JP2780327B2 - 多孔性ポリエステル分離膜の製造方法 - Google Patents

多孔性ポリエステル分離膜の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、精密濾過膜や限外濾過膜等として利用しう
る新規な多孔性ポリエステル分離膜の製造方法に関す
る。
〔従来の技術及び課題〕
従来、多孔性分離膜は、機械的に高分子膜(フイル
ム)又は繊維状物を(不完全)延伸する技術、化学的に
高分子の溶解度差を利用する技術、また、溶媒可溶の固
体微粒子を混入後に溶出する技術、焼結により多孔膜と
する技術、気泡入り高分子シートの圧潰による技術など
従来公知の多孔化手段により製造されている。
これらの分離膜は、三次元網目状の構造を有してお
り、見掛けの孔径も不均一であって、対象とする分離物
の精製または除去の分離効率に限界がある。
機械的に(不完全)延伸したフイルムとして四弗化エ
チレン樹脂が知られているが、この膜は延伸により見掛
けの孔径を制御しているため分離効率に限界がある。
また、化学的に処理された膜としてセルロースエステ
ル、ポリアミド、ポリスルホン等があり、これらの樹脂
を良溶媒に溶かした後、貧溶媒と接触させ溶解度差を利
用して多孔質膜を得るものである。この膜の孔径制御
は、溶媒の種類、濃度、温度等を制御することによるも
ので、見掛けの孔径も不均一で、分離効率に限界があ
る。
近年、高分子フイルムにイオンを照射した後、損傷部
分を化学的にエッチングすることにより多孔膜が得られ
ることが明らかになっている。このような例として、特
公昭52−3987号公報、特開昭59−117546号公報等に記載
の技術が知られている。
これらに使用されている膜は、緻密な高分子フイルム
にイオンを照射した後に、エッチング処理することによ
り多孔膜を得るものである。このようにして得られる分
離膜は、均一な孔径が得られ、分離効率が良い。
しかし、このような膜として、ポリカーボネート等が
市販されているが、耐熱性に劣り、表面硬度が小さく傷
つき易い。また、電力線、γ線といった放射線に対して
も劣化が進み易い。
また、ポリエチレンテレフタレートの場合、ポリカー
ボネートよりガラス転移温度がさらに低く、高温下での
使用に不向きである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、二価フェノールと芳香族ジカルボン酸
又はその誘導体とから得られた芳香族ポリエステル(以
下、ポリアリレートと云う)を対象として、イオン照射
損傷領域を形成させ、その損傷領域を化学的にエッチン
グ処理することにより、極めて容易に直孔型の穿孔が得
られると共に、従来のポリカーボネート製等のこの種の
多孔性フイルムに比して耐熱性、耐放射線性、高硬度、
耐候性に優れた多孔性高分子フイルムが得られることを
見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は; 二価フェノールと芳香族ジカルボン酸又はその誘導体
とから得られた芳香族ポリエステルからなる高分子膜
に、高エネルギーイオンを照射して前記高分子膜に照射
損傷領域を形成した後、その損傷領域を化学的にエッチ
ング処理することを特徴とする、直孔型の孔を有する多
孔性ポリエステル分離膜の製造方法である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の方法に用いる芳香族ポリエステルは、二価フ
ェノール化合物と芳香族ジカルボン酸又はその誘導体と
から、例えば界面重縮合法、溶液重合法、溶融重合法な
どの方法により容易に製造できる。
前記芳香族ポリエステルの製造用原料の1つである二
価フェノール化合物としては、具体的にはビスフェノー
ルA、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフ
ェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−
3,5−ジメチルフェニル)−プロパン、ビス−(4−ヒ
ドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシ
フェニル)−スルフィド、ハイドロキノン、p,p′−ジ
フェニルなどが挙げられる。
また、芳香族ジカルボン酸又はその誘導体としては、
具体的には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸な
ど、これらジカルボン酸のジクロリド、エステルなどが
挙げられる。
なお、本発明の方法に用いる高分子膜には、前記芳香
族ポリエステル単独でもよいし、また、本発明の目的に
合致する範囲で、ポリエチレンテレフタレート、ポリカ
ーボネートなどの他のポリエステル材料をブレンドまた
は共重合しても差し支えない。
また、本発明の方法に用いる高分子膜には、公知の添
加剤、例えば安定剤、充填剤、核剤などを配合してもよ
い。
本発明の方法に用いる高エネルギーイオン(粒子)と
しては、高分子膜(フイルム)を貫通して所望の照射損
傷を形成しうる公知の種々の荷電、非荷電粒子を意味
し、具体的には、核分裂性物質の核分裂によって得られ
る核分裂片、放射性同位元素の崩壊によって得られるα
粒子及び加速器によって得られる加速イオン等が挙げら
れるが、この加速器による加速イオンを用いるのが工業
上簡便である。そのエネルギー域としては、1MeV以上が
適当である。
本発明に用いる化学的エッチング処理には、一般に、
化学的エッチング剤に高分子膜(フイルム)を所定時間
浸漬させて行う、いわゆる湿式エッチング処理が好適に
適用できる。
使用する化学的エッチング剤としては、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム等のアルカリ溶液や前記アルカリ
とアルコールとの混合溶液、クロム混酸、過マンガン酸
カリ、次亜塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム等の
酸化剤溶液や、硝酸、硫酸、弗化水素酸等の酸性溶液が
使用される。
本発明の方法で作成される多孔性分離膜では、耐熱
性、耐放射線性、高硬度であるので、孔密度はイオンの
照射された密度に等しく容易に制御できるものである。
孔密度としては、膜強度、孔の重なりなどを考慮し
て、1×1010孔/cm2以下ガ好ましい。
また、孔径は、エッチング条件、即ちエッチング剤、
濃度、温度、時間等により容易に制御でき、数十μm以
下に、好ましくは20μm以下の任意の孔径が均一に得ら
れる。
また、エッチング条件が同一の場合、照射に用いるイ
オン種により、得られる孔径が異なり、質量の大きなイ
オン程大きな孔径が得られ、イオン種による孔径の制御
も可能である。
本発明の方法により得られる多孔性ポリアレート分離
膜は、孔径の均一な直孔型の多孔膜であるので分離効率
が大きいと共に、現在市販されている多孔性ポリカーボ
ネート分離膜に比して、非晶性ポリマーであることか
ら、耐熱性に優れ、高温下での分離時に変形が小さく、
分子篩、水精製用など精密濾過膜、限外濾過膜のような
分離膜として極めて有用である。
〔作用〕
本発明の方法により作成した多孔性ポリアレート分離
膜は、孔径が均一であり、従来法により作成した三次元
網目状分離膜と比べ、対象物以外は除去できるといった
孔径に基づいた高効率の分離が可能となる。
また、現在市販されている核分裂片を利用した穿孔を
有する多孔性ポリカーボネート分離膜に比べ、非晶性ポ
リマーであることから、耐熱性に優れ、高温下での分離
時に変形が小さく、また、耐候性に優れ、紫外線等に曝
される雰囲気下での分離が可能である。
また、全芳香族ポリエステルであることから、耐放射
線性にも優れ、電子線やγ線下での使用も可能である。
本発明を下記の実施例により説明するが、これは本発
明の範囲を制限するものでない。
実施例1 ポリアリレート(商品名:エスペックR1、住友化学
(株)製)の膜厚3.5μmのフイルムを作成し、イオン
加速器でN+イオンを照射した。照射条件は、加速電圧3.
0MV、照射量1×108イオン/cm2である。
このようにして作成した膜を、6NのNaOH水溶液で室温
の条件下で、5時間エッチングした後、1時間水洗し、
十分に乾燥させた。
このようにして作成した多孔性膜の孔径を走査電子顕
微鏡で測定すると、0.1μmの均一な孔径を有している
ことが確認された。
実施例2 ポリアリレート(商品名:UポリマーU−2030、ユニチ
カ(株)製)の膜厚4μmのフイルムを作成し、イオン
加速器でN+イオンを照射した。照射条件は、加速電圧3.
0MV、照射量1×108イオン/cm2である。
このようにして作成した膜を、6NのNaOH水溶液で室温
の条件下で、5時間エッチングした後、1時間水洗し、
十分に乾燥させた。
このようにして作成した多孔性膜の孔径を走査電子顕
微鏡で測定すると、0.1μmの均一な孔径を有している
ことが確認された。
比較例1 市販のポリカーボネート(商品名:マクロホールKG、
バイエル社製)の膜厚3.5μmの膜に実施例1と同一条
件で照射・エッチングした後、0.1μmの孔径を有する
多孔膜を得た。
比較例2 ポリエチレンテレフタレート(商品名:ルミラー、東
レ(株)製)の膜厚4μmのフイルムにイオン加速器で
N+イオンを照射した。照射条件は、加速電圧3.0MV,照射
量1×108イオン/cm2である。
このようにして作成した膜を、6NのNaOH水溶液で室温
の条件下で、10時間エッチングした後、1時間水洗し、
十分に乾燥させた。
このようにして作成した多孔性膜の孔径を走査電子顕
微鏡で測定すると、0.1μmの均一な孔径を有している
ことが確認された。
上記のようにして作成した2種の多孔膜に電子線を80
Mrad照射すると、ポリアリレートは変化は殆どないが、
ポリカーボネートは脆くなり、劣化が進行していて、ポ
リアリレートのみが、耐放射線性に優れていることが分
かった。
また、耐候性試験は、カーボンアーク式サンシャイン
ウエザーメーターにより2,000時間の加速劣化試験を行
った。その結果、ポリカーボネートは脆くなるが、ポリ
アリレートは殆ど変化がなく、耐候性に優れていた。
また、耐熱性試験は、DSCにより相転移温度を測定し
た。
ポリアリレートは、190℃程度であり、一方、ポリカ
ーボネートの150℃、ポリエチレンテレフタレートの70
℃と比較して、耐熱性が優れており、高温使用時の孔径
変化が小さいことが容易に期待できる。
(発明の効果) 本発明の方法により作成した多孔性ポリエステル分離
膜は、孔径が均一であり、従来法により作成した三次元
網目状分離膜に比べ、高効率での分離が可能であるた
め、細菌、ウイルスの分離等の高精度の分離が要求され
る分野で利用できる。
また、現在市販されている核分裂片を利用した穿孔を
有する多孔性ポリカーボネート分離膜に比べ、耐熱性に
優れ、高温下での分離時の変形が小さく、又、劣化もな
く高温プロセスでの使用が可能である。
また、耐候性に優れ、紫外線等に曝される雰囲気下で
の分離が可能となる。
さらに、耐放射線性にも優れ、電子線やγ線下での使
用も可能と考えられる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二価フェノールと芳香族ジカルボン酸又は
    その誘導体とから得られた芳香族ポリエステルからなる
    高分子膜に、高エネルギーイオンを照射して前記高分子
    膜に照射損傷領域を形成した後、その損傷領域を化学的
    にエッチング処理することを特徴とする、直孔型の孔を
    有する多孔性ポリエステル分離膜の製造方法。
  2. 【請求項2】前記高分子膜を構成する芳香族ポリエステ
    ルが、ビスフェノールAとフタル酸又はその誘導体から
    得られた芳香族ポリエステルであることを特徴とする、
    請求項1記載の直孔型の孔を有する多孔性ポリエステル
    分離膜の製造方法。
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