JP2772767B2 - 内燃機関における吸気ポート構造 - Google Patents

内燃機関における吸気ポート構造

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JP2772767B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ピストンが摺動自在に
嵌合するシリンダボアの軸線に直交する平面に対して傾
斜し且つ該軸線に対して偏心した軸線を有する吸気ポー
トを、吸気弁により開閉される吸気口を介して燃焼室に
接続した内燃機関における吸気ポート構造に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の低負荷運転時に燃焼室内にス
ワールを発生させて燃焼効率を向上させる技術が種々提
案されている。
【0003】例えば、実開昭55−158226号公報
には、吸気の流れをシリンダボアの接線方向に偏向させ
てスワールを発生させるべく、吸気ポートの内壁に突起
部を設けたものが記載されている。
【0004】また、特公昭61−32483号公報に
は、吸気の流れをシリンダボアの接線方向に偏向させて
スワールを発生させるべく、吸気ポートの内壁に半球状
凹部を設けたものが記載されている。
【0005】更に、実開昭59−179240号公報に
は、並設した2個の吸気ポート間を連通路で接続し、こ
の連通路によって吸気の流れをシリンダボアの接線方向
に偏向させてスワールを発生させるものが記載されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで上記従来のも
のは、何れも燃焼室に流入する吸気のシリンダボアの接
線方向の速度成分を増加させることを主眼としている
が、吸気のシリンダボアの軸線方向の速度成分が大きい
と、即ち吸気がピストンの頂面に衝突する方向に流入す
ると、前記接線方向の速度成分が減少して充分なスワー
ルが発生しない問題がある。
【0007】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たもので、燃焼室に流入する吸気のシリンダボアの軸線
方向の速度成分を減少させてスワールを効果的に発生さ
せることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載された発明は、ピストンが摺動自在
に嵌合するシリンダボアの軸線に直交する平面に対して
傾斜し且つ該軸線に対して偏心した軸線を有する吸気ポ
ートを、吸気弁により開閉される吸気口を介して燃焼室
に接続した内燃機関において、吸気口の近傍における吸
気ポートの下面に、燃焼室に流入する吸気の流れをシリ
ンダボアの軸線に直交する平面に沿うように偏向させる
偏向凹部を形成したことを特徴とする。
【0009】また請求項2に記載された発明は、請求項
1の構成に加えて、燃焼室の近傍において吸気ポートが
隔壁を介して複数のポートに分岐しており、少なくとも
1個のポートの下面に前記隔壁の上流端部から燃焼室に
向けて前記偏向凹部を形成したことを特徴とする。
【0010】また請求項3に記載された発明は、請求項
1又は2の構成に加えて、燃焼室の近傍において吸気ポ
ートが隔壁を介して第1ポート及び第2ポートに分岐し
ており、低負荷運転時には実質的に第2ポートだけから
吸気を燃焼室に供給し、高負荷運転時には第1ポート及
び第2ポートから吸気を燃焼室に供給するとともに、第
1ポートの吸気口の開口面積と前記隔壁の上流端での第
1ポートの有効開口面積とが略一致する位置まで前記隔
壁を第1ポート側に延出させたことを特徴とする。
【0011】
【作 用】請求項1の構成によれば、吸気ポートの軸線
がシリンダボアの軸線に対して偏心しているため、燃焼
室に流入する吸気にスワールが発生する。このとき、吸
気ポートの下面に形成した偏向凹部により燃焼室に流入
する吸気の流れがピストンの頂面に沿う方向に偏向する
ため、吸気弁との干渉による吸気の流速低下が最小限に
抑えられるとともに、吸気の流速の大部分がシリンダボ
アの接線方向に向けられ、その結果充分なスワールが発
生して燃焼効率が向上する。
【0012】請求項2の構成によれば、偏向凹部が隣接
する吸気ポート間を仕切る隔壁の上流端部から燃焼室に
向けて形成されるので、偏向凹部を燃焼室に向けて滑ら
かに形成することができるばかりか、偏向凹部が隣接す
るポートの吸気の流れに及ぼす影響をなくすことができ
る。
【0013】請求項3の構成によれば、第1ポートの吸
気口の開口面積と隔壁の上流端での第1ポートの有効開
口面積とが略一致する位置まで隔壁が第1ポート側に延
出しているので、高負荷運転時には隔壁が第1ポート側
の吸気抵抗となることが防止され、また低負荷運転時に
は第2ポート側への吸気の流れを促進してスワールを効
果的に発生させることができる。
【0014】
【実施例】以下、図面により本発明の実施例について説
明する。
【0015】図1〜図4は本発明の第1実施例を示すも
ので、図1は内燃機関のシリンダヘッド部の縦断面図、
図2は図1の2−2線断面図、図3は図1の要部拡大
図、図4は図2の4−4線断面図である。
【0016】図1及び図2に示すように、内燃機関Eは
シリンダブロック1と、このシリンダブロック1に結合
されたシリンダヘッド2とを備える。シリンダブロック
1にはピストン3が摺動自在に嵌合するシリンダボア4
が形成されるとともに、シリンダヘッド2には前記シリ
ンダボア4に連なる燃焼室5が形成される。
【0017】シリンダヘッド2に形成された吸気ポート
6は下流側において第1ポート6a及び第2ポート6b
に分岐しており、第1ポート6aの下流端は吸気弁座に
より形成された第1吸気口7aを介して燃焼室5に連通
し、また第2ポート6bの下流端は吸気弁座により形成
された第2吸気口7bを介して燃焼室5に連通する。一
方、シリンダヘッド2に形成された排気ポート8は上流
側において第1ポート8a及び第2ポート8bに分岐し
ており、第1ポート8aの上流端は排気弁座により形成
された第1排気口9aを介して燃焼室5に連通し、また
第2ポート8bの上流端は排気弁座により形成された第
2排気口9bを介して燃焼室5に連通する。
【0018】第1吸気弁10aはバルブガイド11に案
内される軸部12と、第1吸気口7aを開閉可能な傘部
13とを備えており、バルブスプリング14により閉弁
方向に付勢される。第2吸気弁10bはバルブガイド1
1に案内される軸部12と、第2吸気口7bを開閉可能
な傘部13とを備えており、バルブスプリング14によ
り閉弁方向に付勢される。
【0019】第1排気弁15aはバルブガイド16に案
内される軸部17と、第1排気口9aを開閉可能な傘部
18とを備えており、バルブスプリング19により閉弁
方向に付勢される。第2排気弁15bはバルブガイド1
6に案内される軸部17と、第2排気口9bを開閉可能
な傘部18とを備えており、バルブスプリング19によ
り閉弁方向に付勢される。
【0020】前記吸気弁10a,10b及び排気弁15
a,15bを開閉駆動する動弁機構20は、単一のカム
シャフト21に設けられた吸気カム22及び排気カム2
3と、吸気ロッカーアームシャフト24に揺動自在に支
持された吸気ロッカーアーム25と、排気ロッカーアー
ムシャフト26に揺動自在に支持された排気ロッカーア
ーム27とを備える。一対の排気弁15a,15bは同
一のタイミング及びリフトで作動するが、一対の吸気弁
10a,10bは内燃機関Eの中・高負荷運転時と低負
荷運転時とで作動が異なっている。即ち、中・高負荷運
転時には第1吸気弁10a及び第2吸気弁10bが共に
作動する一方、低負荷運転には第1吸気弁10aが実質
的に休止状態となり、第2吸気弁10bのみが作動す
る。かかる動弁機構20は従来周知であるため、その具
体的構造の説明は省略する。
【0021】吸気ポート6の下流側は隔壁28を介して
第1ポート6a及び第2ポート6bに仕切られており、
第2ポート6bの下面(即ち、シリンダボア4側の壁
面)には吸気の流れ方向に沿って偏向凹部29が形成さ
れる。図3から明らかなように、偏向凹部29の上流端
は前記隔壁28の基端部のa点から始まっており、その
下流端は第2吸気孔7bを形成する弁座の上縁部のb点
において終わっている。この偏向凹部29が形成された
領域は、図2に網目を施して示される。偏向凹部29の
深さはa点から曲率半径R1 で緩やかに増加するととも
に、b点に近い最深部のc点から前記曲率半径R1 より
も小さい曲率半径R2 で減少しており、全体として第2
ポート6bに急激な断面積の変化が発生しないようにな
っている。図4に示す横断面形状から明らかなように、
前記偏向凹部29は、第2ポート6bの壁面上の90°
の中心角を有する2点d,eにおける接線t1 ,t2
滑らかに接しており、これによっても第2ポート6bの
急激な断面積変化が回避される。
【0022】而して、内燃機関Eの低負荷運転時には第
1吸気弁10aが休止して閉弁状態になり、第2吸気弁
10bだけが開弁したとき、吸気ポート6を流れる吸気
は閉弁した第1吸気弁10aに阻止されて第1ポート6
aには流入せず、図2に矢印Aで示すように第2ポート
6bに流入する。第2ポート6bに流入した吸気は偏向
凹部29に沿って流れ、第2吸気口7bから燃焼室5に
流入する。このとき、第1ポート6aの側壁及び第2ポ
ート6bの側壁が何れも第2吸気口7bに向けて同方向
に湾曲しており、しかも第2ポート6bがシリンダボア
4の軸線L1 から偏心しているため、吸気はシリンダボ
ア4の接線方向に流入し、図2に破線矢印Bで示すよう
なスワールが発生する。更にまた、隔壁28の上流端は
第1ポート6a側に大きく湾曲して延出しているため、
低負荷運転時に第2ポート6b側に吸気が流れ易くなっ
てスワールが一層効果的に発生する。
【0023】さて、吸気が第2吸気口7bから燃焼室5
に流入する際に、図3に矢印Cで示すように偏向凹部2
9によって上向きに曲げられた吸気がピストン3の頂面
と略平行に燃焼室5に流入する。従って、吸気の流速が
小さい低負荷運転時であっても、燃焼室5に流入した吸
気はシリンダボア4の接線方向の速度成分を減らすこと
がなく、強力なスワールを形成することができる。これ
により、点火直前までスワールを維持して燃焼効率を向
上させることができる。
【0024】また、図3に示すように偏向凹部29によ
り吸気が上向きに曲げられることにより、第2吸気弁1
0bの傘部13上面に対する吸気の衝突が回避されるた
め、燃焼室5に流入する吸気の流速低下を軽減してスワ
ールを効果的に発生させることができる。そして、偏向
凹部29の下流端を弁座の直上流で終わらせているので
弁座に凹部を設ける必要がなくなり、弁座が大型化した
り弁座の取付けが複雑化することもない。また、図2に
示すように、偏向凹部29に沿って矢印A方向に流れる
吸気の中心は第2吸気弁10bの軸部12の外側(シリ
ンダボア4の軸線L1 に対して半径方向外側)を指向し
ており、これにより第2吸気弁10bの軸部12との衝
突による吸気の流速低下が軽減される。
【0025】また、内燃機関Eの中・高負荷運転時に
は、第1吸気弁10a及び第2吸気弁10bが共に開弁
するため、吸気ポート6を流れる吸気は第1ポート6a
及び第2ポート6bに分流し、それぞれ第2吸気口7a
及び第2吸気口7bから燃焼室5に流入する。このと
き、第1ポート6a及び第2ポート6bは隔壁28によ
り仕切られており、しかも隔壁28の基端部のa点から
偏向凹部29が始まっているため、この偏向凹部29が
第1ポート6aにおける吸気の流れに影響を及ぼすこと
がない。
【0026】図5は本発明の第2実施例を示すものであ
る。
【0027】この第2実施例では、第1ポート6a側の
吸気口7aの径Xと隔壁28の上流端における第1ポー
ト6aの幅Yとを一致させることにより、吸気口7aの
開口面積と隔壁28の上流端における第1ポート6aの
有効開口面積とを一致させている。これにより、中・高
負荷運転時に隔壁28が第1ポート6a側の吸気抵抗と
なることが防止される。
【0028】尚、この第2実施例が上記作用効果に加え
て第1実施例の持つ作用効果を併せ持つことは勿論であ
る。
【0029】以上、本発明の実施例を詳述したが、本発
明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行う
ことが可能である。
【0030】例えば、実施例では2個の吸気弁10a,
10bを有する内燃機関Eを例示したが、本発明は1個
又は3個以上の吸気弁を有する内燃機関に対しても適用
することができる。
【0031】
【発明の効果】以上のように、請求項1に記載された発
明によれば、吸気口の近傍における吸気ポートの下面
に、燃焼室に流入する吸気の流れをシリンダボアの軸線
に直交する平面に沿うように偏向させる偏向凹部を形成
したので、吸気弁との干渉による吸気の流速低下を最小
限に抑えることができるだけでなく、燃焼室に流入する
吸気のシリンダボア軸線方向の速度成分を減少させて
気の流速の大部分をシリンダボアの接線方向に向けるこ
とができる。これにより、吸気行程に続く圧縮行程の後
半、或いは点火直前まで初期のスワール強度を維持し、
燃焼効率を向上させることができる。
【0032】また請求項2に記載された発明によれば、
燃焼室の近傍において吸気ポートが隔壁を介して複数の
ポートに分岐しており、少なくとも1個のポートの下面
に隔壁の上流端部から燃焼室に向けて偏向凹部を形成し
たので、隔壁に沿って偏向凹部を滑らかに形成すること
ができるばかりか、偏向凹部が隣接するポートの吸気の
流れに及ぼす影響をなくすことができる。
【0033】また請求項3に記載された発明によれば、
燃焼室の近傍において吸気ポートが隔壁を介して第1ポ
ート及び第2ポートに分岐しており、低負荷運転時には
実質的に第2ポートだけから吸気を燃焼室に供給し、高
負荷運転時には第1ポート及び第2ポートから吸気を燃
焼室に供給するとともに、第1ポートの吸気口の開口面
積と前記隔壁の上流端での第1ポートの有効開口面積と
が略一致する位置まで前記隔壁を第1ポート側に延出さ
せたので、高負荷運転時には隔壁が第1ポート側の吸気
抵抗となることを防止することができ、低負荷運転時に
は第2ポート側への吸気の流れを促進してスワールを効
果的に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関のシリンダヘッド部の縦断面図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】図1の要部拡大図
【図4】図2の4−4線断面図
【図5】第2実施例に係る、前記図2に対応する図
【符号の説明】
3 ピストン 4 シリンダボア 5 燃焼室 6 吸気ポート 6a 第1ポート(ポート) 6b 第2ポート(ポート) 7a 第1吸気口(吸気口) 7b 第2吸気口(吸気口) 10a 第1吸気弁(吸気弁) 10b 第1吸気弁(吸気弁) 28 隔壁 29 偏向凹部 L1 軸線 L2 軸線
フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭58−122742(JP,U) 実開 昭58−90323(JP,U) 特公 昭61−32483(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F02B 31/00 F02B 31/02 F02B 31/08 F02B 29/00 F02F 1/42

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピストン(3)が摺動自在に嵌合するシ
    リンダボア(4)の軸線(L1 )に直交する平面に対し
    て傾斜し且つ該軸線(L1 )に対して偏心した軸線(L
    2 )を有する吸気ポート(6)を、吸気弁(10a,1
    0b)により開閉される吸気口(7a,7b)を介して
    燃焼室(5)に接続した内燃機関において、 吸気口(7b)の近傍における吸気ポート(6)の下面
    に、燃焼室(5)に流入する吸気の流れをシリンダボア
    (4)の軸線(L1 )に直交する平面に沿うように偏向
    させる偏向凹部(29)を形成したことを特徴とする、
    内燃機関における吸気ポート構造。
  2. 【請求項2】 燃焼室(5)の近傍において吸気ポート
    (6)が隔壁(28)を介して複数のポート(6a,6
    b)に分岐しており、少なくとも1個のポート(6b)
    下面に前記隔壁(28)の上流端部から燃焼室(5)
    に向けて前記偏向凹部(29)を形成したことを特徴と
    する、請求項1記載の内燃機関における吸気ポート構
    造。
  3. 【請求項3】 燃焼室(5)の近傍において吸気ポート
    (6)が隔壁(28)を介して第1ポート(6a)及び
    第2ポート(6b)に分岐しており、低負荷運転時には
    実質的に第2ポート(6b)だけから吸気を燃焼室
    (5)に供給し、高負荷運転時には第1ポート(6a)
    及び第2ポート(6b)から吸気を燃焼室(5)に供給
    するとともに、第1ポート(6a)の吸気口(7a)の
    開口面積と前記隔壁(28)の上流端での第1ポート
    (6a)の有効開口面積とが略一致する位置まで前記隔
    壁(28)を第1ポート(6a)側に延出させたことを
    特徴とする、請求項1又は2記載の内燃機関における吸
    気ポート構造。
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