JP2653208B2 - クロロトリフルオロエチレンの製造方法 - Google Patents

クロロトリフルオロエチレンの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、使用規制されつつあるフロン113(1,1,2−
トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン:CFC−113)か
ら有用物質であるクロロトリフルオロエチレンを製造す
る方法に関する。
[従来の技術] クロロトリフルオロエチレン(CTFE)の製造方法とし
て、従来から種々の方法が知られている。例えば、1,1,
2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを亜鉛で脱
塩素する液相法(特公昭57−5207号および同57−5208号
公報)、ジクロロフルオロメタンとクロロジフルオロメ
タンとの共熱分解法(特公昭40−2132号公報)、および
触媒として種々の活性炭を使用して1,1,2−トリクロロ
−1,2,2−トリフルオロエタンを水素で脱塩素する気相
法(特開昭60−185734号公報)などが知られている。ま
た、Pdなどの貴金属を種々の担体に担持させた触媒も使
用可能である(特公昭43−8454)。
[発明が解決しようとする課題] しかし、亜鉛を用いた液相法では比較的高い収率でCT
FEを得ることが可能であるが、副生する塩化亜鉛の処理
等の問題がある。また共熱分解法では収率が低いという
問題がある。活性炭を用いた気相法では、SVを500
(h-1)程度にしかすることができず生産性が悪い。Pd
を用いた気相法では、Pd触媒が高価であるうえに、触媒
が比較的短期間で失活し、しかも10〜60秒の接触時間で
反応する必要があるので生産性が低く収率も満足できる
程度ではないなどの問題がある。
[課題を解決するための手段] 本発明者等は、スケールアップ時にメリットの多い気
相法に着目し、CTFEが高収率で得られ、触媒の活性が長
時間にわたって維持され、かつ生産性の高いCTFEの製造
方法の研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、1,1,2−トリクロロ−1,
2,2−トリフルオロエタンと水素とを触媒存在下に反応
させることによってクロロトリフルオロエチレンを製造
する方法において、触媒として、鉄または鉄、ニッケ
ル、銅、錫もしくは亜鉛の酸化物を使用することを特徴
とする方法に存する。
本発明の方法で使用される触媒は、鉄または鉄、ニッ
ケル、銅、錫もしくは亜鉛の酸化物である。
また、本発明の方法で、上記触媒を担体に担持させて
なる触媒を好ましく使用することができる。担体に載せ
ることにより活性が増加し選択性が向上し、触媒寿命が
長くなる。
このような担体として好ましいものは、SiO2、MgO、
活性炭、Y−ゼオライト、Al2O3、ZrO2、シリカアルミ
ナ、シリコンカーバイド、珪藻土等である。
従って、本発明で用いることのできる好ましい触媒と
して、例えば、Ni/SiO2、Ni/MgO、Ni/活性炭、Ni/Y−ゼ
オライト、Fe/SiO2、Cr/SiO2等が挙げられる。触媒に占
める活性物質の重量は0.1〜50重量%くらいが好まし
い。
1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンと水
素との反応モル比は特に限定されるものではないが、通
常、水素が1〜10倍モル、好ましくは1〜5倍モルであ
る。水素の過剰率を下げると選択性は低下し、逆に、水
素の過剰率を上げると水素の利用率が低下する。
反応温度は、常圧で300〜550℃、好ましくは400〜500
℃である。これより低温での反応では転化率が低く、逆
に、これより高温では選択率の低下や触媒の劣化を招
く。
反応圧力は特に制限なく、あらゆる実用的な反応圧力
下で実施可能である。
原料ガスの供給速度(SV)は好適には100〜20000(h
-1)である。ここでSVは、 で定義される。
反応ガスは希釈せずにそのまま用いてもよいし、N2
Ar、Heなど反応に影響を与えないガスで希釈して用いて
もよい。
本発明の方法は水蒸気の存在下に行うことが好まし
い。水蒸気は触媒の劣化を防止するのに極めて有効であ
る。
[実施例] 実施例1 触媒は、各金属を硝酸塩水溶液にシリカ(エアロジ
ル)または酸化マグネシウムを分散させ、蒸発乾固した
後、空気中600℃で焼成し粒径を32〜60メッシュにそろ
えた。反応は常圧固定床流通反応装置を用いた。触媒量
は1.0gとし、予めAr気流中450℃で2時間の前処理を行
った後、同じ温度で反応を開始した。原料ガス組成は、
Ar:CFC−113:H2=56:10:29(ml/分)で全流速95ml/分と
した。生成するHClはKOH水溶液で吸収除去し、他の生成
物はガスクロメトグラフィーにより分析した。
上記のようにして調製した担持NiOまたはFe2O3を触媒
として反応を行ったときの転化率の経時変化を第1図に
示す。ここにあげた触媒はいずれも活性を示している。
NiO20重量%/SiO2の活性は極めて高く、8時間の反応を
通して転化率は100%であった。また、選択率は80%で
あった。担持NiO触媒の特性をより詳細に調べるため、
担持率を10重量%、触媒量も1/5の0.2gに減らして反応
を行った。その結果も第1図に示す。活性は反応の初期
に僅かに増加している。また、触媒種の量はFe2O320重
量%/SiO2の1/10と少ないにもかかわらず、転化率は約7
0%と約6倍高い値を示している。また、選択率も100%
であった。反応に使用前後の触媒についてXRD測定をお
こなった結果は、反応中にNiOが金属Niにまで還元され
ていることを示しており、実際、反応前に水素で還元処
理を行った触媒もほぼ同様の触媒特性を示した。
実施例2 種々の担持触媒を用いてクロロトリフルオロエチレン
を製造した。触媒の製造方法を以下に示す。
担持触媒の調製 担持触媒として、Ni/SiO2(1、2、5、10、20、30
重量%)、Ni/MgO(20重量%)、Ni/活性炭、Ni/Y−ゼ
オライト、Fe/SiO2、Cr/SiO2を調製した。括弧内の数値
は触媒に占めるニッケルの量を示している。各触媒の調
製手順を以下に示す。
(1)Ni/SiO2 シリカエアロジル20gに下記表に示す量の硝酸ニッケ
ル(Ni(NO3・5H2O)が溶解した水溶液107mlを滴下
した。全量滴下後、得られた湿ったシリカをよく混練し
た。これを空気中70℃にして一昼夜撹拌し、続いて450
℃で6時間焼成した。シリカはエアロジルのような微細
なものから石英砂のような大きなものまで使用すること
ができる。
(2)Ni/MgO MgO20gを水500mlに分散させた。これに、硝酸ニッケ
ル19.5gが溶解した水溶液200ccを滴下し、全液を一日室
温下で撹拌した。その後、液を80〜90℃に加熱し水分を
蒸発させた。蒸発完了後の乾固物を120℃で一昼夜乾燥
させた。続いて600℃で5分間、空気中で焼成した。
(3)Ni/活性炭 粒径を32〜60メッシュにそろえた活性炭4.54gに硝酸
ニッケル4.42gが溶解した水溶液8ccを滴下した。全量滴
下後、得られる湿った活性炭をよく混練した。これを12
0℃で一昼夜乾燥した。これは高温焼成せずに反応に用
いた。
(4)Ni/Y型ゼオライト 0.5Nの塩化ニッケル水溶液200mlにY型ゼオライト9g
を投入した。これを撹拌しながら、70℃に6時間保っ
た。室温に冷却後、濾別し、ついで120℃で一昼夜乾燥
した。活性炭触媒と同様、乾燥処理をせずに反応に用い
た。
(5)Fe/SiO2 1日撹拌することを省略する以外は(2)Ni/MgOと同
じ調製手順を用い、SiO220gに対して硝酸鉄(Fe(NO3
・9H2O)25.3gを使用した。
(6)Cr/SiO2 (5)Fe/SiO2と同じ調製手順を用い、SiO220gに対し
硝酸クロム(Cr(NO3・9H2O)26.3gを使用した。
上記触媒を用いて第1表に示す条件下に反応を行っ
た。結果を第1表に示す。
実施例3 原料ガス組成を、Ar70ml/分、フロン113を7.2ml、H22
0mlおよび水蒸気2.5ml、全流量を99.7mlとして、石英砂
3.0gに0.5gのNiOを担持させた触媒を用い、450℃で反応
を行った。24時間経過後も転化率95%、選択率90%が維
持された。これに対して、水を添加しない場合、9時間
で、すでに転化率は84%まで低下し、これにともなって
選択率も83%まで低下した。
実施例4 市販のFe2O3(試薬特級)を粒径32〜60メッシュにそ
ろえ、1gを反応管に充填した。アルゴン気流中450℃で
2時間の前処理を行ってから、同じ温度で原料ガスを流
し、反応を開始した。原料ガス組成は、希釈用のアルゴ
ン56cm3/分、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロ
エタン10cm3/分および水素29cm3/分で、全流量は95cm3/
分である。反応により生成したガスは水洗、乾燥した
後、ガスクロマトグラフ法により分析した。その結果、
1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンの転化
率は28%であり、CTFEの選択率は98.9%であった。
実施例5〜8 触媒として第2表に示す酸化物を用いたことを除いて
は実施例4と同様にして反応および分析を行った。使用
した触媒はいずれも試薬特級であり、粒径は実施例4と
同じである。結果を第2表に示す。
表の結果から明らかなように、極めて高い選択率でCT
FEが得られた。
[発明の効果] 本発明によれば、Pdのように高価な触媒を用いること
なく、クロロトリフルオロエチレンを選択性よく効率よ
く得ることができ、また触媒を追加または賦活する工程
が少なくてすむ。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の方法によりクロロトリフルオロエチレ
ンを製造した際の転化率と選択率を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B01J 23/745 C07B 61/00 300 23/755 B01J 23/74 301Z C07B 61/00 300 321Z (56)参考文献 特開 昭63−93737(JP,A) 特開 昭62−61936(JP,A) 特公 昭39−10311(JP,B1) 米国特許2704775(US,A) 米国特許2864873(US,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロ
    エタンと水素とを触媒存在下に反応させることによって
    クロロトリフルオロエチレンを製造する方法において、
    触媒として、鉄または鉄、ニッケル、銅、錫もしくは亜
    鉛の酸化物を使用することを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】触媒として、鉄または鉄、ニッケル、銅、
    錫もしくは亜鉛の酸化物を担体に担持させたものを使用
    する請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】水蒸気の存在下に反応を行う請求項1また
    は2記載の方法。
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