JP2730183B2 - 希小金属の回収を兼ねた溶銑の製造方法 - Google Patents

希小金属の回収を兼ねた溶銑の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、V、Nbなどの希少金属の回収方法に関
し、特にこれらの希少金属の含有率の高い鉄鉱石から効
率よくこれらを回収する方法に関する。
(従来の技術) 製鉄原料として用いられる鉄鉱石には、V、Nbのよう
な希少金属もわずかながら含有されている。これらは、
通常の高炉操業条件では、主に溶銑中に移行し、一部が
スラグ中に移行する。従来この高炉スラグから希少金属
を回収することは行われていない。その理由は以下のと
おりである。
高炉製銑は、スクラップを使用しない100%鉄鉱石
の溶融還元法であるため、大量のスラグが発生する。そ
のためスラグ中での希少金属の酸化物の濃化の程度が低
く、これを処理して希少金属を回収することは経済的ベ
ースに乗らない。また、大量のスラグを効率的に処理す
るには大規模な希少金属回収設備が必要である。
希少金属の酸化物をスラグに濃化するためには、炉
内の酸素分圧を上げること、即ち溶銑中の炭素(C)を
下げることが最も効果的な方法である。しかし、かかる
炉内条件では棚吊、吹抜などの操業不安定が起こりやす
い。また、溶銑のを下げるのは、製鋼段階での熱源不
足に直接つながるため好ましくない。
希少金属の酸化物をスラグ中に濃化するには、炉内
のスラグ量を少なくすることが必要であるが、鉱石の還
元に消費されるコークス中の灰分から発生するスラグや
脱硫のために添加されるCaO、MgOに起因するスラグのた
め、従来の高炉操業では大量のスラグが生成される。
なお、通常の高炉操業条件としては、=4.5%、溶
銑温度=1500℃、スラグ塩基度(CaO/SiO2)=1.3が標
準的なものである。
一方、溶銑中に取り込まれた希少金属は、その溶銑の
精錬(脱硫、脱燐を目的とする溶銑予備処理を含む)の
過程で生じるスラグ中に移行するので、そのスラグから
回収することが可能である。Vの回収法としては、例え
ば、特公昭58−38485号公報、特開昭56−22634号公報、
特開昭56−22635号公報などに提案されている方法があ
る。
前記のように、通常の高炉製銑条件では、希少金属は
主として溶銑に移行するから、高炉の操業条件を、希少
金属が溶銑中に移行しやすい条件とすることが考えられ
るが、それには下記のような問題点がある。
希少金属の溶銑中への移行を促すには、前記のと
は逆に高炉内を強還元雰囲気にして、溶銑中が4.5%
以上となるような条件で、しかもスラグの塩化度を高く
するのが好ましい。しかし、スラグの塩基度を1.3〜2.0
程度に高めるとスラグ粘性が高くなり、排滓が困難にな
り、時には出銑にも支障をきたす。
上述のとおり、従来の高炉製銑法では、鉱石中の希少
金属の回収は、これをスラグ中に濃化する方法でも、溶
銑中に濃化する方法でも、それぞれ難点があって、効率
のよい方法がない。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は、鉄鉱石中の希少金属、特にVとNb、を効率
よく回収することを課題とする。具体的には、従来の高
炉製銑法に変わる新しい溶銑製造法を利用し、その過程
でスラグ、または溶銑中に高い濃度で希少金属を濃化さ
せる方法を提供するものである。
(課題を解決するための手段) 本出願人は、先に転炉型の筒型炉を使用し、鉄源とし
て鉄鉱石とスクラップを併用する溶銑の製造方法を開発
し、特願昭63−122292号として特許出願を行った(以
下、これを先願発明と記す)。その先願発明の方法は、
下記のような特徴を有する。即ち、 a)鉄源の一部にスクラップを使用するため、エネルギ
ー効率が高くコークス原単位が低くなり、コークスに起
因するスラグ(主に、SiO2とAl2O3)の生成量が少な
い。
b)鉄源の一部にスクラップを使用するので鉄鉱石の融
着による、棚吊現象や吹抜現象等の操業の不安定性が緩
和する。
c)スラクラップと鉱石の配合率を変えるだけでスラグ
の生成量を調整できる。
d)鉱石は、焼結などの予備処理をせずに、塊状でも粉
状でも使用できる。また、コークスも高炉用のような高
強度を必要としない。
e)総合的に、原料選択の自由度が高く生産量の変化に
対応しやすい。即ち、操業の柔軟性に富む。
本発明者は、上記先願発明の方法が、鉄鉱石中の希少
金属を回収する方法としても極めて適していると考えて
試験を繰り返した結果、下記の点を要旨とする本発明を
完成した。
「上部に原料装入用およびガス排出用の開口部を、炉底
部および/または炉下部側壁に一次羽口を、その上部側
壁に二次羽口をそれぞれ有する筒型炉を使用し、その炉
底から一次羽口を含むレベルまでコークス充填層を形成
させ、その上に二次羽口を含むレベルまでスクラップと
鉄鉱石の混合層を形成させた後、一次羽口および二次羽
口から支燃性ガスを吹き込んで溶銑を製造する方法にお
いて、鉄鉱石として希少金属含有率の高いものを使用
し、生成するスラグ中または溶銑中に希少金属を濃化さ
せることを特徴とする希少金属の回収を兼ねた溶銑の製
造方法」 上記の本発明方法は、希少金属を主にスラグに濃化さ
せる方法と、主に溶銑に濃化させる方法とに分けられて
いる。いずれにしても、本発明の方法は、上記のような
特殊な構造の炉を使用して製錬を行うこと、および鉄鉱
石として希少金属含有率の高い鉄鉱石を選択して使用す
ることを特徴とする。ここで、希少金属とは、主にVと
Nbであり、「希少金属含有率の高い鉄鉱石」とは、Vま
たはNbの含有率がおよそ1.5重量%以上の鉄鉱石を言
う。V含有率の高い鉄鉱石としては、例えばソ連に産す
る含Ti磁鉄鉱、Nb含有率の高いものとしては、例えばブ
ラジル産のパイロクロア鉱がある。
(作用) まず、本発明方法における溶銑製造の基本原理を説明
する。
第1図は、本発明方法の実施に使用する筒型炉と原料
装入状態を模式的に示したもので、図の(a)、
(b)、(c)はそれぞれ下記の工程a、b、cに相当
する。
装置としては第1図に示すように、上部にガスの排出
とスクラップ、鉱石およびコークスの装入のための開口
部2を有し、下方から一次羽口3と二次羽口4を有する
筒型炉1を用いる。溶解操作は、下記の3つの工程で構
成される。
a.開口部から、先ずコークスおよび所要の副原料(石灰
石、蛇紋岩、ケイ石など)を装入して炉底から一次羽口
を含むレベルまでコークス充填層5を形成させ、次にス
クラップおよび鉄鉱石を装入してコークス層の上部で二
次羽口を含むレベルまでスクラップ6−1と鉄鉱石6−
2から成る充填層6を形成させる装入工程。
b.一次羽口から支燃性ガス7と、必要に応じて燃料8を
吹込み、二次羽口から支燃性ガス9を吹込んでスクラッ
プと鉄鉱石を溶融して溶銑を製造する溶融還元工程。
c.生成した溶銑(およびスラグ)10を炉から排出する出
銑工程。
ここで、aおよびbの操作を行う目的は、下部のコー
クス充填層5内において一次羽口から吹込む支燃性ガス
7によりコークスと燃料8を下記式により部分酸化燃
焼させ、COを主成分とするガスを製造して燃焼発熱によ
りコークス充填層を高温に保持し、かつ、上部のスクラ
ップと鉄鉱石の充填層6内で二次羽口から吹込む支燃性
ガス9により下部で発生するCOを主成分とするガスを次
の式により二次燃焼させるためである。
C+1/2 O2=CO+29400kcal/kmol・C ・・・ CO+1/2 O2=CO2+67600kcal/kmol・C ・・・ このようにすれば、上部で二次燃焼の発熱によりスク
ラップと鉄鉱石を加熱溶融し、溶鉄とともに溶融酸化鉄
を生成させ、これらを重力により下部のコークス充填層
に滴下させることができる。
下部のコークス充填層は式の部分酸化反応により高
温に加熱されているため、滴下してきた溶融酸化鉄を溶
融還元して溶鉄とすることができる。さらに、生成した
溶鉄を高温のコークスにより浸炭させ、溶銑とすること
ができる。
生成した溶銑とスラグは、cの操作により炉外に排出
され、次回の一連の操業につながる。なお、この排出
は、製鋼用転炉における如く炉を傾動いて行ってもよい
が、炉底部に設けた出銑口11と排滓口12から行ってもよ
い。
また、上記a〜cの工程を繰り返し連続的に実施し
て、連続溶銑製造法とすることもできる。
次に、鉄鉱石中の希少金属を、スラグ中または溶銑中
に濃化させる条件について記述する。
熱力学の基礎的事実から反応容器(高炉や転炉等)内
の酸素分圧を上げる(必然的に溶銑中は減少する)こ
とはスラグ内のV酸化物およびNb酸化物の安定化を意味
する。
第2図は、反応容器内の酸素分圧とVおよびNbのメタ
ル−スラグ分配比との関係を示す図である。図示のとお
り、酸素分圧(logPo2)が−13より高い領域(が約3
%より低くなる領域である)では、通常の高炉操業条件
=4.5%)に対応する酸素分圧の低い領域に比較し
て、約100倍のメタル−スラグ分配比を示す。即ち、鉱
石中のVおよびNbがほとんど(約95%以上)酸化物の形
でスラグ中に存在することを意味する。
また、スラグへのV酸化物およびNb酸化物の分配量は
スラグの塩基度に強い影響を受ける。
第3図は、溶銑中が4%、溶銑温度1450℃の場合の
塩基度(CaO/SiO2)と、VおよびNbのスラグ中への収率
との関係を示す図である。
上記の基礎事実から、希少金属を主にスラグ中に濃化
させる条件は、下記のようになる。
(a) スラグの塩基度を1.3未満にする。
(b) 溶銑中のを3.0%以下にする。
勿論、(a)と(b)とを同時に満足するのが望まし
い。
反対に、希少金属を溶銑中に濃化させる条件は、 (c) スラグの塩基度を1.3以上にする。
(d) 溶銑中のを4.5%以上にする。
本発明の希少金属の回収を兼ねた溶銑の製造法では、
一次及び二次羽口からのO2供給を制御することで容易に
溶銑の制御ができる。従って、希少金属を主にスラグ
に移行させるか、溶銑に移行させるかは、必要に応じて
自由に選択できる。この選択はスラグの塩基度の調整に
よってもできる。例えば、スラグ中へ移行させる場合で
も、酸化性雰囲気に強く、かつ低塩度スラグに耐える適
正な耐火物の張り分けは容易である。
希少金属をスラグ中に移行させる場合、溶銑を低く
する必要があるが、これに起因する製鋼段階での熱源不
足は、溶銑製造に用いた筒型炉をそのまま製鋼用に使用
することで熱損失を大幅に抑制して緩和あるいは解消す
ることができる。
本発明方法の実施に当たっては、鉄鉱石として粉状の
ものを支燃性ガスとともに一次羽口、二次羽口の一方ま
たは両方から吹き込んでもよい。また、これらの羽口か
ら、粉炭、粉コークスその他液状、ガス状の燃料を吹き
込むことも可能である。
スクラップとしては通常入手できるものを使用する
が、その中に希少金属が含有されていれば、これを有効
に回収できる。
本発明方法を実施するための炉は、図示のような筒型
の炉であるが、その細部の構造は種々改変できる。例え
ば、転炉のように傾動できるもの、炉低に出銑口を、そ
の上方に排滓口を有するもの、炉口上部に原料の予熱装
置を有するもの、などである。筒型炉の規模は、例え
ば、溶銑300トン/チャージであり、その場合、生成す
るスラグは300トン/チャージ以下である。即ち、高炉
に比較すれば、極めて小規模の設備で処理できる。
なお、スラグ中または溶銑中に濃化された希少金属
は、それぞれ公知の処理法で回収して利用できる。例え
ば、スラグ中に濃縮したVはアルミノテルミット法で還
元して回収でき、溶銑中に濃縮したVは、前掲の特公昭
58−38485号公報に記載されるようなアルカリ金属炭酸
塩を主成分とする造滓剤を添加して生成するスラグから
回収できる。最終的にはV2O5粉末やフェロバナジウムと
して利用される。Nbも溶媒抽出法、テルミット還元法な
どによって高純度酸化ニオブやフェロニオブとして回収
利用される。
(実施例) 第1図に示したような筒型炉を使用して本発明の方法
を実施した。
I.炉の仕様 (1)直径=1.5m、炉底から炉口までの高さ=3.6m、内
容積=6m3 (2)一次羽口及び二次羽口は、炉底から0.8m、1.2m上
部の炉壁に90゜間隔で4本づつ設置。
(3)出銑口は炉底中央部、排滓口は炉底より1.0m上部
の位置に各々1個づつ設置。
II.原料 (1)スクラップ 最大寸法400mm角、嵩比重3.5トン/m3 (2)鉄鉱石…第1表記載のもの。
(3)コークス…第2表記載のもの。
(3)支燃性ガス…純酸素 III.その他の実施条件…第3表および第4表のとおり。
第3表は、V含有率の高い第1表のA、B銘柄の鉱石
を使用してVの回収を行った例である。試験No.1〜3は
Vがスラグ中に濃縮するような条件で製銑を行った例、
試験No.4〜6は溶銑中にVを濃縮させた例である。No.2
と6は粉鉱石を羽口から吹き込んだ。
第3表の各試験例の溶銑中のV、およびスラグ中のV
の量を見れば、本発明の方法によって、Vが溶銑とスラ
グのいずれかに効果的に濃縮されていることが分かる。
特に、溶銑中のを2.0%と低くし、スラグの塩基度を
0.2と下げたNo.3では、Vのスラグへの回収率が高い。
逆に、を4.5%とし、スラグ塩基度を2.0としたNo.6で
は、溶銑中へのVの回収率が極めて高くなっている。
第4表は、第1表の銘柄C、Dの鉱石、即ち、Nb含有
率の高い鉱石を使用して、Nbの回収を行った例である。
No.7〜9がスラグに、No.10〜12が溶銑に、それぞれNb
を濃縮させた例である。No.8とNo.12で粉鉱石を使用し
ている。第3表の結果と同様に、溶銑中のとスラグ塩
基度を低くしたNo.9ではスラグ中へのNbの回収率が高
く、その反対の条件であるNo.12では、溶銑中にNbが効
率良く回収されている。
上記のように、溶銑とスラグ塩基度を変えることに
よって、VおよびNbはスラグ中または溶銑中に効率よく
回収される。そのいずれを選ぶかは、製造すべき溶銑の
組成、希少金属を回収するための溶銑とスラグの処理の
し易さ、経済性などを比較して任意に決めることができ
る。
実施例では、VとNbの回収例を示したが、これに類す
る希少金属も同様にして回収できることはいうまでもな
い。
(発明の効果) 本発明方法によれば、スクラップと鉄鉱石から効率よ
く溶銑を製造すると同時に、スラグもしくは溶銑中に希
少金属を酸化物の形で富化して回収できる。この方法
は、例えば従来の高炉スラグからの回収に比べて、希少
金属の回収コストを大幅にさげることを可能にするもの
で、その産業上の効果は著しく大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の溶銑製造法の実施に使用する炉と、
操業工程を説明する図である。 第2図は、反応容器内の酸素分圧とVおよびNbのメタル
−スラグ間分配比の関係を示す図である。 第3図は、スラグ塩基度とVおよびNbのスラグへの回収
率の関係を示す図である。

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】上部に原料装入用およびガス排出用の開口
    部を、炉底部および/または炉下部側壁に一次羽口を、
    その上部側壁に二次羽口をそれぞれ有する筒型炉を使用
    し、その炉底から一次羽口を含むレベルまでコークス充
    填層を形成させ、その上に二次羽口を含むレベルまでス
    クラップと鉄鉱石の混合層を形成させた後、一次羽口お
    よび二次羽口から支燃性ガスを吹き込んで溶銑を製造す
    る方法において、鉄鉱石として希少金属含有率の高いも
    のを使用し、生成するスラグ中または溶銑中に希少金属
    を濃化させることを特徴とする希少金属の回収を兼ねた
    溶銑の製造方法。
  2. 【請求項2】炉内スラグの塩基度を1.3未満として、希
    少金属を主にスラグ中に濃化させることを特徴とする特
    許請求の範囲第1項記載の溶銑の製造方法。
  3. 【請求項3】炉内溶銑中の炭素含有量を3%以下として
    希少金属を主にスラグ中に濃化させることを特徴とする
    特許請求の範囲第1項記載の溶銑の製造方法。
  4. 【請求項4】炉内スラグの塩基度を1.3未満とし、か
    つ、炉内溶銑中の炭素含有量を3%以下として希少金属
    を主にスラグ中に濃化させることを特徴とする特許請求
    の範囲第1項記載の溶銑の製造方法。
  5. 【請求項5】炉内スラグの塩基度を1.3以上として、希
    少金属を主に溶銑中に濃化させることを特徴とする特許
    請求の範囲第1項記載の溶銑の製造方法。
  6. 【請求項6】炉内溶銑中の炭素含有量を4.5%以上とし
    て希少金属を主に溶銑中に濃化させることを特徴とする
    特許請求の範囲第1項記載の溶銑の製造方法。
  7. 【請求項7】炉内スラグの塩基度を1.3以上とし、か
    つ、炉内溶銑中の炭素含有量を4.5%以上として希少金
    属を主に溶銑中に濃化させることを特徴とする特許請求
    の範囲第1項記載の溶銑の製造方法。
  8. 【請求項8】一次羽口および/または二次羽口から、支
    燃性ガスとともに希少金属含有率の高い鉄鉱石の粉末を
    吹き込む特許請求の範囲第1項から第7項までのいずれ
    かに記載の溶銑の製造方法。
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CN112410586B (zh) * 2020-10-27 2021-10-15 长沙矿冶研究院有限责任公司 从含铁、铌、稀土多金属矿中综合回收铌、稀土、钛的方法

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