JP2700556B2 - コイル用電線 - Google Patents

コイル用電線

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、高周波コイル,トランス等の巻線用電線と
して好適な自己融着型着束電線に関するものである。
〔従来の技術〕
高周波コイルやトランスなどの巻線に使用される電線
は、導体の表皮効果或は渦電流などに起因して発生する
損失を低減する目的から、多数本の細径絶縁導体素線
(以下、素線と略記する)の撚り線、例えば多数本の素
線を互に撚り合せ、各素線が撚り線の断面のすべての位
置を順次占めるよう形成したリッツ線、或は多数本の素
線を同芯撚り又は集合撚りして束ねた集合撚り電線など
が、従来から広く採用されている。また、用途によって
は、これらリッツ線や集合撚り電線に代えて、複数本の
素線を、単に、平行に断面略円形状に集束して素線集束
体を形成し、この素線集束体の外周に熱可塑性樹脂の塗
布焼付融着層を施してなる自己融着型集束電線が使用さ
れている。
この自己融着型集束電線は、リッツ線或は集合撚り電
線と比較した場合、素線の撚り合せが省かれている点
で、巻線用電線として下記の如き特徴、利点を有してい
る。
電線の可撓性に優り、コイル等に加工するときの巻線
性、成型性に優れる。
コイル等の成型において素線密度を高く形成できるた
め、コイルの導体占積率が向上する。
撚り合せのない分素線長が短く、導体抵抗が低減す
る。
撚り合せ工程中に電線の受ける加工劣化の恐れが除か
れ、電線の品質信頼性が向上する。
〔発明が解決しようとする問題点〕
かかる自己融着型集束電線にあっては、集束電線を構
成する各素線の1本1本がたるみ或はばらけなどの配列
乱れを生ずることなく、平行に外形円形状に正しく配列
集束されていることが品質上の必須条件である。集束電
線内の素線のたるみ、ばらけは、自己融着型集束電線を
製造する工程内における断線トラブル発生の原因となる
ばかりか、これを用いたコイル等の巻線,成型の工程中
における断線事故発生の原因ともなる。この素線のたる
みやばらけの発生する大きな要因としては、集束電線や
製造工程中の各素線に加わる張力の不均衡が挙げられ
る。そこで、この素線のたるみ、ばらけを防止するた
め、自己融着型集束電線の製造工程においては、各素線
に適正な張力が安定して付与されるよう張力調整装置を
設け、また各素線が平行に外形円形状に正しく集束され
るよう誘導するための素線集束ガイド装置を設けるな
ど、製造工程全般にわたって様々な工夫改善がなされて
いる。
ところが、これまでの自己融着型集束電線は、複数本
の素線を平行に外形円形状に形成した素線集束体外周上
に、直接熱可塑姓樹脂塗料を複数回繰返し塗布乾燥し所
要厚さの融着層を得る構成のものであった。このため、
素線集束体が素線のたるみやばらけなく正しく集束され
たものであっても、融着層の形成段階で、一旦乾燥固化
した融着皮膜が次層の融着皮膜の乾燥工程中の熱により
再軟化し、この融着皮膜の軟化した状態で素線集束体に
振動等が加わると、振動の状況によっては集束していた
素線群にばらけを生ずることがあった。更に、このばら
けた素線が乾燥炉を出て引取りキャプスタンを通過する
とき、キャプスタンに接する内側の集束電線素線には圧
縮力が、また外側の集束電線の素線には伸長力が加わる
結果、素線のばらけは一層助長され素線のたるみとなっ
て表われた。
かかる素線のたるみ、ばらけを未然に防止することが
自己融着型集束電線を製造する上での重要な課題であっ
た。
〔問題点を解決するための手段〕
上記課題を解決するため、本発明のコイル用電線は、
絶縁導体素線の複数本を、素線長手方向に平行に集束
し、断面略円形状に形成した素線集束体若しくは素線集
束体の層芯径の略100倍以上の極めて粗い撚りを付与
し、断面略円形状に集束した素線集束体の外周に、コイ
ル成型工程では該素線集束体の形を崩すが乾燥工程では
該素線集束体を保形するための熱硬化性樹脂を含む熱可
塑性樹脂からなる薄膜層を形成し、次にこの薄膜層の外
周に、加熱融着性を有する熱可塑性樹脂の融着層を施し
たものである。
〔作 用〕
上記構成の如く、本発明のコイル用電線においては、
素線集束体外周上に施した熱硬化性樹脂を含む熱可塑性
樹脂薄膜層によって、素線集束体はその形状を確実に保
形され、加えて次の工程の熱可塑性樹脂融着層の乾燥工
程においても、熱硬化性樹脂を含む熱可塑性樹脂薄膜層
に軟化を生ずることがないため、素線集束体の形状が保
形維持され、最早素線にたるみやばらけを生ずることが
なくなる。
更に、上記の素線集束体を保形する熱硬化性樹脂を含
む熱可塑性樹脂薄膜層はその皮膜厚さを出来得る限り薄
く、0.5〜5μに形成される。従って、本発明のコイル
用電線を用い、コイルを形成する場合であっても、集束
電線を外形円形状に保形している熱硬化性樹脂を含む熱
可塑性樹脂薄膜層は、コイルの成型時の成型圧により容
易に崩れ、集束電線の円形形状が崩れて、集束電線を構
成する各素線は互に密に配設され、コイルの導体占積率
を向上せしめることができる。
〔実施例〕
以下、本発明のコイル用電線の実施例を、第1図の本
発明のコイル用電線断面図、及び第2図の本発明コイル
用電線の製造工程説明図に沿い説明する。
導体3上にポリウレタン樹脂或はポリエステル樹脂な
どの絶縁皮膜4の施された絶縁導体素線5は所要の複数
本をそれぞれ供線リール8に巻かれ設置される。供線リ
ール8から導出された各素線5は張力調整装置9を経由
し、これにより各素線5間の張力平衡がとられるととも
に各素線5に生ずる張力変動が吸収される。次いで各素
線5は素線集束ガイド装置10を通り、ここで平行に外形
円形状に集束され、素線たるみやばらけのない素線集束
体2が形成される。形成された素線集束体2は、熱硬化
性樹脂混合熱可塑性樹脂塗料槽11を通り、外周に熱硬化
性樹脂混合熱可塑性樹脂塗料が塗布されダイス12にて過
剰塗料が絞られた後、焼付炉13で加熱硬化され薄膜槽6
が形成される。この薄膜槽6の皮膜厚さはダイス12の孔
径を選択することにより調整される。薄膜槽6の施され
た集束電線W1は引取りキャプスタン14、14を経て、次
に、熱可塑性樹脂塗料槽11′を通り、薄膜層6の外周に
熱可塑性樹脂塗料が塗布され、ダイス12′で塗料が絞ら
れた後、再び焼付炉13で加熱乾燥させる。この熱可塑性
樹脂塗料の塗布、乾燥工程を複数回繰返すことにより所
定厚さの熱可塑性樹脂融着層7が施され、本発明のコイ
ル用電線1が形成される。
また、素線集束体2に該集束体2の層芯径の略100倍
以上の粗い撚りを付与したものを用いるときは、当該素
線集束体2は予め別工程にて撚りを付与された上で、上
記の各樹脂塗料の塗布、焼付工程が施され、本発明のコ
イル用電線1が形成される。
次に、本発明のコイル用電線において、素線集束体2
を素線5の平行集束体または素線集束体2の層芯径の略
100倍以上の撚りを付与したものと限定した理由は、本
発明コイル用電線をコイル巻線に用い、コイル成型した
とき、平行素線の集束体であればより低い成型圧で集束
電線の円形形状は崩れ、恰も1本の素線を密接巻きした
如くに、各素線5は互に密に配設され、また素線集束体
2がその層芯径の略100倍以上の極めて粗い撚りのもの
であれば、素線5に損傷を与えることのないコイル成型
圧で、同様に、素線集束体2の保形状態が崩れ、各素線
5は互に密に配設され、コイルの導体占積率を向上せし
めることができるためである。
更に、素線集束体2の外周に施す薄膜層6の皮膜厚さ
の望ましい範囲を0.5〜5μとした理由は、薄膜層6の
皮膜厚さが0.5μより薄くなると該薄膜層6の目的であ
る自己融着型集束電線製造工程中における素線集束体2
に対する形状の保形機能が低下し、製造工程中に素線集
束体2の素線5にばらけ、たるみを生ずることになるた
めであり、また皮膜厚さを5μより厚くすると、本コイ
ル用電線1をコイル巻線に適用したとき、コイル成型時
の成型圧では本コイル用電線1の円形形状が最早崩れな
くなり、本発明のコイル用電線1の効用であるコイルの
導体占積率の向上が望めなくなるためである。
(実施例1) 導体径0.14mmのポリエステルイミド絶縁素線を7本平
行に断面略円形状に集束し、外径0.51mmの素線集束体を
形成し、この素線集束体外周に、熱硬化成分としてエポ
キシ樹脂を含むポリアミド系樹脂の熱硬化性樹脂混合熱
可塑性樹脂塗料の塗布焼付工程を1回行い塗膜厚1μを
得、更に連続してこの熱硬化性樹脂混合熱可塑性樹脂塗
膜層外周にポリアミド系熱可塑性樹脂塗料の塗布乾燥工
程を6回繰返し皮膜厚さ14μの融着層を得、本発明のコ
イル用電線を製造した。なお、熱硬化性樹脂塗料及び熱
硬化性樹脂混合熱可塑性樹脂塗料の焼付条件は、炉長2.
8mmで線速20m/min、焼付温度400℃であった。
(実施例2) 実施例1と同一の素線7本を35mmの撚りピッチ(層芯
径の約100倍)で集束し、外径0.51mmの素線集束体を形
成し、実施例1と同一製造工程にて本発明のコイル用電
線を製造した。
実施例1及び実施例2の本発明のコイル用電線は、そ
の製造工程中に素線にばらけ、たるみを生ずることは皆
無であった。また、実施例1及び実施例2のコイル用電
線を用いて、クラ型状コイルを製作したところ、本実施
例1、2のコイル電線を巻線したコイルは従来のリッツ
線を巻線したコイルに比較し、コイルの導体占有率が約
20%向上することが確認された。
〔発明の効果〕
本発明のコイル用電線は、コイル巻線に適用したと
き、自己融着型集束電線が有するコイル導体占積率の向
上効果を何等損なうことがない。しかも、本発明のコイ
ル用電線は、従来の自己融着型集束電線と比較したと
き、電線製造工程における素線のたるみ、ばらけの発生
に伴う断線事故が皆無となり、またコイル製造工程にお
ける断線事故の恐れもなくなり、電線の歩留り向上、製
造工数の低減が図られることは勿論コイル製品の歩留り
向上及び品質安定が図られ、産業界に寄与する効果は極
めて大である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の1実施例を示すコイル用電線の横断面
図、第2図は本発明のコイル用電線の製造工程の説明図
である。 1……コイル用電線、2……素線集束体、5……素線、
6……薄膜層、7……熱可塑性樹脂融着層、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山岸 建彦 長野県小県郡丸子町上丸子238番地 東 京特殊電線株式会社丸子工場内 (56)参考文献 特開 昭61−285610(JP,A) 特開 昭58−214216(JP,A) 特開 昭62−61206(JP,A) 実開 昭61−36944(JP,U) 実開 昭49−4935(JP,U)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】絶縁導体素線の複数本を、素線長手方向に
    平行に集束し、断面略円形状に形成した素線集束体若し
    くは素線集束体の層芯径の略100倍以上の極めて粗い撚
    りを付与し、断面略円形状に集束した素線集束体の外周
    に、コイル成型工程では該素線集束体の形を崩すが乾燥
    工程では該素線集束体を保形するための熱硬化性樹脂を
    含む熱可塑性樹脂からなる薄膜層を形成し、次にこの薄
    膜層の外周に、加熱融着性を有する熱可塑性樹脂からな
    る融着層を形成したことを特徴とするコイル用電線。
  2. 【請求項2】前記熱硬化性樹脂を含む熱可塑性樹脂と前
    記熱可塑性樹脂は、皮膜固化形成温度が同一である特許
    請求の範囲第1項記載のコイル用電線。
  3. 【請求項3】前記薄膜層の皮膜厚さは0.5μ乃至5μで
    ある特許請求の範囲第1項又は第2項記載のコイル用電
    線。
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