JP2782756B2 - テトラブロモシクロペンタ[b]ベンゾフラン誘導体およびその製造法 - Google Patents

テトラブロモシクロペンタ[b]ベンゾフラン誘導体およびその製造法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、式(I)で示される テトラブロモシクロペンタ〔b〕ベンゾフラン誘導体お
よびその製造法に関する。
[従来の技術] 式(I)テトラブロモシクロペンタ〔b〕ベンゾフラ
ン誘導体を脱ブロム化することにより容易に得られる式
(III)の 3a,8b−シス−ジヒドロ−3H−5,7−ジブロモシクロペン
タ〔b〕ベンゾフランは医薬品、特に抗血栓剤、抗潰瘍
剤、血圧降下剤として有用な5,6,7−トリノル−4,8−イ
ンタ−m−フェニレンPGl2誘導体(IV)(特開昭56−36
477号公報、特開昭58−124778号公報他)の鍵合成中間
体である(特開昭57−144277号公報他)。
従来、(III)の製造法として、3,5−シス−ビス(2,
4,6−トリブロモフェノキシ)シクロペンテン(V)と
グリニャール試薬とを反応させて、ハロゲン金属交換を
行なった後、金属触媒を加えて環化反応を生起させてい
た(特開昭57−144277号公報)。
[発明が解決しようとする課題] かかる従来技術による場合、次のような問題点があ
る。
(1) (III)は沸点が高いため蒸留精製ができな
い。また、環化反応の収率がよくないため再結晶精製が
困難であり、(III)の精製にカラムクロマトグラフィ
ーを用いている。従って、(III)の精製に多大の時間
を要し、(III)の製造コスト高の原因となる。
(2) 環化反応の収率がハロゲン金属交換反応に用い
るグリニャール試薬の当量に大きく依存し、当量のわず
かな違いで収率の低下を招く。また、その最適当量は、
3,5−シス−ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)シク
ロペンテン(V)の純度によって異なり、収率の再現性
が得られないことがある。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、かかる従来技術の欠点を克服した(II
I)の工業的製法について鋭意検討した結果、式(II)
で示される 3a,8b−シス−ジヒドロ−3H−シクロペンタ〔b〕ベン
ゾフランから新規化合物である(I)を経由して、高収
率で容易に、しかも再現性よく得る方法を見い出し、本
発明に至った。
すなわち本発明は、式(I)で示されるテトラブロモ
シクロペンタ〔b〕ベンゾフラン誘導体およびその製造
法である。
本発明化合物(I)は、次式の(IA)および(IB)を
含む。
本発明は、具体的には通常以下の如き条件下に行な
う。
まず本発明の原料である(II)は次の方法により容易
に得ることができる。すなわち、特開昭57−144233の反
応条件に従って合成できる(VI)を溶媒に溶かして、乾
燥した金属マグネシウムに加えることによりジグリシャ
ール試薬を発生させる。その後、触媒量の金属試薬を加
え、環化させて(II)を得る。環化反応は、高収率で再
現性よく進行し、しかも(II)は蒸留が可能であるため
単離精製が容易である。
本発明化合物(I)は、(II)を溶媒に溶かして臭素
を加えることにより製造することができる。用いる溶媒
としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素
等の塩素系溶媒や二硫化炭素、酢酸、シクロヘキサンが
通常用いられるが、なかでもジクロロメタン、クロロホ
ルムが好ましい。臭素の当量はフリーデルクラフツ触媒
が用いるか否かによって異なる。すなわち、触媒を用い
ない場合には、臭素の当量としては3〜10当量が用いら
れるが、なかでも4〜6当量が好ましい。触媒を用いる
場合には、臭素の当量としては3〜6当量が用いられる
が、なかでも3〜3.2当量が好ましい。フリーデルクラ
フツ触媒としては、鉄、塩化第二鉄、臭化第二鉄、塩化
アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化アン
チモン(III)等が通常用いられるが、なかでも鉄、臭
化アルミニウムが好ましい。触媒の当量としては0.001
〜0.5当量が用いられるが、なかでも0.007〜0.015当量
が好ましい。
反応温度としては、触媒を用いない場合には−20〜10
0℃が用いられ、なかでも20〜60℃が好ましい。触媒を
用いた場合には0〜30℃が用いられる。
反応時間としては、触媒を用いずに行なった場合には
10分〜1週間が用いられ、なかでも臭素4当量では12時
間〜1日が好ましく、臭素5当量以上では10分〜3時間
が好ましい。触媒を用いた場合には1分〜1週間が用い
られるが、なかでも30分〜1日が好ましい。
その他の反応条件としては、遮光下で反応を行なった
方が好ましいが、これに限るものではない。
(I)の単離方法として、再結晶、シリカゲルカラム
クロマトグラフィーが用いられるが、反応は定量的に進
行するため、未精製のまま次の反応に供することも可能
である。
本発明化合物(I)は、例えばチオ硫酸ナトリウム、
硫化ナトリウムまたは亜鉛等の脱ブロム化剤により、還
元的に脱ブロム化することにより容易に(III)にする
ことができる。
式(III)の化合物から、例えば特開昭57−144277号
公報、特開昭58−124778号公報等に記載の方法により、
医薬品として有用な式(IV)の5,6,7−トリノル−4,8−
インタ−m−フェニレンPGI2誘導体を製造することがで
きる。
[実 施 例] 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本
発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1 3a,8b−シス−ジヒドロ−3H−シクロペンタ〔b〕ベン
ゾフラン 乾燥したマグネシウム1.3g(53.5mmol)に乾燥THF10m
lを加えた後、3,5−シス−ビス(2−ブロモフェノキ
シ)シクロペンテン10g(24.4mmol)をTHF70mlに溶かし
たものの一部を加えた。これを加温してグリニャール反
応を生起させた後、残りのTHF溶液を加えて室温で撹拌
した。次に、乾燥したマグネシウム65.2g(2.68mol)に
上記の反応液を加え、更に乾燥THF0.5を加えた後、3,
5−ビス(2−ブロモフェノキシ)シクロペンテン500g
(1.22mol)をTHF3.5に溶解させたものを徐々に加え
た。加え終わった後、50℃で1時間加熱した後氷冷し
た。次にCuI11.6g(60.9mmol)を加え、40℃で1時間加
熱した後氷冷した。反応液に3NNaOH水溶液0.9を加
え、ハイフロスーパーセルを用いて過した。THF2.5
で過した固体を洗浄後、液を濃縮した。濃縮液をシ
クロヘキサン1で4回抽出し、有機層を2NNaOH水溶液
0.25で2回、飽和食塩水0.1で3回洗浄後、無水硫
酸マグネシウムで乾燥した。抽出洗浄時に界面が不明確
な場合には、適宜ハイフロスーパーセルを用いて過し
た。そして、硫酸マグネシウムを別後、液の有機層
を濃縮した。更に3,5−シス−ビス(2−ブロモフェノ
キシ)シクロペンテン816g(1.99mol)を用いて同様の
操作を行ない、2つ合わせて蒸留した。
収量 377.0g 収率 73.7% b.p. 77.8〜78.8℃/0.1mmHg NMR(CDCl3)δ: 2.80(1H、dd、J=2.2、0.5Hz)、2.82(1H、dd、J
=5.2、0.5Hz)、4.35(1H、d、J=7.8Hz)、5.43(1
H、ddd、J=7.8、5.2、2.2Hz)、5.71(2H、s)、6.9
5(4H、m) IR(液膜法)νcm-1: 3060、1602、1582 Mass:158(M+) 実施例1 3a,8b−シス−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−1,2,5,7
−テトラブロモシクロペンタ〔b〕ベンゾフラン 3a,8b−シス−ジヒドロ−3H−シクロペンタ〔b〕ベ
ンゾフラン2.0156g(12.7mmol)をジクロロメタン20ml
に溶かし氷冷した後、臭素3.9m(76.2mmol)をゆっくり
加えた。室温で1時間撹拌した後、反応溶液を氷冷した
飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlに加えた。撹拌し
ながら、チオ硫酸ナトリウム4.7gを水10mlに溶かしたも
のを徐々に加えた。臭素の色が消えたのを確認した後、
酢酸エチル50mlで2回抽出した。有機層を飽和食塩水50
mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナト
リウムを別後、濃縮乾固し、減圧乾燥すると褐色粘性
液体が得られた。
収量 6.2725g 収率 103.8% そのうち10.1mgをとり、薄層クロマトグラフィー分取
によりジアステレオマーを分離し、低極性留分として
(IA)6.4mg、高極性留分として(IB)3.9mgを得た。
(IA)白色結晶 m.p. 117.0〜119.0℃ NMR(CDCl3)δ: 2.69〜2.78(1H、m)、3.11〜3.22(1H、m)、4.37
〜4.43(1H、m)、4.43〜4.51(1H、m)、4.55〜4.62
(1H、m)、5.52〜5.60(1H、m)、7.32〜7.41(1H、
m)、7.49(1H、d、J=1.95Hz) IR(KBr)νcm-1: 2970、1452、1258、1187、1135、1058、992、804、71
4 Mass(EI法、m/e):472(M+) 高分解能マススペクトル 計算値(C11H8OBr4、M+):471.7309 実測値(M+):471.7323 (IB)白色結晶 m.p. 110.0〜112.0℃ NMR(CDCl3)δ: 2.59〜2.70(1H、m)、2.97(1H、ddd、J=15.13、
5.37、3.42Hz)、4.35(1H、t、J=7.82Hz)、4.40
(1H、t、J=5.86Hz)、4.57〜4.64(1H、m)、5.46
〜5.53(1H、m)、7.34(1H、s)、7.50(1H、d、J
=1.95Hz) IR(KBr)νcm-1: 2970、1455、1263、1161、1013、867、812 Mass(EI法、m/e):472(M+) 高分解能マススペクトル 計算値(C11H8OBr4、M+):471.7309 実測値(M+):471.7349 実施例2 3a,8b−シス−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−1,2,5,7
−テトラブロモシクロペンタ〔b〕ベンゾフラン 3a,8b−シス−ジヒドロ−3H−シクロペンタ〔b〕ベ
ンゾフラン100g(0.632mol)をジクロロメタン1に溶
かし、鉄353mg(6.32mmol)を加えた後氷冷した。臭素1
00ml(1.96mol)をゆっくり加え、室温で21時間撹拌し
た後、反応溶液を氷冷し、炭酸水素ナトリウム160g(1.
90mol)と水1を加えた。撹拌しながら、チオ硫酸ナ
トリウム7.8g(0.0314mol)を加えた後、水層と有機層
を分液した。水層を酢酸エチル2で抽出し、有機層を
水1、飽和食塩水1で洗浄した後、無水硫酸マグネ
シウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを別後、濃縮乾
固し、減圧乾燥した。
収量 298.7g 収率 99.7% GC純度 93% 参考例2 3a,8b−シス−ジヒドロ−3H−5,7−ジブロモシクロペン
タ〔b〕ベンゾフラン 3a,8b−シス−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−1,2,5,
7−テトラブロモシクロペンタ〔b〕ベンゾフラン3.00g
(6.31mmol)をTHF10mlと酢酸10mlの混合溶媒に溶か
し、亜鉛0.8657g(13.2mmol)を加えて1時間室温で撹
拌した。反応液を過し、液の溶媒を留去した。残渣
に水20ml、酢酸エチル20mlを加えて抽出した。更に水層
を酢酸エチル20mlで2回抽出し、有機層を水20ml、飽和
食塩水20mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し
た。硫酸マグネシウムを別後、濃縮乾固した。
収量 1.95g 収率 97.5% GC純度 96.6% m.p. 108.0〜109.0℃ NMR(CDCl3)δ: 2.90(2H、m)、4.48(1H、m)、5.60(1H、m)、
5.80(2H、m)、7.25(1H、d、J=2.0Hz)7.40(1
H、d、J=2.0Hz) IR(KBr)νcm-1: 3070、2980、2920、1595、1570、865、830、740、720 Mass: 314(M+)、316(M++2)、318(M++4) [発明の効果] 本発明によれば、3a,8b−シス−ジヒドロ−3H−5,7−
ジブロモシクロペタン〔b〕ベンゾフラン(III)が、3
a,8b−シス−ジヒドロ−3H−シクロペンタ〔b〕ベンゾ
フラン(II)から本発明化合物のテトラブロモシクロペ
ンタ〔b〕ベンゾフラン誘導体(I)を経由することに
より、容易にかつ高収率で、再現性よく製造できる、従
って、(III)の再結晶による単離精製が可能となり、
工業スケールでの(III)の大量合成が非常に容易にな
った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−144277(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 307/93 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式(I)で示される テトラブロモシクロペンタ〔b〕ベンゾフラン誘導体。
  2. 【請求項2】式(II)で示される 3a,8b−シス−ジヒドロ−3H−シクロペンタ〔b〕ベン
    ゾフランをブロモ化することを特徴とする、請求項
    (1)記載の式(I)で示されるテトラブロモシクロペ
    ンタ〔b〕ベンゾフラン誘導体の製造法。
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