JP2667663B2 - 高強度炭素繊維の製造方法 - Google Patents
高強度炭素繊維の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、高強度炭素繊維の製造方法に関し、さら
に詳しく言うと、高い強度を有し、たとえば宇宙航空機
器材料、自動車機器材料、産業機械材料、スポーツ用品
材料等に幅広く利用することができる高強度炭素繊維を
製造する方法に関する。 [従来の技術およびその問題点] 近年、炭素繊維は、軽量、かつ高強度、高弾性、低比
重等の優れた機械的特性を有することから、たとえばプ
ラスチック、金属、セラミックス等との複合材料とし
て、宇宙航空機器材料、自動車機器材料、産業機械材
料、スポーツ用品材料などに広く利用されるに至ってい
る。 そして、これらの利用分野においては、炭素繊維に一
層の高強度化が望まれていることから、500kg/mm2以上
の引張強度を有する炭素繊維を安定して製造する方法へ
の要望が高い。 一方、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維を出発原
料とする炭素繊維の製造においては、炭素繊維の強度の
向上を図るために、PAN系繊維における分子配向が行な
われるのであるが、従来、この処理として、たとえば酸
化雰囲気中に温度200〜350℃の条件下に熱処理するいわ
ゆる耐炎化処理および不活性雰囲気中に300〜1600℃程
度の温度下に熱処理する炭素化処理が行なわれてきた。 このような背景下に、前記要望に応えるものとして、
たとえば耐炎化処理を緊張下に行なう方法(特公昭44−
21175号公報参照)、炭素化処理を緊張下に行なう方法
(特公昭46−10496号公報参照)、さらに耐炎化処理お
よび炭素化処理の双方を緊張下に行なう方法(特開昭60
−88127〜88129号公報、特開昭61−97422号公報、特開
昭61−119719号公報等参照)などが提案されてきた。 しかしながら、高強度炭素繊維の利用分野の拡大に伴
ない、これらの従来の製造方法により得られる炭素繊維
においてはその強度が未だ充分とは言い難いという問題
があった。 [発明の目的] この発明の目的は前記問題を解消し、従来の炭素繊維
に比較して一段と高い強度を有する高強度炭素繊維の新
規な製造方法を提供することである。 [前記目的を達成するための手段] 前記目的を達成するために、この発明者が鋭意研究を
重ねた結果、ポリアクリロニトリル系繊維に耐炎化処理
を行なって特定の割合で酸素を取りこませた後、特定の
温度下に、かつ特定の緊張下に炭素化処理を施した場合
には高い強度を有する炭素繊維を製造することができる
ことを見い出してこの発明に到達した。 すなわち、この発明の概要は、ポリアクリロニトリル
系繊維に、酸化性雰囲気中に張力2〜5kg/mm2を与えつ
つ温度200〜240℃で熱処理する耐炎化第1工程と 酸化性雰囲気中に張力4〜10kg/mm2を与えつつ温度24
0〜280℃で熱処理する耐炎化第2工程と を有する耐炎化処理を行って、この繊維に5〜10重量%
の酸素を取り込ませた後、 不活性雰囲気中に張力4〜(46−0.1T)[ただし、T
は温度(℃)を示す。]を与えつつ温度300〜400℃で1
〜5分間熱処理する炭素化第1工程と、 不活性雰囲気中で、張力1〜3kg/mm2の条件下に温度4
00〜600℃で1分以内の熱処理を行った後、不活性雰囲
気中で、張力0.8〜15kg/mm2の条件下に温度800〜1500で
熱処理を行う工程を含む熱処理する炭素化第2工程と を有する炭素化処理を施すことを特徴とする高強度炭素
繊維の製造方法である。 前記ポリアクリロニトリル系繊維としては、アクリロ
ニトリルの含有率が90%以上である単独重合体または共
重合体よりなる繊維が好ましい。共重合体である場合の
その共重合成分としては、たとえばα−クロルアクリロ
ニトリル、メタアクリロニトリル、2−ヒドロキシエチ
ルアクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、イタ
コン酸、クロトン酸、メチルアクリレート、メチルメタ
クリレート、パラスチレンスルホン酸、パラスチレンス
ルホン酸エステル、パラスチレンスルホン酸カリウム、
酢酸ビニル、2−メチル−5−ビニルピリジン等が挙げ
られる。 前記重合体または共重合体の分子量は、通常、60,000
〜300,000である。この分子量が60,000よりも小さい場
合は、得られる炭素繊維の強度が充分でないことがあ
る。一方、300,000よりも大きい場合には、紡糸原液の
粘度が上昇し、紡糸を安定して行なうことが困難にな
る。 前記ポリアクリロニトリル系繊維は、通常のアクリル
繊維の紡糸方法により製造することがきる。 具体的には、紡糸原液をノズルにより凝固液中に吐出
し、繊維を形成した後、水洗、熱水延伸、乾燥、蒸気延
伸を行なうことにより、直径5〜10μm、密度1.14〜1.
19g/cm3、引張強度40〜90kg/cm3、伸度10〜15%程度の
性能を有するポリアクリロニトリル系繊維を製造するこ
とができる。 このポリアクリロニトリル系繊維は、必要に応じて、
水蒸気中に弛緩処理して、伸度15〜25%として使用する
こともできる。 この発明の方法においては、前記ポリアクリロニトリ
ル系繊維に耐炎化処理を行なって特定の割合で酸素を取
り込んだ耐炎化繊維とすることが重量である。 酸素取り込み量は、5〜10重量%、好ましくは6〜9
重量%である。酸素取り込み量が5重量%よりも少ない
場合には、後述する炭素化工程において耐炎化繊維の炭
素化を安定して行なうことが困難になる。一方、10重量
%を超える場合には、得られる炭素繊維の強度が低下す
る。 酸素取り込み量の測定方法としては、たとえば通常の
元素分析装置(例えば、柳本製作所株製CHNコーダー)
を使用する方法、化学分析による方法などが挙げられ、
耐炎化繊維中の酸素含有量(重量%)と前記ポリアクリ
ロニトリル系繊維中の酸素含有量(重量%)との差を酸
素取り込み量とする。 前記耐炎化処理は、酸化性雰囲気中に行ない、通常、
200℃から段階的に昇温して最終温度を280℃程度とする
のが好ましい。この最終温度が280℃を超える場合に
は、酸化反応速度が高くなり、繊維中への酸素取り込み
量の制御が不安定になって、最終的には、得られる炭素
繊維の強度の変動率が増大する。 この発明においては、前記耐炎化処理を、耐炎化第1
工程と耐炎化第2工程との2段階に分け、温度および張
力を制御するのが好ましい。 前記酸化性雰囲気に使用するガスとしては、通常、空
気、または酸素量を増量もしくは減量した空気を用いる
が、これらに、たとえば一酸化炭素、塩酸、亜硫酸ガス
などを添加して用いることもできる。 前記耐炎化第1工程は、温度200℃〜240℃、張力が、
通常、2〜5kg/mm2、好ましくは3〜5kg/mm2の条件下に
行なう。この張力が2kg/mm2よりも小さい場合には、分
子の配向が不充分になる。一方、5kg/mm2を超える場合
には、繊維が切断することがある。処理時間は、通常、
10〜40分間、繊維の酸素取り込み量が2〜4重量%にな
るまで行なう。この処理時間が10分間より短いと、繊維
の酸素取り込み量が充分でないことである。一方、処理
時間を40分間より長くしても、酸素の取り込み量の増加
は少なく、それに相当する効果は奏されない。 前記耐炎化第2工程は前記耐炎化第1工程に連続する
ものであり、温度が240〜280℃、張力が、通常、5〜9k
g/mm2、好ましくは6〜9kg/mm2の条件下に行なう。この
張力が5kg/mm2よりも小さい場合には、分子配向が乱れ
ることがある。一方、9kg/mm2を超える場合には、繊維
が切断することがある。処理時間は、通常、10〜40分
間、繊維の酸素取り込み量が5〜10重量%になるまで行
なう。この処理時間が10分間より短いと、酸素の酸素取
り込み量が充分でないことがある。一方、処理時間が40
分間を超える場合には繊維の酸素取り込み量が過剰にな
ることがある。 この発明において、耐炎化処理を2段階に分けて行な
う理由は、張力を変える点にある。 すなわち、前記耐炎化第1工程と耐炎化第2工程との
間で張力に差を設けることなく低張力を保持するとすれ
ば、繊維はもっとも伸長し易い200〜240℃の温度におい
て、低い張力で伸び、酸化あるいは環化反応が進行する
240〜280℃の温度においては、低張力のために分子配向
が乱れる結果となる。逆に、240〜280℃の温度における
分子配向の乱れを防止するために高い張力を保持すれ
ば、200〜240℃の温度範囲にある繊維が切断してしま
う。 したがって、この発明においては、耐炎化処理を2段
階とし、繊維がもっとも伸長し易い200〜240℃の温度範
囲の耐炎化第1工程における張力と酸化あるいは環化反
応が進行する240〜280℃の温度範囲における耐炎化第2
工程における張力とに差を設け、かつ、耐炎化第2工程
における張力を耐炎化第1工程における張力よりも大き
くすることによって、温度および張力の制御を行なう。
なお、ここで規定する240℃は、実質的温度範囲とし
て、240±10℃程度を意味する。 また、耐炎化第2工程における耐炎化第1工程におけ
る張力よりも大きくする理由は、耐炎化第1工程におい
ては、ポリアクリロニトリル分子が鎖状であるので、分
子の配向に高い張力を要しないのに対し、耐炎化第2工
程においては、ポリアクリロニトリル分子の一部が環化
したり、主鎖中の単結合が二重結合したり、あるいは炭
素原子が酸素と結合したりする反応において、高分子が
収縮する際の折れ曲がりを防止する必要があるので、高
い張力を必要とするからである。 ポリアクリロニトリル系繊維の伸度は、前記弛緩処理
を施したものと、この処理を施さないものとで大きな差
を生じ、また、その高分子の組成によっても、耐炎化時
に差を生じるので、張力の制御を厳密に行なう必要があ
る。 この発明においては、前記耐炎化処理における張力の
制御を耐炎化炉の入側と出側に設けた駆動ローラーの速
度差により行ない、張力の測定には、たとえばロードセ
ル、ハンドテンションメータ等を使用する。ここで、繊
維の張力は、次の式で表わすことができる。 張力=L/A2=(L/A1)×(d2S/d1Y) L;ロードセル、テションメーター等による測定値[kg/ トウ] A1;PAN系繊維の断面積[mm2] A2;熱処理を施した後の繊維の断面積[mm2] d1;PAN系繊維の密度[10-6kg/mm3] d2;熱処理を施した後の繊維の密度[10-6kg/mm3] Y;熱処理による反応収率(もとの重量を1としたときの 絶対値) S;延伸比(熱処理後の系速度/耐炎化炉入口の系速度) 前記炭素化処理は、前記耐炎化処理に引き続いて行な
うのが好ましく、一般に前記耐炎化処理の温度より高い
温度、具体的には、通常、300℃程度〜1500ないし1600
℃程度の温度範囲における、窒素ガス、アルゴンガスな
どの不活性雰囲気中での熱処理を意味する。 しかしながら、この発明者の研究結果によると、第1
図および第2図に示したように、400℃未満の温度領域
においては繊維の元素組成、繊維密度および反応収率に
大きな変化は見られなかった。また、耐炎繊維を窒素雰
囲気中に延伸または収縮させながら炭素化した時の炭素
化炉内の各温度領域における、繊維の伸長、収縮を測定
したところ第3図に示したような挙動を示すことが判明
した。第3図から明らかなように、炭素化の全工程を通
じて延伸しても、400〜600℃の温度範囲にある繊維が主
に伸長し、400℃以下の温度範囲にある繊維は収縮して
いる。 すなわち、400℃までは耐炎化反応の続きとも言える
環化反応あるいは架橋反応が進行し、400℃を超えてか
ら、分子の切断や分解反応が起こるものと推察され、無
理に延伸を行なえば繊維は600℃近傍で破断を起すもの
と考えられる。 したがって、この発明の方法においては、炭素化処理
を少なくとも2段階に分けて行ない、温度400℃の不活
性雰囲気炉出側にテンションコントロール用の駆動ロー
ラーを設けることにより、400℃以下の温度領域におけ
る張力の制御と400℃以上の温度領域における張力の制
御とを別途に行なうこととし、好ましくは300〜400℃の
温度領域における炭素化第1工程、400〜600℃の温度領
域および600〜1500℃の温度領域における炭素化第2工
程に分割して行なう。 前記炭素化処理における張力の制御は、前記耐炎化処
理における張力の制御と同様に、炭素化炉の入側と出側
とに設けた駆動ローラーの速度差により行なうことがで
きる。 前記炭素化第1工程における張力は、通常、4〜(46
−0.1T)kg/mm2[ただし、Tは温度(℃)を示す。]で
あり、好ましくは(25−0.05T)〜(46−0.1T)kg/mm2
である。この張力範囲において、繊維は3%の収縮〜3
%の伸長の範囲の挙動を示す。この張力が(46−0.1T)
kg/mm2を超えると、繊維に破断が起こる。一方、4kg/mm
2よりも小さい場合には、分子の配向が不十分になる。
すなわち、いずれの場合にも、炭素繊維の強度を低下さ
せることになる。前記温度領域が300℃以下の場合に
は、前記範囲の張力を与えても炭素繊維の強度はほとん
ど改善されない。一方、400℃を超えると繊維が破断す
る傾向が高くなり、特に450℃以上の場合には、前記範
囲の張力を与えることによって繊維が破断する。処理時
間は、通常、1〜5分間である。この処理時間が1分間
よりも短い場合には、繊維の炭素化が不充分になる。一
方、5分間より長くしても、それに相当する効果は奏さ
れない。 前記炭素化第2工程の400〜600℃の温度領域における
張力は、通常、1〜3kg/mm2であり、滞在時間は、通
常、1分以内である。この張力が1kg/mm2よりも小さい
場合には、得られる炭素繊維の強度の向上が不十分にな
る。一方、この張力が3kg/mm2を超える場合には、繊維
が破断することがある。滞在時間が1分間を超えると、
得られる炭素繊維の強度が却って低下することがある。 400〜600℃の温度領域において、繊維は非常に伸び易
い状態となり、低い張力で容易に延伸を行なうことがで
きるのであるが、この発明者の研究結果によると、この
温度領域において重要なことは、繊維に延伸を与えるこ
とではなく、繊維に張力を与えることであることが判明
した。 一例を挙げれば、滞在時間を2分間として、0.9kg/mm
2の張力下に5%の延伸を与えるよりも、滞在時間を10
秒間として、1.5kg/mm2の張力下に2.5%の延伸を与える
方が、得られる炭素繊維の強度は向上する。 その理由は明確ではないが、分子を配向させるための
剪断力との関係によるものと推察される。 この発明の方法においては、400〜600℃の温度領域に
おける張力を高めるために、400〜600℃間の昇温速度を
10〜100℃/秒とすることも効果的である。 前記炭素化第2工程の800〜1500℃の温度領域におけ
る張力は、0.8〜15kg/mm2であり、処理時間は、通常、
5分間以内である。張力が0.8kg/mm2よりも低い場合に
は、得られる炭素繊維の強度が低下することがある。一
方、15kg/mm2を超える場合には、繊維が破断することが
ある。処理時間を5分間より長くしても、それに相当す
る効果は奏されない。なお、張力を0.8〜15kg/mm2の範
囲内で変化させても、得られる炭素繊維の強度に変化は
見られないので、前記400〜600℃の温度領域で使用する
駆動ローラーとの間に速度差を有する駆動ローラーは、
必ずしも必要ではないが、得られる炭素繊維の強度の変
動を減少させるためには、駆動ローラーが存在すること
が好ましい。 [発明の効果] この発明の製造方法によると、500kg/mm2以上の引張
強度を有する炭素繊維を安定して製造することができ、
また、この発明の方法により製造された炭素繊維は高い
強度を有するので、たとえば、宇宙航空機器材料、自動
車機器材料、産業機械材料、スポーツ用品材料などに幅
広く利用することができる。 [実施例] 次に、この発明の実施例および比較例を示し、この発
明についてさらに具体的に説明する。 (実施例1) メチルアクリレート5重量%およびイタコン酸2重量
%を共重合モノマーとするアクリロニトリルを用いて、
60%純塩化亜鉛水溶液中で常法により重合し、重合体濃
度6.5重量%の紡糸原液を得た。得られた重合体の分子
量は120000、紡糸原液の粘度は250ポイズ(45℃)であ
った。 次いで、孔径120μm、孔数12000のノズルを用いて、
この紡糸原液を、紡糸原液温度30℃、凝固浴温度3℃,
凝固浴塩化亜鉛水溶液中の塩化亜鉛濃度28%の条件下
に、吐出線速度0.7m/分、ドラフト率1.4で紡出した。 この繊維に、水洗、熱水延伸、乾燥、蒸気延伸(蒸気
圧2kg/cm2G)の各処理を、この順に施し、計17倍の総延
伸を与えて、直径7.5μm、引張強度63kg/mm2、伸度11.
3%、密度1.168のポリアクリロニトリル(PAN)系繊維
を得た。 続いて、このPAN系繊維に、240℃までは張力3.8kg/mm
2、240〜260℃の間は張力8.5kg/mm2の条件下に空気中で
耐炎化処理を行ない、この繊維の酸素取り込み量が7重
量%になるまで反応を進行させて耐炎化繊維を得た。 その後、入口温度350℃、出口温度390℃の窒素雰囲気
炉に、この耐炎化繊維を導入し、張力7.0kg/mm2の条件
下に2分間、熱処理を行ない、引き続き、入口温度400
℃、出口温度600℃の窒素雰囲気炉中に、この繊維を導
入し、張力1.7kg/mm2の条件下に20秒間、熱処理を施し
た後、さらに、この繊維を、入口温度1000℃、出口温度
1300℃の窒素雰囲気炉に導入し、張力3.0kg/mm2の条件
下に2分間、熱処理を施して炭素繊維を得た。 得られた炭素繊維について、直径、密度、引張強度お
よび引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 (比較例1) 前記実施例1において、入口温度350℃、出口温度390
℃の窒素雰囲気炉中における張力7.0kg/mm2に代えて1.7
kg/mm2にしたほかは、前記実施例1と同様にして炭素繊
維を製造した。 得られた炭素繊維について、直径、密度、引張強度お
よび引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 第1表から明らかなように、この比較例により得られ
た炭素繊維は前記実施例1で得られた炭素繊維に比例し
て、その引張強度が劣っていた。 (実施例2) 前記実施例1において、炭素化処理を第1表に示した
条件下に行なったほかは前記実施例1と同様にして炭素
繊維を製造し、得られた炭素繊維について、直径、密
度、引張強度および引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 (比較例2) 前記実施例2において、入口温度400℃、出口温度600
℃の窒素雰囲気炉中における熱処理条件を、張力2.5kg/
mm2、滞在時間30秒に代えて、張力0.6kg/mm2、滞在時間
90秒としたほかは、前記実施例2と同様に実施して炭素
繊維を製造し、得られた炭素繊維について、直径、密
度、引張強度および引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 (実施例3、比較例3,4) 前記実施例1において、炭素化処理を第1表に示した
条件下に行なったほかは前記実施例1と同様にして炭素
繊維を製造し、得られた炭素繊維について、直径、密
度、引張強度および引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 第1表から明らかなように、比較例3,4で得られた炭
素繊維は、実施例1〜3で得られたいずれの炭素繊維に
比較しても、その引張強度が劣っていた。 (実施例4) 前記実施例1において、耐炎化処理条件を第1表に示
したように代えたほかは前記実施例1と同様にして炭素
繊維を製造し、得られた炭素繊維について、直径、密
度、引張強度および引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 (比較例5) 耐炎化処理を第1表に示した条件下に行なって酸素取
り込み量4.0%の耐炎化繊維を調製した。 次いで、この耐炎化繊維を用いて第1表に示した条件
下に炭素化処理を行なったところ、温度400〜600℃、張
力0.5kg/mm2の条件の炭素化第2工程中に繊維が破断し
た。 結果を第1表に示す。 (比較例6) 耐炎化処理を第1表に示した条件下に行なって酸素取
り込み量10.5%の耐炎化繊維を調製した。 次いで、この耐炎化繊維を用いて第1表に示した条件
下に炭素化処理を行なって炭素繊維を得た。 得られた炭素繊維について、直径、密度、引張強度お
よび引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 第1表から明らかなように、この比較例で得られた炭
素繊維は、前記実施例1〜7で得られたいずれの炭素繊
維に比較しても、その引張強度が劣っていた。 (比較例7,8) 耐炎化処理を第1表に示した条件下に行った外は、実
施例1と同様にして炭素繊維を製造した。 結果を第1表に示す。 (比較例9) 前記実施例1において、炭素化第2工程の600℃以上
の温度領域における張力を0.1kg/mm2としたほかは、前
記実施例1と同様にして炭素繊維を製造し、得られた炭
素繊維について、直径、密度、引張強度および引張弾性
率を測定した。 結果を第1表に示す。 (比較例10) 前記実施例2において、炭素化第2工程の600℃以上
の温度領域における張力を16.0kg/mm2としたほかは、前
記実施例2と同様にして炭素繊維を製造した。 その結果、繊維の切断が頻発し、炭素化第2工程を安
定的に行なうことができなくなった。また、得られた繊
維の引張強度は210〜440kg/mm2の範囲で著しくばらつい
た。
に詳しく言うと、高い強度を有し、たとえば宇宙航空機
器材料、自動車機器材料、産業機械材料、スポーツ用品
材料等に幅広く利用することができる高強度炭素繊維を
製造する方法に関する。 [従来の技術およびその問題点] 近年、炭素繊維は、軽量、かつ高強度、高弾性、低比
重等の優れた機械的特性を有することから、たとえばプ
ラスチック、金属、セラミックス等との複合材料とし
て、宇宙航空機器材料、自動車機器材料、産業機械材
料、スポーツ用品材料などに広く利用されるに至ってい
る。 そして、これらの利用分野においては、炭素繊維に一
層の高強度化が望まれていることから、500kg/mm2以上
の引張強度を有する炭素繊維を安定して製造する方法へ
の要望が高い。 一方、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維を出発原
料とする炭素繊維の製造においては、炭素繊維の強度の
向上を図るために、PAN系繊維における分子配向が行な
われるのであるが、従来、この処理として、たとえば酸
化雰囲気中に温度200〜350℃の条件下に熱処理するいわ
ゆる耐炎化処理および不活性雰囲気中に300〜1600℃程
度の温度下に熱処理する炭素化処理が行なわれてきた。 このような背景下に、前記要望に応えるものとして、
たとえば耐炎化処理を緊張下に行なう方法(特公昭44−
21175号公報参照)、炭素化処理を緊張下に行なう方法
(特公昭46−10496号公報参照)、さらに耐炎化処理お
よび炭素化処理の双方を緊張下に行なう方法(特開昭60
−88127〜88129号公報、特開昭61−97422号公報、特開
昭61−119719号公報等参照)などが提案されてきた。 しかしながら、高強度炭素繊維の利用分野の拡大に伴
ない、これらの従来の製造方法により得られる炭素繊維
においてはその強度が未だ充分とは言い難いという問題
があった。 [発明の目的] この発明の目的は前記問題を解消し、従来の炭素繊維
に比較して一段と高い強度を有する高強度炭素繊維の新
規な製造方法を提供することである。 [前記目的を達成するための手段] 前記目的を達成するために、この発明者が鋭意研究を
重ねた結果、ポリアクリロニトリル系繊維に耐炎化処理
を行なって特定の割合で酸素を取りこませた後、特定の
温度下に、かつ特定の緊張下に炭素化処理を施した場合
には高い強度を有する炭素繊維を製造することができる
ことを見い出してこの発明に到達した。 すなわち、この発明の概要は、ポリアクリロニトリル
系繊維に、酸化性雰囲気中に張力2〜5kg/mm2を与えつ
つ温度200〜240℃で熱処理する耐炎化第1工程と 酸化性雰囲気中に張力4〜10kg/mm2を与えつつ温度24
0〜280℃で熱処理する耐炎化第2工程と を有する耐炎化処理を行って、この繊維に5〜10重量%
の酸素を取り込ませた後、 不活性雰囲気中に張力4〜(46−0.1T)[ただし、T
は温度(℃)を示す。]を与えつつ温度300〜400℃で1
〜5分間熱処理する炭素化第1工程と、 不活性雰囲気中で、張力1〜3kg/mm2の条件下に温度4
00〜600℃で1分以内の熱処理を行った後、不活性雰囲
気中で、張力0.8〜15kg/mm2の条件下に温度800〜1500で
熱処理を行う工程を含む熱処理する炭素化第2工程と を有する炭素化処理を施すことを特徴とする高強度炭素
繊維の製造方法である。 前記ポリアクリロニトリル系繊維としては、アクリロ
ニトリルの含有率が90%以上である単独重合体または共
重合体よりなる繊維が好ましい。共重合体である場合の
その共重合成分としては、たとえばα−クロルアクリロ
ニトリル、メタアクリロニトリル、2−ヒドロキシエチ
ルアクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、イタ
コン酸、クロトン酸、メチルアクリレート、メチルメタ
クリレート、パラスチレンスルホン酸、パラスチレンス
ルホン酸エステル、パラスチレンスルホン酸カリウム、
酢酸ビニル、2−メチル−5−ビニルピリジン等が挙げ
られる。 前記重合体または共重合体の分子量は、通常、60,000
〜300,000である。この分子量が60,000よりも小さい場
合は、得られる炭素繊維の強度が充分でないことがあ
る。一方、300,000よりも大きい場合には、紡糸原液の
粘度が上昇し、紡糸を安定して行なうことが困難にな
る。 前記ポリアクリロニトリル系繊維は、通常のアクリル
繊維の紡糸方法により製造することがきる。 具体的には、紡糸原液をノズルにより凝固液中に吐出
し、繊維を形成した後、水洗、熱水延伸、乾燥、蒸気延
伸を行なうことにより、直径5〜10μm、密度1.14〜1.
19g/cm3、引張強度40〜90kg/cm3、伸度10〜15%程度の
性能を有するポリアクリロニトリル系繊維を製造するこ
とができる。 このポリアクリロニトリル系繊維は、必要に応じて、
水蒸気中に弛緩処理して、伸度15〜25%として使用する
こともできる。 この発明の方法においては、前記ポリアクリロニトリ
ル系繊維に耐炎化処理を行なって特定の割合で酸素を取
り込んだ耐炎化繊維とすることが重量である。 酸素取り込み量は、5〜10重量%、好ましくは6〜9
重量%である。酸素取り込み量が5重量%よりも少ない
場合には、後述する炭素化工程において耐炎化繊維の炭
素化を安定して行なうことが困難になる。一方、10重量
%を超える場合には、得られる炭素繊維の強度が低下す
る。 酸素取り込み量の測定方法としては、たとえば通常の
元素分析装置(例えば、柳本製作所株製CHNコーダー)
を使用する方法、化学分析による方法などが挙げられ、
耐炎化繊維中の酸素含有量(重量%)と前記ポリアクリ
ロニトリル系繊維中の酸素含有量(重量%)との差を酸
素取り込み量とする。 前記耐炎化処理は、酸化性雰囲気中に行ない、通常、
200℃から段階的に昇温して最終温度を280℃程度とする
のが好ましい。この最終温度が280℃を超える場合に
は、酸化反応速度が高くなり、繊維中への酸素取り込み
量の制御が不安定になって、最終的には、得られる炭素
繊維の強度の変動率が増大する。 この発明においては、前記耐炎化処理を、耐炎化第1
工程と耐炎化第2工程との2段階に分け、温度および張
力を制御するのが好ましい。 前記酸化性雰囲気に使用するガスとしては、通常、空
気、または酸素量を増量もしくは減量した空気を用いる
が、これらに、たとえば一酸化炭素、塩酸、亜硫酸ガス
などを添加して用いることもできる。 前記耐炎化第1工程は、温度200℃〜240℃、張力が、
通常、2〜5kg/mm2、好ましくは3〜5kg/mm2の条件下に
行なう。この張力が2kg/mm2よりも小さい場合には、分
子の配向が不充分になる。一方、5kg/mm2を超える場合
には、繊維が切断することがある。処理時間は、通常、
10〜40分間、繊維の酸素取り込み量が2〜4重量%にな
るまで行なう。この処理時間が10分間より短いと、繊維
の酸素取り込み量が充分でないことである。一方、処理
時間を40分間より長くしても、酸素の取り込み量の増加
は少なく、それに相当する効果は奏されない。 前記耐炎化第2工程は前記耐炎化第1工程に連続する
ものであり、温度が240〜280℃、張力が、通常、5〜9k
g/mm2、好ましくは6〜9kg/mm2の条件下に行なう。この
張力が5kg/mm2よりも小さい場合には、分子配向が乱れ
ることがある。一方、9kg/mm2を超える場合には、繊維
が切断することがある。処理時間は、通常、10〜40分
間、繊維の酸素取り込み量が5〜10重量%になるまで行
なう。この処理時間が10分間より短いと、酸素の酸素取
り込み量が充分でないことがある。一方、処理時間が40
分間を超える場合には繊維の酸素取り込み量が過剰にな
ることがある。 この発明において、耐炎化処理を2段階に分けて行な
う理由は、張力を変える点にある。 すなわち、前記耐炎化第1工程と耐炎化第2工程との
間で張力に差を設けることなく低張力を保持するとすれ
ば、繊維はもっとも伸長し易い200〜240℃の温度におい
て、低い張力で伸び、酸化あるいは環化反応が進行する
240〜280℃の温度においては、低張力のために分子配向
が乱れる結果となる。逆に、240〜280℃の温度における
分子配向の乱れを防止するために高い張力を保持すれ
ば、200〜240℃の温度範囲にある繊維が切断してしま
う。 したがって、この発明においては、耐炎化処理を2段
階とし、繊維がもっとも伸長し易い200〜240℃の温度範
囲の耐炎化第1工程における張力と酸化あるいは環化反
応が進行する240〜280℃の温度範囲における耐炎化第2
工程における張力とに差を設け、かつ、耐炎化第2工程
における張力を耐炎化第1工程における張力よりも大き
くすることによって、温度および張力の制御を行なう。
なお、ここで規定する240℃は、実質的温度範囲とし
て、240±10℃程度を意味する。 また、耐炎化第2工程における耐炎化第1工程におけ
る張力よりも大きくする理由は、耐炎化第1工程におい
ては、ポリアクリロニトリル分子が鎖状であるので、分
子の配向に高い張力を要しないのに対し、耐炎化第2工
程においては、ポリアクリロニトリル分子の一部が環化
したり、主鎖中の単結合が二重結合したり、あるいは炭
素原子が酸素と結合したりする反応において、高分子が
収縮する際の折れ曲がりを防止する必要があるので、高
い張力を必要とするからである。 ポリアクリロニトリル系繊維の伸度は、前記弛緩処理
を施したものと、この処理を施さないものとで大きな差
を生じ、また、その高分子の組成によっても、耐炎化時
に差を生じるので、張力の制御を厳密に行なう必要があ
る。 この発明においては、前記耐炎化処理における張力の
制御を耐炎化炉の入側と出側に設けた駆動ローラーの速
度差により行ない、張力の測定には、たとえばロードセ
ル、ハンドテンションメータ等を使用する。ここで、繊
維の張力は、次の式で表わすことができる。 張力=L/A2=(L/A1)×(d2S/d1Y) L;ロードセル、テションメーター等による測定値[kg/ トウ] A1;PAN系繊維の断面積[mm2] A2;熱処理を施した後の繊維の断面積[mm2] d1;PAN系繊維の密度[10-6kg/mm3] d2;熱処理を施した後の繊維の密度[10-6kg/mm3] Y;熱処理による反応収率(もとの重量を1としたときの 絶対値) S;延伸比(熱処理後の系速度/耐炎化炉入口の系速度) 前記炭素化処理は、前記耐炎化処理に引き続いて行な
うのが好ましく、一般に前記耐炎化処理の温度より高い
温度、具体的には、通常、300℃程度〜1500ないし1600
℃程度の温度範囲における、窒素ガス、アルゴンガスな
どの不活性雰囲気中での熱処理を意味する。 しかしながら、この発明者の研究結果によると、第1
図および第2図に示したように、400℃未満の温度領域
においては繊維の元素組成、繊維密度および反応収率に
大きな変化は見られなかった。また、耐炎繊維を窒素雰
囲気中に延伸または収縮させながら炭素化した時の炭素
化炉内の各温度領域における、繊維の伸長、収縮を測定
したところ第3図に示したような挙動を示すことが判明
した。第3図から明らかなように、炭素化の全工程を通
じて延伸しても、400〜600℃の温度範囲にある繊維が主
に伸長し、400℃以下の温度範囲にある繊維は収縮して
いる。 すなわち、400℃までは耐炎化反応の続きとも言える
環化反応あるいは架橋反応が進行し、400℃を超えてか
ら、分子の切断や分解反応が起こるものと推察され、無
理に延伸を行なえば繊維は600℃近傍で破断を起すもの
と考えられる。 したがって、この発明の方法においては、炭素化処理
を少なくとも2段階に分けて行ない、温度400℃の不活
性雰囲気炉出側にテンションコントロール用の駆動ロー
ラーを設けることにより、400℃以下の温度領域におけ
る張力の制御と400℃以上の温度領域における張力の制
御とを別途に行なうこととし、好ましくは300〜400℃の
温度領域における炭素化第1工程、400〜600℃の温度領
域および600〜1500℃の温度領域における炭素化第2工
程に分割して行なう。 前記炭素化処理における張力の制御は、前記耐炎化処
理における張力の制御と同様に、炭素化炉の入側と出側
とに設けた駆動ローラーの速度差により行なうことがで
きる。 前記炭素化第1工程における張力は、通常、4〜(46
−0.1T)kg/mm2[ただし、Tは温度(℃)を示す。]で
あり、好ましくは(25−0.05T)〜(46−0.1T)kg/mm2
である。この張力範囲において、繊維は3%の収縮〜3
%の伸長の範囲の挙動を示す。この張力が(46−0.1T)
kg/mm2を超えると、繊維に破断が起こる。一方、4kg/mm
2よりも小さい場合には、分子の配向が不十分になる。
すなわち、いずれの場合にも、炭素繊維の強度を低下さ
せることになる。前記温度領域が300℃以下の場合に
は、前記範囲の張力を与えても炭素繊維の強度はほとん
ど改善されない。一方、400℃を超えると繊維が破断す
る傾向が高くなり、特に450℃以上の場合には、前記範
囲の張力を与えることによって繊維が破断する。処理時
間は、通常、1〜5分間である。この処理時間が1分間
よりも短い場合には、繊維の炭素化が不充分になる。一
方、5分間より長くしても、それに相当する効果は奏さ
れない。 前記炭素化第2工程の400〜600℃の温度領域における
張力は、通常、1〜3kg/mm2であり、滞在時間は、通
常、1分以内である。この張力が1kg/mm2よりも小さい
場合には、得られる炭素繊維の強度の向上が不十分にな
る。一方、この張力が3kg/mm2を超える場合には、繊維
が破断することがある。滞在時間が1分間を超えると、
得られる炭素繊維の強度が却って低下することがある。 400〜600℃の温度領域において、繊維は非常に伸び易
い状態となり、低い張力で容易に延伸を行なうことがで
きるのであるが、この発明者の研究結果によると、この
温度領域において重要なことは、繊維に延伸を与えるこ
とではなく、繊維に張力を与えることであることが判明
した。 一例を挙げれば、滞在時間を2分間として、0.9kg/mm
2の張力下に5%の延伸を与えるよりも、滞在時間を10
秒間として、1.5kg/mm2の張力下に2.5%の延伸を与える
方が、得られる炭素繊維の強度は向上する。 その理由は明確ではないが、分子を配向させるための
剪断力との関係によるものと推察される。 この発明の方法においては、400〜600℃の温度領域に
おける張力を高めるために、400〜600℃間の昇温速度を
10〜100℃/秒とすることも効果的である。 前記炭素化第2工程の800〜1500℃の温度領域におけ
る張力は、0.8〜15kg/mm2であり、処理時間は、通常、
5分間以内である。張力が0.8kg/mm2よりも低い場合に
は、得られる炭素繊維の強度が低下することがある。一
方、15kg/mm2を超える場合には、繊維が破断することが
ある。処理時間を5分間より長くしても、それに相当す
る効果は奏されない。なお、張力を0.8〜15kg/mm2の範
囲内で変化させても、得られる炭素繊維の強度に変化は
見られないので、前記400〜600℃の温度領域で使用する
駆動ローラーとの間に速度差を有する駆動ローラーは、
必ずしも必要ではないが、得られる炭素繊維の強度の変
動を減少させるためには、駆動ローラーが存在すること
が好ましい。 [発明の効果] この発明の製造方法によると、500kg/mm2以上の引張
強度を有する炭素繊維を安定して製造することができ、
また、この発明の方法により製造された炭素繊維は高い
強度を有するので、たとえば、宇宙航空機器材料、自動
車機器材料、産業機械材料、スポーツ用品材料などに幅
広く利用することができる。 [実施例] 次に、この発明の実施例および比較例を示し、この発
明についてさらに具体的に説明する。 (実施例1) メチルアクリレート5重量%およびイタコン酸2重量
%を共重合モノマーとするアクリロニトリルを用いて、
60%純塩化亜鉛水溶液中で常法により重合し、重合体濃
度6.5重量%の紡糸原液を得た。得られた重合体の分子
量は120000、紡糸原液の粘度は250ポイズ(45℃)であ
った。 次いで、孔径120μm、孔数12000のノズルを用いて、
この紡糸原液を、紡糸原液温度30℃、凝固浴温度3℃,
凝固浴塩化亜鉛水溶液中の塩化亜鉛濃度28%の条件下
に、吐出線速度0.7m/分、ドラフト率1.4で紡出した。 この繊維に、水洗、熱水延伸、乾燥、蒸気延伸(蒸気
圧2kg/cm2G)の各処理を、この順に施し、計17倍の総延
伸を与えて、直径7.5μm、引張強度63kg/mm2、伸度11.
3%、密度1.168のポリアクリロニトリル(PAN)系繊維
を得た。 続いて、このPAN系繊維に、240℃までは張力3.8kg/mm
2、240〜260℃の間は張力8.5kg/mm2の条件下に空気中で
耐炎化処理を行ない、この繊維の酸素取り込み量が7重
量%になるまで反応を進行させて耐炎化繊維を得た。 その後、入口温度350℃、出口温度390℃の窒素雰囲気
炉に、この耐炎化繊維を導入し、張力7.0kg/mm2の条件
下に2分間、熱処理を行ない、引き続き、入口温度400
℃、出口温度600℃の窒素雰囲気炉中に、この繊維を導
入し、張力1.7kg/mm2の条件下に20秒間、熱処理を施し
た後、さらに、この繊維を、入口温度1000℃、出口温度
1300℃の窒素雰囲気炉に導入し、張力3.0kg/mm2の条件
下に2分間、熱処理を施して炭素繊維を得た。 得られた炭素繊維について、直径、密度、引張強度お
よび引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 (比較例1) 前記実施例1において、入口温度350℃、出口温度390
℃の窒素雰囲気炉中における張力7.0kg/mm2に代えて1.7
kg/mm2にしたほかは、前記実施例1と同様にして炭素繊
維を製造した。 得られた炭素繊維について、直径、密度、引張強度お
よび引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 第1表から明らかなように、この比較例により得られ
た炭素繊維は前記実施例1で得られた炭素繊維に比例し
て、その引張強度が劣っていた。 (実施例2) 前記実施例1において、炭素化処理を第1表に示した
条件下に行なったほかは前記実施例1と同様にして炭素
繊維を製造し、得られた炭素繊維について、直径、密
度、引張強度および引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 (比較例2) 前記実施例2において、入口温度400℃、出口温度600
℃の窒素雰囲気炉中における熱処理条件を、張力2.5kg/
mm2、滞在時間30秒に代えて、張力0.6kg/mm2、滞在時間
90秒としたほかは、前記実施例2と同様に実施して炭素
繊維を製造し、得られた炭素繊維について、直径、密
度、引張強度および引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 (実施例3、比較例3,4) 前記実施例1において、炭素化処理を第1表に示した
条件下に行なったほかは前記実施例1と同様にして炭素
繊維を製造し、得られた炭素繊維について、直径、密
度、引張強度および引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 第1表から明らかなように、比較例3,4で得られた炭
素繊維は、実施例1〜3で得られたいずれの炭素繊維に
比較しても、その引張強度が劣っていた。 (実施例4) 前記実施例1において、耐炎化処理条件を第1表に示
したように代えたほかは前記実施例1と同様にして炭素
繊維を製造し、得られた炭素繊維について、直径、密
度、引張強度および引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 (比較例5) 耐炎化処理を第1表に示した条件下に行なって酸素取
り込み量4.0%の耐炎化繊維を調製した。 次いで、この耐炎化繊維を用いて第1表に示した条件
下に炭素化処理を行なったところ、温度400〜600℃、張
力0.5kg/mm2の条件の炭素化第2工程中に繊維が破断し
た。 結果を第1表に示す。 (比較例6) 耐炎化処理を第1表に示した条件下に行なって酸素取
り込み量10.5%の耐炎化繊維を調製した。 次いで、この耐炎化繊維を用いて第1表に示した条件
下に炭素化処理を行なって炭素繊維を得た。 得られた炭素繊維について、直径、密度、引張強度お
よび引張弾性率を測定した。 結果を第1表に示す。 第1表から明らかなように、この比較例で得られた炭
素繊維は、前記実施例1〜7で得られたいずれの炭素繊
維に比較しても、その引張強度が劣っていた。 (比較例7,8) 耐炎化処理を第1表に示した条件下に行った外は、実
施例1と同様にして炭素繊維を製造した。 結果を第1表に示す。 (比較例9) 前記実施例1において、炭素化第2工程の600℃以上
の温度領域における張力を0.1kg/mm2としたほかは、前
記実施例1と同様にして炭素繊維を製造し、得られた炭
素繊維について、直径、密度、引張強度および引張弾性
率を測定した。 結果を第1表に示す。 (比較例10) 前記実施例2において、炭素化第2工程の600℃以上
の温度領域における張力を16.0kg/mm2としたほかは、前
記実施例2と同様にして炭素繊維を製造した。 その結果、繊維の切断が頻発し、炭素化第2工程を安
定的に行なうことができなくなった。また、得られた繊
維の引張強度は210〜440kg/mm2の範囲で著しくばらつい
た。
【図面の簡単な説明】
第1図は耐炎繊維を炭素化処理した場合の熱処理温度と
繊維中の各元素の含有率との関係を示す説明図、第2図
は耐炎繊維を不活性ガス中に熱処理した場合の反応収率
(図中A)および繊維密度(図中B)の熱処理温度によ
る変化を示す説明図、第3図は耐炎繊維を不活性ガス中
に300〜1400℃まで張力を制御せずに段階的に昇温した
場合の炭素化炉内の繊維の伸縮挙動を示す説明図であ
り、Aは炭素化炉前後のローラー速度差により3.4%の
延伸を行なった場合を示し、Bは同じく1.7%収縮させ
た場合を示す。
繊維中の各元素の含有率との関係を示す説明図、第2図
は耐炎繊維を不活性ガス中に熱処理した場合の反応収率
(図中A)および繊維密度(図中B)の熱処理温度によ
る変化を示す説明図、第3図は耐炎繊維を不活性ガス中
に300〜1400℃まで張力を制御せずに段階的に昇温した
場合の炭素化炉内の繊維の伸縮挙動を示す説明図であ
り、Aは炭素化炉前後のローラー速度差により3.4%の
延伸を行なった場合を示し、Bは同じく1.7%収縮させ
た場合を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 昭60−88129(JP,A)
特開 昭60−246820(JP,A)
特開 昭61−119719(JP,A)
特開 昭58−174630(JP,A)
特開 昭60−99010(JP,A)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.ポリアクリロニトリル系繊維に、酸化性雰囲気中に
張力2〜5kg/mm2を与えつつ温度200〜240℃で熱処理す
る耐炎化第1工程と 酸化性雰囲気中に張力4〜10kg/mm2を与えつつ温度240
〜280℃で熱処理する耐炎化第2工程と を有する耐炎化処理を行って、この繊維に5〜10重量%
の酸素を取り込ませた後、 不活性雰囲気中に張力4〜(46−0.1T)[ただし、Tは
温度(℃)を示す。]を与えつつ温度300〜400℃で1〜
5分間熱処理する炭素化第1工程と、 不活性雰囲気中で、張力1〜3kg/mm2の条件下に温度400
〜600℃で1分以内の熱処理を行った後、不活性雰囲気
中で、張力0.8〜15kg/mm2の条件下に温度800〜1500で熱
処理を行う工程を含む熱処理する炭素化第第2工程と を有する炭素化処理を施すことを特徴とする高強度炭素
繊維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62094748A JP2667663B2 (ja) | 1987-04-17 | 1987-04-17 | 高強度炭素繊維の製造方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP62094748A JP2667663B2 (ja) | 1987-04-17 | 1987-04-17 | 高強度炭素繊維の製造方法 |
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-
1987
- 1987-04-17 JP JP62094748A patent/JP2667663B2/ja not_active Expired - Lifetime
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