に設定しても、両成分ポリマーが
接触を開始してから、ノズル孔より吐出するもので滞留
時間が長すぎると、ポリエステルとポリアミドの反応が
進みやすく紡糸時の粘度低下繊維の着色が進み好ましく
ない。両成分ポリマーが接触を開始してから、3分以内
に吐出することが必要である。滞留時間を少なくするた
めに、分配板3のポリマー流路は適切な空間にする必要
がある。
本発明の繊維を得るためにもう一つの重要なことは、
分配板3の構造が非常に重要である。第3図x−x′面
から見た分配板の詳細図面が第4図であるが、この分配
板で重要なことは、静止混合器を経て2成分ポリマーが
多層状態で流出してきた不均一混合流を放射線状の分配
路の数だけ分割して放射線状に不均一混合流を分割する
ことである。この分配路の数はノズル孔数より少なくす
ることが必要である。好ましくは、分配路の数とノズル
孔数の比率は1:1.5〜1:5の範囲にする必要がある。第4
図の例は、24ホールノズルに対して12の分配路を設定し
た例である。
静止混合器から分配路を経てノズル孔より吐出される
時の2成分ポリマーの不均一混合状態の流れをモデル的
に更に詳しく説明すると、例えば4エレメントの静止混
合器を経た2成分のポリマー流は第5図に示す如く、A
成分8層、B成分8層のトータル16層の層状ポリマー流
となり、該ポリマー流を例えば第4図の如き12分配路を
有する分配板を通過させると各分配路へは(1)〜(1
2)のポリマー流の状態で分配され、(1)、(12)、
(6)、(7)ブロツクは層数が極端に少なく、
(3)、(4)、(10)、(9)は層数が一番多い状態
で、(2)、(5)、(8)、(11)は中間の状態でノ
ズル上部円周溝へ至る。その後各ブロツクへ、ノズル孔
が2個以上配置されている場合ブロツクの境界に存在す
るノズル孔へは両方のブロツクからポリマー流が流れこ
み、(1)、(12)、(6)、(7)と(3)、
(4)、(9)、(10)との混合状態の差が更に拡大さ
れて吐出されるために、結果として、第2図(イ)、
(ロ)、(ハ)の単繊維間で複雑に異なつた複合形状が
混在化した繊維が得られるわけである。
(1)、(6)、(7)、(12)ブロツクからは主に
(イ)あるいは(ロ)の類似の複合形状を形成した繊維
が発現し、(3)、(4)、(9)、(10)ブロツクか
らは主に(ハ)を中心とした複合形状を有した繊維が発
現し、(2)、(5)、(8)、(10)ブロツクからは
主に(ロ)を中心とした複合形状のものと(イ)又は
(ハ)に似た複合形状のものが若干混在化した繊維が得
られることになる。
しかしながら、ポリマー流の時間方向の流れは同じ混
合状態で定常的に流れるため、繊維の長さ方向には、実
質的に同一形状の複合形状を保つている。
ケニツクス社以外の静止型混合器を用いる場合も、2n
層分割以上に相当するエレメント数に設定した混合器を
使用する必要があることは言うまでもない。東レ社製ハ
イミキサー(Hi−Mixer)やチヤールス・アンド・ロス
(Charless & Ross)社製のロスISGミキサーなどは、
nエレメント通過すする時の層分割数は4n層分割である
ので、エレメント数2エレメント以上、4エレメント以
下にすることが好ましい。
ポリアミドとポリエステルの複合比率は15対85〜85対
15の範囲にする必要がある。どちらか一方の成分が15重
量%未満になると、比率の少ない成分の集合状態が小さ
くなり、目的の複合形状に近くなつたとしてもあまり特
徴が発現されない繊維となつてしまい好ましくない。A
対Bが15対85〜85対15の範囲で、目的とする風合及び工
程性及び糸物性等で総合的に判断し、最適の混合比率を
選択することが望ましい。
また、目的とする複合形状を形成させるためには、ポ
リマーの溶融粘度も適切な範囲に入るものを用いる必要
がある。すなわち、ポリアミドとポリエステルのそれぞ
れが290℃に於けるゼロ剪断応力下の溶融粘度が500から
7000ポイズであり、ポリアミドの溶融粘度ηAとポリエ
ステルの溶融粘度ηBがηA<ηBの場合ηB≦10×ηA
はηB<ηAの場合、ηA≦10×ηBの範囲に入る必要があ
る。
ηAとηBがηA<ηBの場合、ηBはηAの10倍以上、η
B<ηAの場合ηAはηBの10倍以上になると複合紡糸時の
ηAとηBの溶融粘度差が大きくなりすぎバランスがくず
れ易くなり、紡糸時の斜向、ビス等に起因する単糸切
れ、断糸が多くなり好ましくないと同時に、目的とする
複合形状が得られにくくなる。特にモデル断面図第2図
(ロ)で示したような層状分割形状が形成されにくくな
り、比率が少ないポリマーが島状を形成しやすくなり好
ましくない。また、A、Bともに500ポイズ以下になる
と紡糸性が極端に低下し好ましくない。逆にA、Bとも
に7000ポイズ以上になつても紡糸時の圧損等が大きくな
りすぎたりして、AとBポリマーの混合流が不安定にな
り好ましくない。
ここで述べているゼロ剪断応力下での溶融粘度η(ポ
イズ)の測定は、東洋精器(株)キヤピログラフを用い
て行なつた。290℃に加熱されたセル中のポリマーに対
してずり速度を変化させた時のずり応力を求め、これに
より見かけの溶融粘度を求め、ずり速度と見かけの溶融
粘度の関係からゼロ剪断応力下の溶融粘度を外挿した。
ゼロ剪断応力下での溶融粘度の外挿法としては種々の方
法があるが、ここでは見かけの溶融粘度(ηa)の逆数
(1/ηa)とずり速度(w)の関係をグラフにプロツト
し、得られた直線関係からw→0の所の1/ηa値と1/η
と仮定してゼロ剪断応力下のηを値出した。また測定操
作上の容易さから、ポリマーはペレツト状のものを測定
サンプルに用いた関係上、繊維化時の実際紡糸時の溶融
粘度は、繊維化後の該繊維の[η]を測定し、同じ
[η]のポリマーペレツトによるη測定データーを参考
に判断した。
本発明で得られる繊維は、長繊維でも短繊維で同じ効
果が期待できることは言うまでもない。
またさらに本発明で得られる繊維は、仮撚捲縮加工等
の高次加工により、5角、6角に類似した形状になつた
り、紡糸時の異形断面ノズルにより3葉形、T形、4葉
形、6葉形、8葉形等多葉形や各種の断面形状となって
も要は、今迄説明してきた要件を満たした繊維であれ
ば、本発明の良好な風合を保持した繊維構造物を得るこ
とができる。
本発明で得られた繊維の主な用途としては、短繊維で
は、衣料用ステープル、乾式不織布及び湿式不織布等が
ある。もちろん本発明繊維を100%用いても良いし、本
発明繊維を一部用いて、他の繊維へ混綿し不織布等を作
成しても本発明繊維の効果が得られる。しかしながら、
ある程度の比率以上本発明繊維を混合させなければ本発
明で述べている効果が十分に得られないことは言うまで
もないことである。また、本発明繊維は長繊維でも良好
な風合のものが得られ、織物又は編物にして外衣等には
最適である。
以上、本発明を実施例により説明するが、これに限定
されるものではない。尚、実施例中の不織布の柔らかさ
については、次に述べるJIS L1085−5−7剛軟度A法4
5°カンチレバー法によつた。即ち、2cm×15cmの試験片
を、たて、よこ方向にそれぞれ5枚採取し、カンチレバ
形試験装置で一端が45°の斜面をもつ表面に滑らかな水
平台の上に、短辺をスケールの基線に合わせて置いたの
ち、試験片を斜面の方向にゆるやかに滑らせて、試験片
の一端の中央が斜面と接したとき、試験片の他端の位置
をスケールによつて読む。剛軟度は試験片の押し出され
た長さ(mm)で示され、おのおの5枚の表裏をはかり、
たて、よこ方向それぞれの平均値で表す。
測定サンプルの作成は、測定試料2デニール51mmの原
綿と、(株)クラレ製熱融着繊維ソフツトN−710タイ
プ2デニール51mmの原綿を80対20の比率で混綿し目付30
g/m2のウエツブを作成し、その後150℃で熱風処理をし
て不織布を作成し測定した。通常のポリエチレンテレフ
タレート繊維の場合はカンチレバー値120mm位であつ
た。カンチレバー値が小さい程、柔らかい不織布と判断
できる。
また、不織のふくらみ性については、次に述べるJIS
L 1085−5−1法による厚さ測定法によつた。
即ち、試料の異なる5箇所について、厚さ測定機を用
いて20gf/cm2の圧力のもとで一定時間(10秒)放置して
厚さ(mm)をはかり、その平均値で表す。上記で述べた
方法により不織布を作成し、測定したが、通常のポリエ
チレンテレフタレート繊維の場合は厚さ0.15mmくらいで
あつた。厚さが深い程ふくらみの大きい、本発明の目的
に合つた不織布であると言える。
[実施例1] Aポリマーとしてナイロン6(宇部興産(社)製−10
13BK)を用い、Bポリマーとして固有粘度[η]0.68フ
エノール/テトラクロルエタン1:1、30℃での測定のポ
リエチレンテレフタレートを用いた。それぞれを別々の
押出機にて溶融押出し、A対Bの比率が50対50重量%と
なるようにそれぞれギアポンプで計量した後、紡糸パツ
クへ供給し、その後第3図に示した装置により紡糸パツ
ク内でケニツクス社製の4エレメントスタチツクミキサ
ーでA成分とB成分の層状分割ポリマー流を形成させ、
分割路を12個有する分配板を通過させた後、24ホールの
丸孔ノズルより口金温度290℃で吐出し、捲取速度1000m
/minで溶融紡糸した。得られた紡糸原糸を75℃の水浴で
3.5倍延伸し、ついで95℃の水浴で5%の収縮を入れた
のち、機械捲縮をかけ、ついで一般的な糊剤を0.1wt%
になるように付与し、130℃で10分間弛緩熱処理し、そ
の後51mmの長さに切断して単糸デニール2の原綿とし
た。その後、(株)クラレ製ソフイツトN−710タイプ
のバインダー繊維(鞘成分がポリエチレン、芯成分がポ
リエチレンテレフタレートの熱融着繊維)2デニール×
51mmの綿を20%混綿した後、目付30g/m2のウエツブを作
成し、その後、150℃で熱風処理をして不織布を作成し
た。紡糸から最終の不織布作成まで工程性は良好で問題
なかつた。不織布の風合は、自然な柔らかさとタツチが
あり良好であつた。
[実施例2〜7] 実施例1と同一のポリマーを用い、実施例2は複合比
率がA/Bが50/50、実施例3はA/B 15/85で行ない、他は
実施例1と同一条件で実施した。実施例4、5はそれぞ
れスタチツクミキサーエレメント数を3と7に変更し、
他は実施例1と同一条件で実施した。実施例6は分配板
の分配数を8にし24ホールの一周ノズルで行ない、実施
例7は分配板の分配数を8にし36ホールの一周ノズルで
行ない、他は実施例1は同一の条件で実施した。いずれ
も工程性良好でかつ良好な不織布が得られた。
[実施例8、9] 実施例8はAポリマーとしてナイロン6の溶融粘度が
800ポイズのものを用い、Bポリマーとしてポリエチレ
ンテレフタレートの溶融粘度1500ポイズのものを用い他
は実施例1と同一方法で行ない、実施例9はAポリマー
としてナイロン6の溶融粘度11000ポイズのものを用
い、Bポリマーとしてポリエチレンテレフタレートの溶
融粘度1000ポイズのものを用い他は実施例1と同一の方
法で行なつた。いずれも工程性良好でかつ良好な不織布
が得られた。
[実施例10、11] 実施例10は、Aポリマーにナイロン6溶融粘度1100ポ
イズのもの、Bポリマーにポリブチレンテレフタレート
溶融粘度1000ポイズのものを用い、実施例11は、Aポリ
マーにナイロン12溶融粘度800ポイズのもの、Bポリマ
ーにポリエチレンテレフタレート溶融粘度1800ポイズの
ものを用い、他は実施例1と同一の方法により実施し
た。いずれも工程性良好でかつ良好な不織布が得られ
た。
[比較例1、2] 実施例1と同一のポリマーを用い、比較例1はA/Bの
複合比率を10/90とし、比較例2はA/Bの複合比率を90/1
0とし他は実施例1と同一の条件で実施したが、いずれ
も紡糸時にノズル吐出時に斜向、ビス落ちが多く紡糸性
が不良であつた。得られた繊維の複合形状は、海島構造
に近いもので平凡な複合形状であつた。また、得られた
不織布も特徴のないものであつた。
[比較例3] 実施例1と同じポリマーを用い、スタチツクミキサー
エレメントを2で実施した。紡糸性及び後工程性は良好
であつたが、複合形状が本発明の目的とする単繊維間で
ランダムに異なり、一方の成分が独立島状成分を形成し
ているものと、層状分割層を形成しているものと、二成
分が偏在化した貼り合せ構造をしているものの繊維が混
在化した状態でランダムに形成される状態には十分にな
つていなかつた。また、得られた不織布も、あまり特徴
のないものであつた。
[比較例4] 実施例1と同じポリマーを用い、スタチツクミキサー
エレメントを12で実施した。繊維化工程性は良好であつ
たが、複合形状は海島構造に近いものが大部分であつ
た。また得られた繊維は、ポリエステルとナイロンが一
部反応を起こしていることに起因していると考えられる
黄褐色の着色が発生し、繊維製品としては好ましいもの
ではなかつた。
[比較例5] Aポリマーとして、溶融粘度400ポイズのナイロン6
を用いて実施したが、紡糸時の斜向、ビス落ち及びノズ
ル汚れが激しく、紡糸性が著しく悪かつた。
[比較例6] Aポリマーとして、溶融粘度1100ポイズのナイロン6
を用いてBポリマーとして溶融粘度12,000ポイズのポリ
エチレンテレフタレートを用いて実施した。紡糸時の斜
向、ビス落ち等が激しく、紡糸性が著しく悪かつた。
[比較例7] 実施例1と同様のポリマーを用いサイドバイサイドの
貼り合せ構造の複合紡糸を実施したが、延伸後、捲縮工
程でA成分とB成分の界面の剥離が発生し、その後のカ
ード工程性が極端に不良となり不織布作成ができなかつ
た。
[比較例8] 実施例1と同様のポリマーを用い、AポリマーとBポ
リマーの比率が50:50で、鞘成分にナイロン6、芯成分
にポリエチレンテレフタレートの芯鞘複合形状の繊維化
を実施した。通常の方法で2デニール51mmの原綿を作成
し、その後実施例1と同様の方法により不織布を作成し
た。柔らかさはまずまずの評価が得られたが、ふくらみ
が不十分のレベルであつた。
[実施例12] Aポリマーとしてナイロン6(宇部興産(社)製品−
1013BK)を用い、Bポリマーとして固有粘度[η]0.68
フエノール/テトラクロルエタン1:1、30℃での測定の
ポリエチレンテレフタレートを用いた。それぞれを別々
の押出機にて溶融押出し、A対Bの比率が50対50重量%
となるようにそれぞれギヤポンプで計量した後、紡糸パ
ツクへ供給し、その後第3図に示した装置により紡糸パ
ツク内でケニツク社製の4エレメントスタチツクミキサ
ーでA成分とB成分層状分割ポリマー流を形成させ、分
配路を12個有する分配板を通過させた後、24ホールの丸
孔ノズルより口金温度290℃で吐出し、捲縮速度1000m/m
inで溶融紡糸した。得られた紡糸原糸をホツトローラー
75℃、プレート温度120℃でローラープレート方法によ
り3.2倍に延伸し、50デニール−24フイラメントのマル
チフイラメントを得た。紡糸性、延伸性は良好で全く問
題なかつた。得られたマルチフイラメントを経糸及び緯
糸として使い1/1の平織物を製織した。製織工程も特に
問題なく実施できた。該生機平織物を通常の方法により
処理した後、以下の条件で染色した。その後常法により
乾燥仕上げセツトした。
得られた平織物は、ソフト感と崇高性を有した良好な
風合を有する織物であつた。
以上各実施例および比較例の条件並びに結果をまとめ
て第1表に示す。
(本発明の効果) 以上、本発明は、特定条件を満たすポリアミドとポリ
エステルの2種のポリマーを、所定の条件を満足する方
法で複合紡糸し、複合形状が繊維の長さ方向には実質的
に同一形状でありながら、単繊維間でランダムに異なる
特殊複合繊維を得、天然繊維に似た自然な斑と柔らかい
ソフト風合を有する新規な複合フイラメント及び複合ス
テープルを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明繊維の断面構造を示す写真の一例であ
る。第2図は、本発明繊維の典型的な複合形状の一例の
モデル的スケツチ図である。第3図は本発明繊維の紡糸
口金装置の一例を示す断面図で、第4図紡糸口金装置の
一例の分配板をx−x′面から見た図である。第5図は
分配板へ至つた2成分ポリマー複合流が放射状に分配さ
れていく時の各ブロツクのポリマー複合流をモデル的に
示したものである。第6図は複合繊維の一般的なものの
一例として示したものである。
フロントページの続き 合議体 審判長 伊藤 頌二 審判官 船越 巧子 審判官 西村 綾子 (56)参考文献 特公 昭47−40888(JP,B1) 特公 昭47−15531(JP,B1) 特公 昭47−40893(JP,B1)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱可塑性ポリアミド(A)と熱可塑性ポリ
    エステル(B)からなる複合繊維であり、A成分とB成
    分の重量比率が15:85〜85:15の範囲で、しかもA成分と
    B成分の複合形状が繊維の長さ方向には実質的に同一形
    状でありながら単繊維間でランダムに異なり、該単繊維
    は、一方の成分が層状分割層を形成している複合形状の
    ものと、一方の成分が独立島状成分を形成している複合
    形状のものと、更に、二成分が偏在化して貼り合せ構造
    を形成した複合形状のものが混在化した状態であり、か
    つ単繊維の繊維断面におけるA成分とB成分の界面での
    接触長の平均値xが繊維断面の平均周長yに対して下記
    式(1)又は(2)に示される関係で表わされることを
    特徴とする複合繊維。 1.0×a/100≦x/y≦10.0×a/100 但しa≦bの時 …(1) 1.0×b/100≦x/y≦10.0×b/100 但しb≦aの時 …(2) a、bはそれぞれAポリマー、Bポリマーの重量%
  2. 【請求項2】熱可塑性ポリアミド(A)と熱可塑性ポリ
    エステル(B)のそれぞれが290℃におけるゼロ剪断応
    力下の溶融粘度が500ポイズから7000ポイズの範囲にあ
    り、しかもA成分の溶融粘度ηAとB成分の溶融粘度ηB
    が下記式(3)又は(4)を満足する該A成分とB成分
    を別々に溶融押出し、 ηA≦10×ηB 但し、ηA>ηBの時 …(3) ηB≦10×ηA 但し、ηB>ηAの時 …(4) 次いでこれら両成分が接触を開始してから3分以内に、
    A:Bの重量比率が15:85〜85:15の範囲で、紡糸直前で3
    〜8個のエレメントを有するスタチックミキサーを通し
    て層状複合形態となし、しかる後、該層状ポリマー流を
    放射線状に分配路とノズル孔数の比率1:1.5〜1:5の範囲
    となる分割数で分割分配しなおし、その後多孔紡糸ノズ
    ルより紡糸することを特徴とする請求項1に記載の複合
    繊維の製造方法。
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