JP2637996B2 - インクジェット記録装置用ヘッドの製造方法 - Google Patents

インクジェット記録装置用ヘッドの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、インクジェット記録装置用ヘッドの製造方
法に係り、特に、生産性が良好で、しかも飛翔動作の一
層の安定化を企図したインクジェット記録装置用ヘッド
の製造方法に関するものである。
[従来の技術] 従来のインクジェット記録装置は、インクを収容する
インク室と、このインク室に画素密度に応じて設けられ
た複数のノズル孔とを有するヘッド本体を備え、適宜エ
ネルギ印加手段によりインク室内のインクにエネルギを
印加してインクを飛翔動作させ、上記ヘッド本体の対向
側を通過する記録シート上にインクドットを形成して記
録画像を得るもので、上記エネルギ印加手段の種類の違
いにより以下の各種タイプに分けられる。
すなわち、振動子によりインク室内のインクへ圧力パ
ルスを印加してインクを飛翔させる加圧タイプ、磁性イ
ンクを使用しヘッド本体と記録シート間に磁界パターン
を形成してインクを飛翔させる所謂磁性インクジェット
タイプ(特開昭55−69469号公報参照)、インク室内の
インクに熱エネルギを与えて膜面沸騰を生じさせて、上
記ノズル孔内に気泡(バルブ)を急激に成長させること
により圧力上昇でノズル孔からインクを噴射させる所謂
バルブジェットタイプ(特開昭55−161664号公報参
照)、電極アレイと平行なスリット状インク室にインク
を充填し、記録シートを介して対向する電極と電極アレ
イとの間に静電界パターンを形成してインクを飛翔させ
る所謂平面インクジェットタイプ(特開昭56−37163号
公報参照)等が知られている。
そして、この種のインクジェット記録装置における記
録ヘッドとしては、エネルギ印加手段として振動子を利
用するタイプを例に挙げて説明すると、第7図に示すよ
うに、バックプレート(a)と超音波振動子(b)から
なる励振部(c)と、この励振部(c)にカバー
(d)、パッキン(e)を介し図示外のビスにより接合
されインクを収容するインク室(f)と、このインク室
(f)に接着剤を介し接合され画素密度に応じた複数の
ノズル孔(g)を有するノズル板(h)とで通常構成さ
れている。
ところで、記録ヘッドを構成する上記ノズル板(h)
は、そのノズル孔(g)の寸法精度が記録画像に直接影
響を及ぼすため、特公昭58−13355号公報に記載されて
いるように加工精度のだし易い電着法により製造されて
いる。
すなわち、この製造方法は第8図に示すように、ステ
ンレス鋼板等の導電性基材(i)上にフォトレジスト法
によりノズル孔形成用の複数の非導電部(j)を形成し
てマスター(k)を製造し(第8図A参照)、このマス
ター(k)表面にニッケル等の電着を施し、マスター
(k)上にこの非導電部(j)の内側周縁にノズル孔
(g)に相当する孔(m)を有するノズル板用被膜
(n)を形成した後(第8図B参照)、上記マスター
(k)よりノズル板用被膜(n)を剥離して第8図C及
び第9図に示すようなノズル板(h)を得るものであ
る。
[発明が解決しようとする問題点] しかしながら、この従来法において上記マスター
(k)の非導電部(j)は、フォトレジスト法により形
成されて上記導電性基材(i)との接着強度が弱いた
め、上記マスター(k)からノズル板用被膜(n)を剥
離する際、非導電部(j)の一部が導電性基材(i)か
ら剥がれる場合があり、その都度マスター(k)を作り
直す必要があって量産性に欠ける問題点があり、かつマ
スター(k)が変る度にその非導電部(j)のパターン
が若干変化するため、得られるノズル板(h)の寸法精
度のばらつきが生ずる問題点があった。
また、上記マスター(k)から剥離した非導電部
(j)の一部がノズル板用被膜(n)の孔(m)内に残
留してしまう場合があり、この残留物がインクの飛翔動
作に悪影響を及ぼしてノズル板(h)の性能を劣化させ
るという問題点があり、かつ、この残留物を除去するた
めには超音波洗浄法等による洗浄工程が必要となって製
造工程の繁雑化を招くといった問題点があると共に、洗
浄時におけるノズルの破壊等を引起こす問題点があっ
た。
[問題点を解決するための手段] 本発明は、以上の問題点に着目してなされたもので、
その課題とするところは、生産性が良好で、しかもイン
クの飛翔動作の安定したインクジェット記録装置用ヘッ
ドの製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は画素密度に応じた複数のノズル孔
を設けたノズル板を含有するヘッド本体を備え、上記ノ
ズル孔から記録シート側へ画像情報に対応してインクを
選択的に飛翔させるようにしたインクジェット帰路装置
用ヘッドの製造方法において、 非導電部形成用の開口又は凹部が設けられる導電性基
材と、この導電性基材の開口又は凹部に非導電性材料が
充填されて導電性基材表面に露出させるように形成され
る非導電部とで構成され、繰返し使用可能なマスターを
形成するマスター形成工程、 上記マスター表面に電着を施して、非導電部の露出面
の中央部に上記ノズル孔に相当する孔を有するノズル板
用被膜を形成する被膜形成工程、 上記マスターからノズル板用被膜を剥離してノズル板
を得る剥離工程、 の各工程により上記ノズル板を製造することを特徴とす
るものである。
この様な技術的手段において、上記マスター形成工程
において形成される繰返し使用可能なマスターは、導電
性基材とこの導電性基材に固設されるノズル形成用の非
導電部とで構成されるもので、上記導電性基材としてス
テンレス鋼板、銅板、ニッケル板等の導電性板材が使用
できる。尚、導電性基材上に形成するノズル板用被膜の
上記基材からの剥離を促進させるため、必要に応じて導
電性基材である導電性板材の表面を重クロム酸カリウム
1〜10g/に常温で20〜60秒浸せきする等して剥離処理
を施すとよい。また、上記導電性基材に非導電部を固設
するには、この導電性基材に放電加工法やエッチング法
等により非導電部形成用の開口又は凹部を形成し、この
開口又は凹部にエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の非導電
性材料を充填させて行うことができる。
ここで、上記導電性基材に固設する非導電部の個々の
寸法(X)は、所望とするノズル孔の開口寸法を
(Y)、ノズル板の厚みを(T)とした場合、メッキ厚
は導電性基材の水平方向と垂直方向に対して略等しく成
長することから、 X=Y+2×T により求めることができる。ただし、望ましくは、使用
するメッキ条件によって決まる水平方向と垂直方向の成
長速度の比より正確な式を導くとよい。
また、上記被膜形成工程においてマスター表面に電着
させるメッキ材料としては、ニッケル、銅、鉄、コバル
ド、金、銀等が使用でき、またメッキ浴槽の溶液濃度や
電流密度等の電着条件については、所望とするノズル板
の厚みに応じて適宜設定される。尚、厚みの大きなノズ
ル板を必要とする場合には、まずマスターの電着により
所望のノズル孔を有するメッキ被膜を着膜し、次いでノ
ズル孔、及びその周辺部位に非導電性材料を充填した
後、再度、電着処理を施して上記メッキ被膜を多段成長
させることにより得ることができる。
また、上記剥離工程においてマスターからノズル板用
被膜を剥離することにより所望とするノズル板を得るも
のであるが、剥離処理を施した導電性基材を使用するこ
とにより、あるいは、メッキ材料と親和性の無い導電性
基材を使用することにより、導電性基材からのノズル板
用被膜の剥離が促進されて剥離工程の簡便化を図ること
が可能である。
また、この技術的手段の適用範囲については特に限定
されるものでは無く、例えば、加圧タイプ、磁性インク
ジェットタイプ、バブルジェットタイプ、平面インクジ
ェットタイプ、及び熱静電インクジェットタイプ等、従
来広く知られている各種インクシェット記録装置用ヘッ
ドの製造に適用することができる。
[作用] 上述したような技術的手段によれば、非導電部形成用
の開口又は凹部が設けられる導電性基材と、この導電性
基材の開口又は凹部に非導電性材料が充填されて導電性
基材表面に露出するように形成される非導電部とで構成
された繰返し使用可能なマスターを形成するマスター形
成工程と、上記マスター表面に電着を施して非導電部の
露出面の中央部に上記ノズル孔に相当する孔を有するノ
ズル板用被膜を形成する被膜形成工程と、上記マスター
からノズル板用被膜を剥離してノズル板を得る剥離工程
の各工程から構成され、上記導電性基材からこの基材に
固設されたノズル孔形成用の非導電部が剥離しないた
め、上記マスターの繰返し使用を可能にすると共に、得
られるノズル板のノズル孔内への上記非導電性材料の残
留を防止することが可能となる。
[実施例] 以下、本発明を、振動子を使用する加圧タイプのイン
クジェット記録装置用ヘッドの製造に適用した実施例に
ついて図面を参照して詳細に説明する。
◎第一実施例 まず、所望とするノズル板のノズル孔寸法が15μm、
ノズル孔間ピッチが2.5mm、ノズル孔の数が15個であ
る、厚さ25μmのノズル板形成用のマスターを製造し
た。
すなわち、第1図A〜Bに示すようにCR発振回路を備
えた放電加工機(1)により、その電極(2)を回転さ
せながらステンレス鋼板(SUS 304)にて構成される導
電性基材(3)に、65μm径の非導電部形成用の開口
(4)を15個開設する。尚、上記非導電部形成用の開口
(4)寸法(X)は、以下の関係式から求められてい
る。
X=15μm+2×(25μm)=65μm また、上記導電性基材(3)は、ステンレス製である
ため、良好な剥離性があり、特に剥離処理をする必要が
ない。
次いで、上記導電性基材(3)を未硬化のエポキシ樹
脂が収容された容器内に浸漬させて導電性基材(3)の
非導電部形成用の開口(4)にエポキシ樹脂を充填し、
かつ、この導電性基材(3)を平板(5)上に押付けな
がら載置して平面に均した後、上記エポキシ樹脂を硬化
させる。
そして、上記エポキシ樹脂を硬化させた後、導電性基
材(3)の表面を研磨して上記開口(4)以外のエポキ
シ樹脂を除去し、第1図Cに示すように非導電部(6)
が固設されたマスター(7)とする。
次いで、上記マスター(7)をスルファミン酸とニッ
ケルを含有するメッキ浴槽内に浸漬し、電流密度2A/dm2
の電着条件下で60分間電着を施し、第1図Dに示すよう
に上記マスター(7)上に、その非導電部(6)の露出
面の中央部に15μm径の孔(8)を有する厚さ25μmの
ノズル板用被膜(9)を形成した。
そして、上記マスター(7)からこのノズル板用被膜
(9)を剥離して、第2図に示すように、そのノズル孔
寸法が15μm、各ノズル孔間ピッチが、2.5mm、ノズル
孔を15個有する、厚さ25μmのノズル板(10)を得た。
尚、得られたノズル板(10)は、従来同様第3図に示す
ように、背面側に励振部(11)を備えるインク室(12)
に接着剤を介し接合されて記録ヘッドを構成するもので
ある。
ここで、この実施例において上記マスター(7)の非
導電部(6)は、導電性基材(3)の開口(4)内に埋
設されており、ノズル板用被膜(9)をマスター(7)
から剥離する際、上記非導電部(6)が剥がれたり破壊
されたりしないため、ノズル板用被膜(9)の剥離処理
が容易になると共に、上記マスター(7)の繰返し使用
が可能となって寸法精度にばらつきのないノズル板(1
0)が多数製造でき、かつその生産性を向上させる長所
を有している。
しかも、マスター(7)から剥離されるノズル板用被
膜(9)の孔(8)内には、上記非導電部(6)を構成
するエポキシ樹脂等が残留しなくなるため、製造される
ノズル板(10)のインク飛翔動作が安定するといった長
所を有している。
◎第二実施例 この実施例は、メッキ被膜を多段階成長させてその膜
厚を大きくさせた以外は第一実施例の方法と略同一であ
る。
すなわちこの実施例においては、上記マスターの電着
工程により所望とするノズル孔を有するメッキ被膜を着
膜させた後、第4図Aに示すように孔部(13)、並びに
その周辺部位に塗布、露光、現像されたフォトレジスト
OFPR−2,35cp(東京応化工業(株)製)等の非導電性材
料(14)を充填させ、次いで第一実施例と同一の電着条
件により電着を施して、第4図Bに示すように上記メッ
キ被膜を成長させる。
次いで、第4図Cに示すように上記ノズル板用被膜
(9)から非導電性材料(14)を取除いた後、マスター
(7)からノズル板用被膜(9)を剥離し、第4図Dに
示すように第一実施例におけるノズル板の3倍厚みを有
するノズル板(10)を得た。
そして、この実施例においても上記マスター(7)の
非導電部(6)が剥がれたり破壊されたりしないため、
マスター(7)の繰返し使用が可能となって寸法精度に
ばらつきのないノズル板(10)が多数製造できる長所を
有していると共に、製造されるノズル板(10)のインク
飛翔動作も安定するといった長所を有している。
◎第三実施例 この実施例は、マスター形成工程における導電性基材
の開設操作をエッチングで行った以外は第一実施例の方
法と略同一である。
すなわち、この実施例においては第5図Aに示すよう
に、導電性基材(3)であるステンレス鋼板(SUS 30
4)の両面側にフォトレジスト(富士薬品工業社製、商
品名FSR)膜を均一に形成し、その両面側からパターン
露光を施した後未露光部のレジストを溶解除去して、第
5図Bに示すように導電性基材(3)の両面側にフォト
レジスト(15)(15)を形成する。
次いで、これを塩化第二鉄(FeCl3)のエッチング溶
液に浸漬しフォトエッチング処理を施すと、エッチング
は導電性基材(3)の両面側から進行し、第5図Cに示
すように65μm径の非導電部形成用の開口(4)が開設
される。
そして、第一実施例と同様、この導電性基材(3)を
未硬化のエポキシ樹脂が収容された容器内に浸漬させて
導電性基材(3)の非導電部形成用の開口(4)にエポ
キシ樹脂を充填し、かつ、この導電性基材(3)を平板
(5)上に押付けながら載置して平面に均した後、上記
エポキシ樹脂を硬化させる。次いで導電性基材(3)の
表面を研磨して上記開口(4)以外のエポキシ樹脂を除
去し、第5図Dに示すように非導電部(6)が固設され
たマスター(7)とする。
この実施例においても、上記マスター(7)の非導電
部(6)が剥がれたり破壊されたりしないため、マスタ
ー(7)の繰返し使用が可能となって寸法精度にばらつ
きのないノズル板(10)が多数製造できる長所を有して
いると共に、製造されるノズル板(10)のインク飛翔動
作も安定するといった長所を有している。
尚、第一実施例〜第三実施例においては導電性基材
(3)に開口(4)を設け、この開口(4)にエポキシ
樹脂を充填させてマスター(7)を得ているが、第6図
に示すように導電性基材(3)に凹部(16)を形成し、
この凹部(16)にエポキシ樹脂等の非導電性材料を充填
させてマスター(7)としてもよい。また、孔あけある
いは凹部形成は上記の放電加工、エッチング法ばかりで
なく、マイクロパンチ、ドリル、電子ビーム加工等、ど
のような方法でもよい。
[発明の効果] 以上説明してきたように、本発明に係るインクジェッ
ト記録装置用ヘッドの製造方法によれば、導電性基材か
らこの基材の開口又は凹部に非導電性材料が充填されて
導電性基材表面に露出するように形成されたノズル孔形
成用の非導電部が剥離することがないため、マスターの
繰返し使用が可能となると共に、ノズル板のノズル孔内
への非導電性材料の残留を防止することが可能となる。
従って、寸法精度にばらつきのないノズル板を容易
に、かつ多数製造できる効果を有していると共に、その
ノズル板のインク飛翔動作も安定する効果を有してい
る。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第3図は本発明の第一実施例を示しており、第
1図はその製造工程を示す説明図、第2図は得られたノ
ズル板の斜視図、第3図はこのノズル板を組込んだ記録
ヘッドの斜視図、第4図は第二実施例における電着工程
の工程説明図、第5図は第三実施例におけるマスター形
成工程の工程説明図、第6図はマスターの変形例を示す
斜視図を示し、また、第7図〜第9図は従来例を示して
おり、第7図は従来のインクジェット記録装置における
記録ヘッドの斜視図、第8図はそのノズル板の製造工程
を示す説明図、第9図はそのノズル板の斜視図を示して
いる。 [符号説明] (3)……導電性基材 (4)……開口 (6)……非導電部 (7)……マスター (9)……ノズル板用被膜 (10)……ノズル板 (12)……インク室 (16)……凹部

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】画素密度に応じた複数のノズル孔を設けた
    ノズル板を有するヘッド本体を備え、上記ノズル孔から
    記録シート側へ画像情報に対応してインクを選択的に飛
    翔させるようにしたインクジェット記録装置用ヘッドの
    製造方法において、 非導電部形成用の開口又は凹部が設けられる導電性基材
    と、この導電性基材の開口又は凹部に非導電性材料が充
    填されて導電性基材表面に露出するように形成される非
    導電部とで構成され、繰返し使用可能なマスターを形成
    するマスター形成工程、 上記マスター表面に電着を施して、非導電部の露出面の
    中央部に上記ノズル孔に相当する孔を有するノズル板用
    被膜を形成する被膜形成工程、 上記マスターからノズル板用被膜を剥離してノズル板を
    得る剥離工程、 の各工程から上記ノズル板を製造することを特徴とする
    インクジェット記録装置用ヘッドの製造方法。
  2. 【請求項2】上記導電性基材における非導電部形成用の
    開口又は凹部を放電加工法により形成することを特徴と
    する特許請求の範囲第1項記載のインクジェット記録装
    置用ヘッドの製造方法。
  3. 【請求項3】上記導電性基材における非導電部形成用の
    開口又は凹部をエッチング法により形成することを特徴
    とする特許請求の範囲第1項記載のインクジェット記録
    装置用ヘッドの製造方法。
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