JP2650856B2 - C−末端アミド化酵素の製造方法 - Google Patents

C−末端アミド化酵素の製造方法

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JP2650856B2
JP2650856B2 JP6158285A JP15828594A JP2650856B2 JP 2650856 B2 JP2650856 B2 JP 2650856B2 JP 6158285 A JP6158285 A JP 6158285A JP 15828594 A JP15828594 A JP 15828594A JP 2650856 B2 JP2650856 B2 JP 2650856B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、C−末端α−アミド化
酵素又はその誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、真核細胞において、ある種のペ
プチドまたは蛋白質はメッセンジャーRNA(mRN
A)から翻訳された後、細胞内酵素により、さらに修飾
(ポスト・トランスレーショナル・モディフィケーショ
ン)され、天然型のペプチドまたは蛋白質が生ずること
が知られている。しかしながら、現在遺伝子操作によっ
て、真核細胞由来ペプチドまたは蛋白質を生産する宿主
として広く用いられている大腸菌のような原核細胞で
は、mRNA翻訳後のペプチドまたは蛋白質の修飾をお
こなうことができない。
【0003】この真核細胞特有なペプチドまたは蛋白質
の修飾の一つに、ペプチドまたは蛋白質のカルボキシル
基末端(C−末端)α位がアミド化(−COOH基を−
CONH2 基へ変換すること) される修飾反応がある。
すでにこの修飾は、真核細胞由来の多くの生理活性ペプ
チドまたは蛋白質に起こっていることが知られており、
又、しばしばこの修飾はこれらペプチドまたは蛋白質の
生理活性作用発現に必須であることが知られている。一
例を示せば、ヒト・カルシトニンの場合、天然型のC−
末端プロリンアミド残基をプロリン残基に変換すると、
生理活性が1600分の1にも減少することが知られて
いる。
【0004】近年、真核細胞由来のC−末端α−位がア
ミド化されたペプチドまたは蛋白質(以後アミド化ペプ
チドと略す)の生合成機構を明らかにすることの重要性
に加え、遺伝子操作を用いてアミド化ペプチドを大量生
産する手段としても、真核細胞特有なアミド化ペプチド
の詳細な生合成機構に関する研究がなされてきた。ま
ず、多くのアミド化ペプチドのcDNAの解析から、こ
れらアミド化ペプチドの前駆体構造が明らかにされた。
【0005】この結果アミド化ペプチドの共通の前駆体
構造は、一般式R−X−Gly(式中、XはC−末端α
−アミド化される任意のアミノ酸残基を示し、Glyは
グリシン残基を示し、そしてRはペプチドの残りの部分
を示す)であることが推定された。一方、このアミド化
ペプチド前駆体をアミド化ペプチドに変換する(R−X
−Gly→R−X−NH2)酵素(C−末端α−アミド化
酵素)については、1982年Bradburyらにより初めて
報告された。すなわち彼らは、合成基質D−Tyr−V
al−GlyをD−Tyr−Val−NH2 に変換する
酵素活性が、ブタ、下垂体中に存在することを示し、さ
らに基質のC−末端グリシン残基がアミドの窒素(N)
の供与体として必須であることを示した(Bradbury,A.F.
等;Nature,298,686−688,1982) 。
【0006】次に、Eipperらは、この酵素活性がラット
下垂体の前葉・中葉及び後葉に存在していることを報告
し、この酵素の最大酵素活性を得るためには、分子状酵
素のほかに、銅イオン(Cu2+) とアスコルビン酸が必
要であることを報告した(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,8
0, 5144−5148,1983)。 さらに、最近では種々の組織から、C−末端α−アミド
化酵素の精製が試みられており、まずMizuno等はアフリ
カツメガエル(Xenopus laevis) の体皮より、C−末端
α−アミド化酵素を単一で純粋な状態まで精製すること
に成功し(Mizuno,K等、Biochem.Biophys.Res.Commun.1
37,984−991,1986. 及び特開昭62−289184)、
又、本発明者らにより、この酵素のcDNAクローニン
グが成された。
【0007】この結果、この酵素の全アミノ酸配列が明
らかにされ、さらにカエルには少なくとも種類の異なる
2種類の酵素が存在していることも明らかにされた(Miz
uno,K 等、Biochem.Biophys.Res.Commun.148,546−552,
1987.Ohsue,K等、Biochem.Biophys.Res.Commun.150,127
5 −1281,1988.及び特開平1−104168)。一方、
Eipperらは、牛脳下垂体由来のC−末端α−アミド化酵
素のcDNAクローニングを行い、牛脳下垂体由来のC
−末端α−アミド化酵素は前者(Xenopus由来)
とはアミノ酸配列上明らかに異なる酵素であることを明
らかにした(Eipper,B.等Mol.Endo.1,777−790,1987) 。
【0008】これらの研究により現在までに、真核細胞
ではC−末端α−アミド化酵素が複数存在していること
が明らかにされてきた。このことは、個々のC−末端α
−アミド化酵素がそれぞれ異なる基質特異性を示す、言
い換えれば、生体内において個々のアミド化ペプチドの
生合成に関し、それぞれ固有のC−末端α−アミド化酵
素が存在している可能性を示しているが、現在までのと
ころ、この問題に関する詳細については明らかにされて
いない。以上述べた様に、現在までに解明されてきた真
核細胞のアミド化ペプチド生合成機構を考えれば、以下
に示す方法を用いてアミド化ペプチドを大量生産するこ
とが可能と思われる。
【0009】すなわち、まず、一般式R−X−Glyで
示されるアミド化ペプチド前駆体を遺伝子操作を用いて
大腸菌などの原核細胞で大量発現させ、大量かつ安価に
製造する方法を見いだし、次に、真核細胞由来のC−末
端α−アミド化酵素を何らかの方法で十分量確保し、さ
らに、in vitroでアミド化ペプチド前駆体と、C−末端
α−アミド化酵素とを用いて、アミド化ペプチドを生産
する至適反応条件を確立することができれば、アミド化
ペプチドを大量かつ安価に製造することが可能と思われ
る。事実、現在までに、この考え方に基づき、アミド化
ペプチドを製造しようとする試みが、数多くなされてき
た。
【0010】まず第一に、アミド化ペプチド前駆体の製
造に関しては、大腸菌を用いた遺伝子操作による製造が
数多く報告されている。例えば、ベネット、アラン、デ
ビット等は、クロラムフェニコールアセチルトランスフ
ェラーゼ(CAT)蛋白質の活性部分とヒト・カルシト
ニン前駆体(hCT−Gly)の融合タンパクを大腸菌
で発現した後、ヒト・カルシトニン前駆体を生産する方
法について報告している(特表昭60−50139
1)。
【0011】しかし、この方法では融合蛋白質44mgか
らヒト・カルシトニン前駆体(hCT−Gly)が約
1.1〜2.0mgしか得られず、hCT−Glyの生産
系としては効率よい方法とは言えない。一方、本発明者
らは、β−ガラクトシターゼ由来の蛋白とヒト・カルシ
トニン前駆体構造を含むペプチド(hCT−Gly−L
ys−Lys−Arg)との融合タンパクを大腸菌を用
いて発現させ、hCT−Gly−Lys−Lys−Ar
gを極めて効率よく生産する方法について報告している
(特開平1−10999)。
【0012】しかし、このペプチドは、そのままではC
−末端α−アミド化酵素の基質とはならず、何らかの方
法でhCT−Glyへ変換する必要がある。第二に、C
−末端α−アミド化酵素の選択及び量の確保に関して
は、イートン、マイケル等による、ブタ下垂体より部分
的に精製したC−末端α−アミド化酵素を用いてヒト・
カルシトニンを製造した例(特表昭63−50154
1)がある。
【0013】しかし、この方法も含め、天然の組織及び
細胞から目的とするC−末端α−アミド化酵素を十分量
得ることは困難であり、コストも高く、実際、産業上ア
ミド化ペプチドを大量に生産するには実用的でないと考
えられる。この点に関し、本発明者らは、カエル体皮由
来のC−末端α−アミド化酵素及びこの誘導体を遺伝子
操作を用い、大腸菌内で大量に発現させ、この酵素を大
量に確保する方法を開発した(特開平1−10416
8)。
【0014】しかしながら、大腸菌内で発現させたカエ
ル体皮由来のC−末端α−アミド化酵素及びその誘導体
は、カエル体皮より精製した酵素に比べ比活性が低く、
アミド化ペプチドを大量生産するのに用いるためには、
現在、より比活性の高い酵素の供給方法が望まれてい
る。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、より
比活性の高いC−末端α−アミド化酵素の製造方法を提
供しようとするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、比活性の
高いC−末端α−アミド化酵素をいかにして十分量確保
するかに関する解決策としては、本発明者等が報告した
アフリカツメガエル体皮由来のC−末端α−アミド化酵
素及びその誘導体を遺伝子操作し、動物細胞で発現させ
ることにより、比活性の高いC−末端α−アミド化酵素
を十分量生産できることを見いだした。
【0017】従って本発明は、Xenopus由来のC
−末端α−アミド化酵素又はその誘導体に対応する遺伝
子を動物細胞へ導入し、この細胞を培養することによ
り、培養上清中より実用化しうるに十分量のC−末端α
−アミド化酵素を得ることを特徴とするC−末端α−ア
ミド化酵素の製造方法を提供しようとするものである。
【0018】
【具体的な説明】
(1)ヒト・カルシトニン前駆体及び他のアミド化ペプ
チド前駆体の製造方法 本発明者らは、以前ヒト・カルシトニン前駆体構造を含
むペプチド(hCT−Gly−Lys−Lys−Arg
又はHPCT)を極めて効率よく、しかも大量に得る方
法を報告した(特開平1−10999)。しかしなが
ら、このペプチドは、直接、C−末端α−アミド化酵素
の基質とはなりえない。したがって、ヒト・カルシトニ
ン前駆体(hCT−Gly)を得るためには、何らかの
方法を用いて、hCT−Gly−Lys−Lys−Ar
gのC−末端部分に存在するLys−Lys−Argを
除去しなければならない。
【0019】本発明者等は、hCT−Gly−Lys−
Lys−ArgをカルボキシペプチダーゼB(CpB)
で処理すれば、hCT−Gly−Lys−Lys−Ar
gから目的とするヒト・カルシトニン前駆体(hCT−
Gly)が、極めて効率よく得られることを見いだし
た。
【0020】なお、本発明の実施例には、hCT−Gl
y−Lys−Lys−ArgをCpBを用いてhCT−
Glyを製造する方法について具体的に述べるが、この
方法は、一般式R−X−Gly(式中、R,X、及びG
lyは前記の意味を有する)で示されるアミド化ペプチ
ド前駆体の製造方法として、一般式R−X−Gly−B
(式中、R,X,Gly、及びBは前記の意味を有す
る)で示されるアミド化ペプチド前駆体構造を含むペプ
チドを、まず、化学合成又は遺伝子操作で大腸菌などの
原核細胞で大量かつ安価に製造し、次にこれをCpBで
処理すれば、目的とするアミド化ペプチド前駆体(R−
X−Gly)が容易に得ることができることを示してい
る。
【0021】本発明におけるアミド化ペプチドの製造法
の有用性は、従来の技術(特表昭60−501391)
に報告されているような、アミド化ペプチド前駆体(R
−X−Gly)を融合蛋白法を用いて、直接大腸菌内で
発現させ製造する方法に比べ、以下に述べる点において
優れている。ヒト・カルシトニン前駆体(hCT−Gl
y)を例に具体的に示せば、このペプチドは、リジン残
基とアスパラギン酸残基をそれぞれ一残基含む、全体と
して33アミノ酸残基から成るペプチドで、ペプチド全
体としてpI(等電点)は中性付近を示す。
【0022】従って、このペプチドを融合蛋白質として
大腸菌などで発現させ、この融合蛋白質を、適当なプロ
テアーゼを用いてhCT−Glyを回収する場合に、h
CT−GlyをhCT−Glyの相手方蛋白質、ならび
に相手方蛋白質より生ずるペプチドフラグメントと分離
することが必要となるが、hCT−GlyのpIが中性
付近を示す為に、簡単なイオン交換クロマトグラフィー
などの分離操作でhCT−Glyを完全に精製すること
が困難である。
【0023】一方、先に本発明者らにより開発された様
に(特開平1−10999)hCT−GlyのC−末端
にLys−Lys−Argを付加したペプチド(hCT
−Gly−Lys−Lys−Arg)はこのペプチド全
体としてpIは塩基性を示し、簡単なイオン交換クロマ
トグラフィーを行うことにより、容易に精製することが
できる。さらに、このようにして精製したhCT−Gl
y−Lys−Lys−ArgをCpBで処理すれば、目
的のアミド化ペプチド前駆体(hCT−Gly)は、こ
の反応で副生すると考えられるhCT−Gly−Ly
s、hCT−Gly−Lys−Lys、及び原料のhC
T−Gly−Lys−Lys−Argからは簡単なイオ
ン交換クロマトグラフィー、または逆相クロマトグラフ
ィーなどを用い簡単に精製することができる。
【0024】次に、この方法の第二の利点としては、本
発明者等により開発された(特開平1−10999)系
において、hCT−Gly−Lys−Lys−Arg生
産に用いたのと基本的には同一な発現プラスミッドを用
い、hCT−Glyを発現したところ、hCT−Gly
−Lys−Lys−Argの場合に比べ、hCT−Gl
yとβ−ガラクトシターゼの部分構造を含む融合タンパ
クの生産性が、hCT−Gly−Lys−Lys−Ar
gのそれに比べ、著しく減少すると言うまったく予測し
得ない事実を見いだした。
【0025】又、このキメラ蛋白質の生産性の減少は、
hCT−GlyのC−末端に塩基性アミノ酸残基、例え
ばArg残基を付加したhCT−Gly−Arg、さら
にはhCT−Gly−Arg−Arg−Argなどでは
hCT−Gly−Lys−Lys−Argと同じくらい
の生産性を示すと言うまったく新しい事実を発見した。
従って、これらの実験事実を考え合わせると、本発明で
示すアミド化ペプチドの新規製造法が、従来法に比べい
かに優れているかが判る。
【0026】(2)C−末端α−アミド化酵素の製造法 すでに本発明者らは、カエル体皮由来のC−末端α−ア
ミド化酵素、及びこの誘導体を遺伝子操作を用い、大腸
菌内で大量に発現させ、この酵素を大量に発現させるこ
とに成功している(特開平1−104168)。しか
し、この方法で発現したC−末端α−アミド化酵素及び
その誘導体は、大腸菌内でそのほとんどが変性(蛋白質
のアミノ酸配列は同一であるが、二次・三次構造が異な
る)しており、C−末端α−アミド化酵素活性を示さな
い。
【0027】従って、この様な方法で製造した不活性な
酵素は、何らかの方法を用いて活性型に変換する(rena
turation) ことが必要となる。前記記載の発明において
は、この問題を解決するために、大腸菌で発現させた酵
素を尿素またはグアニジン塩酸塩などの変性剤で処理し
た後、renaturationさせることにより部分的にこの問題
を解決した。しかし、この方法でもこれらの酵素活性は
天然より精製したC−末端α−アミド化酵素の比活性に
は及ばないことが判った。
【0028】本発明者らは、この原因の一つが、カエル
体皮由来のC−末端α−アミド化酵素及びこの誘導体に
複数個存在しているシステイン残基(カエル体皮由来の
C−末端α−アミド化酵素の一つは分子内に10個のシ
ステイン残基を有している)が、大腸菌内でこの酵素を
発現した場合、天然型と同様なシスチン結合(S−S結
合)を形成することができないと考えた。そこで、本発
明者らは、大腸菌で発現した酵素を前記した変性剤に加
え、還元剤(例えば、DTTまたは2−メルカプトエタ
ノール)などで処理した後、様々な方法を用いて酸化さ
せることにより、renaturationを試みたが、酵素活性を
高めることはできなかった。
【0029】そこで、本発明者らは、この問題を解決す
る新たな手段として、先に得た、カエル体皮由来のC−
末端α−アミド化酵素cDNAを用い、2種類(カエル
体皮由来のC−末端α−アミド化酵素及びその誘導体)
のC−末端α−アミド化酵素を動物細胞で発現させるこ
とにより、酵素活性の高いC−末端α−アミド化酵素
を、大量に得ることを計画した。
【0030】すなわち、まず、カエル体皮由来のC−末
端α−アミド化酵素(XA457)としては、特開平1
−104168の第1−1図〜第1−3図に記載されて
いるpXA457cDNAにコードされているアミノ酸
配列1から400番目までのアミノ酸一次配列をコード
するcDNAを、一方、その誘導体(XA799 Bg
lII)としては、特開平1−104168の第16−1
図〜第16−3図に記載されているpXA799 cD
NAにコードされているアミノ酸配列−39から692
番目までのアミノ酸一次配列をN−末端に、これにひき
続くC−末端がロイシン残基が付加したアミノ酸配列を
コードする遺伝子を、それぞれSV40プロモーター支
配下、動物細胞内で発現されるようにデザインしたプラ
スミッド(このプラスミッドをそれぞれpKDPXA4
57及びpKDPXA799 BglIIとする)を作製
する。
【0031】次にこれらのプラスミッドを常法に従い、
それぞれCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来
細胞)へ導入し、目的遺伝子が導入された細胞(この細
胞をそれぞれCHO/pKDPXA457−α及びCH
O/pKDPXA799 BglII−αとする)を得
た。次に、このようにして得た細胞をメトトレキセート
(MTX)濃度を順次上昇させた培地で培養することに
より導入遺伝子が増幅された細胞株を得た。
【0032】最終的には、pKDPXA799 Bgl
IIを導入した細胞集団から、クローニング操作を行うこ
とにより、大量のC−末端α−アミド化酵素活性(20
00unit/ml) を培養上清中へ分泌するC−末端α−ア
ミド化酵素(これをXA799 BglIIとする)生産
株CHO/10Cを樹立することができた。さらに、本
発明者らは、前記培養上清中に分泌されたC−末端α−
アミド化酵素は、この培養液を硫安(硫酸アンモニウ
ム)で処理すれば、特異的にこの酵素を沈澱させること
ができることを見いだした。以上の結果、本発明者ら
は、実用化しうるに十分量のC−末端α−アミド化酵素
を製造する方法を確立することができた。
【0033】(3)in vitroにおけるアミド化反応の至
適反応条件の設定 すでに述べた様に、真核細胞においては、種類の明らか
に異なるC−末端α−アミド化酵素が存在していること
が判っているが、これらの酵素の基質特異性に関する詳
細については、判っていない。一方、一般にこれらの酵
素は、最大酵素活性を示すためには、分子状酵素、銅イ
オン(Cu2+) 、アスコルビン酸及びカタラーゼが必要
であることが、主に合成基質(例えばD−Tyr−Va
l−Gly)を用いた実験より判っており、また、個々
に部分精製、または完全に精製された、C−末端α−ア
ミド化酵素についての至適pHについても報告されてお
り、それぞれの酵素について異なった至適pHが存在して
いることも判っている。
【0034】さらに、特表昭63−501541で報告
されているように、ヒト・カルシトニン前駆体を、ブタ
・下垂体より部分的に精製したC−末端α−アミド化酵
素でヒト・カルシトニンを製造する場合、この酵素の至
適反応条件ではヒト・カルシトニン前駆体の溶解度が低
く、目的とするヒト・カルシトニンを得られないという
例もある。従って、これらの事実を考え合わせると、in
vitroでアミド化ペプチド前駆体とC−末端α−アミド
化酵素を用いて、目的とするアミド化ペプチドを効率よ
く得るためには、個々の、アミド化ペプチド前駆体及び
C−末端α−アミド化酵素を用いて、in vitroにおける
アミド化反応の至適反応条件を設定することが重要とな
る。
【0035】そこで、本発明者等は、まず本発明で製造
した、ヒト・カルシトニン前駆体(hCT−Gly)
と、C−末端α−アミド化酵素(XA799 BglI
I)を用いて、ヒト・カルシトニンをin vitroで製造す
る場合の、至適反応条件、すなわち、a)アスコルビン
酸濃度、b)カタラーゼ濃度、c)銅イオン(Cu2+)
濃度、d)緩衝液の種類・濃度・pH、及びe)基質(h
CT−Gly)濃度について個々の至適条件を検討し
た。
【0036】この結果、a)アスコルビン酸濃度は1〜
7mMで反応は効率よく進んだが、さらに濃度が高い(2
0mM)と反応効率が逆に低下した。b)カタラーゼ濃度
は、1μg/ml以上の濃度があればよいことが判った。
c)銅イオン濃度は、0,1,10μMと濃度が高くな
るにつれて反応効率が高まるが10μM以上の濃度で
は、反応効率が変わらなかった。d)緩衝液の種類、濃
度、及びpHに関しては、酢酸アンモニウム、10mM、pH
6〜7が良いことが判った。さらに、e)基質濃度に関
しては、5mg/mlまで基質濃度を高めることができるこ
とが判った。
【0037】なお、本発明で見いだしたin vitroでのア
ミド化反応条件を用いれば、特表昭63−501541
に報告されているような、ヒト・カルシトニン前駆体
(hCT−Gly)の溶解度が悪く、アミド化反応が効
率よくおこらないと言う問題は、起こらず、ヒト・カル
シトニンを効率よく得ることができた。次に、この様に
して求めた反応条件を基に、実際、ヒト・カルシトニン
前駆体とC−末端α−アミド化酵素(XA799 Bg
lII)を用い、ヒト・カルシトニン(hCT)をin vit
roで効率よく、安価に製造する方法を見いだした。
【0038】
【発明の効果】本発明では、第一に、前記R−X−Gl
y−Bで表わされる原料ペプチド又は蛋白質例えばヒト
・カルシトニン前駆体構造を含むペプチドhCT−Gl
y−Lys−Lys−Argを、カルボキシペプチター
ゼB(CpB)により、効率よく、前記R−X−Gly
で表わされる前駆体、例えばヒト・カルシトニン前駆体
hCT−Glyに変換することができる。
【0039】第二に、前記した方法で製造した前駆体R
−X−Glyと、C−末端α−アミド化酵素とを用い、
in vitroで、目的とするC−末端アミド化ペプチドR−
X−NH2 を製造することができる。第三に、カエル体
皮由来のC−末端α−アミド化酵素及びその誘導体に対
応する遺伝子を遺伝子操作を用い、動物細胞(CHO
cell)で発現させることにより、実用化しうるに十
分量のC−末端α−アミド化酵素を製造することができ
る。この結果、産業上有用なC−末端がアミド化された
生理活性ペプチドを大量しかも安価に製造することがで
きる。次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明
する。
【0040】実施例1. ヒト・カルシトニン前駆体
(hCT−Gly)の製造法 hCT−Gly−Lys−Lys−Arg(このペプチ
ドは特願昭63−49728の11頁に記載されている
HPCTと同一化合物であり、この物の製造に関しては
上記特許出願明細書に記載の方法を用いて製造できる)
280mgを、まず、0.1N酢酸30mlに完全に溶か
し、次に、この溶液にTris・HCl(pH8.0)3
0mlと水を加え、全体として230ml(pH7.8)の反
応溶液を作製する。次に、この反応溶液にカルボキシペ
プチターゼB(Sigma社より購入)560μgを加
え、37℃で30分間反応させた。
【0041】この反応の進行は、反応液の一部をYMC
PackedカラムA−302(0.46cm×15cm
・山村化学研究所)を用いた高速液体クロマトグラフィ
ー(HPLC)に供し、目的とするhCT−Gly、反
応中間体のhCT−Gly−Lys−Lys、hCT−
Gly−Lys、及び原料のhCT−Gly−Lys−
Lys−Argを0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)
と0.1%TFA−50%CH3CNを用いた直線濃度
勾配で溶出させ解析した。この結果、上記反応は37℃
30分間で完全に終了していることが判った(図1参
照)。
【0042】hCT−Glyの単離は、上記反応液をY
MC PackedカラムD−ODS−5(2cm×25
cm・山村化学研究所)を用いたHPLCに供し、つづい
て、hCT−Glyを0.1%TFA−50%CH3C
Nで溶出させた。次に、溶出画分を集め、凍結乾燥する
ことにより、最終的にhCT−Glyを235mg得た。
このようにして得たhCT−Glyの同定は、一部を6
N塩酸で24時間加水分解した後のアミノ酸分析値(日
立製作所製835−20型アミノ酸分析機を用いた)が
理論値とよく一致すること、さらには、Protein Sequen
cer(Applied Biosystems社製 470A Protein Sequencer)
を用いてアミノ酸配列を決定することによって行った。
【0043】なお、以下にhCT−Glyのアミノ酸分
析の結果を示す。ただし( )内は理論値。 Asx 2.83(3),Thr 4.51(5),S
er 0.91(1),Glx 1.94(2),Pr
o 2.04(2),Gly 4.83(5),Ala
1.78(2),Val 0.98(1),Met
0.97(1),Ile 0.95(1),Leu
2.00(2),Tyr 0.95(1),Phe
2.89(3),Lys 0.99(1),His
0.97(1).
【0044】実施例2. C−末端α−アミド化酵素の製造法 (1)動物細胞発現プラスミッドpKDPXA457及
びpKDPXA799BglIIの作製(図2参照) pKDPXA457及びpKDPXA799 BglII
は、それぞれ、本発明者らによりクローニングされたア
フリカツメガエル体皮由来のC−末端α−アミド化酵素
cDNAの内、特開平1−104168の第1−1図〜
第3−3図に記載されているpXA457中のcDNA
にコードされているアミノ酸配列1から400番目まで
のアミノ酸配列を持つ蛋白と、特開平1−104168
の第16−1図〜第16−3図に記載されているpXA
799中のcDNAにコードされているアミノ酸配列−
39から692までのアミノ酸一次配列をN−末端に、
これに引き続くC−末端にロイシン残基が付加した蛋白
を動物細胞で発現させるようにデザインされたプラスミ
ッドである。
【0045】すなわち、上記プラスミッドはいずれも、
目的とする蛋白(C−末端α−アミド化酵素)に対応す
るcDNA遺伝子が、動物細胞内でSV40(Simian V
irus40)アーリープロモーターの支配下転写され、しか
も転写後、真核細胞でmRNAが生成するために必要と
考えられているスプライシング及びpoly Aの付加
を行わせるために、SV40プロモーターと、対応する
cDNA遺伝子の5′末端の間にはウサギβグロビン遺
伝子由来のイントロンが、また、cDNAの3′末端に
はウサギβグロビン遺伝子由来のpoly A付加シグ
ナルが付加してある。
【0046】さらに、これらのプラスミッドは上記遺伝
子以外に動物細胞へ目的遺伝子を導入した後、目的遺伝
子が増幅した細胞をクローン化するのに利用されるdh
fr(ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子がSV40のアーリ
ープロモーター支配下に発現されるようにデザインされ
ている。なお、本発明で用いたプラスミッドpKDPX
A457、及びpKDPXA799 BglIIで形質転
換した大腸菌は、それぞれE.Coli SBM 30
0、及びE.Coli SBM 301と命名され、工
業技術院生命工学工業技術研究所に、微工研菌寄第22
35号(FERM P−2235)、及び微工研菌寄第
2236号(FERM P−2236)として、寄託さ
れている。
【0047】(2)pKDPXA457又はpKDPX
A799 BglIIのCHO細胞への導入 pKDPXA457とpKDPXA799 BglIIを
それぞれdihydrofolate reductase遺伝子(dhfr)
の欠損したチャイニーズハムスター卵巣由来細胞CHO
(以下CHO dhfr- 細胞と略す。なお、この細胞
はCHO dhfr (- ) Cell SBM306と命
名され、工業技術院生命工学工業技術研究所に微工研条
寄第2241号(FERM BP−2241)として寄
託されている。)(Hanaka,S.等Mol.Cell.Biol.7 2578−
2587,1987)にリン酸カルシウム共沈法を用いて導入し
た。
【0048】すなわち、まず、核酸を含むMinimum Esse
ntial Medium(MEM)Alpha Medium(GIBCO、α+ ME
M培地)に、10%ウシ胎児血清(FBS)(Flow La
b.)と抗生物質としてペニシリンG(50U/ml)とス
トレプトマイシン50μg/mlを含む培地で継代培養し
たCHO dhfr- 細胞を遺伝子導入12時間前に8
0cm2 のTフラスコ(T80,Nunc)あたり1.6
×106 細胞/30ml/T80になるようにまき直し、
さらに遺伝子導入4時間前に、新しいα+ MEM培地
(10%FBS、抗生物質を含む)30mlで培地交換し
た。
【0049】一方、プラスミッドpKDPXA457及
びpKDPXA799 BglIIをそれぞれ10μgあ
たり240μlの滅菌精製水に溶解し、等量のBuff
erA(0.5M CaCl2 ,0.1M HEPE
S)を加え、混合し、10分間室温で放置した後、この
混合液に、Buffer B(0.28M NaCl,
0.05M HEPES,0.75mM NaH2
4 ,0.75mM Na2HPO4)を480μl加え、V
ortex Mixerで数秒撹拌後、室温で20〜30分放置す
ることにより、プラスミッドを含むリン酸カルシウムゲ
ルを形成させた。
【0050】次に、この様にして得られた、プラスミッ
ドを含むリン酸カルシウムゲル960μlを前記した方
法で調製したCHO dhfr- 細胞(1.6×106
細胞/30ml/T80)に加え、4時間放置した。次に
この細胞をFBSを含まない新しいα+ MEM培地10
mlで一回洗浄した後、10%FBSを含むα+ MEM培
地:グリセロール=4:1の混液をT80フラスコあた
り5mlを加え、正確に1分後、吸収除去し、再び10%
FBSを含むα+ MEM培地30mlを加え、5%CO2
存在下で、37℃で培養した。
【0051】次に、この細胞を4日間培養した後、0.
25%トリプシン液(千葉血清)で細胞を剥離し、この
細胞をもう一度、核酸を含まないMEM Medium(α- ME
M)10%透析ウシ胎児血清(FBSd ,HAZELT
ON)を加えた培地で1.6×106 細胞/30ml/T
80になるようにまきなおした。つづいて、この細胞を
10日間培養した後、この培地で生存している細胞を目
的のプラスミッドが導入された細胞(pKDPXA45
7を導入した細胞をCHO/pKDPXA457−α、
pKDPXA799 BglIIを導入した細胞をCHO
/pKDPXA799 BglII−αとする)として以
下の実験に用いた。
【0052】(3)遺伝子増幅 上記方法で得た細胞CHO/pKDPXA457−αと
CHO/pKDPXA799 BglII−αに含まれる
遺伝子(pKDPXA457またはpKDPXA799
BglII)を増幅させるために、上記細胞を、それぞ
れメトトレキセート(MTX,Sigma)濃度を30
nM、100nM、300nM、1000nMと順次上昇させた
培地で培養し、各段階でMTX耐性を示す細胞を得た。
【0053】次に、このようにして得た1000nM M
TX耐性を獲得した細胞(この細胞をそれぞれCHO/
pKDPXA457−1及びCHO/pKDPXA79
9BglII−1とする)をそれぞれ1.6×106 細胞
/30ml/T80になるようにまきなおし、5%CO2
存在下、4日間、37℃で培養した。
【0054】次に、これらの培養液の一部を取り、C−
末端α−アミド化酵素活性を合成基質〔 125I〕−Ac
−Tyr−Phe−Glyを用いて測定した(C−末端
α−アミド化酵素活性の測定方法及びunitの定義につい
ては本発明者らによる特願昭62−306867に詳細
に記載してある)。この結果、CHO/pKDPXA4
57−1、CHO/pKDPXA799 BglII−1
の培養液中にそれぞれ、1unit及び310unitの酵素活
性があることが判った。
【0055】 (4)C−末端α−アミド化酵素高生産株の樹立 上記実験より、pKDPXA799 BglIIを導入し
た細胞の方が、pKDPXA457を導入した細胞より
高い酵素活性を示すことが判ったので、本発明者らは、
さらに高い、C−末端α−アミド化酵素生産株を樹立す
る為に、前記実施例2−(3)で得た、MTX 100
nM耐性株CHO/pKDPXA799BglIIについ
て、限界希釈法により、クローニングを行った。すなわ
ち、96穴平底プレート(corning)にMTX 100nM
耐性CHO/pKDPXA799BglII細胞が、平均
3個、1.5個、0.75個、又は0.375個/well
になるようにまき、これらの細胞を10%FBSを含む
α- MEM培地100μl/wellで一週間培養した。
【0056】一週間後、顕微鏡下に単一のコロニーを形
成して増殖してきたと認められる30wellに100μl
のα- MEM培地を加え、さらに一週間培養した。これ
ら30の細胞について、細胞をまいてから二週間後、培
養上清の酵素活性を測定した。この結果、CHO/9C
と名付けた細胞が、これらの細胞の内で最も高い酵素活
性(910unit/ml)を示すことが判った。次に、最も
高い酵素活性を示したCHO/9Cを、さらにMTX濃
度を0.1,0.3,1,3,10,30μMと、順次
上昇させながら培養し、それぞれ各段階のMTX耐性株
を得た。
【0057】この様にして得たMTX耐性株をそれぞれ
10%FBSを含むα- MEM培地を用いて、1.6×
106 細胞/30ml/T80の条件で4日間培養した
後、培養上清中の酵素活性を測定した結果、MTX 3
μM耐性株が、最も高い酵素活性値(2860unit/m
l)を示すことが判った。本発明者らは、このようにし
て得られたMTX 3μM耐性株9C株から、さらに高
生産株を樹立するために、この細胞株より、前記した方
法を用いてクローニングを行った。この結果、最終的に
は、2000unit/ml以上のC−末端α−アミド化酵素
活性を示すCHO株(この生産株をCHO/10Cとす
る)を樹立することができた。
【0058】(5)カエル体皮由来C−末端α−アミド
化酵素誘導体(XA799 BglII)生産株の培養 実施例2−(4)で得たカエル体皮由来C−末端α−ア
ミド化酵素誘導体生産株CHO/10Cを用いて、以下
に示す方法でカエル体皮由来C−末端α−アミド化酵素
誘導体の生産を行った。すなわち、CHO/10C、1
×107 細胞と10%FBSを含むα- MEM培地50
0mlを1850cm2 のRoller Bottle(Falcon)に入れ3
7℃条件下一週間培養した。
【0059】次に、この細胞を順次新しい10%FBS
を含むα- MEM、3%FBSを含むα- MEM及び1
%FBSを含むα- MEM培地で37℃、24時間培養
した。最終的には1%FBSを含むα- MEM培地で2
4時間培養した培養上清を回収し、以下の実験に用い
た。なお、ここで得られた培養上清は、約4000unit
/mlの酵素活性を示し、この様にして得たC−末端α−
アミド化酵素を以後XA799 BglIIとする。
【0060】(6)XA799 BglIIの精製 実施例3−(5)で得られた培養上清1lに、最終硫酸
アンモニウム濃度が45%になるように硫酸アンモニウ
ムを加え、生じた沈澱を遠心分離で集め、この沈澱を5
mM Tris・HCl Buffer(pH7.0)20mlに溶かした。
次に、このようにして得た各画分の酵素活性を合成基質
を用いて測定したところ、ほとんどすべての酵素活性が
沈澱画分に回収されることが判った。さらに、各画分を
SDS−PAGEを用いて解析したところ図3に示すよ
うに、この沈澱画分は培地由来の多くの蛋白質(主にB
SA)が除かれていることが判った。以後、この様にし
て得たXA799 BglIIを用い、in vitroでのアミ
ド化反応の条件を検討した。
【0061】実施例3. in vitroにおけるアミド化反応の条件検討 実施例1で製造したhCT−Glyと実施例2−(6)
で精製したXA799BglIIを用いて、in vitroにお
けるアミド化反応の至適条件を検討した。反応は、反応
液1mlを37℃でインキュベートし、0.5,1,2及
び4時間後に50μlをサンプリングし、これに950
μlの5N酢酸に加え、このうち20μlをC18−H
PLC(カラム:YMC A−302 4.6×150
mm緩衝液:10%酢酸アンモニウムをベースにアセトニ
トリル濃度を24%から45%まで18分の直線勾配で
上げる)に適用し、hCT−Glyの残量と新しく生じ
たhCTの量を調べた。尚、反応条件は、合成基質〔
125I〕Ac−Tyr−Phe−Gly→〔 125I〕A
c−Tyr−Phe−NH2 の条件(特願昭62−30
6867)をもとに、(1)アスコルビン酸、(2)カ
タラーゼ、(3)硫酸銅、(4)緩衝液(pH)、(5)
緩衝液(濃度)、(6)hCT−Gly濃度について検
討した。
【0062】 (1)アスコルビン酸濃度の検討(図4参照) 0,1.0,3.5,7,20mMのアスコルビン酸濃度
でのアミド化効率を調べた。他の組成は以下に示した。 2.5mg/ml hCT−Gly 100mM トリス塩酸(pH7.0) 25μl/ml カタラーゼ 70μM 硫酸銅 1860U/ml XA799 BglII
【0063】反応1時間後の変換率(100xhCT/
hCT+hCT−Gly)を図4に示した。アスコルビ
ン酸非存在下では、全く反応が進まず、1〜7mMでは、
効率よく反応が進んだ。しかし、さらに濃度を上げると
き(20mM)、変換率は低下した。
【0064】(2)カタラーゼ濃度の検討(図5参照) 0.2,1,2,25,125μg/mlのカタラーゼ濃
度でのアミド化効率を調べた。他の組成は以下に示す。 2.5mg/ml hCT−Gly 100mM トリス塩酸(pH7.0) 3.5mM アスコルビン酸 70μM 硫酸銅 1500U/ml XA799 BglII反応1時間後
の変換率(100xhCT/hCT+hCT−Gly)
は、60〜75%とほぼ変らなかったが(図5)、1μ
g/ml以上では、2時間で変換率が100%なのに比
べ、0.2μg/mlでは4時間でも93%であった。
【0065】 (3)硫酸銅(Cu2+イオン)濃度の検討(図6参照) 0,1,10,70,150μMの硫酸銅濃度でのアミ
ド化効率を調べた。他の組成は以下に示す。 2.5mg/ml hCT−Gly 100mM トリス塩酸(pH7.0) 25μg/ml カタラーゼ 3.5mM アスコルビン酸 1500U/ml XA799 BglII 反応1時間後の変換率(100xhCT/hCT+hC
T−Gly)を図6に示した。硫酸銅の濃度が、0,
1,10μMと増えるに従いアミド化効率は良くなる
が、それ以上では変らなかった。
【0066】(4)緩衝液(pH)の検討(図7参照) 100mM トリス塩酸(pH7.0,7.5,8.0,
8.5) 100mM MOPS(pH6.5,7.0,7.5,8.
0) 100mM 酢酸アンモニウム(pH6.0,6.5,7.
0) の11種類の緩衝液についてアミド化効率を調べた。他
の組成は以下に示す。
【0067】2.5mg/ml hCT−Gly 20μg/ml カタラーゼ 2.0mM アスコルビン酸 10μM 硫酸銅 1000U/ml XA799 BglII 反応1時間後の変換率(100xhCT/hCT+hC
T−Gly)を図7に示す。至適pHは6〜7であること
がわかった。また、酢酸アンモニウムを用いた場合に反
応速度が速かった。
【0068】(5)緩衝液(濃度)の検討(図8参照) 10,50及び100mMの酢酸アンモニウム濃度でのア
ミド化効率を調べた。他の組成は以下に示す。 2.5mg/ml hCT−Gly 20μg/ml カタラーゼ 10μM 硫酸銅 2.0mM アスコルビン酸 1000U/ml XA799 BglII 反応1時間後の変換率(100xhCT/hCT+hC
T−Gly)を図8に示す。変換率は緩衝液の濃度によ
らず、ほぼ80%で同じだが、低いほうが若干高かっ
た。
【0069】 (6)基質(hCT−Gly)濃度の検討(図9参照) 2.5及び5mg/mlのhCT−Gly濃度でのアミド化
効率を調べた。他の組成は以下に示す。 10mM 酢酸アンモニウム(pH6.0) 20μg/ml カタラーゼ 10μM 硫酸銅 2.0mM アスコルビン酸 1000U/ml XA799 BglII
【0070】経過時間のそれぞれのhCT−Gly濃度
での変換率(100xhCT/hCT+hCT−Gl
y)を図9に示す。2.5mg/mlでは2時間で、5mg/
mlでは4時間で、すべてアミド化される。XA799
BglIIの濃度が同じなのでhCT−Gly当りのXA
799 BglIIの量はhCT−Gly濃度5mg/mlで
は2.5mg/mlの半分になる。
【0071】実施例4. hCTの製造(図10参照) 以上の条件検討をもとにhCT−Glyのアミド化反応
を行い、hCTの製造を行った。アミド化反応の条件は
以下に示す。 2.5mg/ml hCT−Gly 10mM 酢酸アンモニウム(pH6.0) 20μg/ml カタラーゼ 10μM 硫酸銅 2.0mM アスコルビン酸 1000U/ml XA799 BglII 反応前、反応後0.5時間、及び2時間のC18−HP
LCのチャートを第10図に示す。
【0072】時間経過に伴い、hCT−Glyのピーク
(11.8分)が減少し、hCTのピーク(12.9
分)が増えるのがわかる。反応2時間後、このサンプル
をC18−HPLCに供し、hCTを分離、精製した。
この結果、hCTが93.5%の収率で得られることが
判った。なお、収率は、分取したhCTをアミノ酸分析
することにより求めた。
【0073】実施例5. hCTの同定 実施例4で製造した、ヒト・カルシトニン(hCT)の
同定は以下に示す方法で行った。すなわち、1)本発明
で製造したhCTはHPLC(実施例3に記載した条
件)での溶出位置が、化学合成で製造されたヒト・カル
シトニン(ペプチド研究所より入手)と完全に一致し
た。2)アミノ酸分析の結果は、下記に示す値を示し、
理論値( )とよく一致した。
【0074】Asx 2.99(3),Thr 4.7
2(5),Ser 0.91(1),Glx 2.00
(2),Pro 1.97(2),Gly 3.96
(4),Ala 1.97(2),Val 1.00
(1),Met 0.98(1),Ile 0.97
(1),Leu 2.00(2),Tyr 1.02
(1),Phe 2.95(3),Lys 1.00
(1),His 0.97(1).
【0075】3)アミノ酸配列はC−末端のPro−N
2 を除く全アミノ酸配列を確認できた。4)hCTの
C−末端、Pro−NH2 の最終構造は、hCTをLysy
1 Endopeptidase(和光純薬工業株式会社)で処理するこ
とにより得られるC−末端ペプチドフラグメント(hC
T〔19−32〕)をHPLCを用いて単離し(hCT
は18位にリジン残基が1残基存在している)、このも
のの分子量をFast AtomBombartment(FAB)質量分析で測
定したところ、分子量が理論値と一致することから、h
CTのC−末端Pro−NH2 であることが確認され
た。以上の結果より、本発明で述べた方法により製造し
たhCTの構造は、ヒト・カルシトニンと同一であるこ
とを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、hCT−Gly−Lys−Lys−A
rgをCpBで処理して得たhCT−GlyのC18H
PLCによる溶出パターンを示す図である。
【図2】図2は、動物細胞でC−末端α−アミド化酵素
(XA457,XA799 BglII)発現するための
プラスミッドの構造を示す図である。
【図3】図3は、硫酸アンモニウム沈澱によるXA79
9 BglIIの精製を示す電気泳動の写真である。
【図4】図4は、XA799 BglIIによるin vitro
でのhCT−Glyのアミド化反応に対するアスコルビ
ン酸濃度の影響を示す図である。
【図5】図5は、XA799 BglIIによるin vitro
でのhCT−Glyのアミド化反応に対するカタラーゼ
濃度の影響を示す図である。
【図6】図6は、XA799 BglIIによるin vitro
でのhCT−Glyのアミド化反応に対する銅イオン濃
度の影響を示す図である。
【図7】図7は、XA799 BglIIによるin vitro
でのhCT−Glyのアミド化反応に対する緩衝液(p
H)の影響を示す図である。
【図8】図8は、XA799 BglIIによるin vitro
でのhCT−Glyのアミド化反応に対する緩衝液濃度
の影響を示す図である。
【図9】図9は、XA799 BglIIによるin vitro
でのhCT−Glyのアミド化反応に対する基質(hC
T−Gly)濃度の影響を示す図である。
【図10】図10は、XA799 BglIIによるin v
itroでのhCT−Gly→hCT変換反応の0分、30
分、及び2時間後のサンプルのC18HPLCのチャー
トを示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 大末 和廣 大阪府三島郡島本町若山台1丁目1番1 号 サントリー株式会社 生物医学研究 所内 (72)発明者 孫田 浩二 大阪府三島郡島本町若山台1丁目1番1 号 サントリー株式会社 生物医学研究 所内

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C−末端アミド化酵素及びその誘導体の
    製造方法において、以下のアミノ酸配列: 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 の内、少なくとも第6位のCysから第329位のHi
    sまでのアミノ酸配列を有する蛋白質をコードしている
    DNAを有し、これを発現することができるプラスミド
    により形質転換された動物細胞を培養することにより、
    該蛋白質を生成し、それを採取することを特徴とする方
    法。
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