JP2616037B2 - 能動型サスペンション - Google Patents

能動型サスペンション

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JP2616037B2 JP22557789A JP22557789A JP2616037B2 JP 2616037 B2 JP2616037 B2 JP 2616037B2 JP 22557789 A JP22557789 A JP 22557789A JP 22557789 A JP22557789 A JP 22557789A JP 2616037 B2 JP2616037 B2 JP 2616037B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、車体と各車輪との間に流体アクチュエー
タを介装し、この流体アクチュエータの圧力室の圧力を
圧力制御弁等の制御弁で制御することにより、車高、車
両のロール,ピッチ等の姿勢変化を制御する能動型サス
ペンション装置の改良に関する。
〔従来の技術〕
この種の能動型サスペンションとしては、例えば本出
願人が先に提案した特開平1-122717号公報に記載されて
いるものがある。
この従来例は、車輪及び車体間に介挿された流体シリ
ンダを制御する制御弁及び油圧供給装置間における供給
側配管及び戻り側配管に夫々逆止弁及びパイロット操作
形逆止弁を介挿した構成を有する圧力保持機構を設ける
と共に、制御弁を制御する姿勢変化抑制制御装置にイグ
ニッションスイッチのオフ後も給電を継続する電源保持
手段を設け、前記姿勢変化抑制制御装置でイグニッショ
ンスイッチがオフとなったときに制御弁に対する指令値
を徐々に低下させて流体シリンダの圧力を圧力保持機構
の設定圧となる中立圧まで徐々に低下させるようにして
いる。これによって、イグニッションスイッチがオフと
なったときの流体シリンダの圧力が、圧力保持機構が圧
力保持状態となる中立圧まで急変することによる車高変
化を防止するようにしている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上記従来の能動型サスペンションにあ
っては、イグニッションスイッチをオフ状態として油圧
供給装置を停止させてその出力が所定圧力に低下するま
での間、流体シリンダの圧力を徐々に中立圧とし、中立
圧となったときに圧力保持機構が圧力保持状態となるこ
とにより、制御弁及び流体シリンダを含む油圧制御系を
閉回路として流体シリンダの急激な圧力低下を阻止する
ことができるが、この閉止状態であっても、流体の漏
洩、流体温度の低下による体積縮小等の要因によって圧
力制御弁及び流体シリンダを含む閉止系の圧力が上記中
立圧よりも低下することは回避することはできない。そ
して、イグニッションスイッチをオン状態として油圧供
給装置を作動させてその出力圧力が上昇し、閉回路の圧
力を越えたときに、圧力保持機構を介して圧力制御弁に
伝達されることになる。このとき、上述したように閉止
系の圧力は中立圧より低下しており、中立圧まで上昇す
るまではパイロット操作形逆止弁が閉じていることか
ら、流体シリンダの圧力の急増を招き車高変化を生じ、
乗員に違和感を与えるという未解決の課題があった。
この未解決の課題を解決するために、本出願人は、特
願平1-178671号に記載したように、流体圧供給装置と圧
力制御弁との間における供給側配管に、流体圧供給装置
の始動時に所定時間だけ遅れて開状態となる開閉弁と絞
りとの並列回路を介挿することにより、流体圧供給装置
が始動状態となったときに、圧力制御弁への流体供給量
を制限することにより上述した車高の急変を防止して乗
員に違和感を与えることがない能動型サスペンションを
提案している。
そして、上記のように流体圧供給装置と圧力制御弁と
の間に流体圧供給装置の始動時即ちイグニッションスイ
ッチをオン状態とした時に流量を制限する流量調整機構
を設ける場合には、流量調整機構による流量制限を解除
する以前に例えば車両が走行してしまい前後加速度に対
する姿勢変化抑制処理を開始すると、圧力保持機構で圧
力保持状態が解除されるときの閉回路内の圧力と、姿勢
変化抑制処理によって指令された制御圧力とに差が生じ
るときがある。この場合、圧力保持状態にあるときは戻
り側配管にそれまでの圧力が存在するため、車両姿勢は
まり変化しないが、圧力保持状態が解除されたときは戻
り側配管が大気圧になるため、流体シリンダの圧力が急
変して車高が急変するおそれがあるという新たな未解決
の課題がある。
そこで、この発明は、上記従来例の未解決の課題に着
目してなされたものであり、イグニッションスイッチを
オン状態として流量調整機構を流量制限状態としている
所定時間、前記制御手段からの指令値を一定値に制御す
ることにより、圧力保持機構で圧力保持状態が解除され
たときに車両の姿勢変化の急変を防止することが可能な
能動型サスペンションを提供することを第1の目的とし
ている。
また、この発明の第2の目的は、圧力保持機構で圧力
保持状態が解除されたときに車高調整を通常時の判断時
間に対して短い判断時間とするか又は通常時の調整速度
に対して速い調整速度で車高調整を行うことにより、積
載状態による車高変化を適正状態に迅速に復帰させるこ
とが可能な能動型サスペンションを提供することを目的
としている。
〔問題点を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、請求項(1)に係る能動
型サスペンションは、第1図(a)の基本構成図に示す
ように、各車輪と車体との間に介装された流体シリンダ
と、該流体シリンダに供給される流体供給装置からの作
動流体を指令値に応じて制御する制御弁と、該制御弁及
び流体供給装置間に介装され当該制御弁に対する供給圧
が設定圧力以下となったときに制御弁側を閉回路とする
圧力保持機構と、前記制御弁に供給する作動流体を制限
可能な流量調整機構と、前記制御弁に対して姿勢変化を
抑制する指令値を出力すると共に、前記流量調整機構を
流体供給装置が始動状態となったときに所定時間流量制
限状態に制御する制御手段とを備えた能動型サスペンシ
ョンであって、前記流体供給装置が始動状態となったこ
とを検出する始動状態検出手段を備え、前記制御手段
は、前記始動状態検出手段で流体供給装置の始動状態を
検出したときに、所定時間前記流量調整機構を流量制限
状態に制御すると共に、前記制御弁に対する指令値を一
定値に制御することを特徴としている。
また、請求項(2)に係る能動型サスペンションは、
第1図(b)の基本構成図に示すように、各車輪と車体
との間に介装された流体シリンダと、該流体シリンダに
供給される流体供給装置からの作動流体を指令値に応じ
て制御する制御弁と、該制御弁及び流体供給装置間に介
装され当該制御弁に対する供給圧が設定圧力以下となっ
たときに制御弁側を閉回路とする圧力保持機構と、前記
制御弁に供給する作動流体を制限可能な流量調整機構
と、車高を検出する車高検出手段と、少なくとも前記車
高検出手段の車高検出値に基づいて前記制御弁に対する
指令値を出力すると共に、前記流量調整機構を流体供給
装置が始動状態となったときに所定時間流量制限状態に
制御する制御手段とを備えた能動型サスペンションであ
って、前記流体供給装置が始動状態となったことを検出
する始動状態検出手段を備え、前記制御手段は、前記始
動状態検出手段で流体供給装置の始動状態を検出したと
きに、所定時間前記流量調整機構を流量制限状態に制御
すると共に、前記制御弁に対する指令値を一定値に制御
し、所定時間経過後に前記流量調整機構を非作動状態と
すると共に、前記流体供給装置の始動状態以降の通常状
態より短い判断時間又は速い調整速度で車高調整を行う
ことを特徴としている。
〔作用〕
請求項(1)に係る能動型サスペンションにおいて
は、イグニッションスイッチがオフ状態となったときに
は、圧力保持機構によって圧力制御弁及び流体シリンダ
を含む油圧制御系が閉回路となって、この閉回路内が所
定圧力に保持される。この状態からイグニッションスイ
ッチをオン状態として流体供給装置を始動した状態で
は、制御手段によって流量調整機構が流量制限状態に制
御されると共に、制御弁に対する指令値が例えば圧力保
持機構の設定圧力近傍の一定値に制御されることによ
り、流体供給装置の作動流体が徐々に閉回路内に供給さ
れることにより、閉回路内の圧力が徐々に上昇して車高
を緩やかに変化させる。そして、閉回路内の圧力が圧力
保持機構の設定圧に達すると、圧力保持機構での圧力保
持状態が解除されて、制御手段による一定値に指令値に
基づいて制御弁が制御されることにより、車両の姿勢変
化の急変を防止する。
また、請求項(2)に係る能動型サスペンションにお
いては、上記作用に加えてイグニッションスイッチがオ
ン状態となって、流量調整機構が流量制限状態なり、そ
の後所定時間が経過して流量調整機構が非作動状態とな
って流量制限が解除されたときに、制御手段によって通
常時の車高調整時間より速い車高調整時間で車高調整を
行うことにより、乗員の乗車や積載物の積み込みによる
車高変化を迅速に適性状態に復帰させる。
〔実施例〕
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第2図はこの発明の第1実施例を示す油圧回路図であ
る。
図中、FSは流体供給装置であって、回転駆動源として
のエンジン2の出力軸2aに連結されて回転駆動され、吸
込側がオイルタンク3に接続された油圧ポンプ1と、そ
の吐出側に逆止弁4を介して接続された供給側配管5
と、オイルタンク3にオイルクーラー6を介して接続さ
れた戻り側配管7とを備え、供給側配管5には脈動吸収
用のアキュムレータ8が接続されていると共に、アキュ
ムレータ8の下流側にフィルタ9が介挿されている。フ
ィルタ9には、これと並列にフィルタ7の目詰まり時の
バイパス流路が形成され、このバイパス流路に逆止弁10
が介挿されている。
そして、供給側配管5及び戻り側配管7の他端が圧力
保持機構11、フェイルセーフ弁12を介して各車輪に対応
する圧力制御弁13FL〜13RRの入力ポート13i及び戻りポ
ート13oに接続されている。
圧力保持機構11は、供給側配管5に介挿された逆止弁
14と、供給側配管5及び戻り側配管7間に介挿された、
通常状態のライン圧PH(kg/cm2)を設定する通常ライン
圧設定用リリーフ弁15と、フェイルセーフ弁12の下流側
即ち圧力制御弁13FL〜13RR側のライン圧がパイロット圧
PPとして供給されるパイロット操作形逆止弁16と、逆止
弁14の直前に直列に介装された流量調整機構17とを備え
ている。ここで、パイロット操作形逆止弁16は、パイロ
ット圧PPが予め設定された所定の中立圧PN以上であると
きには、逆止弁機能を解除してその戻り側配管7を連通
状態とする開状態となり、パイロット圧PPが中立圧PN
満であるときには、逆止弁機能が作用して、その戻り側
配管7を遮断する閉状態となる。また、流量調整機構17
は、電磁開閉弁17aとこれと並列に接続された絞り17bと
で構成され、電磁開閉弁17aは、後述する制御装置30か
らの制御信号CS2によって始動状態検出手段の一部を構
成するイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態
に切換わったときに数秒程度の所定時間だけ閉状態に制
御され、この状態で絞り17bによる流量制限状態とな
る。
フェイルセーフ弁12は、スプリングオフセット形の4
ポート2位置電磁開閉弁で構成され、圧力保持部11の逆
止弁14の下流側に接続されたPポートと、パイロット操
作形逆止弁16の入力ポート16iに接続されたRポート
と、圧力制御弁13FL〜13RRの入力ポート13iに接続され
たAポートと、戻りポート13oに接続されたBポートと
を有し、ソレノイド12aに後述する制御装置32から供給
される制御信号CS1がオフ状態であり、リターンスプリ
ング12bによって切換えられたノーマル切換位置でPポ
ート及びRポートが遮断され且つAポート及びBポート
が互いに連通される状態となり、ソレノイド12aに供給
される制御信号CS1がオン状態となったオフセット切換
位置でPポート及びAポートを直接連通する連通路と、
Rポート及びBポート間を直接連通する連通路とが形成
される。また、Rポート及びBポート間が外部の絞り12
cを介して連通されている。
圧力制御弁13FL〜13RRのそれぞれは、入力ポート13
i、戻りポート13o及び制御圧ポート13cを有すると共
に、制御圧ポート13cと入力ポート13i及び戻りポート13
oとを遮断状態に又は制御圧ポート13cと入力ポート13i
及び戻りポート13oの何れか一方とを連通させる連通状
態に切換えるスプールを有し、このスプールの両端に供
給圧と制御圧とがパイロット圧として供給され、さらに
供給圧側パイロット圧を比例ソレノイド13sによって制
御されるポペット弁で制御する構成を有し、制御圧ポー
ト13cの圧力が常に比例ソレノイド13sに後述する制御装
置32から供給される励磁電流IFL〜IRRに応じた圧力とな
るように制御される。
そして、入力ポート13iはフェイルセーフ弁12のAポ
ートに接続され、戻りポート13oはフェイルセーフ弁12
のBポートに接続され、さらに制御ポート13cが各車輪
と車体との間に介挿された各油圧シリンダ19FL〜19RRの
圧力室19aに接続されている。
ここで、励磁電流IFL〜IRRと制御ポート13cから出力
される制御油圧PCとの関係は、第3図に示すように、励
磁電流IFL〜IRRが零近傍であるときにPMINを出力し、こ
の状態から指令値IFL〜IRRが正方向に増加すると、これ
に所定の比例ゲインK1をもって制御油圧PCが増加し、圧
力保持部11の設定ライン圧PHで飽和する。
そして、圧力制御弁13FL及びFRの戻りポート13o及び
フェイルセーフ弁12のBポート間を連通する戻り側配管
20Fには、背圧吸収用アキュムレータ21Fが接続され、圧
力制御弁13RL及び13RRの戻りポート13o及びフェイルセ
ーフ弁12のBポート間を連通する戻り側配管20Rには、
背圧吸収用アキュムレータ21Rが接続され、これらによ
って戻り側配管20F及び20Rを流れる圧力油の管路抵抗等
によって発生する背圧を吸収している。
なお、22Fはフェイルセーフ弁12のAポート及び圧力
制御弁13FL,13FRの入力ポート13i間の油圧配管に接続さ
れた蓄圧用のアキュムレータ、22Rはフェイルセーフ弁1
2のAポート及び圧力制御弁13RL,13RRの入力ポート13i
間の油圧配管に接続された蓄圧用のアキュムレータ、23
FL〜23RR及び24FL〜24RRは油圧シリンダ19FL〜19RRに入
力される路面からの車両バネ下振動の高周波域の圧力変
動を吸収するための減衰バルブ及びアキュムレータ、25
F,25Rは戻り側配管20F,20Rの異常高圧発生時に、この異
常高圧を供給側配管5側に逃がす逆止弁、26は戻り側配
管20F,20Rの背圧を常に数kgf/cm2に保つことにより、戻
り側配管20F,20Rの油柱分離を防止するための絞りであ
る。
また、各油圧シリンダ19FL〜19RRのシリンダチューブ
19b及びピストンロッド19c間に、姿勢変化検出手段とし
ての車高を検出する例えばポテンショメータで構成され
る車高センサ27FL〜27RRが配設され、これら車高センサ
27FL〜27RRの車高検出値HFL〜HRRが制御装置32に入力さ
れる。
さらに、車体には、第4図に示すように、姿勢変化検
出手段としての車体に発生する横加速度を検出する横加
速度センサ28と車体に発生する前後加速度を検出する前
後加速度センサ29とがそれぞれ適所に設けられている。
横加速度センサ28は、横加速度が零であるときに正の中
立電圧VNは横加速度検出値YGOを、車両の右旋回による
左方向の横加速度が生じたときに、これに比例した横加
速度検出値YGOより低い横加速度検出値YGを、車両の左
旋回による右方向の横加速度が生じたときに、これに比
例した横加速度検出値YGOより高い横加速度検出値YG
それぞれ出力する。同様に、前後加速度センサ29も、前
後加速度が零であるときに正の中立電圧VNの前後加速度
検出値XGOを、車両の加速による後方に向かう加速度が
生じたときに、これに比例した前後加速度検出値YGO
り低い前後加速度検出値YGを、車両の減速による前方に
向かう減速度が生じたときに、これに比例した前後加速
度検出値YGOより高い前後加速度検出値YGをそれぞれ出
力する。
また、圧力制御弁13FL〜13RRの比例ソレノイド13sの
ショート、断線、後述する制御弁駆動回路33FL〜33RRの
出力異常や車高センサ27FL〜27RR、加速度センサ28,29
の出力異常等の制御系の異常を検出する制御系異常検出
手段としての異常状態検出器31が設けられている。
そして、車高センサ27FL〜27RR、横加速度センサ28、
前後加速度センサ29及び異常状態検出器31の各検出値が
制御装置32に入力される。この制御装置32は、第4図に
示すように、電源供給回路33と、マイクロコンピュータ
34と、このマイクロコンピュータ34から出力される各制
御弁13FL〜13RRに対する圧力指令値PFL〜PRRが個別に供
給される制御弁駆動回路35FL〜35RRとを備えている。
電源供給回路33は、一端がバッテリー36に接続された
イグニッションリレー37と、このイグニッションリレー
37の一端がバッテリー36に接続されたリレーコイル37a
の他端にコレクタを接続した2つのスイッチングトラン
ジスタQ1及びQ2とを備え、イグニッションリレー36の他
端が制御装置32の各部に電源を供給する安定化電源回路
32aに接続され、トランジスタQ1のベースがイグニッシ
ョンスイッチ38を介してバッテリー36に接続され、トラ
ンジスタQ2のベースにマイクロコンピュータ34のインタ
フェース回路34aからの自己保持信号SSが供給され、各
トランジスタQ1及びQ2のエミッタが接地されている。
マイクロコンピュータ34は、少なくともインタフェー
ス回路34a、マイクロプロセッサ34b及び記憶装置34cを
有し、インタフェース回路34aには、その入力側に車高
センサ27FL〜27RRの車高検出値HFL〜HRRがA/D変換器40F
L〜40RRを介して入力されると共に、横加速度センサ28
の横加速度検出値YG及び前後加速度センサ29の前後加速
度検出値XGがそれぞれA/D変換器41及び42を介して入力
され、さらに異常状態検出器31の異常状態検出信号ASが
直接入力され、出力側から出力される圧力指令値PFL〜P
RRがD/A変換器44FL〜44RRでアナログ電圧に変換され
て、制御弁駆動回路35FL〜35RRに供給されると共に、自
己保持信号SSが電源供給回路33のトランジスタQ2のベー
スに供給される。
マイクロプロセッサ34bは、イグニッションスイッチ3
8がオフ状態からオン状態となったときに、初期化を行
って制御信号CS1及びCS2をオン状態とすると共に、圧力
指令値PFL〜PRRを所定の設定圧PKに設定してこれらを制
御弁駆動回路35FL〜35RRに出力し、数秒程度の所定時間
が経過して圧力保持機構11の圧力保持状態が解除された
後に、インタフェース回路34aを介して車高センサ27FL
〜27RRの車高検出値HFL〜HRRを読込み、これらと予め設
定された目標車高値HSとを比較し、車高検出値HFL〜HRR
が目標車高値HSと一致するように通常時の車高調整時間
より短い車高調整時間で初期状態車高調整を行うよう
に、車高調整圧力指令値PHFL〜PHRRを算出し、この初期
状態車高調整処理が終了すると通常車高調整処理に移行
し、且つ横加速度センサ28の横加速度検出値YGを読込ん
で、この横加速度検出値YGに基づくロール抑制圧力指令
値PYGを算出すると共に、前後加速度センサ29の前後加
速度検出値XGを読込んで、この前後加速度検出値XGに基
づきピッチ抑制圧力指令値PXGを算出し、各圧力指令値
を加減算して車体の姿勢変化を抑制する圧力指令値PFL
〜PRRを算出し、これら圧力指令値PFL〜PRRをインタフ
ェース回路回路34aを介してD/A変換器44FL〜44RRに出力
する姿勢変化抑制制御を実行し、さらにイグニッション
スイッチがオン状態からオフ状態となったときに、圧力
指令値PFL〜PRRを徐々に前記設定圧指令値PKまで低下さ
せると共に、所定時間の間イグニッションスイッチを監
視し、所定時間以内にイグニッションスイッチが再度オ
ン状態となったときには、前記初期化を行うことなく、
イグニッションスイッチがオン状態となる直前の圧力指
令値を初期値として姿勢変化抑制制御を継続する。ま
た、マイクロプロセッサ34bは、異常状態検出器31の異
常状態検出信号ASがオン状態であるときには、制御系に
異常が生じたものと判断し、制御信号CS1をオフ状態と
してフェイルセーフ弁12を第2の切換位置に切換える異
常状態処理を実行する。また、マイクロプロセッサ34b
には、そのプログラム暴走を検出するウォッチドッグタ
イマ39が接続され、このウォッチドッグタイマ39からの
異常状態検出信号が例えばNMI(ノン・マスカブル・イ
ンターラプト)端子に入力されたときに、上記異常状態
処理を実行する。
記憶装置34cは、ROM,RAM等で構成され、前記演算処理
装置34bの演算処理に必要なプログラムを予め記憶して
いると共に、演算処理装置34bの演算結果を逐次記憶す
る。
また、制御弁駆動回路35FL〜35RRのそれぞれは、例え
ばフローティング型の定電流回路で構成され、A/D変換
器44FL〜44RRから入力される圧力指令電圧VFL〜VRRに応
じた励磁電流IFL〜IRRを各圧力制御弁13FL〜13RRの比例
ソレノイド13sに供給する。
次に、上記実施例の動作をマイクロプロセッサ34bの
処理手順を示す第5図のフローチャートを伴って説明す
る。
イグニッションスイッチ38がオン状態となると、電源
供給回路33のトランジスタQ1がオン状態となり、これに
応じてイグニッションリレー37がオン状態となって、制
御装置32に電源が投入され、そのマイクロプロセッサ34
bで第9図に示す処理が実行される。ここで、イグニッ
ションスイッチ38、トランジスタQ1及び安定化電源回路
32aで流体供給装置FSが始動状態となったことを検出す
る始動状態検出手段が構成されている。
すなわち、先ずステップで後述する短時間再始動フ
ラグFが“1"にセットされているか否かを判定する。こ
の判定は、イグニッションスイッチ38がオフ状態となっ
てから圧力保持機構11が圧力保持状態となるまでに要す
る所定時間が経過したか否かを判定するものであり、短
時間再始動フラグFが“0"にリセットされているときに
は、圧力保持機構11が圧力保持状態となっているものと
判断してステップに移行する。
このステップでは、制御信号CS1をオン状態として
フェイルセーフ弁12を開状態とし、次いでステップに
移行して制御信号CS2をオン状態として流量調整機構17
の電磁開閉弁17aを閉状態とし、次いでステップに移
行して初期時間計測タイマをインクリメントし、次いで
ステップに移行して各圧力制御弁13FL〜13RRに対する
各圧力指令値PFL〜PRRを初期圧力指令値PFL′〜PRR′に
設定する。ここで、各圧力指令値PFL〜PRRの夫々は、圧
力保持機構11のパイロット操作形逆止弁16の設定圧(中
立圧)をPNとし、車高センサ27FL〜27RRの車高検出値H
FL〜HRRに基づく車高調整圧力指令値をPHFL〜PHRR
し、横加速度センサ28の横加速度検出値YGに基づく横加
速度圧力指令値をPYGとし、前後加速度センサ29の前後
加速度検出値XGに基づく前後加速度圧力指令値をPXG
し、オフセット圧力指令値をPOFL〜PORRとしたとき、下
記(1)式〜(4)式に基づいて算出される。
PFL=PN+PHFL−PYG+PXG+POFL……(1) PFR=PN+PHFR+PYG+PXG+POFR……(2) PRL=PN+PHRL−PYG−PXG+PORL……(3) PRR=PN+PHRR+PYG−PXG+PORR……(4) そして、初期状態では、車高調整圧力指令値PHFL〜PH
RR、横加速度圧力指令値PYG及び前後加速度圧力指令値P
XGを零とし、且つオフセット圧力指令値POFL〜PORRを全
て所定値PIに設定することにより、初期圧力指令値
PFL′〜PRR′を夫々下記(5)〜(8)式に示すように
設定する。
PFL′=PN+PI ……(5) PFR′=PN+PI ……(6) PRL′=PN+PI ……(7) PRR′=PN+PI ……(8) 次いで、ステップに移行して、各初期圧力指令値P
FL′〜PRR′をインタフェース回路34aを介してD/A変換
器44FL〜44RRに出力してからステップに移行する。
このステップでは、初期時間計測タイマのカウント
値NIが予め設定した圧力保持機構11が圧力保持解除状態
となるに十分な時間(数秒程度)に対応する設定値NSI
以上となったか否かを判定し、NI<NSIであるときに
は、前記ステップに戻り、NI≧NSIであるときには、
ステップに移行して制御信号CS2をオフ状態とし、次
いでステップに移行して初期状態車高調整処理を行う
旨の初期状態フラグFIを“1"にセットしてからステップ
に移行する。
このステップでは、前記ステップで設定したオフ
セット圧力指令値POj(j=FL,FR,RL,RR)が零であるか
否かを判定し、POj≠0であるときには、ステップに
移行して現在のオフセット圧力指令値POjから所定値ΔP
Iを減算した値を新たなオフセット圧力指令値POjとして
算出してからステップに移行し、POj=0であるとき
には、直接ステップに移行する。
ステップでは、各車高検出器27FL〜27RRの車高検出
値HFL〜HRRを読込み、これら車高検出値Hj(j=FL〜R
R)についてステップ〜の処理を行って各圧力制御
弁13jに対する車高調整圧力指令値PHjを算出する。
すなわち、ステップで車高検出値Hjと予め設定した
目標車高値Hsとの差でなる車高偏差HEを算出し、次いで
ステップに移行して初期状態フラグFIが“1"にセット
されているか否かを判定し、FI=“0"であるときには、
初期状態を除く通常走行状態であると判断してステップ
に移行し、比較的低感度でゆっくりした通常車高調整
を行うために、車高調整判定時間設定値THを比較的大き
い設定値T0に設定すると共に、車高調整を行うか否かの
判断の基準となる許容設定値Hsを比較的大きい設定値H0
に設定し、さらに車高調整速度を決定する変化量設定値
ΔHを比較的小さな設定値ΔH0に設定してからステップ
に移行し、FI=“1"であるときには、初期状態である
と判断してステップに移行し、通常走行状態よりは高
感度で早い初期状態車高調整を行うために、車高調整判
定時間設定値THSを前記設定値T0より小さい設定値T1
設定すると共に、許容設定値Hsを前記設定値H0より小さ
い設定値Hlに設定し、さらに変化量設定値ΔHを前記設
定値H0より大きな設定値Hlに設定してからステップに
移行する。
ステップでは、前記ステップで算出した車高偏差
HEの絶対値|HE|が許容設定値Hsを越えているか否かを
判定し、|HE|>Hsであるときには、ステップに移行
して車高調整時間計測タイマをインクリメントしてから
ステップに移行し、|HE|≦Hsであるときには、ステ
ップに移行して車高調整時間計測タイマをクリアし、
次いでステップに移行して初期状態フラグFIを“0"に
リセットしてからステップに移行する。
ステップでは、車高調整時間計測タイマのカウント
値THが設定値THS以上となったか否かを判定し、TH≧THS
であるときには、ステップに移行して、車高偏差HE
正であるか否かを判定し、HE>0であるときには、ステ
ップに移行して現在の車高調整圧力指令値PHjから変
化量設定値ΔHを減算した値を新たな車高調整圧力指令
値PHjとしてからステップに移行し、HE<0であると
きには、ステップに移行して現在の車高調整圧力指令
値PHjから変化量設定値ΔHを加算した値を新たな車高
調整圧力指令値PHjとしてからステップに移行する。
また、ステップの判定結果がTH<THSであるときに
は、直接ステップに移行する。
ステップでは、横加速度検出装置28の横加速度検出
値値YGを読込み、次いでステップに移行してこの横加
速度検出値YGから横加速度YGが零であるときの加速度検
出値YGOを減算することにより、左旋回時の横加速度を
正、右旋回時の横加速度を負とする実際の横加速度に対
応した実横加速度検出値YGRを算出し、次いでステップ
に移行して実横加速度検出値YGRに所定のゲインKY
乗算してロール抑制圧力指令値PYGを算出し、これを記
憶装置34cのロール抑制圧力指令値記憶領域に更新記憶
してからロール抑制処理を終了してステップに移行す
る。
このステップでは、前後加速度検出装置29の前後加
速度検出値XGを読込み、次いでステップに移行して前
後加速度検出値XGから前後加速度XGが零であるときの加
速度検出値XGOを減算することにより、前進時の加速度
を正、減速度を負とする実際の前後加速度に対応した実
前後加速度検出値XGRを算出し、次いでステップに移
行して実前後加速度検出値XGRに所定のゲインKXを乗算
してピッチ抑制圧力指令値PXGを算出し、これを記憶装
置34cのピッチ抑制圧力指令値記憶領域に更新記憶して
からピッチ抑制処理を終了してステップに移行する。
このステップでは、記憶装置34cの車高調整圧力指
令値記憶領域、ロール抑制圧力指令値記憶領域及びピッ
チ抑制圧力指令値記憶領域にそれぞれ記憶されている各
圧力指令値PHFL〜PHRR、PYG及びPXGを読出し、これらに
基づいて前記(1)〜(4)式の演算を行って各圧力制
御弁13FL〜13RRに対する圧力指令値PFL〜PRRを算出す
る。
次いで、ステップに移行して、上記ステップで算
出した圧力指令値PFL〜PRRを出力してからステップに
移行する。
このステップでは、各センサ27FL〜27RR、28〜30、
圧力制御弁13FL〜13RR及び制御装置32を含む制御系に異
常が発生したか否かを判定する。この判定は、異常状態
検出器31の異常状態検出信号ASがオン状態であるか否か
によって行い、異常状態検出信号ASがオン状態であると
きには、制御系が異常状態となったものと判断してステ
ップに移行し、制御信号CS1をオフ状態とすると共
に、自己保持信号SSをオフ状態として処理を終了し、異
常状態検出信号ASがオフ状態であるときには、制御系が
正常であるものと判断してステップに移行する。
このステップでは、イグニッションスイッチ38がオ
フ状態であるか否かを判定し、イグニッションスイッチ
38がオン状態であるときには、前記ステップに戻り、
イグニッションスイッチ38がオフ状態であるときには、
ステップに移行する。
このステップでは、バックアップメモリに格納され
た短時間再始動フラグFsを“1"にセットし、次いでステ
ップに移行して終了時間計測タイマをインクリメント
してからステップに移行する。
このステップでは、終了時間計測タイマのカウント
値TEが予め設定した圧力保持機構11が圧力保持状態とな
る前の時間に対応する設定値TES1以上となったか否かを
判定し、TE<TES1であるときには、ステップに移行し
て、各圧力制御弁13FL〜13RRに対する圧力指令値Pjが予
め設定した設定圧力PK(>PN)に許容値αを加減算した
許容範囲内にあるか否かを判定し、PK−α≦Pj≦PK+α
であるときには、そのままステップに移行し、Pj<PK
−α又はPj>PK+αであるときには、ステップに移行
してPj>PKであるかを判定し、Pj>PKであるときには、
ステップに移行してオフセット圧力指令値POjを負の
所定値−P2に設定し、Pj<PKであるときには、ステップ
に移行してオフセット圧力指令値POjを正の所定値+P
2に設定してからステップに移行する。
ステップでは、イグニッションスイッチ38がオン状
態であるか否かを判定し、イグニッションスイッチ38が
オフ状態を継続しているときには、前記ステップに戻
り、イグニッションスイッチ38がオン状態となったとき
には、前記ステップに戻る。
また、前記ステップの判定結果がTE≧TES1であると
きには、ステップに移行して短時間再始動フラグFs
“0"にリセットし、次いでステップに移行して終了時
間計測タイマのカウント値TEが予め設定された圧力保持
機構11が圧力保持状態となるに十分な時間に対応する設
定値TES2以上となったか否かを判定し、TE<TES2である
ときには、前記ステップに戻り、TE≧TES2であるとき
にはステップに移行して終了時間計測タイマをクリア
し、次いでステップに移行して自己保持信号SSをオフ
状態として、電源供給回路33のトランジスタQ2をオフ状
態として制御装置32への電源の供給を遮断してから処理
を終了する。
さらに、ステップの判定結果が短時間再始動フラグ
Fsが“1"にセットされているときには、ステップに移
行して、オフセット圧力指令値POjを下記(9)式に従
って演算してからステップに移行する。
POj=Pj−PN ……(9) したがって、今、車両が平坦な路面でイグニッション
スイッチ38をオフ状態としてから終了時間計測タイマの
カウント値TEが設定値TES2以上となる時間停止している
状態では、エンジン2が停止しているので、流体供給装
置FSから出力される作動油圧は零となっており、圧力保
持部11のパイロット操作形逆止弁16が閉状態となって、
圧力制御弁13FL〜13RR側の油圧制御系が閉回路となって
その圧力が後述するようにパイロット操作形逆止弁16の
設定圧PNより低下した圧力に保持されており、又バック
アップメモリに格納された短時間再始動フラグFsが“0"
にリセットされている。
この状態で、イグニッションスイッチ38をオン状態と
することにより、制御装置32に電源が供給されると共
に、エンジン2が始動されて、流体供給装置FSの作動油
圧が上昇する。
このとき、制御装置32のマイクロプロセッサ34bでは
第5図の処理が実行され、短時間再始動フラグFsが“0"
にリセットされていることにより、制御信号CS1及びCS2
をオン状態としてフェイルセーフ弁12を開状態及び電磁
開閉弁17aを閉状態に制御する。このため、流体供給装
置FSの油圧ポンプ1から吐出される圧力油は絞り17bを
介して逆止弁14に供給されることになり、油圧ポンプ1
の吐出圧が圧力保持機構11で保持している保持圧以上と
なったときに、逆止弁14及びフェイルセーフ弁12を介し
て閉回路の保持圧を徐々に上昇させ、これに伴う油圧シ
リンダ19FL〜19RRの推力の上昇に応じて車高が徐々に上
昇する。
その後、閉回路内の圧力がパイロット操作形逆止弁16
の設定圧PNに達すると、このパイロット操作形逆止弁16
が全開状態となって、各圧力制御弁13FL〜13RRの戻り側
ポート13oがタンク3に連通し、圧力制御弁13FL〜13RR
の指令値に基づく制御圧Pcによって油圧シリンダ19FL〜
19RRが制御可能な状態となる。
一方、マイクロプロセッサ34bでは、イグニッション
スイッチ38がオン状態となってから所定時間の間一定値
の初期圧力指令値PFL′〜PRR′を出力しており、圧力保
持機構11の圧力保持状態が解除された時点では初期圧力
指令値PFL′〜PRR′が制御弁駆動回路35FL〜35RRで励磁
電流IFL〜IRRに変換されて各圧力制御弁13FL〜13RRの比
例ソレノイド13sに供給されることにより、圧力制御弁1
3FL〜13RRから中立圧PNよりオフセット圧力指令値PI
高い制御圧Pcを出力するように制御されるが、このとき
に流量調整機構17が流量制限状態を継続しているので、
圧力制御弁13FL〜13RRの制御圧Pcは緩やかに上昇するこ
とになり、これに応じて油圧シリンダ19FL〜19RRの圧力
が緩やかに上昇し、圧力制御弁の制御圧Pcが中立圧PN
オフセット圧力指令値PIを加算した値に達すると、この
状態が維持される。
その後、初期設定時間が経過すると、制御信号CS2
オフ状態となって流量調整機構17の電磁開閉弁17aが開
状態となり、流体供給装置FSからの圧力油が全て圧力制
御弁13FL〜13RRに供給される。
この状態となると、圧力指令値PFL〜PRRに含まれるオ
フセット圧力指令値POFL〜PORRが徐々に零に向かって減
少されると共に、車高センサ27FL〜27RRの車高検出値H
FL〜HRRに基づく車高調整制御、横加速度センサ28の横
加速度検出値YGに基づくロール抑制制御及び前後加速度
センサ29の前後加速度検出値XGに基づくピッチ抑制制御
が実行開始される。
このとき、車高調整制御においては、初期状態フラグ
FIが“1"にセットされていることにより、車高調整を行
うか否かの判断基準となる設定値Hsが通常走行時の設定
値H1より小さい設定値H0に設定されると共に、車高調整
を行う時間間隔を決定する設定値THが通常走行時の設定
値T1より小さい設定値T0に設定され、且つ車高調整を行
うときの圧力変化量ΔPHが通常走行状の変化量ΔP1より
大きい変化量ΔP0に設定されるので、イグニッションス
イッチ38がオン状態となった後又はその前に標準積載重
量を越える乗員の乗車又は積載物の積み込みがあって、
車高が目標車高より低下しているときに、その車高を目
標車高に戻す車高調整を速やかに行うことができ、運転
席側が高い車高となって前方の視界が妨げられることを
確実に防止することができる。
その後、車高が目標車高近傍となると、ステップか
らステップ,に移行して初期状態フラグFIが解除さ
れることにより、初期状態車高調整処理から通常車高調
整処理に移行する。
また、車両が走行を開始すると、車両の加速又は減速
によって生じる前後加速度が前後加速度センサ29で検出
されると共に、車両の旋回によって生じる横加速度が横
加速度センサ28で検出され、これら加速度検出値に基づ
いて車両のピッチ又はロールを抑制する圧力指令値PXG
又はPYGが算出され、前記(1)式〜(4)式の演算を
行うことにより、総合的な圧力指令値PFL〜PRRが算出さ
れ、これらが制御弁駆動回路35FL〜35RRに出力される。
このため、駆動回路35FL〜35RRから圧力指令値PFL〜PRR
に対応した励磁電流IFL〜IRRが圧力制御弁13FL〜13RRの
比例ソレノイド13sに出力されてその制御圧Pcが制御さ
れ、これに応じて油圧シリンダ19FL〜19RRの推力が変更
され、車高を目標車高に維持すると共に、車体のピッチ
及びロールを抑制して車体をフラットな状態に保持す
る。
その後、車両を停止状態としてイグニッションスイッ
チ38をオフ状態とすると、これによってエンジン2が停
止することにより、油圧ポンプ1が停止し、その吐出圧
が急激に低下する。
しかしながら、圧力保持機構11に逆止弁14が介挿され
ていることにより、圧力制御弁13FL〜13RRの入力ポート
13iの圧力は急激に低下することはないと共に、制御装
置32には、電源供給回路33からの電源の供給が継続され
ているので、マイクロプロセッサ34bでは第5図の処理
を継続している。
このため、イグニッションスイッチ38がオフ状態とな
った時点でステップからステップに移行することに
より、短時間再始動フラグFsが“1"にセットされ、その
後ステップ〜ステップの処理によって圧力制御弁13
FL〜13RRの制御圧Pcを徐々に設定圧PKに向けて変化させ
る。すなわち、車両の積載重量が標準積載重量より軽い
ときには、圧力制御弁13FL〜13RRの制御圧Pcは設定圧PK
より低い圧力となっているので、設定圧PKまで徐々に上
昇させ、逆に積載重量が標準積載重量より重いときに
は、圧力制御弁13FL〜13RRの制御圧Pcは設定圧PKより高
い圧力となっているので、設定圧PKまで徐々に下降させ
る。
この圧力調整処理を行っている途中で、イグニッショ
ンスイッチ38をオン状態に切換えてエンジン2を再始動
すると、ステップからステップに戻り、短時間再始
動フラグFsが“1"にセットされていることから、ステッ
プに移行して、オフセット圧力指令値POjを前記
(9)式に従って算出する。このため、オフセット圧力
指令値POjがイグニッションスイッチ38をオン状態とし
た直前の圧力指令値Pj″から中立圧PNを減算した値
(Pj″−PN)となり、且つ車両が停止中であるので、横
加速度センサ28及び前後加速度センサ29の加速度検出値
YG及びXGが零であって横加速度圧力指令値PYG及び前後
加速度圧力指令値PXGが零となるので、これを前記
(1)式〜(4)式に基づいて算出される圧力指令値Pj
は、イグニッションスイッチ38をオン状態とした直前の
圧力指令値Pj″に維持され、その後ステップに移行し
て初期状態フラグFIを“1"にセットしてからステップ
以降の通常走行開始時の姿勢変化抑制制御に復帰する。
このため、イグニッションスイッチ38をオフ状態から
オン状態に切換えた時点で流量調整機構17の電磁開閉弁
17aが閉状態に制御されることがなく、流体供給装置FS
の圧力上昇に伴って圧力制御弁13FL〜13RRの入力ポート
13jの供給圧が素早く立ち上がり、しかも圧力指令値Pj
として初期設定圧力指令値Pj′が設定されることがない
ので、圧力指令値が急変することはなく、車高変動を生
じることを確実に防止することができる。また、ステッ
プ以降の車高調整処理で初期状態フラグFIがセットさ
れていることにより、前述した初期状態車高調整を行っ
て車高を目標車高に素早く復帰させることができる。さ
らに、短時間再始動フラグFs及び圧力指令値PFL〜PRR
バックアップメモリに格納されていることにより、イグ
ニッションスイッチ38をオン状態としたときのエンジン
クランキングによって電源電圧が低下し、マイクロコン
ピュータ34をリセットがかかったときにも、短時間再始
動フラグFsの内容が変化しないので、第5図の処理を再
開したときにステップからステップに確実に移行さ
せることができる。
一方、イグニッションスイッチ38をオフ状態としたま
ま終了時間計測タイマのカウント値TEが設定値TE1に達
すると、第5図のステップからステップに移行して
短時間再始動フラグFsを“0"にリセットし、次いで終了
時間計測タイマのカウント値TEが設定値TE2に達する
と、制御信号CS1をオフ状態とし、且つ自己保持信号SS
をオフ状態とすることにより、制御装置32に供給される
電源が遮断される。また、終了時間計測タイマのカウン
ト値TEが設定値TE1となった後に、圧力制御弁13FL〜13R
Rの入力ポート13iの圧力が圧力保持機構11のパイロット
操作形逆止弁16の設定圧PNに達したときには、パイロッ
ト操作形逆止弁16が全閉状態となって圧力制御弁13FL〜
13RR及び油圧シリンダ19FL〜19RRを含む油圧制御系が閉
回路となり、圧力保持状態となる。このとき、圧力保持
機構11のパイロット操作形逆止弁16が全閉状態となるこ
とにより、戻り側配管20F,20Rの圧力が上昇を開始し、
背圧吸収用アキュムレータ21F,21Rに圧力油が流入する
ことになるので、閉回路内の圧力はパイロット操作形逆
止弁16の設定圧PNより若干低下する。
さらに、車両の走行中に、車高センサ27FL〜27RR、加
速度センサ28,29及び圧力制御弁13FL〜13RR等の制御系
に、異常状態が発生したときには、この異常状態が異常
状態検出器31によって検出され、その異常状態検出信号
ASがオン状態となる。このため、第5図のステップか
らステップに移行して制御信号CS1をオフ状態とする
と共に自己保持信号SSをオフ状態として、フェイルセー
フ弁12を閉状態とすると共に制御装置32の電源を遮断す
る。これに応じて、圧力制御弁13FL〜13RRに対する流体
供給装置FSからの作動油圧の供給が遮断され、且つ圧力
制御弁13FL〜13RRの入力ポート13iが絞り12cを介してパ
イロット操作形逆止弁16に連通される。その結果、パイ
ロット操作形逆止弁16のパイロット圧PPも低下し、これ
が中立圧PNに達するとパイロット操作形逆止弁16が全閉
状態となり、圧力制御弁13FL〜13RR側の油圧制御系が閉
回路となり、その後戻り側配管20F,20R及び背圧吸収用
アキュムレータ21F,21Rの圧力上昇に伴って、閉回路内
の圧力が中立圧PNより若干低下する。
この状態では、閉回路内の圧力が中立圧PN近傍の一定
値に保持されることにより、油圧シリンダ19FL〜19RRの
圧力も中立圧PN近傍の圧力となり、標準積載時の車重を
目標車高に保つことが可能となる。このとき、油圧シリ
ンダ19FL〜19RRに車輪側からばね下振動の高周波域の振
動が入力されたときには、この振動入力を減衰バルブ23
FL〜23RR及びアキュムレータ24FL〜24RRによって吸収す
ることができると共に、路面の凹凸による比較的大きな
振動入力が入力されたときには、これによる油圧シリン
ダ19FL〜19RRの圧力上昇分を圧力制御弁13FL〜13RRの制
御圧ポート13c及び戻りポート13o及び逆止弁25F,25Rを
介してアキュムレータ22F,22Rで吸収することができ、
その結果通常の受動型サスペンションと同様の機能を発
揮することができる。
また、マイクロプロセッサ34bで第5図の処理を実行
中にプログラム暴走が生じたときにも、これをウォッチ
ドッグタイマ39で検出し、異常状態処理を実行するの
で、上記と全く同様の動作を行うことができる。
なお、上記実施例においては、圧力保持機構11内に電
磁開閉弁17aと絞り17bとで構成される流量調整機構17を
設けた場合について説明したが、これに限定されるもの
ではなく、流体供給装置FSと圧力制御弁13FL〜13RRとの
間の供給側配管5の何れかの個所に設けるようにすれば
よく、さらに電磁開閉弁17aに代えてパイロット操作形
開閉弁を適用するようにしてもよい。
また、上記実施例においては、流量調整機構17として
電磁開閉弁17aと絞り17bを適用した場合について説明し
たが、これに限定されるものではなく、電磁開閉弁17a
及び絞り17bを省略し、これに代えてフェイルセーフ弁1
2のPポート及びAポート間に絞りを介挿し、フェイル
セーフ弁12を始動時間計測タイマのカウント値が設定値
に達するまでは閉状態としておくようにしても上記と同
様の作用を得ることができる。
さらに、上記実施例においては、イグニッションスイ
ッチ38がオン状態となってから初期時間計測タイマで所
定時間を計測する場合について説明したが、これに限定
されるものではなく、圧力保持機構11の圧力制御弁13FL
〜13RR側に圧力スイッチ等の圧力検出手段を設け、この
圧力検出手段で圧力保持機構11が作動状態を検出して圧
力保持機構11が圧力保持解除状態となったときに初期状
態車高調整処理を開始し、圧力保持機構11が圧力保持状
態となったときに制御装置32による姿勢変化抑制制御を
終了するようにしてもよい。
またさらに、上記実施例においては、初期圧力設定値
PFL′〜PRR′を中立圧PNにオフセット圧力指令値PIを加
算した値とした場合について説明したが、これに限らず
中立圧PNに設定するようにしてもよい。
なおさらに、上記実施例においては、各圧力制御弁に
対して共通の圧力保持機構11及びフェイルセーフ弁12を
設けた場合について説明したが、これに限らず圧力保持
機構11及びフェイルセーフ弁12を個別に設けるようにし
てもよい。
また、上記実施例においては、油圧ポンプ1の回転駆
動力をエンジン2から得るようにした場合について説明
したが、これに限定されるものではなく、電動モータ等
の回転駆動源を適用し得ることは言うまでもない。
さらに、油圧サスペンションの制御弁としては上記圧
力制御弁13FL〜13RRに限定されるものではなく、他の流
量制御型サーボ弁等を適用し得るものである。
またさらに、上記実施例においては、作動流体として
作動油を適用した場合について説明したが、これに限定
されるものではなく、圧縮率の少ない流体であれば任意
の作動流体を適用し得る。
〔発明の効果〕
以上説明したように、請求項(1)に係る能動型サス
ペンションによれば、イグニッションスイッチをオン状
態として流体供給機構を始動したときに、流体供給機構
及び圧力制御弁間に介挿した流量調整機構を作動状態と
して流量制限状態として車高を緩やかに変化させ、この
とき制御手段で制御弁に対する指令値を一定値に保持し
ておくことにより、圧力保持機構で圧力保持状態が解除
されたときに生じる車高の急変を防止することができる
効果が得られる。
また、請求項(2)に係る能動型サスペンションによ
れば、イグニッションスイッチをオン状態として、流量
調整機構が流量制限状態となり、この流量制限状態が解
除されたときに、通常の車高調整時間より短い車高調整
時間で初期状態車高調整処理を行うことにより、乗員の
乗車、積載物の積み込み等による車高変化状態から適正
車高状態に迅速に移行することができ、後輪側の車高が
低下して運転者の視界が妨げられる等の不都合を迅速に
解消することができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)及び(b)は夫々この発明の概略構成を示
す基本構成図、第2図はこの発明の一実施例を示す油圧
回路図、第3図は圧力制御弁の指令電流に対する制御圧
の関係を示す特性線図、第4図は制御装置の一例を示す
ブロック図、第5図は制御装置の処理手順の一例を示す
フローチャートである。 図中、FSは流体供給装置、1は油圧ポンプ、2はエンジ
ン、5は供給側配管、7は戻り側配管、11は圧力保持機
構、12はフェイルセーフ弁、13FL〜13RRは圧力制御弁、
14は逆止弁、16はパイロット操作形逆止弁、17は流量調
整機構、17aは電磁開閉弁、17bは絞り、19FL〜19RRは油
圧シリンダ(流体シリンダ)、27FL〜27RRは車高セン
サ、28は横加速度センサ、29は前後加速度センサ、31は
異常状態検出器、32は制御装置、33は電源供給装置、34
はマイクロコンピュータ、35FL〜35RRは制御弁駆動回路
である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】各車輪と車体との間に介装された流体シリ
    ンダと、該流体シリンダに供給される流体供給装置から
    の作動流体を指令値に応じて制御する制御弁と、該制御
    弁及び流体供給装置間に介装され当該制御弁に対する供
    給圧が設定圧力以下となったときに制御弁側を閉回路と
    する圧力保持機構と、前記制御弁に供給する作動流体を
    制限可能な流量調整機構と、前記制御弁に対して姿勢変
    化を抑制する指令値を出力すると共に、前記流量調整機
    構を流体供給装置が始動状態となったときに所定時間流
    量制限状態に制御する制御手段とを備えた能動型サスペ
    ンションであって、前記流体供給装置が始動状態となっ
    たことを検出する始動状態検出手段を備え、前記制御手
    段は、前記始動状態検出手段で流体供給装置の始動状態
    を検出したときに、所定時間前記流量調整機構を流量制
    限状態に制御すると共に、前記制御弁に対する指令値を
    一定値に制御することを特徴とする能動型サスペンショ
    ン。
  2. 【請求項2】各車輪と車体との間に介装された流体シリ
    ンダと、該流体シリンダに供給される流体供給装置から
    の作動流体を指令値に応じて制御する制御弁と、該制御
    弁及び流体供給装置間に介装され当該制御弁に対する供
    給圧が設定圧力以下となったときに制御弁側を閉回路と
    する圧力保持機構と、前記制御弁に供給する作動流体を
    制限可能な流量調整機構と、車高を検出する車高検出手
    段と、少なくとも前記車高検出手段の車高検出値に基づ
    いて前記制御弁に対する指令値を出力すると共に、前記
    流量調整機構を流体供給装置が始動状態となったときに
    所定時間流量制限状態に制御する制御手段とを備えた能
    動型サスペンションであって、前記流体供給装置が始動
    状態となったことを検出する始動状態検出手段を備え、
    前記制御手段は、前記始動状態検出手段で流体供給装置
    の始動状態を検出したときに、所定時間前記流量調整機
    構を流量制限状態に制御すると共に、前記制御弁に対す
    る指令値を一定値に制御し、所定時間経過後に前記流量
    調整機構を非作動状態とすると共に、前記流体供給装置
    の始動状態以降の通常状態より短い判断時間又は速い調
    整速度で車高調整を行うことを特徴とする能動型サスペ
    ンション。
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