JP2006315584A - 車高変化を時系列的に把握する車輌 - Google Patents

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Abstract

【課題】サスペンションが車高の変更を行う空気ばねを備え、サスペンションの作動に係るパラメータが車高の変化を検出しつつマイクロコンピュータにてばねの弾性係数やショックアブソーバの減衰係数を織り込んだ演算による推定値として求められる場合に、その時々刻々に変化するパラメータの値をより正確に推定するよう改良された車輌を提供する。
【解決手段】空気ばねによる車高変更中には微小時間毎に微小量ずつ車高が時系列的に変化するものとしてエアサスペンションの作動に係るパラメータを把握する。
【選択図】図2

Description

本発明は、空気ばねによる車高変更機能を備えたエアサスペンションにより車輪上に懸架された車体を有する車輌に係る。
車輪上に車体を懸架するサスペンションに於けるばねとして空気ばねを用いたエアサスペンションが知られている。空気ばねは充填される空気の量に応じて長さを変えることができるので、エアサスペンションは、多くの場合、車高変更機能を有するサスペンションとして実施されている。
一方、車輌の走行安定性は車輪の路面に対するグリップ力に依存し、それは車輪の接地荷重により左右されるので、車輌の加速時や旋回時に車輪の空転が予測され或いは検知されたとき、車体と車輪の間に作用するアクチュエータを作動させ、ばね上質量やばね下質量の慣性を利用して車輪の接地荷重を高めることが下記の特許文献1に記載されている。また下記の特許文献2には、車輪の接地荷重を接地荷重検出手段により検出し、接地荷重が減小したときにはサスペンションに組み込まれたショックアブソーバの減衰力を増大させることにより接地荷重を増大させることが記載されている。
特開平11-34628 特開平11-151923
サスペンションの作動に係るパラメータであって、例えば、車輪の接地荷重の如く直接検出することができないものは、車高その他の検出可能なパラメータの変化を検出しつつマイクロコンピュータにてばねの弾性係数やショックアブソーバの減衰係数を織り込んだ演算を行うことにより推定値として求められている。その場合、空気ばねを用い、空気ばねに充填される空気の量を変えることにより車高の変更が行われるエアサスペンションを備えた車輌に於いては、空気ばねによる車高の変更に伴って車高と空気ばねの弾性係数との間の関係が変化するので、このことが考慮されない演算では、算出されたパラメータにかなりの誤差が生ずる恐れがある。このことは、パラメータが車輪の接地荷重の如くその瞬時の値が車輌の走行安定性に直接影響するものであるときには、特に注意されるべきである。
本発明は、上記の事情に着目し、サスペンションが車高の変更を行う空気ばねを備え、サスペンションの作動に係るパラメータが車高の変化を検出しつつマイクロコンピュータにてばねの弾性係数やショックアブソーバの減衰係数を織り込んだ演算による推定値として求められる場合に、その時々刻々に変化するパラメータの値をより正確に推定するよう改良された車輌を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するものとして、本発明は、空気ばねによる車高変更機能を備えたエアサスペンションにより車輪上に懸架された車体を有する車輌にして、前記空気ばねによる車高変更中には微小時間毎に微小量ずつ車高が時系列的に変化するものとして前記エアサスペンションの作動に係るパラメータが把握されるようになっていることを特徴とする車輌を提案するものである。
前記微小時間および前記微小量はそれぞれ予め定められた微小時間および予め定められた微小量とされ、車高の前記時系列的変化は、前記微小時間を周期とし、前記空気ばねによる車高変更の目標偏差を前記微小量にて除した回数だけ行われてよい。この場合、前記微小時間と前記微小量とは前記微小時間に対する前記微小量の比が前記空気ばねによる車高変更速度に整合するよう設定されてよい。
前記パラメータは車輪の接地荷重であってよい。
空気ばねによる車高変更機能を備えたエアサスペンションにより車輪上に懸架された車体を有する車輌に於いて、空気ばねによる車高変更中には微小時間毎に微小量ずつ車高が時系列的に変化するものとしてエアサスペンションの作動に係るパラメータが把握されるようになっていれば、空気ばねへの空気の充填量が変えられることにより空気ばねによる車高変更が行なわれている最中にも、時々刻々に計測される車高変化より空気ばね自身の長さの変化を分別して車高変化に対応するばね力の変化を算出することができ、エアサスペンションの作動に係るパラメータをその変化の途中に於いても常時正確に把握することができる。
空気充填量が変えられることによる空気ばね自身の長さの変化は、空気ばねの内部へ通じる空気流路の抵抗や圧縮空気源の空気圧等の条件によって定まるほぼ一定の速度にて生ずるので、前記微小時間および前記微小量がそれぞれ上記の条件に基づいて予め定められた適当な微小時間および微小量とされ、車高の前記時系列的変化が、前記微小時間を周期とし、空気ばねによる車高変更の目標偏差を前記微小量にて除した回数だけ行われるようになっていれば、車高変更中の空気ばね自身の長さの変化に追従してエアサスペンションの作動に係るパラメータを把握することができる。この場合、上記の適当な微小時間および微小量として、微小時間に対する微小量の比が空気ばねによる車高変更速度に整合するよう設定されれば、車高変更中の空気ばね自身の長さの変化に時間的に正しくに追従してエアサスペンションの作動に係るパラメータを把握することができる。
前記パラメータが車輪の接地荷重であれば、空気ばねによる車高変更中にも絶えず正確に接地荷重を把握し、車高変更中にも絶えず車輪の路面に対するグリップ力を正確に把握した車輌の走行安定化制御を行うことができる。
図1は、本発明に係る車輌のサスペンションを左右1対の車輪について示す概略図である。車輪上に車体を懸架するサスペンションは、空気ばねとショックアブソーバとが並置され、左右の車輪間には、その間に異なるバウンドまたはリバウンドが生じたとき捩れにより左右の車輪間に弾性復元力を作用させるスタビライザが張り渡されている。車輪はその周縁にタイヤを備えているので、車輪は路面より一つのばねを介して支持されている。尚、本発明はこの図のように模型化される車輌の作動に要旨を有するものであり、図1に示されている構造そのものは、この技術の分野に於いては周知の構造である。
図1に於いて、LおよびRはそれぞれ各パラメータが左輪および右輪に係るものであることを示すものとし、MwLおよびMwRはそれぞれ左輪および右輪の質量(ばね下質量)、またMbLおよびMbRはそれぞれ車体の質量のうち左輪および右輪に掛かる質量(ばね上質量)を表すものとする。XwLおよびXwRはそれぞれ左輪および右輪の基準位置(例えば軸心位置)の路面からの距離、XwsLおよびXwsRはそれぞれ車輌が静止した状態にあるときのXwLおよびXwRの値、XwoLおよびXwoRはそれぞれ車輪に荷重が掛からないとしたときのXwLおよびXwRの値を表すものとする。また、XbLおよびXbRはそれぞれ左輪および右輪の位置での車体の或る基準点の位置の路面からの距離、XbsLおよびXbsRはそれぞれ車輌が静止した状態にあるときのXbLおよびXbRの値、XboLおよびXboRはそれぞれ、車体が別途の手段により懸垂され、空気ばねに荷重が掛からず、空気ばねが自由に伸張した状態にあるとしたときのXbLおよびXbRの値を表すものとする。XwL、XwR、XbL、XbRはそれぞれ適当な高さセンサまたは距離センサにより検出されてよい。
また左輪および右輪に於けるタイヤの弾性係数をそれぞれKtirLおよびKtirRとし、左輪および右輪に対する空気ばねの弾性係数をそれぞれKsusLおよびKsusRとし、左輪および右輪に対するショックアブソーバの減衰係数をそれぞれCdanLおよびCdanRとする。また左輪と右輪の間に作用するスタビライザの捩り弾性係数をKstaとし、重力加速度をgとする。
以上のパラメータ表記によれば、左輪および右輪の接地荷重はそれぞれ下記の式(1)により表される。
左輪接地荷重(=KtirL×(XwoL−XwL))
=(MbL+MwL)×g
+MwL×d2XwL/dt2
+KsusL×{(XwL−XwoL)/(XbL−XboL)}
+CdanL×d(XwL−XbL)/dt
+Ksta×{(XwL−XbL)−(XwR−XbR)} … … (1)
車輌が静止状態にあるとき、左輪については、下記の式(2)が成立し、また左輪に対応する空気ばねについては、下記の式(3)が成立する。
KtirL×(XwoL−XwsL)=(MbL+MwL)×g … … (2)
KsusL×{(XwsL−XwoL)−(XbsL−XboL)}=MbL×g … … (3)
同様に、右輪については、上記の式(1)、(2)、(3)に対応して下記の式(4)、(5)、(6)が成立する。
右輪接地荷重(=KtirR×(XwoR−XwR))
=(MbR+MwR)×g
+MwR×d2XwR/dt2
+KsusR×{(XwR−XwoR)/(XbR−XboR)}
+CdanR×d(XwR−XbR)/dt
+Ksta×{(XwR−XbR)−(XwL−XbL)} … … (4)
KtirR×(XwoR−XwsR)=(MbR+MwR)×g … … (5)
KsusR×{(XwsR−XwoR)−(XbsR−XboR)}=MbR×g … … (6)
図2は、図1に示す車輌に於いて、エアサスペンションの作動に係るパラメータとして車輪の接地荷重が算出される場合の、その一つの算出態様をフローチャートにて示している。かかるフローチャートに沿う演算作動は、車輌の図には示されていないマイクロコンピュータを備えた電気式制御装置(ECU)により、車輌の運行中、適当な周期にて繰り返されてよい。尚、図2のフローチャートは左輪に対するものとして示されているが、左輪は前左輪と後左輪を総称したものであり、図示のフローチャートに沿う演算作動は、実際には、前左輪と後左輪に対し個別に交互に或いは並行して行われるものとする。また前右輪および後右輪に対しても、これと同様の作動がこれと交互に或いはこれと並行して行われるものとする。
作動が開始されると、ステップ10に於いて、フラグFが1にセットされているか否かが判断される。フラグFは作動の開始時に0にリセットされており、作動が後述のステップ70に至ったとき1にセットされるものである。従って、最初の答はノー(N)であり、作動はステップ20へ進む。ステップ20に於いては、電気式制御装置により別途行われる車高制御により指令された車高の目標変更値ΔHvtLの絶対値が或る小さな所定の下限値ΔHcより大きいか否かが判断される。答がノーであるとき、即ち、車高の目標変更値ΔHvtLの絶対値がΔHc以下であるときは、本発明による車高変更に対する格別の考慮を要しないときであり、そのときには以下のステップ30〜110によるXbsLの算出やXboLの変更は行わず、直接ステップ120へ進んでそのときの各パラメータの値に基づいて接地加重の算出が行われる。ステップ20の答がイエス(Y)であれば、作動はステップ30へ進む。
ステップ30に於いては、車高変更目標値ΔHvtLの絶対値を或る所定の微小な値Δhにて除した値の整数部分をとって整数値Nsが算出される。この場合、微小値Δhの大きさが、フローの繰返し周期との関連に於いて、周期に対するΔhの比が空気ばねによる車高変更速度に整合するよう設定されれば、車高の変更に時間的に正しく追従して以下のステップによりXbsLを算出し、XboLを変更することができる。
次いで作動はステップを40へ進み、車高変更目標値ΔHvtLが正の値であるか否かが判断される。答がイエスであれば、作動はステップ50へ進み、係数kの値が1とされ、答がノーであれば、作動はステップ60へ進み、係数kの値が−1とされる。いずれの場合にも、次いで作動はステップを70へ進み、ここでフラグFが1にセットされる。フラグFが1にセットされると、次回からのフローはステップ10よりステップ20〜70をバイパスしてステップ80へ進むようになる。
ステップ80に於いては、作動の開始時に0にリセットされたカウント値Nが1だけ増分される。
次いで作動はステップを90へ進み、カウント値NがNs+1より小さいか否かが判断される。答がイエスである間、制御はステップ100へ進み、XbsLの値が微小値kΔhだけ変更される。kが+1であれば、この変更はXbsLをΔhだけ増大させることであり、kが−1であれば、この変更はXbsLをΔhだけ減小させることである。
次いで作動はステップを110へ進み、上記の式(3)に基づいてXboLがXbsLの変化に応じて変化するXbsLの関数f(XbsL)として求められる。式(3)に於いて、KsusLは空気ばねの自由長に対するばね定数であり、空気ばねへの空気の充填量の増減により空気ばねの自由長が変化しても一定と見てよく、空気ばねの設計に応じた既知の値である。XwsLはXwLの車輌静止時の値であり、車輌の運行開始時または運行途中の車輌一時停止時に適当な高さセンサによる検出により知られる値である。XwoLは車輪に荷重が掛からない状態でのXwLの値であり、これはタイヤの空気圧の変化に拘わらず一定と見てよく、車輪の設計およびタイヤの型に応じた既知の値である。車体質量MbLは乗員の数や積荷に応じて随時変化する。MbLは式(2)に基づいて随時算出された値とされてよい。式(2)に於いて、タイヤの弾性係数KtirLはタイヤの空気圧により多少変化するが、MbLの見積に対するその誤差は無視されてよいと考えられる。従って、式(3)よりXboLはXbsLの関数f(XbsL)として求められる。
次いで、ステップ120に於いて、上記の式(1)に基づいて、接地加重が、XwL、XwRおよびXbL、XbRを時間と共に変化するパラメータとし、XboLを車高変更時には時系列的に変化するパラメータとして算出される。この場合、作動がステップ80〜110を経てステップ120に至る間、XbsLおよびXboLの値は毎回ステップ100および110にて算出される値に変更され、接地加重はその都度僅かずつ変更されたXboLの値に基づいて算出される。
かくして、本発明によれば、空気ばねによる車高変更機能を備えたエアサスペンションにより車輪上に懸架された車体を有する車輌に於いて、空気ばねによる車高変更中には、車輪の接地加重の如きエアサスペンションの作動に係るパラメータが、微小時間毎に微小量ずつ変更されたXboLの値に基づいて車高が時系列的に変化するものとして把握される。
車高変更目標値ΔHvtLに対するXbsLおよびXboLの微小時間毎の微小量ずつの時系列的変更が終了し、カウント値NがNsに達すると、ステップ90の答はイエスからノーに転ずるので、これより作動はステップ130へ進み、カウント値NおよびフラグFはそれぞれ0にリセットされ、次回の車高変更に備えられる。
以上に於いては本発明を一つの実施の形態について詳細に説明したが、かかる実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
本発明に係る車輌のサスペンションを左右1対の車輪について示す概略図。 図1に示す車輌に於いてエアサスペンションの作動に係るパラメータとして車輪の接地荷重が算出される場合の一つの算出態様を示すフローチャート。

Claims (4)

  1. 空気ばねによる車高変更機能を備えたエアサスペンションにより車輪上に懸架された車体を有する車輌にして、前記空気ばねによる車高変更中には微小時間毎に微小量ずつ車高が時系列的に変化するものとして前記エアサスペンションの作動に係るパラメータが把握されるようになっていることを特徴とする車輌。
  2. 前記微小時間および前記微小量はそれぞれ予め定められた微小時間および予め定められた微小量とされ、車高の前記時系列的変化は、前記微小時間を周期とし、前記空気ばねによる車高変更の目標偏差を前記微小量にて除した回数だけ行われることを特徴とする請求項1に記載の車輌。
  3. 前記微小時間と前記微小量とは前記微小時間に対する前記微小量の比が前記空気ばねによる車高変更速度に整合するよう設定されることを特徴とする請求項2に記載の車輌。
  4. 前記パラメータは前記車輪の接地荷重であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の車輌。
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