JP2818683B2 - ろう付け性が優れたAl―Mg―Si系合金ろう材 - Google Patents

ろう付け性が優れたAl―Mg―Si系合金ろう材

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、中空構造を有するアルミニウム製熱交換器
の製造に好適に用いられる真空ろう付け性に優れたアル
ミニウム合金ろう材に関するものである。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
近年アルミニウム製構造体のろう付けに、フラックス
を必要としない真空ブレージング法が開発され、公害上
の心配がないところから盛んに行なわれるようになっ
た。真空ブレージングはアルミニウム合金を芯材とし、
その片面または両面にアルミニウム合金ろう材を皮材と
してクラードしたブレージングシートを用い、真空中で
ブレージングを行うもので、熱交換器を始め各種構造体
のろう付けに用いられている。そして真空ろう付け用ブ
レージングシートには各種の芯材用アルミニウム合金と
皮材用アルミニウム合金ろう材が開発され現在ではJISZ
3263により規格化されている。
熱交換器に使用される真空ブレージングシートとして
は、芯材としてJIS A3003,JIS A3005,JIS A3105,JIS A6
951合金を用い、皮材としてはJIS BA4004,AA4104合金ろ
う材を用いるのが通常である。なお板厚は0.5〜1.2mmで
あり、ろう材クラッド率は片面で5〜15%の両面ろう材
クラッドのブレージングシートとして使用されている。
こうした真空ブレージングシートを用いた中空構造を
有するアルミニウム製熱交換器としては、ドロンカップ
タイプのエバポレータ,オイルクーラー,ラジエーター
などが製剤されている。例えばドロンカップタイプのエ
バポレータはプレート部材(1)を第3図に示すように
積層し、この積層した部材(1)の間にコルゲートフィ
ン(2)を配設して、ろう付けを10-5〜10-4Torr台の真
空中で、500℃に加熱することにより製剤されている。
この真空ろう付け用ではブレージングシートろう材(JI
S BA4004,AA4104合金等)中に添加されたMgが400℃付近
から徐々に蒸発しはじめ、炉内酸化性ガスを、H2O+Mg
→MgO+H2及びO2+2Mg→MgOのゲッター反応により除去
するとともに、ろう材溶融時に急激に蒸発し、同様のゲ
ッター作用及びろう材表面の酸化皮膜の破壊作用をひき
おこすことにより、ろう付けを可能にしている。またSi
はろうの融点を下げ、ろう付け温度を下げてろう付け性
を良好にする作用を有している。
ところで、長時間ろう付炉を使用した場合、炉の汚染
等により真空度が低下してしまう。そしてそのような場
合ろうの濡れ性が低下してしまい、その結果ろうのフィ
レットが形成されずにろう付けできなくなるという、い
わゆるろう切れ現象と称する不良現象が生じる。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は上記の問題に鑑みなされたものである。
即ち本発明の他のろう材は0.05〜0.6wt%のMgおよび
6.0〜20.0wt%のSiを含有し、かつ、Feの含有量を0.3wt
%以下に規定し、さらに内部に存在する大きさ2〜5μ
mのMg2Si粒子の数密度を1000個/mm2以上とすることを
特徴とするものである。
また本発明ろう材の他の一つは、0.05〜0.55wt%のMg
および6.0〜20.0wt%のSiを含有し、残部Alと不可避的
不純物のFeの含有量を0.3wt%以下に規定し、並びに内
部に存在する大きさ2〜5μmのMg2Si粒子の数密度を1
000個/mm2以上とし、さらに内部に存在する大きさ6μ
m以下のSi粒子の数密度を3000個/mm2以上とすることを
特徴とするものである。
〔作 用〕
まず、本発明によるろう材合金の化学組成について説
明する。
ろう在中のMgは、上記の如くろう付け中に蒸発しゲッ
ター作用により真空度を向上させる効果と蒸発により酸
化皮膜を破壊する作用を有する。しかして従来その含有
量が0.55wt%未満では上記作用が十分に生じずろう付け
性が低下すると考えられていた。しかし、鋭意検討の結
果0.05〜0.55wt%のMg量でも十分にその効果が発揮され
ることが確認された。また、Mgの蒸発は炉内の汚染を促
進するものである。従って、Mg量の低減は炉内の清浄度
の改善にも効果がある。
ろう材中のSiは合金の融点を低下させ、ろう付けを可
能にする添加元素である。しかしてその添加量が6.0wt
%未満や20.0wt%を越えた場合、逆にろうの融点が上昇
しろう付け性が低下する。
ろう材中のFeは、ろう付け加熱中に酸化皮膜の成長を
促進するも、その含有量が0.3wt%を越えると皮膜の成
長量が大きくなるため、Mg蒸発時に皮膜は十分に破壊さ
れず、ろう付け性が低下する。
以上が、本発明のろう材合金の組成であるが、さらに
Biを0.01〜0.2wt%添加する場合がある。この場合、Bi
はろう流れ性を向上させると共に、Mgの蒸発を促進し、
皮膜を破壊されやすくする働きを有する。Biの添加量が
0.01wt%未満の場合上記作用が十分でなく、0.2wt%を
越えるとろう材の圧延性が低下し、ブレージングシート
の製造が困難である。
次に、粒径の測定方法について説明する。
ろう材内部に存在する粒子を、走査型電子顕微鏡を用
いた反射電子像により観察した。観察される反射電子像
で黒く見えるものをMg2Si粒子、白く見えるものをSi粒
子と判断し、画像解析を行いその円相当径を求めた。
さて、上記のように本発明において、Mg2Si粒子とし
てろう材中に存在するMgは蒸発する際に、ろう材表面の
酸化皮膜を破壊するとともに、ゲッターとして雰囲気中
の酸化性ガスを排出しろう付性を良好にする作用を有し
ている。しかしながら、粒径が5μmを越えるMg2Si粒
子は、真空ろう付け加熱初期においてMgの蒸発量を少な
くしゲッターとしての働きを低下させ、期待する様な効
果が得られない。一方、粒径が2μmより小さいMg2Si
粒子では、Mgが蒸発する際にろう材表面の酸化皮膜の破
壊力が低下する。従って、本発明では2〜5μmの粒径
のMg2Si粒子を十分に有していないといけない。即ち、
その範囲内のMg2Si粒子の数密度が1000個/mm2未満の場
合、Mg蒸発にともなうろう材表面の酸化皮膜の破壊能力
が低下するとともに、ゲッターとしての働きが不十分と
なる。従って、2〜5μmのMg2Si粒子の数密度を1000
個/mm2以上に限定すべきである。
さらに、ろう材中に存在するSi粒子は、ろう材の融点
を下げ、ろう付け温度を低めてろう付け性を良好にする
作用を有している。しかし、粒径が6μmを越えるSi粒
子の場合、ろうの溶融までに長時間を必要とする結果、
ろう付け時間を長くしたり、または、ろう付け温度を高
めなければならない。従って、本発明ではSi粒子は粒径
が6μm以下でなくてはいけない。そして、その範囲内
のSi粒子の数密度が3000個/mm2未満の場合、上記作用に
おいて所望の効果が得られない。従っで、6μm以下の
Si粒子の数密度を3000個/mm2以上に限定することによ
り、さらに、ろう付け性が向上するものである。
上記のように本発明において、ろう材内部に存在する
粒径が2〜5μmのMg2Si粒子の数密度を1000個/mm2
上に限定したことにより、Mg蒸気によるろう材表面の酸
化皮膜の破壊が十分にすすみ、またゲッターとして酸化
性ガスの排出を良好にする作用をなすものであり、さら
に粒径が6μm以下のSi粒子の数密度を3000個/mm2以上
に限定したことにより、ろうの溶融温度を低下させるこ
とによりろう付け性を良好に作用をなすものである。
このような本発明におけるMg2Si粒子の分布およびSi
粒子の分布は、鋳造,ソーキング,中間焼鈍条件をコン
トロールして行う。
〔実施例〕
次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
第1表に示す組成の芯材の両面に第2表に示す本発明
ろう材A及び比較ろう材B〜Eをそれぞれクラッド(片
面15%のクラッド率)した板厚0.6mmのブレージングシ
ートを製造する工程において、ろう材の鋳造条件および
ソーキング処理条件を変えることにより、ろう材中のMg
2Si粒子およびSi粒子の存在状態を第2表に示すように
変更した各種のブレージングシートNo.1〜No.5を作成し
た。
次いでこれら各ブレージングシートをプレス成形して
第1図(a)(b)に示すように中央部に開口を有する
カップ(3)を作製した。なおこの開口は排気口(4)
である。同様にしてブレージングシートをプレス成形し
たカップを重ね、一端の排気口(4)に接続筒(7)を
設けて第2図に示す試験用中空構造体(5)を真空ブレ
ージングにより作成した。図中(3)は排気口つきカッ
プ、(6)は排気口なしカップである。ブレージングの
テスト条件は、5×10-5Torrの真空中にて、昇温速度30
℃/minで600℃に到達後10min保持した。評価はカップの
合わせ面におけるブレージング後のフィレット形成具合
により行い、各ブレージングシートによる中空構造体10
0個についてのろう付テスト後のろう切れ発生率を求め
てその結果を第3表に並記した。
第3表より、本発明ろう材を用いたブレージングシー
トNo.1は比較ろう材を用いたブレージングシートNo.2〜
No.5に比べてフィレットの形成能が著しく改善され、ろ
う付け性が安定していることがわかる。
〔発明の効果〕
このように本発明によればろう付け性を向上させるこ
とができるので不良率を著しく低減させることが可能で
あり、安定した操業ができ、工業上顕著な効果を奏する
ものである。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)(b)はろう付性試験に用いる成形カップ
を示すもので(a)は平面図、(b)は(a)のYY線断
面図、第2図はろう付試験用中空構造体を示す側断面
図、第3図は積層タイプのエバポレータを示す斜視図で
ある。 1……プレート部材 2……コルゲートフィン 3……排気口つきカップ 4……排気口 5……中空構造体 6……排気口なしカップ 7……接続筒
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭49−11748(JP,A) 特開 昭50−51448(JP,A) 特許 昭2756195(JP,B2) 特許 昭2756196(JP,B2) 特公 昭53−15974(JP,B2) 特公 昭55−12355(JP,B2) 特公 昭56−22440(JP,B2) 特公 昭61−9378(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B23K 35/28

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】0.05〜0.55wt%のMgおよび6.0〜20.0wt%
    のSiを含有し、残部Alと不可避的不純物中のFeの含有量
    を0.3wt%以下に規定し、さらに内部に存在する大きさ
    2〜5μmのMg2Si粒子の数密度を1000個/mm2以上とす
    ることを特徴とするろう付け性が優れたAl−Mg−Si系合
    金ろう材。
  2. 【請求項2】0.05〜0.55wt%のMgおよび6.0〜20.0wt%
    のSiを含有し、残部Alと不可避的不純物中のFeの含有量
    を0.3wt%以下に規定し、並びに内部に存在する大きさ
    2〜5μmのMg2Si粒子の数密度を1000個/mm2以上と
    し、さらに内部に存在する大きさ6μm以下のSi粒子の
    数密度を3000個/mm2以上とすることを特徴とするろう付
    け性が優れたAl−Mg−Si系合金ろう材。
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