JP2805633B2 - 積層成形体 - Google Patents

積層成形体

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、高強度、高弾性率のフィルム層と繊維強化
熱硬化性樹脂層とを積層し、硬化一体化した成形体に関
する。更に詳しくは、改良された極めて高い衝撃吸収性
と優れた機械的強度を併せ持ち、また、切削、研磨等の
機械加工性に優れた積層成形体に関するものである。
(従来技術及びその問題点) 炭素繊維強化エポキシ樹脂に代表される繊維強化熱硬
化性樹脂成形体は、高い機械的強度、軽量、耐蝕性等の
利点を生かし、テニスラケットのフレームやゴルフクラ
ブシャフト等のスポーツ・レジャー用品から航空機等の
構造材料など幅広い分野で利用されている。
このように汎用性の高い複合材料からなる成形体につ
いて、研究開発がなされており、また数多くの新しい技
術が開示されている。
しかしながら、それらの多くは一般に、種々の機械的
強度物性の向上やバランス化を、あるいはメッキ、ライ
ニング加工、金属との接合等の応用加工を指向したもの
である。それらの中で、炭素繊維強化材にアラミド繊維
を併用することにより衝撃吸収性の改良が試みられ効果
を得た例を挙げることが出来るが、アラミド繊維を使用
した場合、その耐切断性の高さの為、加工面がももけ
る、けば立つ等、機械加工性が極めて悪く大きな欠点と
して指摘される。
一方、靭性あるいは衝撃吸収性の改良のみを考慮すれ
ば、ゴム、エラストマーまたは熱可塑性樹脂等を成形体
中に導入する方法が考えられるが、繊維強化材料の本来
の特徴である優れた機械的物性を犠牲にすることにな
る。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、最近開
発された引張強度及び引張弾性率の非常に大きいフィル
ムを用いることにより、繊維強化樹脂積層管本来の優れ
た機械的特性を損うことなく、靭性、衝撃吸収性が極め
て高く、機械加工の容易な成形体を提供することを目的
とする。
(課題を解決するための手段) 即ち、本発明は、融点又は分解点が300℃以上である
アラミドから実質的になり、長さ方向、横方向ともに35
kg/mm2以上の引張強度および700kg/mm2以上の引張弾性
率を有するフィルム層と繊維強化熱硬化性樹脂層とを積
層し、硬化積層一体化してなる積層成形体である。
本発明において用いるフィルムは、以下の要件が必要
である。
まず、第1に、フィルムは、300℃未満には融点をも
たない有機系重合体から実質的に構成されている必要が
ある。融点が、300℃未満であると、樹脂の硬化等の複
合材料の製造工程で、融解したり、熱変形したりするの
で好ましくなく、また製品化されたあとも、使用環境が
少し厳しくなると性能が著しく低下することがあるので
好ましくない。このような高融点の有機系重合体として
は、アラミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケト
ン、全芳香族ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、
ポリベンツビスチアゾール等が挙げられるが、樹脂との
接着の良さや以下に述べる高強度、高弾性率の発現のし
易さからアラミドとポリイミド、中でもアラミドが好ま
しい。好ましく用いられるアラミドには下記の一般式
(I)、(II)で表わされる構造のもの、または、これ
らの共重合体がある。
(式中において、R1,R2およびR3 から選ばれ、これらの水素原子がハロゲン、メチル、エ
チル、メトキシ、ニトロ、スルホンなどの官能基で置換
されていてもよい。m,nは平均重合度であり約50〜1000
である。) 本発明に用いられるフィルムが特定の有機系重合体か
ら実質的になるという意味は、上記、特定の有機系重合
体以外の成分が、本発明の効果を損わない範囲で少量含
まれていてもよいことであり、例えば上記以外の有機系
重合体、有機系低分子化合物、無機化合物などを少量含
有してもよい。
次に本発明に用いられるフィルムは35kg/mm2以上の引
張強度および700kg/mm2以上の引張弾性率を有している
必要がある。
本発明で用いられるフィルムは、従来汎用のものと比
べれば、これらの物性が抜きん出ていることは明らかで
あるが、繊維強化樹脂層に対しては低いものであり、成
形体の物性を極力低下させない為には、これらの要件が
満足されねばならない。好ましくは45kg/mm2以上の引張
強度および1000kg/mm2以上の引張弾性率を有しているこ
とである。
これらの物性を満足するフィルムを用いる時、成形体
の強度物性は低下しないのみならず、繊維強化熱硬化性
樹脂層の破壊が抑制され、強化繊維本来の物性を更に発
揮させる効果が得られ、しかも強度が増大するという極
めて好ましい状況が達成される。更に好ましくは、フィ
ルムが50kg/mm2以上の引張強度を有していることであ
り、又は1200kg/mm2以上の引張弾性率を有していること
である。
フィルムは、コンポジット製品としての抗張力の必要
な方向に引張強度や引張弾性率を増強した所謂テンシラ
イズドタイプが用いられてもよいがもちろん、フィルム
として、等方的な性能を有するものを用いた方が、得ら
れる成形体の機械的強度や寸法安定性に方向性が少ない
という点でよい。本発明において、引張強度と引張弾性
率は少くとも1つの方向が前記の値を満たしていればよ
いが、好ましくは、任意に選んだ互いに直交する2つの
方向の特性の平均値が前記した値を満していることであ
る。
本発明において、補強効果を十分に発現させるため
に、フィルムと熱硬化性樹脂とが十分な接着力をもつこ
とが好ましい。大きな接着力は、フィルム又はテープの
表面を粗にする(製膜上の工夫、製膜後の物理的又は化
学的なエッチング等)、表面に化学活性種を導入する
(コロナ放電処理、プラズマ処理、化学分解等)、接着
用の含浸前処理をする(エポキシ化合物、イソシアネー
ト化合物、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合物
等)、又はこれらを組み合わせる等の方法が好ましく用
いられ、それにより達成される。
本発明に用いられるフィルムの厚みは成形品における
繊維強化樹脂層との積層構成を考慮して適宜決定される
が通常5〜100μmであり、好ましくは10〜50μmであ
る。
本発明で言う、繊維強化熱硬化性樹脂層は、補強繊維
に熱硬化性樹脂を含浸して得られたプリプレグ材であ
る。
本発明に用いられる補強繊維としては、ガラス繊維、
カーボン繊維、アラミド繊維、ポリベンズイミダゾール
繊維、ポリベンゾチアゾール繊維、あるいはこれらを金
属被覆(例えばニッケルメッキを施したカーボン繊維
等)したものや、また、アルミナ繊維、シリコンカーバ
イド繊維等の無機繊維も含まれ、これらの繊維の2種以
上を併用することもできる。
また、繊維は一方向に引き揃えたシート状の形で、あ
るいは織物の形で用いられ、特に等方的な機械物性が要
求される用途においては適当な長さにカットされた繊維
がランダムに配向したマット状でも使用される。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂は特に限定されるも
のではなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、
ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などから選ばれる。
また、これらの樹脂に、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防
止剤、滑剤、着色剤、熱安定剤、老化防止剤、補強用短
繊維、補強用粉粒体、成形用薬剤、熱可塑性樹脂、エラ
ストマー、ゴム状物、その他通常の樹脂添加剤が添加さ
れていてもよい。
フィルム層と繊維強化熱硬化性樹脂層との積層構成お
よび積層割合は、後述する積層成形体の成形方法やある
いは成形体の使用される用途によって適宜決められ特に
制限はない。
積層構成の例としては、例えば繊維強化熱硬化性樹脂
層とフィルム層が交互に積層されたもの、繊維強化樹脂
層の外側および/または内側にフィルム層が積層された
もの等がある。特に衝撃吸収性と破壊防護の観点から
は、最外層あるいは最外層と最内層とにフィルム層を配
置することが効果的である。
積層割合はフィルムの成形体全体に対する体積分率が
5〜50%の間に取られ、好ましくは10〜20%である。
本発明の積層成形体は種々の方法で製造することがで
きる。
例えば、繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグの片面にフ
ィルムを貼り合わせ、これを積層し、エアバッグ/オー
トクレーブ法等で硬化成形し、繊維強化樹脂層とフィル
ム層が交互に積層一体化した積層板が得られる。また、
予めフィルムの少なくとも片面に熱硬化性樹脂を塗工
し、適宜加熱等の処理を行なって、いわゆるBステージ
化したものを、所望の厚さに積層された繊維強化熱硬化
性樹脂層の片面、あるいは両面に更に適当枚数積層し、
硬化成形することにより、サイドバイサイドあるいはサ
ンドイッチ型の積層板を得ることもできる。
また、別の形状の成形体の例としては、以下の方法で
管状の成形体を得ることができる。
例えば、繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグの片面にフ
ィルムを貼り合わせ、これを円柱状の金型に捲回し、そ
の後、硬化脱型すれば繊維強化樹脂層とフィルム層が交
互に積層一体化した積層管が得られる。また、一度積層
した物を金型から抜き取り、いわゆるエアバッグ法で硬
化成形することができる。あるいは、金型に一端、繊維
強化熱硬化性樹脂層を捲回した後、予めフィルムの片面
に熱硬化性樹脂を塗工し、Bステージ化した物を、さら
にこれに重ねて捲回すれば最外層をフィルム層とする積
層管となる。強化繊維のトウを熱硬化性樹脂の満たされ
た浴を通過させ、これを金型に巻き取っていく、いわゆ
るフィラメントワインド法による成型において、適宜、
フィルム層を捲回積層することも可能である。
フィルム層の導入に際しては、フィルムの両面が繊維
強化樹脂層に接する場合は、フィルムを、そのまま積層
すれば良いし、フィルムが複数層連続して積層される場
合は先に述べた通り、予め、少くともフィルムの片面に
熱硬化性樹脂をコーター等を用いて塗工し、必要に応じ
て加熱し、いわゆるBステージ化させたものを準備して
おけば良い。
また、用いるフィルムの形態も一般の広幅のものでも
良ければ、比較的細幅のテープ状のものでもフィラメン
トワインディング法と同等の方法等で使用することがで
きる。更に、一枚のフィルムを用いることができれば、
あらかじめ複数枚重ねたものを使用することも成されて
良い。
(実施例) 次に本発明を実施例を用いて詳細に説明する。
参考例1 アラミドフィルムの製造 対数粘度(98%濃硫酸中に溶解して、C=0.5g/100ml
にて、30℃で測定)が5.5のポリ−pフェニレンテレフ
タルアミド(PPTAと略す)を99.5%の硫酸にポリマー濃
度12%で溶解し、光学異方性のあるドープを得た。この
ドープを真空下に脱気し、濾過したのち、ギアポンプを
通じて、スリットダイから押出し、鏡面に磨いたタンタ
ル製のベルトにキャストし、相対湿度40%の約90℃の空
気の雰囲気のゾーンを通して、流延ドープを光学等方化
し、ベルトとともに、20℃の30%硫酸水溶液中に導いて
凝固させた。次いで、凝固フィルムをベルトからひきは
がし、カセイソーダ水溶液で中和し、水洗した。洗浄の
終了したフィルムを乾燥させずに、ローラで長さ方向に
約1.15倍延伸し、次いでテンターで幅方向に1.3倍延伸
したのち、定長に保持しつつ、200℃で乾燥し更に300℃
で定長熱処理し、20μmのPPTAフィルムを製造した。
得られたフィルムは淡黄色透明で、熱分析において50
0℃以下には転移温度は見られなかった。また、引張強
度及び弾性率は、長さ方向で、それぞれ48kg/mm2、1490
kg/mm2、幅方向で、それぞれ47kg/mm2、1420kg/mm2であ
った(フィルムAとする)。
参考例2 熱硬化性樹脂塗工フィルムの製造 上記PPTAフィルムの片面に、化成ファイバーライト社
製エポキシ樹脂#7714(メチルエチルケトン混合液、固
形分70重量%)を由利ロール機械社製塗工機を用いコン
マダイレクト方式で塗工し、100℃で15分加熱し熱硬化
性樹脂塗工フィルム(フィルムBとする)を製造した。
フィルムBの厚さは約30μmであった。
参考例3 繊維強化熱硬化性樹脂の製造 エポキシ樹脂(化成フアイバーライト社製#7714)
(メチルエチルケトン混合液、固形分50重量%)を一方
向に引きそろえたPAN系炭素繊維(旭日本カーボンフア
イバー社製ハイカーボロン 12K)に含浸しつつ、これ
をシリコン離型紙を巻き付けた500mmφのドラム上に巻
き取った。これを繊維方向と直角な方向に切り開き、10
0℃で30分加熱して一方向繊維強化熱硬化性樹脂(CFプ
リプレグとする)を製造した。CFプリプレグの厚さは約
0.2mmであった。
実施例1 フィルムAをCFプリプレグの片面にラミネートロール
を用い圧着してシートを作製した。このシートを直径10
mmのステンレス製丸棒(金型)に繊維軸が長さ方向とな
る様に6層捲回積層した。得られた積層体を更に離型処
理を施したポリエチレンテレフタレートテープ(厚さ25
μm PETテープとする)でラッピングし、140℃の熱風循
環式加熱装置中で2時間硬化させた。硬化した成型体を
取り出し、PETテープを除去し、金型を脱き取り積層管
を得た。該積層管は内径10mm、外径約12mmのCFプリプレ
グ層とPPTAフィルム層が交互に積層されたものである。
実施例2 直径10mmφのステンレス丸棒にCFプリプレグを繊維軸
が長さ方向と一致するように5層捲回積層した。この上
にフィルムBを4層捲回積層し、その後は実施例1と同
様の方法で処理し、内径10mm、外径約12mmの内側がCFプ
リプレグ層、外側がPPTAフィルム層である積層管を得
た。
実施例3 直径10mmφのステンレス丸棒に、まずフィルムBを3
層積層し、ついでCFプリプレグを5層積層し、更にフィ
ルムBを3層積層した。その後は実施例1と同様の方法
で処理して、PPTA/CF/PPTAの構成の積層管を得た。
実施例4 まず、CFプリプレグを実施例2と同様に積層し、その
上に15mm巾にスリットしたフィルムBをテーピングマシ
ンを用いてピッチ2.5mmでテーピングし、その後は、実
施例1と同様の方法で処理して内径10mm、外径約12mmの
積層管を得た。
比較例1 フィルムを用いない以外は実施例2と同様に成形を行
い、内径10mm、外径約11mmの炭素繊維強化積層管を得
た。
比較例2 CFプリプレグを7層積層する以外は比較例1と同様に
成形し内径10mm、外径約12mmの積層管を得た。
実施例1〜4、比較例1〜2の各積層管について機械
物性を第1表に示す。
なお、上記実施例で得た積層管は、いずれも、丸刃式
のカッターで切断でき、旋盤による加工、サンドペーパ
ーによる研磨、ドリリング、ネジ切りのいずれも容易に
行えた。また、それぞれの加工面にけば立ちや、その他
の異常な欠陥等は全く認められなかった。
以下、第1表に示す項目の測定条件は次のとおりであ
る。
(1) 軸圧縮強度;管状成形体から長さ13mmの試験片
を切り出し、島津製作所製万能試験機(オートグラフAG
−10型)を用い、圧縮速さ1mm/分で管の長さ方向に圧縮
し、最大破壊強さを求めた。軸圧縮強度は以下の式によ
り算出した。
但し、σ1;軸圧縮強度(kg/mm2) d1 ;試験片の内径(mm) d2 ;試験片の外径(mm) P ;最大破壊強さ(kg) (2) 面圧縮強度;管状成形体から長さ17mmの試験片
を切り出し、圧縮速さ1mm/分で管の径方向に圧縮し最大
破壊強さを求めた。面圧縮強度は次式によって算出し
た。
但し、σ2;軸圧縮強度(kg/mm2) L ;試験片の長さ(mm) 他の記号は(1)に同じ。
(3) アイゾット衝撃吸収エネルギー;管状成形体よ
り長さ64mmの試験片を切り出してそのまま用いた。東洋
精機製作所製アイゾット衝撃試験機で、ハンマ重量3.87
4kg、持ち上げ角135度で試験した。衝撃吸収エネルギー
は次式により求めた。
但し、E ;アイゾット衝撃吸収エネルギー(kg・cm/c m2) W ;ハンマ重量(3.874kg) R ;ハンマの軸心と重心間の距離(22.41cm) β;ハンマが試料を破断し反対側に振り上がっ た角度(度) (発明の効果) 本発明の積層成形体は繊維強化樹脂層と共に、引張強
度・弾性率が極めて大きく耐熱性の優れたフィルム層を
積層一体化して成形されるものであり、これにより、優
れた機械的物性を有し、更には、これまでの材料では得
られなかった極めて高い衝撃吸収性を有している。加え
て、切断加工性や穴あけ加工性等の機械加工性にも優
れ、むしろ繊維強化の場合より加工時の工程が簡略化さ
れるという利点すらある。
本発明の積層管は、このような特徴を生かして、例え
ば、ゴルフクラブのシャフト、テニスやバドミントンの
ラケットシャフト、棒高とびのポール、釣竿、ロケット
のケーシング、タンク類、各種産業用配管等、様々の用
途で極めて好ましく用いられる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】融点又は分解点が300℃以上であるアラミ
    ドから実質的になり、長さ方向、横方向ともに35kg/mm2
    以上の引張強度および700kg/mm2以上の引張弾性率を有
    するフィルム層と繊維強化熱硬化性樹脂層とを積層し、
    硬化積層一体化してなる積層成形体。
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