JP2750077B2 - リチウム電池用電極スラリーの製造方法 - Google Patents

リチウム電池用電極スラリーの製造方法

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JP2750077B2 JP5307744A JP30774493A JP2750077B2 JP 2750077 B2 JP2750077 B2 JP 2750077B2 JP 5307744 A JP5307744 A JP 5307744A JP 30774493 A JP30774493 A JP 30774493A JP 2750077 B2 JP2750077 B2 JP 2750077B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、リチウム電池用電極
スラリーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】リチウム電池の電極としてスパイラル形
電極構造を有するものが広く採用されており、この電極
は電極スラリーを芯材としてのシート状集電体上に塗布
し、この後乾燥工程、圧延工程を経て製造される。この
うちの電極スラリーの製造は、従来、以下に示す手順で
行われていた。
【0003】先づ始めに、粉末状電極活物質と粉末状の
導電材を乾式混合し、この混合物に結着剤を加えるとと
もに所望の粘度にするために所定量の溶剤を湿式条件下
で加えて混練することでスラリーを作るようにしてい
た。そして、前記溶剤を前記混合物に加える際には、前
記所定量の溶剤の全量を一度に加えていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の方法で作製された電極スラリーは前記乾燥工程にお
いてこのスラリーに含まれた溶剤を蒸発させるためにど
うしても乾燥時間が長くなるため、乾燥に要するエネル
ギーコストが増大したり製造速度が低下するなどして生
産性が低下してしまうという問題があった。
【0005】この発明は以上の問題を解決するものであ
って、乾燥工程における乾燥時間を短縮して生産性を向
上することのできるリチウム電池用電極スラリーの製造
方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明では、電極活物質、導電材、結着剤及び溶剤
を混練してなるリチウム電池用電極スラリーの製造方法
において、前記電極活物質、前記導電材、前記結着剤及
び前記溶剤を混練する際に前記溶剤の量を調整してこの
混練物の粘度を300〜600000ポイズに調整し、
その後さらに溶剤を加えて前記混練物を所定の粘度にな
るまで混練するものである。
【0007】また、前記混練物の粘度を300〜600
000ポイズに調整する際には、加える溶剤量を前記混
練物に加える溶剤の全量の20〜70重量%にするとと
もに、その後さらに溶剤を加えて混練した後の前記所定
の粘度を20〜70ポイズにすることが望ましい。
【0008】
【作用】本発明の上記構成によれば、前記電極活物質、
前記導電材、前記結着剤及び前記溶剤を混練する際に前
記溶剤の量を調整してこの混練物の粘度を300〜60
0000ポイズに調整すると、前記電極活物質、前記導
電材、前記結着剤は部分的に凝集することなく前記溶剤
に均一に分散混合されるので、その後さらに所定の粘度
になるために加える溶剤は少量で済む。したがって、従
来の製造方法に比べて必要な溶剤は少量で済むため、得
られた電極スラリーを電極シートの芯材に塗布した場合
には乾燥工程でのスラリーの乾燥時間を短縮できる。
【0009】
【実施例】以下、スパイラル形リチウム電池を対象とし
た本発明の好適な一実施例を図面を参照して詳細に説明
する。
【0010】[正極スラリーの製造方法]正極活物質と
してのリチウム−金属複合酸化物としてのLiCoO2
と、導電剤としての黒鉛及びアセチレンブラックと、結
着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを混
合して作製した粉体に、溶剤としてのN−メチル−2−
ピロリジノンをこの粉体の20重量%加え60分間混練
して粘度1500ポイズとした後、さらに同溶剤を前記
粉体の40重量%加えて30分間撹はんして粘度28ポ
イズの正極スラリーとした。ここで、混合粉体に最初に
加える溶剤量は加える溶剤の全量の約33重量%とな
る。
【0011】[後加工]完成した正極スラリーを、コー
ティング装置等で厚さ20μmの金属薄板(銅、アルミ
ニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン等)に
塗布した後、連続的に乾燥炉を通過させて乾燥固化させ
た後、プレス用ロ―ラ等を通過させることによって均一
な厚み(0.2mm)の正極を形成する。その後定寸カ
ット、正極リード板溶接などの二次加工工程により正極
を完成する。
【0012】[負極スラリーの製造方法]Liイオンの
ドープ,脱ドープが可能である炭素質材料としてのピッ
チコークスを69重量%、導電剤としてのアセチレンブ
ラックを10重量%、フッ素系結着剤を21重量%混合
して作製した粉体に、溶剤としてのN−メチル−2−ピ
ロリジノンをこの粉体の70重量%加えて60分間混練
して粘度を1500ポイズとした後、さらに同溶剤を前
記粉体の70重量%加えて30分間撹はんして粘度28
ポイズの負極スラリーとした。ここで、混合粉体に最初
に加える溶剤量は加える溶剤の全量の約50重量%とな
る。
【0013】[後加工]完成した負極スラリーを、コー
ティング装置等で厚さ10μmの金属薄板(銅、アルミ
ニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン等)に
塗布した後、連続的に乾燥炉を通過させて乾燥固化させ
た後、プレス用ロ―ラ等を通過させることによって均一
な厚み(0.2mm)の負極を形成する。その後定寸カ
ット、負極リード板溶接などの二次加工工程により負極
を完成する。
【0014】次に、本実施例の作用について説明する。
図1は正極シートの時間に対する乾燥曲線(80℃DR
Y)、表1は正極シートの乾燥時間と正極スラリーの塗
布面のダマ(粉体の部分凝集)によるキズの発生数をそ
れぞれ本発明品と従来品とで比較して示している。図1
及び表1から明らかなように、スラリーの乾燥時間は従
来品の45分間に対し本発明品では30分間に短縮され
ている。また、塗布面のダマによるキズは、従来品では
100個中72個発生しているのに対し本発明品では全
く発生していないことが分かる。また、図2は溶剤量
(電極活物質、導電剤及び結着剤の混合粉体に対する重
量%)に対する正極スラリーの粘度変化を本発明品と従
来品とで比較して示したグラフであり、スラリーを28
00CP(28ポイズ)の粘度にするために、従来品で
は混合粉体の量に対して80重量%必要であるのに対
し、本発明品では60重量%で済む。なお、従来品は本
実施例と同じスラリー材料を用いており、混合粉体に対
して80重量%の溶剤の全量を一度に加えて90分間撹
はんして粘度を28ポイズとした。
【0015】
【表1】 負極スラリー及びシートに関しても、同様な結果を得て
おり、図3は負極シートの時間に対する乾燥曲線(60
℃DRY)、表2は負極シートの乾燥時間と負極スラリ
ーの塗布面のダマによるキズの発生数をそれぞれ本発明
品と従来品とで比較して示している。図3及び表2から
明らかなように、スラリーの乾燥時間は従来品の60分
間に対し本発明品では40分間に短縮されている。ま
た、塗布面のダマによるキズは、従来品では100個中
63個発生しているのに対し本発明品では全く発生して
いないことが分かる。また、図4は溶剤量(電極活物
質、導電剤及び結着剤の混合粉体に対する重量%)に対
する負極スラリーの粘度変化を本発明品と従来品とで比
較して示したグラフであり、スラリーを2800CP
(28ポイズ)の粘度にするために、従来品では混合粉
体の量に対して200重量%必要であるのに対し、本発
明品では140重量%で済む。なお、従来品は本実施例
と同じスラリー材料を用いており、混合粉体に対して2
00重量%の溶剤の全量を一度に加えて90分間撹はん
して粘度を28ポイズとした。
【0016】
【表2】 以上、説明した製造方法によれば、電極活物質、導電材
及び結着剤の混合粉体に対して少量の溶剤を加えて高粘
度で練ると、粉体同士のズリ効果により粉体は部分的に
凝集することなく均一に分散混合される。したがって、
電極スラリーとして必要な粘度にするためにさらに加え
る溶剤量を減らすことができるので、従来に比べて混合
粉体に加える溶剤の全量を低減できる。したがって、後
工程でのスラリーの乾燥時間を短縮することができる。
また、粉体はズリ効果により均一に分散混合されて部分
凝集を防止できるため、電極シートを作製するために金
属薄板に塗布した場合には、表面にキズのない均一な塗
布状態を実現できる。
【0017】なお、本実施例では、混合粉体に対する最
初の溶剤添加混練後のスラリー粘度を1500ポイズと
したが、この粘度を300ポイズ未満に設定すると、不
必要に、溶剤量を増大させなければならない他に混練時
間が長くなりすぎ、また、600000ポイズより大き
いと粉体の部分的な凝集が発生しても解消できず最終的
に均一な混合が困難になる。したがって、混合粉体に対
する最初の溶剤添加混練後のスラリー粘度は、300〜
600000ポイズが望ましい。
【0018】また、混合粉体に対する最終的なスラリー
粘度を28ポイズとしたが、得られたスラリーを電極シ
ートの芯材に塗布する場合に、20ポイズ未満ではスラ
リーとして軟らかすぎ、あるいは70ポイズより大きい
と固すぎて、いずれにしても芯材への塗布性が悪くな
る。したがって、最終的なスラリー粘度は20〜70ポ
イズが望ましい。
【0019】さらにまた、混合粉体に加える溶剤の全量
は、正極スラリー及び負極スラリーではそれぞれ混合粉
体に対して60重量%及び140重量%となるが、正極
スラリーではこれが40重量%未満の場合、溶剤量が少
なすぎて粉体の粘度が高くなりすぎるため粉体の部分的
な凝集が発生して粉体の均一な混合が困難になり、ま
た、70重量%より大きい場合は、スラリーとして軟ら
かすぎて芯材への塗布性が悪くなるとともに溶剤量が多
すぎて乾燥工程での乾燥時間が長くなる。したがって、
正極スラリー用混合粉体に加える溶剤の全量は加える混
合粉体の40〜70重量%が望ましい。同様に負極スラ
リー用混合粉体に加える溶剤の全量は加える混合粉体の
90〜180重量%が望ましい。
【0020】なお、混合粉体に最初に加える溶剤量を、
正極スラリーでは加える溶剤の全量の約33重量%、負
極スラリーでは加える溶剤の全量の約50重量%とした
が、20重量%未満では溶剤量が少なすぎて粉体の粘度
が高くなりすぎるため粉体の部分的な凝集が発生して粉
体の均一な混合が困難になり、また、70重量%より大
きい場合も溶剤量が多くなり粘度が低くなりすぎて粉体
同士のズリ効果が生じないため、やはり部分的な凝集が
発生しても解消できずに粉体の均一な混合が困難にな
る。したがって、混合粉体に加える最初の溶剤量は加え
る溶剤の全量の20〜70重量%が望ましい。
【0021】また、混合粉体への最初の溶剤添加時の混
練時間を60分間としたが、各種粉体及び溶剤の量や混
練方法を工夫することによりこの混練時間を短縮するこ
とも可能であるが、いずれにせよ10分間未満では粉体
の均一な混合が困難となる。したがって、混合粉体への
最初の溶剤添加時の混練時間は10分間以上が望まし
い。
【0022】なお、本発明における粘度は、回転式粘度
計を用い、ズリ速度D=50(S-1)で測定されたもの
である。
【0023】
【発明の効果】電極活物質、導電材、結着剤及び溶剤を
混練する際に前記溶剤の量を調整してこの混練物の粘度
を300〜600000ポイズに調整すると、前記電極
活物質、前記導電材、前記結着剤は部分的に凝集するこ
となく前記溶剤に均一に分散混合されるので、その後さ
らに所定の粘度になるために加える溶剤は、少量で済
む。したがって、従来の製造方法に比べて必要な溶剤は
少量で済むため、得られた電極スラリーを電極シートの
芯材に塗布した場合には乾燥工程でのスラリーの乾燥時
間を短縮でき、以て生産性を向上できる。また、混練物
は均一に分散混合されるので均一な粘度のスラリーを得
ることができる。したがって、得られた電極スラリーを
電極シートの芯材に塗布した場合には、均一な塗布状態
を実現でき、以て品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る正極シートと従来の正極シートと
のスラリー塗布後重量の経時変化を比較して示すグラフ
である。
【図2】本発明に係る溶剤量に対する正極スラリーの粘
度変化と従来の溶剤量に対する正極スラリーの粘度変化
を比較して示すグラフである。
【図3】本発明に係る負極シートと従来の負極シートと
のスラリー塗布後重量の経時変化を比較して示すグラフ
である。
【図4】本発明に係る溶剤量に対する負極スラリーの粘
度変化と従来の溶剤量に対する負極スラリーの粘度変化
を比較して示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01M 4/08 H01M 4/08 K

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極活物質、導電材、結着剤及び溶剤を
    混練してなるリチウム電池用電極スラリーの製造方法に
    おいて、該電極活物質、該導電材、該結着剤及び該溶剤
    を混練する際に該溶剤の量を調整してこの混練物の粘度
    を300〜600000ポイズに調整し、その後さらに
    溶剤を加えて該混練物を所定の粘度になるまで混練する
    ことを特徴とするリチウム電池用電極スラリーの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記混練物の粘度を300〜60000
    0ポイズに調整する際に加える溶剤量を前記混練物に加
    える溶剤の全量の20〜70重量%にするとともに、そ
    の後さらに溶剤を加えて混練した後の前記所定の粘度を
    20〜70ポイズにすることを特徴とする請求項1に記
    載のリチウム電池用電極スラリーの製造方法。
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