JP2701526B2 - Fe―Ni系高透磁率磁性合金およびその製造方法 - Google Patents

Fe―Ni系高透磁率磁性合金およびその製造方法

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JP2701526B2 JP2276559A JP27655990A JP2701526B2 JP 2701526 B2 JP2701526 B2 JP 2701526B2 JP 2276559 A JP2276559 A JP 2276559A JP 27655990 A JP27655990 A JP 27655990A JP 2701526 B2 JP2701526 B2 JP 2701526B2
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Description

【発明の詳細な説明】 「発明の目的」 本発明は、Fe−Ni系高透磁率磁性合金に係り、その磁
性特性などの性能を改良し、特にJIS−PB相当のNi量
で、JIS−PCにせまる直流磁気特性を有し、かつJIS−PB
並の高い飽和磁束密度を有し、成形性に優れたFe−Ni系
高透磁率磁性合金およびその製造法を提供しようとする
ものである。
(産業上の利用分野) Fe−Ni系高透磁率磁性合金およびその製造技術。
従来の技術 Fe−Ni系高透磁率磁性合金は、磁気ヘッド用シールド
ケース、シールドカバー、各種シールド板といった用途
の磁気シールド部材として広く用いられている。
その中でも、Mo、Cuなどを含む高Niパーマロイ(JIS
−PC)および低Niパーマロイ(JIS−PB)が多く用いら
れている。前者は高透磁率を有しているが、Niを80%近
く含み、さらに高価なMoをも含有しているため、他の磁
性合金に比べて高価であるという欠点がある。一方、後
者では、Ni量が約45%であるため、JIS−PCに比べて安
価で、かつ1000A/mにおける飽和磁束密度B1000が14,500
ガウスと高いが、反面透磁率はJIS−PCに比べて低いと
いう欠点がある。このような45Ni−Feを磁気シールド部
材として用いる場合、透磁率の低さからくる磁気シール
ド性能の限界より、用途は限定せざるを得ないのが現状
である。このようにJIS−PCとJIS−PBでは一長一短があ
るため両者の欠点を補い合うような透磁率および飽和磁
束密度が高くてかつ安価な材料が望まれていた。特に、
現在JIS−PCを使用しているものの中には、JIS−PCの極
めて高い透磁率は必要ないにもかかわらず、JIS−PBの
透磁率では不十分であるため、やむを得ずJIS−PCを使
用し、コスト高になっている例が多くみられる。
また、パーマロイは各種シールド部品に成形加工され
るが、その際には成形性に優れた材料が必要とされてい
る。
以上の磁性材料に対する要求特性をまとめると以下の
4点になる。
(1) 透磁率が高いこと。
(2) 磁束密度が高いこと。
(3) 成形性に優れていること。
(4) 価格が安いこと。
これらの要望に対して、以下に示す3つの開示技術が
提供されている。つまり、(a)特開平1−252756で
は、Ni:36〜52%の合金に、Crを0.5〜8%添加し、交流
磁気特性の向上を図っており、また(b)特開昭62−14
2749では、Niが40〜50%の合金で、O,Sを極低レベルと
することにより透磁率の向上、プレス打抜き性の向上を
目的としている。更に(c)特開平2−225621ではNi:3
4〜65%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Mo、Cu、Cr、
V、Nb、Ta、W、Ti、Zrの1種または2種を合計10%以
下添加した素材を90%以上の最終冷間加工率とし、次に
磁気焼鈍を施し高い直流磁気特性を得るというものであ
る。
(発明が解決しようとする課題) 上記したように従来提案されている(a)〜(c)の
技術においては、上述したような(1)〜(4)の各特
性をすべて満足するものがない。即ち(a)の特開平1
−252756の技術では、交流磁気特性はJIS−PCは、同等
かまたはそれ以上の値を示しているものの、直流での透
磁率、保磁力の向上はあまりみられておらず、その値の
レベルは依然として、JIS−PBの値のレベルにある。ま
た、前記(b)の特開昭62−142749ではJIS−PCにせま
るμmを有しているが、μi、Hcといった直流磁気特性
や、成形性の向上は達成されていない。さらには、この
技術では、耐食性や耐摩耗性向上のため、Cr、Mo、W、
Co、Ca、Mn、Cu、V、Nb、Ta、Ti、Al、Si、Mg及び希土
類金属を総量で10%以下含有することが開示されている
が、実は、上記のうち、例えば、Ti、Al、Ca、Mgといっ
た元素の添加は直流の透磁率、保磁力を著しく劣化させ
てしまう元素であり、このようなものは直流磁気特性に
対しては極めて有害な元素である。(c)の特開平2−
225621ではJIS−PCにせまるμi、μmを有している
が、この技術で特徴としている90%以上の冷間加工を施
した素材は硬度(Hv)で250以上と高硬度であるため、
成形性が極めて劣るという問題を有している。更には、
この技術では磁気特性の向上のため、Mo、Cu、Cr、V、
Nb、Ta、W、Ti、Zrの1種または2種の合計で10%以下
添加することが開示されているが、実は上記のうち、Ti
といった元素の添加は直流の透磁率、保磁力を著しく劣
化させてしまう元素であり、このようなものは直流磁気
特性に対して極めて有害な元素なのである。
以上のように、従来のPB級のパーマロイでは、上記し
た(1)〜(4)の4つの要求特性をすべて満足するこ
とができない。
(課題を解決するための手段) 本発明は上記したような実情に鑑み検討を重ねて創案
されたものであって、前述したような(1)〜(4)の
各要求特性を共に満足することに成功したものであっ
て、以下の如くである。
1. Ni:42〜47wt%、Cu:2〜4wt%未満、 Cr:0.3〜1.5wt%、 C:0.010wt%以下、 Mn:0.1〜1.0wt%、Si:0.10〜0.30wt%、 P:0.010wt%以下、 O:0.0030wt%以下、 N:0.0015wt%以下、 S:0.0020wt%以下、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から成ることを
特徴とし、磁気特性、成形性に優れたFe−Ni系高透磁率
磁性合金。
2. Ni:42〜47wt%、Cu:2〜4wt%未満、 Cr:0.3〜1.5wt%、 C:0.010wt%以下、 Mn:0.1〜1.0wt%、Si:0.10〜0.30wt%、 P:0.010wt%以下、 O:0.0030wt%以下、 N:0.0015wt%以下、 S:0.0020wt%以下、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から成るFe−Ni
系合金の薄鋼帯を熱間圧延とそれに続く熱延板焼鈍およ
びその後の冷間圧延およびこれに続く再結晶焼鈍工程の
組み合わせを1回以上行い、最終工程を冷間圧延工程に
よって製造するに際して熱間圧延での圧延終了温度を90
0℃以上とすることを特徴とするFe−Ni系高透磁率磁性
合金の製造方法。
3. 熱間圧延での圧延終了温度を900℃以上とすると共
に熱延板焼鈍温度を950〜1050℃とすることを特徴とす
る請求項2に記載のFe−Ni系高透磁率磁性合金の製造方
法。
4. 熱間圧延での圧延終了温度を900℃以上とすると共
に熱延板焼鈍温度を950〜1050℃とし、冷延焼鈍工程に
おける最終の再結晶焼鈍温度を700〜800℃とすることを
特徴とする請求項2に記載のFe−Ni系高透磁率磁性合金
の製造方法。
5. 熱間圧延での圧延終了温度を900℃以上とすると共
に熱延板焼鈍温度を950〜1050℃とし、冷延焼鈍工程に
おける最終の再結晶焼鈍温度を700〜800℃となし、最終
の冷間圧延圧下率を2〜6%とすることを特徴とする請
求項2に記載のFe−Ni系高透磁率磁性合金の製造方法。
(作用) 本発明によるものは、JIS−PB相当のNi量で、JIS−PB
なみのB1000を有し、しかもJIS−PCにせまるμi、μm
を示し、成形性は従来のPBパーマロイより優れたもので
あって、その成分組成限定理由はwt%(以下単に%とい
う)で説明すると、以下の如くである。
Niはそれが42%未満、または47%超えでは後述するC
u、Crの適量添加などによっても透磁率、保磁力が本発
明で目的とするレベルまで向上しないので42%を下限と
し、47%を上限とした。
Cu、Crは、Niが42〜47%の範囲のとき、後述のC,P,O,
N,Sの不純物元素低減のもとで、それらが適量添加され
ることによりB1000の低下は小さく、しかもμi、μm
を飛躍的に向上せしめる元素である。
即ち、第1図はC,P,O,N,Sが本発明規定範囲内で、N
i、Cu量と直流磁気特性成形性の関係をCr量別に示した
ものであるが、該図(b)の0.3≦Cr≦1.5%の場合で、
Ni、Crが共に本発明規定範囲内のときに高い直流磁気特
性、高い成形性が得られていることは明かである。一方
Crが1.5%を超える場合、又は0.3%未満の場合は同図
(a)の本発明範囲で得られるような高い磁気特性、成
形性が得られないため、このようなCr量範囲は本発明範
囲外である。なお図中のErはエリクセン値を示す。又Mo
は本発明で目的とした高い磁気特性を得るには有害な元
素である。
このCu添加量が2%未満および4%超えではこれらの
効果が適切に得られないので2〜4%未満と定めた。な
おμi、μmをより高レベルとするためのCu量範囲は2.
5〜3.5%である。
本発明で意図するμi、μmの向上及び他の特性の向
上は上記のようなNi、Cu、Cr量の適正化のもとで、C,P,
O,N,Sの低減が必要である。すなわち、Cは、0.010%を
越えると熱間加工性が劣化し、絞り成形性も劣化、かつ
透磁率も本発明で意図するレベルまで到達できなくなる
ため、0.010%を上限とした。なお、μi、μmをより
高レベルとするに好ましいC量は、0.0020%以下であ
る。
Pは、本発明で対象とするCu、Cr添加のFe−Ni合金に
おいては、熱間加工性を著しく劣化させ、成形性も劣化
し、かつμi、μmに有害な元素である。このPが、0.
0100%を越えると、熱間加工性が著しく劣化せしめ、成
形性も劣化し、かつ、μi、μmも本発明で意図するレ
ベルに比べて著しく低くなるため、0.0100%を上限とし
た。なお、μi、μmをより高いレベルとするための好
ましいP量は0.0020%以下である。
Oは、非金属介在物の形成を通じて、最終の磁気焼鈍
時の粒成長を抑制し、μiやμmを劣化させるため、磁
気特性からは有害な元素であり、また成形性に対しても
有害な元素である。即ち、このOが0.0030%を越える
と、μi、μmが本発明で目的とするレベルに比べて著
しく低くなり、成形性も劣化するため、0.0030%を上限
とした。なお、μi、μmをより高いレベルとするため
の好ましいO量は0.0005%以下である。
Sは、本発明で対象とするCu、Cr添加のFe−Ni合金に
おいては、熱間加工性を著しく劣化させ、かつ、硫化物
の形成を通じて最終の水素焼鈍時における粒成長を阻害
し、焼鈍後の粒径が小さいため保磁力が大きくなった
り、磁化物により磁区が移動し難くなるためμi、μm
が低くなり、磁気特性に対しても極めて有害な元素であ
り、成形性に対しても有害な元素である。このS量が0.
0020%を越えると、熱間加工性が著しく悪くなり、成形
性を劣化し、μi、μmも本発明で意図するレベルに比
べて著しく低くなるため、0.0020%を上限とした。な
お、μi、μmをより高レベルとするための好ましいS
量は、0.0005%以下である。
Nは、合金中に多く含まれる時、μi、μmを劣化さ
せる元素である。N量が0.0015%を越えるとμi、μm
の劣化が著しくなり、成形性も劣化するためNの上限は
0.0015%と定めた。なお、この本発明範囲においてもμ
i、μmをより高めるための好ましいN量は0.0005%以
下である。
Mnは、合金中のSを固定し、熱間加工性、磁気特性を
向上せしめる元素であって、0.1%未満ではこれらの効
果が得られず、一方1.0%を越えると逆にマトリックス
が強化し熱間加工性、成形性が劣化し磁気特性を劣化す
るので0.1%、1.0%をそれぞれ上、下限とした。
Siは有効な脱酸元素であり、0.10%未満ではO量が0.
0030%以下まで脱酸できず、0.30%を越えると、μi、
μmが劣化し、成形性も劣化するため、Siの下限と上限
は、それぞれ0.10%、0.30%と定めた。
Crは、本発明で対象とするCu、Cr添加のFe−Ni合金に
おいては、上記のような、C,P,O,N,Sの低減のもので、
微量レベルまで直流磁気特性を著しく向上させ、かつ成
形性を向上させる元素である。すなわち、第2図および
第3図に示すように、Niが42〜47%のNi合金で、2〜4
%未満添加された合金において、C,P,O,N,S,Siを本発明
規定内とした合金では、Crが0.3%以上、1.5%以下で直
流磁気特性は飛躍的に向上し、成形性も向上する。な
お、Crが0.3%未満では、μi、μm、および成形性の
向上が達成されず、一方、1.5%を越えると、B1000やμ
i、μm、成形性が劣化する。以上の理由により、本発
明におけるCr量は0.3〜1.5%範囲内と定めた。
なお他の成分については特に規定しないが、Moは0.3
%以下の含有が許容される。
上記したような本発明合金に関して、本発明で意図す
る高透磁率は、上記の成分規定に加えて、製造条件をよ
り適正化することにより、さらに向上させることができ
る。
すなわち、この技術のポイントは熱延条件、熱延板焼
鈍温度、冷延・焼鈍工程における最終焼鈍温度、及び最
終の冷間圧延の圧下率の適正化にある。
熱延においては、圧延終了温度を900℃以上とした材
料を950〜1050℃範囲で熱延板焼鈍を施すことにより、
最終のH2焼鈍後の磁気特性の向上、すなわち、μi、μ
mのさらなる向上、保磁力(以下Hcと略称する)のさら
なる低下が可能となる。この理由としては、上記の処理
により磁気特性に好ましい集合組織が形成される、介在
物が最終のH2焼鈍時に、純化するに際してより好ましい
サイズに破砕されるということが効いている。さらには
このような熱延条件及び熱延板焼鈍を上記の条件にて行
なうことにより、冷延時のエッヂ割れを少なくすること
ができ、製造時の歩留りを向上することも可能となる。
上記の製造条件に加えて、冷延・焼鈍工程における最
終の再結晶焼鈍温度を700〜800℃とし、かつその後の冷
間圧延の圧下率を2〜6%とすることで、さらに磁気特
性の向上、すなわち、μi、μmの向上、Hcの低下を達
成させることができる。
すなわち、上記の最終の再結晶焼鈍温度が700〜800℃
では、本発明で規定された成分の合金では、100%再結
晶でかつ、細粒の組織となるため次の2〜6%の圧下率
の冷間圧延による歪の付加により、最終のH2焼鈍時での
結晶粒の成長が促進され、μi、μmが向上する。
最終の再結晶焼鈍温度が700℃未満では100%再結晶せ
ず、最終のH2焼鈍時での粒成長が阻害されるため本発明
で意図するさらなる磁気特性の向上が図れず、一方、最
終の再結晶焼鈍温度が800℃を越えると、100%再結晶は
するものの結晶粒が粗大化し、次工程での、適正な冷間
圧延による歪の付加を施しても、最終のH2焼鈍時のさら
なる粒成長の促進効果が得られないため、700℃、800℃
をそれぞれ本発明における下限、上限に定めた。
最終の冷間圧延は、最終のH2焼鈍での一層の粗粒化に
よるμi、μmの向上を図るためには前記の最終の再結
晶焼鈍温度の適正化と合わせて、必須の規定条件であ
る。すなわち、最終の冷間圧延での圧下率が2〜6%で
は、この冷延前の結晶粒が細粒の条件下で、最終のH2
鈍時の歪粒成長効果が付与される。従来より、歪付加に
よる焼鈍時での粒成長の促進効果は知られていたが、本
発明で対象としているようなCu、Crが添加され、又不純
物元素が低減された合金において、この効果が上記範囲
に存在することはこれまで知られていなかった。なお最
終の冷間圧延での圧下率が2%未満では、歪粒成長効果
があらわれず、一方、圧下率が6%を越えると、最終の
H2焼鈍で逆に細粒化傾向もあらわれて、μi、μmが逆
に低下するので、最終の冷間圧延での圧下率の下限、上
限はそれぞれ2%、6%と定めた。
(実施例) 本発明によるものの具体的な実施例について説明する
と以下の如くである。
実施例1 次の第1表に示すような化学成分を有する高Ni−Fe合
金の本発明合金および比較合金を真空溶解にて溶解し、
これを熱間加工、脱スケールを施し、冷延素材を準備し
た。Mo量は0.2%以下である。又これらの素材は次いで
冷延加工、焼鈍して0.5mmの薄板サンプルとし、これら
より外径が45mmで内径33mmのJISリングを打抜き試料と
した。又磁気特性をこれらの試料について、パラジウム
膜を透過させ精製した高純度水素気流中雰囲気下におい
て1100℃で3時間の熱処理を行い、その後は供試材No.4
炉冷(100℃/hr)させて、また供試材No.4以外は急冷
(1000℃/hr)させて、磁気特性(μi、μm、Hcおよ
びB1000)を測定した。なお、B1000は1000A/mでの磁束
密度である。
また熱間加工性は、第1表に示した合金の鋼塊(厚さ
70mm)を1150℃に加熱し、最終板厚5mmまで熱間圧延を
行い、該熱延板のエッヂ部における割れの発生状態を観
察して調査した。一般に熱間加工性が悪い場合にエッヂ
部に割れが発生し易くなることは経験的に知られてい
る。
なお、エリクセン試験は前記の0.5mmの焼鈍した薄板
サンプルにより行った。
磁気シールド性は板厚0.5mmの薄板サンプルより外径5
0mm、長さ150mmの円筒を作製し、上記と同様の磁気焼鈍
を施したのち、外部磁場1.0Oe、周波数50Hzの磁界を円
筒の軸方向に垂直にかけた際の円筒長手中央部でかつ中
心における磁場を計り下式に代入することにより求め
た。
(磁気シールド性能)=−20log(H1/H0) 〔但し、H1は円筒長手中央部、中心での磁場、H0=外部
磁場(1Oe)〕 即ち、No.1〜No.3、No.5の各材ともNi、Cu、Cr、C、
Mn、Si、P、O、N、Sは本発明の規定内にある発明合
金であり、μiは30,000以上、μmは190,000以上、B
1000は13,500G以上、磁気シールド性能は55dB以上、成
形性は後述の比較合金に比べて優れており、熱延時のエ
ッジ割れもなく、本発明で意図する磁気特性、成形性、
熱間加工性をすべて満たしている。なおこの場合、磁気
焼鈍後の冷却速度は急冷(1000℃/hr)であり、このよ
うな処置下でも高い磁気特性を示すことが本発明材の特
徴でもある。またNo.4材は、No.3材と同一成分の材料を
磁気焼鈍後の冷速を100℃/hrと除冷下で処理したもので
あるが、この場合でも、本発明で意図する磁気特性、成
形性、熱間加工性を満たしている。特にNo.3の材料は、
S、P、O、Nが他の発明例に比べてより好ましいレベ
ルまで低減されているものであり、μi、μm、Hc、成
形性が、その他の本発明例に比べてより優れたレベルに
なっている。
またNo.1〜No.5の発明例では、後述の比較例に比べて
磁気シールド性能に優れていることも特徴である。
これに対して、No.6の材料ではNiが本発明規定上限を
越えるもの、No.7の材料では、Niが本発明規定下限未満
のものであり、いずれの場合でもμi、μm、Hc、B
1000、加工性は本発明例に比べて劣っている。No.8の材
料では、Cuが本発明規定を越えるものであり、No.9の材
料では、Cuが本発明規定未満のものであって、No.10の
材料は、Crが本発明規定を越えるもの、No.11はCrが本
発明規定範囲未満のもの、No.12、No.15、No.17〜No.19
の各材はC、Si、P、N、Sのいずれかが本発明規定の
上限を越えるものであり、これらの材料では磁気特性、
成形性、エッヂ割れの1つ以上の特性が劣っており、本
発明で目的とする効果は得られていない。又No.13の材
料はMnが本発明規定範囲の上限を超えるものであり、N
o.14の材料はMnは本発明規定未満のものであって、磁気
特性、熱間加工性は本発明例に比較して劣っている。
なお、No.16の材料では、Siが本発明規定未満の場合
であり、この場合は脱酸が不十分となり、Oが、本発明
規定の上限を越えていて、磁気特性、成形性は、本発明
例に比べて、やはり劣っている。
以上のように、Ni、Cu、Cr、C、Mn、Si、P、O、
N、Sを本発明規定範囲内にしなければ、本発明で意図
する磁気特性、成形性、エッヂ割れ(熱間加工性)のす
べてを満足させることができないことが理解される。
なお、比較合金No.20〜No.24の各材は、Ni、Cu、Cr、
C、Mn、Si、P、O、N、Sが本発明範囲内にあり、そ
れぞれTi、Al、Co、Ca、Mgが添加されたものであるが、
これらの材料ではμi、μm、Hcといった磁気特性はは
るかに悪いレベルにあり、磁気シールド性能も本発明例
に比べて著しく劣っている。またNo.20〜No.24の材料の
成形性も本発明例に比べて低い。さらには、比較合金N
o.20、No.23、No.24は、熱延時のエッヂ割れもみられて
おり、熱間加工性の劣化もみられている。
このように特開昭62−142749で開示されている耐食性
や耐摩耗性を向上させるTi、Al、Co、Ca、Mgの元素が添
加された場合、または特開平2−225621で開示されてい
る磁気特性を向上させるTi元素が添加された場合でも直
流磁気特性、成形性が劣化することが明らかである。ま
た、Ti、Ca、Mgが表1に示す量を添加される場合、熱間
加工性の劣化が認められている。
本発明は、上記したような実施例の製造方法のみでな
く、溶解・溶製して薄鋳板に鋳造し、鋳造のまま、又は
熱間加工後およびまたは脱スケールし、冷延加工、焼鈍
しても良い。
熱間加工に代えて、または冷間加工の高能率化のため
に温間加工を施しても良い。但し表面性状、板厚形状、
寸法精度が要求される場合は、最終焼鈍の前に冷延加工
を施した方が好ましい。これらのような製造方法であっ
ても、本発明の規定範囲以内であればほぼ同等のものが
得られる。
実施例2 上記した実施例1で用いた合金No.3(発明合金)と、
合金No.19(比較合金)の分塊スラブを1100℃に加熱
し、熱間圧延を行なってから、場合により熱延板焼鈍を
なし、引き続く冷間圧延の後に再結晶焼鈍を行ない、そ
の後、場合により冷間圧延を施し、最終板厚0.5mmの薄
板サンプルとした。各サンプルの熱延仕上げ温度、熱延
板焼鈍温度、最終の再結晶焼鈍温度、最終の冷間圧延率
は、それぞれ次の第2表に示す条件である。これら薄板
サンプルより、外径が45mmで内径33mmのJISリングを打
抜き、磁気特性測定用サンプルとした。また、エリクセ
ン試験用サンプルも採取した。また磁気シールド性能を
評価用円筒(実施例と同じ寸法)も用意した。磁気焼鈍
は磁気特性測定用サンプル及び磁気シールド性能評価用
サンプルについて行なった。磁気焼鈍は、パラジウム膜
を透過させ精製した高純度水素気流中雰囲気下におい
て、1100℃で3時間の熱処理を行ない、その後は急冷
(1000℃/hr)させて、磁気特性(μi、μm、Hc及びB
1000)を測定した。成形性、及び磁気シールド性能評価
は実施例1と同じ方法にて調べた。
なお、エリクセン試験は前記の0.5mmの薄板サンプル
により行った。
本発明合金のNo.3のものを用いる場合、エリクセン値
性はいずれの製造条件においても優れたレベルにある
が、磁気特性(μi、μm、Hc)、磁気シールド性はサ
ンプルNo.1〜9の各材のように、熱延仕上げ温度を本発
明に規定することにより、一層優れたレベルにすること
が可能で、更には、サンプルNo.1〜6の各材のように、
熱延仕上げ温度を本発明規定内としたサンプルの中で
も、熱延板焼鈍温度を本発明規定内とすれば、磁気特
性、磁気シールド性をより優れたレベルにすることが可
能であり、又サンプルNo.1〜4の各材のように、熱延仕
上げ温度、熱延板焼鈍温度を本発明規定範囲内としたサ
ンプルの中でも、最終の再結晶焼鈍温度を本発明規定範
囲内とすれば、磁気特性、磁気シールド性をより優れた
レベルにすることが可能である。更に、サンプルNo.1〜
No.2の各材のように、熱延仕上げ温度、熱延板焼鈍温
度、最終の再結晶焼鈍温度を本発明規定範囲内としたサ
ンプルの中でも、最終の冷間圧延率を本発明規定内とす
れば、磁気特性、磁気シールド性をより優れたレベルに
することができる。
一方、サンプルNo.12材は比較合金を用いた場合であ
り、製造条件は本発明規定範囲内であるにもかかわら
ず、本発明で意図する磁気特性、成形性は得られていな
い。すなわち、本発明の目的とする特性の向上は、合金
成分の本発明規定範囲内とすることが必要であることが
理解される。
以上のように本発明で規定された成分を有し、かつ本
発明で規定した製造条件を採ることにより、本発明合金
を用いる場合の中でもより高い磁気特性を発揮し得るこ
とが明らかである。
また、本発明法によれば、上記のように通常の磁気焼
鈍条件を戻り、JIS−PCに迫る磁気特性を有している
が、例えば、JIS−PB程度の磁気特性で十分な場合は、
従来のPBパーマロイで行なっているよりも磁気焼鈍温度
を低温化することができる。
「発明の効果」 以上説明したような本発明によるときは、Fe−Ni系の
高透磁率磁性合金における磁気性質などの特性を適切に
改善し、特にJIS−PB相当のNi量にJIS−PB並みのB1000
を確保し、かつJIS−PCに迫るμi、μmを有し、又成
形性および熱間加工性が共に良好で、冷延時のエッヂ割
れも少なくすることができ、製造時の歩留りを向上する
ことも可能な高透磁率磁性合金を提供せしめ、従って従
来において、JIS−PCを使用していた各種磁気シールド
材や磁気ヘッドケース、コア類などに使用することも可
能となり、更には、従来JIS−PBを使用していた上記の
各種磁気シールド材や磁気ヘッドケース、コア類などで
より高いシールド特性が要求される場合にも、対応する
ことができ、加うるに、従来のJIS−PB程度の磁気特性
が要求される場合には、従来のPBパーマロイに比べて磁
気焼鈍温度を低温化することが可能であるなどの効果を
有し、近時におけるエレクトロニクス産業の要請に対し
て適切に即応し得るものであるから工業的にその効果の
大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の技術的内容を示すものであって、第1図
は直流磁気特性、成形性とNi、Cu、Cr量の関係を示した
図表、第2図は直流磁気特性とCr量の関係を示した図
表、第3図は成形性とCr量との関係を示した図表であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大北 智良 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−24348(JP,A) 特開 昭49−49803(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ni:42〜47wt%、 Cu:2〜4wt%未満、 Cr:0.3〜1.5wt%、 C:0.010wt%以下、 Mn:0.1〜1.0wt%、 Si:0.10〜0.30wt%、 P :0.010wt%以下、 O:0.0030wt%以下、 N :0.0015wt%以下、 S:0.0020wt%以下、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から成ることを
    特徴とし、磁気特性、成形性に優れたFe−Ni系高透磁率
    磁性合金。
  2. 【請求項2】Ni:42〜47wt%、 Cu:2〜4wt%未満、 Cr:0.3〜1.5wt%、 C:0.010wt%以下、 Mn:0.1〜1.0wt%、 Si:0.10〜0.30wt%、 P :0.010wt%以下、 O:0.0030wt%以下、 N :0.0015wt%以下、 S:0.0020wt%以下、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から成るFe−Ni
    系合金の薄鋼帯を熱間圧延とそれに続く熱延板焼鈍およ
    びその後の冷間圧延およびこれに続く再結晶焼鈍工程の
    組み合わせを1回以上行い、最終工程を冷間圧延工程に
    よって製造するに際して熱間圧延での圧延終了温度を90
    0℃以上とすることを特徴とするFe−Ni系高透磁率磁性
    合金の製造方法。
  3. 【請求項3】熱間圧延での圧延終了温度を900℃以上と
    すると共に熱延板焼鈍温度を950〜1050℃とすることを
    特徴とする請求項2に記載のFe−Ni系高透磁率磁性合金
    の製造方法。
  4. 【請求項4】熱間圧延での圧延終了温度を900℃以上と
    すると共に熱延板焼鈍温度を950〜1050℃とし、冷延焼
    鈍工程における最終の再結晶焼鈍温度を700〜800℃とす
    ることを特徴とする請求項2に記載のFe−Ni系高透磁率
    磁性合金の製造方法。
  5. 【請求項5】熱間圧延での圧延終了温度を900℃以上と
    すると共に熱延板焼鈍温度を950〜1050℃とし、冷延焼
    鈍工程における最終の再結晶焼鈍温度を700〜800℃とな
    し、最終の冷間圧延圧下率を2〜6%とすることを特徴
    とする請求項2に記載のFe−Ni系高透磁率磁性合金の製
    造方法。
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