JP2744969B2 - 含フッ素ポリイミド及びその製造方法 - Google Patents

含フッ素ポリイミド及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、熱膨張係数が小さく、かつ誘導率、屈折率
の小さい含フッ素ポリイミド及びその製造方法に関す
る。
「従来の技術」 ポリイミドは、種々の有機ポリマーの中でも耐熱性に
優れているため、宇宙、航空分野から電子通信分野まで
幅広く使われ始めている。特に最近では、単に耐熱性に
優れているだけでなく用途に応じて種々の性能を合わせ
持つことが期待されている。例えば、プリント板やLSI
用の層間絶縁膜などとしては、熱膨張率係数、誘導率が
小さいことが期待され、光通信関係、特に光導波路のク
ラッド材には屈折率が小さいことが期待されている。し
かしながら、これらの性能を充分に満足するポリイミド
は現在のところ得られていない。
これらのポリイミドを得るためには、ポリイミドの主
鎖をできる限り剛直構造にして低熱膨張性を発現させ、
さらにモノマーであるテトラカルボン酸二無水物または
ジアミンに低誘電率性、低屈折率性を発現する置換基を
導入する方法が考えられる。例えばエポキシ樹脂におい
ては、ジャーナル オブ ポリマー サイエンス(Jour
nal of Polymer Science)のパート(Part)C、ポリマ
ー レターズ(Polymer Letters)、第24巻、第249頁
(1986)に示されているようにエポキシ樹脂の硬化剤に
多フッ素置換基を導入することにより、これまでのエポ
キシ樹脂の中で最も低い誘電率を達成している。また、
特開昭61−44969号公報で示されているように、屈折率
においても多フッ素置換基を導入することにより、これ
までのエポキシ樹脂の中で最も低い屈折率を達成してい
る。このようにポリイミド骨格を剛直構造にし、フッ素
置換基を導入することにより、熱膨張係数、誘電率、屈
折率の低減が期待できる。
「発明が解決しようとする課題」 しかしながら、これまでに剛直構造のポリイミドにフ
ッ素置換基を導入して、低熱膨張係数、低誘導率、低屈
折率を達成したという報告はない。
本発明の目的は、従来のポリイミドでは有していなか
った低熱膨張係数、低誘導率、低屈折率などの優れた特
性を有するポリイミド及びその製造方法を提供すること
にある。
「課題を解決するための手段」 本発明における請求項1に記載した発明では、下記の
化学構造式[III]で表される含フッ素ポリイミドを提
供することを、また請求項2に記載した発明では、下記
一般式[I]で表される酸無水物と、下記一般式[II]
で表されるジアミンとを反応させて含フッ素ポリイミド
を得ることを上記課題の解決手段とした。
(式中R1は以下の一般式からなる群よりた選ばれた四価
の有機基であり、 R2は以下の化学構造式からなる群より選ばれた二価の基
を表す 式[I]、[II]は次のと通りである。
なお、前記の式[I]、[II]中のR1、R2はそれぞれ前
記式[III]中のR1、R2と同じである。以下、本発明を
詳しく説明する。
本発明者らは、フッ素化ポリイミドの分子構造につい
て種々検討し、ピロメリット酸無水物の側鎖に直鎖状の
フルオロアルキル基を導入した含フッ素ピロメリット酸
無水物を用い、さらに剛直構造ジアミンにフルオロアル
キル基を導入することにより、導電率、屈折率、熱膨張
係数とも従来のポリイミドに比較して小さいポリイミド
が得られることを明らかにした。
本発明における請求項1に記載の含フッ素ポリイミド
において、式[III]中のR1におけるmの数は1または
2とされ、nの数は1〜10とされる。すなわち、mが0
であるとフッ素基の電子吸引性が大きくなって[I]式
で表される酸無水物が不安定となり、3以上ではフッ素
基の効果が低減するからであり、また、nが11以上であ
ると、撥水効果により基板への濡れ性が低下するからで
ある。
本発明における請求項2に記載の製造方法において
は、まず、上記[I]式で表される酸無水物と上記[I
I]式で表されるジアミンとの反応からポリアミド酸を
製造する。このときの配合割合としては酸無水物1モル
に対しジアミン1モルが最もよいが、0.9〜1.1モルの範
囲でもよい。反応条件は通常のポリアミド酸の重合条件
と同じでよく、一般的にはN−メチル−2−ピロリド
ン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルム
アミドなどの有機溶剤中で反応させる。
次に、得られたポリアミド酸のイミド化によるポリイ
ミドの剛性であるが、これも通常のポリイミドの合成法
が使用できる。
「実施例」 以下、実施例により本発明の含フッ素ポリイミド及び
その製造方法について具体的に説明するが、本発明はこ
れらの実施例に限定されるものではない。
なお、下記実施例において、誘電率は1kHzでの値であ
り、屈折率はナトリウムD線の波長(5896Å)での値で
ある。また、熱膨張係数は、下記の条件で熱処理したフ
ィルムを熱機械試験機に取り付けて5℃/分の条件で窒
素雰囲気中室温からガラス転位温度の間の昇温を繰り返
し行い、フィルムの吸湿水分、イミド化反応等による残
留歪みの影響を十分取り除き、再現性のある値を求め
た。
(実施例1) 三角フラスコにジ(2,2,2−トリフルオロエチル)ピ
ロメリット酸無水物12.73g、2,2′−ビス(トリフルオ
ロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル7.63g、N−メ
チル−2−ピロリドン(NMP)115gを加えた。この混合
物を窒素雰囲気下、室温で3日間撹拌し、ポリアミド酸
のNMP溶液(粘度:65ポアズ)を得た。このものをアルミ
板上に流し、ドクターブレードで平坦にした後、100℃
で1時間、200℃で1時間、350℃で1時間、さらに400
℃で加熱キュアした。このアルミ板を10%HCl水溶液に
浸し、アルミ板を溶解して強靭なポリイミドフィルムを
得た。
得られたポリイミドフィルムの物性を調べたところ、
誘電率が2.6、屈折率が1.524、熱膨張係数が9×10
-6(℃-1)であった。
(実施例2) 実施例1と同様の方法を用い、ジ(2,2,2−トリフル
オロエチル)ピロメリット酸無水物とパラフェニルジア
ミンを等モルずつ用いることによって強靭なポリイミド
フィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの物性を調べたところ、
誘電率が2.9、屈折率が1.594、熱膨張係数が6×10
-6(℃-1)であった。
(実施例3) 実施例1と同様の方法を用い、2,2,2−トリフルオロ
エチルピロメリット酸無水物と2,2′−ビス(トリフル
オロメチル)−4−4′−ジアミノビフェニルを等モル
ずつ用いることによって強靭なポリイミドフィルムを得
た。
得られたポリイミドフィルムの物性を調べたところ、
誘電率が2.7、屈折率が1.548、熱膨張係数が6×10
-6(℃-1)であった。
(実施例4) 実施例1と同様の方法を用い、ジ(1H,1H−パーフル
オロブチル)ピロメリット酸無水物と3,3′−ビス(ト
リフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニルを等
モルずつ用いることによって強靭なポリイミドフィルム
を得た。
得られたポリイミドフィルムの物性を調べたところ、
誘電率が2.5、屈折率が1.472、熱膨張係数が1.7×10-5
(℃-1)であった。
(実施例5) 実施例1と同様の方法を用い、ジ(1H,1H,2H,2H−パ
ーフルオロオクチル)ピロメリット酸無水物とo−トリ
ジンを等モルずつ用いることによって強靭なポリイミド
フィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの物性を調べたところ、
誘電率が2.5、屈折率が1.463、熱膨張係数が2.3×10-5
(℃-1)であった。
(実施例6) 実施例1と同様の方法を用い、1H,1H,2H,2H−パーフ
ルオロドデシルピロメリット酸無水物と4,4″−ジアミ
ノターフェニルを等モルずつ用いることによって強靭な
ポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの物性を調べたところ、
誘電率が2.9、屈折率が1.495、熱膨張係数が3.3×10-5
(℃-1)であった。
(実施例7) 実施例1と同様の方法を用い、ジ(1H,1H−パーフル
オロブチル)ピロメリット酸無水物と2,5−ジアミノト
ルエン2,5−ジアミノベンゾトリフルオライドを等モル
ずつ用いることによって強靭なポリイミドフィルムを得
た。
得られたポリイミドフィルムの物性を調べたところ、
誘電率が2.6、屈折率が1.495、熱膨張係数が9×10
-6(℃-1)であった。
(実施例8) 実施例1と同様の方法を用い、ジ(2,2,2−トリフル
オロエチル)ピロメリット酸無水物と2,5−ジアミノベ
ンゾトリフルオライドを等モルずつ用いることによって
強靭なポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの物性を調べたところ、
誘電率が2.6、屈折率が1.536、熱膨張係数が9×10
-6(℃-1)であった。
(比較例) 比較例として、先の実施例1と同様の方法により、ピ
ロメリット酸無水物と4,4′ジアミノジフェニルエーテ
ルを等モルずつ用いて市販ポリイミド(商品名:カプト
ン)と同等のポリイミドフィルムを得た。
このものの物性を調べたところ、誘電率が3.5、屈折
率が1.784、熱膨張係数が4.1×10-5(℃-1)であった。
これらの結果から、本発明の含フッ素ポリイミドは、
従来のものと比較して低誘電率、低屈折率かつ低熱膨張
係数を有していることが明らかとなった。
「発明の効果」 以上説明したように、本発明の含フッ素ポリイミド
は、従来のピロメリット酸無水物を用いたポリイミドに
比較して低誘電率、低屈折率かつ低熱膨張係数となる利
点を有しているので、プリント板、LSI用の層間絶縁
膜、光導波路用材料等への適用が可能となる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式 (式中R1は以下の一般式からなる群より選ばれた四価の
    有機基であり、[ただしmは1または2、n1〜10の数を
    表す] R2は以下の化学構造式からなる群より選ばれた二価の基
    を表す で示される繰り返し単位からなる含フッ素ポリイミド。
  2. 【請求項2】下記一般式[I]で表される酸無水物と、
    下記一般式[II]で表されるジアミンとを反応させて請
    求項1に記載した含フッ素ポリイミドを得ることを特徴
    とする含フッ素ポリイミドの製造方法。 (式中のR1、R2はそれぞれ請求項1に記載したR1、R2
    同一する。)
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