JP2809858B2 - フォトクロミック材料及びフォトクロミック材料の製造方法 - Google Patents

フォトクロミック材料及びフォトクロミック材料の製造方法

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、フォトクロミック材料及びフォトクロミッ
ク材料の製造方法に関する。
従来の技術 従来、可逆的な色の変化を生ずる材料としてフォトク
ロミック材料が知られている。
このフォトクロミック材料のうちで、最もよく検討さ
れているものにスピロピランが挙げられ、現在までに数
多くのスピロピランが発表されている。
例えば下記に示したように、スピロピラン(A)に紫
外線(h νUV)を照射すると、メロシアニン(B)に変
化し、赤色を呈する。
このメロシアニンは、可視光(h νVIS.)を照射する
と元のスピロピランに戻る。
スピロピランのこのような性質を応用して、例えば光
学記録媒体に応用することができる。
光学記録媒体は、例えばディスク上にスピロピランを
塗布し記録層を作成し、紫外線照射によって記録層を着
色状態にして全面を初期化する。
この光学記録媒体の記録層を、着色状態から無色状態
から変化させるのに適当な波長のレーザー光を照射する
ことにより、その照射部分のみがフォトクロミック反応
を起こし無色体に変化し、記録を行なうことができる。
また、記録された光学記録媒体の記録層は、紫外線を
照射することによってそのスポットは再び着色体に変化
し、初期化することができる。
発明が解決しようとする課題 フォトクロミック材料を光学記録媒体に利用するため
には、記録層の膜厚及び膜厚のばらつきがnmオーダーで
あり、しかも例えば記録層中のフォトクロミック材料の
凝集等による不均一性が、記録層全体に渡ってμmオー
ダー以下であることが望まれる。
そのためには、ラングミュアー・ブロジェット法(以
下LB法という)により記録層を堆積した薄膜化が望まし
いが、従来のスピロピランは、疎水性が不十分なため、
均一の高い光学記録媒体を得ることができないという課
題があった。
また、デバイスの小型化のためには、光学記録媒体へ
の記録は、半導体レーザーで行なうことが望ましいが、
例えば上記スピロピラン材料を始めとする多くのフォト
クロミック材料は、その着色体が半導体レーザー発振領
域(670nm以上)に感度を有さないため、半導体レーザ
ーによる記録を行なうことができないうという課題があ
った。
本発明は、このような従来技術の課題を同時に解決す
るフォトクロミック材料及びフォトクロミック材料の製
造方法と提供を目的とする。
課題を解決するための手段 上記問題点を解決するために本発明は、下記一般式の
フォトクロミック材料を提供するものである。
ただし、R1、R2は炭素数1以上のアルキル基を示す。
さらに、下記一般式を有するフォトクロミック材料と
酸ハロゲン化物とを、塩基触媒下で反応させて上記一般
式に記載のフォトクロミック材料を得る製造方法を提供
する。
作用 本発明のフォトクロミック材料は、スピロピランの酸
素の位置に硫黄を有し、1'位にアルキル基、8位にアル
カノイルオキシメチル基を有する特別の化合物で、この
置換基の組合せを選択することにより気水界面で安定な
単分子膜を形成することが可能であると同時に、半導体
レーザー発振領域に着色体に着色体の吸収感度を有す
る。
実施例 本発明のフォトクロミック材料のR1域はR2は、メチル
基、メチル基、イソプロピル基等を始めとする炭素数1
以上のアルキル基であり、特に炭素数が8以上である場
合には、疎水性がフォトクロミック材料に付与できLB法
が適用できるため好ましい。炭素数の上限は、原料入手
の容易性のため30まで実験を行なったが、それ以上でも
原料さえ手に入れば本発明でいう効果は充分に発揮でき
るものと考えられる。
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら
説明する。
以下本発明者らが行なった数多くの実験例の中から、
フォトクロミック材料として下記化学構造式で示したス
ピロピラン(以下TP1822と称す)を中心として説明する
が、本発明が以下示すスピロピランに限定されるもので
ないこと勿論である。
先ず、上記スピロピランの製造方法を、製造工程順に
説明する。
(ステップ1) 先ず、下記に示した反応を次のような工程で行なっ
た。
2,3,3−トリメチルインドレニン()42.3g(266mmo
l)と、ヨードオクタデカン()101.1g(266mmol)と
を、2−ブタノン200mlに溶解し、40時間加熱還流し
た。
2−ブタノンを留去後、残った固体を1000mlのエタノ
ールから再結晶したところ、赤白色の固体1−アクタデ
シル−2,3,3−トリメチルインドレニウムのヨウ素塩
)を91.5g(197mmol)得た。
本工程の収率は、63.9%であった。
(ステップ2) 次に、下記に示した反応を次のような工程で行なっ
た。
上記1−オクタデシル−2,3,3−トリメチルインドレ
ニウムのヨウ素塩()91.5g(197mmol)を100mlのジ
エチルエーテルに分散し、この分散液を3.8N水酸化ナト
リウム水溶液400mlに分散した。
3.5時間撹はんした後、油層をジエチルエーテルで抽
出した。
抽出した油層を水酸化ナトリウムで1昼夜乾燥した
後、ジエチルエーテルを留去して、黄色液体の1−オク
タデシル−2−メチレン−3,3−ジメチルインドリン
)を65.6g(159mmol)得た。
この工程の収率は、80%であった。
(ステップ3) 上記2工程とは別に、下記に示した反応を次のような
工程で行なった。
クロロメチルサリチルアルデヒド()10g(46mmo
l)と、酢酸銀7.7g(46mmol)とを、ベンゼン500ml中で
混合し、還流した。
10時間後熱い溶液をろ過し、ろ液を濃縮し、ヘキサン
/ベンゼン=5/1から再結晶を行なうことにより、メタ
ノイルオキシメチルサリチルアルデヒド()10g(42m
molを得た。
本工程の収率は、91%であった。
(ステップ4) 上記工程の次に、下記に示した反応を次のような工程
で行なった。
上記工程で得たメタノイルオキシメチルサリチルアル
デヒド()10g(42mmol)、及び塩化N,N−ジメチルカ
ルバモイル10.4g(84mmol)、さらに1,4−ジアザビシク
ロ[2,2,2]オクタン(DABCO)9.4g(84mmol)を、DMF3
00ml中に溶かし、約50℃に加熱した。
加熱5分後に白い固体をろ過し、ろ液をジエチルエー
テル/水=1/1に加えて、エーテル層を乾燥濃縮し、ア
ルデヒド()11.1g(34mmol)を得た。
本工程の収率は、80%であった。
(ステップ5) 上記工程の次に、下記に示した反応を次のような工程
で行なった。
上記工程で得たアルデヒド()11.1g(34mmol)を3
0分間100℃に加熱することにより、アルデヒド()を
9.4g(29mmol)得た。
本工程の収率は、85%であった。
(ステップ6) 上記工程の次に、下記に示した反応を次のような工程
で行なった。
上記工程で得たアルデヒド()9.4g(29mmol)を、
メタノールに溶解し、4Nの水酸化ナトリウムを2ml加え
たのちすぐに1N塩酸を加え、アルデヒド()4.0g(19
mmol)を得た。
この工程の収率は、66%であった。
(ステップ7) これらの工程の次に、下記に示した反応を次のような
工程で行なった。
ステップ6で得たアルデヒド()4.0g(19mmol)
を、エタノールに溶解させ、ステップ2で得たインドリ
ン()7.8g(19mmol)を加えて加熱還流した。2時間
後に水を加え、酢酸エチルで抽出し、ヘキサン/酢酸エ
チル=5/1でカラム分取を行ない、スピロピラン(10
8.5g(14mmol)を得た。
本工程の収率は、72%であった。
(ステップ8) このようにして合成したスピロピラン(10)に対し、
次のステップによって下記反応による長鎖を導入した。
スピロピラン(10)8.5g(14mmol)と、塩化ドコサノ
イル5.4g(15mmol)とを、、ベンゼンに溶解させ、ピリ
ジンを1ml加えて室温で撹拌した。1時間後、水を加え
てヘキサンによって抽出した。
ヘキサン/酢酸エチル=20/1でカラム分取を行なった
後、エタノールから2回再結晶を行なうことにより、目
的のスピロピラン(TP1822)5.4g(5.7mmol)を得た。
本反応の収率は、41%であった。
こうして得た最終生成物TP1822の構造はNMRにより確
認した。
各スペクトルの帰属を第1表に示す。
表中のケミカルシフトの単位はppm、かっこ内はピー
クの形状でs:一重線、d:二重線、t:三重線、m:多重線を
表わす。また、帰属でJはカップリング定数を示す。
比較例 ピリジンを加えずにステップ8の反応を行なった。
スピロピラン(10)8.5g(14mmol)と、塩化ドコサノ
イル5.4g(15mmol)とを、ベンゼンに溶解させたが、室
温では反応は全く進行しなかった。
そこで加熱還流を行なうと、複雑な混合物を与え、目
的のTP1822は生成しなかった。
なお、触媒はピリジンが最も優れているが、他の塩基
触媒でもほぼ同様の反応が進行した。
各種塩基触媒を用いて得た収率を第2表に示す。
このようにして合成したフォトクロミック材料TP1822
は、以下の条件でLB法によって記録層を製膜することが
でき、光学記録媒体を得た。
圧縮速度 10mm/min 累積速度 10mm/min 累積圧 20mN/m このLB膜の記録層は膜厚が10nmときわめて薄く、また
顕微鏡観察では、1μm以上の凝集体は観測できず、記
録層全体に渡っての均一性はきわめて高かった。
この膜に紫外線(366nm)を照射すると、無色体から
速やかに着色体に変化し、その吸収極大は670nmであっ
た。
これは、従来のスピロピランを用いた光学記録媒体と
比較して長波長領域に吸収極大を有する。
しかもこの着色体は非常に安定で、室温暗所で24時間
放置しても吸光度に全く変化はみられなかった。
この光学記録媒体は、波長700nmの半導体レーザーを
用いて記録することができた。
またこのスポットに紫外線を照射することによって、
再び初期状態に戻すことができた。
本手法を用いて、R1の置換基がメチル基、オクチル
基、トリアコンチル基を有するスピロピランも同様に合
成することができた。
また、ヘンエイコサノイロキシメチル基の代わりにメ
タノイルオキシメチル基、オクタノイルオキシメチル基
を有するスピロピランも同様に合成することができ、そ
れを用いた光学記録媒体は、ほぼ同波長に吸収極大を有
し、同様に記録消去が可能であった。
それぞれの着色体の吸収極大波長を、第3表に示す。
発明の効果 本発明は、下記一般式を有するフォトクロミック材料
であるため、LB法によって薄膜化することにより、均一
な超薄膜を形成することができ、従来のスピロピラン化
合物と比較して長波長域に吸収極大を有するスピロピラ
ン化合物の提供が可能になり、その波及効果は大であ
る。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式の有するフォトクロミック材
    料。 ただし、R1、R2は炭素数1以上のアルキル基を示す。
  2. 【請求項2】R1若しくはR2の少なくとも何れかが、炭素
    数8以上のアルキル鎖である、請求項1記載のフォトク
    ロミック材料。
  3. 【請求項3】下記一般式を有するフォトクロミック材料
    と酸ハロゲン化物とを、塩基触媒下で反応させることを
    特徴とするフォトクロミック材料の製造方法。
  4. 【請求項4】塩基触媒に、ピリジンを使用する請求項3
    記載のフォトクロミック材料の製造方法。
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