JP2729886B2 - 合成樹脂製シールリング - Google Patents

合成樹脂製シールリング

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JP2729886B2 JP4346569A JP34656992A JP2729886B2 JP 2729886 B2 JP2729886 B2 JP 2729886B2 JP 4346569 A JP4346569 A JP 4346569A JP 34656992 A JP34656992 A JP 34656992A JP 2729886 B2 JP2729886 B2 JP 2729886B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、両端部を有する合成樹
脂製シールリングに関する。一般に、自動車等における
ピストンや回転軸、あるいは、往復動軸等には、それら
の持つ接触部の密着性を高めるために、シールリングが
装着されている。
【0002】
【従来の技術】図3の(a)〜(c)は、従来の各種の
合成樹脂製シールリングを示すもので、まず、図3
(a)に示す合成樹脂製シールリング10は、切断部を
有する一般的なもので、両端部2A,2Bをそなえてい
る。そして、この合成樹脂製シールリング10は、例え
ば、図4,5に示すようにして、オートマチックトラン
スミッション(AT)に付設のオイルポンプアッセンブ
リ17に取り付けられる。即ち、このオイルポンプアッ
センブリ17には、オートマチックトランスミッション
のハウジング(ATハウジング)4の穴部4Aへ挿入さ
れる軸部5が設けられている。そして、このオイルポン
プアッセンブリ17の軸部5には、リング溝3が2つ設
けられており、これらの溝3にそれぞれシールリング1
0が取り付けられるのである。
【0003】このように、オイルポンプアッセンブリ1
7の軸部5にシールリング10を取り付けてATハウジ
ング4にセットした部分図を示すと、図4のようになる
が、この例の如く、シールリング10を取り付けておく
ことにより、ATハウジング4内への油圧通路の液密性
を十分に確保できるのである。さて、この図3(a)に
示すシールリング10は、前述の如く、両端部2A,2
Bをそなえ、その両端部2A,2Bの各面が接し合うほ
ぼ真円状のものである。そして、このシールリング10
の内側の面の径(内径)は、自身が装着されるリング溝
3の底壁の径と、形および大きさ共にほぼ等しくなって
いる。
【0004】又、この合成樹脂製シールリング10は、
その材質として、一般に、四フッ化エチレン樹脂材(例
えば、テフロン(商品名)等)の合成樹脂が使用されて
いる。尚、この樹脂は、適度な軟質性をそなえたもので
ある。そして、このような材質の軟質性により、このシ
ールリング10は、その両端部2A,2Bを拡げられ、
オイルポンプアッセンブリ17のリング溝3に装着され
るのである。尚、このシールリング10の装着に際し
て、シールリング機能を向上させるために、リングにパ
ラフィンが塗布される。
【0005】つまり、シールリング10にパラフィンを
塗布することにより、リング溝3の底壁にシールリング
10の内側の面の全てを、装着時において、確実に固定
保持する。このように、挿入時におけるシールリング1
0は、確実に固定保持されることにより、その径が装着
前の状態の大きさに戻り、リング溝3の側壁からはみ出
ることなく収まる。これにより、図6の(a)に示すよ
うに、相手側ハウジング(ATハウジング)4の穴部4
Aの入口における面取部4A−1からの飛び出し量が無
くなるため、挿入時において、シールリング10がAT
ハウジング4の面取部4A−1に殆ど当たらない。
【0006】そして、パラフィンの効果が無くなり、リ
ング溝3からシールリング10がはがれると、シールリ
ング10は、使用時における低い流体圧のために、やや
拡径して、シール圧を確保する。即ち、四フッ化エチレ
ン樹脂材の軟質性に起因して、シールリング10は、流
体圧を受けると、ATハウジング4の内壁面を押圧す
る。この結果、オイルポンプアッセンブリ17の軸部5
とATハウジング4との間の液密性が確保される。
【0007】尚、その他のピストンや回転軸および往復
動軸等においても同様の要領で、上記の合成樹脂製シー
ルリング10(以下、パラフィンリング10という)の
装着が可能である。又、上記の例では、リングをリング
溝3に一時的に固定保持するために、パラフィンを使用
したが、グリースやワセリン等を代わりに使用しても構
わない。
【0008】ところで、図3の(b),(c)は、従来
の癖付け型合成樹脂製シールリング11を示したもので
ある。この癖付け型合成樹脂製シールリング11は、そ
の取り付け前の状態として、両端部2A,2Bよりも内
側の各部分が重なり合うように癖付けされている。そし
て、このシールリング10の内側の面の径(内径)は、
自身が装着されるリング溝3の底壁の径と、両端部2
A,2Bよりも内側の各部分が重なり合っている分だけ
小さくなっている。
【0009】又、このシールリング11に用いられる材
質も、先のパラフィンリング10の場合と同様に、一般
に、四フッ化エチレン樹脂材(例えば、テフロン(商品
名)等)等の合成樹脂が普通である。何故ならば、この
樹脂には、適度な軟質性がそなえられているとともに、
簡単な加熱処理により癖付けができる性質をもそなわっ
ているからである。
【0010】このため、この種の癖付け型合成樹脂製シ
ールリング11における製造工程は、まず、通常の方法
にてリング部を製造したのち、加熱器によって熱加工す
ることにより、リング両端部が重なり合うように癖付け
されるのである。このように、シールリング11に癖付
けが行なわれているため、このシールリング11が両端
部2A,2Bの間隔を拡げられてリング溝3に装着され
ると、以下のようになる。即ち、シールリング11は、
装着前の径よりも大きな径のリング溝3にそなえ付けら
れるため、装着後には、一時的にリング溝3を底部を締
めつけ、底部に固定保持されることになる。
【0011】この間に、このシールリング11をそなえ
たオイルポンプアッセンブリ17が、ATハウジング4
に挿入される。この結果、この時の挿入がスムーズにな
り、シールリング11の負担が軽減される。上記のよう
にしてオイルポンプアッセンブリ17が、ATハウジン
グ4に挿入されるた後、シールリング11は、先のパラ
フィンリング10の場合と同様に、使用時における低い
流体圧によって拡径することによりシール圧を確保す
る。
【0012】尚、この癖付け型合成樹脂製シールリング
11においても、その他のピストンや回転軸および往復
動軸等においても同様の要領で装着が可能である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来のパラフィンリングでは、シールリング機能の
低下を予防できるが、実際のリング取り付け作業におい
て非常に効率の悪いものとなり、製品のコスト高を招い
てしまうという課題がある。その他にも、夏場のように
気温が高くなってしまうと、パラフィン自身の粘度が低
下してその機能を果たせなくなるという課題がある。更
に、このような気温の高い時に、装着前のシールリング
にパラフィンを塗布して置いていると、シールリング同
士が付着してしまうという課題がある。又逆に、冬場の
ように気温が低くなる場合では、パラフィンの硬化によ
り、シールリング装着溝への装着性が悪化してしまうと
いう課題がある。
【0014】又、癖付け型合成樹脂製シールリングで
は、リング溝に装着した時に、加熱処理による癖付けの
影響で楕円状になり、確実にはリング溝の底面に固定保
持されないという課題がある。即ち、装着時において、
一部分はリング溝の底面に固定保持されるが、両端部付
近とその相対の位置付近はリング溝底から浮いてしま
い、相手側ハウジングの面取部からの飛び出し量が大き
くなってしまう。
【0015】何故ならば、両端部から両端部の対称の位
置の部分までが、リング溝を締めつけるだけでなく、癖
付けされた形状をある程度回復しようとするため、両端
部間に距離ができ、図6の(b)に示すように、リング
溝から大きく浮き出してしまう部分があるからである。
このため、シールリングの両端部付近とその相対の位置
付近は、相手側ハウジングの開口縁との当接が大きくな
って、オイルハウジングの挿入時にシールリングに大き
な負担を与えてしまう。この時の負荷により、シールリ
ングの材質劣化が招かれて、シールリング機能の低下の
恐れがあるという課題がある。尚、図6の(a),
(b)に示したパラフィンリング10とシールリング1
1の断面は同じサイズであるが、図面上、その位置の違
いを明確にするため、敢えてシールリング11の断面を
細く描いてある。
【0016】又、図6の(c)に示すように、当接によ
る負担を軽減するために、相手側ハウジング4の面取部
4A−1の面取り寸法を大きくして、挿入時の負担を軽
減する方法も考えられるが、そうすると、ハウジングを
全体的に大きくしなければならず、装置の大型化を招く
という課題がある。本発明は、このような課題に鑑み創
案されたもので、パラフィン等の塗布剤を用いずとも、
シールリングの内面をリング溝底に確実に固定して、相
手側ハウジングとの当接を防ぐ、合成樹脂製シールリン
グを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】このため、本発明の合成
樹脂製シールリングは、両端部を有する合成樹脂製シー
ルリングにおいて、該シールリングの両端部よりも内側
の各部分が交差するように癖付けされていることを特徴
とする。
【0018】
【作用】上述の本発明の合成樹脂製シールリングでは、
その両端部を拡げながらリング溝に装着されると、両端
部よりも内側の各部分が交差するように癖付けされてい
るため、該シールリングの内側の面がリング溝に一時固
定保持される。
【0019】
【実施例】以下、図面により、本発明の一実施例につい
て説明すると、図1(a)〜(c)は、本実施例にかか
る合成樹脂製シールリング1を示すもので、この合成樹
脂製シールリング1は、両端部2A,2Bを有してい
る。そして、このシールリング1は、図1の(a)に示
すように、両端部2A,2Bよりも内側の各部分が交差
するように癖付けして構成されている。
【0020】この合成樹脂製シールリング1は、図4に
示すような、オートマチックトランスミッションのオイ
ルポンプアッセンブリ17に、従来例のシールリング1
0,11の代わりに使用するものである。つまり、この
シールリング10は、従来例のものと同様に、オイルポ
ンプアッセンブリ17の各リング溝3に装着されるので
ある。その結果、オイルポンプアッセンブリ17の軸部
5とATハウジング4間は、十分な密着性が得られて、
オイルの液密性の高いものとなっている。これにより、
多板クラッチの作動用油圧の供給を確実に行なえる。
【0021】そして、このシールリング1は、従来例の
ものと同様に、材質として、四フッ化エチレン樹脂材等
の合成樹脂が使用される。又、シールリング1の加熱処
理による癖付けをさせる前の形状は、リング溝3の形状
とほぼ同じである。つまり、その内壁の径(内径)がリ
ング溝3の底面の径と同じ大きさと形を持つようになっ
ている。
【0022】又、本シールリング1は、前述の如く、そ
の両端部2A,2Bよりも内側の各部分が交差するよう
に癖付けされているが、この癖付けに際しては、例え
ば、このシールリング1の両端部2A,2Bの対称のA
点付近を、リングの内側へ湾曲する。上記の構成に示す
如く、合成樹脂を用いて上記のような癖付けが行なわれ
るため、合成樹脂製シールリング1は、両端部2A,2
Bを拡げられて(図1の(b)参照)リング溝3に装着
されると、リング溝3底を締めつけて、自身を固定す
る。
【0023】このとき、シールリング1は、図1の
(c),図2に示すように、従来例のものと異なり、リ
ング溝3への装着時には、楕円量が小さくて殆ど真円に
近い形で装着される。この結果、図6の(a′)に示す
ように、装着時のシールリング1は、飛び出し量の小さ
い状態でリング溝3に固定保持される。この場合は、重
なり量(癖付けによって設けられる両端部2A,2B間
の距離)が小さい程楕円量を小さくできるが、只、あま
りにも重なり量が小さ過ぎると、シールリング1自身が
うまくリング溝3に固定保持されなくなるので、取り付
け箇所に応じて、図2の(a)に示す重なり量の範囲内
で装着する。その結果、オイルポンプアッセンブリ17
の挿入時における、シールリング1とATハウジング4
の面取部4A−1との当接による抵抗(ガイド効果)が
小さくなる。これにより、シールリング1に対して殆ど
負担が掛かること無く、オイルポンプアッセンブリ17
の挿入が行なわれる。尚、ここで言う楕円量とは、シー
ルリング1の装着時の長径の長さから短径の長さを差し
引いた長さのことである。又、図6の(a′)に示した
シールリング1の断面は、従来例で説明したシールリン
グ11およびパラフィンリング10と同じサイズである
が、図面上、その位置の違いを明確にするため、特に他
のリングの断面より細く描いてある。
【0024】そして、オイルポンプアッセンブリ17が
ATハウジング4に挿入されたのち、シールリング1
は、使用時において、四フッ化エチレン樹脂材の軟質性
に起因して、低い流体圧で拡径してシール圧を確保す
る。このため、シールリング1は、リング溝3との間に
隙間ができる代わりに、ATハウジング4の穴部4Aの
内壁面を押して、液密性を確保するようになる。
【0025】尚、この癖付け型合成樹脂製シールリング
1は、その他のピストンや回転軸および往復動軸等にお
いても、同様の要領で装着が可能である。このように、
シールリング1の両端部2A,2Bよりも内側の各部分
が交差するように癖付けされていることにより、オイル
ポンプアッセンブリ17の軸部5とATハウジング4と
の間の液密性を確保することができる他、シールリング
1の飛び出し量を、従来の例のものよりも小さくするこ
とができる。
【0026】即ち、図2に示すように、従来例のものと
異なり、シールリング1のリング溝3への装着時には、
楕円量が小さくて殆ど真円に近い形で装着されることが
可能となる。この結果、シールリング1が相手方の内周
面の開口縁に挿入される際に、当接によるガイド効果が
小さいものとなり、このため、挿入に際して、シールリ
ング1に対して殆ど負担が掛からないので、シールリン
グ機能の低下を防ぐことができる。
【0027】しかも、パラフィン等の塗布剤の使用を省
き、作業性の合理化を保ちながらも、高いコスト性を維
持し、パラフィン等の塗布剤の使用した場合とほぼ同様
のシールリング保護の効果を持つことができる。
【0028】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の合成樹脂
製シールリングによれば、両端部を有する合成樹脂製シ
ールリングにおいて、該シールリングの両端部よりも内
側の各部分が交差するように癖付けされていることによ
り、簡単な作業で、しかも、パラフィン等の塗布剤を使
用した場合と同様に、確実なシールリング保護効果が得
られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における合成樹脂製シールリ
ングを示す図である。
【図2】合成樹脂製シールリングの重なり量と楕円量の
関係を示すグラフである。
【図3】従来例における合成樹脂製シールリングを示す
図である。
【図4】オートマチックトランスミッションの部分断面
図である。
【図5】オイルポンプアッセンブリを示す斜視図であ
る。
【図6】合成樹脂製シールリングの飛び出し量と相手側
ハウジングの面取部の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 合成樹脂製シールリング 2A,2B 両端部 3 リング溝 4 ATハウジング 4A 穴部 4A−1 面取部 5 軸部 10 パラフィン処理型合成樹脂製シールリング 11 癖付け型合成樹脂製シールリング 17 オイルポンプアッセンブリ

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 両端部を有する合成樹脂製シールリング
    において、 該シールリングの両端部よりも内側の各部分が交差する
    ように癖付けされていることを特徴とする、合成樹脂製
    シールリング。
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