JP2013149396A - 二次電池用正極スラリーとその製造方法、二次電池用正極の製造方法、およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
リチウムイオン二次電池用電極は、通常、粉体状の電極活物質材料(活物質)に結着剤(バインダ)を適当量添加した混合物に溶媒を混ぜて電極スラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥後、圧着させて電極層(正極層または負極層)を形成することで得られる。
また、特許文献2には、アミド構造を有する繰り返し構造単位を含む重合体として、ポリN−ビニルアセトアミドを含む非水電池用正極ペーストが開示されている。
特許文献2にはバインダと活物質の混合方法に関する記載はなく、バインダとしてポリN−ビニルアセトアミドを使用した場合に最適なスラリーが調製されているとは言いがたい。
[1]下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体(A)、正極活物質、導電助剤、および水を含む二次電池用正極スラリーを製造する方法であって、前記重合体(A)を水に溶解し、水溶液(A’)を調製する溶解工程と、前記水溶液(A’)、前記正極活物質、および前記導電助剤を含むスラリーを混練中の温度上昇が10℃以下になるように混練するスラリー混練工程とを有する、二次電池用正極スラリーの製造方法。
[3][1]または[2]に記載の二次電池用正極スラリーの製造方法により得られた、二次電池用正極スラリー。
[4]集電体と、該集電体上に設けられた正極層とを備えた二次電池用正極を製造する方法であって、[1]または[2]に記載の二次電池用正極スラリーの製造方法により二次電池用正極スラリーを調製する工程と、該二次電池用正極スラリーを集電体上に塗布、乾燥して正極層を形成する工程とを有する、二次電池用正極の製造方法。
[5][4]に記載の二次電池用正極の製造方法により得られた二次電池用正極を備えた、リチウムイオン二次電池。
[二次電池用正極スラリー]
本発明の二次電池用正極スラリー(以下、「正極スラリー」という。)は、以下に示す重合体(A)、正極活物質、導電助剤、および水を含む。
重合体(A)は、下記一般式(1)で表される構造単位を含む重合体であり、後述する二次電池用正極のバインダとして機能する。
アルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基 、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などが挙げられる。
得られる重合体(A)の溶解性、粘度特性、酸化安定性の観点から、R1およびR2としては、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基が好ましい。
任意単位の由来源となる単量体(以下、「任意単量体」という。)としては、単量体(a)と共重合可能であれば特に限定されないが、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノアクリレート、ジシアノビニリデン、フマロニトリルエチル等のシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有単量体及びその塩;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;マレイミド、フェニルマレイミド等のマレイミド類;(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル単量体及びその塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩、ジフェニル((メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、3−クロロ−2−アシッド・ホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、KAYAMER PM−21(商品名、日本化薬株式会社製)等のリン酸基を含有ビニル単量体及びその塩;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩若しくは四級アンモニウム塩;(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンが挙げられる。
これら任意単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフランや水等の溶媒を溶離液とし、ポリスチレン、多糖類高分子(プルラン)、ポリエチレンオキシド等を標準物質とした換算分子量として求めることができる。また、重合体(A)の水溶液粘度から、粘度換算分子量を測定することができる。
重合方法は特に限定されず、原料として用いる単量体や生成する重合体の溶解性などに応じて、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、光重合などの方法を採用すればよい。
水溶性アゾ化合物としては、例えば4、4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)2,2’−アゾビスプロパン)二塩酸塩、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)2,2’−アゾビスプロパン)二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2、2’−アゾビス(2−(N−(2−カルボキシエチル)アミジノ)プロパン)、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]等を挙げることができる。
有機過酸化物としては、水溶性の過酸化物が好ましく、例えばt−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
水溶性無機過酸化物としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
なお、過硫酸塩等の酸化剤は、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の還元剤、硫酸鉄等の重合促進剤と組み合わせて、レドックス系開始剤として用いることもできる。
連鎖移動剤としては、例えばメルカプタン化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
これら重合用溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いる正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵および放出可能な活物質であれば特に限定されず、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
遷移金属硫化物としては、TiS2、TiS3、非晶質MoS2、FeS等が挙げられる。
リチウム含有複合金属酸化物としては、層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO2)、Co−Ni−Mnのリチウム複合酸化物、Ni−Mn−Alのリチウム複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム複合酸化物等が挙げられる。スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはマンガン酸リチウム(LiMn2O4)やMnの一部を他の遷移金属で置換したLi[Mn3/2M1/2]O4(ここでMは、Cr、Fe、Co、Ni、Cu等)等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはLiXMPO4(式中、Mは、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B及びMoから選ばれる少なくとも1種であり、0≦X≦2である。)で表されるオリビン型燐酸リチウム化合物が挙げられる。
なお、電気伝導性に乏しい鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
これら正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混練物であってもよい。
本発明に用いる導電助剤は、例えば黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、アセチレンブラック、導電性高分子などが挙げられる。
これら導電助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いる水は、イオン交換樹脂で処理された水(イオン交換水)、及び逆浸透膜浄水システムにより処理された水(超純水)などが挙げられる。
本発明の正極スラリーにおける、重合体(A)と正極活物質の質量比(重合体(A)/正極活物質)は、固形分換算で0.1/100〜20/100が好ましく、0.5/100〜10/100がより好ましい。重合体(A)と正極活物質の質量比が上記範囲内であれば、二次電池用正極スラリーの取り扱い性、集電体への塗工性が良好となる。加えて、正極スラリーより形成される正極層内部の均一性が高まる。
本発明の正極スラリーは、必須構成成分として、重合体(A)、正極活物質、導電助剤、および水を含むが、必要に応じて、重合体(A)以外のバインダ樹脂(他のバインダ樹脂)や、粘度調整剤、結着性向上剤、分散剤、水以外の他の溶媒等の公知の添加剤を含有していてもよい。
本発明の正極スラリーは、下記の工程1、2を有する方法で製造する。また、工程2の後に下記の工程3を有してもよい。
溶解工程では、重合体(A)を水に溶解し、水溶液(A’)を調製する。水溶液(A’)の調製は、公知の混練攪拌機を用いて行うことができる。例えば、羽式攪拌機、各種ミキサー、自公転攪拌機、プラネタリーミキサー等を用いることができる。
溶解工程における溶液温度は特に限定されないが、15〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。溶液温度が上記範囲内であれば、重合体(A)が溶解しやすく、短時間で均一に溶解させることが可能である。溶解工程において30℃以上に加温して溶解させた場合、次のスラリー混練工程に使用する前に30℃以下になるように冷却してから使用するのが好ましい。
溶解工程における溶液濃度は、攪拌可能な粘度になる範囲で、正極スラリー中の重合体(A)の割合を考慮して調整されれば特に限定されないが、例えば、重合体(A)の固形分濃度が、0.1〜5質量%となる濃度であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4質量%である。
なお、正極スラリーに他の成分(ただし、他の溶媒を除く。)を配合する場合は、水溶液(A’)に配合しておいてもよいし、次のスラリー混練工程で水溶液(A’)と混合してもよい。
スラリー混練工程は、前記水溶液(A’)、正極活物質、および導電助剤を含むスラリーを混練する工程であり、混練中のスラリーの温度上昇が10℃以下になるように、混練物の粘度や固形分濃度を調整する。
スラリーの混練は、公知の混練撹拌機を用いて行うことができる。例えば自公転式撹拌機、プラネタリーミキサー等を用いることができる。
正極活物質、導電助剤等の粉末原料は、前記水溶液(A’)を加える前に混練して混合しておくことが好ましい。
なお、本発明においてスラリー混練工程により得られたスラリーを「混練物」といい、スラリー混練工程中のスラリーを「被混練物」という。
スラリー混練工程における混練固形分濃度は、60〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは65〜75質量%であり、スラリーの温度上昇が10℃以下となる固形分濃度に設定することが好ましい。
また、連続して混練する時間が長くなると発熱が大きくなるので、スラリーの温度上昇が10℃以下となる固形分濃度において、短時間の混練を間欠して行うのも有効である。
まず、外部からの加熱および冷却のいずれもない状態で、スラリー混練工程と同じ条件下で、粉末原料(Y℃)に少量の所定量の水溶液(A’)を加えて60秒間混練した直後に、被混練物の温度(Z1℃)を測定する。Z1−Y<10℃であれば、さらに少量の所定量の溶媒を添加することによって固形分濃度を低下させ、60秒間混練した直後に、被混練物の温度(Z2℃)を測定する。Z2−Y≧10℃となるまで、この操作を繰り返し、Z2−Y≧10℃となったときの、被混練物の固形分濃度を確認する。
本発明では、前記固形分濃度よりも更に水溶液(A’)を少量添加して、固形分濃度を1質量%程度低下させたものを混練固形分濃度とする。混練固形分濃度に調製した後、Z2−Y<10℃となるように、混練時間を設定し、間欠で混練を行う。
溶媒を少量ずつ添加する際の、1回の添加量は特に限定されないが、例えば固形分濃度が1質量%程度低下する量の水溶液(A’)を添加していくのが好ましい。
また、同条件で正極スラリーの製造を繰り返す場合、2回以降は予備工程を行わずに、予備工程で決定した混練固形分濃度に設定してスラリー混練工程を行うことができる。
スラリー混練工程における水溶液(A’)の添加は、混練固形分濃度となる水溶液(A’)の添加量を一括的に添加する方法でもよく、少量ずつ複数回に分けて添加および混練を繰り返す方法でもよい。
スラリー混練工程において、混練固形分濃度での混練時間は、スラリーの温度上昇が10℃以下となる範囲で設定され、30秒以上が好ましい。また、この範囲内で、混練を繰り返して、合計の混練時間が長くすることにより、ダマや凝集物のない状態まで混練することが好ましい。
スラリー混練工程で得られた混練物の固形分濃度が高すぎて良好な塗工性が得られない場合は、該混練物に、さらに溶媒を加えて混練する希釈工程を行って正極スラリーを得る。スラリー混練工程で得られた混練物が塗工に適している場合には、該希釈工程は行わなくてもよい。この場合、スラリー混練工程で得られた混練物が正極スラリーであり、該混練物の固形分濃度が最終固形分濃度となる。
希釈工程において、溶媒を一括的に添加してもよく、少量ずつ複数回に分けて添加および混練を繰り返してもよい。希釈工程における混練時間は、均一な希釈物が得られるように適宜設定することができる。
本発明の正極スラリーは、リチウムイオン二次電池の正極用のスラリーとして好適である。
本発明により得られる二次電池用正極(以下、単に「正極」という。)は、集電体と、該集電体上に設けられた正極層とを備える。
正極層は、本発明の正極スラリーに含まれる、重合体(A)、正極活物質、および導電助剤を少なくとも含有する層である。
集電体の形状としては、薄膜状、網状、繊維状が挙げられる。この中では、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、5〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましい。
まず、上述した本発明の正極スラリーの製造方法により正極スラリーを調製し(スラリー調製工程)、得られた正極スラリーを集電体上に塗布し(塗布工程)、乾燥して溶媒を除去し(溶媒除去工程)、重合体(A)で正極活物質等を保持した層(正極層)が集電体上に形成された正極を得る。
塗布方法は、正極層の厚みが0.1〜500μmとなるように正極スラリーを集電体に塗布できる方法であれば特に限定されない。例えばバーコート法、ドクターブレード法、ナイフ法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、カーテン法、浸漬法、ハケ塗り法などが挙げられる。
除去方法としては、溶媒を除去できれば一般に採用されている方法を利用することができる。特に、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線および低温風を単独あるいは組み合わせて用いることが好ましい。
除去条件は、溶媒が十分に除去可能で、かつ重合体(A)が分解しない条件であれば特に限定されないが、40〜120℃、好ましくは50〜100℃で、1分間〜10時間、加熱処理することが好ましい。この条件であれば、重合体(A)分解することなく、正極活物質と集電体、あるいは活物質間の高い密着性を付与することができる。また、集電体が腐食しにくい。
また、2段階に分けて乾燥することも可能であり、その場合2段回目の乾燥においては、1段階目よりも高温で乾燥することが好ましい。前記条件にて乾燥させた後、前記温度範囲において、真空乾燥を行ってもよい。
さらに、必要に応じて、得られた正極を任意の寸法に切断してもよい(スリット加工工程)。
本発明の正極は、リチウムイオン二次電池用の電極として好適である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極を備える。
リチウムイオン二次電池としては、例えば、負極と本発明の正極とを、透過性のセパレータ(例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン製の多孔性フィルム)を間に介して配置し、これに非水系の電解液を含浸させた非水系二次電池;集電体の両面に負極層が形成された負極/セパレータ/集電体の両面に正極層が形成された本発明の正極/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に巻回した巻回体が、電解液と共に有底の金属ケーシングに収容された筒状の非水系二次電池などが挙げられる。
負極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵および放出が可能な元素を含有する負極活物質や、炭素材料等、公知の負極活物質が使用できる。
リチウムイオンの吸蔵および放出が可能な元素としては、リチウムと合金化しうる元素が挙げられ、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、インジウム、および亜鉛が挙げられる。このような元素を含む活物質を負極活物質として用いることで、電池の高容量化が可能となる。
前記リチウムイオンの吸蔵および放出が可能な元素を含有する負極活物質の具体的な例としては、例えば、金属化合物、金属酸化物、リチウム金属化合物、リチウム金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物を含む)などが挙げられる。金属化合物の形態の負極活物質としては、LiAl、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn等が挙げられる。また、金属酸化物の形態の負極活物質としては、SnO、SnO2、GeO、GeO2、In2O、In2O3、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、SiO、ZnO等が挙げられる。
炭素材料としては、例えば黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン等の炭素材料などが挙げられる。
これらの負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
集電体の形状としては、薄膜状、網状、繊維状が挙げられる。この中では、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、5〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましい。
リチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li[(CO2)2]2Bなどが挙げられる。
一方、非水系有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、NMP等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;スルホラン等のスルホン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などが挙げられる。
電解液は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、筒状の場合は以下のようにして得られる。
まず、集電体の両面に負極層が形成された負極/セパレータ/集電体の両面に正極層が形成された正極/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に巻回して巻回体とする。得られた巻回体を有底の金属ケーシング(電池缶)に収容し、負極を負極端子に、正極を正極端子に接続する。ついで、金属ケーシングに電解液を含浸させた後、金属ケーシングを封止することにより筒状のリチウムイオン二次電池とする。
<製造例1:N−ビニルホルムアミド重合体(A1)>
脱イオン水70質量部に対し、N−ビニルホルムアミド30質量部を混練した単量体水溶液を、リン酸によりpH=6.3となるよう調節し、単量体調節液を得た。この単量体調節液を5℃まで冷却した後、温度計を取り付けた断熱反応容器に入れ、15分間窒素曝気を行った。その後、4、4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)(和光純薬工業株式会社製、「V−501」)12質量%水溶液を0.4質量部添加し、次いで、t−ブチルハイドロパーオキサイド10質量%水溶液および亜硫酸水素ナトリウム10質量%水溶液をそれぞれ0.1質量部添加して重合を行った。内温がピークを超えた後さらに1時間熟成し、ゲルを取り出しミートチョッパーで粉砕した後、60℃で10時間乾燥し、得られた固体を粉砕し、N−ビニルホルムアミド重合体(A1)を得た。
シクロヘキサン95質量部、脱イオン水5質量部の溶液に対して、乳化剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル1.5質量部を混練した水溶液を55℃に加温し、1時間窒素曝気を行った。その後、重合開始剤として4、4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)(和光純薬工業株式会社製、「V−501」)の12質量%水溶液0.8質量部を添加した。ついで、N−ビニルアセトアミド75質量%水溶液30質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃で2時間保温した後に冷却し、重合体懸濁液を得た。得られた重合体懸濁液をろ過し、得られた固体を真空下60℃で乾燥させ、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)を得た。
<正極スラリーの調製>
ガラス製のサンプル瓶に重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)を4質量部と脱イオン水96質量部とを計量し、40℃に加温して、羽根型ミキサーで攪拌することにより、重量体(A1)の4質量%水溶液を調製した。この本溶液を25℃まで冷却し、水溶液(A1’)とした。
軟膏容器に、コバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、「セルシードC−5H」)100質量部と、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)5質量部を加え、自公転攪拌機(Thinky社製、「泡とり練太郎」)を用い、自転1000rpm、公転2000rpmの条件にて60秒混練し、原料粉体を得た。該原料粉体に、水溶液(A1’)を2質量部加え、ヘラで混合した後、非接触型温度計で、混練前温度を計測したところ、25℃であった。
その後、水溶液(A1’)を2部ずつ加えながら、自公転攪拌機で60秒混練し、混練後のスラリー温度を非接触型温度計で計測した。固形分濃度70質量%で、スラリー温度が25℃から38℃まで上昇したため、更に水溶液(A1’)を2部添加し、混練固形分濃度を69質量%とした後、30秒の攪拌でスラリー温度が25℃から30℃の上昇となった。30秒での攪拌を5回繰り返し、その後、固形分濃度が68質量%となるように水溶液(A1’)を加えて攪拌したのち、更に水で希釈し、固形分濃度が65質量%の正極スラリーを得た。正極スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極スラリーを集電体(アルミニウム箔、19cm×25cm、厚み20μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、循環式熱風乾燥機中60℃で30分間乾燥させ、さらに真空乾燥機にて80℃で12時間減圧乾燥させて、膜厚80μmの正極層が集電体(アルミニウム箔)上に形成された正極を得た。
(電池容量の維持性の評価)
得られた正極、および市販の金属リチウム負極を、セパレータ(セルガード♯2400)を介して対向させた。電解液として1Mの六フッ化リン酸リチウム(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(体積比))を用いて、2032型コイン電池を作製した。
得られた2032型コイン電池について、60℃で充放電レートを0.5Cとし、定電流法(電流密度:0.6mA/g−活物質)で4.2Vに充電し、3Vまで放電する充放電を50回繰り返し、1サイクル目の電池容量、および50サイクル目の電池容量を測定した。1サイクル目の電池容量を初期容量とした。また、1サイクル目の電池容量に対する50サイクル目の電池容量の割合を百分率で表し、これを容量維持率とした。結果を表2に示す。
実施例1において、混練固形分濃度となる水溶液(A1’)の添加量を、一括的に投入する方法で正極スラリーを調製した。
具体的には、コバルト酸リチウムの100質量部とアセチレンブラックの5質量部を混練した原料粉体に、水溶液(A1’)を固形分濃度が69質量%になるように軟膏容器に計量した。自公転式攪拌機で1分間の攪拌を10回繰り返して、充分に混練することにより混練物を得、続いて固形分濃度が68質量%となるように更に水溶液(A1’)を添加し、攪拌した後、水を加えて混練することにより希釈し、最終固形分濃度が65%の正極スラリーを得た。正極スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極スラリーを用いて、電池容量の維持性の評価を行った。結果を表2に示す。
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の代わりに、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)を用いた以外は実施例1と同様にして重合体(A2)の水溶液(A2’)を調製し、該水溶液(A2’)を用いて正極スラリーを調製した。なお、固形分濃度71質量%で25℃から36℃にスラリー温度が上昇したため、混練固形分濃度は70質量%とした。また、最終固形分濃度は66質量%であった。正極スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極スラリーを用いて、電池容量の維持性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3において、混練固形分濃度となる水溶液(A2’)の添加量を、一括的に投入する方法で正極スラリーを製造した。
具体的には、コバルト酸リチウムの100質量部とアセチレンブラックの5質量部を混練した原料粉体に、水溶液(A2’)を固形分濃度が70質量%になるように軟膏容器に計量した。自公転式攪拌機で1分間の攪拌を10回繰り返して、充分に混練することにより混練物を得、続いて固形分濃度が68質量%となるように更に水溶液(A2’)を添加し、攪拌した後、水を加えて混練することにより希釈し、最終固形分濃度が66質量%の正極スラリーを得た。正極スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極スラリーを用いて、電池容量の維持性の評価を行った。結果を表2に示す。
ガラス製のサンプル瓶に重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の1.8質量部と、他のバインダとしてカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬社製、「BSH12」)の0.2質量部と、脱イオン水98質量部とを計量し、40℃に加温して、羽根型ミキサーで攪拌することにより、重合体(A1)とカルボキシメチルセルロースの2質量%混合水溶液を調製した。本溶液を25℃まで冷却し、これを水溶液(A3’)とした。
得られた水溶液(A3’)を用いた以外は、実施例1と同様にして正極スラリーを得た。なお、固形分濃度65質量%で25℃から36℃にスラリー温度が上昇したため、混練固形分濃度は64質量%とした。また、最終固形分濃度は60質量%であった。正極スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極スラリーを用いて、電池容量の維持性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1において、スラリー温度が25℃から38℃まで上昇する固形分濃度70質量%で、10分間攪拌した以外は、実施例1と同様にして正極スラリーを得た。正極スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極スラリーを用いて、電池容量の維持性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3において、スラリー温度が25℃から36℃まで上昇する固形分濃度71質量%で、10分間攪拌した以外は、実施例3と同様にして正極スラリーを得た。正極スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極スラリーを用いて、電池容量の維持性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例5において、スラリー温度が25℃から36℃まで上昇する固形分濃度65質量%で、10分間攪拌した以外は、実施例5と同様にして正極スラリーを得た。正極スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極スラリーを用いて、電池容量の維持性の評価を行った。結果を表2に示す。
・CMC:カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬社製、「BSH12」)。
・LCO:コバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、「セルシードC−5H」)。
・AB:アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)。
一方、温度上昇時の固形分濃度で調製し、調製時の温度上昇が10℃であった比較例1〜3は、実施例1〜5で得られた正極に比べてそれぞれ容量維持率が低く、電池容量の維持性に劣っていた。
Claims (5)
- 前記スラリー混練工程の後、さらに溶媒を加えて混練する希釈工程を有する、請求項1に記載の二次電池用正極スラリーの製造方法。
- 請求項1または2に記載の二次電池用正極スラリーの製造方法により得られた、二次電池用正極スラリー。
- 集電体と、該集電体上に設けられた正極層とを備えた二次電池用正極を製造する方法であって、
請求項1または2に記載の二次電池用正極スラリーの製造方法により二次電池用正極スラリーを調製する工程と、該二次電池用正極スラリーを集電体上に塗布、乾燥して正極層を形成する工程とを有する、二次電池用正極の製造方法。 - 請求項4に記載の二次電池用正極の製造方法により得られた二次電池用正極を備えた、リチウムイオン二次電池。
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