JP2642963B2 - 赤外線検出装置 - Google Patents

赤外線検出装置

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、例えば、分割レンズや分割ミラー等の光学
系と組み合わすことにより、この光学系の視野角により
設定される所定の検知エリア内における人体の存在の有
無を非接触で検出して自動ドアーの開閉や防犯警報装置
の作動を制御する赤外線式移動人体検出装置を構成でき
る赤外線検出装置に関するものである。
<従来の技術> 移動する人体の所定の検知エリアへの進入または検知
エリアからの退出を検出して防犯警報装置や自動ドアー
の作動等を制御するための起動用スイッチに利用される
移動人体検出装置としては種々のものが実用化されてい
る。現在多用されている非接触型のものとしては、背景
と移動人体との温度差に基づく放射赤外線光束の変動を
利用する赤外線受動型のパッシブインフラレッド方式の
ものが主流をなしている。この移動人体検出装置は、光
学系の視野角により設定された所定の検知エリアからの
放射エネルギーを、ミラーまたはレンズの光学系により
赤外線検出器に集光し、赤外線検出器において、これの
焦電素子が光学フイルタを介して入射された赤外線光束
の変化を電気信号に変換し、この電気信号を増幅した後
に、この増幅信号が検出レベル以上であるか否かを判別
し、検出レベル以上である場合に人体検出信号を出力す
るようになっている。
そして、前述の移動人体検出装置に用いられる赤外線
検出器としては、特性の異なる2種の焦電素子を差動接
続したツインタイプセンサーまたはデュアルタイプセン
サーと称せられる差動型のものが一般に用いられてい
る。この差動型赤外線検出器は、外乱光等の外部要因に
よる雑音を一対の焦電素子でキャンセルし合って除去で
きるものである。即ち、移動する人体に対しては一対の
焦電素子による各検出信号が或る時間差をもって出力さ
れるのに対し、太陽光の照射のように外部要因による物
理的変化は両焦電素子に同時に且つ同等に加わるので、
これら各焦電素子からはそれぞれ同時に信号出力され、
しかも差動接続しているので極性が互いに逆で且つ同じ
大きさの電圧が発生して互いに打ち消し合うことにな
り、検出器としての出力は生じない。さらに、この焦電
素子の光入射面側の光入射窓には、6〜14μmの波長の
光のみを透過させる光学フイルタが配設されており、こ
の光学フイルタにより外乱光を除去して赤外線のみを透
過させるようになっている。
<発明が解決しょうとする課題> 前記赤外線検出器は、一対の焦電素子によるキャンセ
ル効果と、赤外線のみを透過させて可視光を除去する光
学フイルタとにより、焦電素子自体が本質的にもってい
る雑音の他の外部要因による雑音(例えば、放電灯や白
熱灯等の照明光或いは自動車のヘッドライトによる外乱
光によるもの)の影響を除去できる筈である。ところ
が、現実には外部要因によって誤動作してしまう。例え
ば、防犯警報装置においては巡回警備員の照明灯や走行
車両のヘッドライト等によって警報を発してしまう。こ
のような欠点の解消を図ったものして、例えば、実開昭
63−14130号の赤外線検出器が提案されており、これ
は、逆直列に接続される一対の受光電極間の視野角のず
れを、5〜10゜の範囲に設定することにより、一対の受
光電極に対する外乱光の照射を均等化し、外乱光に対す
るキャンセル効果の向上を図ったものである。然し乍
ら、このような視野角のずれを小さくした構成では、前
述の移動人体検出装置に適用した場合に所要の検知能力
を得ることができず、また、単一の焦電素子しか有しな
いタイプのものには適用できないものである。然も、こ
のような構成の赤外線検出器においても、光学系と組み
合わせた場合には、外乱光が直接照射されたような時に
誤出力してしまう。
本発明者らはこのような誤動作発生の原因について探
究した結果、その原因が判明した。即ち、赤外線検出器
のメーカーでは、この赤外線検出器を光学系と組み合わ
せてその性能をテストするようなことがなく、このよう
に赤外線検出器に光学系を介することなく外乱光を直接
照射した場合には、赤外線検出器の光学フイルタが赤外
線以外の可視光等を散乱させて透過させないことにより
誤動作することがない。従って、前述の誤動作は、移動
人体検出装置等を構成するに際し赤外線検出器に光学系
を組み合わせることに起因して発生していることに着目
した結果、以下のことが判明した。つまり、光学系によ
り赤外線光束を焦電素子に合焦するよう集光しているた
めに、光学フイルタへの入射光のエネルギーは比較的高
く、この光学フイルタを透過せず且つ反射もしないで光
学フイルタに吸収される光の高いエネルギーによって光
学フイルタが発熱し、この光学フイルタの発熱部分から
一対の焦電素子に対して二次的熱放射が生じる。
ここで、光学フイルタの素材として用いられるシリコ
ン等の材料が高価であるために、光学フイルタの面積を
可及的に小さくし且つ視野角を広くするためと、検知器
全体をコンパクトに構成するためとの目的で、光学フイ
ルタを焦電素子にできるだけ近接させて配置しており、
前述の実開昭63−14130号に1.5mmと図示されているよう
に、一般には0.5〜1.5mm程度に設定されている。この距
離によって、第5図の1点鎖線で示すように光学フイル
タ1の発熱部1aから各焦電素子2a,2bへの拡がり角度
θ′1,θ′がかなり異なることとなり、両焦電素子2
a,2bのそれぞれの受光量に差が生じてキャンセル効果が
作用せず、結果として人体検出信号が誤出力されてしま
う。単一の焦電素子しか有しない赤外線検出器において
も、光学フイルタの二次的熱放射エネルギーに焦電素子
が反応して誤動作してしまう。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みなされたも
ので、光学系と組み合わせた場合においても外乱光等の
外部要因による雑音に対し誤出力することのない赤外線
検出装置を提供することを技術的課題とするものであ
る。
<課題を解決するための手段> 上記の技術的課題を解決するために、本発明の赤外線
検出装置は、集光用の光学系と、赤外線のみを透過させ
る光学フィルタと、この光学フィルタを介して入射する
赤外線光束をその変動量に応じた電気信号に変換する赤
外線検出素子を備え、かつ、上記光学フィルタが上記光
学系と赤外線検出素子との間に介在してなる赤外線検出
装置において、上記光学フィルタがシリコンを基材と
し、かつそのシリコン基材上に多層膜コーティングが施
されてなるとともに、上記赤外線検出素子は大きさが1m
m×2mmの赤外線検出素子を差動接続した1対の素子から
なり、上記光学フィルタのフィルタ下面と上記赤外線検
出素子との距離を2mm以上とすることによって特徴付け
られている。
<作用> 大きさを1mm×2mmとする赤外線検出素子とフィルタ面
との距離を2mm以上としたので、既存の検出器の当該距
離が1.5mmであるのに対し十分に長い。従って、光学系
と組み合わせて赤外線式移動人体検出装置を構成した場
合、光学フイルタは、既存の赤外線検出器よりも赤外線
検出素子から離間し且つ光学系に近接することとなり、
光学フイルタのフイルタ面における光学系からの外乱光
の照射面積が、既存の赤外線検出器の光学フイルタにお
ける外乱光の照射面積に比較して広く、それに対応して
光の集光度合が低いために、広い照射面積全体が熱せら
れて部分的な高い発熱は生じない。然も、この光学フイ
ルタの発熱部から一対の赤外線検出素子にそれぞれ熱放
射される拡がり角度は、各赤外線検出素子への距離が比
較的長いことによって各赤外線検出素子対しそれぞれ略
同じとなり、各赤外線検出素子のそれぞれの出力には殆
んど差が生じないことによって互いに打ち消され、検出
装置からの検出信号として出力されることはない。
また、実験の結果より、赤外線検出素子のサイズに拘
わらず、光学フイルタのフイルタ面と赤外線検出素子と
の距離(間隔)が少なくとも2mm以上あれば、光学系と
組み合わせた場合の光学系の焦点距離とは無関係に一殆
の赤外線検出素子の出力に差が生じないことが判明し
た。
<実施例> 以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照し
ながら詳説する。
第1図は赤外線式移動人体検出装置に適用した場合の
本発明の一実施例の縦断面を示し、それぞれの視野角に
よって設定された検知エリアE1〜E5、e1〜e5からの放射
赤外線が分割レンズからなる光学系Cで集光され、この
光学系Cから入射する赤外線光束をその変動量に応じた
電気信号に変換する一対の焦電素子からなる赤外線検出
素子2a,2bが、それぞれ導電性接着剤3により個別の導
電性支持台4により取り付けられ、各赤外線検出素子2
a,2bの光入射面は表面電極5で被覆されている。両赤外
線検出素子2a,2bは、第2図に示すように互いに差動接
続されているとともに、電界効果トランジスタ6に接続
されている。これら各赤外線検出素子2a,2bおよび電界
効果トランジスタ6を被包する外体ケース7の光入射面
が開口され、この開口部7aに光学フイルタ8が配設され
て光入射窓が形設されている。また、光学フイルタ8
は、シリコンからなる主体の一面に無反射コーティング
面が形成され、且つ他面に多層薄膜コーティングによる
透過波長が6〜14μmのワイドバンドのフイルタ面が形
成されている。この構成自体は既存の赤外線検出器と略
同様であるが、異なる点は、光学フイルタ8を、これの
フイルタ面と一体の赤外線検出素子2a,2bとの距離L
が、2mm以上になるよう位置させた構成にある。
第2図は第1の電気回路図で、差動接続された一対の
赤外線検出素子2a,2bにおいて入射赤外線光束により発
生する電荷が、高抵抗値の入力抵抗R1を介して放電さ
れ、且つ電界効果トランジスタ5によりインピーダンス
変換され、直流電源+Bに電界効果トランジスタ5を介
して直列接続された2個の増幅用抵抗R2,R3を通じて増
幅した信号を取り出すソース・フオロワ構成になってい
る。
次に、前記実施例の作用について、第3図乃至第6図
を参照しながら詳細に説明する。照明灯等の外乱光が光
学系Cにより集光されて光学フイルタ8に照射された場
合、光学フイルタ8が既存の赤外線検出器の光学フイル
タ1よりも光学系Cに近接していることにより、第3図
に比較のために1点鎖線で示すように、既存装置におけ
る赤外線検出器の光学フイルタ1の外周光による照射面
積Bに比しこの実施例による赤外線検出装置における光
学フイルタ8の照射面積Aの方が遥かに大きい。このこ
とは、入射光の集光度合が小さいことと等価であり、広
い照射面積A全体に均等に発熱が分散するために、光学
フイルタ8の単位当たりの熱量が少ないことから二次的
熱放射が少なくなること、光学フイルタ8と赤外線検出
素子2a,2bとの距離Lが既存の赤外線検出器における光
学フイルタ1と赤外線検出素子との距離1に比し十分に
大きいこととにより、二次的熱放射が赤外線検出素子2
a,2bに与える影響は格段に少なくなる。
然も、第5図に示すように、光学フイルタ8の赤外線
検出素子2a,2bに対する距離Lは、既存の赤外線検出器
の光学フイルタ1と赤外線検出素子2a,2bとの間隔1に
比し十分に大きいから、既存の赤外線検出器の光学フイ
ルタ1においては二次的熱放射の際の各赤外線検出素子
2a,2bへのそれぞれの拡がり角度θ′1,θ′が互いに
相当に異なるのに対し、前記実施例の光学フイルタ8の
発熱部8aからの二次的熱放射の各赤外線検出素子2a,2b
への拡がり角度θ1は殆んど差がなく、一対の赤外
線検出素子2a,2bによる信号のキャンセル効果が大きく
なる。例えば、Lを2.5mm、1を0.8mmとした場合、 となる。
第4図は、光学フイルタ8のフイルタ面と前述の1mm
×2mmの一般的なサイズの赤外線検出素子2a,2bとの距離
Lと、外乱光による第2図の出力端子Oの出力電圧と、
の関係の実測値を示したもので、距離Lと外乱光による
出力電圧とは略反比例の関係にある。この特性図から明
らかなように、距離Lを2mm以上とすることにより、前
述の光学フイルタ8における外乱光の照射による発熱の
低下と、一対の赤外線検出素子2a,2bによるキャンセル
効果とを得て出力電圧を低下させることが出来、このよ
うな効果は、赤外線検出素子2a,2bのサイズに拘わらず
前記距離Lを2mm以上に設定することによって得られ
る。
ところで、第4図に示した特性は、組み合わせる光学
系Cの焦点距離により若干異なる。即ち、第6図に示す
ように、大きい焦点距離f2の光学系Cを用いる場合に
は、小さい焦点距離f1の光学系Cを用いる場合に比し光
学フイルタ8と赤外線検出素子2a,2bとの距離Lを大き
くしないと、前述の発熱低下とキャンセル効果とを十分
に得ることができないが、焦点距離が例えば50mmと大き
い光学系Cにおいても、距離Lを2mm以上に設定しさえ
すれば、十分な効果を得られることが、実測の結果から
判明した。
また、第7図に示すような構成とすることもできる。
同図において第1図と同一若しくは実質的に同一のもの
には同一の符号を付してその説明を省略する。第1図で
示した同一構成部材により同様に構成され、且つ光学フ
イルタ8と赤外線検出素子2a,2bとの距離1が0.7mm程度
に設定されてなる既存の赤外線検出器と同様の赤外線検
出器9と、この赤外線検出器9と光学系Cとの間に、外
部光学フイルタ10を配設した構成になっている。外部光
学フイルタ10は、赤外線検出器9の光学フイルタ8と同
様のものであって、赤外線検出器9を内装した外部ケー
ス11の開口部12に、赤外線検出器9の光学フイルタ8と
光学系Cとの間に位置して保持されており、この外部光
学フイルタ10のフイルタ面と一対の赤外線検出素子2a,2
bとの距離Lが、2mm以上になるよう設定されている。従
って、前述と全く同様の効果を得られる他に、既存の赤
外線検出器9をそのまま利用して構成できる利点があ
る。また、外部光学フイルタ10を備えていることによっ
て赤外線検出器9の光学フイルタ8は特に必要としない
ので、この光学フイルタ8に代えて封止部材で開口部7a
を封止するようにしてもよい。但しこの場合、封止部材
としては、外部光学フイルタ10が赤外線のみを透過させ
るよう作用するので、フイルタ機能は必要としないが、
少なくとも可視光をも含む光を透過させる性質を有する
素材を用いる必要がある。
尚、本発明は前記説明並びに図示例にのみ限定される
ものではなく、請求の範囲を逸脱しない限り種々の変形
例をも包含し得る。例えば、赤外線検出素子として焦電
素子を用いた場合について説明したが、入射する赤外線
光束をその変動量に応じた電気信号に変換するものであ
ればよく、熱起電力を利用するサーモパイル型(熱電対
型)のものを用いることもできる。また、組み合わせる
光学系としては、分割レンズに限らず、分割ミラーまた
は複数個のレンズやミラーを組み合わせたものを用いた
場合においても同様の効果を得られるのは勿論である。
さらに、単一の赤外線検出素子しか有しないタイプのも
のにおいても同様の効果を得られるのは言うまでもな
い。
<発明の効果> 以上説明したように、本発明の赤外線検出装置によれ
ば、光学フィルタと、この光学フィルタを介して入射す
る赤外線光束をその変動量に応じた電気信号に変換する
一対の差動接続された赤外線検出素子とを備えてなる赤
外線検出装置において、この赤外線検出素子の大きさが
1mm×2mmであるとともに、この光学フィルタはシリコン
基材上に多層膜コーティングが施されてなり、かつ、こ
のフィルタ下面と赤外線検出素子との距離を2mm以上と
したので、光学系と組み合わせた場合に、外乱光を吸収
する光学フイルタは、光学系に対し比較的近接している
ことにより外乱光による照射の集光度合が低いので、部
分的な発熱が少なく、且つ赤外線検出素子への距離が比
較的大きいことによって二次的熱放射による赤外線検出
素子への影響が少ない。従って、単一の赤外線検出素子
しか有しないタイプのものにおいても外乱光による誤動
作を確実に防止することができる。
また、一対の赤外線検出素子を並設したツインタイプ
のものにおいては、光学フイルタから赤外線検出素子へ
の距離が長いことによって、光学フイルタからの二次的
熱放射の際の各赤外線検出素子へのそれぞれの拡がり角
度が略同じとなり、両赤外線検出素子によるキャンセル
効果が大きくなり、外乱光による誤動作をより確実に防
止することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は赤外線式移動人体検出装置に適用した場合の本
発明の一実施例の概略縦断面図、 第2図は第1図の電気回路図、 第3図は第1図の光学フイルタと従来検出器の光学フイ
ルタとの外乱光による照射面積の比較を示す説明図、 第4図は第1図の光学フイルタのフイルタ面き赤外線検
出素子との距離と出力電圧との関係を示す検出感度特性
図、 第5図は第1図の装置と従来検出器との二次的熱放射に
おける各赤外線検出素子への拡がり角度の比較を示す説
明図、 第6図は組み合わすべき光学系の焦点距離に対する光学
フイルタと赤外線検出素子との適切な距離の関係を示す
説明図、 第7図は本発明の他の実施例の概略縦断面図である。 2a,2b……赤外線検出素子 8,10……光学フイルタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 庄司 安男 滋賀県大津市におの浜4丁目7番5号 オプテックス株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−197725(JP,A) 実開 昭63−14130(JP,U)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】集光用の光学系と、赤外線のみを透過させ
    る光学フィルタと、この光学フィルタを介して入射する
    赤外線光束をその変動量に応じた電気信号に変換する赤
    外線検出素子を備え、かつ、上記光学フィルタは上記光
    学系と赤外線検出素子との間に介在してなる赤外線検出
    装置において、上記光学フィルタがシリコンを基材と
    し、かつそのシリコン基材上に多層膜コーティングが施
    されてなるとともに、上記赤外線検出素子は大きさが1m
    m×2mmの赤外線検出素子を差動接続した1対の素子から
    なり、上記光学フィルタのフィルタ下面と上記赤外線検
    出素子との距離を2mm以上とすることを特徴とする赤外
    線検出装置。
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