JP2703453B2 - 度目微調整装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば、ストッキン
グ、パンスト、タイツ及びこれらに類似するニット製品
の形状を人体の体型に近い形状とするように、編地の編
成度目を各編成領域ごとに微調整する丸編機における度
目微調整装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】この種の丸編機の度目調整制御装置（度
目変化制御装置ともいう）は、図５に示されるように構
成されている。

【０００３】図５において、符号１は丸編機の機枠１を
示し、この機枠１に軸受２を介して編針シリンダ３が回
転自在かつ昇降自在に配置されている。この編針シリン
ダ３は昇降ピン４を介して昇降し傘歯車５によって回転
する。上記機枠１に設けた軸受２の下部には昇降筒体６
が設けられている。この昇降筒体６の外面下部に当接片
６ａが設けられている。又、上記機枠１には複数（図５
では１個のみ示す）度目調整レバー７が支軸８で揺動自
在に枢着されている。各度目調整レバー７の当接部７ａ
に対応した位置にファショニングカム９が配置されてい
る。このファショニングカム９は度目調整レバー７の当
接部７ａに当接して回転する。さらに、度目調整レバー
７の中程には、作動片７ｂが昇降筒体６の当接片６ａに
当接するように設けられている。ファショニングカム９
は、ラチェット歯車１０と共軸一体に軸着され、ラチェ
ット歯車１０は機枠１に枢着されたラッキング機構（間
欠送り機構）１１により間欠的に回転する。ラッキング
機構１１は、揺動するラッキング槓杆１２とこのラッキ
ング槓杆１２に枢着された送り杆１３とを有し、送り杆
１３に設けた送り爪１３ａをコイルばね１４によりラチ
ェット歯車１０の歯に係合させる。

【０００４】なお、上記ラチェット歯車１０の外周の一
部には、ブレーキ装置１５がラチェット歯車１０の側面
へ制動を加えるように設けられている。

【０００５】丸編機において、例えば、図４に示される
ようなストッキングを編成する場合、このストッキング
形状に該当する所定のファショニングカム９を選定し、
このファショニングカム９を度目調整制御装置の支軸９
ａに軸装する。ついで、丸編機の運転を編成スタート位
置から開始すると、ラッキングカム装置１１のラッキン
グ槓杆１２及び送り杆１３により送り杆１３に設けた送
り爪１３ａがラチェット歯車１０を一歯ごとに間欠送り
し、ラチェット歯車１０と一体のファショニングカム９
が間欠的に回動する。このファショニングカム９の間欠
的な回動により、ファショニングカム９に当接する度目
調整レバー７の当接部７ａが支軸８の周りに揺動し、こ
の度目調整レバー７の作動片７ｂが昇降筒体６の当接片
６ａを上下方向へ昇降する。昇降リング６の昇降によ
り、軸受２及び昇降ピン４を介して編針シリンダー３が
上下方向に昇降し、これにより編針シリンダー３の編針
（図示されず）が給糸される編糸の度目を変化させなが
ら設定された所定の編成長さのストッキングを編成す
る。

【０００６】上記ファショニングカム９と度目調整レバ
ー７の各当接部７ａの位置は、図４に示されるようなス
トッキングのゴム部ｅ、パンテイ部ｐ、ガータ部ｇ、レ
ング部１、トウ部ｔ等の各編成領域に対応して調整して
ファショニング編成される。上記ファショニングカム９
は各編成領域の度目を調整している。

【０００７】このように上述した丸編機における度目調
整制御装置は、各編成領域に対応して度目を調整するこ
とにより、ストッキングのゴム部ｅ、パンテイ部ｐ、ガ
ータ部ｇ、レング部１、トウ部ｔをファショニング編成
する。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】上述した丸編機の度目
調整制御装置では、ストッキングのゴム部、パンテイ
部、ガータ部、レング部、トウ部の度目制御をファショ
ニングカムの高さと調整ねじにより行ない、編成中に度
目に変化が生じた場合、調整ねじの再調整による行なう
ため、各編成領域に対応して手作業により度目調整して
いる関係上、熟練を要し、時間と労力を費すばかりでな
く、上記ファショニングカム自体の形状が限定されてい
るから、例えば、ストッキング本体の先行編成領域から
後行編成領域へ移行する過程で微細な度目変化によるフ
ァショニング編成が困難である。

【０００９】上記ファショニングカムをパルスモータで
制御することで、ストッキングのレッグ部の度目制御を
行なう度目調整制御装置は、本出願人によって開発され
ている（特公平３−６０９４２号公報参照）が、この度
目調整制御装置は編成全領域に亘って微細な変化の度目
調整によるファショニング編成を行なうことができな
い。

【００１０】最近、ストッキング、パンストやタイツ等
の編成効率の向上を図るために、編針シリンダー３の回
転速度が約２００ＲＰＭから約１０００〜１５００ＲＰ
Ｍ程度の高速回転に改良したものも提案されており、こ
れに起因して、編針シリンダーの編針とニッテングヘッ
ドの各カムとの摩擦抵抗により、連続運転中に編針シリ
ンダー等が約７０〜８０℃程度に発熱して、編針シリン
ダが軸方向に約０、１５〜０、２ｍｍ程度に熱膨張する
ため、この状態で編成されるストッキング、パンスト、
タイツ等の編成長さは、編成プログラムに入力して設定
された基準編成長さよりも、約１０〜１５％程度の長い
バラツキ（編地の乱寸）が発生して編成された製品の品
質を損い、製品の信頼性に問題を生じている。

【００１１】本発明は、上述した問題を解消するため
に、編成されるストッキング、パンスト、タイツ及びこ
れらに類似するニット製品の形状を人体の体型に近い形
状とするために、編成度目を編成領域ごとに編成制御回
路による編成プログラムに基づいて自動的に微調整し、
編成される糸の度目を変化させながら製品の寸法精度や
品質の向上を図るようにした丸編機における度目微調整
装置を提供することを目的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明の度目微調整装置
は、ラッキングカム装置及びファショニングカム装置に
よる度目調整装置を備え、度目調整装置により編針シリ
ンダを支持する昇降筒体を昇降して編針シリンダにより
編成される編地の編成度目を編成領域ごとに調整する丸
編機において、上記昇降筒体より下の機枠に設けられた
水平支持体と、昇降筒体と水平支持体の間に配置され昇
降筒体を昇降させるリフター部材と、リフター部材を支
持する腕杆を有しリフター部材の一端を支持するように
水平支持体に枢着された上記ファショニングカム装置の
度調本体と、上記リフター部材の他端を支持し度調本体
により昇降したリフター部材をさらに昇降させて編地の
編成度目を編成領域ごとに微調整するためのリフター部
材昇降機構と、このリフター部材昇降機構を度目調整回
路からの度目微調整信号に応じて駆動させるパルスモー
タとを具備したことを特徴とする。

【００１３】

【作用】本発明の丸編機における度目微調整装置では、
所定のファショニングカムを支軸に軸装し、丸編機の運
転を編成スタート位置から開始した場合に、度目調整装
置のラッキングカム装置及びファショニングカム装置に
よる度目調整装置で度調本体に当接するリフター部材を
昇降させることで昇降筒体を介して編針シリンダーを昇
降させ、編針で給糸される編糸の度目を変化させながら
設定された所定の編成長さの製品の各編成領域をファシ
ョニング編成するが、各編成領域ごとに度目を微調整す
るとき、度目調整回路からの度目微調整信号に応じて駆
動するパルスモータによりリフター部材昇降機構を作動
させて、度調本体により昇降したリフター部材をさらに
昇降させて編地の編成度目を編成領域ごとに微調整し、
編糸の度目を変化させながら編成し、製品の寸法精度や
品質の向上を図る。

【００１４】

【実施例】以下、本発明を図示の実施例について説明す
る。

【００１５】図１乃至図３において、符号１は丸編機に
おける機枠であって、この機枠１には、軸受２、２ａが
設けられており、軸受２、２ａに編針シリンダ３が昇降
ピン４を介して昇降すると共に傘歯車５によって回転自
在に嵌装されている。又、軸受２の下部には、昇降筒体
６が抜け落ちないように設けられており、この昇降筒体
６の下部に一対の当接片６ａが後述するリフター部材４
２の各受座４２ｃへ当接するように垂設されている。編
針シリンダ３の外周には、多数の編針２０が摺動自在に
嵌装されており、編針２０の外側に位置する上記機枠１
の内周には、カム２１ａ、２１ｂが編針２０のバットを
昇降するように設けられている。

【００１６】編針シリンダ３の上部には、シンカーベッ
ト２２が水平に取付けら、このシンカーベット２２の上
面に半径方向に刻設された多数のガイド溝（図示され
ず）にシンカー２３がシンカーカム２４によって半径方
向へ摺動自在に設けられている。又、編針シリンダ３の
上端部には、トップシリンダー２５がシンカー２３を案
内するように設けられている。トップシリンダー２５は
傘歯車５と一体の筒部５ａにコイルばね２６の弾力で下
方へ付勢して設けられている。

【００１７】一方、昇降筒体６の近傍の上記機枠１に
は、図１及び図２に示されるように、ラッキングカム装
置２７及びファショニングカム装置２８が設置されてい
る。

【００１８】ラッキングカム装置２７は、図１及び図２
に示されるように、ラッキングカム２９を有し、ラッキ
ングカム２９は回転軸２９ａに編針シリンダ３と同期し
て回転するように軸装されている。ラッキングカム２９
の傍らの上記機枠１には、ラッキング杆３０の基部３０
ａが支軸３１で揺動自在に枢着されている。又、ラッキ
ング杆３０の自由端部には、ローラ３０ｂがラッキング
カム２９へコイルばね３２ａ、３２ｂの弾力で当接する
ように設けられている。ラッキング杆３０の中程には、
送り杆３３の一端部３３ａがピン３４で連結されてい
る。さらに、この送り杆３３の他端部３３ｂには、送り
爪３３ｃがファショニングカム装置２８のラチェット歯
車３８を一歯ごとに間欠送りするように設蹴られてい
る。送り杆３３の他端部３３ｂの近傍の静止部材（図示
されず）には、例えば、ロータリーソレノイドのような
往復回動モータ３５が設けられている。さらに又、この
往復回動モータ３５の出力軸には、係止ピン３５ａが上
記送り杆３３の他端部３３ｂをコイルばね３２ａ、３２
ｂの弾力に抗して引上げて送り爪３３ｃをラチェット歯
車３８から離間して間欠送りを休止するように付設され
ている。

【００１９】ファショニングカム装置２８は、図２及び
図３に示されるように、ファショニングドラム３６を有
し、ファショニングドラム３６の回転軸３６ａは、昇降
筒体６に対して直交する方向でかつ水平方向に位置する
ように機枠１に回転自在に軸装されている。ファショニ
ングドラム３６の外周には、複数（図では７個）のカム
３６ｂが、例えば、図４に示されるように、ストッキン
グのゴム部ｅ、パンテイ部ｐ、ガータ部ｇ、レング部
１、トウ部ｔ等の各編成領域に対応して度目調整するよ
うに添設されている。又、送り爪３３ｃの近傍のファシ
ョニングドラム３６の一側には、ファショニングカム３
７とラチェット歯車３８が共軸一体に軸装され、ラチェ
ット歯車３８は送り爪３３ｃで一歯ごとの間欠送りされ
る。又、昇降筒体６より下の機枠１には、図１乃至図３
に示されるように、水平支持体３９が水平に設けられ、
この水平支持体３９の一端部に一対の耳片３９ａが立上
がって形成されている。一対の耳片３９ａには、ファシ
ョニングカム装置２８の二股状をなす度調本体４０が支
軸４１で揺動自在に枢着されている。度調本体４０の第
１腕杆４０ａには、リング状をなすリフター部材４２が
突当ねじ杆４２ａを介して当接すると共に昇降筒体６の
当接片６ａを支承して昇降するように設けられている。
又、度調本体４０の第２腕杆４０ｂはファショニングド
ラム３６の各カム３６ｂ側へ僅かに傾斜しており、第２
腕杆４０ｂの基部に複数（図では７個）の腕杆４３がピ
ン軸４４で揺動自在に枢着されている。さらに、各腕杆
４３の自由端部は、ファショニングドラム３６のカム３
６ｂへ調整ねじ４５で編成領域に対応して度目調整する
ように当接している。腕杆４３は度調本体４０の第１腕
杆４０ａを介して昇降筒体６を昇降動作する。

【００２０】又、度調本体４０の反対側の水平支持体３
９には編地の編成度目を編成領域ごとに微調整するため
のリフター部材昇降機構が配設されている。このリフタ
ー部材昇降機構は、立設した断面が略Ｕ字状をなす支承
体４６を有し、この支承体４６の中程に垂直方向をなす
一対の条溝４７が支軸４１に平行に形成されている。
又、支承体４６の近傍の機枠１には、補助枠１ａが垂直
に立設されており、この補助枠１ａに調整槓杆４８がピ
ン軸４９で揺動自在に枢着されている。さらに、この調
整槓杆４９の一部には、補助レバー５０がピン５１で枢
着されており、この補助レバー５０の自由端部にローラ
５２が付設されている。さらに又、このローラ５２の位
置する上記調整槓杆４８の端部には、位置決め調整ねじ
５３が上記補助レバー５０を位置決めして支承するよう
に付設されている。調整槓杆４８の他端部は支承体４６
の底部へ延設されている。又、調整槓杆４８の他端部に
は、受けローラ５４が上記支承体４６へ嵌合すると共に
当接して付設されており、この受けローラ５４上には、
駒部材５５が当接すると共に支承体４６へ緩く嵌装され
ている。さらに、この駒部材５５の中程には、垂直方向
をなす一対の条溝５５ａが支承体４６の両条溝４７に平
行に形成されている。リフター部材４２の他端部４２ｂ
には、例えば、ボールベアリングのような一対のローラ
５６ａを有する昇降支軸５６が駒部材５５の両条溝５５
ａ及び支承体４６の両条溝４７に沿って昇降するように
跨がって設けられている。

【００２１】他方、上記補助枠１ａの一側部には、図３
に示されるように、パルスモータ５７が度目調整回路
（図示されず）によって駆動するように取付けられてい
る。パルスモータ５７の出力軸５７ａには、例えば、イ
ンボリュート曲線を有する円板状のカム部材５８が歯車
変速機構５９を介して補助レバー５０のローラ５２へ当
接するように設けられている。なお、図１に示されるよ
うに、ラチェット歯車３８の両側には、一対のブレーキ
板６０が制動を加えるように設けられている。

【００２２】以下、本発明の作用について説明する。

【００２３】１）． 度目調整作用 所定のファショニングカム３７を支軸３６ａに軸装し、
丸編機の運転を開始すると、ファショニングカム３７が
編成スタート位置から作動し、ラッキングカム装置２７
のラッキング杆３０及び送り杆３３を介して送り杆３３
に設けた送り爪３３ｃでラチェット歯車３８を一歯ごと
に間欠送りする。すると、ラチェット歯車３８と一体の
ファショニングカム３７が間欠的に回動し、ファショニ
ングカム３７に当接する度目調整レバー４３が支軸４４
の周りに揺動し、度目調整レバー４３に当接する度調本
体４０の第２腕杆４０ｂが支軸４１の周りに揺動し、度
調本体４０の第１腕杆４０ａがこれに当接された突当ね
じ杆４２ａを介してリフター部材４２を昇降支軸５６を
支点として昇降筒体６の当接片６ａを上下方向へ昇降
し、昇降筒体６が軸受２、２ａ及び昇降ピン４を介して
編針シリンダー３を昇降し、編針シリンダー３の編針２
０で給糸される編糸の度目を変化させながら設定された
所定の各編成領域をファショニング編成する。

【００２４】２）． 度目微調整作用 図４に示されるように、ストッキングのゴム部ｅ、パン
テイ部ｐ、ガータ部ｇ、レング部１、トウ部ｔ等の各編
成領域ごとに度目をさらに微調整するには、編成制御回
路（図示されず）による編成プログラムに基づいてパル
スモータ５７を駆動し、リフター部材昇降機構を作動さ
せ、パルスモータ５７に連動するカム部材５８でローラ
５２を押動し、このローラ５２の調整槓杆４８をピン軸
４９の周りに回動し、この調整槓杆４８の受けローラ５
４でリフター部材４２の突当ねじ杆４２ａの当接部を支
点として駒部材５５及び昇降支軸５６を両条溝４７、５
５ａに沿って僅かに上下動し、このリフター部材４２の
各受座４２ｃで昇降筒体６の当接片６ａを上下方向へ僅
かに昇降し、この昇降筒体６で軸受２、２ａ及び各昇降
ピン４を介して編針シリンダー３を僅かに昇降する。

【００２５】このように、本発明は各編成領域ごとに対
応して度目を自動的に微調整し、ストッキングのゴム部
ｅ、パンテイ部ｐ、ガータ部ｇ、レング部１、トウ部ｔ
を編糸の度目を変化させながら寸法精度や品質向上を図
っている。

【００２６】なお、本発明の度目微調整装置は、カム部
材を適用した具体例について説明したけれども、本発明
の要旨を変更しない範囲内で、例えば、リンク機構やパ
ルスモータを使用した調整螺杆に設計変更することは自
由である。

【００２７】

【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、製品
の編成領域ごとに編成制御回路による編成プログラムに
基づいて編成された編地の編成度目を自動的に微調整す
ることで、良好なフィット性のある製品を編成できるば
かりでなく、編成される糸の度目を変化させながら製品
の品質や寸法精度の向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の丸編機における度目微調整装置の一部
を破截して示す正面図。

【図２】同上平面図。

【図３】本発明の丸編機における度目微調整装置の斜視
図。

【図４】丸編機で編成されるストッキングの各編成領域
を説明するための図。

【図５】従来の丸編機における度目調整装置の一部を破
截して示す正面図。

【符号の説明】

１ 機枠 ３ 編針シリンダー ６ 昇降リング ２７ ラッキングカム装置 ２８ ファショニングカム装置 ３９ 水平支持体 ４０ 度調本体 ４２ リフター部材 ４６ 支承体 ４７ 条溝 ４８ 調整槓杆 ５２ ローラ ５５ 駒部材 ５６ 昇降支軸 ５７ パルスモータ ５８ カム部材

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ラッキングカム装置及びファショニングカ
   ム装置による度目調整装置を備え、度目調整装置により
   編針シリンダを支持する昇降筒体を昇降して編針シリン
   ダにより編成される編地の編成度目を編成領域ごとに調
   整する丸編機において、上記昇降筒体より下の機枠に設
   けられた水平支持体と、この水平支持体の一端部に枢着
   された上記ファショニングカム装置の度調本体と、一端
   部を度調本体の一部に支持しかつ中間部で昇降筒体を支
   持するように昇降筒体と水平支持体の間に配置されたリ
   フター部材と、リフター部材の他端部を上下方向に移動
   自在かつ揺動自在に支持するように上記度調本体と反対
   側に配置されたリフター部材昇降機構と、リフター部材
   昇降機構を度目調整回路からの度目微調整信号に応じて
   駆動するパルスモータとを具備し、ファショニングカム
   装置の度調本体の揺動によりリフター部材を昇降して編
   地の編成度目を編成領域ごとに調整し、リフター部材昇
   降機構の作動により昇降したリフター部材をさらに昇降
   させて編地の編成度目を編成領域ごとに微調整すること
   を特徴とする度目微調整装置。