JP3947244B2 - 消化性潰瘍治療用製剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレチノイントコフェリルを効果的に消化管壁へ吸着させることにより、消化性潰瘍を消化管壁より治療するために用いられる、トレチノイントコフェリルを有効成分とする消化性潰瘍治療用製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
α−トコフェロールとレチノイン酸すなわちビタミンA酸とのエステルであるトレチノイントコフェリルは本出願人の出願に係る特公昭49−26632号公報に記載されている公知の化合物であり、またこの化合物は粘膜下組織及び粘膜修復促進作用に基づく消化管潰瘍治療作用を有し、従ってこの化合物を活性成分とする消化管潰瘍治療剤の発明も本出願人の出願に係る特公昭60−26770号公報に開示されていて公知である。
このトレチノイントコフェリルは上記の様に優れた消化性潰瘍治療作用を有する化合物ではあるが、室温では半固体状又は樹脂状を呈し、また水に対する溶解性は極めて低く、水に対する分散性も悪いためにその取り扱いには困難性を伴うものである。
【0003】
そこでかかる困難を克服してトレチノイントコフェリルを製剤化するために種々の検討がなされている。
例えば、本出願人等の出願に係る特開平2−48525号公報に開示されたトレチノイントコフェリルと共に高粘性ヒドロキシプロピルセルロースを製剤の全重量を基準にして2〜50%含有させる製剤化の方法、本出願人等の出願に係る特開平2−300123号公報に開示された軽質無水ケイ酸に吸着させたトレチノイントコフェリルの粉末状組成物と、低置換ヒドロキシプロピルセルロースと、ポリビニルピロリドンとからなる消化性潰瘍治療剤である製剤などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平2−48525号公報に記載の方法にあっては混合するべき両成分が高粘性物であるため均一な混合物の調製に多くの工程を要するという問題点があり、また特開平2−300123号公報に記載の製剤にあっては、無水ケイ酸の胃粘膜に対する刺激作用と無水ケイ酸の吸着性によってトレチノイントコフェリルが無水ケイ酸の内部に取り込まれて治療効果が十分発揮されないという問題点があった。
【0005】
そしてトレチノイントコフェリルは消化管経由で人体に投与された場合に消化管から体内に吸収されて作用するのではなく消化管壁表面から潰瘍へ直接作用することが知られている。
従って、トレチノイントコフェリルを効果的に消化管壁へ吸着させることにより、消化性潰瘍を消化管壁表面より有効に治療するための製剤であって、しかも製剤化が容易な新しい製剤の提供が求められていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために本発明者等は鋭意研究の結果、トレチノイントコフェリル、カルボキシビニルポリマー、及び特定の粒径の低置換ヒドロキシプロピルセルロースを組み合わせて製剤とした場合に、トレチノイントコフェリルをカルボキシビニルポリマー及び低置換ヒドロキシプロピルセルロースに良好に吸着させることが出来ること、さらにはこのカルボキシビニルポリマー及び低置換ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、適度の吸水性および良好な消化管壁への吸着性を得ることができる。
そのため、この製剤を投与した場合に長時間にわたって消化管壁にトレチノイントコフェリルを作用させることが出来ること、そしてこの製剤は製剤化が極めて容易であることをを見出して本発明を完成させたのである。
【0007】
即ち本発明は、トレチノイントコフェリル、カルボキシビニルポリマー及び粒径の90%以上が80μm以下である低置換ヒドロキシプロピルセルロースを含有する消化性潰瘍治療用製剤に関する。
【0008】
さらに詳細には本発明は、トレチノイントコフェリルの含有量が0.1〜20.0重量%、カルボキシビニルポリマーの含有量が3.0〜20.0重量%及び粒径の90%以上が80μm以下である低置換ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が60.0〜97.0重量%である消化性潰瘍治療用製剤に関する。
上記した本発明の消化性潰瘍治療用製剤には、必要によってさらにメチルセルロースを含有させることも出来、1.0〜20.0重量%の含有量で用いられる。
【0009】
本発明の製剤に用いられるカルボキシビニルポリマーは、炭化水素の主鎖に規則的にカルボキシル基側鎖を持つアクリル酸重合体であって、乾燥したものを定量するときカルボキシル基を58.0〜63.0%含むものである。そして、20℃における0.2%水酸化ナトリウムで中和したカルボキシビニルポリマーの水溶液の粘度が1500〜50000cPの性質を示すものが好ましく用いられる。これらのカルボキシビニルポリマーとしては、「医薬品添加物規格 1993」所載の「カルボキシビニルポリマー」が挙げられ、具体的には和光純薬社製「ハイビスワコー103(R)」(0.2%水酸化ナトリウム中和液の粘度が9000〜22000cPで、粒子の90%以上が粒径297μm以下で粒子の66%以下が粒径149μm以上の粒度を有するもの)または和光純薬社製「ハイビスワコー105(R)」(0.2%水酸化ナトリウム中和液の粘度が3000〜10000cPで、粒子の90%以上が粒径297μm以下で粒子の66%以下が粒径149μm以上の粒度を有するもの)等が用いられる。
【0010】
本発明の製剤に用いる低置換ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースの低置換ヒドロキシプロピルエーテルであって、セルロース中のブドウ糖1残基当たりヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.11〜0.39であるもの、即ち乾燥したものを定量するときヒドロキシプロポキシル基を5.0〜16.0%含むものである。そしてその粒子の90%以上が粒径80μm以下のもの、好ましくは74μm以下のものが用いられる。これらの低置換ヒドロキシプロピルセルロースとしては、「第十二改正日本薬局方」所載の「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」が挙げられ、具体的には信越化学工業社製「L−HPC:LH−21(R)」(ヒドロキシプロポキシ基を10.0〜13.0%含み、粒子の90%以上が粒径74μm以下で粒子の1%以下が粒径105μm以上であるもの)又は信越化学工業社製「L−HPC:LH−31(R)」(ヒドロキシプロポキシ基を10.0〜13.0%含み、粒子の50%以上が粒径44μm以下でかつ粒子の95%以上が粒径74μm以下であるもの)等が用いられる。
【0011】
この低置換ヒドロキシプロピルセルロースは、前記の特開平2−48525号公報に記載の高粘性ヒドロキシプロピルセルロースとは異なる物質である。すなわち、この高粘性ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロース中のブドウ糖1残基あたりヒドロキシプロポキシル基の平均置換モル数が2.0〜4.2であるもの、すなわち、乾燥したものを定量するとき、ヒドロキシプロポキシル基を53.4〜77.5%含むものであり、これに水を加えると粘稠性のある液となるのである。これに対し、本発明で使用する低置換ヒドロキシプロピルセルロースに水を加えると、膨潤するが溶けない(20±5℃で1gのを溶解するのに必要な水の量は10000ml以上必要)のである(第12改正日本薬局方解説書、廣川書店、1991年参照)。
【0012】
すなわち、本発明の製剤に用いられる低置換ヒドロキシプロピルセルロースは、特願平2−48525号公報に記載の「2%水溶液」とすることさえも出来ないものであることから、高粘性ヒドロキシプロピルセルロースとは明確に異なる物質であることがわかる。
【0013】
本発明の製剤に必要によって用いられるメチルセルロースは、セルロースのメチルエーテルであって、セルロース中のブドウ糖1残基当たりメトキシル基の置換モル数が1.7〜2.2であるもの、即ち乾燥したものを定量するときメトキシル基を26.0〜33.0%含むものである。これらのメチルセルロースとしては、「第十二改正日本薬局方」所載の「メチルセルロース」が挙げられ、具体的には信越化学工業社製「メトローズSM−100(R)」又は信越化学工業社製「メトローズSM−400(R)」等が用いられる。
【0014】
本発明の製剤において、有効成分のトレチノイントコフェリルの酸化を防ぐために、トコフェロール、アスコルビン酸などの抗酸化剤を配合することが好ましい。これらの抗酸化剤は抗酸化作用を発揮し得る任意の量で配合されるが、製剤の0.1〜20.O重量%の量であればよい。
【0015】
本発明の製剤の製造方法としては、トレチノイントコフェリル及び抗酸化剤を有機溶媒、例えばアセトン、エタノール等に溶解し、これにカルボキシビニルポリマー、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、及び必要に応じてメチルセルロースを加え十分に混合した後、有機溶媒を留去し、残留物を粉砕して粉末状、粒状又は顆粒状物を製造するか、またはカルボキシビニルポリマー、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、及び必要に応じてメチルセルロースを加え、常法に従い顆粒を作り、これに有機溶媒に溶解したトレチノイントコフェリル及び抗酸化剤を噴霧などによって吸着させて粉砕して、粉末状、粒状又は顆粒状物を製造し、これに製剤調製に通常許容される他の成分、例えば着色剤、矯味剤、矯臭剤、pH調製剤等が加えられ、さらに必要によっては経口投与剤に適した他の賦形剤を加えて、粉末剤、散剤、顆粒剤、錠剤、硬カプセル剤などの経口投与製剤とされる。
【0016】
本発明の消化性潰瘍治療剤は、トレチノイントコフェリルについて成人に1日当たり5〜500mg、好ましくは1日当たり20〜100mgの範囲の量で投与される。
次に本発明を実施例によってさらに詳細に説明することにする。
【0017】
【実施例】
トレチノイントコフェリル10.0gをアセトン30mlに溶解し、これにトコフェロール0.2g、カルボキシビニルポリマー5.0g及び低置換ヒドロキシプロピルセルロース75.0gを加えて全体を混合した後、アセトンを留去し、得られた残留物を粉砕して粉末とし、これを処方1とした。
【0018】
上記の成分を実施例1と同様に処理して粉末とし、これを処方2とした。
【0019】
トレチノイントコフェリル10.0gをアセトン30mlに溶解し、これにトコフェロール0.2g、カルボキシビニルポリマー5.0g、低置換ヒドロキシプロピルセルロース65.0g及びメチルセルロース10.0gを加えて全体を混合した後、アセトンを留去し、得られた残留物を粉砕して粉末とし、これを処方3とした。
【0020】
トレチノイントコフェリル50.0gをアセトン500mlに溶解し、これにトコフェロール0.5g及び軽質無水ケイ酸55.0gを加えて全体を混合した後、アセトンを留去し、得られた残留物を粉砕して粉末とした。更にこれに低置換ヒドロキシプロピルセルロース20.0g、トウモロコシデンプン36.5g及びポリビニルピロリドン7.0gを加え均一に混合した後、乾式造粒して粉砕する。次にトウモロコシデンプン21.5g及びステアリン酸マグネシウム6.0gを加え混合し、これを処方4とした。
【0021】
試験例(潰瘍治療効果)
ラットに酢酸を投与し胃潰瘍モデルを作成し、本発明の消化性潰瘍治療剤の潰瘍治療効果を検討した。
ラットの胃潰瘍の作製方法は、高木等の方法(Japan J. Pharmacol. 18, 9, 1968)に準じて行った。
すなわち、SD系ラットを麻酔下に開腹し、胃の漿膜下に15%酢酸0.05mlを注入した。
その後、開腹部を縫合し、縫合手術日を0日として、1日から13日まで、毎日1回、実施例1〜3及び比較例1で得られた処方1〜4をトレチノイントコフェリルとして50mg/kg/日の用量で経口投与し、これを実験群1〜4とした。また実験群1〜4との比較のために、薬剤無投与群(実験群6)及びアルサルミン(中外製薬社製、商品名:スクラルフェート)を陽性対照として2000mg/kg/日の用量で経口投与し、これを実験群5とした。
14日目に開腹し、各実験群の潰瘍面の面積(長径×短径)を測定し、薬剤無投与群(実験群6)の潰瘍面の平均面積を100としたときに下記式により潰瘍抑制率を求めた。なお、実験群1〜6のそれぞれは1群20匹のマウスを用いた。
【0022】
【数1】
【0023】
次に、アルサルミン投与群(実験群5)の潰瘍抑制率を100とした場合の、実験群1〜4の潰瘍抑制率を算出し、これを相対潰瘍抑制率とした。
この相対潰瘍抑制率の比較で各処方の潰瘍治療効果を評価した。各処方の治癒率を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
以上の結果より、実施例1〜3で得られた処方1〜3は比較例1で得られた処方4に比べ、相対的潰瘍抑制率が格段に向上し、本発明の消化性潰瘍治療剤が従来の処方に比べ、優れていることが分かる。
次に本発明の消化性潰瘍治療剤の製剤例を挙げる。
【0026】
製剤例1:カプセル剤
処方1の粉末 135.3g
カルボキシビニルポリマー 9.0g
(和光純薬社製:ハイビスワコー 103)
低置換ヒドロキシプロピルセルロース 16.0g
(信越化学工業社製:L−HPC LH−31)
ステアリン酸マグネシウム 1.5g
上記成分を混合し、混合物を一カプセル中にトレチノイントコフェリルが0.015g含まれるようにハードカプセルに封入した。
【0027】
製剤例2:錠剤
処方1の粉末 135.3g
ヒドロキシプロピルセルロース 11.5g
(日本曹達社製:HPC−SSL
乾燥したものを定量するとき、ヒドロキシプロポキシル基を
53.4〜77.5%含む。)
アセチルグリセリン脂肪酸エステル 2.0g
(イーストマン社製:マイバセット 9−45)
乳 糖 43.2g
結晶セルロース 43.2g
(旭化成社製:アビセル PH301)
カルボキシメチルセルロース 12.5g
(五徳薬品社製:NS−300)
ステアリン酸マグネシウム 2.5g
上記成分を混合し、混合物を打錠機で打錠して一錠中にトレチノイントコフェリルが0.015g含まれる錠剤を得た。
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレチノイントコフェリルを効果的に消化管壁へ吸着させることにより、消化性潰瘍を消化管壁より治療するために用いられる、トレチノイントコフェリルを有効成分とする消化性潰瘍治療用製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
α−トコフェロールとレチノイン酸すなわちビタミンA酸とのエステルであるトレチノイントコフェリルは本出願人の出願に係る特公昭49−26632号公報に記載されている公知の化合物であり、またこの化合物は粘膜下組織及び粘膜修復促進作用に基づく消化管潰瘍治療作用を有し、従ってこの化合物を活性成分とする消化管潰瘍治療剤の発明も本出願人の出願に係る特公昭60−26770号公報に開示されていて公知である。
このトレチノイントコフェリルは上記の様に優れた消化性潰瘍治療作用を有する化合物ではあるが、室温では半固体状又は樹脂状を呈し、また水に対する溶解性は極めて低く、水に対する分散性も悪いためにその取り扱いには困難性を伴うものである。
【0003】
そこでかかる困難を克服してトレチノイントコフェリルを製剤化するために種々の検討がなされている。
例えば、本出願人等の出願に係る特開平2−48525号公報に開示されたトレチノイントコフェリルと共に高粘性ヒドロキシプロピルセルロースを製剤の全重量を基準にして2〜50%含有させる製剤化の方法、本出願人等の出願に係る特開平2−300123号公報に開示された軽質無水ケイ酸に吸着させたトレチノイントコフェリルの粉末状組成物と、低置換ヒドロキシプロピルセルロースと、ポリビニルピロリドンとからなる消化性潰瘍治療剤である製剤などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平2−48525号公報に記載の方法にあっては混合するべき両成分が高粘性物であるため均一な混合物の調製に多くの工程を要するという問題点があり、また特開平2−300123号公報に記載の製剤にあっては、無水ケイ酸の胃粘膜に対する刺激作用と無水ケイ酸の吸着性によってトレチノイントコフェリルが無水ケイ酸の内部に取り込まれて治療効果が十分発揮されないという問題点があった。
【0005】
そしてトレチノイントコフェリルは消化管経由で人体に投与された場合に消化管から体内に吸収されて作用するのではなく消化管壁表面から潰瘍へ直接作用することが知られている。
従って、トレチノイントコフェリルを効果的に消化管壁へ吸着させることにより、消化性潰瘍を消化管壁表面より有効に治療するための製剤であって、しかも製剤化が容易な新しい製剤の提供が求められていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために本発明者等は鋭意研究の結果、トレチノイントコフェリル、カルボキシビニルポリマー、及び特定の粒径の低置換ヒドロキシプロピルセルロースを組み合わせて製剤とした場合に、トレチノイントコフェリルをカルボキシビニルポリマー及び低置換ヒドロキシプロピルセルロースに良好に吸着させることが出来ること、さらにはこのカルボキシビニルポリマー及び低置換ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、適度の吸水性および良好な消化管壁への吸着性を得ることができる。
そのため、この製剤を投与した場合に長時間にわたって消化管壁にトレチノイントコフェリルを作用させることが出来ること、そしてこの製剤は製剤化が極めて容易であることをを見出して本発明を完成させたのである。
【0007】
即ち本発明は、トレチノイントコフェリル、カルボキシビニルポリマー及び粒径の90%以上が80μm以下である低置換ヒドロキシプロピルセルロースを含有する消化性潰瘍治療用製剤に関する。
【0008】
さらに詳細には本発明は、トレチノイントコフェリルの含有量が0.1〜20.0重量%、カルボキシビニルポリマーの含有量が3.0〜20.0重量%及び粒径の90%以上が80μm以下である低置換ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が60.0〜97.0重量%である消化性潰瘍治療用製剤に関する。
上記した本発明の消化性潰瘍治療用製剤には、必要によってさらにメチルセルロースを含有させることも出来、1.0〜20.0重量%の含有量で用いられる。
【0009】
本発明の製剤に用いられるカルボキシビニルポリマーは、炭化水素の主鎖に規則的にカルボキシル基側鎖を持つアクリル酸重合体であって、乾燥したものを定量するときカルボキシル基を58.0〜63.0%含むものである。そして、20℃における0.2%水酸化ナトリウムで中和したカルボキシビニルポリマーの水溶液の粘度が1500〜50000cPの性質を示すものが好ましく用いられる。これらのカルボキシビニルポリマーとしては、「医薬品添加物規格 1993」所載の「カルボキシビニルポリマー」が挙げられ、具体的には和光純薬社製「ハイビスワコー103(R)」(0.2%水酸化ナトリウム中和液の粘度が9000〜22000cPで、粒子の90%以上が粒径297μm以下で粒子の66%以下が粒径149μm以上の粒度を有するもの)または和光純薬社製「ハイビスワコー105(R)」(0.2%水酸化ナトリウム中和液の粘度が3000〜10000cPで、粒子の90%以上が粒径297μm以下で粒子の66%以下が粒径149μm以上の粒度を有するもの)等が用いられる。
【0010】
本発明の製剤に用いる低置換ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースの低置換ヒドロキシプロピルエーテルであって、セルロース中のブドウ糖1残基当たりヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.11〜0.39であるもの、即ち乾燥したものを定量するときヒドロキシプロポキシル基を5.0〜16.0%含むものである。そしてその粒子の90%以上が粒径80μm以下のもの、好ましくは74μm以下のものが用いられる。これらの低置換ヒドロキシプロピルセルロースとしては、「第十二改正日本薬局方」所載の「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」が挙げられ、具体的には信越化学工業社製「L−HPC:LH−21(R)」(ヒドロキシプロポキシ基を10.0〜13.0%含み、粒子の90%以上が粒径74μm以下で粒子の1%以下が粒径105μm以上であるもの)又は信越化学工業社製「L−HPC:LH−31(R)」(ヒドロキシプロポキシ基を10.0〜13.0%含み、粒子の50%以上が粒径44μm以下でかつ粒子の95%以上が粒径74μm以下であるもの)等が用いられる。
【0011】
この低置換ヒドロキシプロピルセルロースは、前記の特開平2−48525号公報に記載の高粘性ヒドロキシプロピルセルロースとは異なる物質である。すなわち、この高粘性ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロース中のブドウ糖1残基あたりヒドロキシプロポキシル基の平均置換モル数が2.0〜4.2であるもの、すなわち、乾燥したものを定量するとき、ヒドロキシプロポキシル基を53.4〜77.5%含むものであり、これに水を加えると粘稠性のある液となるのである。これに対し、本発明で使用する低置換ヒドロキシプロピルセルロースに水を加えると、膨潤するが溶けない(20±5℃で1gのを溶解するのに必要な水の量は10000ml以上必要)のである(第12改正日本薬局方解説書、廣川書店、1991年参照)。
【0012】
すなわち、本発明の製剤に用いられる低置換ヒドロキシプロピルセルロースは、特願平2−48525号公報に記載の「2%水溶液」とすることさえも出来ないものであることから、高粘性ヒドロキシプロピルセルロースとは明確に異なる物質であることがわかる。
【0013】
本発明の製剤に必要によって用いられるメチルセルロースは、セルロースのメチルエーテルであって、セルロース中のブドウ糖1残基当たりメトキシル基の置換モル数が1.7〜2.2であるもの、即ち乾燥したものを定量するときメトキシル基を26.0〜33.0%含むものである。これらのメチルセルロースとしては、「第十二改正日本薬局方」所載の「メチルセルロース」が挙げられ、具体的には信越化学工業社製「メトローズSM−100(R)」又は信越化学工業社製「メトローズSM−400(R)」等が用いられる。
【0014】
本発明の製剤において、有効成分のトレチノイントコフェリルの酸化を防ぐために、トコフェロール、アスコルビン酸などの抗酸化剤を配合することが好ましい。これらの抗酸化剤は抗酸化作用を発揮し得る任意の量で配合されるが、製剤の0.1〜20.O重量%の量であればよい。
【0015】
本発明の製剤の製造方法としては、トレチノイントコフェリル及び抗酸化剤を有機溶媒、例えばアセトン、エタノール等に溶解し、これにカルボキシビニルポリマー、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、及び必要に応じてメチルセルロースを加え十分に混合した後、有機溶媒を留去し、残留物を粉砕して粉末状、粒状又は顆粒状物を製造するか、またはカルボキシビニルポリマー、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、及び必要に応じてメチルセルロースを加え、常法に従い顆粒を作り、これに有機溶媒に溶解したトレチノイントコフェリル及び抗酸化剤を噴霧などによって吸着させて粉砕して、粉末状、粒状又は顆粒状物を製造し、これに製剤調製に通常許容される他の成分、例えば着色剤、矯味剤、矯臭剤、pH調製剤等が加えられ、さらに必要によっては経口投与剤に適した他の賦形剤を加えて、粉末剤、散剤、顆粒剤、錠剤、硬カプセル剤などの経口投与製剤とされる。
【0016】
本発明の消化性潰瘍治療剤は、トレチノイントコフェリルについて成人に1日当たり5〜500mg、好ましくは1日当たり20〜100mgの範囲の量で投与される。
次に本発明を実施例によってさらに詳細に説明することにする。
【0017】
【実施例】
トレチノイントコフェリル10.0gをアセトン30mlに溶解し、これにトコフェロール0.2g、カルボキシビニルポリマー5.0g及び低置換ヒドロキシプロピルセルロース75.0gを加えて全体を混合した後、アセトンを留去し、得られた残留物を粉砕して粉末とし、これを処方1とした。
【0018】
上記の成分を実施例1と同様に処理して粉末とし、これを処方2とした。
【0019】
トレチノイントコフェリル10.0gをアセトン30mlに溶解し、これにトコフェロール0.2g、カルボキシビニルポリマー5.0g、低置換ヒドロキシプロピルセルロース65.0g及びメチルセルロース10.0gを加えて全体を混合した後、アセトンを留去し、得られた残留物を粉砕して粉末とし、これを処方3とした。
【0020】
トレチノイントコフェリル50.0gをアセトン500mlに溶解し、これにトコフェロール0.5g及び軽質無水ケイ酸55.0gを加えて全体を混合した後、アセトンを留去し、得られた残留物を粉砕して粉末とした。更にこれに低置換ヒドロキシプロピルセルロース20.0g、トウモロコシデンプン36.5g及びポリビニルピロリドン7.0gを加え均一に混合した後、乾式造粒して粉砕する。次にトウモロコシデンプン21.5g及びステアリン酸マグネシウム6.0gを加え混合し、これを処方4とした。
【0021】
試験例(潰瘍治療効果)
ラットに酢酸を投与し胃潰瘍モデルを作成し、本発明の消化性潰瘍治療剤の潰瘍治療効果を検討した。
ラットの胃潰瘍の作製方法は、高木等の方法(Japan J. Pharmacol. 18, 9, 1968)に準じて行った。
すなわち、SD系ラットを麻酔下に開腹し、胃の漿膜下に15%酢酸0.05mlを注入した。
その後、開腹部を縫合し、縫合手術日を0日として、1日から13日まで、毎日1回、実施例1〜3及び比較例1で得られた処方1〜4をトレチノイントコフェリルとして50mg/kg/日の用量で経口投与し、これを実験群1〜4とした。また実験群1〜4との比較のために、薬剤無投与群(実験群6)及びアルサルミン(中外製薬社製、商品名:スクラルフェート)を陽性対照として2000mg/kg/日の用量で経口投与し、これを実験群5とした。
14日目に開腹し、各実験群の潰瘍面の面積(長径×短径)を測定し、薬剤無投与群(実験群6)の潰瘍面の平均面積を100としたときに下記式により潰瘍抑制率を求めた。なお、実験群1〜6のそれぞれは1群20匹のマウスを用いた。
【0022】
【数1】
【0023】
次に、アルサルミン投与群(実験群5)の潰瘍抑制率を100とした場合の、実験群1〜4の潰瘍抑制率を算出し、これを相対潰瘍抑制率とした。
この相対潰瘍抑制率の比較で各処方の潰瘍治療効果を評価した。各処方の治癒率を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
以上の結果より、実施例1〜3で得られた処方1〜3は比較例1で得られた処方4に比べ、相対的潰瘍抑制率が格段に向上し、本発明の消化性潰瘍治療剤が従来の処方に比べ、優れていることが分かる。
次に本発明の消化性潰瘍治療剤の製剤例を挙げる。
【0026】
製剤例1:カプセル剤
処方1の粉末 135.3g
カルボキシビニルポリマー 9.0g
(和光純薬社製:ハイビスワコー 103)
低置換ヒドロキシプロピルセルロース 16.0g
(信越化学工業社製:L−HPC LH−31)
ステアリン酸マグネシウム 1.5g
上記成分を混合し、混合物を一カプセル中にトレチノイントコフェリルが0.015g含まれるようにハードカプセルに封入した。
【0027】
製剤例2:錠剤
処方1の粉末 135.3g
ヒドロキシプロピルセルロース 11.5g
(日本曹達社製:HPC−SSL
乾燥したものを定量するとき、ヒドロキシプロポキシル基を
53.4〜77.5%含む。)
アセチルグリセリン脂肪酸エステル 2.0g
(イーストマン社製:マイバセット 9−45)
乳 糖 43.2g
結晶セルロース 43.2g
(旭化成社製:アビセル PH301)
カルボキシメチルセルロース 12.5g
(五徳薬品社製:NS−300)
ステアリン酸マグネシウム 2.5g
上記成分を混合し、混合物を打錠機で打錠して一錠中にトレチノイントコフェリルが0.015g含まれる錠剤を得た。
Claims (3)
- トレチノイントコフェリルを有機溶媒に溶解し、これにカルボキシビニルポリマー及び粒径の90%以上が80μm以下である低置換ヒドロキシプロピルセルロースを添加して混合した後、有機溶媒を留去し、残留物を粉砕して粉末状、粒状又は顆粒状物を製造することを特徴とする消化性潰瘍治療用製剤の製造方法。
- 低置換ヒドロキシプロピルセルロースが、セルロースを構成するブドウ糖の水酸基がヒドロキシプロポキシル基で置換されており、そのブドウ糖1残基あたりのヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.11〜0.39であるヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする請求項1記載の消化性潰瘍治療用製剤の製造方法。
- トレチノイントコフェリル溶液にカルボキシビニルポリマー及び低置換ヒドロキシプロピルセルロースを添加する工程において、さらにメチルセルロースを添加することを特徴とする請求項1又は2記載の消化性潰瘍治療用製剤の製造方法。
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