JP2620352B2 - ワンピースソリッドゴルフボール - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明はワンピースソリッドゴルフボールに関する。

（従来の技術） 現在一般にゴルフ打撃練習場で用いられるゴルフボー
ルはボールの耐久性が優れているものの、飛距離が不足
する。特に、都会においては練習場のスペースが狭く、
良く飛ぶボールよりもむしろ飛距離が小さく耐久性の高
いボールが好まれている。

しかしながら、最近は休耕地や企業の休有地を利用し
てかなり広い練習場が増えてきている。これに伴って、
ゴルフボールも飛距離の大きいもの、場合によってはラ
ウンドボール同様の飛距離を有するものが要求されるよ
うになってきた。

このような要求に従って、飛距離の大きい（即ち、高
い反撥弾性の）ワンピースソリッドゴルフボールを得よ
うとすると、ボールの中心が柔らかく、外側がかたいも
のを得る必要があるが、これまでの技術ではこのような
ゴルフボールは極端に耐久性が悪く、練習場用のゴルフ
ボールとして実用に耐えない。

（発明が解決しようとする課題） 本発明は飛距離が大きくかつ耐久性の高いゴルフ練習
場用として好適で、又ラウンド用としても使用できるゴ
ルフボールを得ることを目的とする。

（課題を解決するための手段） 即ち、本発明は（ａ）ニッケル系触媒を用いて合成さ
れたシス−1,4構造96％以上およびムーニー粘度48〜85
を有するハイシスポリブタジエンゴムを主成分とするポ
リブタジエン100重量部に対して、 （ｂ）加硫安定剤として2,5−ジ−ｔ−ブチルハイドロ
キノン0.1〜2.0重量部、 （ｃ）増飽和カルボン酸および／またはその塩10〜50重
量部、および （ｄ）遊離基開始剤0.5〜５重量部 を含むゴム組成物を加硫成形して得られた、中心の硬度
（JIS−Ｃ硬度）60〜75、中心より10mmのところの硬度7
2〜80、表面硬度70〜85であり、かつ中心が硬度の最小
値をとり、硬度の最大値と最小値の差が15以下であるワ
ンピースソリッドゴルフボールを提供する。

本発明のゴルフボールはハイシスポリブタジエンゴム
を主成分とするゴム組成物から得られる。ハイシスポリ
ブタジエンゴムは製造時に種々の触媒（例えば、ニッケ
ル系触媒、チタン系触媒、コバルト系触媒等）を用いて
製造され、触媒の種類により性質が多少異なる。本発明
では特にニッケル系触媒を用いて得られたムーニー粘度
48〜85およびシス−1,4構造96％以上のハイシスポリブ
タジエンゴムを用いる。ムーニー粘度はムーニー剪断円
板式粘度計で測定するエラストマーの粘度であって、本
発明では48〜85、好ましくは55〜65のものを用いる。ム
ーニー粘度が48より少ないと反撥性が不足する。ムーニ
ー粘度が高すぎると、混練性、作業性、成形性等の加工
性が極度に悪化し、かえって品質を損なう結果となる。
ブタジエンゴムの分子構造はシス−1,4構造が96％以上
のものであり、これより少ないと反撥弾性の低下等の欠
点を有する。

上記ハイシスポリブタジエンゴムに加えて、他のゴム
成分を添加してもよい。添加し得るゴム成分の例として
はBR−150L（宇部興産）、BR−CB22（Bayer）、BR−11
（日本合成ゴム）、BR−CB10（Bayer）、BR−T520（日
本合成ゴム）、BR−CB23（Bayer）等が挙げられる。他
のゴム成分の添加量は、全ゴム成分の０〜50重量部であ
る。本発明に用いるゴム組成物には2,5−ジ−ｔ−ブチ
ルハイドロキノンをハイシスポリブタジエンゴム100重
量部に対し0.1〜2.0重量部、好ましくは0.15〜0.5重量
部配合する。この化合物は加硫安定剤として添加し、暴
走反応を制御し、加硫を遅らせる働きをしており、この
結果、本発明のような硬度分布をもたらす。0.1重量部
以下では、安定剤としての働きが不充分で効果が現れな
い。また、2.0重量部以上では、働きが強すぎてかえっ
て加硫を阻害するので好ましくない。

本発明に用いるゴム組成物にはまた不飽和カルボン酸
および／またはその塩を加硫剤として添加する。不飽和
カルボン酸は不飽和結合を有する種々のカルボン酸が使
用されるが、より好適なものはα，β−不飽和カルボン
酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等で
ある。不飽和カルボン酸の塩、例えばマグネシウム、亜
鉛等の金属塩を用いてもよい。これらの加硫剤の添加量
はハイシスポリブタジエンゴム100重量部に対し10〜50
重量部、好ましくは15〜30重量部である。10重量部より
少ないと架橋が不足し、充分な硬度および反撥性が得ら
れない。50重量部を越えると、ボールが硬くなりすぎ
る。

ゴム組成物中に添加する遊離基開始剤としてはジクミ
ルパーオキサイド、ｔ−ブチルパーオキシベンゾエー
ト、ｔ−ブチルクミルパーオキシド、1,1−ビス（ｔ−
ブチルパーオキシ）−3,3,5−トリメチルシクロヘキサ
ン等が挙げられる。遊離基開始剤の添加量は特に限定的
ではないが、通常ハイシスポリブタジエンゴム100重量
部当り0.5〜5.0重量部の範囲で使用すると硬度および耐
久性の優れたゴルフボールが得られる。

本発明のワンピースソリッドゴルフボールは、上記物
質を含有するゴム組成物を加硫して得られるが、上記組
成物には他の添加剤、例えば老化防止剤、充填剤等を混
入してもよい。老化防止剤としては、例えば4,4′−チ
オビス（６−ｔ−ブチル−３−メチルフェノール）等が
好ましい。充填剤の例としては酸化亜鉛、炭酸カルシウ
ム等が挙げられる。

本発明のゴルフボールは上記成分を混練したゴルフ組
成物を常套の方法で加硫して得られる。通常成形型内で
ゴム組成物を加圧・加硫する。加硫条件はいかなる範囲
を用いてもよいが、１〜数段階、好ましくは１〜３段階
で加硫するのが好適である。２段階の例をとると第１段
階で150〜165℃の温度で18〜35分間加硫し、次いで温度
を165〜175℃に上昇して５〜15分加硫する。加硫温度は
１段階でも多段階でも150〜180℃、好ましくは155〜175
℃である。

本発明のワンピースゴルフボースは特定の硬度分布を
有する。具体的には、中心の硬度が60〜75、好ましくは
64〜72、中心より10mmの硬度が72〜80、表面硬度が70〜
85、好ましくは72〜80である。また、硬度分布の最小値
は中心であり、その最小値と硬度の最大値は15以下、好
ましくは10以下である必要がある。硬度が請求範囲より
小さい場合、ボールが柔らかすぎて飛び、耐久性共に悪
く、逆に大きい場合はボールが硬すぎてフィーリングが
悪くなる。また、ボール硬度が適性でも、硬度の最小値
を中心がとらない場合はボール打撃時のフィーリングが
悪い。さらには、最大、最小差が15ポイント以上である
と、ボール耐久性が悪化してくる。硬度はボールを真半
分に割り、ゴム硬度計（スプリング式硬さ試験機JIS−
Ｃタイプ、高分子計器株式会社）を用いて中心、中心か
ら10mmの点および表面（即ち、表面上から測定する）を
測定することにより得られる。この硬度分布はゴム組成
物中に加硫安定剤として2,5−ジ−ｔ−ブチルハイドロ
キノンを配合することにより容易に得られる。特に加硫
を上述の温度範囲で実施した場合により優れた硬度分布
が得られる。

（発明の効果） 本発明のワンピースソリッドゴルフボールはゴルフ攻
撃練習場用として優れた耐久性を保持し、しかも飛距離
をラウンド用のボールに近づけた優れたものである。

（実施例） 本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明は
これら実施例に限定されない。

実施例１、２および比較例１〜５ 表−１に示す配合ゴム組成物を調整し、得られたゴム
組成物をボール成形用金型に入れ加圧下で表中に示す条
件で加硫させ、直径42.8mmのワンピースソリッドゴルフ
ボールを作製した。

得られたゴルフボールのボールコンプレッション、反
撥係数、耐久性、硬度分布、飛距離を調べその結果を表
−１に示した。尚、表−１中に示す各材料の配合部数は
重量部によるものである。またボールコンプレッショ
ン、反撥係数、耐久性、硬度分布、飛距離の測定方法は
次に示すとおりである。

ボールコンプレッション（ボールの圧縮強度） 10kgの初荷重をかけた時から130kgの終荷重をかけた
時のボールの変形量の逆数を比較例１を100とし指数表
示した。値が大きい程硬い。

反撥係数 45m/sの速度で衝撃筒をボールに当てた時の反撥係数
を比較例１を100として指数表示した。

硬度分布 ボールを真半分に割り、ボールの中心から表面にかけ
て中心,5mm、10mm、15mmと表面の各点をゴム硬度計（ス
プリング式硬さ試験機JIS−Ｃタイプ、高分子計器株式
会社製）によりJIS K6301に準じて測定。

飛距離 スイングロボットによりウッドの１番クラブを用い45
m/sで打たせた時の飛距離またはアイアンの５番クラブ
を用い38m/sで打たせた時の飛距離で比較例１を０とし
た時の各々の飛距離をヤード表示した。

耐久性 ゴルフボールに連続的に同一の衝撃（ボールを45m/s
の速度で鉄製平板に打ちつける）を与え、ボールが破壊
するまでの衝撃回数を指数で表示したものであり、値が
大きいほど耐久性が優れている。

実施例１ではムーニー粘度60〜65のハイシスポリブタ
ジエンゴムを用いており、比較例１ではムーニー粘度38
〜42のハイシスポリブタジエンゴムを用いている。この
場合硬度分布は実施例１も比較例１も本発明の範囲であ
るが耐久性、飛距離は実施例１の方が優れている。

実施例１で用いたハイシスポリブタジエンゴムを合成
する時に用いた触媒はニッケルであり、比較例２はコバ
ルト、比較例３はネオジウム系の触媒を用いたハイシス
ブタジエンゴムである。ムーニー粘度はハイシスポリブ
タジエンゴムＢが38〜42、ハイシスポリブタジエンゴム
Ｃが38〜44、ハイシスポリブタジエンゴムＤが43で、ハ
イシスポリブタジエンゴムＣ、ハイシスポリブタジエン
ゴムＤとハイシスポリブタジエンゴムＢを比較するとム
ーニー粘度は同粘度であるが、明らかにニッケル触媒を
用いたハイシスポリブタジエンゴムＢの方が飛距離にお
いて優れている。このことからニッケル系触媒の優位性
を説明できるが、その中でも特定のムーニー粘度を持つ
ニッケル系とハイシスポリブタジエンゴムが最も望まし
いことがわかった。

比較例4,5はいずれも2,5−di−ｔ−ブチルハイドロキ
ノンを配合しておらず、比較例４は表面の硬度が本発明
範囲外であり、比較例５は中心硬度が本発明範囲外であ
る。飛距離および耐久性において実施例が優れている。

実施例３、４、５および比較例６〜９ 実施例１、２と同様に表−２に示す条件でゴルフボー
ルを作成し、同様の評価を行った。結果を表−２に示
す。

実施例４、５は、ムーニー粘度60〜65、ニッケル触媒
のハイシスポリブタジエンゴムに他のハイシスポリブタ
ジエンゴムを50％までブレンドしたものであるが、実施
例３に比べ遜色はないが、比較例６〜９は、他のハイシ
スポリブタジエンゴムを50％以上で用いたものであり、
反撥係数が低下し、さらにはロール作業性が悪化してく
る。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】（ａ）ニッケル系触媒を用いて合成された
   シス−1,4構造96％以上およびムーニー粘度48〜85を有
   するハイシスポリブタジエンゴムを主成分とするポリブ
   タジエンゴム100重量部に対して、 （ｂ）加硫安定剤として2,5−ジ−ｔ−ブチルハイドロ
   キノン0.1〜2.0重量部、 （ｃ）不飽和カルボン酸および／またはその塩10〜50重
   量部、および （ｄ）遊離基開始剤0.5〜５重量部 を含むゴム組成物を加硫成形して得られた、中心の硬度
   （JIS−Ｃ硬度）60〜75、中心より10mmのところの硬度7
   2〜80、表面硬度70〜85であり、かつ中心が硬度の最小
   値をとり、硬度の最大値と最小値の差が15以下であるワ
   ンピースソリッドゴルフボール。