JP2776837B2 - 消化性潰瘍治療剤 - Google Patents

消化性潰瘍治療剤

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は有効成分としてトコフェリルレチノエートを
含有する消化性潰瘍治療剤に係り、詳細には、有効成分
としてトコフェリルレチニレートを含有し、更に高粘性
ヒドロキシプロピルセルロースを配合してなる消化性潰
瘍治療剤に関する。
本発明はまた、有効成分としてトコフェリルレチノエ
ートを含有する製剤に高粘性ヒドロキシプロピルセルロ
ースを配合することにより、有効成分であるトコフェリ
ルレチノコートの胃壁粘膜への付着滞留性をコントロー
ルした消化性潰瘍治療剤、ならびに有効成分の吸収をコ
ントロールする方法にも関する。
(従来の技術およびその問題点) α−トコフェロールビタミンA酸エステルであるトコ
フェリルレチノエートは、皮膚劣化防止作用を有し、ま
た粘膜防御因子増強作用に基づく潰瘍治療作用を有する
化合物として公知化合物である。このトコフェリルレチ
ノエートは室温質においては樹脂状物質として存在する
非常に粘稠性の高い化合物であり、この化合物の製剤化
としては、製剤学的に許容される粘着剤(例えば無水ケ
イ酸)に吸着させて粉末化するか、あるいはスプレード
ライ法にて粉末化したのち、錠剤あるいは硬カプセル剤
とするか、または適当な油と混合溶解したのち軟カプセ
ル充填するソフトカプセル剤が提案されている。しかし
ながらこれら製剤にあっては、該製剤を経口投与した場
合に有効成分であるトコフェリルレチノエートの胃内滞
留性がそれ程良くなく、したがってトコフェリルレチノ
エートが本来的に所有する粘膜防御因子増強作用が有効
に発揮されないといった問題点が生じていた。特にトコ
フェリルレチノエートの如き粘膜保護・肉芽形成促進作
用を有する粘膜防御因子増強型の薬物がその生理活性を
有効に発揮するためには、経口投与された場合該薬物が
消化管の潰瘍面に長時間接触維持されることが必要とさ
れ、また長期間投与する場合、薬物を潰瘍面に選択的に
接触させることによって投与量を削減することが望まし
いとされている。しかしながら消化管は常にその蠕動運
動によって流動性に富み、薬物単独の投与によっては、
その本来の生理活性を十分に発揮することは困難であっ
た。
ところで最近、非経口あるいは非注射の薬物の局所投
与における生物学的利用能(バイオアベイラビリティ
ー)を薬物を放射制御の面から検討する研究が種々行な
われ、新たな剤形開発のアプローチが積極的になされて
来ている。これら研究は、固形薬剤の溶解性に関する速
度論的研究に端を発し、高分子マトリックスからの薬物
放出に関する研究がベースとなっており、その結果薬物
送達システム(ドラッグデリバリーシステム)のなかで
全く新たな分野として粘膜付着性製剤が登場するに至っ
ている。
そこで本発明者らは、この粘膜付着性に基づく薬物の
放出制御をトコフェリルレチノエートに応用し、生体粘
膜、特に消化管の潰瘍部位にトコフェリルレチノエート
を選択的に付着・滞留させてやれば、該トコフェリルレ
チノエートが所有する粘膜保護・肉芽形成促進作用がい
かんなく発揮され、目的とする潰瘍治療が出来得るもの
と考え鋭意検討した。その結果、高粘性のヒドロキシプ
ロピルセルロースが生体粘膜に良好に付着することを見
出し、該ヒドロキシプロピルセルロースをトコフェリル
レチノエートを有効成分として含有する製剤に配合処方
してやれば、経口投与において活性成分であるトコフェ
リルレチノエート自体が消化管粘膜に良好に付着され、
しかも消化管潰瘍部位に選択的に残存し、正常粘膜に比
べて高い濃度が長時間に渡って維持されることを確認
し、本発明を完成させるに至った。
(発明の構成) すなわち本発明は; 有効成分としてトコフェリルレチノエートを含有し、
高粘性ヒドロキシプロピルセルロースを、製剤全重量を
基準として2ないし50重量%配合してなる消化性潰瘍治
療剤に関し、その態様において本発明はまた、有効成分
としてトコフェリルレチノエートを含有する製剤に、更
に高粘性ヒドロキシプロピルセルロースを配合し、有効
成分であるトコフェリルレチノエートの胃壁粘膜への付
着滞留をコントロールする治療剤にも関する。
更に本発明は高粘性ヒドロキシプロピルセルロースの
特異性より、有効成分としてトコフェリルレチノエート
を含有する製剤に更に高粘性ヒドロキシプロピルセルロ
ースを配合し、有効成分であるトコフェリルレチノエー
トの吸収をコントロールする方法を提供するものでもあ
る。
(作用) 上記する如く、本発明は、基本的には粘膜保護・肉芽
形成促進作用を有するトコフェリルレチノエートを活性
成分として含有する製剤に高粘性ヒドロキシプロピルセ
ルロースを配合処方することによって、該成分が胃壁粘
膜付着性特に潰瘍部位付着を選択的に維持させるように
した消化性潰瘍治療剤を提供するものである。
ところで、高分子物質を用いる各種薬剤の生体粘膜へ
の付着についてはこれまでいくつかの検討がなされてい
る。たとえばその1つとしてカルボキシビニルポリマー
(カーボポール)を用いる粘膜付着性製剤が提案されて
おり、子宮粘膜あるいは口腔粘膜等の局所粘膜表面に接
触投与することによる薬物送達システムに利用されてい
る[ケミカルファーマシューティカルブレチン(Chem.P
harm.Bull)28,1125(1980).,同30,980(1982)]。し
かしながらかかる粘膜付着性製剤は、局所粘膜表面に直
接接触し投与するものであり、流動性の高い消化管内で
所望の粘膜付着性が得られるか否かは詳細に検討されて
いない。
また、特開昭61−233632号公報には、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース等の水溶性高分子と油との配合処
方により薬物の消化管内移動を制御する薬剤が報告され
ている。該製剤は、消化管粘膜への付着によって薬物の
消化管吸収を向上させることを目的としており、本発明
と基本的思想は同一であるが、この製剤にあっては、含
有される薬物が消化管粘膜において直接的に作用させ、
治療効果を発揮する目的で使用されるものではない。し
たがって、上記公報からは、本発明が意図する消化管の
特に潰瘍部位へのトコフエリルレチノエートの付着の選
択的な持続化が必ずしも得られるか否かは明らかではな
い。
これに対し本発明の治療剤は、有効成分としてトコフ
ェリルレチノエートを含有する製剤に特定の高粘性ヒド
ロキシプロピルセルロースを配合した場合に、該ヒドロ
キシプロピルセルロースが消化管内においてゲル化し、
その結果胃壁粘膜、特に潰瘍部位にトコフェリルレチノ
エートが付着滞留し、有効に粘膜保護・肉芽形成促進作
用が発揮されるものである。
この本発明で配合される高粘性ヒドロキシプロピルセ
ルロースは、25℃における2%水溶液の粘度が1,000な
いし10,000センチポイズを有するものである場合に特に
良好なゲル化を発揮し、有効成分であるトコフェリルレ
チノエートを胃壁粘膜に付着・滞留させることが判明し
たが、そのなかでも、該粘度が4,000ないし6,500センチ
ポイズである場合がより好ましく良好な結果を与えるも
のである。このような高粘性ヒドロキシプロピルセルロ
ースとしては、例えばKLUCEL−MF (ハーキュレス社)
ヒドロキシプロピルセルロースType・H (日本曹達
(株))等を挙げることができる。
上記する高粘性ヒドロキシプロピルセルロースは、通
常製剤学上使用される低粘性ヒドロキシプロピルセルロ
ースが結合剤として使用され、ゲル化能力を発揮し得な
い点でその性質を異にするものといえる。
本発明の治療剤における高粘性ヒドロキシプロピルセ
ルロースの配合量は、該治療剤に含有させる有効成分で
あるトコフェリルレチノエート量あるいは他の製剤配合
成分により、一概に限定し得ないが、通常、製剤全重量
を基準として2ないし50重量%、好ましくは10〜40重量
%、より好ましくは20〜30重量%でありこの配合量で目
的とするトコフェリルレチノエートの胃壁粘膜への付着
滞留が発揮されることが判明した。
本発明の治療剤は、有効成分としてトコフェリルレチ
ノエートを含有する製剤に、上記高粘性ヒドロキシプロ
ピルセルロースを配合することによって、調製すること
ができる。
この場合におけるトコフェリルレチノエートを含有す
る製剤は、トコフェリルレチノエートが高粘稠性の油状
物であるため、あらかじめ吸着剤に吸着させ粉末製剤と
したものが好ましく使用される。吸着剤としては、製剤
学的に一般に用いられるもののなかから任意に組合せ使
用され、たとえばケイ酸類、セルロース類、デンプン類
等を挙げることができるが、なかでもケイ酸類より具体
的には軽質無水ケイ酸が好ましく使用される。本発明の
実施にあたって、当該吸着剤の使用は必ずしも必須なも
のとはいえず、製剤学的に許容される製剤形態を自由に
選択することができることはいうまでもない。しかしな
がら、上記する高粘性ヒドロキシプロピルセルロースを
配合し、本発明が目的とする消化性潰瘍治療剤を種々の
剤形の製剤とするためには、トコフェリルレチノエート
を含有する製剤自体は粉末化しておくことが好ましいこ
とが判明した。
本発明のトコフェリルレチノエートを含有する消化性
潰瘍治療剤には、あらかじめ、あるいは高粘性のヒドロ
キシプロピルセルロースを配合する際に、製剤上許容さ
れる賦形剤、崩壊剤、保存剤、安定化剤、着色剤、矯味
剤、矯臭剤、溶解補助剤、懸濁化剤、流動化剤、緩衝
剤、pH調整剤等を添加して通常の方法に従って顆粒剤、
細粒剤、錠剤、カプセル剤、散剤等の形態にある治療剤
とすることができる。
かかる賦形剤としては、例えばリン酸水素カルシウ
ム、乳糖、砂糖、デンプン、微結晶セルロース、ヒドロ
キシプロピルスターチ、乳酸カルシウム等が挙げられ;
結合剤としては、例えばアラビアゴム、ゼラチン、トラ
ガント、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロース、プレゲラチナイズドスター
チ、ポリビニルピロリドン等;吸着剤としては、例えば
無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成
ケイ酸アルミ等;滑択剤としては、例えばステアリン酸
マグネシウム、タルク、無水ケイ酸、硬化植物油等;溶
解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、ソ
ルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ
油、ラウリル硫酸ナトリウム等;崩壊剤としては、例え
ばカルボキシメチルセルロース・カルシウム、架橋カル
ボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロ
ース・ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロ
ース、ポリビニルポリピロリドン、デンプングリゴール
酸ナトリウム、部分α化デンプン、その他加工デンプン
等を挙げることができる。なお、本発明の治療剤を錠剤
とする場合には常法に従ってコーティングしてもよい。
(実施例) 以下に本発明を、付着性試験ならびに製剤例にて更に
詳細に説明する。
試験例1:ビスキングフィルムへの付着性試験方法: 吸着剤として軽質無水ケイ酸を選択し、そこへトコフ
ェリルレチノエートを吸着させ、トコフェリルレチノエ
ートを含有する製剤とし、更に第1表に記載するそれぞ
れ粘性の異なる3種のヒドロキシプロピルセルロースを
配合し、トコフェリルレチノエートを含有する治療剤を
得、これらのビスキングフィルムへの付着性を調べた。
なお、各サンプルの基本的処方は以下のとおりであ
る。
トリフェリルレチノエート 10% 吸着剤(軽質無水ケイ酸) 80% [Syloid−200 ヒドロキシプロピルセルロース 10% 全 量 100% サンプルの調製は以下の方法に従って行なった。すな
わち、トコフェリルレチノエートをアセトンに溶解し、
この溶液に吸着剤を加え混合したのちアセトンを蒸発さ
せ、トコフェリルレチノエートを含有する製剤を作っ
た。次いでこの製剤を用い、第1表に記載の各種ヒドロ
キシプロピルセルロースを混合し、それぞれ粘度の異な
るヒドロキシプロピルセルロースを配合したサンプルを
調整した。付着性試験として、各サンプルをそれぞれ50
mg秤量し、ビスキングフィルム(2.5×3.2cm)上へ広
げ、純水0.25mlを添加して10分間放置した。崩壊試験用
バスケットにフィルムをつるし、各試験液中15ストロー
ク/分で振とうし、サンプルが崩壊し、全量がフィルム
から溶解又は脱落するまでの時間を求めた。
結果: その結果を第1表にまとめた。
上記結果より、ヒドロキシプロピルセルロースのうち
高粘性のKLUCEL・MF がもっともビスキングフィルムに
対する付着性が優れており、次いでHPC・H が好結果
を与えていることが判明する。これに対し、粘度が8cps
である低粘性のヒドロキシプロピルセルロースであるHP
C・L (日本曹達(株))は、すみやかに崩壊してし
まい、フィルムへの付着性が認められない。この本実験
で行なった湿潤ビスキングフィルムへの付着性の差は、
これまでにイヌの消化管粘膜に対する付着性の差と相関
関係にあることがin situの実験によって確認されてい
る。このことから判断すると、トコフェリルレチノエー
トを含有する製剤に高粘性のヒドロキシプロピルセルロ
ースを配合することによって、消化管粘膜に対する付着
性を得ることができ、なかでもKLUCEL・MF を配合する
ことによって、特に優れた付着性を得ることができるこ
とが理解される。
試験例2:マウス胃内壁粘膜への付着性試験 前記試験例1において高粘性ヒドロキシプロピルセル
ロースを配合することにより、製剤の消化管粘膜への付
着性が増大されることがin vitroの実験で確認されたの
で、動物摘出胃内壁粘膜への付着性が現実に達成されて
いるか否かを以下の試験で検討した。
方法: 体重210〜220gのWister系雄性ラットを用い、マウス
の摘出胃を洗浄し、胃内容物を除去した。この摘出胃を
開いて内壁面を上にしてスライドグラス上に固定した。
下記処方に基づくサンプルをそれぞれ20mg秤量し、胃内
壁上に均一に広げ、更に純水0.2mlを添加して20分間放
置した。このように処理した摘出胃をスライドグラスに
固定したまま崩壊試験用バスケットにつるし、純水(37
℃)中、15ストローク/分で10分間振とうし、胃内壁へ
の残存付着率を求めた。
なお残存付着率は、サンプル中に配合した色素(Blue
Dye#1)の残存率で求めた。
サンプル処方は以下のとおりである。
サンプルNo.1(色素−吸着剤−高粘性ヒドロキシプロピ
ルセルロース処方) 色 素:Blue Dye #1 1% 吸着剤:軽質無水ケイ酸 40% (Syloid・266 ) 高粘性ヒドロキシプロピルセルロース: 59% KLUCEL・MF (粘度 5250cps) 全 量 100% サンプルNo.2(色素−吸着剤処方) 色 素:Blue Dye #1 1% 吸着剤:メタケイ酸アルミン酸 99% マグネシウム (Nensilin・UFL2 全 量 100% 結果: その結果を第2表にまとめた。
本試験のサンプルNo.2に配合されているNeusilin・UF
L2 は、一般にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと呼
ばれており、サンプルNo.1で配合されている軽質無水ケ
イ酸であるSyloid・266 と同様に、製剤学上吸着剤と
して用いられるものであるが、これ以外に、胃壁粘膜へ
の付着性を有することも知られている。しかし、本試験
の結果から判明するように、当該Neusilin・UFL2 を配
合したサンプルNo.2においては、10分後の色素が溶出
し、その残存がわずかに15%にとどまり、必ずしも異壁
粘膜への付着性が得られないのに対し、高粘性ヒドロキ
シプロピルセルロースであるKLUCEL・MF を配合したサ
ンプルNo.1からは、色素の溶出がまったく認められなか
った。
この事実から判断すると、試験例1において、ビスキ
ングフィルムに対して良好な付着性が認められたKLUCEL
・MF の配合剤が、マウスの胃内壁粘膜に対して、きわ
めて優れた付着性を示すことが明白となる。
試験例3:胃壁粘膜の潰瘍部位への付着性試験方法: 酢酸潰瘍ラットを用いて、トコフェリルレチノエート
を含有する以下の製剤を経口投与し、トコフェリルレチ
ノエートの胃内壁粘膜への付着について調べた。
ラットの胃潰瘍の作り方は、Takagiらの方法[Japan.
J.Pharmacol.18(9)1968]に準じて行なった。1群15
匹のSD系ラットを麻酔下に開腹し、胃の漿膜下に15%酢
酸を注入した。手術4日後、各処方のサンプルを経口投
与した。一定時間後開腹し、胃の内壁粘膜の潰瘍部位と
正常部位とをそれぞれパンチアウト(φ=10mm)により
採取し、ホモジナイズしてトコフェリルレチノエートの
定量分析をHPLCにて行ない、その潰瘍部位への吸着量と
正常部位へのトコフェリルレチノエートの吸着量を求め
た。
サンプル処方は以下のとおりである。このうちサンプ
ルNo.3は吸着剤として軽質無水ケイ酸を用い、そこへ高
粘性のヒドロキシプロピルセルロースを配合した本発明
の治療剤であり、サンプルNo.4およびNo.5はヒドロキシ
プロピルセルロースを用いない対照サンプルである。
サンプルNo.3(本発明処方) トコフェリルレチノエート 100mg 軽質無水ケイ酸(Syloid 266 ) 100mg ヒドロキシプロピルセルロース (KLUCEL・MF ) 100mg 全 量 300mg サンプルNo.4(対照処方) トコフェリルレチノエート 100mg 軽質無水ケイ酸(Syloid・266 ) 100mg ポリビニルピロリドン 100mg (PVP・K−30 全 量 300mg サンプルNo.5(対照処方) トコフェリルレチノエート 1% ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1% (HCO−60 純 水 98% 全 量 100% 結果: その結果を第3表にまとめた。
以上の結果より判明する如くサンプルNo.4およびNo.5
は共に潰瘍部位と正常部位で6時間めにはトコフェリル
レチノエート(主薬)の胃壁への付着量が減少してい
る。しかしながら高粘性ヒドロキシプロピルセルロース
を含有した本発明処方であるサンプルNo.3は3時間め以
降潰瘍部位の付着主鎖量の減少が目立たなくなった。一
方正常部位はサンプルNo.4およびNo.5と同様時間と共に
主鎖付着量が減少した。この結果、本発明処方であるサ
ンプルNo.3はサンプルNo.4およびNo.5と異なり、正常部
位に比較し、潰瘍部位への主鎖吸着量の方が著しく増加
している点に特徴がある。その点から判断すると高粘性
ヒドロキシプロピルセルロースの添加は、トコフェリル
レチノエートを特に潰瘍部位に長時間保持できることが
判明する。
製剤例1:散剤 トコフェリルレチノエート 10g 軽質無水ケイ酸(Syloid・266 ) 10g 高粘性ヒドロキシプロピルセルロース 10g (KLUCEL・MF 全 量 30g (トコフェリルレチノエート100mg/300mg製剤) トコフェリルレチノエート10gをアセトンに溶解し、
これにSyloid・266 10gを混合する。アセトンを蒸発し
た後、乳鉢で粉砕し20メッシュ篩にて篩過しさらにKLUC
EL・MF 10gを混合した。
製剤例2:細粒剤 トコフェリルレチノエート 10.0g 軽質無水ケイ酸(Syloid 266 ) 10.0g 低置換ヒドロキシプロピルセルロース 6.4g デンプン 12.0g 軽質無水ケイ酸 1.0g ステアリン酸マグネシウム 0.6g 高粘度性ヒドロキシプロピリセルロース 10.0g (KLUCEL・MF 全 量 50.0g トコフェニルレチノエート10gをアセトンに溶解し、
これに軽質無水ケイ酸10gを混合する。アセトンを蒸発
した後、乳鉢で粉砕し、42メッシュ篩にて篩過し、更に
低置換ヒドロキシプロピルセルロース6.4gデンプン12
g、軽質無水ケイ酸1gステアリン酸マグネシウム0.6gを
混合しローラーコンパクターにて乾式造粒する。造粒物
をロールグラニュレーターにて粉砕し、32メッシュと80
メッシュ篩にて篩過した。この物をあらかじめ32メッシ
ュと80メッシュ篩にて篩過した高粘性ヒドロキシプロピ
ルセルロース10gと混合し、細粒剤を得た。
製剤例3:カプセル剤 トコフェリルレチノエート 10 g 軽質無水ケイ酸(Syloid・266 ) 10 g カルボキシメチルセルロース・ 4 g カルシウム デンプン 4 g 軽質無水ケイ酸 1 g ステアリン酸マグネシウム 1 g アカシア末 1.5g デンプン 4.3g ステアリン酸マグネシウム 0.2g 高粘性ヒドロキシプロピルセルロース 3 g (KLUCEL・MF 全 量 40 g トコフェリルレチノエート10gをアセトンに溶解し、
これを軽質無水ケイ酸10gに混合する。アセトンを蒸発
した後、乳鉢で粉砕し、42メッシュ篩にて篩過し、更に
デンプン4g、軽質無水ケイ酸1g、ステアリン酸マグネシ
ウム1g、アカシア末1.5gを加え、ローラーコンパクター
にて乾式造粒し、後にロールグラニュレーターにて粉砕
整粒した。これに高粘性ヒドロキシプロピルセルロース
3g、デンプン4.3g、ステアリン酸マグネシウム0.2gを加
え混合し、この物をカプセルに200mg充填した。
(発明の効果) 本発明が提供するトコフェリルレチノエートを有効成
分として含有する消化性潰瘍治療剤は、経口投与におい
て、治療剤自体が消化管粘膜に付着され、特に有効成分
であるトコフェリルレチノエートが潰瘍部位に選択的に
長時間維持されるものである。したがって、生理活性成
分であるトコフェリルレチノエートは、潰瘍部位におい
て長時間高濃度に保たれ、その投与量に対する利用率の
向上が期待される。この結果は、消化性潰瘍に対する維
持療法を行なううえで特に優れた点であり、従来の治療
剤に比べて、投与量、および投与回数を減ずることがで
き、臨床上極めて有用であり、その効果は多大なものと
いえる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川瀬 重雄 埼玉県入間郡鶴ケ島町脚折町2丁目28番 5号 (56)参考文献 特開 昭53−15429(JP,A) 特開 昭63−101332(JP,A) 特開 昭58−105914(JP,A) 特開 昭58−128314(JP,A) 特開 昭62−142113(JP,A) 特開 昭58−213709(JP,A) 井口定男編 「新製剤開発システム総 合技術−基剤・添加物篇」 (1985) R&Dプランニング P.428 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 31/355 A61K 47/38 C07D 311/72

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】トコフエリルレチノエートを有効成分とし
    て含有し、且つ25℃における2%水溶液の粘度が1,000
    ないし10,000センチポイズの範囲内にある高粘性ヒドロ
    キシプロピルセルロースを製剤全重量を基準として2な
    いし50重量%配合してなる消化性潰瘍治療剤。
  2. 【請求項2】高粘性ヒドロキシプロピルセルロースの粘
    度が4,000ないし6,500センチポイズの範囲内にある請求
    項第1項の治療剤。
  3. 【請求項3】トコフエリルレチノエートを有効成分とし
    て含有する製剤に、25℃における2%水溶液の粘度が1,
    000ないし10,000センチポイズの範囲内にある高粘性ヒ
    ドロキシプロピルセルロースを配合することにより、有
    効成分であるトコフエリルレチノエートの胃壁粘膜への
    付着滞留性がコントロールされた治療剤。
  4. 【請求項4】高粘性ヒドロキシプロピルセルロースの配
    合量が製剤全重量を基準として2ないし50重量%である
    請求項第3項の治療剤。
  5. 【請求項5】トコフエリルレチノエートを有効成分とし
    て含有する製剤に、25℃における2%水溶液の粘度が1,
    000ないし10,000センチポイズの範囲内にある高粘性ヒ
    ドロキシプロピルセルロースを配合することにより、有
    効成分であるトコフエリルレチノエートの吸収をコント
    ロールする方法。
  6. 【請求項6】高粘性ヒドロキシプロピルセルロースの配
    合量が製剤全重量を基準として2ないし50重量%である
    請求項第5項の方法。
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