JP2683890B2 - 絹製品 - Google Patents

絹製品

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JP2683890B2
JP2683890B2 JP7212342A JP21234295A JP2683890B2 JP 2683890 B2 JP2683890 B2 JP 2683890B2 JP 7212342 A JP7212342 A JP 7212342A JP 21234295 A JP21234295 A JP 21234295A JP 2683890 B2 JP2683890 B2 JP 2683890B2
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敏之 八木
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平安油脂化学工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、擦れによる毛羽立
ちが起こり難い、改質処理された絹製品に関する。 絹
製品とは、フィブロイン繊維の織布又は編織布を意味
し、セリシンを実質的に含まない製品を意味する。
【0002】
【従来の技術】従来、生糸製品の風合及び色調を害する
ことなくセリシンを固定するために数多くの改質加工剤
の使用が検討され、セリシン加工剤の1つとして2,
4,6−トリハロゲノ−1,3,5−トリアジンが知ら
れている(特公昭40−8050号参照)。
【0003】しかしながら、フィブロインがセリシンで
覆われた生糸製品は絹独特の光沢ないし高級感が乏しい
ため、喪服などの光沢を要しない製品に用いられている
のみであり、セリシンが除去されたフィブロイン繊維を
用いた絹製品が大部分を占める。
【0004】フィブロインの耐久性を高め、擦れによる
毛羽立ち、ピリングなどを防止するための加工として、
フィブロインにエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等をグラフ
ト重合する方法が行われているが、該方法は絹製品の独
特の光沢、風合いをやや損なう場合があり、また、擦れ
による毛羽立ち、ピリング等の発生を防止することがで
きなかった。すなわち、被覆する樹脂の量を多くすると
毛羽立ちは抑えられるが、絹製品が硬くなる傾向にあ
り、絹本来の柔らかい感触、光沢、風合いが損なわれる
ことになる。一方、被覆する樹脂の量を少なくすると、
光沢、風合いなどは損なわれることはないが、耐久性の
向上がやや不十分となる。
【0005】絞りの着物は、生地の一部を絹糸や綿糸で
括って防染し、これを浸染や桶染めの方法で染色し、染
色後括った糸を取り除いて製造される。従来の未処理の
絹繊維の場合、絹糸や綿糸で強く括られた防染部分と括
っていない部分の境目に出来るヒダの部分が、染色中の
強い張力と摩擦によって、必ず擦れが発生し作業者を悩
ませている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、絹製品の光
沢、風合いを損なうことなく、擦れによる毛羽立ちを抑
えた絹製品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、1,3,5−
トリアジンの2位,4位及び6位の炭素原子と絹製品の
フィブロインのタンパク質側鎖が結合した構造を有する
絹製品を提供するものである。該絹製品は、主として
1,3,5−トリアジンの2位,4位及び6位の炭素原
子と絹製品のフィブロインのタンパク質側鎖が3点で結
合した構造を有しているが、その一部として、1,3,
5−トリアジンの2位,4位及び6位の炭素原子の任意
の2点で結合した構造物を有していてもよい。
【0008】本発明で絹製品とは、家蚕、天蚕、エリ
蚕、柞蚕が生産する生糸玉糸及びそれらを含む副蚕糸類
からセリシンを除去した絹糸(フィブロイン繊維)、或
いはそれらと他の天然又は合成繊維との混繊、混紡糸の
織布又は編織布の未染色品又は染色品を意味し、絹紡糸
及び真綿、特に、絞りで染色された絹織物を意味する。
【0009】本発明の絹製品は、絹製品を、2,4,6
−トリハロゲノ−1,3,5−トリアジン、特に2,
4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンと式
(I):
【0010】
【化1】 (式中、R及びR1は、同一又は異なって水素原子、低
級アルキル基又は低級アシル基を示し、nは、1〜1×
103の整数を示す。)で表されるエチレングリコール
誘導体又は低分子量ケトンの中から選ばれる1又は2以
上の溶媒に1〜80重量%の割合で混合した組成物を用
いて、処理することにより製造される。2,4,6−ト
リハロゲノ−1,3,5−トリアジンのハロゲン置換基
は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子で
あり、該成分としては2,4,6−トリクロロ−1,
3,5−トリアジンがより好ましい。また、該トリアジ
ンは、絹製品の重量に対し2〜12重量%の割合で使用
され、好適には4〜8重量%の割合で使用される。
【0011】2,4,6−トリハロゲノ−1,3,5−
トリアジンの絹製品中の含量は、例えば2,4,6−ト
リクロロ−1,3,5−トリアジンを用い、かつ全ての
2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(分
子量=184.42)が絹製品と反応したとすると、反
応時に3個の塩素原子が脱離するので、本発明の絹製品
中に含まれる1,3,5−トリアジン残基(分子量=7
8.05)の比率は、0.85〜5.1重量%、好まし
くは1.7%〜3.4重量%である。
【0012】エチレングリコール誘導体中の低級アルキ
ル基としては、炭素数1〜6の低級アルキル基、例えば
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル
基及びヘキシル基が挙げられる。
【0013】エチレングリコール誘導体中の低級アシル
基としては、炭素数1〜6の低級アシル基、例えばアセ
チル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基
及びヘキサノイル基が挙げられる。
【0014】式(I)において、エチレングリコール誘
導体の重合度を示すnは、1〜1×103であるが、好
適には1〜3×102のものが使用される。
【0015】本発明において、低分子量ケトンとは炭素
数1〜6のケトンであり、例えばアセトン、メチルエチ
ルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトン及
びシクロヘキサノンが挙げられる。
【0016】前記エチレングリコール誘導体及び前記低
分子量ケトンは、単独で使用してもよく、2種以上を混
合して使用してもよい。
【0017】本発明の組成物を使用した絹製品の改質加
工方法は、具体的には、以下のようにして実施される。
即ち、絹製品をアルカリ性の水溶液に浸漬し、該溶液に
本発明の組成物を加え、約10℃〜40℃で約40分〜
60分間処理する。該処理後水洗、湯洗を施して改質絹
製品を得る。該アルカリ性水溶液は、絹製品の10倍量
〜200倍量使用され、好ましくは30倍量〜40倍量
使用される。使用されるアルカリとしては、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化
物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等
任意のアルカリ性の物質が使用され、該アルカリ水溶液
のpHは、約7〜11、好適には7.2〜9の範囲とす
るのが良い。また、該アルカリは、好適には過剰量使用
される。
【0018】本発明の絹製品は、JIS L−1076
(1985)のA法に準じた耐久性試験により、ほとん
ど毛羽立ちを生じないものである。ここで、「JIS
L−1076(1985)のA法に準じた耐久性試験」
とは、JIS L−1076(1985)のA法におい
て、回転箱を内辺23cmのアクリル板製の立方体とし、試
験に供される加工布(10cm×12cm)を特殊ゴム管に巻
き、綿糸で縫い付け、その4本と合成洗剤ボーナス20
00(商標名:P&G社製)5g,水(40℃)1.5リ
ットルをアクリル板製の回転箱に入れて密栓し、60rpm
の回転速度で20分間操作する試験を意味する。得られ
た加工布の毛羽立ちの有無は、光学ないし電子顕微鏡写
真を撮影することにより行うことができる。
【0019】
【発明の効果】本発明の絹製品は、擦れに対する抵抗性
が高く、絞りで染色した場合でも、ほとんど毛羽立ちを
生じないものであり、絞り織物の品質を飛躍的に高める
ことができる。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。
【0021】
【実施例1】絹製品の改質処理 羽二重(45g)をpH8の水酸化ナトリウム水溶液
(1.8リットル)に浸漬し、該水溶液に対し、2,
4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとジエチ
レングリコールモノエチルアセテートとを重量比2:3
の割合で混合した組成物を4.5g加え、25℃で40
分間処理した。処理後、改質された羽二重を水洗・湯洗
をし、乾燥した。得られた改質羽二重を、以下の耐久性
試験に供した。
【0022】耐久性試験 JIS L−1076(1985)のA法(ICI形試
験機を用いる方法)に記載されたピリング試験機及び試
験方法に準じて、上記改質羽二重の耐久性試験を行っ
た。
【0023】即ち、本実施例では回転箱を内辺23cmのア
クリル板製の立方体とし、密栓ができるものを用意し
た。先に加工した加工布10cm×12cmを特殊ゴム管に巻
き、綿糸で縫い付け、その4本と合成洗剤ボーナス20
00(商標名:P&G社製)5g,水(40℃)1.5リ
ットルをアクリル板製の回転箱に入れ、60rpm の回転速
度で20分間操作した。また、同様な試験を上記改質処
理をしていない、未加工の羽二重についても行った。
【0024】該試験の結果は、試験前の羽二重の状態を
示す図1、試験後の改質羽二重の状態を示す図2及び試
験後の未加工羽二重の状態を示す図3に示される。な
お、図1〜3の倍率は40倍である。これら図1〜3に
示されるように、試験後の未加工の羽二重(図3)は毛
羽立ちが目立つが、上記改質羽二重(図2)は、耐久性
試験を行う前の羽二重(図1)と同様の外観を示し、毛
羽立ちはほとんど見られなかった。
【0025】以上の結果より、本発明の絹製品の擦れに
対する抵抗性は、未加工の絹製品よりも飛躍的に向上す
ることが示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験前の羽二重の絹繊維の構造を示す図面代用
写真である。
【図2】試験後の改質羽二重の絹繊維の構造を示す図面
代用写真である。
【図3】試験後の未加工の羽二重の絹繊維の構造を示す
図面代用写真である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1,3,5−トリアジンの2位,4位及び
    6位の炭素原子と絹製品のフィブロインのタンパク質側
    鎖が直接結合した構造を有する絹製品。
  2. 【請求項2】絹製品が絞りで染色された絹織物である請
    求項1に記載の絹製品。
  3. 【請求項3】JIS L−1076(1985)のA法
    に準じた耐久性試験により、ほとんど毛羽立ちを生じな
    い請求項1または2に記載の絹製品。
  4. 【請求項4】1,3,5−トリアジンの含量が0.85
    〜5.1重量%である請求項1〜3にいずれかに記載の
    絹製品。
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