JP2649652B2 - 特殊水中コンクリートの製造方法 - Google Patents

特殊水中コンクリートの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、河川や湾岸において水
中にコンクリート構造物を施工する場合や、高架橋や構
造物の基礎工事において、地下水中に打設する特殊水中
コンクリートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、水中にコンクリート構造物を施工
する場合には、仮締切を設けて水替えを行った上で、陸
上の場合と同じようにドライな状態でコンクリートを打
設するのが普通である。しかし、湾岸構造物等で水深が
深く仮締切工事に多大な費用を要する場合や、陸上工事
でも地下掘削に際して地下の伏流水や被圧水等のために
水替えが困難である場合には、水中にコンクリートを打
設する、水中コンクリート工法が採用されていた。しか
し、普通のコンクリートを水中に打設する場合には、セ
メント分が流失してコンクリートの分離が起こるため、
打設に際しては慎重な対応が必要である。一方、水中に
投入しても分離を起こさず、施工性も悪くならないコン
クリートを製造し、水中コンクリートの打設を容易にす
る目的で、特殊水中コンクリート用混和剤が開発されて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】特殊水中コンクリート
用混和剤は、湾岸や港湾工事等に際し、コンクリートミ
キサ船で混合してすぐに打設するコンクリート施工法に
適用する目的で開発されたものであるために、陸上部に
おいて生コンプラントで混合してアジテータ車で施工現
場に運搬打設する場合のように、混合から打設までにあ
る程度の時間の経過が必要となる施工法の場合には、色
々な問題が発生する。以下、陸上部における特殊水中コ
ンクリート用混和剤の諸課題について述べる。
【0004】特殊水中コンクリート用混和剤には、主剤
としてコンクリートに添加することによってコンクリー
トの粘性を著しく高めることにより水中でセメントと骨
材が分離することを防ぐ増粘剤と、増粘剤によるコンク
リートの流動性の悪化をカバーする目的の流動化剤があ
り、性質が全く相反しているこれらの薬剤の添加方法、
添加時期及び添加量により、特殊水中コンクリートの品
質に大きな差異が生じてくる。
【0005】特殊水中コンクリート用混和剤を最も効果
的にコンクリートに混合させるためには、生コンブラン
トにおいて増粘剤をセメントや骨材と一緒にまず空練り
した後に、これに流動化剤水溶液を混練水と一緒に投入
して混合、混練した後、アジテータ車によって施工現場
に運搬して打設する方法があるが、流動化剤は混合後、
約20分を経過すると逆に流動性が著しく低下する場合
があるので、混合後、早急に打設する必要がある。ま
た、増粘剤のみを生コンプラントで添加した後、施工現
場で流動化剤を添加する方法があるが、この場合には運
送中のコンクリートの粘性が増大し、アジテータ効果が
低下する。また、何れの場合においても、生コンプラン
トで増粘剤を添加する場合には、そのプラントではミキ
サー内に粘性の高いコンクリートが固着するために、当
日は生コンプラントでは他の普通コンクリートの注文に
応じてこれらを交互に混練することは困難であるので、
特殊水中コンクリートの混練のために当日の生コンプラ
ントを専用する必要がある。このため、特殊水中コンク
リートの1日打設数量が少ない場合には、コンクリート
の製造コストが著しく高騰する。
【0006】次に、生コンプラントで増粘剤を添加せ
ず、混練された状態のコンクリートを施工現場に運搬し
た後、現場で添加混合する方法としては次の二つの方法
が行われている。アジテータ車で施工現場に運搬された
混練された状態のコンクリートを強制攪拌ミキサーに移
し、このミキサー内に増粘剤粉末と流動化剤水溶液を投
入して、高速度で特殊水中コンクリートを強制攪拌する
ことが行われている。しかしこの場合には、コンクリー
トの混練を別々のミキサーで二度にわたって行わなけれ
ばならないため、混練設備、混練スペース、混練時間等
のため、コンクリートの製造コストが著しく高騰する。
アジテータ車で現場に運搬された混練された状態のコン
クリートに、予め水を加えてスラリー化した増粘剤をア
ジテータドラムに投入し、ドラムを急速回転して混練し
た後、これに流動化剤水溶液を加えて混合攪拌する方法
がある。しかしこの場合には、特殊水中コンクリートの
設計配合に基づき、コンクリートの水セメント比を一定
に保たなければならないので、増粘剤スラリーに用いる
水量と流動化剤水溶液に相当する水量分をコンクリート
の水量から差し引かなければならない。したがって、運
搬されるコンクリートが著しく硬練りとなり、コンクリ
ートが分離するばかりでなく、コンクリートがアジテー
タ内の攪拌羽根に固着して投入された混和剤と混合され
ないでコンクリートの一部がアジテータドラム内に残っ
たりするため、増粘剤が均一に混合されず、添加比率が
設計配合と大きく異なる場合がある。さらにまた、増粘
剤粉末に水を加えてスラリー状にする場合には、10分
あるいは数十分の時間経過によってスラリーの粘性が著
しく増大し、投入作業あるいは投入後の混合が不可能と
なり、特殊水中コンクリートの均質な混合ができなくな
る。
【0007】本発明はこれらの問題点を解決し、高品質
な特殊水中コンクリートの効率的な製造方法を提供する
ことを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決するため
に、本発明は、混練された状態のコンクリートに特殊水
中コンクリート用混和剤を投入、混合する特殊水中コン
クリートの製造方法において、増粘剤としてグリオキザ
ール処理したヒドロキシプロピルメチルセルロースの粉
末と、流動化剤として増粘剤の粉末と混合したときスラ
リー状の混合物となるように濃度を高めたトリアジン系
流動化剤水溶液とを予め混合攪拌して混合スラリーとし
て貯留しておき、この混合スラリーを混練された状態の
コンクリートに投入、混合することを要旨とする。
【0009】
【作用】増粘剤としてグリオキザール処理したヒドロキ
シプロピルメチルセルロースの粉末と、流動化剤として
増粘剤の粉末と混合したときスラリー状の混合物となる
ように濃度を高めたトリアジン系流動化剤水溶液とを予
め混合攪拌し、スラリー状の混合物として貯留してお
き、この混合スラリーを所定量、混練された状態のコン
クリートに投入、混合することによって、均質な特殊水
中コンクリートを効率よく製造することができる。本発
明によるときは、特定の増粘剤の粉末を特定の流動化剤
水溶液と混合するために、従来方法のように増粘剤のみ
をスラリー化するための余分な水を必要とせず、したが
って、コンクリートを製造する場合に、流動化剤水溶液
にとられる水量以外は差し引く必要がなく、施工性の高
い状態の水セメント比のコンクリートを混練することが
できる。また、特定の増粘剤の粉末と特定の流動化剤水
溶液とを混合して形成した混合スラリーを用いるため、
粉末状の増粘剤を混練された状態のコンクリートに直接
投入する場合のように、アルカリ水との反応により瞬間
的に団子状の塊を形成して、その後の混合攪拌が困難に
なることはない。さらに、本発明の混合スラリーは、増
粘剤としてグリオキザール処理したヒドロキシプロピル
メチルセルロースを用いるとともに、流動化剤としてこ
の増粘剤よりも水分子との親和力が強いトリアジン系流
動化剤を用いているため、経時的に粘性抵抗が増大する
のがたいへん緩慢であり、長時間の貯留が可能であるた
め、半日分あるいは一日使用分の混合スラリーを予め製
造貯留することによって、特殊水中コンクリートの製造
を効率化することができる。
【0010】ところで、現在実用化されている最も一般
的な特殊水中コンクリート用混和剤としては、メチルセ
ルロース系の増粘剤がある。この増粘剤を用いると水中
における流動性と、型枠や鉄筋・鉄骨に対する充填効果
が特に著しいので、橋梁基礎等の永久構造物に用いられ
ている。
【0011】このメチルセルロース系増粘剤を粉末のま
ま混練された状態のコンクリートの中に投入すると、粉
末状のセルロース繊維の表面部がセメントのアルカリ水
を吸収して粘性被膜に覆われた団子状の塊となり、その
内部への水の浸透を阻止するために、コンクリートの混
練水と均等に混合攪拌することができなくなる。したが
って、強力な攪拌力を有するコンクリートミキサーを用
いる場合はともかくとして、アジテータ車のドラム回転
によって混合することは不可能である。
【0012】また、増粘剤を予め水に溶かして使用する
場合には、実施例においても詳述するように、一定時間
の経過とともに急速に粘性抵抗が増大し、使用不能の状
態となる。
【0013】本発明では先ず、増粘剤の粉末と高濃度の
流動化剤水溶液とを混合攪拌してスラリー状の混合物を
作成するのであるが、この場合には、流動化剤の方が増
粘剤よりも水分子との親和力が強いために、塩類効果の
現象を呈し、増粘剤の水分吸収による膨潤粘性化の現象
が起こらない。このため、この混合液は経時的に粘性効
果を起こすことがなく、長時間の使用に耐えるのであ
る。
【0014】さらに、本発明の方法による場合は、従来
の方法のようにコンクリートから差し引いた水分量を用
いて増粘剤の水溶液を作る必要がないので、コンクリー
トは設計配合水量から僅かに流動化剤溶液水量を差し引
いただけの水量で混練が行われるため、ワーカビリティ
ーの好適な状態で作業が進められる。
【0015】
【実施例】本実施例では、特殊水中コンクリート用混和
剤として現在最も高品質な評価を得ているヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースを主成分とする二銘柄の増粘剤
(A剤,B剤)と高縮合トリアジンを主成分とする流動
化剤水溶液(NL)による実施例を示す。
【0016】
【表1】
【0017】表1は、従来の生コンプラントにおいて増
粘剤をセメントや骨材と一緒にまず空練りした後に、こ
れに流動化剤水溶液を混練り水と一緒に投入して混合混
練りした後、アジテータ車によって施工現場に運搬して
打設する方法に用いられる代表的な特殊水中コンクリー
トの配合(a)と、従来のアジテータ車で現場に運搬さ
れたベースコンクリートに、予め水を加えてスラリー化
した増粘剤をアジテータドラムに投入し、ドラムを急速
回転して混練りした後、これに流動化剤水溶液を加えて
混合攪拌する方法に用いられるベースコンクリートの配
合(b)及び本発明の方法によるベースコンクリートの
配合(c)、並びにその水中作製供試体の平均圧縮強度
を示したものである。なお、表1(b)及び(c)の場
合においても、増粘剤、流動化剤水溶液及び水を後添加
することにより、最終的には水量(W)は215Kg/
3に、水セメント比(W/C)は59.7%となる。
また、図1は、表1(a)の従来の代表的な特殊水中コ
ンクリートと本発明方法による特殊水中コンクリート
(同表(c)のベースコンクリートに混合スラリーを投
入、混合したもの)のスランプの経時的変化を示したグ
ラフ図である。本発明方法による特殊水中コンクリート
は、増粘剤としてグリオキザール処理したヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースを用いるとともに、流動化剤と
してこの増粘剤よりも水分子との親和力が強いトリアジ
ン系流動化剤を用いているため、長時間の貯留が可能で
あり、半日分あるいは一日使用分の混合スラリーを予め
製造貯留することによって、アジテータ車による特殊水
中コンクリートの混練り製造を効率化することができる
ことに加え、図1からも明らかなとおり、表1(a)の
従来の代表的な特殊水中コンクリートと比較して、ベー
スコンクリートに混合スラリーを投入、混合した後も、
経時的に粘性抵抗が増大するのがたいへん緩慢であり、
特殊水中コンクリートを打設する場合の時間的な制約を
緩和することができる。また、表1(b)の場合におい
ては、ベースコンクリートの水セメント比(W/C)が
50.0%と、本発明方法による場合の55.8%より
かなり小さく、このため、ベースコンクリートが硬練り
となり、増粘剤がグリオキザール処理されていないこと
と相俟って、特殊水中コンクリートの粘性抵抗が増大し
て特殊水中コンクリートの製造性が悪化し、これにより
ベースコンクリートと投入された増粘剤とが均一に混合
されにくくなり、表1からも明らかなとおり、本発明方
法による場合との比較して、特殊水中コンクリートの品
質(水中作製供試体の平均圧縮強度)に大きな違いのあ
ることがわかる。
【0018】図2は、ヒドロキシプロピルメチルセルロ
ースの代表的な増粘剤二銘柄(A剤,B剤)の水溶液の
経時的な攪拌抵抗値の変化、及び本発明の方法による増
粘剤と流動化剤水溶液の混合スラリーの攪拌抵抗値の変
化を示したものである。
【0019】図中の実線で示す曲線1,2は、A剤、B
剤それぞれの10%スラリーの攪拌抵抗値を山崎式攪拌
抵抗値測定器によって経時的に測定したものである。実
験は20±2℃、相対湿度約90%の室内で行った。B
剤の場合には約10分、A剤の場合には約40分後から
急激に攪拌抵抗が増大しており、それ以後における使用
が困難であることを示している。また、図中における鎖
線で示す曲線3,4は、A剤、B剤をそれぞれA剤、B
剤と混合したときスラリー状の混合物となる濃度を高め
た流動化剤水溶液に16%添加して混合攪拌したスラリ
ー粘度の経時的変化を示したものである。これによる
と、A剤、B剤の二銘柄は攪拌抵抗値に若干の相違はあ
るものの、経時的な粘性増加割合は両者ともたいへん緩
い勾配を示しており、いずれの増粘剤も流動化剤との混
合により、長時間の使用に耐え得ることがわかる。
【0020】ヒドロキシプロピルメチルセルロースの増
粘剤は、A剤、B剤ともに粉末粒子表面がグリオキザー
ル加工が施してあり、図中の実線の曲線1,2に表され
ているように、スラリー製作当初はA剤、B剤ともに攪
拌抵抗はほとんど増大していないが、一定時間を経過す
ると難溶効果が失せて、急激に粘性が増大している。
【0021】一方、流動化剤水溶液と混合攪拌した鎖線
の曲線3,4の場合を見ると、粘性の増大は非常に緩慢
であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが高縮合
トリアジン系流動化剤水溶液の中に程良く分散してお
り、塩類効果によりセルロース系混和剤の吸水膨潤が完
全に抑制されていることが明らかである。
【0022】このように、本発明による場合は増粘剤が
流動化剤の中に程良く分散して安定しているが、混練さ
れた状態のコンクリートの中に投入、攪拌すると、大量
の水との混合によって塩類効果が失われ、強制的な混練
によらなくとも、容易に粘度の高い均質な特殊水中コン
クリートを製造することができる。そしてこの場合に
は、流動化剤によるコンクリートへの流動性の付与と、
流動化剤中に既に均質に分散している増粘剤のコンクリ
ート中への分散の容易さにより、アジテータ車のドラム
回転によるだけで、高品質な特殊水中コンクリートを製
造することができる。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、以下に記載される効果
を有するものである。増粘剤としてグリオキザール処理
したヒドロキシプロピルメチルセルロースの粉末と、流
動化剤として増粘剤の粉末と混合したときスラリー状の
混合物となるように濃度を高めたトリアジン系流動化剤
水溶液とを予め混合攪拌し、スラリー状の混合物として
貯留しておき、この混合スラリーを所定量混練された状
態のコンクリートに投入、混合することによって、均質
な特殊水中コンクリートを効率よく、かつ低コストで製
造することができる。また、本発明の混合スラリーは、
増粘剤としてグリオキザール処理したヒドロキシプロピ
ルメチルセルロースを用いるとともに、流動化剤として
この増粘剤よりも水分子との親和力が強いトリアジン系
流動化剤を用いているため、経時的に粘性抵抗が増大す
るのがたいへん緩慢であり、長時間の貯留が可能である
ため、半日分あるいは一日使用分の混合スラリーを予め
製造貯留することによって、特殊水中コンクリートの製
造、及び特殊水中コンクリートの打設作業を効率的に進
めることができるとともに、特殊水中コンクリートの汎
用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の代表的な特殊水中コンクリートと本発明
方法による特殊水中コンクリートのスランプの経時的変
化を示したグラフ図である。
【図2】特殊水中コンクリート用増粘混和剤スラリーの
攪拌抵抗値の経時的な変化を示したグラフ図である。
【符号の説明】
1 増粘剤(A剤)と水とを混合した場合の攪拌抵抗値
の変化を示す曲線 2 増粘剤(B剤)と水とを混合した場合の攪拌抵抗値
の変化を示す曲線 3 増粘剤(A剤)と流動化剤水溶液とを混合した場合
の攪拌抵抗値の変化を示す曲線 4 増粘剤(B剤)と流動化剤水溶液とを混合した場合
の攪拌抵抗値の変化を示す曲線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C04B 24:30)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 混練された状態のコンクリートに特殊水
    中コンクリート用混和剤を投入、混合する特殊水中コン
    クリートの製造方法において、増粘剤としてグリオキザ
    ール処理したヒドロキシプロピルメチルセルロースの粉
    末と、流動化剤として増粘剤の粉末と混合したときスラ
    リー状の混合物となるように濃度を高めたトリアジン系
    流動化剤水溶液とを予め混合攪拌して混合スラリーとし
    て貯留しておき、この混合スラリーを混練された状態の
    コンクリートに投入、混合することを特徴とする特殊水
    中コンクリートの製造方法。
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