JP2744637B2 - 複合材料 - Google Patents

複合材料

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、フィルムを強化体とする複合材料に関す
る。更に詳しくは、高強度・高弾性率のフィルムと熱硬
化性樹脂が交互に積層され、硬化一体化してなる、高強
度、高耐衝撃性の複合材料に関する。
(従来技術及びその問題点) 繊維強化熱硬化性樹脂複合材料は、優れた比強度、比
弾性率を有することから、高強度、軽量、耐蝕性等が要
求される分野、例えば航空機構造部材あるいはラケット
フレームやゴルフシャフト等のスポーツ用品などに広く
使用されている。しかしながら、該材料は、一般に靱性
に乏しく耐衝撃性に問題があり、又さらには、一旦衝撃
的破壊を起こすと、強化繊維がささくれた鋭利な破壊面
を露出するという欠点を有する。そこで、マトリックス
樹脂である熱硬化性樹脂をゴム状重合体で変性する、あ
るいは熱可塑性樹脂を配合することにより改質するな
ど、靱性を高めるための研究が行なわれている。
また、繊維強化材料の別の問題点は、物性の大きな異
方性であり、一般には強化繊維の配向方向を変化させて
積層することによって疑似等方化を行っているものの、
プリプレグの切り出しから精確な積ね合せまで多大の手
間と労力を必要とする。あるいは、適当な長さにカット
した強化用繊維をランダムに配向させたマット状に加工
し、これにマトリックス樹脂を含浸して成形体とするこ
とも行なわれているものの、強化繊維が本来有している
性能を発揮しきれない。
これらに対する一つの考え方として、フィルムを補強
体とて使用することが考えられるが、一般にフィルムは
繊維に比べて強度、弾性率が一桁以上小さく、また、マ
トリックス樹脂との接着界面が繊維に比べて相対的にか
なり小さいという欠点があるため、当業者であればある
程、複合材料の補強材として適当ではないと考えられて
きた。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、最近開
発された引張強度及び引張弾性率の非常に大きいフィル
ムを用いた複合材料であり、複合材料の基本特性的に繊
維補強複合材料に遜色のない、及び可薄性、寸法安定
性、耐衝撃性等に優れた複合材料を提供するものであ
る。
(課題を解決するための手段) 即ち、本発明は、300℃未満には融点をもたない有機
系重合体から実質的になり、35kg/mm2以上の引張強度お
よび700kg/mm2以上の引張弾性率を有する有機系重合体
のフィルムと熱硬化性樹脂が交互に積層され、硬化一体
化してなる複合材料である。
本発明において用いられるフィルムは、以下に述べる
要件が必要である。
まず、第1に、フィルムは、300℃未満には融点をも
たない有機系重合体から実質的に構成されている必要が
ある。融点が300℃未満であると、樹脂の硬化等の複合
材料の製造工程で融解したり、熱変形したりするので好
ましくなく、また製品化されたあとも、使用環境が少し
厳しくなると性能が著しく低下することがあるので好ま
しくない。このような高融点の有機系重合体としては、
アラミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、
全芳香族ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、ポリ
ベンツビスチアゾール等が挙げられるが、樹脂との接着
の良さや以下に述べる高強度、高弾性率の発現のし易さ
からアラミドとポリイミド、中でもアラミドが好まし
い。
好ましく用いられるアラミドには、下記の一般式
(I)、(II)で表わされる構造のもの、またはこれら
の共重合体である。
(式中において、R1,R2およびR3 から選ばれ、これらの水素原子がハロゲン,メチル,エ
チル,メトキシ,ニトロ,スルホンなどの官能基で置換
されていてもよい。m,nは平均重合度であり、約50〜100
0である。) 本発明に用いられるフィルムが特定の有機系重合体か
ら実質的になるという意味は、上記、特定の有機系重合
体以外の成分が、本発明の効果を損わない範囲で少量含
まれていてもよいことであり、例えば上記以外の有機系
重合体、有機系低分子化合物、無機化合物などを少量含
有してもよい。
次に、本発明に用いられるフィルム又はテープは35kg
/mm2以上の引張強度および700kg/mm2以上の引張弾性率
を有している必要がある。
これ以下の物性では、熱硬化性樹脂を積層して用いた
場合、得られる複合材の物性は不満足なものとなり、本
発明の目的は果たし得ない。好ましくは45kg/mm2以上の
引張強度および1000kg/mm2以上の引張弾性率を有してい
ることかであり、更に好ましくは50kg/mm2以上の引張強
度を有していることであり、又は1200kg/mm2以上の引張
弾性率を有していることである。このような物性を有す
るフィルムを用いた時、極めて優れた耐衝撃性と、繊維
強化複合材に匹敵する強度物性を示す複合材料が得られ
る。
フィルムは複合材料としての抗張力の必要な方向に引
張強度や引張弾性率を増強した、所謂テンシライズドタ
イプが用いられてもよいが、もちろん、フィルムとし
て、等方的な性能を有するものを用いた方が、複合材料
の機械的強度や寸法安定性に方向性が少ないという点で
好ましい。
本発明において、引張強度と引張弾性率は少くとも1
つの方向が前記の値を満たしていればよいが、好ましく
は、任意に選んだ互いに直交する2つの方向の特性の平
均値が前記の値を満していることである。
本発明において、補強効果を十分に発現させるため
に、フィルムと熱硬化性樹脂とが十分な接着力をもつこ
とが好ましい。大きな接着力は、フィルムの表面を粗に
する(製膜上の工夫、製膜後の物理的又は化学的なエッ
チング等)、表面に化学活性種を導入する(コロナ放電
処理、プラズマ処理、化学分解等)、接着用の含浸前処
理をする(エポキシ化合物、イソシアネート化合物、レ
ゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合物等)、又これ
らを組み合わせる等の方法が好ましく用いられ、それに
より達成される。
本発明に用いられるフィルムの厚みは通常約2〜200
μmである。2μm以下では、フィルムの生産性が悪く
経済的に不利であり、また、積層成形する際、シワが発
生し易い、気泡を作り易い等、成形上も困難を伴う。ま
た、200μm以上では、フィルムのいわゆる腰が強いこ
とから、特に曲面に賦形する場合等、取扱いが困難とな
る。好ましくは10〜100μmの範囲である。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂は、特に限定される
ものではなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹
脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などから選ばれ
る。また、これらの樹脂に、紫外線吸収剤、難燃剤、酸
化防止剤、滑剤、着色剤、熱安定剤、老化防止剤、補強
用短繊維、補強用粉粒体、成形用薬剤、熱可塑性樹脂、
ゴム状物、エラストマー、その他通常の樹脂添加剤が添
加されていてもよい。
本発明の複合材料中におけるフィルムの体積含有率
は、接着層の役割を果たす熱硬化性樹脂の性質、例えば
フィルムとの接着性や機械的強度等により適宜決定され
るが、本発明に用いるフィルムの優れた性質を有効に利
用するためには、これが大きい程良い。一般には、フィ
ルムの体積含有率は10〜90%であり、好ましくは50〜90
%、更に好ましくは70〜90%である。
本発明の複合材料は、種々の方法を用いて製造するこ
とができる。
例えば、予めドクターコーター、コンマコーター等を
用いて、フィルムの少なくとも片方の面に熱硬化性樹脂
の溶液または融液を塗布し、必要に応じて加熱し、いわ
ゆるBステージの熱硬化性樹脂をコートしたフィルムを
作成することができる。これを適当な寸法および形状に
積層し、ホットプレス法、バキュームバッグ・オートク
レーブ法等で硬化、成形して複合材料を得ることができ
る。また、丸棒状の金型に捲回、積層し、加熱硬化した
後、金型を除去すれば管状の複合材料が得られる。この
成形法の変形としては、金型に捲回、積層したものを金
型より抜き取り、適当な断面のパイプ状の別の金型中に
挿入し、更に内側にエアーバッグを挿入して、加圧しつ
つ加熱硬化させ、例えば矩形断面のパイプ状複合材料を
得ることができる。
また、別の方法として、比較的細幅にスリットして作
製したテープ状のフィルムを、熱硬化性樹脂の溶液ある
いは融液を満たした浴中を通過させ、これを離型紙を巻
いたマンドレル上にすき間なく巻き取り、巻き取り方向
と直角に切り開き、必要に応じて加熱してフィルム強化
熱硬化性樹脂シートが得られる。これを上記と同様の方
法で成形し板状、管状等種々の形状の複合材料が得られ
る。予めフィルムに熱硬化性樹脂をコートし、細幅にス
リットしたテープ状のフィルムを用いるか、あるいは、
テープ状のフィルムを熱硬化性樹脂を満たした浴中を通
過させつつ、いわゆるフィラメントワインド方式で金型
に巻回し、種々の形状の複合材料を成形することも可能
である。
上述の通り、用いるフィルムの形態は、一般の広幅の
ものでも、比較的細幅のテープ状のものでもよく、駆使
する成形法に応じて使い分けることができる。
(実施例) 次に、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。
参考例1 アラミドフィルムの製造 対数粘度(98%濃硫酸中に溶解して、C=0.5g/100ml
にて、30℃で測定)が5.5のポリ−pフェニレンテレフ
タルアミド(以下PPTAと略す)を99.5%の硫酸にポリマ
ー濃度12%で溶解し、光学異方性のあるドープを得た。
このドープを真空下に脱気し、濾過したのち、ギアポン
プを通じて、スリットダイから押出し、鏡面に磨いたタ
ンタル製のベルトにキャストし、相対湿度約40%の約90
℃の空気の雰囲気のゾーンを通して、流延ドープを光学
等方化し、ベルトとともに、20℃の30%硫酸水溶液中に
導いて凝固させた。次いで、凝固フィルムをベルトから
ひきはがし、カセイソーダ水溶液で中和し、水洗した。
洗浄の終了したフィルムを乾燥させずに、ローラで長さ
方向に約1.15倍延伸し、次いでテンターで幅方向に1.3
倍延伸したのち、定長に保持しつつ、200℃で乾燥し更
に300℃で定長熱処理し、20μmのPPTAフィルムを製造
した。
得られたフィルムは淡黄色透明で、熱分析において、
500℃以下には転移温度は見られなかった。また、引張
強度及び弾性率は、長さ方向で、それぞれ48kg/mm2、14
90kg/mm2、幅方向で、それぞれ47kg/mm2、1420kg/mm2
あった。
参考例2 熱硬化性樹脂塗工フィルムの製造 上記、PPTAフィルムの片面に、化成ファイバーライト
社製エポキシ樹脂#7714(メチルエチルケトン混合液、
固形分70重量%)を由利ロール機械社製塗工機を用い、
コンマダイレクト方式で塗工し、100℃で15分加熱し熱
硬化性樹脂塗工フィルムを製造した。エポキシ樹脂の厚
さは約10μmであった。
実施例1 直径10mmのステンレス製の丸棒を金型として用いた。
上記のエポキシ樹脂を塗工したPPTAフィルムを金型に垂
直な方向から供給し、35回捲回積層した。これを離型処
理を施した幅15mm、厚さ30μmのポリエチレンテレフタ
レートのテープ(PETテープと略す)でラッピングし、1
40℃の熱風循環式加熱装置中で2時間硬化させた。硬化
した成形体を取り出し、PETテープを除去し、金型を抜
き取って内径10mm、外径12mmのパイプ状の複合材料を得
た。得られたパイプの物性は、軸圧縮強度が16.5kg/m
m2、面圧縮強度が35.0kg/mm2、アイゾット衝撃値(ノッ
チなし)が230kg・cm/cm2と、非常に優れたものであっ
た。また、各試験において、試料は座屈を示したのみ
で、アイゾット衝撃試験においてさえ、完全な破壊に至
らず、時間の経過と共に、次第に元の形状に復元すると
いう特徴的な性質を示した。
実施例2 エポキシ樹脂を塗工したPPTAフィルムを15mm幅のテー
プ状にスリットした。シマノ工業社製テーピングマシン
を用い、該テープを、直径10mmのステンレス製丸棒の金
型にピッチ3mmで長さ方向に送りつつ捲回した。捲回す
る方向を逆にしつつ、この操作を7回くり返し、ヘリカ
ル状に積層された成形体を得た。実施例1と同様に、こ
れをPETテープでラッピングし、硬化後、PETテープを除
去し金型を抜き取って、内径10mm、外径12mmのパイプ状
の複合材料を得た。
このパイプの物性は実施例1と同様に優れたもので、
軸圧縮強度が16.8kg/mm2、面圧縮強度が37.3kg/mm2、ア
イゾット衝撃値は214kg/mm2であった。試験後の試料の
変形状況も同様であった。
参考例3 旭日本カーボンファイバー社製炭素繊維「ハイカーボ
ロン3K」に実施例と同じエポキシ樹脂を含浸して製造
した一方向プリプレグを、一方向プライ及び、±45度の
アングルプライにより、各々の内径10mm、外径12mmの炭
素繊維強化パイプに成形した。それぞれの物性を下記に
示す。
軸圧縮強度;一方向 50.7kg/mm2 ±45度 14.5kg/mm2 面圧縮強度;一方向 6.1kg/mm2 ±45度 55.1kg/mm2 アイゾット衝撃値; 一方向 121kg・cm/cm2 ±45度 216kg・cm/cm2 また、試験後の試料はいずれも完全に破壊してしま
い、炭素繊維のささくれた鋭利な破壊面を露出した。
なお、実施例及び参考例において行った試験の条件を
以下に示す。
(1)軸圧縮強度;管状成形体から長さ13mmの試験片を
切り出し、島津製作所製万能試験機(オートグラフAG-1
0型)を用い、圧縮速さ1mm/分で管の長さ方向に圧縮
し、最大破壊強さを求めた。軸圧縮強度は以下の式によ
り算出した。
但し、σ1 ;軸圧縮強度(kg/mm2) d1 ;試験片の内径(mm) d2 ;試験片の外径(mm) P ;最大破壊強さ(kg) (2)面圧縮強度;管状成形体から長さ17mmの試験片を
切り出し、圧縮速さ1mm/分で管の径方向に圧縮し最大破
壊強さを求めた。面圧縮強度は次式によって算出した。
但し、σ2 ;軸圧縮強度(kg/mm2) L ;試験片の長さ(mm) 他の記号は(1)に同じ。
(3)アイゾット衝撃吸収エネルギー;管状成形体より
長さ64mmの試験片を切り出してそのまま用いた。東洋精
機製作所製アイゾット衝撃試験機で、ハンマ重量3.874k
g、持ち上げ角135度で試験した。衝撃吸収エネルギーは
次式により求めた。
但し、E;アイゾット衝撃吸収エネルギー(kg・cm/cm2) W;ハンマ重量(3.874kg) R;ハンマの軸心と重心間の距離(22.41cm) β;ハンマが試料を破壊し反対側に振り上がった角
度(度) (発明の効果) 本発明の複合材料は、高性能の有機系フィルムで強化
され、従来の長繊維強化熱硬化性樹脂複合材料と比べて
も全く遜色のない優れた強度物性を有し、極めて大きな
耐衝撃性と、破壊に対する抵抗力を有するものである。
また、強化体がフィルムの為、得られる複合材料の物性
も等方的でバランスしたものであり、しかも極めて容易
にこれを製造することが可能である。更には、繊維強化
複合材料では困難な薄い複合材料が製造でき、切削加工
や穴あけ加工等の機械加工性にすぐれるという好ましい
特徴を有する。
本発明の複合材料は、このような特徴を生かし、例え
ば、自動車のボディーパネルや、ボンネットフード、産
業用ロボットのアームや、ケーシング、各種機械等の配
管類、あるいは、リジット配線基板、セミフレキシブル
配線基板等として広汎な分野で好ましく用いられるもの
である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】300℃未満には融点をもたない有機系重合
    体から実質的になり、35kg/mm2以上の引張強度および70
    0kg/mm2以上の引張弾性率を有する有機系重合体のフィ
    ルムと熱硬化性樹脂が交互に積層され、硬化一体化して
    なる複合材料
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