JP2649151B2 - インクジェット染色用布帛及びその染色法 - Google Patents

インクジェット染色用布帛及びその染色法

Info

Publication number
JP2649151B2
JP2649151B2 JP9460995A JP9460995A JP2649151B2 JP 2649151 B2 JP2649151 B2 JP 2649151B2 JP 9460995 A JP9460995 A JP 9460995A JP 9460995 A JP9460995 A JP 9460995A JP 2649151 B2 JP2649151 B2 JP 2649151B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
fabric
microporous
holding layer
dyeing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP9460995A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH07316991A (ja
Inventor
昌範 畑下
亮一 島田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
SEEREN KK
Original Assignee
SEEREN KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by SEEREN KK filed Critical SEEREN KK
Priority to JP9460995A priority Critical patent/JP2649151B2/ja
Publication of JPH07316991A publication Critical patent/JPH07316991A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2649151B2 publication Critical patent/JP2649151B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • DTEXTILES; PAPER
    • D06TREATMENT OF TEXTILES OR THE LIKE; LAUNDERING; FLEXIBLE MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • D06PDYEING OR PRINTING TEXTILES; DYEING LEATHER, FURS OR SOLID MACROMOLECULAR SUBSTANCES IN ANY FORM
    • D06P5/00Other features in dyeing or printing textiles, or dyeing leather, furs, or solid macromolecular substances in any form
    • D06P5/30Ink jet printing

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット染色に
関し、更に詳しくは、インクジェット染色用布帛及びそ
の染色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より布帛を染色するための工業的捺
染の方法として、スクリーン捺染、ローラ捺染、転写捺
染等が行なわれていた。これらの方法は、デザインパタ
ーンの企画、彫刻もしくは製版、捺染糊の作成、生地の
準備等の一連の各工程が総合して有機的に結合すること
により、初めて完成する染色技術である。このような染
色技術は、4つの工程の準備を必要とし、また比較的熟
練した技術を要するため手数が多くかかり、コストと時
間の面で極めて負担の大きいものであった。
【0003】従って、多様化が進み又高度にファッショ
ン化した今日では、多品種少量生産の要求に対し迅速な
対応ができず、その適応が難しくなって来つつある。こ
のような問題点を解決するために、今、色彩処理とイン
クジェット印写を組み合わせた新しい技術、即ちインク
ジェット染色が注目され始めている。本来、インクジェ
ット印写の技術は、幸いにも、比較的平滑な表面を有す
る紙を対象とする印刷技術であり、インクジェット印写
する際支障となる問題点はない。
【0004】このような平滑な面を持つ紙を対象とする
限り、技術的な基本問題はほぼ解決していると言ってよ
い。しかし、インクジェット印写の技術を布帛の染色に
対して適用しようとすると、布帛は紙と異なり素材の種
類も非常に多く、且つ編織された組織の粗さ状態も極め
て多様性に富むため、印写する際、多くの技術的問題が
発生した。その中で特に重要な問題点としては、例え
ば、印写後に複雑なニジミ現象が現出し鮮明な図柄が得
られないというような紙では想定できない問題である。
【0005】そこで、その対策として、例えば特開昭6
1−55277号公報に見られるような布帛に対する前
処理方法が開発された。これは、布帛に処理を施し、水
溶性高分子、水溶性塩類、水不溶性無機物から選ばれた
非染着性の物質よりなるインク保持層を形成せしめ、該
インク保持層に吐出インクを吸収せしめ一時的に保持さ
せることにより、インクによるニジミを防止する方法で
ある。この方法を使ってニジミをより確実に防止するに
は、インク保持層を厚くしてインク保持能を高めるか、
インク保持能の高い保持剤を選定すればよい。
【0006】ところがインク保持層を厚くすると、布帛
の表面から離れたところの保持層のインクは、後程行わ
れる湿熱処理の際、布帛内への移行が行われにくくな
る。結局、最後に行われる洗浄工程で布帛の染色に寄与
しないままで洗い流されてしまうことになり、インクの
消費効率が極めて悪い。一方、保持層を厚くしないでイ
ンク保持能を高めると、吐出されたインク液滴が、該保
持層に保持される際に、インクが面方向に多く広がって
吸収されてしまう。このような意外な現象は、シャープ
で鮮明な画像が得にくくなる原因となる。
【0007】以上のことから、上記公報に記載の方法
は、ニジミ防止については確かに有効な手段ではある
が、吐出されたインクが効率的に布帛に染着する割合と
しては低いものである。このようにインクの利用効率が
大幅にダウンすることにより、結果的にはランニングコ
ストの大幅上昇を招くことになる。従来の方法では、シ
ャープで鮮明な画像を得るためには、ニジミ防止とイン
クの有効利用という2つの相反する問題を同時に解消す
ることは不可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、以上
述べたような問題点の解決を意図したものである。即
ち、布帛面にニジミのない鮮明な画像を付与し、且つ吐
出されたインクの有使用用量を最大限に高めることがで
きる布帛、及びその方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、このよう
な技術的課題に対して鋭意研究を進めた結果、主にイン
ク保持層の布帛面に近い部分に保持されたインク、概し
ては、ほぼ下半分の部分に保持されたインクが、布帛へ
の染色に寄与していることを突き止め、このことから、
インクを保持層の中でも極力布帛に近いところに効率良
く保蓄するようにしてやれば、インクの量を有効に使え
るという知見を得た。本発明はこの知見に基づいて完成
させるに至ったものである。
【0010】
【0011】即ち本発明は、(1)、前処理によりイン
ク保持層を表面に付与された布帛であって、該インク保
持層にミクロポーラスが形成されており、該インク保持
層に形成されているミクロポーラスの密度が25〜55
0個/500μm平方であるインクジェット染色用布帛
に存する。 そして(2)、前処理によりインク保持層を表面に付与
された布帛であって、該インク保持層にミクロポーラス
が形成されており、該インク保持層に形成されているミ
クロポーラスの孔径が5〜30μmであるインクジェッ
ト染色用布帛に存する。
【0012】そしてまた、(3)、前処理によりインク
保持層を表面に付与された布帛であって、該インク保持
層にミクロポーラスが形成されており、インク保持層の
厚さが20〜80μm、ミクロポーラスの密度が25〜
550個/500μm平方、その孔径が5〜30μmで
あるインクジェット染色用布帛に存する。
【0013】そしてまた、(4)、インクジェット染色
においてインクジェット印写させる際、前もって布帛上
に前処理によりミクロポーラスを有するインク保持層を
付与し、その後、布帛面にインクジェット印写を行うこ
とにより、該保持層の布帛面に近いところに集中的にイ
ンクを保蓄させるようにしたインクジェット染色法であ
って、前記保持層の厚さを20〜80μm、前記ミクロ
ポーラスの密度を25〜550個/500μm平方、そ
のミクロポーラスの孔径を5〜30μmとしたインクジ
ェット染色法に存する。
【0014】本発明の本質は、インクを保持層の中でも
なるべく布帛と接するところに近い場所に効率良く保留
させること、具体的には、インク保持層に無数のミクロ
ポーラス構造を有する層を形成せしめ、該ミクロポーラ
ス構造が有する無数の微細な開放孔の布帛に近いところ
にインク液滴を集中的に保留させることにある。本発明
で保持層を形成させるためのインク保持剤は、非染着性
高分子化合物とそれを溶解するための溶媒よりなる。
【0015】溶媒としては、主として水が用いられ、ま
た特殊な場合は、40℃〜130℃に沸点を有し、常温
下での表面張力30〜65ダイン/cmを満たす有機溶
媒が使用される。
【0016】非染着性高分子化合物として、水溶性合成
高分子のポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、ポリア
クリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチ
ルセルロース、カルボキシメチルスターチ、天然ゴムの
アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、そ
の他澱粉、加工澱粉、アルギン酸ソーダ、粘度物質のモ
ンモリロナイト等が用いられ、またそれらの2種以上を
混合して用いられることもある。
【0017】ここで、非染着性高分子化合物とは、用い
るインク色素に対して全く染着しないということではな
く、使用する色素濃度で布帛を着色する場合、希望する
濃度が得られればその第1条件を満たし、また非染着性
高分子化合物に移行したインクの色素が次工程の発色固
定、洗浄で悪影響を与えなければ第2条件を満たし、更
に、インク色素のロスが経済的に見合えば第3の条件を
満たすことになる。
【0018】保持剤には、次に示す抗還元剤、固着助
剤、固着反応剤、固着促進剤等が必要に応じて適宜添加
される。抗還元剤としては、各種色素の高温乾燥、高温
湿熱時に生じる還元防止のために使用され、例えば、メ
タニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムが用いられる。
固着助剤としては、各種色素の繊維上での移動防止、固
着向上を促すために使用され、ぼう硝、食塩、塩化カル
シウム等の中性塩が用いられる。
【0019】固着反応剤としては、各種色素の繊維上で
の固着を促すために使用され、例えば、酢酸、硫酸アン
モニウム等の酸性物、又は、炭酸ソーダ、水酸化ナトリ
ウム等のアルカリ物が用いられる。固着促進剤として
は、各種色素の繊維への固着を高めるため使用され、例
えば、尿素、チオ尿素、ポリエチレングリコール等のヒ
ドロトロープ剤、クロルベンゼン、安息香酸等のいわゆ
るキャリヤー剤と称されるものが用いられる。
【0020】本発明のインク保持層の厚さは、20〜8
0μmの範囲が採用される。20μmより小さいとイン
ク保持層本来の効果が薄れ、且つミクロポーラスを設け
たことの効果もでにくい。また、80μmより大きい
と、インクの染着効率の面で劣る。本発明でいうミクロ
ポーラス構造とは、インク保持層に多数の微細な有底又
は無底の開放孔を有する構造を意味し、ミクロポーラス
とは、その微細な有底又は無底の開放孔をいう。またミ
クロポーラスの孔径とは、その開放された孔の径をい
う。開放孔の孔径は、インクの侵入率の観点から、5〜
30μmのものが採用されるのが好ましい。孔径が、こ
の範囲以外だと、染色状態がシャープ性に欠ける等の傾
向がある。
【0021】またその密度は、25〜550個/500
μm平方のものが採用され、好ましくは、50〜300
個/500μm平方(500μm×500μm)が良
い。25個より少ないとその効果、特に着色部の濃度ア
ップが得られなく、また550個より多くてもその効果
はほとんど変わらず、550個以上のミクロポーラスを
形成せしめるための処理操作が難しくなる。
【0022】インク保持層にミクロポーラス構造を付与
形成させるには、先にミクロポーラス形成剤を添加した
インク保持剤を布帛に付与し、後ほど乾燥させることに
より、低沸点体であるミクロポーラス形成剤が蒸発して
形成されることになる。
【0023】インク保持剤を布帛に付与させる方法とし
て(a)1浴法と(b)2浴法があり、(a)の1浴法
は、(イ)布帛全体を被覆するように付与する方法(パ
ッド法、浸漬法、スプレー法等)及び、(ロ)主に片面
である被印写面側の表面に付与する方法(コーテング
法、スクリーン法等)がある。(b)の2浴法は、
(イ)又は(ロ)のどちらかの1つの方法を2回繰り返
し行う方法、そして(イ)と(ロ)の両方法を組み合わ
せて使う方法である。この(b)の2浴法で最も効果的
に付与されるのは、パッド法→コーテング法の組み合わ
せである。
【0024】上記方法により、保持剤を付与された布帛
は印写される面を上側になるようにし、且つ拡布状態に
てほぼ水平に保たれたまま、温度が通常80〜160℃
の乾燥ゾーンで乾燥される。乾燥ゾーンでは、保持剤の
中に含まれた微粒子化された低沸点液体が、時間的にや
や遅れて蒸発をすることによりミクロポーラス構造が形
成される。また、乾燥ゾーンを減圧状態とすることによ
って、より良好なミクロポーラス構造を得ることができ
る。もっとも乾燥ゾーンに点沸点液体の回収手段(凝
縮、分離手段等)を設置することにより、効率的な回収
・再利用が可能となる。
【0025】ミクロポーラス形成剤は、水不溶又は難溶
性で沸点が105〜200℃の低沸点液体を、形成剤全
量に対して10〜70重量%を微粒子の状態で均一に水
中に分散させることにより得られる。該低沸点液体を微
粒子の状態で分散させるにあたり、乳化・分散剤を全量
に対して0.5〜25重量%使用することで分散をより
効果的にできる。
【0026】ここで、具体的な低沸点液体としては、炭
化水素系のトルエン、キシレン、その他工業ガソリン4
号、同5号等、ハロゲン化炭化水素系のパークロチルエ
チレン、モノクロルベンゼン、ジクロルペンタン等、エ
ステル類の酢酸ブチル等、その他アクリル酸のエステル
化合物のアクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0027】ミクロポーラス形成剤の重量割合は、保持
剤に対し5〜50%であり、好ましくは、10〜30%
が良い。5%より少ないと、使用インクの条件によって
はニジミが発生し、又着色部の濃度アップ効果が得られ
ない。50%より多いと、ミクロポーラス形成剤をイン
ク保持剤に均一に分散させることが困難になり、また形
成せしめたミクロポーラスの孔径のバラツキが大きくな
り、特に細い線柄ではシャープさが出にくい。
【0028】染色用布帛の組織は、編地、織物、不織布
等の他にあらゆる布帛組織が含まれる。また、その素材
としては、ウール、綿等の天然繊維、再生繊維、半合成
繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル等の合
成繊維、そしてそれらのうち一つ以上を混紡、交織の形
で使用するものも含まれる。
【0029】本発明のインクジェット印写とは、染料等
を含んだインクを、インクジェット印写装置を使って予
め記憶させた情報に基づいて、ノズルより布帛面に対し
て吐出して印写することをいい、代表的な方式として
は、(1)圧力パルス型、(2)加圧振動型、(3)静
電加速型等があり、その何れの方式も採用できる。印写
時インクとして使用される色素としては、大別して直接
染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、反応性染料、
蛍光染料等があるが、被染体となる布帛の素材により適
宜選定する必要がある。
【0030】インクジェット印写に使用されるインク調
整は、印写された画像の品位に大きく影響することか
ら、染料の選定、粒度、粘度、表面張力、PH等の最適
な調整が行われ、必要に応じて分散剤、消泡剤等が適宜
添加される。本発明の湿熱処理とは、スチームイングに
より色素を発色固着する処理をいい染色する場合に通常
行われているものである。
【0031】また、洗浄(ソーピング)とは、染料が布
帛生地に固着されたあと、未固着の染料、薬品、助剤、
糊料を完全に洗い落とすことであり、通常、染色用に行
われているものである。洗浄工程を通すことにより色
相、鮮明度、堅牢性、生地の風合い等をより完全なもの
にすることができる。
【0032】ところで、インク保持層におけるインクの
保持状態と布帛への染着機構は、まだ必ずしも十分に解
明されていない。本発明においても、ミクロポーラス構
造を有するインク保持層の有効性は後述する実施例から
具体的に十分明らかであるが、理論的な裏付けは、既に
行った各種実験(例えば顕微鏡写真等)を参考として、
以下に述べる通りのものとほぼ推論できる。
【0033】ここでは、有底のミクロポーラスを例に説
明する。図2(イ)は布帛Fに対し、従来法によって、
インク保持層Hを付与し、このインク保持層の表面に印
写によりインク液滴I1を吐出した状態を模式的に示す
ものである。また、図2(ロ)は、吐出されたインク液
滴I2がインク保持層H内に吸収され保持された状態を
模式的に示したものである。
【0034】図2(イ)において、今、インク保持層の
表面に吐出されたインク液滴I2は、図2(ロ)に示す
如くインク保持層内に広がりながら拡散し吸収されて行
き保持された状態となる。そして、主として下半分H2
の位置にある布帛に近い部分の保持層に保持されたイン
クI3が、布帛の染着に寄与するものと考えられる。即
ち、布帛に近い保持層の部分に保持されたインクI3の
部分が、その後、湿熱処理により布帛に移行し染着が促
進されるからである。
【0035】しかし、この湿熱処理時にも保持層の比較
的上半部H1に吸収保持されているインクI4の大部分
は、布帛に移行せず染着しないため、実際には保持層に
残留したままになり、後程行われる洗浄工程で洗い流さ
れてしまう。このように、従来法によるインク保持層で
は、吐出されたインク液滴がインク保持層内に保持され
るものの、そのインクの多くの部分が、布帛の染着に寄
与せず、未染着のまま利用されず終わることになる。
【0036】図1(イ)は、本発明の場合であり、無数
のミクロポーラス構造を有するインク保持層の表面に、
インク液滴I1を吐出した状態を、模式的に示したもの
である。図1(ロ)は、その吐出により保持されたイン
クが、ミクロポーラスである微細な開放孔Pから布帛に
近い位置に吸収保持された状態を、模式的に示したもの
である。
【0037】図1(イ)において、今、インクジェット
印写によりインク保持層Hに吐出されたインク液滴は、
インク保持層内に無数に形成されているミクロポーラ
ス、即ち微細な開放孔Pの中に入り込み、主としてこの
開放孔の底部において一旦保蓄される。その後、底部に
保蓄されたインクI2は、その周囲である布帛Fに近い
部分に集中的に吸収されて行き保持状態となり、これが
布帛の染着に寄与するものと考えられる。
【0038】ミクロポーラス構造の微細な開放孔Pから
布帛Fの表面により近い部分に吸収保持されたインクI
3は、印写後の湿熱処理により、殆どが布帛に移行して
染着するのである。つまり、本発明は、従来法の如くイ
ンクをインク保持層全体に吸収保持せしめるのではな
く、ミクロポーラス構造を有する保持層の微細な開放孔
内にインクを保蓄し、且つその開放孔を通じ布帛表面に
極めて近い位置に集中的に吸収保持させるので、未染着
のまま除去されるインクは極めて少なくなり、無駄が無
くなってインクを有効に利用できることになる(インク
の有効利用率の向上)。
【0039】インクを効率よく有効に利用できること
は、そのことによって、従来限度があった図柄の色相濃
度を大きく向上させることにつながるものである。ま
た、インクがミクロポーラス構造の開放孔Pにより定め
られた位置に集中的に保蓄されることは、従来法の様な
面方向へ移行による広がりが極めて少なくなることを意
味する。
【0040】即ち、同じ1粒のインク液滴による印写を
想定した場合、インク保持層に吸収保持される範囲が従
来の保持範囲l2に較べて、本発明の保持範囲l1の方
が狭くなり、言わば焦点が絞られたシャープなものとな
り、後の湿熱処理で布帛へ移行するインクも同じく焦点
が絞られたシャープなものとなるのである。その結果、
印写の際、1ドットの占める面積がより小さく明確にな
り、極細線を使ったシャープな図柄を得ることが十分可
能となる。
【0041】
【作用】ミクロポーラス構造の微細な開放孔から布帛面
により近い部分に保持されたインクは、殆どが布帛に移
行して染着する。
【0042】
【実施例】
〔実施例1〕経糸、緯糸ともポリエステル75dの精錬
布帛をテスト布として用いた。下記処方により調整され
たインク保持剤を使ってテスト布をパット処理(1浴
法)した。ここでパッド処理法とは、布帛全体を保持浴
中で被覆し、マングル圧で絞ることによりピックアップ
率を変更できるものである。通常、マングル圧を弱める
と絞る度合いが少なくなり、ピックアップ率が向上し、
結果的に保持剤の層、即ち保持層の厚さが厚くなる。
尚、パッド後のピックアップ率は、75%であった。
【0043】 〔インク保持剤処方〕 カルボキシメチルセルロース(10%溶液) 50 部 酢酸(10%溶液) 1 部 抗還元剤 ※1 1 部 ミクロポーラス形成剤 ※2 15 部 水 33 部 計 100 部
【0044】※1 抗還元剤 メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0045】パット処理後、テンター方式の乾燥機によ
り120℃×130℃secで乾燥させた。上記の処理
を経てミクロポーラス構造を形成したインク保持層〔孔
径が10〜25μm(尚、孔径は、一定しないでバラツ
キがあることからこのように示した)でその密度が平均
110個/500平方μm〕を付与した布に、下記処方
のインク及び印写法により(a)、(b)の図柄を印写
した。
【0046】 〔インク処方〕(インク粘度,3.5cps) CI Disperse Red127 5 部 陰イオン界面活性剤(リグニンスルホン酸塩) 4 部 消泡剤〔サーフィノール104E〕 0.05 部 (日信化学(株)製) エチレングリコール 10 部 ケイ酸 0.1 部 イオン交換水 残部 計 100 部
【0047】〔インクジェット印写方式〕オンデマンド
方式シリアル走査型印写装置を使用した。(ノズル径1
00μm、 駆動電圧107V、周波数5KHZ、解像
度180ドット/吋、4×4マトリックス) (a)50×50mm (b)巾0.5mm、長さ50mmの経緯方向の細線に
よる十字形 インクジェット印写された布を108℃で10分間湿熱
処理し、その後、常法による洗浄工程及び乾燥工程を通
した。
【0048】〔実施例2〕インク保持剤のパッド処理に
おいて、マングル圧を変更してピックアップ率を100
%とした以外は、実施例1と同じ方法とした。
【0049】〔実施例3〕インク保持剤のパッド処理に
おいて、マングル圧を更に変更してピックアップ率を1
30%とした以外は、実施例1と同じ方法とした。
【0050】〔実施例4〕インク保持剤処方を下記の如
く変えた以外は実施例1と同じ方法とした(尚、ここで
の絞り率は75%である)。
【0051】 〔インク保持剤処方〕 カルボキシメチルセルロース(10%溶液) 50 部 酢酸(10%溶液) 1 部 抗還元剤(実施例1と同じ) 1 部 ミクロポーラス形成剤(実施例1と同じ) 7 部 水 41 部 計 100 部
【0052】〔実施例5〕インク保持剤のパッド処理に
おいて、マングル圧を変更してピックアップ率を100
%とした以外は、実施例4と同じ方法とした。
【0053】〔実施例6〕インク保持剤のパッド処理に
おいて、マングル圧を更に変更してピックアップ率を1
30%とした以外は、実施例4と同じ方法とした。
【0054】〔実施例7〕インク保持剤処方を下記の如
く変えた以外は実施例1と同じ方法とした(尚、ここで
のピックアップ率は75%である)。
【0055】 〔インク保持剤処方〕 カルボキシメチルセルロース(10%溶液) 50 部 酢酸(10%溶液) 1 部 抗還元剤(実施例1と同じ) 1 部 ミクロポーラス形成剤(実施例1と同じ) 40 部 水 8 部 計 100 部
【0056】〔比較例1〕実施例1におけるインク保持
剤処方としてミクロポーラス形成剤を添加せず、その他
は全く同じとした。(この場合、水は38部から48部
となる。)尚、ここでの絞り率は75%である)。
【0057】〔比較例2〕インク保持剤のパッド処理に
おいて、マングル圧を変更して絞り率を100%とした
以外は、比較例1と同じ方法とした。以上、実施例1乃
至実施例7、及び比較例1乃至比較例2の結果を、図
4、図5、図6に示す。
【0058】
【発明の効果】保持層に形成されたミクロポーラス構造
の微細な開放孔によって、インクを布帛に近いところに
集中して保持できるため、ニジミがなく鮮明な画像を付
与でき、その上、インクの有効使用率を格段に向上させ
ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(イ)は、従来法によってインク保持層表
面にインク液滴(I1)を吐出した状態を模式的に示す
図である。図1(ロ)は、吐出されたインク液滴(I)
がインク保持層(H)に吸収されて保持された状態を模
式的に示した図である。
【図2】図2(イ)は、本発明のミクロポーラス構造の
インク保持層に、インク液滴(I1)を吐出した状態を
模式的に示す図である。図2(ロ)は、吐出されたイン
ク液滴が布帛に近い位置に保蓄される状態を模式的に示
す図である。
【図3】図3は、実施例1乃至実施例3の結果を示すも
のである。
【図4】図4は、実施例4乃至実施例6の結果を示すも
のである。
【図5】図5は、実施例7と比較例1及び比較例2の結
果を示すものである。
【符号の説明】
F…布帛 H…インク保持層 I1…インク液滴 I2…インク液滴 I3…保持されたインク I4…保持されたインク P…ミクロポーラス(開放孔) d…孔径 H1…上半分 H2…下半分 l1…保持範囲 l2…保持範囲

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前処理によりインク保持層を表面に付与
    された布帛であって、該インク保持層にミクロポーラス
    が形成されており、該インク保持層に形成されているミ
    クロポーラスの密度が25〜550個/500μm平方
    であることを特徴とするインクジェット染色用布帛。
  2. 【請求項2】 前処理によりインク保持層を表面に付与
    された布帛であって、該インク保持層にミクロポーラス
    が形成されており、該インク保持層に形成されているミ
    クロポーラスの孔径が5〜30μmであることを特徴と
    するインクジェット染色用布帛。
  3. 【請求項3】 前処理によりインク保持層を表面に付与
    された布帛であって、該インク保持層にミクロポーラス
    が形成されており、インク保持層の厚さが20〜80μ
    m、ミクロポーラスの密度が25〜550個/500μ
    m平方、その孔径が5〜30μmであることを特徴とす
    るインクジェット染色用布帛。
  4. 【請求項4】 インクジェット染色においてインクジェ
    ット印写させる際、前もって布帛上に前処理によりミク
    ロポーラスを有するインク保持層を付与し、その後、布
    帛面にインクジェット印写を行うことにより、該保持層
    の布帛面に近いところに集中的にインクを保蓄させるよ
    うにしたインクジェット染色法であって、前記保持層の
    厚さを20〜80μm、前記ミクロポーラスの密度を2
    5〜550個/500μm平方、そのミクロポーラスの
    孔径を5〜30μmとしたことを特徴とするインクジェ
    ット染色法。
JP9460995A 1994-03-28 1995-03-27 インクジェット染色用布帛及びその染色法 Expired - Lifetime JP2649151B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9460995A JP2649151B2 (ja) 1994-03-28 1995-03-27 インクジェット染色用布帛及びその染色法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6-80852 1994-03-28
JP8085294 1994-03-28
JP9460995A JP2649151B2 (ja) 1994-03-28 1995-03-27 インクジェット染色用布帛及びその染色法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07316991A JPH07316991A (ja) 1995-12-05
JP2649151B2 true JP2649151B2 (ja) 1997-09-03

Family

ID=26421817

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9460995A Expired - Lifetime JP2649151B2 (ja) 1994-03-28 1995-03-27 インクジェット染色用布帛及びその染色法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2649151B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4010590B2 (ja) * 1997-02-17 2007-11-21 株式会社リコー インクジェット記録用水性インク組成物およびそれを用いた記録方法
JP3915375B2 (ja) * 2000-06-30 2007-05-16 コニカミノルタホールディングス株式会社 インクジェット捺染方法
JP4769095B2 (ja) * 2006-02-17 2011-09-07 セーレン株式会社 インクジェット捺染用布帛
EP3360930A1 (en) 2014-07-04 2018-08-15 FUJIFILM Corporation Novel compound, coloring composition for dyeing or textile, ink jet ink, method of printing on fabric, and dyed or printed fabric

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06184954A (ja) * 1992-12-09 1994-07-05 Asahi Glass Co Ltd 布地およびその製造方法
JP3322980B2 (ja) * 1994-02-23 2002-09-09 旭硝子株式会社 布地の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH07316991A (ja) 1995-12-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3584094B2 (ja) インクジェット捺染用布帛、捺染方法及び捺染物
EP0212655B1 (en) Process for cloth printing by ink-jet system
US6153263A (en) Ink jet textile printing and printing textile article
US20100043152A1 (en) Method of dry transfer printing of synthetic fibrous material with disperse dye and transfer paper
JPS6331593B2 (ja)
JP2649151B2 (ja) インクジェット染色用布帛及びその染色法
JPH1181163A (ja) インクジェット捺染用布帛、その製造方法及びその捺染方法
JPH09296380A (ja) インクジェットプリント方法および捺染物
JP2003328282A (ja) インクジェット捺染用乾式転写方法、転写紙、およびインク
US7335237B2 (en) Method for textile printing, pre-treatment fluid for textile printing and fiber sheet for textile printing
JPH0835182A (ja) インクジェット捺染用布帛およびその製造方法、インクジェット捺染方法、インクジェット捺染物、インクジェット捺染装置および該装置により製造された捺染記録物
JP3262636B2 (ja) インクジェット染色用布帛とその布帛染色法
JPH05148775A (ja) インクジエツト方式による布帛の捺染方法
JP3970985B2 (ja) インクジェット捺染方法
JPH05311583A (ja) インクジェット染色方法
JP3566761B2 (ja) インクジェット染色用布帛及びその染色方法
JPH0253976A (ja) 布はくの染色方法
JPH03113081A (ja) インクジェット染色用布帛の製造方法および染色法
Hawkyard Substrate preparation for ink-jet printing
JP2968286B2 (ja) インクジェット染色用布帛の製法および染色法
JPH05148777A (ja) 布帛の捺染方法
JPH0351835B2 (ja)
JP2774042B2 (ja) インクジェット捺染方法
JP2607450B2 (ja) インクジェット捺染用布帛およびその捺染法
JP2700981B2 (ja) インクジェット方式によるぼかし捺染法

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120516

Year of fee payment: 15

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150516

Year of fee payment: 18

EXPY Cancellation because of completion of term