JP2780373B2 - α―ヒドロキシカルボン酸アミドの製造法 - Google Patents

α―ヒドロキシカルボン酸アミドの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、α−ヒドロキシカルボン酸アミドの製造法
に関する。更に詳しくは、シアンヒドリンの液相水和反
応でα−ヒドロキシカルボン酸アミドを製造する方法に
関するものである。
α−ヒドロキシカルボン酸アミドは、α−ヒドロキシ
カルボン酸アミドを経由し、α,β−不飽和カルボン酸
エステルの製造用原料となるものである。特に、α−ヒ
ドロキシイソ酪酸アミドを原料とした場合には、α−ヒ
ドロキシイソ酪酸メチルを経由してメタクリル酸メチル
が得られ、最終的に優れた樹脂特性をもつポリメタクリ
ル酸メチルとして工業的に重要且つ大きな用途がある。
(従来技術およびその課題点) シアンヒドリンの水和反応により、対応するα−ヒド
ロキシカルボン酸アミドを製造する場合の触媒として
は、西ドイツ特許第2131813号において二酸化マンガン
を使用することが開示されている。又、米国特許第4018
829号には、アセトンシアンヒドリンの水和反応にδ型
二酸化マンガンを触媒として使用することが記載されて
いる。
又更に、特開昭63−57534、及び特開昭63−57535に
は、二酸化マンガン触媒の調製法として、亜鉛を含有さ
せる方法や過マンガン酸カリウムを塩酸で還元する方法
が開示されている。しかしながら、上記の方法で調製し
た二酸化マンガンをそのまま触媒として反応に使用した
場合には、触媒活性が充分でなく触媒を大量に使用せざ
るを得ないこと、目的とするアミドの収率が低いこと、
及び触媒活性が短期間で急激に低下すること等の問題が
ある為に末だ実用化されていないのが現状である。
(課題点を解決するための手段) 本発明は、以上のような欠点を解決したものであり、
下記の一般式[I]で表わされるシアンヒドリンから、
一般式[II]で示されるα− (式中、R1はH又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素を、
R2は炭素数1〜10の脂肪族、脂環族又は芳香族である炭
化水素基を表わす)ヒドロキシカルボン酸アミドを製造
する方法において、二酸化マンガン触媒の活性が、触媒
中に共存させるジルコニウム、バナジウム、及び錫なる
元素、並びにアルカリ金属元素と密接に関連しているこ
とを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、シアンヒドリンから対応するα−ヒドロキシカ
ルボン酸アミドを製造するに際し、触媒として、マンガ
ン元素に対して原子比0.005〜0.1に相当する量のジルコ
ニウム、バナジウム、及び錫元素の一種又は二種以上と
マンガン元素に対して原子比0.05〜0.5に相当するアル
カリ金属元素を含有する変性した二酸化マンガンを使用
する方法を見出し、本発明を完成させることができた。
以下に、本発明の方法を詳しく説明する。本発明の使
用される一般式[I]で表わされるシアンヒドリンは、
例えば下記の一般式[III]で示されるオキソ化合物と
シアン化水素とから塩基性触媒の存在化で容易に製造さ
れる。
(式中、R1及びR2は前述の一般式[I][II]に対応す
る)。
本発明における変性二酸化マンガン触媒は、以下の如
く調製する。
シアンヒドリンの水和反応に対して二酸化マンガンが
使用されることは既に述べたが、二酸化マンガンは一般
にMnO1.7〜MnO2の間にあるマンガン酸化物であり、結晶
構造はα、β、γ、δ、ε等が知られており、又各相間
の転移や結晶化度の変化が起こることから、その構造は
極めて複雑で多種多様である。
二酸化マンガンは、天然にも存在するが、一般に触媒
として使用する場合には、二価のマンガンを酸化する方
法、又は七価のマンガンを還元して調製する方法が採ら
れるが、本発明の方法においては、結晶型や比表面積の
大きさ、含有させるジルコニウム、バナジウム、及び
錫、並びにアルカリ金属の種類や量をコントロールでき
る点では、二価のマンガン及び七価のマンガンを同時に
使用することが好ましい。
本発明の二酸化マンガン触媒は、上記の方法におい
て、ジルコニウム、バナジウム、及び錫元素の一種又は
二種以上を、マンガン元素に対して原子比0.005〜0.1、
及びアルカリ金属元素を、マンガン元素に対して原子比
0.05〜0.5を含有させ、且つ比表面積が大きく、結晶化
度の低い、無定形又は無定形に近い二酸化マンガンであ
る。
本発明の二酸化マンガン触媒において、二酸化マンガ
ンにジルコニウム、バナジウム元素、及び錫元素、並び
にアルカリ金属を、均一に添加する方法としては、共沈
殿法が特に好ましく、その液性は酸性下でも塩基性下で
もよいが、酸性下での調製がより好ましい。
又、塩基性下で二酸化マンガンを調製した場合には、
シアンヒドリンの分解を抑制する為の措置として、反応
前に希硫酸等で二酸化マンガンを洗浄することが望まし
い。
本発明の触媒調製の為に使用される二価のマンガン源
としては、水溶性の塩が選ばれ、特に硫酸塩が好まし。
又は、七価のマンガン源としては、水溶性の過マンガン
酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムが特に好まし
く、これらの化合物の場合には、同時にアルカリ金属の
供給源としても使用できる利点もある。
又、本発明の触媒調製の為に使用されるジルコニウ
ム、バナジウム、及び錫源としては、水溶性の塩が選ば
れ、特に硫酸塩が好ましい。
本発明の触媒は、共沈殿法により調製される。即ち、
二価の水溶性マンガン塩と、ジルコニウム、バナジウ
ム、及び錫の水溶性塩の一種又は二種以上とを水に溶解
し混合した後、この溶液を七価のマンガン水溶液に注加
し混合する。次に、生成する沈殿物を濾過し洗浄した
後、乾燥することにより調製される。
本発明の触媒調製の為の共沈殿法の条件は、常圧又は
加圧下において加熱温度30〜250℃、好ましくは50〜200
℃の範囲である。これより低い温度では二価と七価のマ
ンガンの反応性が低いため二酸化マンガンの収量が少な
く、アルカリ金属の含有量も少ない。これより高い温度
では二酸化マンガンに表面積が減少し好ましくない。
本発明においては、上記の解く調製した変性二酸化マ
ンガンをシアンヒドンの水和反応に触媒として使用する
に際しては、粉体のままスラリー触媒として、又は成型
し固定床触媒として使用される。
本発明の変性二酸化マンガン触媒を用いる水和反応
は、通常は水が過剰の系で実施される。即ち、原料液中
のシアンヒドリンの割合は10〜60重量%、好ましくは20
〜50重量%である。又、原料シアンヒドリン[I]に対
応するオキソ化合物[III]が原料液中に5〜30重量%
存在すると、シアンヒドリンの分解が抑制され、その結
果α−ヒドロキシカルボン酸アミド収率が増大するとい
う効果がある。
又、本発明の方法における反応温度は、20〜100℃、
好ましくは40〜80℃の範囲である。これより低い温度で
は反応速度が小さくなり、又これより高い温度ではシア
ンヒドリンの分解による副生成物が多くなり好ましくな
い。
又、本発明の方法によるシアンヒドリンの水和反応
は、回分式でも流通式でも実施される。
〔実施例〕
次に、本発明の方法を実施例及び比較例により更に具
体的に説明する。
比較例1 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム56.4gを水560gに
溶解した液に、硫酸マンガン水溶液(Mnとして14wt%含
有)178.5g、濃硫酸10.0g、水25gを混合した液を、温度
70℃にて速やかに注加した。
得られた沈殿を90℃で時間熟成した後、濾過し、水1
で4回洗浄してから、110℃で一晩乾燥し、変性二酸
化マンガン64.2gを得た。
この変性二酸化マンガンの金属成分の含有量を分析し
た結果、カリウム/マンガン=0.09/1(原子比)であっ
た。
2)反応:上記で得た二酸化マンガンを破砕して10〜20
メッシュに備えたもの3.5gをジャケット付の内径10mmφ
のガラス管に充填した。ジャケットには60℃の温水を流
した。アセトンシアンヒドリン20g、水60g、アセトン20
gの割合で混合した原料溶液を流速5g/hrで反応管に通し
た。
5時間後の反応液組成を高速液体クロマトグラフィー
で分析した結果、α−ヒドロキシイソ酪酸アミド22.0wt
%、アセトンシアンヒドリン0.4wt%、アセトン21.0
%、ホルムアミド0.7wt%であった。これはα−ヒドロ
キシイソ酪酸アミド収率91%(原料アセトンシアンヒド
リン基準)に相当する。
更に反応を継続し、8週間後に再度反応液組成を分析
した結果、α−ヒドロキシイソ酪酸アミド収率は75.3%
に低下していた。
実施例1 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム66.4gを水580gに
溶解した液に、硫酸マンガン水溶液(Mnとして14wt%含
有)138.7g、硫酸第一錫2.91g、濃硫酸23.9g、水20gを
混合した液を、70℃で速やかに注加した。
得られた沈殿を90℃で3時間熟成した後、濾過し、水
1で4回洗浄してから、110℃で一晩乾燥し、変性二
酸化マンガン68.2gを得た。
この変性二酸化マンガンの金属成分の含有量を分析し
た結果、錫/カリウム/マンガン=0.02/0.09/1(原子
比)であった。
2)反応:上記で得た二酸化マンガン3.5gを用いた以外
は、比較例1と同様に反応させた。
その結果、反応5時間後、及び8週間後のα−ヒドロ
キシイソ酪酸アミド収率は、それぞれ98%、及び92%で
あった。
実施例2 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム66.4gを水580gに
溶解した液に、硫酸マンガン水溶液(Mnとして14wt%含
有)117.7g、硫酸第一錫11.6g、濃硫酸23.9g、水20gを
混合した液を、70℃で速やかに注加した。
得られた沈殿を90℃で3時間熟成した後、濾過し、水
1で4回洗浄してから、110℃で一晩乾燥し、変性二
酸化マンガン72.2gを得た。
この変性二酸化マンガンの金属成分の含有量を分析し
た結果、錫/カリウム/マンガン=0.078/0.08/1(原子
比)であった。
2)反応:上記で得た二酸化マンガン3.5gを用いた以外
は、比較例1と同様に反応させた。
その結果、5時間後及び8週間後のα−ヒドロキシイ
ソ酪酸アミド収率は、それぞれ96%及び91%であった。
実施例3 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム66.4gを水580gに
溶解した液に、硫酸マンガン水溶液(Mn14wt%含有)13
8.7g、硫酸バナジル2.20g、濃硫酸23.9g、水20gを混合
した液を、70℃で速やかに注加した。
得られた沈殿を90℃で3時間熟成後濾過し、水1で
4回洗浄してから、110℃で一晩乾燥し、変性二酸化マ
ンガン67.5gを得た。この変性二酸化マンガンの金属成
分の含有量を分析した結果、バナジウム/カリウム/マ
ンガン=0.02/0.09/1(原子比)であった。
2)反応:上記で得た二酸化マンガン3.5gを用いた以外
は、比較例1と同様に反応させた。
その結果、5時間後及び8週間後のα−ヒドロキシイ
ソ酪酸アミド収率は、それぞれ94%及び90%であった。
実施例4 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム66.4gを水580gに
溶解した液に、硫酸マンガン水溶液(Mn14wt%含有)13
8.7g、硫酸ジルコニウム4.80g、濃硫酸23.9g、水20gを
混合した液を、70℃で速やかに注加した。
得られた沈殿を90℃で3時間熟成後濾過し、水1で
4回洗浄してから、110℃で一晩乾燥し、変性二酸化マ
ンガン69.8gを得た。
この変性二酸化マンガンの金属成分の含有量を分析し
た結果、ジリコニウム/カリウム/マンガン=0.018/0.
10/1(原子比)であった。
2)反応:上記で得た二酸化マンガン3.5gを用いた以外
は、比較例1と同様に反応させた。
その結果、5時間後及び8週間後のα−ヒドロキシイ
ソ酪酸アミド収率は、それぞれ97%及び95%であった。
実施例5 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム66.4gを水580gに
溶解した液に、硫酸マンガン水溶液(Mn14wt%含有)13
8.7g、硫酸第一錫1.46g、硫酸ジルコニウム2.40g、濃硫
酸23.9g、水20gを混合した液を、70℃で速やかに注加し
た。
得られた沈殿を90℃で3時間熟成後濾過し、水1で
4回洗浄してから、110℃で一晩乾燥し、変性二酸化マ
ンガン68.9gを得た。
この変性二酸化マンガンの金属成分の含有量を分析し
た結果、錫/ジルコニウム/カリウム/マンガン=0.01
/0.008/0.10/1(原子比)であった。
2)反応:前記で得た二酸化マンガン3.5gを用いた以外
は、比較例1と同様に反応させた。
その結果、5時間後及び8週間後のα−ヒドロキシイ
ソ酪酸アミド収率は、共に94%あった。
比較例2 触媒調製:過マンガン酸ナトリウム50.7gを水560gに溶
解した液に、硫酸マンガン水溶液(Mn14wt%含有)178.
5g、濃硫酸10.0g、水25gを混合した液を、70℃で速やか
に注加した。得られた沈殿を90℃で3時間熟成後濾過
し、水1で4回洗浄してから、110℃で一晩乾燥し、
変性二酸化マンガン63.3gを得た。
この変性二酸化マンガンの金属成分の含有量を分析し
た結果、ナトリウム/マンガン=0.07/1(原子比)であ
った。
2)反応:上記で得た二酸化マンガン3.5gを用いた以外
は、比較例1と同様に反応させた。
その結果、5時間及び8週間後のα−ヒドロキシイソ
酪酸アミド収率は、それぞれ78%及び57%あった。
実施例6 1)触媒調製:過マンガン酸ナトリウム50.7gを水580g
に溶解した液に、硫酸マンガン水溶液(Mn14wt%含有)
138.7g、硫酸第一錫2.91g、濃硫酸23.9g、水20gを混合
した液を、70℃で速やかに注加した。
得られた沈殿を90℃で3時間熟成後濾過し、水1g
で4回洗浄してから、110℃で一晩乾燥し、変性二酸化
マンガン66.5gを得た。
この変性二酸化マンガンに金属成分の含有量を分析し
た結果、錫/ナトリウム/マンガン=0.02/0.08/1(原
子比)であった。
2)反応:上記で得た二酸化マンガン3.5gを用いた以外
は、比較例1と同様に反応させた。
その結果、5時間後及び8週間後のα−ヒドロキシイ
ソ酪酸アミド収率は、それぞれ81%及び75%であった。
実施例7 1)触媒調製:過マンガン酸ナトリウム50.7gを水580g
に溶解した液に、硫酸マンガン水溶液(Mn14wt%含有)
138.7g、硫酸第一錫1.46g、硫酸ジルコニウム2.40g、濃
硫酸23.9g、水20gを混合した液を、70℃で速やかに注加
した。
得られた沈殿を90℃で3時間熟成後濾過し、水1で
4回洗浄してから、110℃で一晩乾燥し、変性二酸化マ
ンガン67.5gを得た。
この変性二酸化マンガンの金属成分の含有量を分析し
た結果、錫/ジルコニウム/ナトリウム/マンガン=0.
009/0.01/0.08/1(原子比)であった。
2)反応:上記で得た二酸化マンガン3.5gを用いた以外
は、比較例1と同様に反応させた。
その結果、5時間後及び8週間後のα−ヒドロキシイ
ソ酪酸アミド収率は、それそれ84%及び82%であった。
(発明の効果) 本発明の方法によれば、シアンヒドリンから対応する
α−ヒドロキシカルボン酸アミドを製造する方法におい
て、マンガン原子に対して、ジルコニウム、バナジウ
ム、及び錫元素の一種又は二種以上の含有量が0.005〜
0.1原子、及びアルカリ金属元素の含有量が0.05〜0.5原
子である変性二酸化マンガンを触媒として使用すること
によって、高活性、長寿命なる触媒性能を発現し得たこ
とは、工業的に極めて大きな意義をもつものである。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式〔I〕で表わされるシアンヒドリン の接触的水和反応により、一般式〔II〕で示されるα−
    ヒドロキシカルボン酸アミド (式中、R1はH又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素を、
    R2は炭素数1〜10の脂肪族脂環族又は芳香族である炭化
    水素基を表わす) を製造する方法において、ジルコニウム、バナジウム、
    及び錫元素の一種又は二種以上と、アルカリ金属元素を
    含有する変性した二酸化マンガンを触媒として使用する
    ことを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸アミドの製
    造法。
  2. 【請求項2】シアンヒドリンが、アセトンシアンヒドリ
    ンである請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】アルカリ金属元素がナトリウム及び/又は
    カリウムである請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】ジルコニウム、バナジウム、及び錫元素の
    一種又は二種以上の添加量が、マンガン元素に対する原
    子比において0.005〜0.1である請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】アルカリ金属元素のマンガン元素に対する
    原子比が0.05〜0.5である請求項1記載の方法。
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